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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 17話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/10 19:05

 朝のHRに配るプリントを人数分まとめていると、少し遅れてネギ先生が職員室へ入ってきた。
 ふむ……まぁ、寝坊ってほどの時間でもないか。

「おはようございます、ネギ先生」

「お、おはようございます、先生」

 ん?

「どうしたんです?」

 動きがぎこちないと言うか、なんというか。
 ちょっと変だ。

「えっと……筋肉痛で」

「何したんですか?」

 その答えに苦笑し、席に座ったネギ先生用にお茶を用意するか。
 給湯室へ向かい、準備をする。
 いつも源先生が使っているせいか、ちゃんと整理されていて使いやすい。

「コーヒーとお茶、どっち飲みますか?」

「あ、じゃあお茶で」

 はい、と。
 俺はコーヒーで良いや。
 お互い分の飲み物を用意して、席に戻る。

「それで、どうしたんです? いきなり筋肉痛なんて」

 学校の仕事で筋肉痛なんてならないと思うから、自分で運動したのか。

「ありがとうございます――修学旅行で、遅れないように」

「ああ。真面目ですねぇ」

 そう苦笑してしまう。

「よっぽど楽しみみたいですね」

「はいっ。日本の文化ですからねっ」

 はは――そんなに楽しみにされると、同じ日本人として嬉しいものだ。

「そんなネギ先生に、一つ良い物を上げましょう」

 そう言って、ネギ先生の机にクラス人数分のガイドブックを置く。

「朝のHRで配る分です。ネギ先生の分もありますよ」

「え?」

「折角の京都なんですから、これがあれば少しは楽しめるかな、と」 

 まぁ、それ以上に驚いているのだろう。
 なにせ筋肉痛と言ったばかりで、この量である。

「せ、先生?」

 はは。

「ネギ先生」

「は、はい?」

「もー少し、早く出てくるようにしましょうか?」

「…………はい」

 ここ最近、遅刻はしてませんけど遅いのが目立ちますよ、と。
 まぁ、慣れてきたし少しだけ……気が緩んだのかな。
 最初の頃より、やっぱり遅く来る回数が増えてきたし。

「ま、気を付けて下さいね?」

 そこまで怒ってはいないので、苦笑して、そう言う。
 あーあー、そんなに頭を落とされるとなぁ。
 結局、ガイドブックは半分は俺が持っていってあげる事にした。
 ……甘いなぁ。







「なぁ、先生」

 はい? と。
 手元の修学旅行用の資料に通していた目を上げると、困った顔の新田先生が居た。
 はて……何かしてしまったか?
 6時間目に授業が入っていなかったので、放課後まで使って一気に目を通してしまおうと思ってたんだが。

「どうしました、新田先生?」

「少し聞きたい事があるんだが」

 はぁ――新田先生がですか?

「えっと……答えられる事なら」

「ああ。それは君のクラスの事だから」

 ……は、はは。

「ど、どうしました?」

「桜咲の事なんだが」

 桜咲?
 ……最近良く聞く名前になったもんだ。

「彼女がどうかしましたか?」

「いや、さっきの授業で居なかったんだが……早退でもしていたのか?」

「――はい?」

 桜咲が早退、ですか。
 慌ててクラス名簿に目を通し……うん、朝は来てたよな。
 挨拶した記憶あるし。
 はて?

「聞いてないですね」

「そうかい。まぁ、こっちでも覚えておくけど先生の方でも注意しておいてくれないか?」

「判りました」

 しかし、無断早退か……。
 ふと思い出すのは、マクダウェル。
 アイツも無断で授業を抜け出して――。

「さて」

 少し屋上に言って行ってみるか。
 もしかしたら居るかもしれないし、文字ばかり読んでて目も痛いし。
 そう思い席を立ち、職員室を出る。
 ――何でいきなりそんな事をしたのかな、と。
 まぁ、思い付く所は一つあるんだけど……。

「そんなに嫌なのかなぁ」

 昔は仲良いとか近衛は言ってたんだがなぁ。
 授業を抜け出したのは怒らないとなぁ――どうしたもんかな。
 頭を掻きながら、廊下を歩く。
 明日は休みだってのに、はぁ。
 さて。

「いるかなーっと」

 屋上へ続く扉を開けると、晴天の空。
 うん、良い昼寝日和なんだが……。

「居ないか」

 そう簡単にはいかないか。
 どうしたものか……まぁ、簡単なのは来週登校してきた時に言えば良いだけなんだけど。
 来週はもう修学旅行なんだよなぁ。
 流石に、朝から言うのもアレだろうし……言わないのもな。

「おや、先生?」

 っと。
 この声は、

「龍宮か?」

 周りを見渡すが、姿は無し。
 あれ?

「上だよ、上」

「……お前、そこは危ないだろ」

 まったく。
 溜息を小さく吐いて、苦笑。
 龍宮は屋上の入り口脇にある物置の屋根の上に居た。

「落ちて怪我したらどうするんだ?」

「そんなヘマはしないよ」

「そう言ってる奴は、いつか落ちて怪我するんだよ」

 はぁ、ともう一度溜息。

「ま、先生に気付かれたら仕方ないか」

「そっちから声掛けてきたんだけどな」

 そう言えばそうだった、と笑いながら危なげなく下りてくる。

「どうしたんだい、先生? 屋上には珍しいね」

「そうか?」

 と言うか

「……珍しいと言うくらいには屋上に居るのか?」

「ふむ――まぁ、よく居る方じゃないかな?」

 かな? って。
 はぁ。

「まぁ、天気良いからなぁ」

「そうだね、昼寝にはもってこいだ」

 中学生の考えかなぁ、と。
 いや、人の性格は人それぞれだけどさ。
 もう一度苦笑し

「桜咲を見なかったか?」

「刹那? ああ、そう言えば午後は早退してたね」

「やっぱりか」

 うーむ。

「刹那を探してるなら、多分もう学園には居ないと思うよ」

「だな」

 と言うか、会えるとも思ってなかったしな。
 それじゃ

「龍宮は桜咲と同じ部屋だったな」

「ああ。伝言かい?」

「おー……」

 何て言おう?
 流石に、休日に出て来いとも言えない……と言うか、明日は修学旅行の買い物とか言ってたし。
 うーん。

「早退する時は先生に一言言うように言っておいてくれ」

「……ふむ。それだけかい?」

「旅行前に言われるのも嫌だろ」

 龍宮の問いかけに、苦笑してそう答える。
 それに、理由は何となく判るしな。
 近衛にも困ったものだ……が、今日だけは特別にしておこう。

「教師としてはどうかと思うね」

「そう言ってくれるなよ」

 自分でもそう思ってるからな。
 今回だけだからな、と。

「龍宮も、早退する時は先に言ってくれ」

「それじゃサボりにならないと思うけどね」

「サボりは許可できないからなぁ」

 はは、と笑って屋上を後にする。
 しかし――困ったな。
 修学旅行で関係が直らなかったら、どうにかしないといけないなぁ。







「すみません、それじゃお先にです」

「ああ、お疲れ様。先生」

「お疲れー」

 残っていた弐集院先生と瀬流彦先生に声を掛け、職員室を出る。
 ふぅ、結構時間が掛ってしまったな。
 最近は学園長からの仕事とかで、ネギ先生も早くに帰ってるし、少し忙しい。
 コキ、と首を鳴らして欠伸を一つ。
 ……明日は旅行前の最後の休みだ、少しゆっくりするかな。
 そんな事を感じながら帰路につく。

「んー」

 今日は絡繰は猫にエサやってるかな?
 この時間帯なら居る可能性もあるなぁ、と足は麻帆良の広場の方へ。
 猫に癒してもらおう。
 っと。

「居ないかぁ」

 残念だ。
 昼には桜咲に会えず、放課後は絡繰に会えず。
 どうにも今日は、そういう日なのかもしれない。
 苦笑し、そのまま帰路に。
 マクダウェルと知り合ってから、占いとか、そう言うのは少し信じるようになった。
 いや、偶に言われる『予言』が的を得ているから、本当に予言のように感じるのだ。
 ……本当は気紛れみたいだけど。

「あ、先生ー」

 ん……この声は。

「近衛か?」

 振り返り……姿はない。
 ん?

「こっちですえー」

 と呼ばれた方は、すぐそばのオープンカフェの椅子。
 そこに座っていたのは、私服姿の近衛だった。

「おー、こんな所でどうした?」

「買い物ですえ」

 ま、そうだろうなぁ、と。
 自分で聞いておいて答えが判っていた事に苦笑し、それじゃ、と。
 あんまり学校外で教師と一緒というのも好きじゃないだろうし。

「って、違いますって」

「ん?」

 そのまま歩き去ろうとしたら、呼び止められた。

「何だ、どうかしたのか?」

 っと

「そうだ、俺も少し話があるんだった」

 主にお前の友達の事で。
 丁度良かったな。

「あ、そうなんです?」

「おー、相席して良いか?」

「どうぞどうぞ」

 それじゃ失礼して、と。
 ついでに、そばを通りかかった店員にコーヒーを頼んでおく。
 本当なら晩飯も済ませたいところだが……こういう所は少し高いのだ。
 来週から入用なので、微々たるものだけど節約をする事にする。

「お前なー、今日も桜咲に強く迫っただろ?」

「う」

 開口一番は、ソレ。

「今日は見逃すけど、修学旅行後でそうなったら、流石に庇いきれないからな?」

 あの後、午後に授業をしていただいた新田先生と瀬流彦先生に頭を下げたものだ。
 まぁ、それは別に怒ってはいないのだけど。
 悪い事はちゃんと言っておかないと、繰り返されたら困る。

「ちゃんと、限度を守れ、限度を」

「はぁい」

 しかし、そうシュンとなられると、俺が悪いみたいで居心地が悪いな。
 ちょうど店員がコーヒーを運んで来たので、空気を変えるように一口飲む。

「それで、近衛はどうして俺に声を掛けたんだ?」

「あ、そや」

 ごそごそとハンドバックを漁り……携帯を取り出し、テーブルへ。
 なんでだ?

「携帯だな」

「はい、うちの携帯ですえ」

 で? と。

「番号教えてもらって良いですか?」

「……先生の携帯番号なんて聞いてどうするんだ?」

 普通掛けないと思うし、調べようと思ったら学園にでも聞けば良い。
 それに、教師に用があるなら普通は担任だろう……って、ネギ先生とは同室だったんだ。

「先生は修学旅行の準備は済みました?」

「ああ。と言うか、着替えとかだけだしな」

 男の準備なんてそんなものだ。
 ガイドブックとかは学園側が用意してくれているし。
 カメラとかが必要になれば、向こうで買えば良いしな。

「う」

「なんだ? 買い物がどうかしたのか?」

 明日、桜咲達と一緒に買いに行くんじゃなかったのか、と。
 やっぱり駄目だったんだろうか?
 近衛の名前を出さないなら、いけると思ったんだが……やはり態度を変え過ぎて警戒されたか?

「あ、せっちゃんとは多分買い物に行けるんです。多分」

「おー、良かったじゃないか」

 これで一歩前進だな、と。
 実際は半歩も前進してないんだろうけど。
 それは近衛も判っているのか苦笑で応える。

「それで、ですね」

「流石に、もうアドバイスできる事はないぞ?」

 というか、この前のもアドバイスと言えるのかどうか怪しいし。

「そうじゃなくてですね、先生? 怒らんで下さいね?」

「……ん?」

 何やら雲行きが怪しいような……。

「その、手伝って欲しいんです」

「……なに?」

 これ以上何を、と。
 もう出せる知恵も無いんだが。

「明日、一緒に付いて来てもらえません?」

「あ、あのなぁ」

 流石にそれはどうかと。
 笑顔で言われても、そればかりは。

「折角の休みに教師と一緒とか、疲れるだろ?」

 神楽坂達も居るんだし、と説得してみる。
 それに、俺が居ない方が桜咲も気を許すだろうし。

「で、でも……頼んます、先生っ」

「そう、頭を下げられてもなぁ」

「……迷惑です?」

 うお、そうこっちを見上げてくれるなよ。
 完全に俺が悪者だろう、この形だと。
 自分でも笑顔が引き攣っているのが判る。困った……。

「迷惑じゃないが……居ない方が良いと思うぞ?」

 絶対、と。

「先生が居てくれた方が、気が楽なんですよぅ」

「気が楽って。そう言われてもな」

 困った。本当に困った。
 まさか休日に会うではなく、休日に誘われるとは。
 いくら個人と会うのではないとは言え、教師としてどうなのか、と。

「だがなぁ、近衛? 考えてもみろ。折角の休みだぞ?」

 お前はともかく、他の皆――特に桜咲はあまりいい顔はしないだろう、と。
 それはそれで悲しいが、まぁ教師なんてそんな職業だしなぁ。
 自分でそう考えて、心中で溜息を吐いてしまう。

「そ、それじゃ他の皆が良いって言ったら、大丈夫ですか?」

「……ま、まぁ」

 いや、大丈夫だろ、うん。
 流石に休日まで教師と一緒というのは誰だって嫌だろうし。
 というか、だ。

「あのな、近衛? 何でそんなに……まぁ、不安なのは判るが」

 それでもこの問題は、どうしても近衛と桜咲でしか解決できない問題なのだ。
 周囲に居る俺達は、手を出す事は出来ないのだ。
 だから、

「きっと」

「ん?」

「きっと、これが駄目でしたら、ウチはもうどうにも出来なくなります」

 そう言われた。
 ……笑っているが、泣きそうな顔。
 そんな顔は、初めて見た。
 近衛と知り合ってからではない。俺が今日まで生きて来て、だ。

「はぁ」

 溜息を、一つ。
 ああ、まったく。
 それは反則だ。

「まったく」

 そして、苦笑してテーブルに出されていた近衛の携帯を手に取る。

「番号を見て良いか?」

「ええんですか?」

 しょうがないだろ、と

「先生だからなぁ」

 生徒に頼られたら、応えなきゃ駄目だよなぁ。
 これは本当に“先生”として正しいのか、少し不安ではあるが。
 番号を打ち込み、一回だけ鳴らす。

「ほら」

「ありがとうございます」

 もう一度、苦笑。

「今回だけだからな?」

「はいっ」

 それに、どうせ居てもそう役に立たないぞ、と。

「そんな事ありませんえ」

「……そう言ってもらえると嬉しいんだが」

 頬を、指で掻く。
 そう言われても、俺はただの教師でしかないんだけどなぁ。

「それじゃあ、明日はよろしくお願いしますっ」

「他の人達の確認がちゃんと取れたら、な?」

「判ってますえ」

 ……はぁ。
 伝票をとって立ち上がる。

「あ」

「流石に、生徒に払わせる訳にもいかんだろ」

 どうせ俺に出来るのは――結局はこれくらいなのだ。





――――――近衛木乃香

 お店から出て、先生と並んで帰路についている途中。

「ありがとうございます、先生」

 そう頭を下げる。
 いっぱい、沢山、迷惑ばっかり掛けてしまってる。
 それが少しだけ心苦しい。

「別に気にしなくて良いぞ? そのかわり、頑張ってくれよ?」

 そんな、少しだけ楽しさ交じりの声をかけられる。
 うぅ、迷惑ばっかりで申し訳ないです。
 でも、それは最後に言おうと思うのですよ。
 だから、

「笑わないで下さいよー」

 うちは必死なんですから、と。
 そう、何とか笑顔で返す。
 そう言うと、今度は小さく、だけど声に出して笑う先生。

「本当に好きなんだなぁ、桜咲の事」

「へ? それはそうですよー」

 友達なんですから、と。
 そう言う。
 この前までは言えなかったけど、今なら言える。
 初めて会った時からずっと、ウチはせっちゃんの友達なんですから、と。

「うち、絶対仲直りしますからねっ」

「おー、期待してるぞー」

 そんな、何でもないように――凄く難しい事を、簡単に言う。
 これから頑張るのはウチなのになぁ、と。
 そう内心で苦笑してしまう。
 それはまるで、ウチらが仲直りするのが当たり前に思ってるみたいで……。

「ねぇ、先生?」

「ん?」

「……仲直り、できると思います?」

「どうだろうなぁ」

 う。
 そこは嘘でも、頷いてほしい所ですわ……先生、駄目ですえー。
 そんなウチの心の中を知ってか知らずか、

「近衛の頑張り次第だからなぁ」

 そうですね、と。
 ウチ次第、かぁ。
 ……難しい事をあっさり言ってくれるなぁ、と。
 そう内心で呟き、苦笑する。

「ウチ次第ですかぁ」

「本当に桜咲の事が好きなら、大丈夫さ」

「そうでしょうか?」

 やっぱり、不安ですわ。
 せっちゃん……何にも話してくれへんから。
 もし昔みたいに話せるようになって、それでも、何にも話してくれへんかったら。
 そう思ってしまう。
 友達やから、何でも話して欲しいって思う。
 そう……思ってしまう。
 ウチは、きっと欲張りなんだろう。
 せっちゃんの一番になりたいと。
 ウチの一番はせっちゃんやから、ウチもせっちゃんの一番になりたい、と。

「おー、大丈夫だ」

 そう、言ってくれる。
 そう言って、背中を押してくれる。
 まるでそれが当たり前みたいに。
 簡単に、気負いもせずに。
 だからウチも、苦笑してしまう。

「簡単に言ってくれますねー」

「頑張るのは俺じゃないからなぁ」

 ひどいです、と。
 頬を膨らませ、そう言う。
 だってそうじゃないか。
 こうした方が良いと言ってくれる、背中を押してくれる、ウチを見ていてくれる。
 ……でも、手を貸してはくれないのだ。
 どうするか……ウチに決めさせる。
 ひどい先生や。
 ホンマに。

「近衛はさ」

「はい?」

 そう、内心で先生に文句ばっかり言ってたら、先生から声を掛けられた。
 その高い位置にある顔を、見上げる。

「凄いと思う」

「ウチがですか?」

 何が、と。
 そんな言われるような事、ウチには無いと思います、と。
 そう言うと、笑われてしまった。

「普通、嫌われたらさ……距離をとるもんだ」

 仲直りをしようとして、失敗したらなおさら、と。
 そうなんでしょうか?
 ウチは――やっぱり、せっちゃんと仲良くなりたいです。
 前みたいに、一緒に遊びたいです。
 きっと、そうなったら……凄く、凄く楽しいと思うんです。
 だから……頑張れるんです。
 ウチの“最初の友達”は、せっちゃんやから。
 今、ウチはどんな顔をしてるんだろう?
 先生は、そんなウチを見て、嬉しそうに笑う。
 本当に、本当に……まるで、先生やなくて、男の子のよう。

「だからきっと、仲直り出来るさ」

「……そうですか?」

「おう」

 ……どうして、そんなに自信たっぷりなんです?
 頑張るウチが、こんなに緊張してるのに。
 なんかズルいわぁ。

「先生、なんかズルいです」

「ん?」

「ウチはこんなに困ってるのに、楽しそうやないですか」

「そうか?」

 はい、と。
 そう言うと、困ったように指で頬を掻く。

「まぁ、近衛の事を信じてるからなぁ」

「……はい?」

 信じてる、ですか?

「近衛なら、頑張って桜咲と仲直りしてくれるって」

「――プレッシャーですわー」

 でも、結構気は解れましたえ。
 ……明日、上手くいくかなぁ?
 いくと良いなぁ。




――――――エヴァンジェリン

「マスター、刹那さんを連れてきました」

「そうか」

 小さく、溜息を一つ。

「エヴァンジェリンさん……」

「そう睨むなよ、桜咲刹那」

 魔法使い側からそう好かれていないとは判っているが、こうも敵意剥き出しだとな。
 まぁ、コイツは知り合い以外なら誰に対してもそうなのかもしれないが。

「お嬢様の事で、何の用ですか?」

「判っているだろう? 修学旅行だよ」

 同じ京都出身だ。
 近衛木乃香がどういう立場なのかは判っているだろう。
 おそらく、私以上には。

「一つ聞きたい事があるんだよ」

「……何ですか?」

 クツ、と小さく笑う。
 なんて、判り易い。

「お前、近衛木乃香に魔法を知らせる事……どう思う?」

「……え?」

「お前の大事なお嬢様に、私が魔法を教えると言う事だ」

 アレだけ学校で近衛木乃香を避けていながら、その実、馬鹿みたいに想っている。
 傍に居る事を良しとせず、いつも陰から見ている。
 自身の異端に気付き、それでも光から離れられずにいる。
 ……まるで、遥か昔の私のよう。

「どういう事ですか? お嬢様は普通の人として――」

「まぁ、興味があるなら座ったらどうだ?」

「――エヴァンジェリンさん」

「長くなる。茶々丸、茶を」

「判りました」

 桜咲刹那からの視線を無視し、茶々丸に指示を出す。
 さて、と。

「座れ」

「…………」

 どう上手く言ったものか。
 どう、この扱いやすい人間で遊んだものか。

「お嬢様に魔法を教えるんですか――?」

「それはお前次第だ」

 私は、今は教えるつもりはない、と。

「今は?」

「ああ。近衛木乃香がどういう存在か知っているか?」

「――当たり前だっ」

 だろうな。
 関西呪術協会の長、近衛詠春の娘。
 麻帆良学園、学園長の孫。
 ……稀代の魔力の保有者。

「なら、話は早い――それで、近衛木乃香に魔法を教える事。お前はどう思う?」

「反対です」

 即答か……まぁ、そうだろうなぁ。
 その為にお前は、今日まで麻帆良に居たのだろうから。
 近衛木乃香を関わらせない為、その為に、その剣を振ってきたのだろうから。

「どうして?」

「お嬢様は優しい方だ……こんな、こんな“力”を知られたら、きっと」

 心を痛められる、と。
 そうだな。
 そうかもしれないな、と。

「だから陰から、巻き込まれないように護る、か?」

「はい、それが私の在る意味です」

「ふふ」

 笑ってしまう。
 可笑しくて、頬が緩む。
 そんなに強く言っても、どれだけの意思を持っていても――きっと、それは叶わない。
 近衛木乃香が“近衛木乃香”である限り。
 そしてそれは、逃げられない事なのだ。
 “力”とは、そういうものだと言うのに……お前も、判っているだろうに。
 “力”を持っているお前なら。
 だから、笑ってしまう。
 滑稽で――何処までも、愚かで。

「何を笑って……」

「なら、私は近衛木乃香に魔法を教えなければならないな」

「――なに?」

「別に、嫌がらせで言う訳じゃないよ、桜咲刹那」

 お茶です、と茶々丸から差し出された紅茶を受け取り、一口含む。
 うん。やはり美味いな。

「関西呪術協会が今どういう立場にあるか、お前は知っているか?」

「立場?」

「ああ。まぁ、大人の事情と言う奴だ――それでな」

 修学旅行で、近衛木乃香が狙われている、と。
 そう、隠す事無く伝える。

「……どうしてあなたが」

「近衛木乃香の護衛として爺から雇われた」

 その顔に浮かぶのは、驚き。

「学園から出れるのですか?」

「ああ――条件の一つとして、護衛があるがな」

 だが、と。

「正直、私は近衛木乃香が無事で、周りが巻き込まれないならそれで良い考えだ」

「え?」

「つまり、だ。一番簡単なのは、事情を説明して行動を制限する」

 魔法を知らせ、魔法を見せ……自身の存在の危険性を教える。 
 その魔力。その立場。そして、近衛木乃香が居る事で、どれだけ周囲に危険を及ぼすか、を。
 きっと、それは最良の選択だ。
 近衛木乃香の存在は、危険過ぎる。
 ……修学旅行に参加した全員を、危険にさらすほどに。

「近衛木乃香の為に、2年全員を危険にさらす訳にはいかないだろう?」

「だ、だ――が」

「だが、何だ?」

 そのまま、次の言葉を待つ。
 答えは決まっている。
 だがそれを、コイツが認めなければ意味が無いからだ。

「私が、お嬢様を――」

「お前一人じゃ、近衛木乃香も一般人も守れない」

 それが、トドメ。
 選べるのか?
 たった一人と、その他の全部を。
 たった一人の不確かな未来の為に、今居る友人、知人、全部を犠牲に出来るのか?
 それは大袈裟な言い方なのかもしれないが、可能性はゼロじゃない。

「…………………」

「一つ、案がある」

 黙ってしまった剣士を無視するかのように、一言。

「相手が手を出してくる前に、相手が手を出せないようにする」

「なに?」

「少なくとも、そうすれば一般人への被害はないだろうな」

 だがそれも相手が普通ならば、だ。
 私が思っている以上に愚かで短絡的な相手なら、意味も無い事。
 ……そこは、伏せておく。
 それほどまでに危険で物騒な相手なら、それこそこちらも手段を選んでいられないからな。

「ぼ――ネギ先生が、関西と関東との親書を届けるらしい」

「……なに?」

「それが届けば、呪術と魔法が手を結ぶ――相手の狙いは、それの阻止だ」

 そして、その保険が近衛木乃香だろう。
 関西呪術協会の長、近衛詠春の娘。
 人質。
 それが、近衛木乃香の立場。

「なら」

「手を出される前にそれを成せば、もしかしたら誰も巻き込まずに済むかもな」

 それは、酷く希望的な考え方。
 何故なら手を結ばれる前に妨害してくるからだ。
 当たり前の事。
 だが、そうなれば近衛木乃香と2年生が巻き込まれてしまう事。
 そうならないように、この愚か者は必死になるだろう。
 それが吉と出るか凶と出るかは判らんが……発破を掛けるのも、そう悪くないだろう。
 今回の件――どうあっても、もう止めようの無い事なのだ。
 それでも、

「それしかないのか?」

「ああ、それがたった一つだけ、近衛木乃香が巻き込まれずにすむ“かもしれない”方法だ」

 だから、と。

「手を貸してもらうぞ、桜咲刹那」

 ぼーやが親書を届けるのは修学旅行3日目。
 つまり、私達は3日間近衛木乃香を護り抜かなければならない――誰にも知られず。
 あの広い京都の中で、いつ狙われるか判らないのに、だ。
 それも、150人強の一般人と一緒に。

「お前がその血を隠している事は知っているが、護りたいなら傍に居て離れるな」

「……お前が傍に居れば」

「私は15年ぶりに外に出るんだぞ? 子守りなんぞ四六時中してられるか」

 それはごめんだ。
 それじゃ、この条件を呑んだ意味が無い。
 私だって、麻帆良から出る事、この条件が無ければ、ここまで言いはしない。
 所詮、どこまで行っても……他人事なのだから。

「夜は私が見てやるが、昼間はお前とぼーや……ネギ先生でどうにかしろ」

 それに、少数ではあるが、魔法先生も居るしな。
 ちなみに、ぼーやはとてもじゃないが使いものにならないがな、と。

「……英雄の息子じゃないのか? 学園長はずいぶんと――」

「ああ。魔力はある。才能もな……だが、それを生かす環境が無い」

 だからお前を呼んだのだ、神鳴流。
 アレが戦うには、盾が必要だ。
 大砲を撃つまでの間、その身を守る盾が。

「ネギ=スプリングフィールドと仮契約しろ、桜咲刹那」

「なっ!?」

 その頬が、若干朱に染まる。
 ほー、そんな顔も出来るのか。

「なっな……なんで!?」

「ぼーやには盾が必要で、お前には近衛木乃香を護る力が必要だろう?」

 条件としては良いと思うがな。
 それに、嫌なら修学旅行が終わったら解約すれば良い。

「ちなみに、龍宮真名も私が雇ったから、別件で動いてもらうことになってる」

 正真正銘、お前は今一人と言う事だ、と。そう伝える。
 ……それは嘘だが。

「近衛木乃香を護りたいなら、魔法を教えたくないなら――少しでも可能性を上げるべきだと思うが?」

「な、だ、だからと言うても」

 お、口調が変わった。

「なんだ、仮契約の方法は知ってるのか?」

「うなっ」

 耳年増め、と。
 余計にその頬の赤みが増す。

「マスター、真名さんと明日菜さんです」

 そこまで言った時、茶々丸から声が掛る。
 ……なに?

「どういう事だ?」

「いま、こちらに向かってきております」

 何の用だ? こんな時に。
 折角面白くなってきたというのに。

「どうなさいますか?」

「……ふん。まぁいい、通せ」

 龍宮真名も一緒なのが気になるしな。







「やっほー、エヴァ」

「ふむ、初めて来たがずいぶんとまぁ」

「ふん。世間話をしに来たのなら帰れ」

 相変わらず能天気な声に頭を痛め、目頭を指で押さえる。
 どうしてこいつは、私を吸血鬼として見ないのか。
 私に関われば、関わるほど危険だと言うのに。

「そうじゃなくて、ちょっと用事があったの」

「なんだ?」

 まったく。
 下らない用だったら叩き出すぞ、と。

「ぅ、ま……まぁ、多分?」

「茶々丸、追い出せ」

「ひどいぃ」

 誰が酷いだ。
 お前の為だと言うのに。

「……それで、何の用だ?」

 ああ、頭が痛い。

「明日一緒に買い物に行かない? あ、刹那さんと真名もどう?」

 はぁ。

「断る」

 人込みはあまり好きじゃない。

「そ、そこをなんとかっ」

「うぉ!?」

 て、手を握るなっ!?

「お、お願いよエヴァっ――あ、刹那さんも」

「どうして私は、そうとってつけたように言われるんだ……?」

「そう言ってやるな……まぁ、色々と事情があるんだとさ」

 何だ、事情って?

「良いから手を離せっ」

「オーケーって事? あ、刹那さんも」

 オーケーな訳あるかっ。
 くそっ。

「茶々丸っ、このバカを引きはがせっ」

「……マスターが楽しそう」

「このボケロボっ」

 楽しいわけあるかっ。
 くそ。

「理由はなんだ? 理由を言ってみろ……」

「あ、そこは内緒で」

 殴るぞ、このバカ。
 斜め45度で殴れば少しはマトモになるかもしれんな。

「ぅ、え、エヴァ? 可愛い顔が怖いわ……」

「ふん。……思い出したぞ」

「え!?」

 そう言えば、この前先生がそんな事を言ってたな。
 何か、近衛木乃香と桜咲刹那の事で。
 なるほど、と。
 桜咲刹那一人を誘うと不自然だからか。

「お前の入れ知恵だな?」

「ん? 何の事だか判らないな」

 このバカがそこまで頭が回るか。
 まったく。

「桜咲刹那、お前も来い」

「な、なに?」

「手伝うなら、少しは私に付き合え」

 ああ、まったく。
 どうしてこう、面倒臭いのに気に入られたんだか。

「どうして私が……」

「忘れるなよ? 私のさじ加減で、今日にも全部教えれるんだからな?」

「……脅しじゃないか」

 ふん。

「え、刹那さんも来てくれるの?」

 黙れ大根役者。
 棒読みじゃないか。

「ああ、桜咲刹那も来てくれるそうだ……お前は?」

「私は色々と忙しいんだよ」

 ……なんか、いい用に使われた気がする。

「そう怒らないでくれよ、明日はきっと良い事があるさ」

「ちっ……もう帰れ、私は疲れた」

「うん。ありがとね、エヴァ、刹那さん」

「え? 私はまだ何も……」

「諦めろ。それが刹那、お前の為だ」

 はぁ、と溜息を一つ。

「それと、刹那」

「――今度はなんだ?」

「先生が授業をサボる時は、前もって言えってさ」

 なんだそれは?

「……あ」

 そう言えば、午後の授業サボってたな、コイツ。

「面倒なのに目を付けられたな、桜咲刹那」

 同情するよ、心から。

「なに?」

「面倒だぞ――あの先生は」

 ま、この一件もあの先生が一枚咬んでるんだろうがな。
 ……しかし、私まで巻き込まれるとは。
 はぁ――今度は、どんな嫌味を言ってやろうか。





――――――今日のオコジョ――――――

「あ、あにきーー」

「どうしたんだい、か、カモくん」

 走る。走る。走る……二人で、並んで。
 あの――遥か遠くに見える幻の夕日に向かって。

「オレっちたち、いつまで、走れば……」

「一日が終わるまでだよ、きっと……」

 酷い。酷過ぎる……。
 だって放りこまれる直前の言葉が「とにかく走って体力つけてこい」だぜ!?
 せめて魔法を教えてくれ、魔法をっ。
 じゃないとオレっちまで走らないといけないんだからなっ。

「オレっちは頭脳労働派なのにっ」

「ぼく、もうだめ……」

 あ、兄貴ーーー!?


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