<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[25786] 普通の先生が頑張ります 15話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/09 23:47

「おはよう、皆ー」

「皆さん、おはようございます」

 その声に元気良く挨拶を返してくれる皆に一つ頷き、教卓へ。
 そのまま朝の点呼などはネギ先生に任せる。
 なかなか様になってきたなぁ、と。
 クラスの皆もちゃんとしてるし。

「それでは、僕からの連絡事項は以上です。先生からは?」

「自分からも、今日は特に無いですね」

「では、以上です」

 ――しかし、問題が一つ。

「それじゃ、最近は花粉も酷くなってきたようだし、みんな気を付けるように」

 マクダウェルが花粉と一緒に風邪を併発させて休んでいた。
 もう数日だ。
 ……大丈夫かな、と。
 去年一回見たけど、本当、弱いからなぁ。

「あー、神楽坂?」

 HRも終わり、ざわめきだした教室でその名前を呼ぶ。
 この喧騒の中でもその声は聞こえたらしく、早足でこっちへ。

「どうしたんですか?」

「昨日マクダウェルの様子見に言ったんだろ?」

 どうだった? と。

「凄かったです」

「そ、そうか」

 酷いとかじゃないんだな、表現。
 そんなに凄いのか……。

「まだ当分出てくるのは無理だと思いますよ?」

「そうかー……ああ、判った。また、看病してやってくれな?」

「あはは。風邪がうつるからって追い出されちゃいましたけど」

 まぁ、そこはマクダウェルの照れ隠しだろうけどな。
 さっき絡繰から聞いた話だと、その後は調子が良かったみたいだし。

「それじゃネギ先生、行きましょうか」

「あ、はい」

 さて、と。
 教室から出て、職員室へ向かう途中。

「先生」

「はい?」

「一つ聞きたい事があるんですけど、良いですか?」

 聞きたい事?
 まぁ、俺に答えれる事でしたら、と。

「それと、別にそう畏まらなくても」

「ぅ、そ、そうですか?」

 ええ、と。

「それで、どうしたんですか?」

「エヴァンジェリンさんの事なんですけど」

「マクダウェルですか?」

 ふむ――何日か前から少しぎくしゃくしてたし、その事かな?

「マクダウェルがどうしたんです?」

「ええと……先日、エヴァンジェリンさんと少し話したんです」

 あの時かな?
 マクダウェルが放課後に用があるとか言ってた時。
 丁度、そのくらいから少しぎくしゃくしてたし。

「はい。その時に何かあったんですか?」

「……その、ですね」

 はい。

「エヴァンジェリンさんにですね、その、頼まれ事をしたんです」

「頼まれ事、ですか」

「はい」

 珍しいな、と。
 あのマクダウェルが。

「それで、その頼まれ事がどうしたんですか?」

「えーっと」

 そこで言い淀みますか……。
 うーむ。

「でも、羨ましいですね」

「へ?」

「だって、マクダウェルから頼まれ事でしょう?」

 教師としては羨ましいですよ、と。

「そうですか?」

「ええ」

 自分なんて、暴言吐かれたりだけですからねぇ。
 苦笑し、その驚いた顔をしている少年を見る。

「だって、頼まれたと言う事は、頼られたって事じゃないですか」

「……はぁ」

「マクダウェルにそれだけ信頼されてるって事ですよ?」

 凄い事だと思うんだけどなぁ。
 もうすぐ授業が始まるので、生徒の減った廊下を歩く。

「そうですか?」

「そうですよ。ネギ先生は、誰かを頼るとしたら、どんな人から頼りますか?」

「え?」

「困った時に、最初に思い浮かぶ人ですよ」

 やっぱり、頼るなら信じられる人だと思うんだが。
 どうかな?

「そうですね――はい、僕も……信頼してる人を、頼ると思います」

「マクダウェルもネギ先生と同じ、と言う事です」

「……エヴァンジェリンさんが、僕を?」

「困ってる時は、誰だって人を頼るもんですよ」

 あのマクダウェルだって、そうなんだと思う。
 それが俺じゃなくてネギ先生なのは寂しいが……それでも、あの子が教師を頼ってくれたのは純粋に嬉しい。
 本当に、嬉しいのだ。
 今までのマクダウェルなら、内に溜め込むか、自分で解決しようとするか、それとも放置したままか。
 きっとそのどれかだっただろうから。

「何を頼られたのかは判りませんから、その事をどうこうは言えませんけどね」

「……僕は」

 はい、と。

「僕は、エヴァンジェリンさんが、少し怖いです」

「そうですか」

 まぁ、見た目はともかく口がなぁ。
 それが無いなら、クラスでももっと友達が出来るだろうに。
 それがマクダウェルらしいと言えばらしいんだが。
 苦笑し、

「マクダウェルは、まぁ、そう悪い奴じゃないですよ」

「はい。明日菜さんも木乃香さんもそう言ってます」

 ふむ。
 近衛も、マクダウェルと仲良くしてくれてるんだな。
 この調子でもっと友達が増えると良いんだが。
 っと、今はその事じゃなかったな。

「友達に相談したら、そんな事ないって言われました」

 はぁ。

「明日菜さんと木乃香さんは、信用できるって言いました」

 ――なるほど。

「友達と神楽坂達のどっちが信用できるか? それと、本当にマクダウェルを信用して良いのか、と」

「はい」

 そうですねぇ、と。

「そればっかりは、ネギ先生が考えないといけない事でしょうね」

「う」

「ネギ先生は、どうしたいんですか?」

「判りません」

 はい、と。

「マクダウェルが怖くて、頼み事をどうするか迷っています、と」

「……はい」

「神楽坂は頼み事を聞く様に言って、そのお友達は駄目だ、と」

「そうです」

「なら、後できる事は一つだけです」

 え、と。
 その低い位置にある頭に手を乗せ、ポンポンと撫でる。

「ネギ先生がマクダウェルを見て、友達と神楽坂達のどっちが正しいか確認してください」

「……え?」

「苦手と言うのは判ります、怖いと言うのも判ります」

 でも、と。

「そうやって先生が生徒を怖がってどうするんですか?」

 シャンとして下さい、と。

「いきなり仲良く、なんて言いません。ただ、マクダウェルが“今”どういう生徒か見て下さい」

 去年までは不登校の不良生徒だったのかもしれない。
 でも、今は――違うと、胸を張って良いんだから。

「そうして、ネギ先生がどうしたいか決めるんです」

「……………………」

「結局、周りがどう言っても、どうするか決めるのはネギ先生なんですから」

 10歳の子には難しいかな、と思ったが……この子なら大丈夫かな、と。
 賢い子だ。
 出会って数カ月だが、もう一通りの仕事はできてるし。

「それじゃ、今日も一日頑張りましょうか?」

「はいっ」

 良い返事です。







 うーん。どれが良いかなぁ、と。
 放課後、スーパーの店頭で10分ほど悩んでる。
 お見舞い品って……果物とかが普通、なのかな?
 実はお見舞いなんてした事無いので、どれが良いのか判らなくて困ってたり。

「……先生?」

「ん?」

 俺……だよな。
 声の方を振り向くと、

「おー、龍宮かぁ」

「どうしたんだい、先生。こんな所で?」

 んー……と、別に内緒にする事でもないか。
 言い訳もちゃんとあるし。

「マクダウェルが風邪で休んでるだろう?」

「ああ、御見舞いか」

「……去年はこのままサボり癖がついたからなぁ」

「大変だね、先生も」

「しょうがない。それが先生だからな」

 なんだそれ、と笑われながら、リンゴを一つ取る。

「見舞い品って、林檎とかバナナが良いと思うか?」

 それとも、花とかか? とさりげなく聞いてみる。

「まぁ、風邪だし果物が良いんじゃないかな?」

「なるほど」

 なら、適当に果物を詰めてもらうか。
 店員さんに見舞い品である事を伝え、詰めてもらう事にする。

「龍宮はどうしたんだ?」

「偶には晩飯でも作ろうかと思ってね」

「ほー……」

「嫌な反応だな、先生」

 ははは、と。

「しかし、エヴァの見舞いとはね」

「知らない仲じゃないからなぁ」

 それに、サボり癖がついたら困るし、と。

「釘を刺しとく訳か」

「言い方は悪いが、その通り」

「難儀な先生に目を付けられたもんだね」

 本人の前でそんな事言わないでくれよ、と。
 ちょっと傷付くぞ。

「ま、良いんじゃないか? 最近は丸くなったみたいだし」

「おー。龍宮も仲良くしてやってくれな」

「まぁ、もう少し丸くなったら考えない事も無いかな」

 なるほど。
 もう少し、か。
 そのもう少しが難しいんだよなぁ。

「しかし、明日菜と仲良くなるとは思わなかったよ」

「そうか?」

「ああ。エヴァの人間嫌いは結構なものだったからね」

 ふむ……確かに。

「未だに暴言吐かれるからなぁ」

 もう少しお淑やかに出来ないものか、あの子は。
 そうすれば雪広……いや、那波くらいには―――まぁ、喩がアレだが。

「ま、必要無いだろうけど気を付けて」

「なんでだ?」

 店員から詰めてもらった果物を受け取り支払いを済ませた時、そう言われた。
 しかし、結構な時間話してしまったな。

「まぁ、風邪をうつされたら大変だろう? って事ですよ」

「ああ……まぁ、その時はマスク付けて授業する事にするか」

「……熱心だね、本当に」

 もうすぐ修学旅行だからなぁ、と。

「そう言えば、もうすぐだったね」

 スーパーから出ると、まだ日は高い。
 春ももうすぐ終わるのかもなぁ、と。

「成績悪いと、修学旅行前に一回補習が入るからな」

「そこは先生の手腕に期待するよ」

 そうじゃないだろ、と。
 まったく。

「どーして、そうなるかなぁ」

「授業があまり好きじゃないからね」

 そう言えば、以前瀬流彦先生も言ってたな、と。
 まぁ、勉強なんてそんなもんなのかなぁ。

「それじゃ先生、私はこっちだから」

「おー、気を付けて帰れよー」

「はは。私より先生の方が心配だよ」

「……それは普通にショックだ」

 生徒に心配されるとは。
 でも、風邪も馬鹿に出来ないからなぁ。。

「それじゃ、先生」

「おー。また明日なぁ」







 しかし、久しぶりにマクダウェル宅に来ると少し懐かしいな。
 ……あれだけ迎えに来たからなぁ。

「さって」

 流石に、絡繰は掃除はしてないよな。
 中に居ると良いんだが。

「すいません」

 そう声を掛け、呼び鈴を押す。
 そして数秒ほど待った頃、ドアが開く。

「どうしましたか、先生」

 ドアを開けたのは、やっぱり絡繰だった。

「良く判ったな」

 いま、ドア開けた瞬間俺だって言わなかったか?

「はい。先生の声は覚えていますので」

 ……そ、それは凄いな。
 俺ってそんな特徴のある声じゃないと思うが、と。

「あ、これマクダウェルの見舞いに」

「お見舞い、ですか?」

「ああ。調子はどうだ?」

 スーパーで買ってきた果物を絡繰に渡す。
 こんなので良かったかな?

「どうぞ、中に。お茶をお淹れします」

 そう言って招き入れられると、いつかの朝を思い出して、小さく笑ってしまう。
 そうだった。こんな感じだったなぁ、と。
 そして、以前と同じように客間へ通され、あの時と同じ席に腰を下ろす。

「良い所に来ていただけて、助かりました」

「ん?」

 良い所?
 淹れてもらった紅茶を受け取り、どうしたんだ、と。

「ちょうど、マスターのお薬を取りに行こうとしていた所でした」

「おー……俺が居ても良いのか?」

「はい、先生ですので」

 ……信頼されている、のだろう。
 いや、嬉しいんだけど。
 嬉しいんだけど……なぁ。

「申し訳ありませんが、留守番をお願いしても良いでしょうか?」

「あー、ああ。判った。何とかする」

 しかし、見舞いに来て留守番を頼まれるとは思わなかった。
 心の準備と言うか、何かそう言うのが全く出来てない。

「すみません。病院が閉まる時間が近いので」

「急ぎ過ぎて事故しないように、気を付けてな」

「はい。マスターは二階で寝ておられますので、何かありましたら声をおかけ下さい」

 そう言って一礼。
 そのまま家を出ていくのは……本当に、取り残されてしまった。
 いや、別に何かしようと言う訳ではないんだが……ないんだが、だ。
 不用心すぎるぞ、絡繰。
 まぁ家探しする気も無いけどさ。

「さて」

 見舞いに来たのに、何もすることが無くなってしまった。
 と言うか、まさか留守番するとは予想もしてなかった。
 うん。
 どうしよう?

「こうなるなら、明日来ればよかったな」

 まぁ、今日偶々仕事が早く終わっただけなので明日来れる保証はないのだが。
 どうしようかなぁ、と。
 とりあえず紅茶を飲んで時間を潰すか。
 しかし、相変わらずの人形だ。
 増えては無いみたいだけど……やはり、圧倒される。

「一体どれくらいするんだろうなぁ」

 何気なく手に取ったのは、以前マクダウェルが手製だと言っていた人形だ。
 相変わらず、レベルが高い。
 将来どうするんだろうな?
 独学でこのレベルなら、プロで食っていけると思うんだが……うーん。
 まぁ、そこはマクダウェル次第か。
 他にもぬいぐるみやらが置いてあり、掃除も行き届いているし。
 ……何を観察してるんだ、俺は。
 そのまま十数分、ソファに座って時間を潰す。
 のんびりとしながら。
 こういう時間の使い方は良いなぁ。

「茶々丸?」

 その声は二階から。
 起きたのかな?

「……先生か?」

「おー、おはようマクダウェル」

「今は夕方だと思うがな」

 そう言ってくれるなよ、と苦笑。

「どうして居るんだ?」

 そう言いながら、パジャマ姿のまま二階から下りてくる。
 うん、わかった。この家の2人は不用心すぎる。
 まぁ、そんな2人しか居ない家に居る俺が言えた事じゃないだろうけど。

「マクダウェル、流石にその姿はどうかと思うぞ?」

「ふん。どうせ着替えても汗まみれになるだけだ」

「あのなぁ」

 はぁ。
 不用心というか、無防備と言うか。
 信頼されている、と前向きに考えておくか。
 それに、流石に生徒に“そんな事”を感じるような性格もしてないし。

「……顔、まだ赤いな」

 大丈夫か、と。

「熱があるからな」

「降りてこないで寝てろよ……二階に行くか?」

「一日中寝てると暇なんだよ」

 いや、なんとなく判るけどさ。
 病気とか怪我で休むと、やけに目が冴えるよな、と。

「そうだ。昨日は神楽坂明日菜と近衛木乃香が来たが、今日は先生か」

「悪かったな、俺で」

 林檎食うか?

「貰う。剥いてくれ」

「……しょうがない」

 病人だしな。
 っと。

「ナイフはあるか?」

「キッチンに果物ナイフがあるはずだ」

 はいはい。
 キッチンは初めて入るが、絡繰はこっちに来てたよな、と。
 ……包丁多いなぁ。
 果物ナイフがどれか判らないので、適当な大きさのナイフと小皿を持って戻る。

「ウサギに剥いてくれ」

「無理を言わないでくれよ……」

 そんな技術持ってないって。
 というか、リンゴの皮むきすら素人なんだが……まぁ、なんとかなるだろ。

「やけに危なっかしいな」

「そりゃ、素人だからなぁ」

 出来れば綺麗に剥きたいところだ、教師として。






――――――エヴァンジェリン

 カチコチと時計の秒針が時を刻む音。
 それと、

「……はぁ」

「っと」

 下手くそななナイフさばきと、私の溜息。
 それだけが響く時間。
 退屈だけど、暇ではない、のんびりとした――静かな時間。

「下手だな」

「素人だからな」

 それだけが理由じゃなさそうだけどな。
 見ていて本当に危なっかしい。
 その内手を切るぞ、絶対。

「大丈夫か?」

「多分」

 そこは嘘でも大丈夫と言っておけ、教師として。
 まったく。
 ま、見ている分には楽しいか。
 切って痛いのは私じゃないしな。

「先生でも、苦手な事があるんだなぁ」

 何と言うか――何でもそれなりに出来る、というイメージがあった。
 何でだろうか?

「………はは。そりゃなぁ」

 苦手な事の方が多いと思うぞ、と。
 そう言って、やけに楽しそうに笑う。

「何か変な事言ったか?」

「いや――絡繰と同じような事を言うんだな、って」

 なに?
 茶々丸と?

「なんでもない」

「……ムカツクな」

 ごめんごめん、と。
 まったく悪びれた様子も無く謝り……。

「っ」

「まぁ、そうなると思っていたよ」

 素人が、話しながらナイフを扱うから……まったく。
 しょうがないな。

「ティッシュ、何処だ?」

 ああ、まったく。
 苦笑し、慌ててティッシュを探す先生を止める。

「動くな、血が飛ぶ」

 ティッシュは……あったあった。
 リビングを血塗れにされる訳にもいかないからな。
 熱で重く感じる体を動かし、ティッシュを数枚取り、先生の方へ。

「ほら、傷を見せろ」

「す、すまん」

 また、結構深く切ったなぁ。流石素人。
 その傷口にティッシュを当て……その赤い、紅い血に、指先が触れる。
 ―――――ぁ。

「……押さえてろ」

「救急箱か絆創膏かないか?」

「戸棚の上だ」

 置いてあるであろう場所を指さし、ソファに腰を下ろす。
 風邪で上がった体温。
 熱に浮かされる身体。
 そして、むせ返る様な……久し振りに嗅いだ血の匂いと、世界を焼くほどに紅い赤。
 ――先生の血。

「だ、大丈夫か?」

「ああ――さっさと手当てしろ」

 酔った。
 酒精にではない――血に、酔った。
 いくら久しぶりに血を見たからと言って、こんなのはどれほど振りか。
 これほどまでに、浮かされるとは。
 まったく……吸血鬼らしくないな。
 は、ぁ――。

「部屋で横になるか?」

「ああ」

 そう言って立ち上がろうとし……もう一度腰を下ろす。
 ――力が、入らない。
 
「……大丈夫か?」

「……そう見えるか?」

 くらくらする。
 この部屋に満ちる血の匂いに――その指先の傷の香りに。
 自制できないほどではない。
 だが、動くには少しばかり時間が要りそうだ。

「ほら、おぶってやるから部屋に戻るぞ」

「……なに?」

「流石に、マンガみたいに抱き上げるのは嫌だろ?」

 それはそうだが……。
 ああ、思考が霞む。
 目の前にある背中――それが“いつかの誰か”のソレを思い起こさせる。

「すまん」

「いや、こっちがすまなかった」

 手を切って驚かせた、と。
 違う。
 そうじゃない。
 驚いたんじゃ、ないんだ。
 その背に身を預けながら、目を閉じる。
 ――息が、熱い。
 きっと、体温よりも、風邪の熱よりも――熱い。

「軽いなぁ、マクダウェル」

「……身体が小さいからな」

「もっとご飯を沢山食べないとな」

 そうだな、と。
 微かな振動。階段を上っているんだろう――目を、開ける。

「ぁ」

 視線が、その首筋に……囚われた。
 微かに香る汗の匂いと、ソレを覆うようにむせ返るほどの――血の香り。

「は、ぁ――」

「大丈夫か?」

「あ、ああ……大丈夫だ」

 自分の部屋を教え、もう一度……目を閉じる。
 いま、私は――。

「見舞いに来たのに、これじゃ悪化させたな」

「そんな事はない」

 その声が、耳に届く。
 トクントクンとなっているのは、私の心音か、それとも……。
 視覚が無く、他の感覚が鋭敏になっている。
 ……吸血鬼の感覚が、鋭敏になっている。

「大丈夫だ」

「そうか?」

 大丈夫――そう、言い聞かせる。
 先生にではない。自分に。自分自身に。――大丈夫、と。
 血は、要らない。
 ただの人間の血だから。
 何の魔力も無い人間の血だから。
 ――必要無い。

「しっかり捕まっててくれ」

 そう言われ、その首に回した腕に力を込める。
 ……目を開ければ、目の前に首筋がある。
 それを視界に抑えないように、とは思うが――視界から、その無防備な首が離れない。
 いや、視界を首から外せない。
 数瞬の後、私を支えていた手が片方外れ、扉が開く音。

「失礼します、っと」

「……ふん」

 そのまま、歩き――静かに降ろされる。
 一瞬腕に力を込め……でも、私も抵抗せずにその背から降りる。

「大丈夫か?」

「ああ。大分落ち着いた」

「……すまなかったな」

 そう言って、頭を下げる。
 まったく。

「こっちこそ悪かったな。見ていて面白かったから、止めなかった」

 ちなみに、私はナイフの扱いは得意だぞ、と。

「――俺も少し、料理するかなぁ」

「全然しないのか?」

「ああ。まさか、こんな所で必要になるとは思わなかったからな」

 ふふ……小さく笑い、ベッドに横になる。
 目を閉じる。
 血の匂いは――微か。

「寝る」

「ああ、絡繰が戻るまでは下に居るからな」

 ……気配が遠のき、扉が閉じる音。
 危なかった。
 本当に、危なかった。
 いくら風邪で弱っているとはいえ――だ。

「はぁ」

 吐息が、熱い。
 それはきっと、風邪の熱以上の熱さ。
 ――ああ。

「不味そうだったな」

 そう、言葉にする。
 不味そうだった。
 本当に――口に出来ないほどに、不味そうだった。

「は――――」

 そう言えば、先生と初めて会った頃もそんな事を考えたな、と。
 苦笑する。
 してしまう。
 それでも判ってしまう。
 きっと“あの時”と“今”じゃ――意味が違うのだろう、と。


 
――――――今日のオコジョ――――――

 まったく、兄貴は何を考えてるんだか。
 吸血鬼に血を?
 いけねぇいけねぇ、吸い尽くされるか操られるかだって。
 やっぱり、兄貴にはオレっちが居ねぇとダメみてぇだなぁ。
 でも、そこがネギの兄貴らしいぜ。

「……オコジョって確か絶滅危惧種かなんかじゃなかったか? なんで飼えんだよ!?」

「へー、千雨ちゃん物知りねぇ」

「いや、物知りとかの話じゃ――」

 しかし、凄い。
 ここって兄貴に聞いた話じゃ中学生の寮のはずだよな?
 ……何だ、あの姉さんの胸はっ。
 ちゅ、中学生って一体何なんだ!?

「オコジョって、こんなに大人しいのかしら?」

「肉食じゃなかったかな?」

「物知りねぇ、千雨ちゃん」

「……ちゃん付けはやめて下さい、千鶴さん」

 眼福、眼福じゃーーー。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.02878999710083