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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 29話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/04 22:42
――――――エヴァンジェリン

「マクダウェル」

 そう声を掛けられた時、微かな違和感。
 そして、振り返って、その違和感に気付く。

「新田……先生」

 そう私を呼んだのは、いつも私を呼ぶ声ではなく、別の声。
 その小さな違和感の正体に苦笑し、向き直る。

「どう、し……ました?」

 慣れない敬語に苦労し、そう返すと、向こうも苦笑し、

「これを、次の授業で使うんでクラスまで持って行ってもらって良いか?」

 そう差し出されたのは、クラスの人数分のプリント。
 ……それを何気無しに受け取る。

「ああ、これを持っていけばいいん……です、ね」

 やはり、敬語は慣れない。
 きっと誰かに聞かれていたら笑われるかもしれない。
 そんなつたない敬語に心中で溜息を吐き、了解した旨を伝えると、また苦笑された。

「すまないな」

「……いえ」

 それだけの遣り取り。
 別段毎日と変わらない、普通の人にとってはただの日常の一コマ。
 それだけの事。
 ……ただ、それだけの事。

「はぁ」

 その溜息が形だけの事だと、私自身が判っている。
 しかし、しかしそれでも――吐かずにはいられない。
 そんな気分。
 今までの15年間で……この時、私は初めて教師に頼られた。
 些細な事だ。
 ただプリントを教室まで、と。
 たったそれだけの事。
 それでも――私は今、初めて教師に頼られた。
 京都修学旅行から数日。
 あの白髪の餓鬼は私が変わったと言った。
 近衛詠春もまた……私が変わるかもと、そう言った。
 そして、修学旅行が終わった今――私の周囲は、確かに、少しだけ、ほんの少しだけ……変わり始めている。
 クラスで良く話すようになった。
 こうやって、教師から敬遠されないようになった。
 そして……

「エヴァンジェリン、どうしたんですか?」

「葛葉刀子か……いや、なんでもない」

「そうですか? もうすぐ授業が始まりますから、早く教室に戻りなさい」

「……ああ」

 それだけ言って去っていくその背を、目で追う。
 魔法先生達もまた、むこうから私に話しかけてくるようになった。
 おはようと言った簡単な挨拶や、こんな小さな事の注意など……些細な事だ。
 本当に、些細な――どうでも良い事を、話し掛けてくるようになった。
 今までなら、恐れ、憎み、敵視していた連中が、だ。
 そんな些細な、小さな、微かな変化。
 それだけの事。
 なのに、その小さな変化に戸惑いを感じてしまう。
 いや、戸惑いと言うより――どう言えば良いか。
 そう……違和感と、言えば良いのか。
 私が変わったのではなく、周囲が変わったと言えば良いか……。
 周囲の変化に、一人残されたような、違和感。

「……はぁ」

 だがまぁ、だからと言って何が変わるのか。
 ああ……授業がまたサボり難くなるなぁ、と。
 それくらいの認識で、良いのだろう。
 まったく――。







「エヴァー、帰ろー」

「一人で帰れっ。大体、家が逆だろうがっ」

「遊びに行っても良いでしょー」

 来るな、バカ。
 何度私に構うなと言えば、理解してくれるのか。

「ウチに来ても、何も面白い物なんかないだろうが」

 あるのは人形だけだぞ? お前、それじゃ退屈だろうが。
 この前遊びに来た時も文句ばかり言ってたのは誰だったか?

「う……ま、まぁあの時はまだ素人だったから」

「何の素人だ、何の」

 まったく。
 ちゃんと判るように深く深く溜息を吐く。
 このバカは、アホだな。

「おい、アホ」

「なんかランク下がった!?」

「良かったなアホ、それでアホ、そんな退屈な家に来て何するんだアホ?」

「あ、あ、アホアホ言うなー!」

 うるさいなぁ。

「ふぅん? いつの間に仲良くなったんだい、明日菜?」

「む、龍宮真名か」

 というか

「仲良さそうに見えるか? あと、無音で後ろに立つな」

「そりゃ失礼」

 お前は何処かの暗殺者か、まったく。
 溜息を吐き、カバンを持つ。

「別に良いんじゃないのかい?」

「良いわけあるか」

「良いじゃん、ケチー」

 うるさい。
 私は後何度お前に関わるなと言えば、お前は諦めてくれるんだ?
 そろそろ、こっちが根負けしそうになってしまい、げんなりしてしまう。
 以前からそうだったが、コイツも修学旅行の終わりからは更に遠慮が無くなってきた。
 ……友達なんか居ても、私には邪魔なのに、だ。
 事情は知っているだろうに。

「何で駄目なんだい?」

「……やけに明日菜の肩を持つな」

「ま、約束があるもんでね」

 約束?

「誰とだ?」

「そこは守秘義務と言う奴さ」

「ちっ」

 こう言う時のこいつは、本当に喋らないから厄介だ。
 逆に信頼できる、とも取れるが。
 一体誰との約束なんだか……面倒な。

「木乃香、刹那。行くぞ」

「はいはーい」

「ああ、判った」

 どう断ったものか……。

「なんでその2人は良いのに私は駄目なのよー」

「判らないのか? このバカ」

「う……いや、判るけどさ」

「だったら――」

 もう何も言うな、と言うとしたら

「別に構わないんじゃないか?」

「……刹那、お前もか?」

 ギロリ、と擬音が聞こえそうに怒りを籠めて睨む。
 ぅ、と一瞬たじろぎ

「べ、別に別荘に入れなければ良いんじゃないか?」

「そんな問題か。お前もバカか? バカだな」

「……し、失礼な」

 失礼な訳あるか。
 一般人を魔法使いの家に招待するなど――何を考えているんだか。
 私は――巻き込まないで済む、巻き込まない道を選んでいるだけなのに。

「これで3対1ね。木乃香と茶々丸さんは?」

「いつの間に多数決になったんだ? ……木乃香、お前は?」

「うーん……ならウチは、エヴァちゃんに一票かなー」

 教えてもらってる立場ですし、と。
 うんうん、そうだろう。
 これで3対3だ。

「マスター、それでは私は超包子の方に行ってまいります」

「ああ」

「遅くなるようでしたら、連絡を入れます」

「判った」

「それでは」

 そう相変わらず礼儀正しく一礼し、教室から出ていく茶々丸。

「よーし、それじゃエヴァの家に行くぞー」

「…………待て。どうしてそうなった?」

 多数決は3対3だろうが、と。
 引き分けなら、家主の私の意見が通る筈だ。

「なんで? 3対2じゃない。茶々丸さんは何も言わなかったし」

「んな……バカ。茶々丸は私の従者だぞ? 私の意思には茶々丸も同意のはず」

「だが、何も言わずに出ていったな」

「ぐ――」

 い、いや。そうなんだが……。

「良いじゃないか。相手は私がしているから」

「……お前も来る気なのか」

 なんなんだ、まったく。
 はぁ、と溜息を深く吐く。
 頭痛がしてきたので、目頭を指で揉みながら

「……あまり物に触るなよ?」

 くそ……今日は厄日だ。

「はーい」

「良かったなぁ、明日菜」

 こうなってくると、木乃香が私に付いたのも裏があったように見えてくる。
 はぁ。







 火よ、灯れ。
 魔法の杖を手に持ちその一節を呟くと、火と言うよりも明かりと言った方が正しい灯が現れる。

「おー、木乃香ってすっごいのね」

「基本中の基本と言うより、基礎だ基礎。それくらいで驚くな」

「驚くって……一言で火が出るとか。御伽噺の世界じゃないのに」

「ああ、それには同感だね」

 ……はぁ。
 結局付いてきた明日菜と龍宮真名も居たので、ここ数日の訓練の成果と言うのも兼ねて木乃香の状態を見せてやる。
 もちろん別荘に入れず、家のリビングでだ。
 退屈退屈言われてもうるさいしな。
 それに、魔法がどういうものか見せれば危機感を持つかもしれん。

「龍宮真名は見慣れているだろう?」

「見慣れてはいるが、だからと言って驚かない理由にはならないさ」

「そう言うものか?」

「純粋な魔法は使えないからね……私は特別だ」

 そう言って自身の眼を指差す。
 魔眼――そう呼ばれる異能。
 その詳細は私もよく把握してないが――。

「しっかし、真名もエヴァの事知ってたのね」

「まぁね。こっちとしては、明日菜がエヴァに関わってるのが不思議だね」

「そうですね。魔法にはあまり関わらない方が良いです、明日菜さん」

「うん、それはもう毎日のように言われてるから」

 毎日のように言っても全く判って無いがな……はぁ。

「ふん。刹那、お前もしてみろ」

 練習用の杖を刹那に投げ渡し、そう言う。

「わ、私もか!?」

「良いじゃないか刹那、見せてくれても」

「減るもんじゃないしねー」

「へ、減るかもしれないんだが……」

 ふん。
 基本、刹那が使う“気”と、私達が使う“魔力”は反発する。
 簡単に言うなら、水と油。どう足掻いても混ざらないのである。
 そして、刹那が魔法の一節を呟くなら、

「何にも起きないんだけど?」

「だね……」

「わ、私は剣士だから……魔法は使えないんだ」

「ゲームね、まんま」

 ふん。
 恥ずかしがるその顔に、若干溜飲を下ろす。

「明日菜、判るか? 木乃香が使った魔法が、どれだけ異質か」

「へ?」

 返ってきたのは、何とも間の抜けた声だった。
 ……いいよ。どうせ期待してなかったから。
 笑うな、龍宮真名。

「魔法使いと言うのは、言葉を繋ぐだけで魔法を使えるんだ」

「え? あ、うん。そうだね」

 なに当たり前の事言ってるの? と言われると、正直家から叩き出してやりたくなるが、我慢。
 そうしたら、きっとこのバカは反発してもっとズカズカ入り込んでくるだろうから。

「木乃香はまだ教え始めて数日だが――私は数百年、魔法の研鑽を積んできた」

「そ、そんなに!?」

「私は吸血鬼だからな――それで、だ」

 一言、木乃香よりもより濃く魔力を籠め――

「火よ、灯れ」

 木乃香のが明かりだとするなら、私のは火の玉。
 肉眼で見えるほどの火力のソレを、指先に現わす。

「たった一言でもこれだけ違う」

「す、凄いのね……」

「……魔法使いは、喋るだけで人を傷付ける事が出来るんだ」

「え?」

 火を、消す。

「判るか、明日菜? 魔法使いが、どれだけ危ない存在か」

「え、あ……うん」

 それは、普通の人から見たら、酷い脅威だろう。
 喧嘩にすらなりはしない。
 殴りかかるより、いや、殴りかかれたとしても……一言。
 それだけで、勝負は決するのだ。

「普通に生きていれば、関わる事は無い。だから」

「うん。気を付けて生活するわ……魔法使いとは喧嘩しない方がよさそうね」

 ……ず、頭痛が。
 だから何故笑っている、龍宮真名。

「ありがと、エヴァ。うん、これは厳しいわ」

「…………どーいたしまして」

 違う。私が言いたい事は、違う。
 なのに何故……ああ、何でこうバカの相手は疲れるのか……。

「ケケケ、楽シソウナ事ヤッテルジャネーカ」

 その声は、二階の方から。

「やあ、チャチャゼロ」

「ヨウ、狙撃屋。調子ハドーダイ?」

「ボチボチだね」

 はぁ。

「勝手に動くな、チャチャゼロ」

「イイジャネーカ。俺モ紹介シロヨ」

「人形が喋った!?」

 そこは普通の反応なんだな、お前。
 ……お前の中の“普通”を、小一時間問いたい気分だ。

「初メマシテ嬢チャン。御主人様ト妹ガ世話ニナッテルミテーダナ」

「あ、は、初めまして……えっと、チャチャゼロさん?」

「オー」

 何畏まってるんだ、お前は。
 あと、妙に偉そうだな、チャチャゼロ……別に構わんが。

「こ、これも魔法……?」

「えーっと。チャチャゼロさんはちょっと違うん、かな?」

「どちらかと言うと――まぁ、お前に言っても判らんだろ」

「ぅ――ひ、否定できないわね」

 まぁ、魔法の一種とでも思っておけ。

「コイツはチャチャゼロ。私が数百年前に造った魔法人形だ」

「コレカラ宜シクナ、嬢チャン」

「よ、よろしくお願いします」

 だから、何を畏まってるんだか。
 ……私の方が、チャチャゼロより年上だし、偉いんだがなぁ。
 そこはもう、諦めるか。

「す、凄いわね……さすがエヴァ」

「何が流石かは判らんが、その称賛は素直に受け取っておこう」

 はぁ、と。
 まったく嬉しくないがな。

「って……あれ? 京都にも居なかったっけ、その人形」

「オー。小動物ノ世話シテタ」

「小……あ、カモの事?」

「ソウソウ。アイツノ禿ゲハ傑作ダッタロ?」

「あ、あれアンタが!? ……ま、まぁ、何とも言えないわね」

 こっちを見て言え、こっちを見て。
 アレは見ているこっちが可哀想に見えてきたんだがなぁ。
 まぁ、以前の行いを聞いてるみとしては、あれは罰の一つなのかな、とも言えるが。

「なんか気付いたら禿げ無くなってたし。と言うか、最近毛の生え方が凄いんだけど?」

「細カイ事ハ気ニスンナ」

 ふっさふさなんだけど? と
 また何かやったのか?
 はぁ。

「ソレデ、ナンデ嬢チャンガ家ニ来テルンダ?」

 歩いてきたチャチャゼロを抱え、膝に乗せる。

「興味本位で遊びに来たんだと」

「そ、それだけじゃないわよっ」

 さも心外だ、と言った風に声を荒げる。
 ……ふん。
 そんなとき、ドアが小さく叩かれた。







「なに?」

 第一声は、ソレだった。
 意味が判らないと言うか、どう答えるべきか。
 木乃香が用意した茶と茶菓子を嗜みながら、溜息を一つ。
 明日菜達と喋っていた時に来たのは――ぼーやだった。
 まぁ、それ自体は驚く事じゃない……が。

「私がお前の面倒をみるのは、修学旅行が終わるまでのはずだが?」

「う」

 これ以上面倒に巻き込むな、と。
 ただでさえ――まぁ、じじいには鍛えてみないか、とは言われているが。
 だからと言って、私が鍛えてやる義理は無い。

「木乃香は……まぁ、素人ですらないからしばらく面倒をみるが」

 素人と言うのも憚られるような状態――デタラメな魔力と、無知と言えるほどの知識。
 本当に魔法とは関係なく育てられたんだな、と。一目で判る。それが近衛木乃香と言う存在だった。
 それを鍛えるのは、巻き込んだ私の義務だろう。
 それに詠春には、まぁ、そう言ったしな。
 基礎程度なら教えてやるつもりだが。
 そう言うと、木乃香と刹那の顔が明るくなる。
 ……何か、私と言う存在が勘違いされている気がするのは気のせいか?

「ぼーや、お前にそこまでしてやる義理もないだろ」

「そこを何とか、姐さんっ」

 誰が姐さんだ。
 私はヤクザかマフィアの女か、と。

「魔法使いの師匠なら、タカミチやら、他の魔法先生を当たれば良いだろうが」

「タカミチは出張で居ないし」

 他の先生達がどれくらい強いか、って判りませんし、と。
 ……むぅ。
 そう言われると確かにそうなかもな。
 何だかんだで、そう言えばこいつと一緒に居る時間は私が一番長いのか。

「だがなぁ……」

「イイジャネーカ」

 ん?
 そう言ったのは、以外にも膝の上のチャチャゼロだった。

「チャチャゼロさん」

「お前がそう言うなんて珍しいな」

 本当に。
 基本的に私達にマイナスになる事には冷徹なヤツだ。
 だから、そう自分から言うのは……意外だった。

「ソイツ面白レーカラ、俺ハ賛成ダゼ?」

「ほう」

 何を吹き込まれたんだか。
 はぁ、と溜息を一つ。

「うちと一緒に、とかじゃ駄目なん?」

「あのなぁ。慈善事業じゃないんだ、私に何のメリットがある?」

 私は平穏に過ごしたいんだよ、と。
 ただでさえ、京都に行った事で目を付けられてると言うのに。
 今はそう目立って動くと面倒なのだ。
 ……そこで英雄の息子と関わったとなったら、何と言われるか。
 バカの相手だってしないといけないと言うのに。

「そんなに苛めないで良いじゃない」

「苛めてる訳じゃないっ。まったく……」

 どうやら、反対は私だけらしい。
 龍宮真名は何も言わない所から、この件には静観らしい。
 が、こればかりは折れる訳にはいかない。

「う……」

「血は京都で手を貸した対価だ」

 それ以外は? と。

「……それは」

「どーしてそんなに強くなりたいんだ、ぼーや?」

 一応聞いてやる、と。
 紅茶を一口飲んで喉を潤す。

「京都で役に立てなかったからか?」

「それは……それも、あります」

 それ以外か。
 膝の上に置いた手を握り締め、肩を震わせるその姿は……とても、見ていて気持ちの良いものじゃない。

「強くないといけないんです」

「別に、今すぐ強くなる必要もないだろ」

 いま……10歳だったか?
 その歳でそれだけなら、私以外の誰かに師事してもそれなりの強さを得られると思うがな。

「もう誰にも、何も言わせないくらい――強くなりたいんです」

「ふん」

 その独白は――私に言っているのに、まるで自分に言い聞かせているようだった。
 まるでそれは……。

「言葉だけじゃ駄目なんですっ、それだけじゃ……」

 届かなかった、と。
 それは何に、何が届かなかったのか。

「イイジャネーカ。面倒ミテヤレヨ」

「お前なぁ」

「うちからもお願いしますっ」

「私も、頼むっ」

 ……はぁ。
 そう頼まれてもなぁ。

「ぼーや、何で私の所に来た?」

「え?」

「どうしてじじいや魔法先生ではなく、私の所に来た?」

 待っててやるから、じっくり考えろ、と。

「木乃香、おかわりだ」

「うんっ」

 ……まだ弟子にするとは言ってないんだがな。
 まぁ、それは今は良い。

「僕が弱くて、エヴァンジェリンさんが、強いからです」

「ほう」

「弱いままじゃ――僕は、間違ってる事を、間違ってるって正せない……正せなかったんです」

 ……何かあったんだろう。
 確かにぼーやは責任感が強い、追い詰められる事もあった。
 だが――ここまで激情を出す事は無かった。

「僕はもうっ、目の前で――僕は」

 間違ってる事を、正せなかった、か。
 それはきっとぼーやが“弱かった”からだろう。
 それは“力”か、それとも――。

「ねぇ、エヴァ……」

「ふん。ぼーや、こっちを向け」

「え?」

「下を向くな、前を向け」

 はぁ。

「じじいにはぼーやが報告しろ」

「学園長に――?」

「私は悪の魔法使いだ。そんな私に師事する事――じじいに言え」
 
 ――私は、丸くなったのかもなぁ。
 しかし……さっきの激情は、悪くなかった。
 それが怒りか哀しみかは、判らんが。

「ケケケ。約束スルゼ御主人様、キット楽シクナル」

「……本当だろうな?」

「ナァ、坊主?」

「は、はいっ、頑張りますっ」

 …………はぁ。

「判った判った」

 ま、あのじじいの事だから二つ返事でオーケーを出すんだろうが。

「やったな、兄貴っ」

「良かったわねー、ネギ」

「はいっ……ところで、何で明日菜さんがここに?」

「おめでとうございます、ネギ先生」

「ありがとうございます、刹那さんっ」

「良かったなぁ、ネギ君」

「――はいっ」

 ……はぁ。

「良かったのか、エヴァ?」

「ふん……英雄の息子を悪が育てるのも、それなりに楽しいだろ」

「素直ジャネーナァ」

 うるさいな、まったく。
 しかしまぁ、嬉しそうな事だ……。
 これから、どうしごいてやろうか。

「そ、それじゃ今から学園に戻りますっ」

「なに……?」

「仕事、まだ残ってたんですけど、手につかなくて」

 はぁ……。

「さっさと戻れ。それと明日の夜から、時間を作れ」

「はいっ」

 ……そう元気な声と共に、駆けていく。
 その姿は、子供。
 なのに、教師と魔法使いを両立しようとしてる……。

「教師って、大変なんやねぇ」

「そうねぇ」

 そうだな――大変だな、先生。
 あんな無茶な子供を支えるのは。





――――――チャチャゼロさんとオコジョ――――――


 あ、兄貴……オレっちを忘れてるぜー!?

「何ヤッテンダ、オ前?」

 あ、チャチャゼロさん。さっきはありがとうございました。

「ンア?」

 最初に兄貴の弟子入りを認めてくれたの、チャチャゼロさんだったじゃないっすか。

「ンナ、礼ヲ言ウ事カ?」

 ハハ――んで、何で兄貴の事あんなに言ってくれたんですか?

「ン? アイツ、ウチノ御主人様ノ事“バケモノ”ッテ言ワセネーラシイカラナ」

 へ? ああ、京都の。

「オオ。アレデ、ウチノ御主人様ハ結構繊細ダカラネェ」

 ……チャチャゼロさん。

「マ、明日カラ苛メテヤルカラ覚悟シトケヨ?」

 うっす。


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