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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
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[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
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[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 18話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/11 21:15

 昼を少し回った頃。
 昨日近衛から聞いた待ち合わせ場所に、言われた時間より少し早く向かったら。

「なぁ、先生?」

「あー……どうした?」

 開口一番は、酷く困惑した……様な声だった。
 いや、何を言いたいのかは、多分判る。
 俺だって、ちゃんと昨日その事は近衛に確認したのだから。
 それに、そう言う条件だったからなぁ。

「どうして先生まで居るんだ?」

「……成り行きと言うか、何と言うか」

 ほら。
 こうなるって判ってたって。
 凄い怒ってるって。
 視線は下に向けず、マクダウェルの後ろに控えている絡繰に向ける。

「おはようございます」

「おー。おはよう、絡繰」

 駄目か。
 どうやらフォローはしてもらえないらしい……。
 小さく溜息を吐き、視線を下に。

「おはよう、マクダウェル」

「ああ。おはよう、先生」

 怖いよ、その声。
 理由は判る。俺が悪いと言うのは良く判るが、もー少しどうにかならんものか。
 一応教師なんだがなぁ、とは心中に留めておく。

「で?」

「近衛に誘われたんだよ」

 ちゃんと、俺が行く事は伝えておくように言っといたんだがなぁ、と。

「聞いてないぞ?」

「ああ。こっちも言ってないとは思わなかった」

 それが同行の条件だったんだし。
 まぁ、それほど……とは考えないでおこう。
 きっとソレは無い。
 多分舞い上がって忘れたとか、そんなオチだろうし。
 待ち合わせの時間までもう少しあるが、さて。

「何か飲むか?」

「……まさか、買い物に教師同伴とは」

「だよなぁ」

 二人揃って溜息。
 何の反応も無い絡繰は、本当に凄いと思う。
 俺がマクダウェルと同じ立場だったら、怒るレベルだ……多分。
 気に入ってる先生なら笑い話にするかもしれないけど。

「マクダウェルと絡繰は紅茶で良いか?」

「……ああ」

「私はコーヒーでお願いします」

「判ったー」

 自分の分のコーヒーも買い、二人に手渡す。
 しかし、

「どうしたもんかなぁ」

「なにがだ?」

「いや、俺が居るのは嫌だろ?」

 しかし、昨日の近衛の状態である。
 ……うーん。
 来てくれって頼まれたしなぁ。
 でも、こう言うのは……本当なら生徒同士、友達同士で解決するべき問題だと思う。
 そういう意味でも、俺は場違いなんだと思う。
 どうしたものかなぁ。

「誰に頼まれたんだ? 近衛木乃香か? それとも神楽坂明日菜か?」

「近衛だけど……なんだ、知ってたのか」

「誰でも判るだろうよ、最近の桜咲刹那を見ていたらな」

 ふむ。
 確かになぁ。
 今まで、優等生然として、あんまり目立ってなかったのに。
 ここ最近は、朝倉や早乙女にからかわれるほどの変化っぷりだもんなぁ。
 誰だってどうにかしたのか、って思うか。

「まぁ、授業サボって逃げるくらいだからなぁ」

 溜息を、一つ。

「そんなに近衛が苦手なのか?」

「まさか。その逆だろうよ」

 好きだから避ける?
 本当に、あの二人に何があったんだか。
 近衛は理由を知らないみたいだし――桜咲何があったんだろう?
 教師側からしたら、早く言う事言って元の鞘に収まってくれ、とも思うが。
 そう出来ない理由があるのか、それとも単に恥ずかしがって言えないのか。
 きっと、桜咲の性格からして、前者なんだろう。
 あまり人に頼る性格でもない。
 どちらかというと、悩み事は自分一人で解決しようとするタイプだ。
 手が掛らない優等生、と言えば聞こえが良いが。
 そういう子だと判ってしまうと、逆に些細な事でも心配になってしまう生徒でもある。
 ま――皆同じ、個性の無い生徒なんて居ないんだが。

「なんだ、結局手を出すのか?」

「手を出すって……まぁ、出すつもりはないぞー」

 そこまでお節介じゃないしなぁ、と。
 もう少し言い様は無いのか、と苦笑してしまう。
 でも……友達の問題は、友達で解決した方が後々良いもんだ。
 大人の力なんて、こういう所じゃ何も役に立たないんだし。
 結局、何が問題なのかは俺は判らないんだしさ。
 だから、大人が手を貸すのは、ほんの少しだけ。
 必要なら、きっと……最後の最後、些細な事で手を貸すだけ。
 早退の事とか、授業の事とか、そんな事で。
 相談に乗ったりもしても良い。
 でも、きっと――俺に出来るのはそれくらいだ。
 こういうのは、大人じゃなくて、友達にしか解決できない問題なのだから。

「じゃあ何でここに居るんだ?」

「……まぁお節介だなぁ」

 でも……いやぁ、自分で認めたくはないもんだな、こういうの。
 軽くショックだ。
 俺って、こんなにお節介じゃないんだがな。
 学生の頃は、結構な面倒臭がり屋だったのだ。
 それに、今も。
 俺の部屋が良い例だ。
 本当にお節介な人と言うのは、きっと身の回りとかも綺麗にしてると思う。俺的に。

「ふん――まぁ、私と茶々丸は構わん」

「なにが?」

「――今日、一緒に居る事が、だ」

「……すまないなぁ」

 本当なら、お前たちに任せて俺は居ない方が良いんだろうけど。
 どうにも……近衛にあんな顔で頼まれたらなぁ。
 流石に断れきれんだろ。はぁ。

「はぁ。昨日断らなかった、こっちもアレだからな」

「はは」

 誘いに行ったのは神楽坂だったから、断らなかったのか。
 そう聞くのは躊躇いがあるが――どうなのだろう。
 なんだかんだで、やっぱりこの二人は仲が良いんだろうなぁ。
 よく一緒に居るし。
 まだクラスじゃ、神楽坂から話しかけないと少し浮いた感じだけど……それでも、以前よりは随分マシだと思う。
 この調子なら、きっとすぐ沢山友達が出来るだろうし。

「先生は、今日は一緒に買い物をされるのですか?」

「うーん。いや、特に買うのも無いから付いて行くだけだろうなぁ」

 それに、余分なモノを買う余裕も無いしなぁ、と。
 というか、あまり物を買うのが好きじゃないし。
 一番の問題として、置くスペースが無い。
 部屋を掃除すればまだ少し違うんだろうが……独身男性なんて、そんなもんだ。多分。

「本当に何しに来たんだか」

「そこは言わないでくれ」

 自分でも良く判ってるから。
 はぁ……改めて言われると、本当に出来る事が無いよな、俺。

「あ、そうだ」

「ん?」

 紅茶をちびちび飲んでいたマクダウェルに視線を向ける。

「私服は初めて見たなぁ」

「……そうだったか?」

「おー」

 休みの日に会う事も無かったからなぁ、と。
 神楽坂達とは何回か会った事はあったが……あと、桜咲も見た事無いな。

「なんか、ドレスみたいなの着るんだな」

「好きだからな」

 フリルが沢山付いた服を着たマクダウェルは、身長の事もあって人形みたいだ。
 そう言えば、家にあった人形も、こんな服ばっかりだったな。
 本当に好きなんだなー。

「もしかして、その服も自分で作ったのか?」

「まさか――ああ、人形達にも似たようなのを着せてたからな」

「しかし、器用だなぁ。あの人形は」

 本当にそう思う。
 一番に思い出すのは、マクダウェルが作ったと言っていた人形。
 俺には作り方の想像すら付かないな。

「そうだろうそうだろう。これでも人形使い――と呼ばれてた奴に教わったからな」

「また大層な名前だな」

 そりゃ凄そうだ、と。
 そう言った時だった。
 少し遠く、人混みを避けるようにこちらに掛けてくるいくつかの影。
 その先頭は、見慣れた髪形だ。

「遅れてごめんっ」

「遅いぞ、バカ」

 友達をそう呼ぶなよ。
 苦笑して、その低い位置にある頭に手を乗せる。

「あまり人をバカバカ呼ばない」

「……ちっ」

 舌打ちだし。

「おはよう、神楽坂」

「おはよー、先生、エヴァ、茶々丸さん」

「おはようございます、明日菜さん」

 さて、と。

「近衛と桜坂は大丈夫か?」

「おはようですえ、先生」

「……おはようございます」

 ああ、ごめん。居てごめん。
 そう内心で、こちらを見上げるように、力を籠めて見てくる少女に謝る。
 桜咲、お前も結構怖いのな……。
 さてと。

「さっさと買い物に行くぞ」

「そう急がなくても良いじゃない。のんびり行こうよ、エヴァ」

「急いで買い物しても、良いものを見逃すだけだぞ?」

「ちっ――」

 そんなに皆と買い物が嫌か?
 そう思って下を見ると、神楽坂に手を握られて困っていた。
 何だ、照れてるだけか。

「何だその顔はっ」

「ん? いや、良い買い物日和だなぁ、と」

「そうですね、先生」

「絶対何か違うだろ、お前ら」

 そうか?
 絡繰に向けていた視線を、近衛に視線を向ける。

「良い買い物日和だよな?」

「そう思いますえ」

 うーん、少し硬いのかな?
 どうしたものかなぁ。

「ま、この人数で止まってるのもアレだし、動かないか?」

 とにかく、会話を弾ませないといけないよなぁ。
 まずはそこからだろう。うん。

「さんせー」

「い、い、か、ら、手を離せっ」

 マクダウェルの手を掴んでいる神楽坂が、こちらを向く。

「先生も一緒に見て回りません?」

「んー」

 なんだ、早速二人っきりにするつもりなのか。
 それもどうだろう。
 ちらり、と近衛と桜咲を見る。
 ……並んで歩いてるのに、喋ってもいないし。
 難しそうだなぁ。
 きっと、今二人っきりにしても今までと同じだろう。
 近衛が喋って、桜咲が逃げる。
 ……それじゃ、意味無いよな。

「桜咲は、何を買う予定なんだ?」

「いえ――着替えとか、後は服を見て回ろうかと」

 いや、それ修学旅行の買い物か?
 まずはこっちからでも、話題を振ってやるべきだろう。
 少しは気がまぎれるだろうし。

「そうね、まずはソレ系を見て回りましょうか」

「そうだな」

「……あ、そうなんだ」

 男とは、基本的に考えが違うのかもなぁ。
 修学旅行中って制服で行動のはずだったんだが……。
 聞いたら旅館で着る用らしい。
 え、そんなのまで選ぶんだ。

「はー……凄いな」

「何がですえ?」

「いや、何となく」

 女の子ってそういうものなのかな、と。
 そう納得しておく。
 そう納得して、少女たちの集団の後を付いて行く。

「大丈夫ですか、先生?」

「自信が無い」

 絡繰から首を傾げられた。







 女の子という生き物は凄い。
 ソレを思い知らされました、はい。

「元気だなぁ」

「まったくです」

 まぁ、女の子の服専門店の入り口の椅子に桜咲と二人で座りながら、いまだに元気な少女達を眺める。
 最初は堅かった近衛と桜咲も、今はもう何時もの通りだ。桜咲は、いつもも無口なのだが。
 ……と言うか、最初から今まで喋りっぱなしで、良く疲れないものだ。
 俺は結構キツイ。
 あれが若さかなぁ。

「しかし、マクダウェルも服には自分の主張をするとは」

 あれには驚いた。
 まぁ、自分で買うものだからそうなのだろうけど……マクダウェルは淡々とするイメージがあったから。
 だから、視線の先で近衛達に服を見たてる姿は新鮮で、意外だった。
 ……我が強そうだとは、思わないでおこう。

「アレには私も驚きましたね」

 だなぁ、と。
 二人で缶のお茶を飲みながら、苦笑。
 しかし、近衛の近くに居ないからって、俺に話しかけてくるのは困った。
 やっぱり俺が居ない方が良かったよなぁ、と。
 完全に逃げ道に俺がなってしまっているのだ。
 これでは駄目だろう。

「近衛が嫌いな訳じゃないんだな」

「――お嬢様から、そう?」

 いや、と。
 ただ――そうなのかな、って思ってた。
 もしかして近衛は桜咲が好きで、桜咲は近衛が嫌いなのかな、と。
 ただの俺の思い違いで良かった。
 だからだろう、こうやって並んで4人を眺めながら、のんびりと話す事が出来た。

「先生」

「ん?」

 しかし、女の事言うのは買い物に時間が掛る。
 コレが良い、コレが良い――でも、手に取った服は元の位置に戻されていく。
 それが続くのだ。
 この調子で、いつまで続くのやら。
 待たされている方は結構きついもんなんだがなぁ、と。
 そんな事を苦笑しながら考えていたら、隣から声。

「……言いたい事があるんじゃないですか?」

「あー……そうだなぁ」

 さて、と。

「月曜、朝一で新田先生と瀬流彦先生に謝ってくれよ? 謝りづらいなら、俺も一緒に謝るから」

「そうじゃありません」

 キッパリと言われてしまった。
 やっぱりか。
 でもまぁ、そればっかりは俺が言う事じゃないし。

「こんな事にまで付いて来てるんです、それが教師として正しいだからじゃないんですか?」

「こんな事なんて言ってやるなよ」

 その物言いが少し可笑しい。
 だって――近衛にとっては、きっと……凄く大切な事なのだから。
 あの子にとって友達の事は、凄く、凄く大切な事なんだろうから。

「近衛だって必死なんだからさ」

「……お嬢様が?」

「ああ」

 だから、こんな事なんて言ってやらないでくれよ、と。
 友達の事で悩んで、悩んで、凄く悩んで、ただの教師にまで相談したんだ。
 きっと神楽坂とかにも相談して、そして俺にまで来たんだ。
 どれだけ自分で悩んだのか――。

「お嬢様に入れ知恵して、こうするように言ったのは先生じゃないですか」

「俺が? ――ああ」

 確かに、そうだ。近衛に仲良くなれる方法を言い、それを実践させた。
 それはただ背を押しただけで、教師として生徒同士が仲良くなって欲しいと……そう思っただけの事。
 でも。けど……最初は、近衛だった。
 仲良くなりたいと、そう言った。
 真剣に。
 だから、その相談に乗った。
 ……最初は、近衛なのだ。
 俺が背を押す前に、あの子は一歩を踏み出していたのだ。
 だからこそ――俺は、近衛と桜咲に、仲良くなって欲しいと……強く思うのだ。

「はは」

「何が可笑しいのですか? 私は、本当に困っているのにっ」

 すまんすまん、と。
 もしかして桜咲は、俺が何か言ったから近衛が行動を起こしたと思ってるのか?
 逆なのに。
 近衛が行動を起こしたから、俺が言ったのに。
 些細な違い。
 でも、きっと何よりも大事な事だ。

「まだまだ、近衛の事が判って無いなぁ、桜咲」 

「……なに?」

 その低い声はマクダウェルを彷彿させる。
 だが、怖いと言うより――拗ねているように聞こえたのは、気のせいか。

「私がお嬢様の事を――」

「おいおい、大声を出すなよ」

 そんな事で慌てる少女を見て、確信する。
 うん。マクダウェルが言ってた通り、この子は近衛が好きなんだな、と。
 マクダウェルの事を話しても適当に相槌を打つだけだったのに
 近衛の事になると、こんなにも慌て、怒る。

「近衛は優しい子じゃないか」

「当たり前です」

 そして、喜ぶ。
 その事実が嬉しくて、そして判り易いこの少女が可笑しくて、また小さく笑う。

「……なるほど、私を怒らせたい訳ですね?」

「まさか」

 酷い誤解だ、と。

「ねーねー、せっちゃん。この服どう?」

「……良く似合うと、思います」

「そ、そう? ありがとー」

「……はい」

 弁解しようとした時に、丁度良く近衛が来てくれた。
 助かった。

「先生、せっちゃんとばかり話してズルイですえ」

「俺には、この店を楽しむ度胸は無いなぁ」

 女の子の服ばっかりだし、と。

「そうなったら変態だな」

 お前は一言多いなぁ、マクダウェル。
 いや、その通りなんだけどな。
 そう苦笑していると、今度は神楽坂。

「いやー、私達の服を選んでくれても良いんじゃないかな?」

「残念だけど、そっちの方も苦手なんだ」

「ま、私服のセンスも並みみたいだしな」

 そう言う事、と。
 一気ににぎやかになった周囲に逃げ、桜咲から離れる。

「しかし、これは旅行の準備の買い物か?」

「うん」

 即答したな、神楽坂。
 俺にはどう見ても、ただショッピングを楽しんでいるようにしか見えないんだが。
 女の子の買い物は長くて疲れるなぁ。

「それで、買うのは決まったのか?」

「うんー、せっちゃんが似合う言ってくれたから、これ買います」

「それは良かったな」

 ぽん、とその頭に手を乗せて小さく撫でる。
 一歩前進――になるのかな?
 まぁ良くて半歩か。

「それで、何でマクダウェルは機嫌が悪いんだ?」

「別に悪くない」

「マスターは御自分が選んだものより桜ざ」

「違うっ」

 あーあー。

「こらこら、絡繰を叩くなよ」

「離せっ」

 店の中で暴れるなよ、まったく。
 絡繰からマクダウェルを引き離し、少し離れた位置まで引き摺っていく。
 ちなみに、後ろから抱き上げるような形である。

「……屈辱だ」

「そこまでか?」

 その一言を聞きながら、大人しくなったマクダウェルを下ろす。
 ちなみに神楽坂は腹を抱えて笑っていた。

「ああ、屈辱だ……」

「そんな悔しがる事じゃないと思うけどなぁ」

「そっちじゃないっ」

 足を思いっきり踏まれた。
 ……声も出せないくらい痛い。
 その場で足を押さえてうずくまってしまう。

「ふんっ」

 ああ、抱き上げた事を怒ってたんだな。
 ……今更気付いても後の祭りだけど。

「大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ」

 絡繰に手を借りて、立ち上がる。
 本当はまだ痛い。

「申し訳ありません」

「何で謝るんだ?」

「マスターが御迷惑を」

 ああ、と。

「別に迷惑じゃないから、大丈夫だ」

 言っただろう、生徒が頭を下げる時は、って。

「そうですか?」

「おー、それよりさっさと買い物を済ませてこないか?」

 痛いけど。
 でも近衛も桜咲も神楽坂も笑ってる。
 なら、それで良い。

「この調子じゃ、次の店に行くのが夜になるからな」

「……かしこまりました」

 そして、頭を下げる事無く少女たちを伴ってレジへ。
 うーん。絡繰が一番年上に見えるのは何故だろう……きっと理由は身長だけじゃないな、うん。




――――――近衛木乃香

「機嫌良いわねー」

「えへへ、そう?」

 そう明日菜に言われて、気付く。
 そういや、お店出てからずっと笑ってる気がするなぁ、と。
 せっちゃんが選んでくれた服の入った袋を両手で持ち、胸に抱きながら、やっぱり笑ってしまう。
 嬉しいし。
 ……せっちゃんが、私に似合う言うてくれたから。

「刹那さんもそう思うでしょ?」

「へ? あ……はい」

「そ、そかな? ちょっと抑えた方がええ?」

「い、いえ……その、私は……」

「せっちゃんは、どっちがええかな?」

 ウチ、せっちゃんがあんま笑わん方がええって言うなら、抑えるよ?
 せっちゃんが嬉しい方が、ウチも嬉いし。
 そう言うと、ちょっと困ったような顔。
 う……また少し突っ込みすぎた?
 ぁぅ。この前、先生に言われたばっかりやのに……。

「わ、私は……その、お嬢様には、笑っていてもらえる方が……」

「そう?」

「は、はい」

 そっかぁ。
 良かったわぁ。
 ウチ、笑ってるの好きやし。
 だって、それだけで楽しい気分になれるから。
 嫌な時でも、悲しい時でも、顔が笑ってたら、気分も少しだけ軽ぅなる。
 結構単純なんやと思うけど、それがウチやし。

「お嬢様は、笑ってられる方が……お似合いです」

「……それって、能天気って事?」

「何でそうなるのよっ!?」

 あいたっ。
 明日菜に叩かれてもうた……うぅ。

「ひどいえ」

「う……だって、木乃香があんまりボケに走るから、つい」

 ……ボケてへんのに。
 あんまりや、明日菜。
 そう言うと、今度は明日菜が慌てだす。
 ウチ、明日菜のこんな所、凄い好き。
 すぐに行動して、何時も慌ててばっかりな所。
 それはウチには無い所。
 ウチは考えてばっかりで、全然動けへん。
 頭でっかちの、口ばっかり。
 今も――せっちゃんと2人の話すの、怖いから明日菜に居てもらってる。
 ……ウチも、明日菜みたいに行動出来たらなぁ。

「なぁ、せっちゃん。ウチってボケやないよね?」

「そ、そうですね……はい」

 うぅ、せっちゃんもひどいわぁ。
 何で目ぇ逸らすん?

「ちゃんとこっち見て話してぇ」

 そう言い、せっちゃんの視線の向く方に回り込む。
 その眼を覗き込むように、せっちゃんの前に立つ。

「お、お嬢様……」

「せっちゃん、ウチを見て」

 お願いやから。
 逃げんといて……お願いよ。

「ね、ウチを見て言って?」

「ぅ……」

 でも、そう言ってもその視線はあっちへ行ったり、こっちへ行ったり。
 多分、後ろの明日菜の方も見てるし、もしかしたら少し離れた所の先生も。

「せっちゃん?」

「あ、あー……その、ですね」

 ずい、と顔を近付ける。

「お、おお、お嬢様? 顔が、ですね……」

「だって、これくらい近付けんと、せっちゃんまた目ぇ逸らすやん」

「そ、逸らしませんっ! 逸らしませんから少しですね……」

 えー……でもなぁ。

「せっちゃん、ウチの事ボケ思うてるやろ?」

「そそ、そのような事はっ」

 そこまでせっちゃんが言った時、また頭を叩かれた。
 うー。

「明日菜ぁ」

「あ、あのねぇっ。往来のド真ん中でどんだけ近付いてんのよっ」

「? そんなに近かった?」

「……やっぱり、あんたボケだわ……」

 酷いえ、明日菜。
 そんなしみじみ言わんでも……。
 ウチだって傷付きやすいんよ?
 泣いてしまうわー。

「刹那さんも、言いたい事は言った方が良いわよ……木乃香、言わないと判んないんだから」

「明日菜ぁ……それやと、ウチ空気読めない子みたいやん」

「近いから。微妙に空気読めない時あるから、木乃香」

「……えー」

「えー、じゃないでしょ!?」

 明日菜は可愛いなぁ。
 ウチが何言っても、全力で答えてくれる。
 こんな所が、きっと明日菜が人気あるとこやと思う。
 何にでも自分なりに、まっすぐに。
 そんなとこ、ウチは本当に好きで……尊敬してる。

「なぁ、せっちゃん? ウチって空気読めへん?」

「え、ええ!? き、聞くんですかっ!?」

「ね、せっちゃん?」

 その手をとって、聞く。
 明日菜みたいにまっすぐに、せっちゃんを見て。

「ぅ……」

 昨日まではあんなに遠かったのに、今はこんなにも近い。
 それが、凄く嬉しい。
 でも――ウチはまだ、何でせっちゃんがウチを避けるのか判らへん。
 なんで?
 そう思うけど、聞く事も出来へん……聞いて良いのか、判らんから。
 今のこの距離でも、って思ってしまいそうになる。
 それじゃ駄目だって判ってる。
 でも、踏み込むのが――少し怖い。
 こうやって話せるだけでも、って。

「そ、そんな事は……ないかと」

「ほんま?」

「は、はい」

「……刹那さんの裏切り者」

 ふふん、せっちゃんはウチの味方やもん、と。
 その手を握って、言う。
 言って――そっと、その顔を見る。
 ウチの味方って……言って良い?
 前みたいに、そう思って良い?

「明日菜さん……私は、お嬢様の味方ですから」

 そう言ってくれた。
 ……また、目は逸らされたけど。
 うぅ。
 せっちゃん……それ、本当?
 ちゃんと目ぇ見て言ってほしいよ?
 そう思う事も、勿体無いのかもなぁ。

「えへへ」

 こんなに嬉しいし。
 今は、これだけでも良いや。





――――――エヴァンジェリン

 買い物が終わる頃には、日が傾きかけていた。

「結局、あんまり買わなかったんだな」

「そりゃ、あんまりお小遣いも無いですから」

「……あれだけ悩んだのは、楽しむ為って事か」

「女の子の買い物なんて、そういうもんですえ」

 そうなのかぁ、と。
 酷く疲れたように今日半日を潰された先生が笑う。
 それを少し離れた位置から横目で眺めながら、

「お前は混ざらないのか?」

「……私には、その資格はないですから」

 そうか、と。
 結局、今日一日先生に隠れてばかりだったな。
 折角の貴重な時間だったと言うのに、無駄にした気分だ。

「こうやって、眺めているだけでも幸せです」

「それじゃ、なにも守れないがな」

「……修学旅行の時は、もっとお傍に居る」

 はぁ、と。
 筋金入りだな、この馬鹿は。

「一つ、予言してやろう」

「――何をですか?」

「お前はきっと、必ず後悔するよ」

 今のままだったらな、と。

「…………しません」

「は。すぐに返事が出来ないなんて、自分でも判ってるようじゃないか」

「そんな事は――っ」

 クツ、と。
 笑う。笑ってしまう。

「弱いくせに一人前に言うなよ、半人前以下が」

「なん―――」

「今のままじゃ、お前は近衛木乃香を失う。必ずだ」

 そして後悔する、と。
 傍に居る? 護る? 馬鹿らしい。
 それだけで護れるものがどれだけしかないと言うのが判っているのか。
 それだけで護れるものが下らない表面だけだと、何故気付かないのか。

「今のお前じゃ近衛木乃香は護れない」

 そして、と。

「私は、本心は別に、あの娘がどうなろうがどうでも良い」

 修学旅行さえちゃんと行ければな、と。

「あまり煮え切らん態度だったら、どうなっても知らんぞ」

「だが、私が居てはお嬢様も不幸に――」

「――は。お前程度の存在が、誰を不幸に出来るものか」

 鼻で笑ってやる。
 自身の境遇に怯え、周囲に怯え、人に怯える化生。
 良く判るよ。
 私もそうだった。
 バケモノに変った時の私がそうだった。
 だから、良く判る。
 ……そして、

「お前は、近衛木乃香がどんな存在かまるで判っていないな」

「なっ」

 待っていろ、と言い残し先生の元へ。

「先生」

「ん?」

「桜咲刹那を借りて帰るぞ」

 三人で談笑していた先生にそう告げる。
 その意図を察したのか、近衛木乃香は黙り、先生と神楽坂明日菜は、
 
「あー、判った」

「おっけー、私は先に帰るねー」

 ……はぁ。
 お前、絶対勘違いしてるだろ、神楽坂明日菜。

「神楽坂明日菜、まっすぐ帰れよ?」

「また子供扱いっ!?」

「それと、何度も言うがぼーやにオコジョからは――」

「目は離さないから大丈夫だってばっ!」

 なら良いが。
 お前、今日の事も言って無かったじゃないか、と。

「い、いや……それはエヴァを驚かせようとー」

「こっちを見て話せ、バカ」

「ぅ……せ、先生じゃねー」

 ……逃げたな。
 まったく。
 言う事を言っておけば良いだけなんだがなぁ。

「そう神楽坂を苛めてやるなよ」

「ふん。ちゃんと言う事を言わないアイツが悪い」

「それを言われると、庇い様が無いなぁ」

 ま、それは別にどうでも良いがな。
 こんな平和な時間だ、これくらいの驚きがあってまだ足りないくらいだ。

「近衛木乃香」

「は、はい」

 桜咲刹那の名に固まっていた、少女に視線を向ける。
 ……まったく、と。
 小さく溜息を一つ。

「アレは臆病者だ」

 ついで、桜咲刹那を指差しそう告げる。
 その先で、聞き耳を立てていたのだろう、驚いた表情を浮かべる桜咲刹那。
 ……アレも、大概だな。
 そんなに気になるなら、それこそもっと寄ってくれば良いだろうに。
 そんなだから、お前は近衛木乃香を……肝心な時に守れないと言うのだ。
 はぁ。
 護れなかった時の後悔を――お前は、本当に受け入れられるのか?
 無理だろうに。

「仲良く――いや、アイツの秘密を知りたいならもっと踏み込むべきだったな」

「そ、そう……?」

 ああ、と。
 あちらから近づかないなら、こっちを近付けるだけだ。
 近衛木乃香から桜咲刹那を離すのは、護衛という点から厳しい。
 それに、運が良ければ――もしあの臆病者が心を開いたら……

「喋れるだけで満足するな。修学旅行中、アイツは貸してやるから好きにしろ」

「いや、班分けは出来てるんだが」

「そう堅い事を言うな。どうせ、生徒が好き勝手動くだろうが」

 溜息が、一つ。
 大体、今日のこんな買い物に付き合わされたこっちの身にもなってみろ。
 折角の休日が、神楽坂明日菜との買い物などと。

「まぁ、自由時間くらいなら見逃すけど」

「それで十分です先生っ」

 おーおー、気合が入った事だな。

「それじゃ、私達は帰るぞ」

「ああ。んじゃ、近衛……送るか?」

「いえ――」

 そう断り、近衛木乃香は桜咲刹那の方へ走っていく。
 それを目で追い、

「なんだ、マクダウェルもあの二人の事考えてるんだな」

「そういうものじゃないさ」

 ああ。私は修学旅行の為にあの二人の関係を利用しているだけ。
 私の時間を少しでも作るため、少しでも安全を確保しているだけ。
 ただ、それだけの事。

「そうか?」

「そうだ」

 短い言葉の遣り取り。
 ただ、

「なんだ?」

「いやいや」

 何を勘違いしたのか、その男は笑い、私の髪を撫でるように手を置いてくる。
 大きな手だ。
 この私を、真祖の吸血鬼を――知らないとはいえ、悪人である私を、信用しているのだろう。
 まったく。
 神楽坂明日菜と言い、先生と言い。
 どうしてこんな私を信じられるのか。
 ……はぁ。

「髪が乱れる」

「お、すまん」

 乗せられた手を叩き、二人が別れの言葉を伝えあっている方へ向けた視線を、少し閉じる。
 ……桜咲刹那。
 お前はもっと、自分が恵まれていると知るべきだ。
 どれだけ不幸で、自身が許されない存在だとしても――それでも、恵まれていると。
 人として生き、人と共に過ごし、人と死ねる。
 それが、どれだけ幸せか。

「明日から修学旅行だなぁ」

「そうだな」

「きっと楽しいぞ」

「……そうだな」

 そうだといいな、と。
 15年ぶりの“外”だから。
 色々と問題もあるが……それでも、楽しみたいものだ。

「それじゃ、旅行先でもよろしく頼む」

「おー。でも、あんまり面倒は起こさないでくれよ」

 は。

「それは難しいな」

 そう言い、笑う。
 ああ、難しい――。

「あのなぁ」

「その時は、先生に色々頼むかな」

 溜息。
 そして、笑われた。

「ま、しょうがない。先生だからなぁ」


 


――――――今日のオコジョ――――――

「ふん――結局ぼーやとは仮契約しないのか」

「ああ……やはり、その……」

 な、なんだってーー!?

「わ、わたしは……」

「なに言ってるんだ嬢ちゃん!? 今しないでいつするって」

「黙れ」

「はい」

 この儚いオコジョの身が憎いぜ。
 しかし兄貴、別荘の中で本ばっかり読んで魔法の勉強とは憎らしいぜ。
 兄貴の使い魔(友達)であるオレっちも鼻が高いってもんよ。

「私は、お嬢様の剣になると……決めていますから」

「……ふん。そのお嬢様を信じ切れてないくせに良く言えるな」

 ま、マジで?
 お……女同士って事か?
 しかもあの顔……た、ただの仮契約じゃすまねぇ予感がっ。

「よし。オイ小動物、ぼーやは別荘か?」

「あ、ああ」

「桜咲刹那、来い。お前とぼーやには戦い方を覚えてもらわないと話にならん」

「あ、ああ……その、ありがとうございます」

 おーい。オレっちはー?
 あれ? 助言者だよね、オレっち。
 あるぇー?

「ご飯です、オコジョさん」

「おう、すまねぇロボっ娘」

「いえ」

 オレっちは寂しいぜ、兄貴ー。
 この前夕日に向かって一緒に走った絆はどこに行ったんだーーー


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