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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 37話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/15 23:56
「おはよーせんせっ」

「ん?」

 職員寮から出た瞬間だった。そう声を掛けられたのは。
 何で、と。
 そう思ってしまっても、まぁ、おかしくはないだろう。
 だって、ここは男性職員寮で、中学女子寮とは離れた場所に建っている。
 昨日のマクダウェルと絡繰とは違い……。

「お、おはよう近衛、桜咲」

 近衛と桜咲は、こちらに来るのはかなりの遠回りになるのだ。
 しかも、電車を使ってるらしいから、早起きもしないといけないだろう。

「どうしたんだ?」

「んー? まぁ、色々と?」

 なんだそれは、と。
 そう苦笑してしまう。
 まったく、相変わらず自由と言うかなんというか。

「おはようございます、先生」

「おー。それで、今日は一体どうしたんだ?」

「あー……まぁ、ちょっと」

 こっちもか。
 とりあえず、制服着てるから学園には行くんだよな。

「誰かに用事か? アレなら呼んでくるけど……」

「あ、いえ。せんせに用があったんで」

「俺に?」

 んー……なんだろう?
 学園の用事なら、ネギ先生に言うだろうし……また相談事だろうか?
 桜咲と一緒の所を見ると、そうかもしれないな、と思ってしまう。
 また何かあったんだろうか?

「歩きながらで良いか?」

 遅刻は……まぁ、まだ時間には余裕があるけど。少し早めに出たし。
 だからと言って、立ち話をしている時間は無い。

「はい。歩きながら話しましょ」

「? 何か、ご機嫌だな」

 放っておいたら、スキップでもしそうなくらい?
 そう言うと、楽しそうに、声を殺して笑う。
 そんな肩を振わせんでも……何か変な事言ったかな?
 その隣の桜咲に視線を向けると、こっちは何か困ったような顔で小さく頭を下げてくる。
 うーん。

「何があったんだ?」

「はい?」

「いや、機嫌が良いのは何でかなぁ、と」

「えへへ。せんせ、今日のお昼はどないされるんです?」

 昼?

「あー……まぁ、その、なんだ」

 むぅ、教師としては、あまり言いたくない事だなぁ。
 特に弁当を作っている生徒に対しては。
 そう内心で苦笑し、

「今日もコンビニ弁当だ」

 そう言えば、昨日は久しぶりに出前取ったなぁ。
 今日もそうするかな。
 何か、出前の割には安かったし。腹にたまったし。
 まぁ歩きながら考えるか。

「あ、出前取るかも」

「いやいや、そーじゃなくてですね」

「ん?」

 いや、昼の事聞いてきたの近衛じゃないか? と。
 そう言うと、また楽しそうに肩を振わせ、首を横に振る。
 こっちは首を傾げるしかないんだけど。

「どうしたんだ?」

「んー、もうちょっと待ってて下さい」

 ? なんだと言うんだろう?

「何があったんだ、桜咲?」

「あ、せっちゃん内緒にな?」

「……だそうですので」

 むぅ。
 まぁ、楽しそうだし……良い、のかなぁ?
 でもまぁ、他の先生方に見られずに良かった。
 まさか生徒が二日連続で寮を訪ねてくるなんて……新田先生に見られてたら、と思うとゾッとする。
 怒られるのとは違うんだけど――風紀的な問題もあるからなぁ。
 ま、後で行ってくれるみたいだし良いか。
 という事で教師らしい事でも話すとするかな。

「麻帆良祭終わったらテストだけど、ちゃんと勉強してるか?」

「う」

「は、はは」

「……あまり聞きたくない返事みたいだなぁ」

 ちゃんと復習しとけよー、と。

「勉強なんて、一夜漬けじゃ身にならないからな?」

「はぁい」

「わ、わかりました」

 まったく。

「桜咲は英語と科学の方の点数が少し落ちてきてるぞ?」

「うぇ!?」

「近衛は数学の方だったかな? こんなのはすぐ判るんだからなー」

 麻帆良祭後のテストで点数悪かったら、夏休みの課題増やすか? と。
 まぁ、そこまで鬼ではないけれど。

「うぅ、もっとこー……楽しい話しません?」

 ちょっと言い過ぎたかな?
 そう心中で呟き、苦笑してしまう。
 やっぱり朝から勉強の話は嫌だったか。
 でも人前で言うよりは良いだろ。これも教師の仕事だし。

「楽しいなぁ。例えば?」

「んー」

 そう小さく声を出し、その細い指をあごに当てる近衛。
 
「せんせ、何で料理せえへんのです?」

「……何か、今日はやたら料理の話をするな」

「そですか?」

 昼の事と言い、今と言い。
 別に良いんだけど。

「朝起きるのが苦手でなぁ」

「そうなのですか?」

「おー。起きようと思ったら何時でも起きれるんだけど、寝起きがちょっとなぁ」

 桜咲は朝強そうだなぁ、と。
 どうにも、立ち上がりが悪いんだよな、この頭は。
 その癖、夜遅くまで起きてるし。
 悪い悪いとは思ってるんだけど、この生活だけはどうにも直せない。

「休みの日とかには、結構遅くに起きるんです?」

「どうかな? 大体8時か9時までには起きるかなぁ」

「はー……せんせですから、何か休みの日も早起きかと思いました」

 いや、そんな事はないんだけどな、と苦笑してしまう。
 この子は俺をどんな風に見てるんだろう? と。

「流石に、休みの日はゆっくりしたいしなぁ」

「はは、そですね」

「最近は暖かいしな」

 昼寝もしたいくらだ、と。

「寝るのが好きなんですね、せんせは」

「だなぁ。今度一回、丸一日寝てみたいな」

「うわ、だらしなっ」

 けどまぁ、仕事し始めたら誰だって一回は思うんじゃないだろうか?
 寝過ぎたら頭が痛くなるって聞いたことあるけど、本当なのかな?
 きっと幸せなんだろうなぁ。

「でも、ウチも一回寝てみたいかも」

「そうですね。気持ち良さそうです」

「はは。学生の頃からそんな事を思っちゃ駄目だろ」

「そうです?」

「学生時代なんて、後4年で終わるんだぞ? 寝るのはその後で良いと思うけどなぁ」

「なるほど」

 まぁ、大学までいけばもっと伸びるんだけど。
 そこは、今言う事じゃないだろ。
 流石に朝から進学の話なんかしてもつまらないだろうし。

「でも、今日は良い天気ですね」

「だなぁ」

 週末から雨だなんて信じられないくらいに。
 けど、最近の天気予報は当たるし、降るんだろうなぁ。
 雨の日の散歩っていうのも、結構好きなんだけど。

「あ、ちょぅストップ良いですか?」

「ん?」

 えっと……。

「どうしたんだ?」

「えと、待ち合わせ、です」

「待ち合わせ?」

 そう言われ、止まった先に居たのは、マクダウェルと絡繰だった。
 なんだ、ここで合流するつもりだったのか?

「おはようございます、先生」

「おはよう、絡繰、マクダウェル」

「ふぁ……おはよ、先生」

「こらこら、せめて口は隠して欠伸しろ、マクダウェル」

「……ふん。待ちくたびれたんだよ」

 まったく。
 相変わらずだなぁ、お前は。
 そう心中で思い、苦笑。
 ふと思い出したのは、昨日のグッドマンとの会話。
 先は長そうだなぁ、と。

「……なんだ?」

「いや。それで、今日はどうしたんだ? 何か近衛が迎えに来たんだが」

「聞いてないのか?」

「教えてくれないんだよ」

 肩を竦めてそう答える。
 内緒らしいし。 

「神楽坂は?」

「明日菜さんは、今日は日直らしいです。ネギ先生と一緒に、先ほどまでおられたのですが」

 そうだったっけ?
 あー、そう言えばそうだったかも。
 流石にそこまでは把握してなかったな。

「それは悪い事をしたな」

 もう少し早く出れば良かったかな。
 しかし、どうしたんだろう?
 何かあった、と言った風じゃないんだが。
 別に問題があったようじゃないし……本当に何があったんだか。
 首を傾げるが、まぁ判る筈も無い。

「それじゃ、行くか?」

 このまま立ち話してたら、遅刻してしまいそうだし。
 今日は一時間目から授業が入ってるんだよなぁ。
 それに、今日は弁当買ってないや。
 途中で別れてから買いに行くかな……すぐ近くにコンビニあるから、便利だよなぁ。

「あ、そや」

 そう言って、周囲をきょろきょろと見渡す近衛。
 ?

「どうしたんだ?」

 周りには、若干の生徒達は居るけど見知った顔は無い。
 まぁまだ早い時間だしな。

「え、えっとですね……」

「ん?」

 何でそう畏まるんだ?
 あー、マクダウェル達と合流したから何か言うのかな、と。
 俺としては、そんな軽い感じで次の言葉を待っていた。
 何かの相談か、そんな所だろう、と。
 別に何を言われても、あまり驚かないように、顔に出さないように努めよう、と。
 少しだけ気を引き締めて、次の言葉を待つ。

「せんせ、いつもありがとうございます」

 そして、そう言って頭を下げられた。
 ……いやいやいや。
 まったくの予想外だ。
 相談事どころか、生徒から礼を言われるなんて……想像もしてなかった。

「ど、どうしたんだ? いきなり、そんな……ほら、頭を上げろ」

 そう言うと頭を上げ、今度はカバンに手を入れ、

「んでですね、これ、お礼です」

 差し出されたのは、可愛らしい包みに入れられた、小さな……弁当箱、だと思う。
 一瞬、本当に思考が止まった。
 え? どういう事だ?

「え、っと……」

「ほら、色々相談とか乗ってもらったやないですか」

 そう指を立て、まるで言い訳をするかのように早口に言われる。
 目を逸らすな、目を。
 一体何の事かと思ったら……目の前でこうも慌てられたら、逆にこっちが落ち着いてしまう。
 あー、びっくりした。
 いや、今もびっくりしてるんだけどさ。
 まさか生徒からお礼をされる日が来るなんて、と。

「いや、それは……あー、っと」

 どう言えば良いか、口が上手く回らない。
 だってしょうがないじゃないか、生徒から弁当だなんて……。
 カリカリと頭を掻いて、俺も少し落ち着かない。
 嬉しいし、困ったし、どうしたもんか、と

「……すまないな」

 とにかく、まずは差し出された弁当を受け取る。

「ありがとう」

「い、いえ……」

 そして、お礼を言っておく。
 右手で弁当を受け取り、カバンと一緒に持つ。
 流石に、カバンには入らないので。
 しかし……うーむ。

「でもな、近衛?」

「は、はい?」

「その、なんだ。あんまりこう言う……のは、しない方が良い」

「え?」

 どう言えば良いかな……こう言う時、本当に俺は要領が悪いんだと思う。
 嬉しいし、出来るならもっと言葉を繋げて礼を言いたいくらいだ。
 でも、俺は教師で、近衛は生徒なのだ。

「まぁ、そのな? 生徒が教師にこういうのは、その……あんまり良くないと思うんだ」

「……あ、は、はい」

 う。判ってる。
 俺が悪いんだって判ってる。
 だけど、それでも言わないといけない事なのだ。
 嫌われる、と判ってても――それが、俺の仕事なんだから。
 だから……そう落ち込まれると、物凄く、俺も、どう言えば良いのか判らなくなってしまう。

「先生。迷惑だったでしょうか?」

 黙ってしまった近衛に代わり、桜咲から聞かれた。
 いやいや、と首を横に振る。

「嬉しい」

 喉がつっかえてしまって、言葉が上手く出ない。

「凄く嬉しい」

 もう一度。
 たった一言じゃ、全然足らないので、もう一度言う。

「物凄く嬉しい」

 本当に、そう思う。
 世間体とか、大人のしがらみとかあって、近衛を傷つけてしまった。
 嫌われてしまったんだと思う。
 でも、ちゃんと本心を言っとかないと。

「ありがとう近衛。味わって食べるからな?」

 そう言い、俯いてしまった頭に、手を乗せポンポン、と軽く叩く。

「でも、弁当とかは、もう作ってきちゃ駄目だからな? お礼なんて、良いんだから」

 俺が好きでやった事なんだし。
 生徒の頼み事を聞けるのは、教師として嬉しい事なんだし。
 頼られてるって、実感できるから。
 それは、俺達教師にとっては……それだけでも、とても大切な事なんだから。

「だからだな……」

 あー、と。
 言葉が詰まる。
 口下手だなぁ、俺。

「そう落ち込むなよ……迷惑じゃないから、な?」

「……ほんと、ですか?」

「ああ。本当だ。嬉しいのも、本当だからな?」

 こ、困った。
 だってまさか……生徒から弁当だなんて。
 受け取ってしまったし。
 は、初めてなんだけど……やっぱり、これって拙いんだろうか?
 ……今日の昼飯は、屋上ででも食べるかなぁ。

「えへへ」

 ほっ――やっと笑ってくれたか。
 そう内心胸を下ろし……。

「先生」

「ん?」

 ……下ろしたら、絡繰から声を掛けられた。

「どうした?」

 そして、差し出されたのは……青い無地の包み。
 ……え?

「お弁当です」

「えー……っと」

 その隣、低い位置にある顔を見る。
 ニヤニヤ笑っていた。
 うっわ、楽しんでるよ。俺が困るの見て楽しんでるよ。

「どういう、事かな……?」

 困った。
 本当に、本気で、困った。
 近衛だけだって、胸一杯なのだ。
 そこに絡繰からもだなんて……困る。
 うぅ……。

「マスターが、いつもお世話になっておりますので」

「いや、だからな? それは別に気にしなくても良いんだが……」

「ですが、お礼はするものです」

「う……」

 いや、そうなのかもしれないけどさ。
 その心掛けは正しいと思うけどさ……。
 さっきまで落ち込んでいた近衛も、興味深げにこっちを見上げてくる。
 マクダウェルはにやにやと笑い、桜咲は若干引き攣った笑み。
 しかも、ここは通学路。
 いくら早い時間だからって、生徒の数がゼロな訳じゃない。
 ……他の教員がいつ通るかも判らないし。

「あ、ありがとう」

「いえ」

 その弁当を受け取り……今日って、何か弁当の日?
 いきなり二つも貰ったんだけど。

「だがな、絡繰? 近衛にも言ったけど」

「……御迷惑だったでしょうか?」

「いや、だからな?」

 迷惑じゃないんだけど、と。
 えーっと……どう説明したものか。
 
「あのな、近衛、絡繰?」

「はい?」

「なんでしょうか?」

 あー、まったく。

「こう言うのは、さっきも言ったけど、あんまり良くないからな?」

 まず、それを言う事にする。
 だって、お礼が欲しくて相談に乗った訳じゃないんだし。
 マクダウェルの事にしたって、別にこんな事をしてもらおうだなんて考えていなかった。

「でも、ありがとうな?」

 だから、凄く嬉しかった。
 うん。
 本当に……嬉しいのだ。

「最初からそう言えば良かったんじゃないのか?」

「……あのなぁ」

 そう言えればどれだけ楽か。
 しょうがないじゃないか、こう言うのを良く思わない人だって多いんだから。
 俺だけならまだ良い。
 でも、きっと近衛と絡繰も良く思われないのだ……こう言うのは。

「ほら、急ぐぞ」

「判った判った」

「はい」

 返事は、2人。
 近衛と絡繰からは、無い。

「ねぇ、せんせ?」

「ん?」

 歩きだした一歩目で、そう声を掛けられた。
 うぅ。

「照れてます?」

 ……しょうがないじゃないか。
 生徒から弁当だなんて、初めてなんだから。
 嬉しいに決まってる。

「行くぞ、ほら」

 ポン、と軽くその頭を叩く。

「はぁい」

「絡繰も」

「………………」

 返事は、無い。
 なんで?

「絡繰?」

「先生」

「ん?」

 そこで無言になられても困るんだが。
 変な事は……まぁ、沢山言ってるけど。

「どうした?」

「いえ」

 そう言って、差し出されたのは……その頭。
 何で?

「どうしたんだ?」

 困ったので周囲を見渡すと、マクダウェルはにやにやと、桜咲は困ったように笑ってた。
 ……まさか、催促される日が来るとは。
 こう言うのって、生徒的にはどう思うんだろう? とか軽く現実逃避。
 そんな事を考えながら……その頭を軽く叩くように撫でてやる。
 近衛にしたように、である。

「……えっと」

「では、行きましょう」

「お、おう」

 ……何なんだ、一体。
 むぅ。







 昼休み、そそくさと職員室を出て屋上に向かう。
 いや、流石に生徒の弁当を職員室でなんて勇気は俺には無い。
 屋上に続くドアを開けると、涼しい風が頬を撫でる。
 ふぅ。

「さって」

 食べるかなぁ、と。
 他にも屋上で食べてる生徒は居るので、鳴るべき目に付かない場所のベンチに座る。
 まずは……どっちから食べるかなぁ。

「おや、今日は豪勢なんだね」

「……龍宮。どうしたんだ?」

「いや、木乃香から聞いたよ?」

 それだけで、小さく溜息が出てしまった。
 俺の考え過ぎなのかな、教師と生徒の関係って。
 そんな事はないと思うんだけどなぁ。
 ちょっと、自分の価値観が信じられなくなりそうである。
 そんな事を考えていたら、隣に龍宮が座る。

「んー……まぁ、もう遅いだろうけど、あんまし皆には言わないでくれな?」

「はは。そこはちゃんと判ってるよ、私はね」

 そうかい。
 ならいいや……もしもの時は、俺が怒られよう。
 こう言うのって、やっぱり拙いだろうし。
 ああ、新田先生ごめんなさい。
 そんな事を考えながら、まずは無地の青色……絡繰の弁当から包みを解く

「それはどっちのなんだい?」

「……そこは内緒にしとく」

「懸命だね」

 あの調子じゃ、どっちを先に食べたとか聞かれそうだし。
 俺としても、別にどっちを比べるつもりもないし。
 折角の生徒が作ってくれた弁当なんだ、味わって食べなきゃ罰が当たる。
 そー言うのは考えないで食べるのが一番だ。

「いただきます」

 手を合わせて、まずは絡繰に感謝を。
 続いてふたを開けると……。

「おー」

「美味そうだね」

「……やらないからな?」

「そこまでケチじゃないよ」

 苦笑され、その手にはいつのまにかサンドイッチとパックのジュースが。

「それだけで足りるのか?」

「女の子の昼なんてこんなもんだよ」

 そうなのか、と。
 そう言えば、源先生も昼はあんまり食べて無かったな。
 葛葉先生が結構食べてたから、意識してなかったけど、そうだよなぁ。
 ……そう考えると、この弁当も結構負担になってるんだろうな。
 やっぱり、次は止めさせとこう。

「いただきます」

「何で二回?」

「いや、もう何回感謝してもし足りないし」

「大袈裟な……」

 なんとでも言ってくれ、嬉しいから何度でも俺は感謝するね。
 そんな事を考えながら、ご飯を一口食べる。
 中身はご飯に、肉と野菜の炒め物、卵焼きに、ポテトサラダと、ミニトマトのハーフカット。
 正直、これだけでも腹一杯になりそうなボリュームである。
 炒め物を食べると、タレが良いのだろうし、腕も良いのだろう。
 肉は噛み切れるし、野菜は柔らかいし。
 ……やっぱり、美味いなぁ。

「美味そうに食べるんだね」

「美味いからなぁ」

 これは、箸が進むな。
 卵焼きも、中は半熟で、柔らかくて、少し甘い。
 あー……。

「これは、ヤバい」

「ん?」

「……コンビニ弁当が霞むな」

「本人に言ってやったら?」

「……考えとく」

 流石にそれは恥ずかしいけど。
 そんな事を話しながら、残っていたご飯を食べてしまい、手を合わせる。

「ごちそうさまでした」

 いや、本当に。
 もう食べる事はないだろうけど、美味しかったです。
 内心では、もう何度頭を下げても足らないくらいに感謝してる。
 あー、教師やってて良かった。
 これだけで、今まで頑張ってきた甲斐があったってもんだ。

「食べるの早くない?」

「そうか?」

「良く噛まないと、身体に悪いよ?」

「……おー」

 まさか、生徒から注意されるとは。
 まぁ、それはまずは置いておこう。
 いつもはちゃんと噛んで食べてるし。
 さて、と。
 絡繰の分を包み直して、次は近衛の方である。
 こっちは絡繰の弁当箱より一回りほど小さいので、今の腹具合でも大丈夫だろう。

「また可愛い包みだね」

「そこには触れないでくれ」

 猫やらウサギやらプリントされた包みをほどきながら、そう呟く。
 流石に、こんな少女趣味の包みは俺も色々キツイのだ。
 そんな事を話しながら包みを解き、 
 
「おー」

「へぇ、これはまた」

 凝ってるなぁ、と。
 こっちはパンだった。
 と言うか、小さなサンドイッチが7割方、ミニハンバーグが2つとマヨネーズが乗ったレタスである。

「いただきます」

「一個……」

「いつものコンビニ弁当なら、別に良いんだがなぁ」

 そう言い、サンドイッチを一つ口に含む。
 流石に、一口じゃ無理だったか……しかし。

「んぐ、美味い」

「……本当に、美味そうに食べるなぁ」

「そうか?」

 もう一個。
 昼休みももうあんまりないし、午後の授業の準備もしないといけないしなぁ。
 ああ、もっと味わって食べたかったんだが、すまん。
 心中で謝りながら、サンドイッチを食べていく。

「良く食べれるね」

「ん?」

「いや、弁当2個だなんて」

「美味いからなぁ」

 それに、折角近衛と絡繰が作ってくれたんだ。
 残せるか、と。

「午後からの授業が、ちょっと億劫になりそうだけどな」

「……それだけ食べればね」

 呆れられた。
 いやまぁ、そうなんだけどな。
 ふぅ――正直、もうお腹いっぱいです。
 もー入らないわ。
 買っていたお茶で喉を潤しながら、大きく息を吐く。

「美味かった……」

 これがもう食べれないのは寂しいけど、まぁしょうがない。
 一回食べれただけでも、御の字だろう。
 と言うか、近衛は和食が得意かと思ってたけど、そうでもないんだなぁ。
 さすが料理が得意と聞くだけはあるな。
 絡繰は、もう言わずもがな。
 あの子は何でも出来そうなイメージがあるし。
 流石マクダウェルのメイドさん。

「御馳走様でした」

 両手を合わせ、頭を下げる。
 ここで俺が何かお礼を、って言ったら本末転倒なんだろうなぁ。
 むぅ……どうしたものか。

「それじゃ、私も教室に戻るよ」

「ん? そうか?」

 まだ昼休みはあるんだから、もっとゆっくりしたらどうだ、と。

「なに、私にも楽しみがあるんでね」

「楽しみ?」

 ……あ。

「あんまり、煽らないでくれよ?」

「判ってるって、先生には迷惑は……どうだろうね?」

 勘弁してくれ、と。
 苦笑してしまう。
 なるほど、龍宮は俺のお目付役か。
 まったく。

「御馳走様、って言っといてくれ」

「判ったよ」

 はぁ、と小さく溜息。
 この手から弁当箱が取られ、軽くなる。

「あ、洗って返すよ」

「そんなの気にしなくていいと思うけどね」

 んー。

「そこはまぁ、礼儀と言うか」

「はは。まぁ、そこは気にしない気にしない」

 そう言って笑いながら去っていく背を、目で追う。
 ……はぁ。
 良いのかなぁ、と。
 弁当箱の事ではなく、今日の事、である。

「ふぁ」

 ねむ。
 もう少ししたら、午後の授業の準備しないとなぁ。
 ……龍宮、変な事言わないと良いけど。
 アイツも、結構こう言う事楽しむからなぁ。





――――――エヴァンジェリン

「なんだ、今日は教室で食べてたのかい」

 そう言って教室に入ってきた龍宮真名の手には……二つの弁当箱があった。

「折角、先生は今日は屋上で食べてたのに」

「え!?」

 反応したのは木乃香。
 並んで座っていた刹那は大変だなぁ、と。
 耳を押さえながら、驚いた顔で木乃香を見る。

「ほら、御馳走さまだって」

「な、何か言ってた?」

「ん? 美味い美味いって何度も言いながら食べてたよ」

 良かったじゃないか、とファンシーな包みの弁当箱を木乃香に、飾り気の無い包みの弁当箱を茶々丸に。
 ……なんで、教えてもいないのにどっちがどっちの弁当だなんて判るのか、と言うのは野暮なツッコミか。
 そんな事を考えながら、茶々丸が作った弁当の卵焼きを食べる。

「どっちから先に食べたんだ?」

「!?」

 面白そうなので、こちらから話題を振る。

「私は木乃香の方が先かなー」

「なら私は茶々丸の方だな」

「話、私もこのちゃんの方が先だと……」

 視線を龍宮真名に向けると、楽しそうに笑っている。

「そこは本人に聞いた方が良いと思うけど?」

「う、え、あ……えー」

「だって、先生から先にどっちから食べたって聞いて無いし」

 見てただろうに、とは言わない。
 ま、それはそれで楽しいか。
 そう思っておく事にする。
 ……聞かなくても、木乃香の表情を見ているのは楽しいし。
 きっと、その時になったらもっと楽しいのだろう。

「楽しそうじゃないか」

「そうか?」

 ――まぁ、そうなんだろうな、と。
 それなりに、この平凡な毎日を楽しんでいる。
 きっと、そう言う事だろう。
 そう、思っておく。

「ねぇ、エヴァはお弁当作らないの?」

「お前もか……」

「え?」

「いや」

 何でもない、と。

「それより、お前こそどうなんだ?」

「……えーっと」

 そこで目を逸らすなよ。

「アイツは朴念仁の堅物だからなぁ、ちょっとやそっとじゃ気付かんぞ」

「うー……」

「それに、お前はきっと生徒としか見られてないだろうし」

「うぐ」

 そこで、止めておく。
 ここから先は、残酷すぎるだろうし。
 クツクツ笑う私と、机に沈み込む明日菜。

「酷いヤツだ」

「そうか?」

「そうよっ」

 ……最近、復活が早くなったなぁ。
 変な所は感心させられるな、相変わらず。

「ところで、茶々丸はどうしたんだい?」

「……さぁな」

 どうせまた色ボケしてるんだろう、と。
 龍宮真名から手渡された弁当箱を両手で持ち、眺めながら――何を想っているのやら。
 こっちも苦笑するしかない。
 まったく――どうしてこうなったのやら。





――――――チャチャゼロさんとオコジョ――――――

「モット落チ着イテ食エヨ」

「いやー、茶々丸の嬢ちゃんのメシはマジで美味いっすねぇ」

 これなら、腹いっぱい食べてもまだ食べれそうっすよ。
 あー……誰だっけ? 先生に作ったって言ってたけど。

「こりゃ、男冥利に尽きますねぇ」

「ダナァ」

 一体どんな御人なのやら。

「御主人モ最近ハ御執心ダシナ」

「そうなんすか?」

「オウ。オモシレー人間ダゼ」

「ふぅん……」

 ま、その人がもっと茶々丸嬢ちゃんに関わってくれれば、こんな美味い飯が毎日食えるんだけどなぁ。
 もう少し頑張ってほしいもんだぜ、俺の為に。


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