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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 26話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/28 23:34

――――――桜咲刹那

「いきますえー、先輩ー」

 気の抜けたような声とは真逆の、鋭く急所を狙ってくる剣戟を夕凪で受ける。
 軽いが、受ければ確実に致命傷になる様な一撃一撃を正確に受け、周囲に気を配る。
 大丈夫。
 このちゃんはちゃんと目の届く場所に居るし、エヴァンジェリン達の魔法に巻き込まれないよう離れている。

「先輩ー? もっとウチを見て下さいー」

「断るッ」

 胴を狙った二刀ごとの横薙ぎの一線を力任せに打ち上げ、間を開けるように後ろに飛ぶ。
 やはり、厄介だな――あの間合いは。
 夕凪を思うように振えない。

「せっちゃん……」

「大丈夫です」

 深呼吸を、一回。
 気を引き締めろ――態度はアレだが、確実に強い。
 間合いは10mほど。
 その距離で睨みあう。

「そうそう、それでええですよー」

「――いくぞ」

 腰を落とし、力を溜める。
 私と月詠では間合いが違い過ぎる。
 ふ――ぅ。

「――――ッ」

 懐に入ってこようとまっすぐに向かってきた月詠を避けるように、横へ。
 間合いは一定。
 それを守るように、夕凪を振う。

「ありゃ?」

「――」

 また、間合いを開けて、睨み合う。

「せんぱいー」

 落胆の混じった声。
 それを聞きながら、もう一度深呼吸。
 ……手はある。

「死合ってくれへんでしたら……」

「大丈夫だ。気を引き締めてた」

 そう言うときょとんとし、

「それは良うございました」

 そう、嬉しそうに笑う。
 なのに殺気をバラ撒く。
 酷くアンバランスな――その在り方。
 どちらが本当の月詠なのか判らない。
 ――苦笑してしまう。
 こんな時に、何を考えているのか。

「大丈夫……」

 そう、大丈夫だ。。
 裏切られるのが怖い。
 怖がられるのが怖い。
 ……信じる事が、怖い。
 でも大丈夫だ――大丈夫。
 自分に言い聞かせるように……一枚のカードをポケットから出す。

「おや、西洋魔術師の真似事ですかー?」

「真似事じゃない――」

 息を深く吸い……吐く。
 集中。
 魔法の爆音も、聞こえないほどに――深く。

「このちゃんは魔法使いだ。だから……魔法で相手してやる」

「それは楽しみですわー」

 その声を遠くで聞きながら、

「来たれ」

 紡ぐ。
 一番大切な、信じられる人との繋がりを。
 右手に石剣、左手に夕凪。

「二刀ですかー?」

「――いや」

 建御雷はともかく、夕凪の刀身じゃ二刀は無理だ。
 ……夕凪を、地面に刺す。

「いくぞ」

「……そんなボロ剣でうちに届きますやろか?」

 何か間違った事を心配する敵に、苦笑。

「心配するな」

 ――満足させてやる。
 言葉は置き去り。
 10m近くあった距離を一瞬で詰め、その勢いも建御雷に乗せて上段から叩き落とす。
 それを受けるのは二刀。

「先輩、この距離も戦えるんですねー」

「ふん」

 それを受けて、涼しい顔か。
 内心、少しの焦り。
 二刀を叩き折るつもりの一撃は、あっさりと防がれた。

「神鳴流は得物を選ばん」

「その通りですえー」

 しかも、返事まで返してくる始末。
 こいつ――本当に強い。
 ふざけているのは言動だけか。
 勢いを殺された建御雷を左手一本で受け、右の一閃。
 喉を狙ったそれを後ろに跳んで避け、間合いの外で右足を軸に回転。
 その勢いのまま、胴に横薙ぎの一撃。

「くっ……良い攻撃ですえ」

「ちっ」

 それもまた、二刀で防がれる。
 そして間をおかず、また一閃。
 攻防一体。
 前回一度戦って手の内をある程度見てはいたが――戦い辛い事この上ない。
 この戦い方、どこか真名に似ているな、と。
 剣戟の間に思い――。

「まだまだ余裕があるみたいですねー」

「ああ。どうやらそのようだ」

 ――落ち着いている。
 多少の気の乱れはあるが、どんな奇抜な攻撃にも対応できる。
 軽口を叩きながら打ち合いが出来るくらいには。

「なら、これはどうでしょーか?」

 笑う。
 あの気の高まりは……知っている。
 ふぅ――深呼吸を、一度。
 
「にとーざんがんけーん」

「来いッ」

 気で高められた剣戟、二刀ごと叩きつけられるソレを腰を落とし手受け止める。
 クッ――流石に、重いっ。

「せっちゃんっ!」

 大丈夫ですっ!
 その声は口に出せず――力任せに月詠を弾き飛ばす。

「へぇ」

「……強いな」

 正直な感想。
 少し、息が上がったので――落ち着ける。

「ありがとーございますー」

「何で関西呪術協会に牙を剥いた?」

 それだけの腕だ。
 神鳴流の中でもそれなりのレベルだろう。
 それなのに、何故、と。
 月詠がこんな危険な事に手を貸す理由が判らなかった。
 その問い掛けにまたきょとんとした表情を浮かべ、

「そうしたら、強い人と戦えるやないですかー」

 そう、満面の笑みで応えた。

「戦う為にここに居るのか?」

「はいー」

 ……驚いた、と言うのが正しいか。
 何と言うか。

「変わった奴だな」

「よく言われてますー」

 好きなんですよ、戦うのーと。
 何の迷いもない笑み。
 本当に――ただ戦う為だけに、剣を握るのか。
 まるで、私と真逆。

「いきますえー」

 そう律義に一声かけ、振り下ろしの一撃、続いて切り上げの二連。
 二刀を上手く使った連携、振り下ろしを避け、切り上げの一撃を建御雷で弾く。
 続いてその胸に肩からぶつかり、後ろに吹き飛ばし――飛ばし際に袈裟掛けに叩き斬る。
 だがそれも自分から後ろに吹き飛ぶようにして避けられてしまう。
 ……決定打が無いな。

「んー……先輩、やっぱりお強いですねー」

「そうか?」

 腰を落とす。
 両手で建御雷を構え直す。
 ふぅ。

「でも、勝つのはウチですえー」

「いや、私が勝つ」

 気を練り上げる。
 強く、強く――濃く。

「いきますえー」

 何の為に剣を振うのか。
 誰の為に剣を握ったのか。
 ――お前が戦う為に剣を振るのなら。
 ――私は護る為に剣を握ろう。
 まるで対極。

「来い」

 だから、全部を出し切ろう。
 今までよりも早く鋭い連撃。
 大技は、無い。
 隙の無い圧倒的な手数、それを受け、弾き、避ける。
 その重圧に押されるが、引かずに受ける。
 ――ハッキリ見える。
 自分でも驚くくらい落ち着いている。
 でも手は、身体は休まず動き続け――そして、月詠の動きも止まらない。
 強い。
 今まで戦った誰よりも。
 剣技は刀子さんが上。
 力はエヴァンジェリンが上。
 早さは龍宮が上だろう。
 だが、強い。
 そう感じた。
 だから――私の全部を出し切ろう。

「このちゃんっ」

 二刀重ねての一撃を力任せに弾き上げ、そう叫ぶ。
 その答えが届かないほどに、集中。
 忌み嫌った力だが、慣れ親しんだ力。
 そして――何よりも、暖かい力。
 その全部を、石剣に向けて解放する。

「『建御雷』ィ!!」

 その刀身に“力”を注ぎ込むイメージ。
 ――まるで全力を持っていかれるような疲労感。
 そして、その石の刀身が圧縮された魔力の刀身に変わる。

「おおおおおおおっ!!」

 月詠の圧倒的な手数。
 それをたったの一撃、圧倒的な力で押し潰した。







 荒い息が自分のものだと気付くのに、少しの時間が掛った。
 疲れた……。
 それに、本当に強かった。
 砕け散って地面に転がる月詠の二刀に目を向ける。
 ……強力だとは聞いていたが、ここまでか。
 西洋魔術のアーティファクト。

「せっちゃん!!」

「うわ!?」

 抱きつかれた。
 あう……。

「ち、近い、です……このちゃん」

 うぅ、やっぱりこのスキンシップには慣れない……。

「うわ、せっちゃん怪我だらけやんか」

「か、掠り傷だから」

「そう言われると、傷付きますえー……」

「……大丈夫か、月詠?」

 少し離れた位置、一際大きな竹に背を預けるように座っている月詠に視線を向ける。
 自分でやっておいてなんだが、酷い有様だな。
 傷だらけの体、それを隠す事の出来て無い所々破けている服。

「お強いんですね、先輩ー」

「……お前もな」

 このちゃんを庇うように立ちながら、手を差し出す。

「立てるか?」

「?」

 そう言うと、またきょとんと、先ほどまでこちらに刃を向けてきた少女らしくない、無邪気とも取れる顔。

「変なお人ですねー」

 さっきまで殺そうとしてた人間に手を貸そうだなんて、と。
 う……まぁ、そうなんだが。

「余裕ですかー?」

「そうじゃない」

 そう言い、手を取ろうとしない月詠。
 だが自力で立つのは難しいのだろう、手に力を込めているが震えるだけで動きそうにない。

「ねぇ、先輩?」

 どうしたものか、と考えていたら、声。

「キレーな羽根ですねー」

「……あ、ありがとう」

 マイペースな奴だな……。

「この前は負けそうになっても出さなかったのに、どうしたんですかー?」

 まぁ、ウチは本気で死合えたからええんですけどねー、と。
 コイツは本当に、戦う事しか考えてないのか……。

「このちゃん……それに、仲間が、綺麗だと言ってくれたからな」

「……ええですねー」

 そう言って、また笑顔。
 けど――私には、判った。
 これは

「ふん……お前にだってそんな人が見つかるさ」

 寂しい、そんな笑顔。
 ああ、そうか。
 何故この戦いの最中に、色んな事を考える事が出来るほど余裕があったのか。
 何故あんなにも、月詠と会話をしながら刃を振い合ったのか。
 そう言うと、またきょとんとし――今度は、本当に……無邪気に、笑う。

「ほら、手を貸してやるから立て」

 似ているんだと、思った。
 剣を握る事でしか自分を見出せなかった私。
 剣を振る事でしか自分を示せない月詠。
 このちゃんと出逢えた私。
 このちゃんの様な人と出逢えなかった月詠。
 そんな――些細な差で、この勝ちを拾ったのか。

「ええんですか? お仲間さんのお手伝いはー」

 ふん。

「私の仲間が、負けるものか」

「なるほどー」

 そう言って、月詠は私の手を握った。

「……何か、妬けるなぁ」

「ええ!?」

 や、妬けるって――!?

「やん、先輩。もう少し優しくしてー」

「お、お前もッ」

 でも――戦いの後にしては、悪くない気分だな、と。





  
――――――ネギ=スプリングフィールド

 飛び込むように向かってきた小太郎君を、チャチャゼロさんがナイフの一閃で牽制し、足を止める。
 その間に僕は呪文を完成させ、撃ち出す。
 しかしそれは同じように放たれた呪符によって相殺されてしまう。

「オイオイ英雄、モット気合入レテクレヨ」

「はぁはぁ、す、スイマセン」

 強い。
 小太郎君も――天ヶ崎って人も。

「ほらほら、どうした坊主。もうしまいか?」

 呪符だって力を込めて出してるはずだ。
 じゃなきゃ僕の魔法の射手が止められる理由が無い――なのに、何で息切れ一つもしないんだ?
 しかも、この前の夜の傷の所は包帯を巻いて上から治療用かの呪符を張ってる。
 向こうも傷を負った身体で、それでも顔には出さないのか。
 こっちだって、まだ余裕はあるけど。

「小太郎、アンタも何人形に手間取ってるんや」

「ぅ――戦い辛いねん、アレ」

 前に出る度に先読みしたみたいにナイフ振りよって、と。
 そ、そうなのか……。

「ケケケ、コッチャ年季ガ違ウンダヨ、小僧」

「格好良いっす、チャチャゼロさんっ」

「……オ前ハ黙ッテロ」

「ハイっ」

 戦いの場に似合わないカモくんとチャチャゼロさんの話で、少しの時間が出来る。
 その間に息を整える。
 さっきエヴァンジェリンさんが大きな蜘蛛を一撃で倒したほぼ無詠唱からの大魔法。
 それに至るまでのプロセス。
 ……深呼吸を、一つ。

「月詠もやられたみたいやし、さっさと片付けるで?」

「わーってるって」

 あっちはまだ余力を残そうとしてる。
 僕が勝つには、今しかない。
 本気で来られたら、とてもじゃないけど勝てる自信が無い。
 息を吸う。

「チャチャゼロさんっ」

「オウ、小僧ハ止メテヤルヨ」

 ラス・テル マ・スキル マギステル――心中で起動キーを紡ぎ上げる。
 チャチャゼロさんに足を止めてもらって、一発で行動不能にする。
 雷の暴風ほど長い詠唱じゃ不利だ、それに、威力も高過ぎる。
 そのタイミングを待つ。
 集中――胸が潰されそうなくらいの緊張。
 初めての実戦……僕は幸運だ。
 エヴァンジェリンさんにチャチャゼロさん、刹那さん。
 沢山の人と一緒に戦えてる。
 あの時とは違う。
 あの夜とは違う。
 僕は……。

「ホレ、ココダッ」

「ちっ――何で読まれるっ!?」

 チャチャゼロさんの懐に入り込もうとした小太郎君が、またナイフの一閃でタイミングを外され、距離を取る。
 無理に入り込もうとしないのは何でか判らないけど、その隙を見逃さないっ。

「チャチャゼロさん、横にっ!! 白き雷っ」

 それを確認する前に、必中のタイミングで魔法を発動。
 狙いは天ヶ崎を守る様に前に出て戦っている小太郎君。
 呪符で防がれなかったそれを、マトモに受け、

「甘いなぁ、ネギ=スプリングフィールドっ」

 そんな!? アレを受けて――。

「チッ」

 再度の特攻。
 だが今度は引かずに、傷を受けてもチャチャゼロさんの懐に入り込もうとする。
 しかし、ナイフだけじゃ防げなかったのか、器用に魔力を籠めた蹴りで小太郎君を無理やり後ろに退けた。

「はっ――まだまだやれるようやな、人形ッ」

「ゲ、手負イノ獣カヨ、オ前……」

 メンドクセー、と。

「あかん、手加減したら無理みたいやわ」

「……せやな。今のはちとヤバいわ」

「警戒サレテルゾ、英雄ー」

「う」

「アア言ウ時ハ、モット強力ナノデ一撃デ決メロヨー」

「で、でも……」

 雷の暴風じゃ……。

「オイオイ、遊ビジャネーンダカラヨー」

 マダマダ子供ダナァ、オ前ノゴ主人サマ、と。

「ネギの兄貴、大丈夫。落ち着いてやれば出来るって」

「カモくん……」

 うぅ――でも、小太郎君達……。

「狗神使いを本気にさせたなぁ、ネギ=スプリングフィールドっ」

 その影から、真っ黒な犬が現れた。
 なっ――!?

「オイオイ、オ前モ式神カヨ」

「ちゃうわ、こいつ等わワイの子分みたいなもんや」

「ドッチモ同ジミタイナモンダト思ウガネー」

「チャチャゼロさん、もっと驚く所っす!?」

「アホカ。コンナノ驚ク価値モネーッテノ」

 さっきまで一本だったナイフが、今度は両手に。
 しかも、大振り。自身の背丈以上の得物だ。

「ネギ先生ヤ、チョットオ前ノ精霊デ手伝ッテクレ」

「え?」

「いつまでも舐めんなや、人形ッ」

「犬舐メル趣味ハネーナァ」

 そう言い、器用に両手のナイフを操って影色の犬の攻撃を避けていく。
 す、凄い。
 これがエヴァンジェリンさんの従者――。
 はっ!?

「風精召喚、剣を執る戦友っ」

 僕も呼び出せる10体の精霊を召喚し、それを援護する。
 精霊が攻撃を受け、その隙にチャチャゼロさんが犬を倒す。
 そうすると瞬く間に影の犬は居なくなり、二刀のチャチャゼロさんと小太郎君の接近戦。
 さっきよりも動きの良い小太郎君、だけど、それ以上に太刀筋が鋭いチャチャゼロさんが押し返す。
 最後には天ヶ崎さんの呪符も空中で切ったりまでしてた。

「おいおいおい――マジかい」

「チッ。やっぱりまた狙撃手も来てるか」

「ヤベー、コレ過労ジャネ? アノ嬢チャンニ追加報酬ナンテ、払エンノカ?」

 龍宮さんも、来てくれてるのかな?
 ――でも。

「しっかし、やっぱ守ってもらわんと何も出来んのな、西洋魔術師っ」

「なっ!?」

 そ、それって僕の事!?

「守って貰えん状況になったら、どうなるかなッ」

 そう言った瞬間、目に見えるほどの気の爆発。
 小太郎君が――変わる?

「本気の本気やっ。行くで――」

 そう言った時には、もう僕の目の前に――っ!?
 腹と頭に衝撃。続いて、右肩を蹴られて吹き飛ばされる。
 何されたか理解する前に、吹き飛ばされた。
 チャ、チャチャゼロさんは!?

「チッ」

「おらおらおらッ」

 目にも止まらない連撃、ソレをさっきよりも早いナイフ捌きで器用に避けていく。
 ……凄い。
 よく見るとチャチャゼロさんに魔力のような膜が……魔力を纏ってる?
 多分、魔力を身体能力強化に回してるんだ。
 そう言う使い方もあるのか。
 それとも、エヴァンジェリンさんと仮契約でも結んでるのか。

「オイ、小動物ッ」

「へいっ」

 そういうと同時に、カモくんが一瞬の隙をついて前に出る。

「あ、あぶ――」

「オコジョフラーッシュ!!!」

 えええ!?
 眩しっ!

「ぅ……」

 突然の光で眩んでいた目を恐る恐る開けると……元に戻った小太郎君が倒れていた。

「ケケケ、真ッ向勝負バッカリダカラコウナルンダヨ」

「ひ、卑怯もんが……」

「闇ノ福音ノ従者ガガキニ負ケラレルカヨ」

「か、格好けーっす、チャチャゼロさん」

「ソウダロソウダロ」

 どうやら、さっきの一瞬でチャチャゼロさんが、一撃で倒したようだ。
 ……強い。
 やっぱり、僕は何にも出来なかった……。
 悔しいけど――ここで寝てる訳にもいかない。
 立ち上がろうと力を手に込め、

「闇の福音て……あの嬢ちゃん吸血鬼かっ!?」

 ああ、そうか。
 エヴァンジェリンさんって15年前に死んだ事になってたっけ。
 ……これって、知られたら危ない事なのかな?

「くそっ。吸血鬼に神鳴流の混ざり物、バケモノの所為で台無しやっ」

 ――ああ。
 それは……。

「違いますっ」

 叫び、体中が痛む。
 たったあれだけの攻撃で――僕は、なんて弱いんだっ。

「何が違う! 人じゃないヤツ! それをバケモノ言うて何がッ」

 地に付いた手を握り込む。
 力の入らない足に力を込める。
 負けてしまった身体に、心が鞭を入れる――。

「エヴァンジェリンさんも、刹那さんも、バケモノなんかじゃないっ」

「は――なら人じゃないアイツらは何や? 永遠に生きるのも、羽根があるのも人間か?」

 切れた唇を噛み締める。
 口内に溜まった血を飲み込む。

「僕の生徒ですッ」

 四肢に力を籠める。
 立ち上がる事を拒む身体を、立ち上がらせる。
 視界が霞む、息をする度に全身が痛い、またすぐにでも膝をついてしまいそう――だけど。
 それでも――譲れないモノが、一つだけある。
 それだけは認めちゃいけないのが、一つある。

「エヴァンジェリンさんは怖いし、口は悪いし、暴力的だけど、ちゃんと約束を守ってくれるっ」

 譲れないモノがある。

「刹那さんは口数が少なくて、怒った顔は怖いけど、凄く優しい人ですっ」

 守らなきゃならないモノがある。

「僕は2人の先生だっ」

 ――力が弱くても

「2人の事を知らないくせにっ」

 ――僕は先生だから。

「知るか。敵の事なんて知りとうも無いっ」

 右手を握り込む。
 集中する。
 イメージする。
 残った魔力が……全部、右手に集まるようなイメージ。
 さっきのチャチャゼロさん。
 魔力で身体を強化してた――。

「まだ動けるんかっ」

「何も知らないくせにっ……」

 この後動けなくなっても良い。
 それでもッ。

「僕の生徒をバケモノだなんて言わないで下さいッ」

 まっすぐに千草さんに向かって駆ける。
 どうなっても良い。
 動けなくなっても、倒れても――それでもっ。

「馬鹿正直に正面かっ」

 正面に結界。
 右手と結界がぶつかり火花が散る。
 突き出した手が押し返されそうになる。

「うああああああっ」

 認めない。
 認めさせもしない。
 それだけは――許すわけにはいかない。

「……そんなっ」

 押し返そうとする力が弱まる。
 もっと、もっと――ッ。

「火事場の馬鹿力かいっ!?」

「――あああああ……ッ!!」

 まるでガラスが砕けた時のような音だな、と。
 場違いにもそう感じた瞬間、右手を押し返そうとしていた力が消える。
 だから――そのまま、右手を振り抜いた。

「がはっ!?」

 荒い息遣いが僕のもので、血を吐く音が彼女のものだって気付くのに、数瞬。
 体中が痛い、叫んだ喉が熱い――右手が、痛くて熱い。

「エヴァンジェリンさんは、怖いけど、良い人です」

 不意に、泣きそうになってしまった。

「刹那さんは、不器用だけど、優しい人です」

 それはきっと、僕の生徒が、この人には認めてもらえないって、判ってるからか。

「よく知ってます」

 でも。

「だから」

 そんなのは嫌だ。

「謝って下さい。エヴァンジェリンさんに、刹那さんに」

 知らないのに、知ろうとしない。
 そんな人には、どうすれば良いんだろう?
 ……また、泣きそうになる。

「何も知らないのに、僕の生徒をバケモノだなんて言わないで下さい」

 膝はつかない。
 でも、顔を落とすと――涙が出た。
 ……この二人の事を判ってもらえない。
 その事が、酷く悲しかった。





――――――エヴァンジェリン

「ふん。決着はついたか」

「そうみたいだね」

 しかし、右腕を砕かれても涼しい顔は崩さないか。

「よく出来た人形だな」

「君こそ。3度身体を貫いても殺せないとなると」

 後はこの若造を砕くだけだが……どうしたものか。
 あまり強力な魔法を使って目立つのも得策じゃないしな。
 いくら結界内とはいえ、感知できない者が居ない訳じゃない。

「……君は、僕の知っている闇の福音とは違う?」

「なに?」

 そう考えながらも油断なく若造を視界に収めていたら、そういきなり言われた。

「冷酷無比、魔法界の恐怖の具現――そうじゃなかったのか?」

「――なに?」

 それは、今まで誰からも囁かれ続けた言葉。
 私の過去。
 なのに――それに一番違和感を感じているのは……私?

「何を言っている?」

「――何故、僕を壊さない?」

 そう、言われた。

「ふん。今から壊すさ」

 どうやって壊すか考えていただけだ、と。
 大体、その右手はなんだ? 壊れかけのくせに。
 そう言うと、首を横に振られた。

「違う」

 ――イライラする。

「どうしてまだ僕を壊していない?」

「だからそれはっ」

「折角死んだ事になってるのに、周りに気付かれたくないから?」

「ああ、そうだ。折角の自由な時間だ、失うのは惜しいからな」

 魔力を練り上げる。
 直接叩きこんで、中から凍らせてやる。

「下手な言い訳だ」

「なにっ!?」

 こ、この――人が遊んでやっていれば。

「君を変えたのはネギ=スプリングフィールドか?」

「……何を言っている?」

 私が変わった?

「私は私だ。何を――」

「なるほど」

 一瞬の油断。
 揺らいだ魔力は霧散し、若造は魔力を紡ぎ上げる。
 ちっ。

「――手を引くよ。千草さんがあの調子じゃ、どの道もう役に立たないだろうしね」

「おいっ」

「僕はフェイト。フェイト=アーウェルンクス――」

 そう言うと、何時の間にか造り出していた水溜りで転移魔法を発動する。

「私が変わっただと?」

 追うか、とも考えずに呟く。
 変わった?
 いや、私は私だ――他の誰でもない。

「……何なんだ、いったい」

 大地が抉れ、氷の矢が刺さり、石化した竹のある周囲を見ながら、溜息。
 くそ。
 そう毒づき、歩き出そうとし――破けたてほとんど役にたってない服から、鈴が落ちた。
 あ

「良かった、壊れてないか」

 ちゃんと大丈夫か確認する為に眼前に翳すと、チリン、と乾いた音。
 良い音だ。風情があって良い。
 そう思うと、さっきまでイラ立っていた感情が少し落ち着くように感じる。
 ふん――。

「これはまた、酷いな」

「無事だったか、刹那?」

 そう振り返り

「何でソイツまで居るんだ?」

「そうツれない事は無しですえー」

 ……お前、さっきまでそいつと殺し合ってなかったか?

「千草はんも負けてしまいましたしなぁ。とりあえず投降すれば罪、軽ぅなるかなーって」

「……そこは詠春のヤツに任せるが」

 何か調子狂う奴だな。
 そうだ

「木乃香」

「なに?」

 そして、何を怒ってるんだ、こっちは。
 はぁ。緊張感の無い奴らだ。

「先に実家の方に連絡して、制服を用意させておけ」

 心臓を2回と腹を1回貫かれたおかげで、制服がもうボロ切れだからな。

「刹那と、ぼーやの替えの服もついでに頼んどけ」

「あ、そか。その服じゃ帰れへんもんね」

 まったくだ。
 制服代はじじいに立て替えさせるか。
 それに、龍宮にも援護してもらったし、追加報酬も考えないとな。

「おい、二刀使い」

「何でっか、お嬢ちゃん?」

「…………この結界の抜け方は知ってるか?」

 誰がお嬢ちゃんだ、この小娘は。
 ありがたく思えよ、私は女子供は手に掛けない主義だからな。

「りょうかいー」

 それじゃ、ぼーやとチャチャゼロ達を拾って、詠春に会いに行くか。





――――――チャチャゼロさんとオコジョ――――――

 み、巫女さんーーーー!?

「急ニテンション上ガリヤガッタナ、コノ小動物」

 すげー、すげーぜ木乃香嬢ちゃん。
 俺、これが終わったら木乃香嬢ちゃんの仮契約プロデュースするんだ……。

「ソウカイソウカイ、デモソノ前ニ」

「あまり恥をかかせるなよ、カモ」

 ブギュル

「神鳴流ト真ッ向勝負デキルヨウニナラネートナァ」

 …………ら、楽園が遠い




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