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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 4話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/08 23:22

「それじゃ雪広、このプリントを授業の前に皆に配っといてくれ」

「判りました、それでは失礼します」

 おー、すまないな、と声を掛けて、もう冷めてしまったコーヒーの残りを全部飲む。
 ……底に砂糖が溜まっていて、妙に甘ったるい。
 しかし、ネギ先生って何者なんだろうか?
 あまりにこっちに情報が回ってこないからネットとかで向こうの学校を調べてみたけど、
 HPを作っていないのか、どんな学校なのかも判らないしなぁ。
 メルディアナ、って学校自体聞いた事も無いしなぁ。

「先生」

 っと。

「ガンドルフィーニ先生?」

 珍しい。あんまり話さないどころか、向こうから話しかけてくれたのって初めてじゃないだろうか?
 まぁ、教科も担当の学年も違うからそれも……当たり前というのはアレだけど。
 と言うか、何で高校教諭が女子中の職員室に? まぁ、偶に見かけるんだけど。

「どうかしましたか?」

「ああ、いえ。少し時間が出来ましたので、お話でもと」

「は、はぁ」

 今まで話した事も無かったですし、と言われても。
 俺、何かしたかな……?
 本当に、今まで話した事が無かったので、逆に驚いてしまう。
 どうしたんだろう?

「はは、そう畏まらなくても良いですよ」

 そう言われてもですね。

「そうだ。コーヒーとお茶、どっちが良いですか?」

「それじゃ、コーヒーで」

 とりあえず、飲み物で場をもたせるか。
 ……どんな話振ればいいんだろう?
 いきなり来られると、困るなぁ……他に誰も居ないし。
 コーヒーを淹れながら、昨日見たバラエティ番組とか話題にしたら駄目かなぁ、と考えてみる。
 なんか雰囲気的に、堅そうだし。
 そんな失礼な事を考えながら、コーヒーをもって机へ。

「どうぞ」

「すまないね。こっちから来たのに、気を遣わせてしまって」

「いえいえ。あ、どうぞ椅子にかけて下さい。それに、先生と話す機会も無かったですし、時間を作ってもらって助かります」

 二人揃って、笑い合う。
 うーん、気まずい。何か用があって来たんだろうけど……。

「それで、どうしたんですか?」

「んー……今度来る、新任の先生について、少しね」

 ああ。
 ネギ先生の事ですか……情報無いですもんねぇ。
 でも、ガンドルフィーニ先生って高等部ですよね?

「高等部の方でも話題になってるんですか?」

「少しね。外国からの先生のようだし、ね」

 そうか。
 ガンドルフィーニ先生も、外国からだもんな。
 心配、してくれてるんだろうな。その先生の事。
 異国の地で新任。しかもこんな時期に。

「新任だと言うし、少し心配でね」

 それにこんな時期だし、と。
 まぁ確かに。普通なら新学期からだよなぁ。
 何か向こうさんの方で色々あったらしいけど。
 その理由も詳しく聞けてないし。

「先生は、学園長から何か聞いてますか?」

「いえ。まだ名前とかしか聞いてないんですよ」

 優秀な先生だってのは聞いてますけど、顔も知らないんですよねぇ、と。
 苦笑して……ガンドルフィーニ先生は真顔で頷いていた。
 ……うーん。

「やっぱりおかしいですよね?」

「そうですね。でも……」

 ?
 変な所で言葉を切られて、首を傾げてしまう。

「まぁ、スプリングフィールド先生にも良い経験でしょうね」

「あ、名前まで知ってるんですね」

 それも当然か。こうやって、俺に話を聞きにくるくらいだし。

「ガンドルフィーニ先生は、そのネギ先生がどういう人か聞いてますか?」

「……少し、風の噂で聞いてるだけですよ」

 へぇ、って、もしかして俺より詳しい……のだろうか?

「どう言う先生なんですか?」

「優秀、ですよ。向こうの学校を首席で卒業したほどですし」

「おー。主席って事は、やっぱり頭良いんですね」

 学園長が優秀とか天才とか言ってたけど、本当だったんだ。
 それはそれは、ネギ先生の赴任がますます楽しみだな。

「将来は有望でしょうね」

「そうですかー」

 将来有望と言う事は、学生である今も優秀と言う事だろう。
 じゃあこの時期に来るのは、在学中に教師を経験して、来年に備えてるってことなのかな?
 教育実習とかもあるし――外国の学校じゃ、良くある事なのかもしれない。
 聞いた事無いけど。
 その後も話題はネギ先生中心で、気付いたら結構な時間を話し合っていた。

「それじゃ、先生はスプリングフィールド先生については何も知らされてないんですね」

「ええ。名前と、出身とか……ネットで調べても判らなくて、少し不安だったんですが
 今日は良い話を有難うございました」

「いや――こっちの方が、時間を取ってもらって悪かったね」

 いえいえ。
 
「ガンドルフィーニ先生も、自分だけじゃフォローしきれない時は、よろしくお願いします」

 主に言葉的な所で。
 そう言うと、また小さく笑われてしまう。
 ああ、良い先生だなぁ――と。
 なにせ、新任の先生が心配だからと自分で時間作ってこっちに来るくらいだし。

「それじゃ、また時間が出来たら来て良いかな?」

「どうぞどうぞ。今度はお茶菓子用意しときますよ」

 うーん、俺もまだまだだなぁ。
 あんな風に少しでも時間に余裕を持って、周りを気にする事が出来るようになりたいもんだ。
 そう考えていたら、授業終了のチャイムが響く。
 あ、次は1-Bで授業だったっけ。
 準備してないぞ……。







 新任の先生も、遂に来週には来るのかーと。
 最近好きになった放課後の散歩をしながら、考えてみる。
 日は落ちたけど、街灯の明かりの下はまだたくさんの人が歩いている。
 ……中に見知った生徒の顔があるのは、あまり褒められたものじゃないけど。
 そこまで目くじらを立てるもんでもないかと思い、そう注意もしていない。
 もう少し遅い時間に出歩いてたら、注意しないといけないなぁ。

「――――?」

 そんな事を考えながら歩いてたら、服の裾を引っ張られた。

「……ザジか?」

 こくん、と小さく頷いたのは、2-Aのザジだった。

「どうしたんだ?」

 もう一度、裾を引っ張られる。今度は少し強く。

「っとと」

「………………」

 裾を掴んでいたのとは反対の手で、今度はある方向を指さす。
 ん?

「ああ、超包子か――で?」

 もう一度、裾を引かれ、指さしていた手で、今度は何かを食べるようなジェスチャー。
 ああ、なるほど。

「お腹空いたのか?」

 首を横に振られた。
 まぁ、そうだろうなぁ。
 いくら副担だからって、いきなり晩御飯要求されても反応に困る。
 そんな事を考えていたら、今度はさっきほどの食べるジェスチャーの後に、頭を下げられた。

「晩御飯を食べてくれ、って事か?」

 コクコク、と二度頷かれる。
 ……思っちゃ駄目なんだろうが、判り辛い。

「――なぁ、喋った方が早くないか?」

 首を横に振られた。
 いや、喋れること知ってるから良いだろ……と言うのは無粋なんだろうなぁ。

「ま、いいか」

 客寄せか? と聞くと頷かれた。
 曲芸手品部のピエロをやってると言う事で、普通の会話はジェスチャーで行っているというだけでも変わってるしなぁ。
 まぁ確かに、サーカスのピエロってよく考えたら喋らないよなぁ、とその時妙に納得もしたけど。
 でも、授業中もこの調子だから困るんだが……言っても聞いてくれないんだよな。
 成績も悪くなく、クラスの中でも孤立してないからそう強くも言えないし。

「先生」

「おー、そう言えば絡繰もここでバイトしてたんだったな」

「珍しいです、先生が外食とは」

 とは葉加瀬。
 まぁ、そうだなぁ……超包子で食べるのって、何時振りだっけ?
 もうしばらく食べてないからなぁ。

「散歩してたらザジに捕まってな」

 まぁ、確かに外食は珍しいかもしれないな、と自分でも思う。
 前は仕事終わったら部屋に戻ってすぐに次の日の準備して寝てたからなぁ。
 それに、超包子には意図してあまり来ていない。
 自分の生徒が店を切り盛りしてるのだ、先生が来たら気まずいだろうし。
 美味いって評判はよく聞くから、人気があるのはよく知ってるけど。

「それじゃ、何食べるかなぁ」

 空いていた席に座ると、水をもってきたのは絡繰だった。
 よく見るとクーフェイに超も居る……この店って、よく考えたらウチのクラスのバイト多いんだなぁ。
 顔見知りの店だし、頼みやすいんだろうな。
 しかし、

「それじゃ……何食うかな。四葉、すぐ出来るのを一個くれ」

「あ、判りました」

 ……作ってるのもウチのクラスの生徒ってどう思う?
 いや、良いんだけどさ。食中毒とか出なかったら。
 一応、そう言うのは細心の注意を払ってます、っては言われたけど。
 出店許可証も持ってるし。アレって未成年でも許可出すものなのかな?
 許可証の発行って、なんか学園長が一枚噛んでるって噂だったけど。

「最近調子はどうだ?」

「はい、お客さんも定着してきましたし、良い感じです」

「そうかー」

 将来の夢は料理人、と言うだけあって、四葉の料理は美味い。
 中学生で、もう夢を持ってるのも凄いと思うし、その為に努力もして、こうやって店を切り盛りしてる。
 ある意味で皆に見習ってほしく、でも、ある意味で皆みたいにもっと遊ぶべきなんじゃ、とも思う。
 教師としては、どう応援すべきか難しい所である。

「さっきまで新田先生と弐集院先生もいらしてました」

「ありゃ、もう少し早く来ればよかったな」

 先生達、今日の晩飯はこっちで済ませたのか。

「そうですね……先生は、中華はあまり好きじゃないんですか?」

「ん? いや、そうでもないかなぁ」

 チャーハンはよく作るし。
 ……あの男の料理を中華と言って良いのかは不安だが。
 多分駄目だろうな、うん。
 しょうがないじゃないか。
 男の一人暮らしなんてそんなものだ。

「辛いのが苦手なんだよな」

「ふふ――中華料理って辛いイメージがありますもんね」

 と、差し出されたのは彼女が良く作っている肉まんだった。

「これなら辛くありません」

 そう言って本当に楽しそうに笑顔を浮かべる。
 客商売も、ずいぶん板に付いたんだなぁ。
 これなら客も来るよなぁ。うん。
 笑顔は良いもんだ。ご飯が美味くなる。

「おー、すまんな」

 んぐ。

「お、あち……ん、また美味くなったなぁ」

「そうですか? 少し、材料をまた変えてみたんです」

「へー」

 俺は料理をしないからよく判らないけど、この歳でこれだけの肉まん作れるなら、
 料理学校行けばすぐ調理師免許取れるんだろう、と思うくらいに美味い。
 これなら固定客もできるよな。安いし。
 もう少し値段上げても大丈夫だと思うけど、相手にするのは学生だし、ちょうど良いのかもな。

「んじゃ、お代は……絡繰」

「はい」

 傍に居た絡繰を呼び、代金を渡す。
 忙しくて、レジにまで人手が足りてないようだし。

「ごちそうさま。それじゃ、また明日なー」

「はい、先生。よろしければまた来てください」

「先生、それではまた」

 おー、と応え店を出ると……少し離れた所で、ザジがジャグリングしてた。
 糸で繋がった棒を使って重なったコマみたいなのを回すアレだ。

「……おー」

 せっかくなので、その近くに腰を下ろして見ていく事にする。
 自分の体に絡ませるようにしたり、コマみたいなのを投げたりして――素人目にも、物凄くレベルが高いと判る。
 ギャラリーも多いし――アレって、ピエロの練習だろうか?
 それから数分して、投げたコマを手にとって一礼。
 次は足元に置いてあったヨーヨーを取って、それでまた技のようなものを繰り出していく。
 ――レベルが高過ぎて、凄いという事しか判らない。
 多分名前とかあるんだろうな、あのクルクル回すやつも。
 アイツ、もうサーカスとかでも食っていけるレベルなんじゃないか? と思ってしまう。
 それでも練習が必要と言ってたし……奥が深いんだなぁ、芸って。

「凄いんだな、ザジ」

 その後も使う道具を変えての練習は30分ほどで終わった。
 いや、本当に凄いと思うよ。
 あっという間に時間が過ぎたんだから。
 そう声を掛けると、ザジは振り向き――その顔はこの寒空の下でも汗が滲んでいるほどだ。

「ん?」

 首を横に振られる。

「凄くないって?」

 今度は縦に。
 片付けの邪魔にならないように離れて、彼女特有のジェスチャーを自分なりに解釈していく。

「いや、凄いと思うぞ? 最後は拍手までしてしまった」

「…………………」

 それでも、首は横に。

「まだまだ、って所か?」

 その問いには一瞬止まり、首は縦に振られる。
 凄いんだなぁ、お前って。
 今度は、俺が指差された。

「俺?」

 頷かれる。

「俺がどうかしたのか?」

 小さく笑い、自分を指さした後、首を振り、俺を指差す。

「……スマン、喋ってくれ」

 限界だ、と両手を上げると……笑って後片づけに戻るし。
 ――もしかして、俺も凄いって言ってくれてたのかなぁ、と。
 いや、そりゃないな。
 自分の考えに恥ずかしくなってしまう。

「帰りはどうするんだ?」

 送っていくか? と聞くと首を横に振られた。
 続いて超包子を指す。

「ああ、一緒に帰るのか」

 頷く。
 まぁなら大丈夫かな。そう遅くも無いし。

「それじゃ、また明日な」

「………はい、また明日」

 そこは喋るのか。

「風邪ひくなよー」







 数日後の昼休み。

「ああ、私も見てましたよ。凄いですね、彼女」

 何となくザジの話題を振った所、源先生と弐集院先生はあの場に居た事が判った。
 と言うか一緒に見ていて、俺の事には気付いていたらしい。
 ……全然気付いてなかった。
 コンビニの幕の内弁当を箸で突きながら、小さく気付かれないように溜息を一つ。
 いやまぁ、ザジのパフォーマンスが周囲に目がいかないくらい凄かったという事で。

「あの歳であのレベルなら、麻帆良を出る頃には本職顔負けなんだろうね」

「ですねぇ」

 いや、本当。
 アレは凄い……そう素直に言えるくらいに凄い。

「四葉さんも軌道に乗ってるみたいだし、彼女たちの進路は心配無いんじゃないですか?」

「いやぁ、それはまだ判りませんよ」

「まぁ、あの年頃は多感な時期ですからね。今の夢が一年後の夢とも限りませんか」

 そうですね、と。
 でも――出来れば彼女たちには、今の夢を叶えて欲しいと思う。
 源先生の言った通り、一年後がどうなるかなんて判らないけど。
 それでもあんなに楽しそうに自分の夢を話せるんなら、それはきっと本当に“好き”なんだと判るから。

「でも、四葉さんは料理学校に進学とか就職とかで道はわかりますけど、
 ザジさんのような方の就職って、どうなるんでしょうか?」

 ああ。

「本人はサーカスに弟子入りするらしいですよ。それに、それが駄目でもそういうパフォーマンスの学校もありますし」

「そういう学校もあるんだ」

「最近は、そう珍しくも……無いのかな?」

 あんまり聞きませんね、とは弐集院先生。
 ちなみに、俺も調べるまではどうすればいいのか分からなかったです。

「麻帆良にそういう学校ありましたっけ?」

「無いんですよねぇ」

 流石に、大学まで揃ってるこの麻帆良でも、サーカスの学校までは揃ってなかった。
 と言う事は、ザジとは長くて高校まで。
 もしかしたら中学卒業したら麻帆良を出る可能性もある。
 料理の専門学校は高校からあったので、四葉の進学はそっちになるかもしれない。
 中学までは学業の差はそこまで無いが、高校になったらみんなバラバラになるのかもなぁ。
 ……今の2-Aの皆が一緒に居られるのは、後1年。
 判ってはいたけど、時が経つのって早いよな。
 ついこの間中学1年生だったと思ったのに。

「将来を考えるなら高校進学から考えないといけないですからね」

「この時期が一番大事なんですよ、あの子達にとっては」

 そうですね。
 副担任とはいえ、初めて担当のクラスを持ったから判る。
 進学するか、就職するか。何を目指すのかで――あの子達の中学卒業後が決まるのだ。
 プレッシャーになるからそう難しく考えない方が良いのかもしれないけど。
 やっぱり、教師ってのは大変だ。

「教師って大変ですね」

「大変ですよ。今更気付いたんですか?」

 いえ、そんな当たり前の事最初の1年で気付いてました。
 そう答えずに、はは、と苦笑い。
 弐集院先生も源先生も笑ってくれてるので、なんか助けられた気分だな。

「あー、そう考えるともうすでに寂しくなってきますね」

「気が早過ぎますよ、先生」

 そうですね、と笑い淹れてもらっていたお茶を一啜り。

「まぁ、その前に彼女たちが大嫌いな期末テストがあるんですけどね」

 ですねー……そろそろ、テスト内容考えないとなぁ。







「おはよー、絡繰」

「おはようございます、先生」

 そう言って、深々と一礼。
 ここ最近の朝の光景である。
 前はそう畏まらなくていいと言っていたが、もう諦めた。

「本日はいつもより早かったですね」

「お、そうか?」

 同じ時間に出たんだが……体力がついたって事かな?
 息もそう上がらなくなったし。
 ……本当に良い運動になってるのかもな、マクダウェルの迎えって。

「掃除が終わるまで、もうしばらくお待ちください」

「ああ、いい、いい。のんびりしてるから、キチンとしといてくれ」

「はい」

 ……しっかし、

「毎日掃除してるんだな」

「それが私の仕事ですので」

 偉いなぁ。
 ――俺の部屋って、最後に掃除したの何時だっけ?
 今度の休みは、本格的に掃除するかな。
 近くにあった座れそうな岩に腰を下ろし、絡繰を何となく目で追う。
 ……家庭の事情、ねぇ。

「なー、絡繰」

「なんでしょうか?」

「……マクダウェルとは、長い付き合いなのか?」

 どう切り出したものか。

「私が生まれた時からの付き合いです」

「長いんだなぁ」

 生まれた時からかー。
 やっぱり家族ぐるみとかの付き合いなのかな? ドラマみたいに。

「いえ。……先生は」

 ん?
 何時の間にか、その手は止まっていた。

「先生は、どうしてマスターをそんなに気になさるのですか?」

「そりゃ、先生だからなぁ」

 先生ってのは自分の生徒には、ちゃんと登校してほしいもんだ。
 それに、他の先生達にもキチンと見てほしいし。
 マクダウェルがどう言う生徒なのかって……そう思う事は、甘いのだろうか?
 ……そうかもしれないなぁ、とは思うけど。
 それでも、やっぱり俺は、マクダウェルがそう悪い生徒には思えないのだ。
 だから、俺は俺の出来る事をするだけだ。

「こんな朝早くから、何をやってるんだ」

 そんな事を話してたら、話中の人物がドアを開けてきた。
 今日も珍しく、自分から起きれたようだ。
 このまま早起きできるようになってくれると良いんだが……難しいのかなぁ。 

「おはようございます、マスター」

「おはよう、マクダウェル」

「ふん――茶々丸、朝食を用意しろ」

 そんな俺たちを一瞥して、小さな少女は家の中に戻っていった。
 うーん、今度は朝の挨拶の事を言わないといけないのか。




――――――エヴァンジェリン

「凄いな……」

 ふ、そうだろそうだろ。
 私が朝食を摂っている間、あの男が目を付けたのは昨日まで無かった人形だった。
 私の手作り、茶々丸の姉とも言える人形――チャチャゼロ。
 長い時間一緒に居た、家族とも言える存在。

「これ、本当にマクダウェルが造ったのか?」

「ああ」

「器用なんだなぁ」

 両手で持ち上げたり、関節を動かしたりしてる姿は、まるで子供だな。
 何をやってるんだか。

「この服もか?」

「ああ」

 そう感心されると悪い気もしないが、傍から見ると危ない人間だぞ、先生。
 まぁそう思っても、止めたりはしないが。
 あの年上然とした先生のこういう姿は、見ていてなかなか面白い。
 茶々丸が淹れた紅茶を飲みながら、他の人形にも目が行ってるし。

「もしかして、ここの人形全部か?」

「……買ったヤツもある」

「へぇ。これは?」

「それは買ったヤツだ」

「これ」

「それもだ」

 リビングに置いてある人形の半分は買ったヤツだったかな?
 そう考えると、私も相当数の人形を造ったものだ。

「器用だなぁ」

「先生は裁縫などは苦手なのですか?」

「おー、ボタンの付け方も忘れてるなぁ」

 それはどうかと思うが、まぁ男と言うのはそういうものなのかもな。

「ふん、最低限の身嗜みだけは整えといてくれよ、先生」

「……気を付ける」

 一応の嫌味をキチンと受け取ってくれてなによりだ。
 朝食を食べ終え、茶々丸に下げさせる。
 そろそろ学校に行く時間か。

「それで先生、あの天才先生の話はどうなった?」

「ん? ああ、ネギ先生か」

 チャチャゼロを見ながら喋るな。
 お前は、人を見ながら喋るように教わらなかったのか? まったく。

「どうにもなぁ、なんか書類も送り直してもらうのに時間が掛るからって、本人見るまで顔判らないかも」

「……手抜きだな」

「そう言ってくれるなよ。人事の人も忙しいんだろ、きっと」

 ただ単に、アレの情報を必要以上に残したくないだけかもな。
 英雄の息子がこれから何を成すか――魔法界は欠片も見逃す事は無いだろう。
 そして――見られ続けるのだ。監視されるのだ。私のように。

「教師、ねぇ」

「ん?」

「いや、楽しみだな、と」

 私が最後にナギを見たのが15年前……10歳前後の教師なんてあり得るか?
 あり得る筈も無いだろう。それがどんなに賢く、聡くてもだ。
 だから、楽しみだ。楽しみで、楽しみでしょうが無い。
 どのような馬鹿をやらかしてくれるのか。
 そして、その血はどれほど純粋に澄み、どれほど純粋に濁りきっているのか。
 見てみたい、と思う。
 英雄の息子を。
 ナギの子供を。
 私を縛る血族を。

「そうかぁ」

「……先生」

「んー?」

 その顔をやめろ、まったく。

「その顔はムカツクからやめろ」

「……最近容赦が無くなってきたな、マクダウェル」

 当たり前だ。
 ふん……どうせ、どういっても明日も迎えに来るんだろうしな。
 それが当然のようになっている事が、気にくわない。
 お陰で、私は最近は早起きをさせられている訳だし。

「人形遊びが好きな先生には、ちょうど良いくらいだろう?」

「もう少し目上の人を敬おうなぁ」

「敬うほどの人格者か」

「まぁ……そりゃそうだ」

 そこは否定しろよ、先生。
 仮にも教師だろうが……。

「マクダウェルは、将来は人形造りの仕事に就きたいのか?」

「何だ、いきなり」

 話題を振るにしても、もう少し空気を読んで話せ。
 まったく。

「いや。これだけ上手なら、そういう風に考えてるのかな、と」

「ああ」

 まぁ、教師なら当然の考えか。
 来年は高校受験とやらだしな。

「さぁな――そう言えば、考えた事も無かったな」

「そうなのか」

「ああ」

 そうだな呪いが解けたら、まず何をするかな――。
 解くことに躍起になって、その先は考えて無かった。
 ふむ。

「ま、これから考えれば良いだろ。まだ一年あるし」

「そうだな」

 将来、か。
 私に将来なんてあるのかどうかも判らないというのに。

「とりあえず、まずは期末だな」

「……嫌な事を思い出させてくれるな、先生」

「先生だからなぁ」

 その答えになって無い答えに、苦笑してしまう。
 まったく――本当に、変な先生だ。


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