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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 38話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/16 23:15

――――――エヴァンジェリン

 まったく、いきなり夜に呼び出されたと思えば。
 ソファに深く座り、用意されていた茶を口に含む。
 ふぁ……ねむ。

「脱走だと?」

「うむ。京都で以前、お主たちが争った少年と少女じゃ」

 ふむ……思い出すのは、あの獣臭い餓鬼と、戦闘狂の神鳴流。
 あの二人か?

「それでどうして、私を呼んだんだ? ただの脱走なら、関係無いと思うがな」

 逃げるなら、手の届かない場所。
 自分達の仲間の所に行くと思うんだがな。

「どうにも、ただの脱走じゃなさそうじゃ」

「うん?」

「彼らを雇っておった組織は潰れたしのぅ」

 なんだ、そうなのか。
 詠春もそれなりに頑張っているのか。
 まぁ、だからと言って私を呼んだ理由にはならないのだが。

「それで?」

「脱走した理由は不明じゃ」

「……判ったら苦労しないだろ」

 何を当たり前の事を。

「あの子らは、大した罪には問われとらんかった。雇われの子供じゃからな」

「……それで?」

 また甘い事だな、と。
 そうは思うが口には出さない。
 ただただ、呆れてしまう。
 子供だから罪に問わないなどと……魔法使いがどれだけ危険な存在か、認識が甘いと思うがね。 
 ま、いい。

「すぐに自由になれるのに、何故脱走する?」

「さぁね。繋がれるのが嫌か、飼われるのが嫌か、もしくは行かなきゃならん場所があるのか」

「うむ。脱走前は、良くネギ君の事を聞いておったそうじゃ」

 ぼーやの事?
 ……何故?
 確かに京都の一件で顔は割れているだろうが、接点は無いと思うんだがなぁ。
 ただの他人。
 それとも、英雄の息子という肩書に興味を持ったか?
 だが、それでも脱走の理由には弱いだろう。

「だからと言って、私を呼ぶ理由にはならないな」

「修学旅行の一件が終わっても、面倒を見ているようじゃのぅ」

「……乞われたからな」

「ふぉふぉ、なるほどのぅ」

 ――ちっ。
 また小僧の面倒を見れと言う事か。
 くそ。

「こっちに向かってるのか?」

「判らん。どうにも、魔法使いの探索を上手く避けておっての」

 それに、ただの脱走者にそうまで人数を割けておらん、と。
 そうかもな……相手はただの子供2人。
 熟練の魔法使いにとっては、特に問題にならんだろう。
 ……が、一般の人間にしたら脅威以外の何物でもないと思うがな。
 どれだけ自分達が特別で、どれだけ脅威になる存在なのかの認識が甘い。
 表に関わらなければ問題無いなどと――まぁ、今言ってもしょうがないか。
 そんな在り方を、今更変えろと言っても無理だろうし。

「一応、気にかけておいてくれ」

「判った」

 しかしまぁ、今年になって次から次に厄介事が。
 はぁ……こんなにも、静かに暮らすのは難しかったかな。
 去年は、誰にも関わらずに……こんなに、何かが起きた記憶は無いんだが。
 ただ覚えていないだけか?
 まぁ、どちらにしろそう良い記憶は無いか。

「もしここに来たら、どうする気だ?」

「そうじゃな。まずは生きて捕まえる、じゃな」

「……判った」

 生け捕り、ね。
 ――面倒にならなければ良いんだが。
 
「話はそれだけか?」

「うむ。ああ、そうそう」

「む?」

 まだあるのか?
 ソファから上げかけていた腰を、再度落とす。

「最近、木乃香の調子はどうじゃ?」

 ……どうやら、今日は寝るのが少し遅くなりそうだ。







「おはよう、皆」

「おはようございます、皆さん」

 そう、いつもと同じように教室に入ってきたのは、ぼーやと先生。
 それを半分以上眠い頭で、ボーっと聞きながら、欠伸を一つ。
 くそじじいめ……ただでさえ朝は弱いと言うのに、遅くまで付き合わせて。

「それじゃ、点呼をとりますから返事して下さいー。明石裕奈さん」

「はーい」

「朝倉和美さん」

「うーっす」

 うつら、うつら。
 ――本気で眠い。

「椎名桜子さん」

「はいっ」

 ……しかし、逃亡者、ねぇ。
 本当にこの麻帆良に来るんだか。
 まぁ、来たら来たでまずは結界に引っかかるはずだから、気付くのは簡単なんだが。
 問題は、あっちに一応ではあるが神鳴流が居ると言う事か。
 葛葉刀子にも後で話すと言っていたし、私の方でも刹那に聞いてみるか。
 神鳴流に結界を壊す術があるのか。
 そんな事を考えながら、欠伸を一つ。

「寝るな」

 パコ、と。
 そう乾いた音を、プリントを丸めた棒が鳴らす。
 ………………。

「寝ていない」

「なら、ちゃんと返事をしないか」

 ……何?
 教卓の方に視線を向けると、困ったようにこちらを見るぼーやと目が合った。

「呼ばれた記憶が無いな」

 パコ、ともう一度。

「HRが終わったら顔を洗ってくるように」

「くっ……」

 そう言って教卓の方に戻る、その背を目で追う。
 しょうがないじゃないか、私は吸血鬼で、朝が弱いんだから。
 ……そう言えれば、どれだけ楽か。

「はぁ」

 ……案外、吸血鬼だからって、その辺りは妥協しないかもな。あの性格だと。
 堅物め。
 まぁ、そんな事言うつもりもないが。
 このそれなりに居心地の良い時間は――結構、悪くないしな。

「マスター、大丈夫ですか?」

「ああ、問題無い」

 周りから笑われてるの以外はなっ。
 くそ……今日は朝からツいてないな。
 午後からは雨だと言っていたし。
 雨はあんまり好きじゃない。
 服は濡れるし、靴は汚れる。
 長い髪は乾き辛いし、良い事なんか一つも無い。
 はぁ、ともう一度溜息。

「今日は午後から雨だって言ってたけど、傘はちゃんと持ってきたかー?」

 教卓から、最近聞き慣れてきた声が聞こえる。
 机に肘を付き、その様をぼんやりと眺める。
 相変わらず元気だなぁ、と。
 どうしてまぁ、あんなに元気でいられるんだか。

「濡れるの嫌だろうけど、気を付けるようにな? こんな時は事故多いから」

「はーい」

「…………ああ」

 クラスの連中の元気な返事に隠れるように、小さく返事をする。
 まぁ、事故くらいでどうこうなるような弱い身体じゃないんだが。
 
「それじゃ皆さん、今日も元気に頑張りましょうっ」

「はいっ」

 ……元気な事だ。
 そう呟き、もう一度欠伸。
 眠い……一時間目はなんだったかな?
 寝ようかな、と考えていたらぼーやは教室から出ていき、先生は残ったまま。
 あー……。

「茶々丸」

「何でしょうか?」

「一時間目は、もしかして数学か?」

「はい。先生の授業です」

 ……今日は、どうにもツいてないようだ。
 もう一度、今度は溜息を吐いてしまう。
 授業の前に、顔を洗いに行こう。







 その日の授業が終わる頃には、曇天の空が広がっていた。
 これは、もうすぐ降るかもなぁ、と。

「うわー、帰るまでもってくれないかな」

 そう言いながらこっちに来たのは、明日菜と木乃香、刹那に龍宮。
 ……まぁ、いつもの面子だ。
 何でこいつ等は、最近私の机に集まるんだか……動かなくてすむから助かるが。

「厳しそうやねぇ……結構雲厚いみたいやし」

「うえ……」

 女がそんな声出すなよ、と。
 まったく。だからお前は、タカミチから相手にされないのかもなぁ。

「どうする? 今日はまっすぐ帰るか?」

「へ?」

 いや、そこでそう不思議そうな顔をされてもな。

「雨が降るなら、今日はウチに来ないだろ?」

「……驚いた」

 だから、何でそんな顔をする。

「何がだ、龍宮真名?」

「いやー……うん。別に?」

「……気に障る奴だな」

 何か変な事言ったか?
 別に言ってないと思うんだがな……。

「でも。折角ですから、今日もエヴァンジェリンさんの家に行きましょうか?」

「せやね、せっちゃん。今日も真面目に修行修行」

 む……。

「どうした? 今日はやけにやる気だな」
 
「そかな?」

「偶にはそんな気分なんだろうね」

 なんだそれは。
 大体、いつもこれくらいやる気を出せ、と。
 まぁ、モチベーションなんてその日で違うんだろうが。

「真名も来るの?」

「……そして、なに当たり前のようにウチに来ようとしてるんだ、お前は」

「えー」

「駄目だからな?」

 なんでよー、と言う声は無視。
 当たり前だ、バカ。
 魔法に関わらないとか言ってたくせに、何で魔法の修行場に来ようとするんだ。

「良いじゃないか、別に」

「良い訳あるかっ」

「私が相手してるからさ」

 そして、何をさりげなくお前も来ようとする。
 いつからウチは、暇人の集合場所になったんだ?
 まったく。

「そんな目で見ないでくれないかい?」

「見られたくなかったら、どうすればいいか判るだろ?」

「おっけー、静かにしてる」

「ち、が、う!!」

 椅子から立ち上がり、その頬を摘んでやる。
 こ、の、アホはっ!

「いひゃいいひゃいー」

「あら明日菜さん、楽しそうですわね」

 そして、何故か通りかかった雪広あやかから反対側の頬を摘まれていた。

「ひゃ、ひゃんでーー」

「……柔らかいですね」

「ああ」

「ひゃなしへーー」

 むぅ。

「マスター、楽しそう」

「ああ、これは存外悪くないな」

「……止めてあげなよ」

 それもそうだな。
 そう龍宮真名から言われ、その頬から指を離す。

「ひ、ひどい……」

「ごめんなさい、明日菜さん」

 お前、絶対悪いって思ってないだろ?

「すまないな、明日菜」

 まぁ、私もだけど。
 しかし柔らかかった……。

「また今度抓らせてくれ」

「いやよっ!!」

 そ、そんな泣きそうになってまで言わなくても……そんなに痛かったんだろうか?
 そう酷くはしてないんだがなぁ。
 蹲って、その頬を手の平で揉みほぐしている明日菜を横目に、雪広あやかに視線を向ける。

「どうした?」

「いえ、明日菜さんが楽しそうでしたので」

「楽しくないわよっ」

「……よしよし」

 その明日菜は、木乃香に頭を撫でられていた。
 面白いよなぁ、コイツ。

「それではまた明日、エヴァンジェリンさん」

「ああ……またな」

「って、あんたホントに私のほっぺた抓りに来ただけ!?」

「ええ、楽しそうでしたので」

「き、今日と言う今日は許さないわよっ」

 ほら、やっぱりそう痛くなかっただろ。
 すぐ復活したし。

「はいはい。明日菜さんも、また明日」

「むー……」

 そう膨れるなよ、まったく。

「判った判った。ウチに来て良いから、そう怒るな」

「ほんと?」

「そのかわり」

「うん、静かにしてるっ」

 よろしい。
 そう頷き、カバンを取る。

「帰るぞ、木乃香、刹那、茶々丸」

「あれ、私は?」

「……明日菜の面倒を頼むぞ、龍宮真名」

「りょーかい」

 はぁ、と小さく溜息。
 賑やかな連中だ、まったく。

「明日菜さん、今日はエヴァンジェリンさんの家に遊びに行くのですか?」

「ん? ええ」

「そうですかそうですか」

 ……やけに機嫌が良くなったな。

「どうしたの、あやか?」

「いえいえ、別に、です」

「いや、急にそんなに機嫌が良くなられると」

 とは刹那。
 誰だってそう思うよなぁ。
 木乃香だけはニコニコ笑ってるけど……まぁ、例外もいるよな、うん。

「う……ま、まぁこちらの事です」

 何なんだ?
 結局、その事は言わずに立ち去る雪広あやか。
 うーむ。

「あ、そっか」

「ん? 何か知ってるの、木乃香?」

「あー……ちょっと」

 ?

「どうしたんだ?」

「いやね? ウチが居ない時、ネギ君の晩ご飯は向こうで食べてるらしいんや」

「……あー」

「なるほどねぇ」

「うわ、真性だ」

 真性言ってやるな、友達だろうが。

「雪広さんとこか、のどかんとこで」

「うっわー……本屋ちゃんも頑張ってるんだ」

「楽しそうです」

 そうか?
 まぁ、お前は最近料理に興味持ち始めたからなぁ。

「お礼代わりに、今度作りに行ったらどうだ?」

「……迷惑がられるかと」

 まぁ、だろうがな。

「そこはちゃんと分別はあるのか」

「御迷惑はかけられませんので」

「ふん。まぁ、お前の好きにすると良いさ」

 別に、お前を束縛するつもりも無い。
 お前の時間はお前が好きに使うと良いさ。

「行くぞ、お前ら」

「はーい」

「あ、待ってよエヴァー」

 ……はぁ、しかし――あ、そうだ。

「刹那」

「ん?」

「後で話がある」

 そう言えば、昨晩の事を言ってなかったな。

「? 判りました」

「えー、せっちゃんと2人で内緒話?」

 教室から出ると、木乃香からそう言われた。
 内緒話、と言うほどの事でもないんだが。

「気になるなら、後でお前にも教えてやるよ」

「へ? あ、ほんまに?」

「ああ。龍宮真名は、もう聞いてるかもしれないがな」

 そう言うと、ん? と言う顔をされた。

「じじいから、聞いてないのか?」

「あ、ごめん。まだ聞いてないかも」

 なら、ちょうど良いか。
 危険かもしれないし、明日菜にも釘を刺しておかないといけないしな。
 家に帰ったら、一回その事を話すか。
 まぁ、ぼーやが狙いだろうから巻き込まれない限りは大丈夫だろうが……。
 案外危なっかしいからな、コイツは。
 外に出ると、雨が降っていた。

「うわぁ」

「こりゃ、止みそうにないね」

 だなぁ、と。

「茶々丸、傘は?」

「用意してあります」

「なら帰るか」

「あ、誰か入れてくれない?」

 まったく、お前は……。

「はは、私と一緒に帰るかい?」

「ごめんねー、真名」

「いいよいいよ」

 はぁ……傘で雨を受けながら、溜息を一つ。
 私はあまり、雨が好きではない。
 そんな雨の中に足を踏み出し……水溜りを踏んでしまう。

「うわ」

「楽しそうね、エヴァ」

「………………」

 私は、雨が嫌いになった。




――――――

 雨である。

「結構振りそうだなぁ」

 そう曇天の空を見上げながら、呟く。
 雨は好きだ。
 どうして、と聞かれたら困るけど。
 何となく好きだ。
 賑やかな麻帆良の街が静かになるし、何となくだけど楽しい気分になれる。
 こう言うのは、多分子供っぽいんだろうなぁ、と思うがこればっかりはどうしようもない。
 帰路につきながら、そう思ってしまう。

「でもまぁ、明日の朝には止んでくれると良いんだけど」

 流石に、雨は好きだけど通学の時には面倒だろうからなぁ。
 そんな事を考えながら歩き、偶に見かける水溜りには踏んでしまう。
 ……靴が濡れてしまう、と言うのは判ってるんだけど、どうしても。
 まぁ、予備の靴はあるから良いんだけど。
 しかし、今日の晩飯はどうするかなぁ。
 それに、そろそろテストの範囲も考えないといけないし。
 むぅ……やる事が結構あるなぁ。
 最近はネギ先生も体調が悪いと言うか、疲れが溜まってるみたいだし。
 少し仕事を回し過ぎたかな?
 まだ10歳だもんなぁ。生徒の成績の管理くらいは、と思ったけど、少し仕事が多かったかな?
 テストの準備も、授業の準備も、他にも色々担任としての仕事はあるし。
 うーむ。

「あ、先生っ」

 ん?
 声は、少し離れた所からだった。
 向こうから駆けてくるのは――。

「那波か?」

 それに、その後ろには村上。

「傘もささないでどうしたんだ?」

 こちらからも駆け寄ると、その理由が何となく判った。

「どうしたんだ、その犬」

「道に倒れてたんです」

「なに?」

 その胸に抱いていた犬を受け取る。
 あ、服が……ま、まぁ良いか。

「息はあるみたいなんですけど」

「そうみたいだな」

 この辺りに動物病院って……普段行かないから、判らないな。
 ん?

「怪我してるのか」

「あ、右足の所を」

 気付いたら、右手に少し血が滲んでいた。
 俺のじゃないから、多分この犬のだろう。
 だから倒れてたのかな?
 それに、この雨だしなぁ。

「……どうしましょうか?」

「ん。そうだな……」

 一番は、やっぱり動物病院を探して連れて行くのが良いんだろうけど……。
 こんなに濡れてたら、やっぱり動物でも体温とか下がり過ぎて駄目なんだろうな。

「……ここからだと、教員寮が近いから、まずは温めた方が良いだろうな」

 それから、動物病院に電話して来てもらうか、連れて行くかするか。
 寮って動物禁止だったよなぁ……うは、また新田先生に頭下げないとな。
 うぅ、最近もう迷惑掛けっ放しだな。
 スイマセン、と先に一度心中で頭を下げておく事にする。

「なら、急ぎましょう先生」

「……いや、那波達は女子寮だろ?」

「ですけど……」

 流石に、職員寮に生徒を入れる訳にはいかんだろ。
 しかも女子生徒。
 部屋に入れたりしたら、学園長室に直行だろうなぁ。

「明日ちゃんとどうしたか教えるから」

「先生、見つけたのは……」

 うーん。

「それに、そんなに濡れてたら、風邪ひくぞ?」

 男性職員寮に、女物の服なんて置いてないぞ、と。

「あ」

「生徒に風邪をひかれる訳にもいかないしな」

「……それだったら」

 ん?
 そう言って差し出されたのは、携帯だった。

「私の番号です」

 あ、そう言う事ね。

「判った。落ち着いたら連絡を入れるから、それで良いか?」

 俺も携帯を取り出し、那波の携帯に表示されていた番号を片手で入力する。
 傘も持っているってのに……っと、よし。

「……それでは先生、その子をよろしくお願いします」

 と、頭を下げられた。
 いやいや、そんなしなくて良いから。

「おー。村上、帰ったらすぐ風呂を用意してやってくれな?」

「は、はいっ」

 びしょ濡れの那波を村上に任せ、俺は帰路を若干急ぐ。
 しかし、どうしたんだろう?
 車――と言うより、自転車にでも轢かれたのかな?
 傷自体は……どうだろう。
 骨は折れてないみたいだけど、血が出てるからなぁ。
 傘でこれ以上濡れないようにして、俺自身が雨に濡れながら早足で進む。
 電話帳は、確か寮に置いてあったよな。
 そんな事を考えていたら、

「すんません~」

「ん?」

 そう言う声と共に、道を塞がれた。

「えと、どうかしたのかな?」

 びしょ濡れなんだけど、と。
 傘もささずに、白い着物のような服を着た少女が立っている。
 ……それが、やけに現実味が無いのは、なんでだろうか?
 ああ、その服が見掛けないからか。
 着流し、と言うんだったか。
 時代劇でよく見かけるような着物。
 少女は、それを着ていた。ぶかぶかのをだ。
 中学生だろう。多分俺の受け持ちよりも下の学年だと思うけど……まぁ、鳴滝姉妹もいるし、一概にはそう言えないか。

「その子」

「ん?」

 指差されたのは、腕の中の子犬。

「あ、君の?」

「んー……まぁ、そんな所でしょーか?」

 ?
 なんか、妙な言い回しだな。
 それに、なんか独特な喋り方だし。
 調子狂うなぁ。
 そう苦笑してしまう。

「傘は持ってないのか?」

「手持ちが少のぅてですね~」

「あ、そうなのか?」

 そう言い、とりあえず持っていた傘を、差し出す。
 もうこんなに濡れてるしなぁ。

「ええんですか?」

「まぁ、それ以上は濡れないだろ?」

「……これ以上無いくらい濡れてますけどね」

 そう言われると、どうしようもないな、と。
 傘を渡し、子犬を……。

「病院に連れて行った方が良いんじゃないか?」

「いえいえ~、大丈夫ですえ」

 そうか?
 こんなに濡れて、怪我までしてるんだけど。
 首輪もしてないし、手持ちのお金も無いって言ってたから……もしかして野良かな?
 うん、それだと辻褄合うな。

「まぁ、立ち話も何だし、一回ウチに来る? タオルくらい貸せるけど」

「ええんです? お金持ってないですよ~?」

「ああ。教員寮だけど、それで良いなら」

 温かい飲み物も出せるしな、と。
 そう言うと、少女はにっこりと笑う。
 無邪気、と。
 そう表現するのが一番な、笑顔。
 それにどこか違和感を感じるのは……なんでだろう?

「この子、どうしたの?」

「んー……ちょっと、事故に巻き込まれそうになったの、庇ってくれたんですよ~」

 そ、そうか。
 ちょっと悪い事聞いたな……でも、そう酷い怪我じゃないみたいだし、良かった、のかな?
 まぁ素人判断は危ないか。

「センセーなんです?」

「おー。あ、寮はこっちな」

 傘をさした少女に道を教えながら、帰路に就く。
 ちなみに、子犬は上着でくるんで俺が持っている。
 ……コレ、クリーニングで大丈夫だよな?
 ちょっと不安だけど……まぁ、仕方ないか。

「センセーなら、ネギってボン知りません?」

「ボン?」

「あ、坊やって事です」

 ああ。

「ネギ先生の知り合いなのか?」

「ええ。ちょっと話したい事がありまして」

 そうか、と。
 まぁ詳しく聞かない方が良いかな?
 個人的な事だろうし。

「なら、後で連絡を入れるよ」

「あ、知ってはります?」

「おー」

 この子の事が落ち着いたらな、と。
 子犬もこのままじゃ問題だし。
 獣医に連絡入れて、ネギ先生に連絡入れて、那波に連絡入れて。

「むぅ」

 今日は忙しくなりそうだな、と。
 ……こりゃ、仕事には手がつかなさそうだ。





――――――チャチャゼロさんとオコジョ――――――

「兄貴、少し息抜きしたら?」

「う、うん。そうだね」

 そう言って、石畳の床に腰を落とすネギの兄貴。
 ここん所、ずっと根詰めて……倒れねぇと良いけど。
 学校の仕事が終わったら、まっすぐ姐さんの“別荘”か、仕事だもんな。
 このままじゃ倒れちまうぜ。

「オイオイ、全然駄目ジャネーカヨ」

「す、すいません」

「ヤッパ、足止メル奴ガ必要ダナァ、オ前」

 でも、仮契約をするにも相手がなぁ。
 明日菜の姉御なら戦力的には問題無さそうなんだけど、姐さんが絶対良い顔しないからなぁ。
 うーむ。

「マ、ソレハソノ時考エルカ。魔法ハチャント撃テルヨウダシ」

「はいっ」

 上級古代呪文“雷の斧”をこんな短期間で完璧に使いこなすなんてなぁ、やっぱ兄貴は凄いぜ。
 でも、チャチャゼロさんレベルの相手だと、やっぱり動きについていけないんだよなぁ。
 オレっちは足止めなんて出来ねぇし。

「オ前ハ1人ジャ戦エネーッテ、忘レンナヨ?」

「……はい」

「落チ込ムナヨ。ソレハ悪イ事ジャネェンダカラ」

「え?」

「ソレモ1ツノ……マ、ソコカラ先ハ、俺ガ言ウコトジャネェナ」

 ケケケ、と笑うチャチャゼロさんに、兄貴と2人で首を傾げてしまう。
 どういう事だろ?




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