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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 36話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/14 22:47
「それじゃ、お先に失礼します」

「はい、それではまた明日ー」

 そう挨拶して職員室を出て、伸びを一つ。
 んー……今日も無事終わった。
 後は晩飯でも買って帰るかなぁ、と。
 それか、晩飯は外で済ませるか……でも、最近外食が増えてきたから、そろそろ考えないとなぁ。
 このままじゃ、出費が痛い。本当に。
 そんな事を考えながら学園を出ようとして……校門の所に、一人の少女が経っていた。

「ん?」

「……どうも」

 そう言って、一礼してきたのは以前会った……ええっと。
 首を捻ってしまう。
 確か、この前ガンドルフィーニ先生を呼びに来た生徒だ。
 覚えている。黒を基調にした聖ウルスラの制服に、長く伸びた金髪の少女。
 名前は……なんだったか。
 そう言えば、名前は聞いてなかったような気がする。

「誰か待ってるのか?」

「はい」

 呼んでこようか? と言ったら首を振られた。
 待っている気かな?

「先生に少し聞きたい事がありましたので」

「……俺?」

「はい」

 俺?
 えっと……何かしたかな?
 そう言えば、この前来た時何か言ってたような……何だったっけ?

「何かあったかな?」

 というか、ウルスラと接点なんて、本当に何も無いんだけど。
 しかも、俺は教師だし。
 多分生徒達以上に接点が無いんじゃないだろうか?
 本当に、何をしたのか判らなくて、こっちは聞くしかない。

「少し――その、エヴァンジェリンさんの事で」

「エヴァンジェリン? マクダウェルの事か?」

 マクダウェル……何かしたのか?
 内心、冷や汗ものである。
 別にマクダウェルを悪く言うつもりはないが、相手はお嬢様だからなぁ……何を言われるやら。
 
「はい」

「そ、そうか」

 そりゃ、俺かネギ先生の所に来るよなぁ……。
 うーん。

「とりあえず……どうする? 話が終わったら、帰るのか?」

「え? あ、はい」

「なら、歩きながら話さないか? 送っていくよ」

 立ち話も何だしな、と。
 確か、ウルスラの女子寮は少し離れてたし、話をするにはちょうど良いくらいだろ。
 そんな事を考えながら、並んで歩きだす。
 しっかし、いきなりだな……マクダウェルの知り合いか何かだろうか?
 同じ金髪だし、というのは失礼か。

「マクダウェルがどうかしたのか?」

「いえ……少々、最近の彼女が気になりまして」

「最近?」

 はて。何かしたかな?
 最近は落ち着いてて、特に何もしてないと思うんだが。
 遅刻も欠席も無いし……目を付けられるような事はしてないと思うけどなぁ。

「最近、真面目に登校してきているようですので」

「ん?」

 それが、何か変な事なんだろうか、と思ってしまう。
 別に、当たり前の事だと思うんだけど……まぁ、確かに2年までは不登校気味だったしなぁ。
 遅刻欠席早退の常習犯。
 ……まぁ、サボリな訳だけど。
 そう思っていたら、その顔が、こちらを見上げてくる。

「彼女が、キチンと人の輪の中に入るなんて……少し、意外でしたので」

「んー……」

 それはまぁ、何と言えば良いのか。
 その表情はまっすぐにこちらを見ていて、少し気恥ずかしい。
 しかし、意外だった、なぁ。

「何でそう思うんだ?」

「え?」

「何でマクダウェルがそう……人の輪の中に入るのが意外に思うんだ?」

 まぁ、こっちとしてはそこの方が不思議なんだけど。
 アイツだって、ちゃんと言えば分ってくれるし、悪い事は悪いって判ってる。
 きちんと言った事は守ってくれる。
 人付き合いが苦手だから、と言っても協調性が無い訳じゃない。
 折れるべき所は折れるし。
 だから――。

「いや。マクダウェルだって、ちゃんと言えば、ちゃんとしてくれるだろ?」

「……とても、そうは思えませんでした」

「そうなのか?」

 うーん。
 流石は名門聖ウルスラ女学院。
 もしかしたら、不良が別のナニカにでも思えるのかもしれないなぁ。

「彼女の事は、良く知っているつもりでしたので」

「ん?」

 知っているつもり?

「マクダウェルと知り合いなのか?」

「いえ、多分、こちらから一方的に知っているだけです」

「……え? マクダウェルって、結構有名なのか?」

「どうでしょうか? でも、私や、私の知っている範囲では有名ですね」

 ……学園長とも知り合いだし、高校生の間でも有名だし。
 どういう友好関係があるんだか。
 そう言えば、その辺りの事って何も知らないんだなぁ、と。
 まぁ、そこまで深く知ると言うのも、教師としてはおかしな話なんだけど。

「先生は、エヴァンジェリンさんに、何をしたんですか?」

「ん?」

 何をした? って言うと、学園に来るようになったきっかけだよなぁ。
 ……言って良いものか迷ってしまうのは、アレが教師として正しかったか疑問に思うからだろうなぁ。
 だって、一生徒を迎えに行くとか……今考えると、どうしてあんな事を、と。
 そう聞かれると、あの時はマクダウェルをちゃんと進級させたかったから、と答えるんだが。
 それを正しいと思ったし、間違ってるとも思っていない。
 それを否定されたら、反論できないような気がする……世の中は“教師”と“生徒”の在り方には難しいのだ。
 俺もまだまだ若いのかもなぁ。

「どうかなさいましたか?」

「あ、いや……ただ、2年の時に進級が危なかったから、ちゃんと登校するように言ったくらいだなぁ、と」

「え?」

「いや、俺がマクダウェルに何かしたか、と聞かれたら」

 それくらいなんだよなぁ、と。
 そう言えば、学園長にも同じような事を言ったような気がする。
 
「それだけ、ですか?」

「おー……それだけなんだよなぁ」

 でもまぁ、この言い方が間違ってもいないんだけど。
 俺がした事なんて、きっとそれくらいだし。

「だから、何かしたのか、と聞かれても困る訳だ」

「嘘です」

 いや、そこでそうキッパリと言われても。
 その顔が、怒ったようなそれに変わる。
 むぅ……。

「あのエヴァンジェリンさんが、たったそれだけで……」

「んー……なぁ、えっと……」

 そう言えば、名前なんだったっけ。
 流石に、今更聞くのは……

「高音です。高音=D=グッドマン」

 そ、そうか。すまないな、と。

「グッドマンは、何でマクダウェルが変わらないなんて思うんだ?」

「え?」

「生きてるんだ。そりゃちょっとした事で変わるだろ?」

 きっかけなんて些細なもんだ。
 マクダウェルは神楽坂と、友達と出逢った。
 ただ、それだけの事。

「学園に出てきて、授業を受けて、友達が出来て……たったそれだけで、変われるもんだ」

「……そうでしょうか?」

「おー」

 あいつ、神楽坂と会うまでは、傍に居たのは、絡繰くらいだったしなぁ。
 その絡繰も、友達と言うような関係じゃなかったし。
 まぁ、俺がどうこう言えるような事じゃないんだろうけど。

「だから、俺が何かをしたってわけじゃないんだ。うん」

 そう言いきれると、きっと格好良いんだろうけどなぁ、と。
 生徒の為に何かをした、というのは一度は言ってみたいセリフではある。教師として。
 そう言うと、小さく笑われてしまった。
 だがまぁ、俺はまだそんなに大それた事はやってないし。
 うん。まぁ、難しい顔してるよりそっちが良いな。

「そうですか……たったそれだけですか」

「おう、たったそれだけだ」

 そういうと、何故か悲しそう……というより、寂しそうに、目を細めるグッドマン。
 何故、と思ってしまう。

「どうした?」

「いえ……」

 そう小さくかぶりを振り、

「難しい事だな、と」

「そうか?」

「はい。私は、私達は……彼女の事を知っていましたから」

 ん?

「マクダウェルの事?」

「……はい」

 それは、マクダウェルの“事情”って事だろうか?
 そう言えば、どうして気にしなかったんだろう?
 まぁ、必要ならマクダウェルの方から言ってくれるだろうから良いけど。

「あー……まぁ、先入観ってのもあるんだろうなぁ」

「そうですね……」

 何やったんだろう? こんな風に言われるなんて。
 そう気にはなるが、マクダウェル本人以外から聞くのもアレだしなぁ。

「先生は」

「ん?」

「……いえ」

 そこで切られる時になるんだけど。

「難しいだろうけど、先入観無しに付き合ってもらっちゃくれないか?」

「え?」

「俺は、マクダウェルが何したかは知らないからな。だから、んー……」

 どう言えば良いかな。
 そう一瞬悩み、

「いきなり何も無かったように、ってのも難しいだろうけど」

 そう言って一旦区切り、

「アイツは結構単純で面白いからな、少しだけ見ていてやってくれないか?」

 そう言った。
 それだけでいいから、と。

「見て、ですか?」

「おー。前がどうだったかは知らないから何とも言えないけど、今のマクダウェルを見てくれないか?」

 きっと、その先入観とは違うはずだから、と。
 マクダウェルは、変わった。
 俺だけじゃない。学園長も、他の先生達もそう思ってくれている。
 だからきっと、この子も、他の生徒達もそう判ってくれる。
 ……そう思うのは、甘いのだろうか?
 きっと甘いんだろう。世の中は、そんなに単純じゃないんだから。

「先生」

「ん?」

 クサい事を言ってるんだろうなぁ、と。
 夕日が眩しいな、そんな事を考えていたら、話しかけられた。

「私は、間違っているのでしょうか?」

「何で?」

「……だって、エヴァンジェリンさんを、私は見てませんでしたから」

 先入観だけで判断して、今日まで来ました、と。
 そう告白された。

「別に、それが間違いだってわけじゃないと思うけど」

 だから、そう答えた。
 きっとグッドマンは間違っていない。
 ほとんどの人間は、俺だって、先入観に左右される。
 先入観を持って、それでもちゃんと本人を見れるのは、聖人か何かだろう。
 残念ながら、俺は聖人でも何でもないただの人間なのだ。そして多分、グッドマンも。
 ただ運が良かっただけなのかもしれない。
 奇跡のようなものなのかもしれない。
 俺が何も知らずにマクダウェルと知り合った事は。
 そう思うと、苦笑してしまう。

「そうでしょうか?」

「ああ。俺だって、もしマクダウェルの事を知ってたら、他の先生達と同じだったかもしれないし」

 きっと、俺は運が良いんだろう。
 何も知らずに、マクダウェルと知り合えたんだから。
 うん――そう思うと、本当に、良かった、と思えてしまう。
 もしかしたら、マクダウェルが変われた一因に、なれたのかもしれないから。

「先生は、エヴァンジェリンさんの事を聞いたり……調べたりしないんですか?」

「んー……まぁ、気にはなるけどなぁ」

 けど、今更それを知ってもなぁ、という思いもある。
 何も知らずにマクダウェルの“事情”を知っていたら、どうなったかは知らないけど。
 もうマクダウェルがどんな奴かって知ってるし。
 多分まぁ……それがどんな“事情”だったからって、なぁ、と。
 そう言えば、前はあんなに“事情”って何だろう、って思ってたのに、最近は全然気にしてないや。
 絡繰にも前聞かれたっけ? でもまぁ……必要なら教えてくれるだろうし。

「何も知らずに、エヴァンジェリンさんの事を信じられるんですか?」

 そう言われた。
 真剣な顔で。
 だけど、まぁ。

「しょうがない、先生だからなぁ」

 生徒は信じないとなぁ、と。
 きっと、教師が出来る事なんて、それくらいだし。

「……凄いですね」

 呆れられた。というより、驚かれた。
 むぅ……まぁ、他人を信じるのは難しいからなぁ。
 先入観があって、マクダウェルの事を知らないなら、尚更だろう。

「私には難しそうです」

 そう言って、今度は笑った。
 でもそんな笑顔を見てると、そう難しくないのかもなぁ、と。そう思えてしまう。
 何だかんだ言っても、この子もマクダウェルの事が気になるから、こうやって聞きに来たんだろうし。

「ん……まぁ、そこはボチボチ頑張ってくれ」

「――判りました、頑張ってみます」

 俺も、少しずつでも頑張らないとなぁ、と。

「何をですか?」

「アイツの喋り方。どうにも、敬語というのを知らないからな」

「……ふふ、そうでしょうね」

 そう言って、また笑う。
 まぁ、人形じゃないんだし、そりゃ笑うか。

「アレばっかりは、何度言っても直らないんだよ」

「そうですか。なら、私も気に掛けておきます」

「おー、見掛けたら注意しといてくれ」

 その後2、3話していたら、

「お姉様っ」

 という声が聞こえた。
 お姉様?

「愛衣。こんな所でどうしたの?」

「い、いえ。お帰りが遅かったので……」

 そう言ったのは、私服姿の……確か、2年の――えっと。

「佐倉。え? お姉様って――姉妹、じゃないよな?」

「も、もちろんですっ。愛衣とは……少し、私用で知り合いなだけです」

「う。ま、まぁそれより、先生とお姉様がどうして?」

 しかし、表情がクルクル変わる子だなぁ。
 授業の時はこうは無いのに……多分、これが素なんだろうな。

「いや、そこで会ってな。一人だったから、送っていこうかな、と」

 マクダウェルがどうこうは、あんまり俺からは言わない方が良いだろうな。
 何も知らない部外者な訳だし。
 下手に行って話がこじれても、マクダウェルにもグッドマンにも良くないだろう。

「そ、そうでしたか」

 一体どんな想像をしたのやら。
 そう苦笑し、

「それじゃ、俺はここで帰るかな」

「そうですか?」

「おー。流石に、自分の生徒ならともかく、ウルスラの生徒と並んで歩くのはお互い良くないだろ?」

 まぁ今更だろうけど。
 願わくば、新田先生の耳に入りませんように、と。
 ……その時はその時だけど。
 別にやましい事は……無いし。

「それもそうですね」

「ん。それじゃ、明日の授業の予習はちゃんとしとけよ、佐倉ー」

「う、は、はいー」

 しかし、マクダウェル、なぁ。
 ……あいつ、何やったんだろ?
 気にならないと言えば嘘になる。
 絡繰からも言われたけど、正直聞きたい事でもある。
 でも――。

「んー」

 ――何でか、そう強く聞きたいとも思えないんだよなぁ。
 何でだろう?
 まぁ、生徒にそう深く踏み込まない、と言うのもあるんだろうけど。
 2人に背を向けながら、小さく溜息。
 きっと……そんな事を聞いたら、またお節介とか言われるんだろうなぁ。
 その通りだから、何も言い返せないんだけど。







――――――エヴァンジェリン

 くぁ、と欠伸を一つ。

「暇ソウダナァ」

「まぁな」

 どうにもなぁ、と。
 キッチンから聞こえる楽しげな声と、良い匂い。
 うーむ。

「どうしてこうなったんだ?」

「知ラネェヨ。御主人ガ詳シイダロ」

「……それはそうなんだがな」

 弁当、ねぇ。
 いや、判るぞ? あいつらが何で、誰の為に明日の弁当の準備をしているかなんて。
 ……ただ、だ。

「何でウチで料理してるんだ?」

「ダカラ、知ラネェヨ」

 膝の上のチャチャゼロからの答えは、やはり私が求めたものじゃない。
 むぅ。

「ふふ――これで今日の晩飯も困りそうにねぇな」

「お前はお前で、最近はウチに入り浸りだな」

 まぁ、問題も起こしてないし、別に良いんだが。
 というか、女子寮の方に居ない時間が多いと思うんだが……良いんだろうか?
 私やチャチャゼロが監視してるから大丈夫なんだろうか?
 ……ま、何かあったらじじいから話が来るだろう。

「御主人ハ弁当ハ作ラネェノカ?」

「アホか。そう言うのは茶々丸に任せる」

 私が作っても、特には変わらんだろう。
 と言うか、料理の腕は、私より茶々丸の方が上だろうし。
 最近は全然料理してないからな。……この前海で作ったカレーくらいか。

「面白クネーナァ」

「面白くなくて良いんだよ」

 まったく。
 刺激なんてのは、もう必要無いと言いたいくらい味わったからなぁ。
 しばらくは、こののんびりした時間を味わうさ。
 自分で淹れた紅茶で喉を潤しながら、膝にチャチャゼロを乗せて魔道書を読む。
 ふむ――贅沢な時間だな、と。

「姐さんって、弁当作れるの?」

「……生皮剥ぐぞ、小動物」

「怖っ!?」

 失礼な。

「料理くらいできる」

 ペラリ、とページを捲る。
 キッチンから茶々丸と木乃香と刹那の声。
 そしてチャチャゼロと小動物の話し声。
 明日菜は……ソファに横になって寝ている。
 どうやら、朝早くからバイトをやっているので疲れているらしい。
 しょうがないので、毛布を掛けてやった。風邪をひかれても困るしな。
 まったく起きる気配が無いのは――本当に疲れているからだろう。
 はぁ……本当に不用心なヤツだ、と苦笑してしまう
 そんな、ありふれた……どこにでもあるような、私にとっては特別な時間。
 ペラリ、とページを捲る。

「しないだけだ」

「ウワ、ダメナ奴ノ言葉ダ」

「お前は私が料理できるって知っているだろうが」

「料理ッテノハ忘レルモンダゼ、御主人」

 ふん。
 小動物も頷くな、まったく。

「シカシ、ツマンネー毎日ダネェ」

「そうか?」

 偶には悪くない、と。
 今までには無かった時間だからな。
 今のうちに、飽きるまで堪能しておくさ。

「最近ハ魔法使イ達モチョッカイ出シテコネーシ」

「そう言えばそうだな」

 前は、事あるごとに、何かあるごとに疑ってきたものだが。
 ……最近は、私の周囲も少しずつ変わってきていると言う事か。
 よく挨拶されるし。
 それが良い事なのかどうなのかは、判断に迷うが。

「のんびり出来て良いじゃないか」

「オウオウ。天下ノ闇ノ福音ガソンナ事ヲ言ウトハネェ」

「ふん。私だって、静かな時間は惜しい」

「はー……そうっすか」

「絞めるぞ、小動物」

「何で!?」

 後あんまり騒ぐな、明日菜が起きる。

「うっす」

 そいつが起きるとうるさいからなぁ。
 寝ていてくれた方が助かる、うん。

「ナァ、御主人?」

「ん? 何だ?」

 ページを捲る。
 静かに、のんびりと――まるで、今の時間を表現するかのように。

「最近、良イ事デモアッタカ?」

「何だ、藪から棒に? 別に、特には無いな」

 紅茶を一口飲み、茶請けのクッキーに指を伸ばす。

「今までに無いくらい平穏で暇で、退屈な毎日だよ」

「ソウカイ、ソリャ良カッタ」

「……変なヤツだな」

「ケケケ」

 むぅ……私が作ったんだが、どうにも癇に障る笑い方だな。
 まぁ、それは今に始まった事じゃないか。

「なぁ、チャチャゼロ?」

「ンア?」

 こんな時間は、吸血鬼になってから初めてだ。
 平穏で、静かで、暖かで……誰でも持っている時間。
 でも、今までの私には無かった時間。
 それはきっと――私が、少しは変わったから手に入ったのだろう。
 静かに、ページを捲る。
 挨拶をして、教師に敬意を払う。
 たったそれだけで、変わってしまった私の“世界”。
 周囲から敵意が薄れ……友達が出来た。
 ……友達が、出来たのだ。
 今までに無かった事だ。
 吸血鬼の私に、人間の友達が……。
 自然と、頬が綻ぶ。

「今の時間は嫌いか?」

「マサカ。コレハコレデ楽シイゼ」

「そうか」

 いつから、変わったのだろうか?
 海に行った時と同じような思考。
 私は、いつから変わったのだろう?
 闇の福音、エヴァンジェリンは……いつから、恐怖の対象として見られなくなったのだろう?
 そんな事を静かに考えられる時間。
 いつか、この答えが見つかるのだろうか?
 見つける事を出来るのだろうか?

「弁当、か」

 楽しそうで、良い事だ。
 だが、私には少し合わないな、と。
 手ずから弁当を作って、手渡す? はっ、それはどうにも私らしくない。
 と言うより無理だな。
 見ている分には面白いだろうが、きっと周囲から見たら笑える光景だろう。
 とてもじゃないが耐えられそうにない。
 なら――。

「なに、姐さんも弁当作るの?」

「アホか。誰が作るか」

 ――私は、何をしてやれるのだろうか?
 茶々丸を変えた先生に。
 明日菜と出逢わせてくれた先生に。
 魔法しか使えない、吸血鬼の私が。
 魔法……それ以外に何も無い私は、何をしてやれるのだろうか?
 苦笑。
 きっと……そう聞けば、何もしなくていいと答えるだろう。
 だから、苦笑してしまう。
 困ったな。
 ――私は、あの人にしてやれる事が何もない。

「困ったな」

「ン?」

 まぁ、考える時間は、沢山あるから良いか。
 そしてまた、静かにページを捲る。
 弁当、ねぇ。








――――――チャチャゼロさんとオコジョ――――――

「で、作り過ぎた、と」

「…………はい。まぁ、下拵えの分もありますし?」

「と言うか、何で二人で作って、弁当箱が二つなんだ? 流石に食えんだろ」

「えー。男の人やし、無理かな?」

 おー、美味ぇ!!

「こりゃいけるっ。絶対誰だって気に入るぜ、木乃香の嬢ちゃん」

「ほんと?」

「はい、このちゃん。これなら大丈夫です」

「ああっ。茶々丸の嬢ちゃんの方は、今更言うほど問題ねぇ」

「ありがとうございます」

 しかし、だ。

「別に、2人で作ったって言って一つの弁当渡せば良いんじゃね?」

「それじゃ面白ーないやん」

「酷ェナァ、嬢チャン」

 そんな問題かよ。

「まぁ、それについてどうこう言うつもりはないがな」

「ありがとうございます、マスター」

「……はぁ。良い変化なんだか、悪い変化なんだか」

「まぁ、詰めるのは明日するし。量は調整するわ」

「ソーシトケ。マ、男ナラ出サレタ料理ハ全部食ウト思ウガネ」

「はーい。茶々丸さん、明日は勝負ですえ」

「え?」

 何気に酷いっすね、チャチャゼロさん。
 まぁ、オレっちなら残さず食うかな。

「――――んー……」

 あ、起きた。

「明日菜の姉御、晩飯の時間だぜ?」

「え? もうそんな時間?」

「ほら、顔を洗ってこい。そしたら晩御飯を食べてから帰れ」

「うんー……」

「ほらほら、明日菜さん。こっちです」

「木乃香さん、準備を手伝ってもらっても良いでしょうか?」

「おけー」

 うしし、今晩も御馳走だぜっ。
 …………あれ? 何か忘れてるような?





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