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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 14話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/09 23:12

「おー……おはよう、マクダウェル、絡繰」

「おはようございます、先生」

「ぐすっ――良い天気だな、先生。くしっ」

 おー…………。

「大変だなぁ、それ」

「余計な世辞はいいっ。まったく、この季節は憂鬱だ」

「……みたいだなぁ。大丈夫か?」

 花粉症とは無縁の体質だからどうにも言えないが……大変なんだろうなぁ。
 珍しく朝早くに登校してるかと思ったら、今日からはコレか。

「あんまり無理するなよ?」

 酷いようなら、保健室で寝てていいから、と。

「ふ、ん――ぐす、大きなお世話だ」

 はいはい、下手に心配して悪かったな。
 本当、こう言う所はプライドが高いと言うか……それが、マクダウェルらしいと言うか。
 まぁ、この調子ならまだ大丈夫そうだなぁ。

「絡繰、あんまり酷いようなら、保健室に運んでやってくれ」

「かしこまりました」

「だ、か、らっ、何で茶々丸にそう言う事を言うんだっ」

「だって……絡繰に頼んでたら、安心だし」

 いつも一緒に居るじゃないか、と。
 放課後はその限りじゃないけど。
 学園内だけでも一緒に居るなら、安心できるし。

「ありがとうございます」

「茶々丸もっ、ぐすっ、一々反応するなっ」

「興奮すると、花粉症酷くなるぞ?」

「――――ちっ」

 何か、今日はやけに怒りっぽいなぁ。
 花粉症できついはずなんだが……朝も早いし。
 寝起きが悪かったんだろうか? 花粉症だけど。

「何だ、その顔は?」

「ん? 何が?」

「…………変な顔だと言ってるんだ」

 しかし、相変わらず口悪いなぁ、コイツ。
 他の先生にだけでも、もう少し……なぁ。

「失礼な奴だなぁ」

「……ふん」

 だがまぁ、そこはおいおいで。
 機嫌を損ねられて、また迎えに行く羽目になったら……流石に、そこまで神楽坂に頼めないよなぁ。
 それは頼り過ぎだろ、と苦笑してしまう。

「気持ち悪い奴だな」

「マクダウェルがきちんと登校してくれて嬉しいんだよ」

「はっ――」

 鼻で笑われた。花粉症で鼻を赤くしてるのに、である。
 むぅ。

「どうせ、すぐ花粉症も治るしな」

「そうなのか?」

「ああ……だから気にするな」

 なら良いけど、と。
 強がりもそこまでいけば立派だなぁ、と思わなくも無い。
 流石マクダウェルだ。
 何が流石かは良く判らないが。

「それよりも、だ」

「ん?」

 その後は特に喋らず、のんびりと、桜を眺めながら学園に向かっていたら、そう声を掛けられた。 
 そう言えば、今年は花見に行かなかったなぁ。
 ……誘う相手が居ないんだがね。

「今日の放課後、ぼー……ネギ先生を貸してもらえるか?」

「ネギ先生?」

 なんでまた?
 そう聞くと、少し悩むように顎に手を当て、

「少し、私用だ」

「……まぁ、ネギ先生に聞いてみないと判らんが」

 あっちが大丈夫なら、良いんじゃないか? と。
 でもまぁ、ペットの世話の準備とか、仕事もあるし忙しいかもなぁ。

「そうか。なら大丈夫だな」

「いや、ネギ先生も忙しいかもしれないんだが……」

 前向きというか、何というか。
 そのマクダウェルらしい在り方に苦笑し、その頭をポンポンと撫でる。

「ワガママはあんまり言うなよー」

「誰がっ! ぐしっ、それ、とっ、髪が乱れるっ」

「あ、すまん」

 ついつい。
 ちょうど良い高さだよな、その頭の位置、と。
 ふん――と怒られてしまった。

「あ、エヴァ、茶々丸さん」

 っと。

「おはよう、神楽坂、近衛」

「おはようですえ、先生」

「あ、先生」

 神楽坂、その今気付きました的な顔は傷つく、結構。
 そんないつもの神楽坂に苦笑し……近衛もその隣で苦笑していた。

「エヴァンジェリンさんと茶々丸さんもおはよー」

「ああ、おはよう。神楽坂明日菜、近衛木乃香」

「おはようございます、明日菜さん、木乃香さん」

 っと。

「ネギ先生は?」

「あ、ネギ…先生? あのエ……カモの相手してたら、電車一つ乗り遅れました」

 カモ? って何だ?
 そう顔に出たのか

「あ、オコジョですオコジョ。名前がアル何とかって長くて、略してカモらしいです」

「……名前くらい覚えてやれよ」

 あのオコジョも可哀想に。
 まぁ、電車一本くらいなら朝のHRには間に合うか。
 むしろ、寝坊とかしないあたり凄いと思うし。

「ぅ、良いんですよ。あんなのはカモで」

「まぁ、ネギ先生が何も言わないなら良いが」

 しかし、カモねぇ。
 ネギとカモで、ってそれは失礼か。

「先生、あのカモくん知ってるんです?」

「おー、昨日職員室に連れてきてた」

 可愛かったなぁ、と。

「先生、動物好きだったりします?」

「おー」

「ですが、先生はあまり動物に好かれやすくはありません」

「……言ってくれるな」

 判ってる、判ってるから。
 それでもさぁ……。

「それやと、先生は大変ですなぁ」

「ぅ、大丈夫だ。タバコ吸わないし」

 そう言う問題? という近衛の質問に苦笑いで返し、ふと反対側を見る。

「エヴァは動物って好き?」

「別に……普通だ」

「そっかぁ、普通かぁ」

 神楽坂が話しかけ、マクダウェルが答える。
 ……うん。

「先生、楽しそうです」

「おー、こうやって生徒と登校するのは初めてだからなぁ」

「そうですか」

 こういう時は、本当、教師やってて良かったって思える。
 ふぅ、と静かに、でも深く息を吸う。
 それじゃ、今日も一日頑張るか。







「先生」

 ん?

「どうした、絡繰?」

 放課後、職員室を訪ねてきたのは絡繰一人だった。
 学園内だといつもマクダウェルと一緒だと思ってたんだが。

「マクダウェルとは一緒じゃないんだな」

「はい。マスターはネギ先生の所へ」

 ああ。そう言えば朝そんな事を言ってたな。
 ネギ先生も仕事はある程度はちゃんと片付けていったし、偉いもんだ。
 ……まぁ、残りは俺がやってるんだけど。
 それくらいは良いか、と。
 マクダウェルの用事って言ってたし――しょうがないだろ、そこは。
 生徒第一だ。

「ああ、そうだったな。それで、どうしたんだ?」

「お時間を少しいただけないでしょうか?」

「時間?」

 はい、と。
 えっと。

「何か用事か?」

「いえ――お時間がありましたら、茶道部の方まで来ていただけないかと」

 茶道部?

「そう言えば、絡繰は茶道部だったな」

 中学で茶道とか囲碁というのも凄い趣味だなぁ、とは思ったが。
 テレビとかで見る感じだと、お年寄りばっかり映ってるし。

「はい。どうでしょうか?」

「えーっと……どうして茶道部なんだ?」

 呼ばれる理由が、まったく思い浮かばない。
 何かしたか? と思うんだが、特にはなぁ。

「お礼を、と思いまして」

「お礼?」

「はい」

 余計に、判らなくなった。
 本当に何かしたか?
 登校の時に喋った事以外、今日は特に絡繰とは喋って無いんだが。
 前か?
 でも……猫とかは、むしろ俺がお礼しないといけないはずだし。
 うーん。

「まぁ、良いけど……少し待ってもらって良いか?」

「構いません」

 そうか、と。
 えっと。

「あと30分くらいかかるけど、大丈夫か?」

「はい」

 手元のプリントに目を通す。
 今日行った各クラスの小テストだ。
 あと数クラス分……まぁ、30分もあれば少し余裕もあるだろう。

「それじゃ、今日した小テストの採点が終わったら、茶道部に行けばいいのかな?」

「はい、お待ちしております」

 そう言って、深く一礼。
 絡繰は礼儀正しいなぁ。
 マクダウェルにも見習ってほしいもんだ。

「判った。それじゃ、また後でな」

「――はい」

 職員室から出ていく背を、目で追う。

「どうしたんですか、先生?」

「あー……どうしたんでしょう?」

「生徒からお誘いとは」

 いや、絶対そんな意味じゃないですから、と。

「瀬流彦先生は、呼ばれた事あります? 生徒から」

「うーん、僕は結婚してるってもうみんな知ってるからねぇ」

 それが無かったら声が掛けられていた、と言いたいようだ。
 まぁ、瀬流彦先生顔良いもんなぁ。
 羨ましい。
 俺も、生徒からお呼ばれしたいもんだ……って、今誘われたのか。

「それに、あの子ならそんな事無いでしょうしね」

「ですねぇ」

 しかし、お礼ってなんだろう?
 そんな事してもらう覚えが本当に無いんだが。

「ま、悩んでるより仕事を早く終わらせた方が良いんじゃないかな?」

「そうですね」

 さって、それじゃ俺のクラスの点数はいくつかなぁ、と。







 ええっと。
 茶道部の部室って、ここだよな?
 視線の先には凄く立派な家があった。
 家、というのが正しいのかは知らないが……少なくとも、これを建てるのに相当のお金が掛っているのは判る。
 ……やっぱり凄いんだな、ウチの学校。
 あ、ちゃんと茶道部って看板もあるんだ。

「っと」

 見とれてる場合じゃなかったな。
 さて、絡繰は、っと。
 外には居ないみたいだから、中かな?
 カポーンと、テレビとかで良く聞く音が響く。
 アレって、本当に聞こえるんだ。
 池の中には……流石に鯉は飼ってないか。

「先生」

「お」

 ちょうど池を覗き込むような体勢で、後ろから話しかけられる。
 少し驚きながら振り返ると、絡繰が居た。

「おー」

 着物姿で。

「良く似合ってるなぁ」

「ありがとうございます」

 以前見た近衛とはまた違った模様だったが、良く似合っている。
 長い髪はアップに纏められて、普段とは少し雰囲気が違って見える。
 絡繰はどこか人形然とした所があるけど……うん、身長もあるから、着物が良く映えるな。

「茶道部の活動って、着物なのか?」

「私は、良く着させていただいています」

「そうなのか」

 それで、と。

「お礼って言ってたけど、俺何かしたか?」

「はい」

 何かしたらしい。
 ……まったく思い浮かばない。
 自分でも笑顔が引き攣るのが判る。
 流石に、理由も判らないでお礼されるのは失礼だろう。
 えっと……絡繰だろ。
 なら――マクダウェルか?
 俺がマクダウェルにした事と言えば……何だろう? 迎えに行ったくらいだしなぁ。
 それとも絡繰に何かしたかな?
 ……どっちにしても、お礼されるような事じゃないよなぁ。

「それでは、こちらへ」

「あ、ああ」

 そう言われ、首を傾げながらその背について行く。
 何したかなぁ。

「そう言えば。最近はマクダウェル、機嫌良さそうだな」

「はい」

 ここの所、毎日登校してきてるし、うん。
 良かった良かった。
 あとは今日みたいに早く登校してくれると良いんだが。

「夜は遅いですが」

「……まぁ、それくらいは良いか」

 授業中に寝る事も……まぁ、減ったし。
 あとは、それと口調だなぁ。
 アレはどうにかならないものか……まぁ、こっちも地道に頑張るしかないか。

「どうぞ、中へ」

「お、ありがとな」

 招き入れられた所は……和室だった。
 いや、茶道部の部室だから当たり前なんだが。
 へぇ。

「結構広いんだなぁ」

 予想していたよりも、ずっと広く感じる。
 内装は、質素、と言うのだろうか?
 あまり飾り気は無く、本当に――何と言うか、静かな空間、と言うか。
 落ち着く。
 それは俺が日本人で、下が畳だからか。
 良いなぁ、こう言うの。

「はい」

 それでは、準備します、と。
 さて……何処に座るんだ?
 茶道の礼儀やら作法なんて判らないんだが……。
 ええと。

「部活の人は?」

「もう帰られました」

 げ。

「悪かったな。遅過ぎた」

「いえ――そちらの方へ、お座り下さい」

「ああ、判った」

 絡繰の若干斜め前に腰を下ろし、正座で座る。

「作法とか判らないから、教えてくれないか?」

「いえ、先生のお好きなようにどうぞ」

 そうか?

「こういうのも知ってたら良かったんだが」

「先生でも知らない事があるのですね」

「はは、それりゃなぁ」

 絡繰のその言い方が可笑しくて、悪いかもしれないが笑ってしまった。

「知らない事の方が多いと思うぞ」

 なにせ、今でも休みの日は勉強しないといけないからなぁ、と。

「そうなのですか?」

「おー。勉強ばっかりの毎日だ」

 昼間は授業があるしなぁ、と。
 まぁ、そういう生活がそう嫌いではないのだが。
 そんな事を話しながらも、視線は絡繰の手へ。
 本当に作法とかは判らないが、その手は淀み無くお茶を入れる作業をこなしていく。
 そう言えば、

「こういう時は、お茶を点てるって言ったっけ?」

「はい。本当ならお茶菓子も用意したかったのですが」

「いい、いい。そこまでしてくれなくて」

「いいえ」

 こちらを、と
 差し出されたのは一切れの羊羹だった。

「ん? お茶菓子?」

「本来ならもう一種、干菓子をご用意しておくべきなのですが……」

 部費は皆さんのお金ですので、と。
 こっちこそ、お茶を御馳走してくれるだけでも十分過ぎるし。

「こうやって、ちゃんとお茶を点ててもらうだけでも嬉しいもんだ」

 しかも、お礼だと言うし。
 そう言った事をしてもらうのは初めてなので、どうにもこうにも。
 まだ仕事が少し残っているが、きっと今日は早く終わると思う。

「今度お誘いする時は、ちゃんとしたものを用意しておきます」

「いいんだけどなぁ……」

 律義というか、何というか。
 そこが絡繰らしいと言うか――苦笑し、視線を外へ。
 景色も綺麗なもんだ。
 良いなぁ、茶道部。
 来年は、俺もどこかの部活の顧問に……無理か。仕事が忙し過ぎる。
 まだまだ作業遅いしなぁ。

「先生、どうぞ」

 そんな事を考えているうちに、点てられたお茶を差し出された。
 おー……。
 何か濁ってるんだけど……こう言う物なんだろう。
 まさに緑茶、と言った感じだ。
 ……苦そうだな。

「ええっと」

「お好きなようにどうぞ」

「……あー、すまん」

 何か手にとって手元で回したりするんだったよなぁ、と。
 テレビで見た事何とか思い出そうとするが、細部を思い出せない。
 どっちに回すのか全然わからないんだけど……。

「いただきます」

「どうぞ」

 多分いただきますも違うんだろうなぁ、と苦笑しながら点ててもらった茶を一口。
 おお?

「苦くないんだな」

 いや、苦いんだけど。
 思っていたより苦くないと言うか、飲みやすいと言うか。
 うん。美味い。

「羊羹を先に食べられますと、更に美味しく感じられるかと」

「なるほどなぁ」

 そう言われ、茶と一度置き、羊羹を一口。
 こっちは甘いなぁ。
 そして、言われたように茶を飲むと

「ああ、確かに」

 甘いのの後に程よく苦いのを飲むと、美味く感じるのか。
 奥が深いんだなぁ、茶道。
 当たり前か、と苦笑し、茶を戻す。

「ごちそうさま」

「――――」

 そう言うと、絡繰が俺に向けて一礼する。
 それも作法なんだろうな。
 それにつられて、俺も一礼する。
 ごちそうさまでした、と。

「なぁ、絡繰?」

「なんでしょうか?」

「……非常に聞き難いんだが、俺、何かしたか?」

「はい」

 何したんだろう?
 ここまで思い出せないと、不安で仕方が無いんだが。
 そうやって、心中で頭を悩ませていると……。

「昨日、マスターに友達が出来ました」

 そう、ぽつりと絡繰が漏らす。
 マクダウェルに友達?

「おー、もしかして神楽坂か?」

「……知ってられたんですか?」

 いや、と。
 首を振るが、まぁ何となく予想は付いていた。

「最近仲良いからなぁ、判り易い」

「そうでしょうか?」

「絡繰だって、いつもマクダウェルが楽しそうって言ってたじゃないか」

「…………はい」

 だろ? と。
 あの2人は判り易い。
 神楽坂もそうだが――マクダウェルも、結構態度に出るからなぁ。
 最近は特に。
 
「ありがとうございます」

「ん?」

 また、頭を下げられた。

「下げるなら、神楽坂に下げるべきだと思うぞ」

「いえ、明日菜さんは友達ですので」

「……まぁ、友達に頭下げるのも変だな、うん」

 カコン、と遠くで音がした。

「生徒が教師に頭を下げる時は、迷惑掛けた時だけで良いからな?」

「では」

 と、もう一度下げられた。
 いやいや、と。

「迷惑なんてかけて無いだろ?」

「そうでしょうか?」

 ……あれ?
 首を傾げ、最初はマクダウェルの不登校からだったなぁ、と。
 ま、まぁいいか。
 あれはマクダウェルであって、絡繰じゃないし。
 それに、あの時間は結構楽しかったし。うん。

「マスターの不登校、また勉強不足は御迷惑だと思いますが」

「あー、まぁ、うん。そこは気にしなくて良い」

 俺は別に迷惑だなんて思ってないから、と。
 でも、勉強してもらえるならうれしいかなぁ。
 
「お礼だって気にしなくて良いからな? まぁ、嬉しいけど」

 嬉しいのは本当なので、そこはちゃんと伝えておく。
 いや、本当に凄く嬉しいし。
 こうやって生徒にもてなしてもらうとか、きっと部屋に戻ったら思い出す自信がある。

「申し訳ありません」

「……謝らなくても良いんだが」

「私はこのような時、どうしたら良いか判りません」

 また堅苦しい言い方だなぁ、と苦笑してしまう。

「別に何もしなくても良いと思うが」

「そうですか?」

「おー。今まで通りしてくれたら、それが助かる」

 うん。
 いきなり変わられても反応に困るし。
 今まで通りが一番だ。

「ま、明日からもマクダウェルをよろしくな」

「はい」

 そうだなぁ、と。

「花粉症が治ったら、毎日今日くらいの時間に登校してくれると助かるな」

「判りました」

 まぁ結局、俺が何かしたのは最初だけなんだし……きっとそれくらいが妥当だろう。
 マクダウェルも朝が苦手だって言ってたし、それくらいは頑張ってもらうとしよう。

「片付け、手伝うか?」

「いえ」

 そうか、と。

「それじゃ、職員室に戻るから何かあったら声掛けてくれ」

「……判りました」

 今度は、頭は下げられなかった。





――――――エヴァンジェリン

「おーい、エヴァー」

「……どうしてお前まで居るんだ、神楽坂明日菜」

 何だ、この出鼻を挫かれた感じは。
 頭痛を感じ、ソレを抑える為に目頭を押さえる。
 折角真面目な話をしようと人払いを済ませ、雰囲気出して桜通りの桜が綺麗な場所で待っていたと言うのに。

「だって、あんたとネギが会うって言うから」

「ぼーや……魔法使いの秘匿義務というのから、お前には教えなければならないのか?」

「いやいや、私が無理やり付いて来たのよっ」

 何だと?

「お前、昨日魔法使いに関わるなと言ったばかりだろうがっ」

「だ、だってぇ」

 こ、このトリ頭がっ。
 まったく。

「帰れ」

「い、いやよ」

「帰れ、と言ったぞ」

「い、いや、って言ったわ」

 …………はぁ。
 こっちは花粉症でただでさえダルイというのに。

「何か言いたい事があるなら言ってみろ、待ってやる」

「あ、ありがと」

 ぼーや、とりあえず座るぞ、とベンチに腰掛ける。

「そう言えば、オコジョはどうした?」

「カモ君ですか? 女子寮の管理人さんに預けてきました」

「……大丈夫なのか? 喋ったりとか」

「はい。去勢は流石に嫌らしくて……はは」

 だろうなぁ、と。

「喋りたい時は、僕が部屋まで運んでから喋ってますし」

 あ、ちゃんと木乃香さんが居ない時にですよ、と。
 なんだ、案外ちゃんとしてるんだな。

「ならいいが」

「ねぇ、エヴァ」

「何だ、バカ」

「うぅ……」

 お前なんかバカで十分だ。
 自分から危ない橋を渡ってどうするんだ? まったく。

「だって、エヴァって悪い魔法使いなんでしょ?」

「……ああ」

 またその話か?

「ネギと喧嘩したら危ないじゃない」

「……危ないで済まないんだがな」

 特にお前が。
 はぁ。

「帰らないんなら、さっさと話をするぞ」

 この調子じゃ、どうしようもなさそうだ。
 ……昨日もっと強く言っておくべきだった。
 こほん、と。一つ咳払い。

「ぼーや、何か言いたいんじゃないのか?」

「えっと……」

 桜通りのベンチに並んで腰かけ、静かな時間を過ごす。
 まるで昨日のようだな、と。
 茶々丸の代わりにぼーやが居るのが違うだけなんだが。

「昨日、知ったんですけど」

「くしっ……すまん」

「い、いえ」

 しかし、どうしても毎年の花粉症だけはどうにもならんな。
 どれだけ魔法障壁を厚くしても、空気まで遮断する訳にはいかないし。
 そうすると、どうしても微量の花粉が入り込んできてしまうのだ。
 どうにかならんものか。

「エヴァンジェリンさんって……“あの”エヴァンジェリンさん、なんですよ、ね?」

「ああ。あのオコジョ妖精が調べたんだろう?」

「や、やっぱり……」

 いまさら驚く――事か。
 まぁ、私は怖がられてたからなぁ。

「それでだ、ぼーや」

「は、はい」

「私は、今どうしても欲しいものがある」

「ほ、欲しいものですか?」

 ああ、と。
 いきなり言っても怖がられるだろうし……どうしたものか。

「そうだな。どうして吸血鬼がこの学園に、と思うか?」

「はい。それに、エヴァンジェリンさんは15年に」

「ああ――私は15年前からこの学園に居る」

 そう、あの日、あの時――置いていかれたから。
 私を置いていった男。
 “千の呪文”ナギ。
 ――ぼーやの父親。
 今でも覚えている……あの時、ナギが言った事を。
 生きる、と言う事を。

「ぼーや、登校地獄、という呪いを知ってるか?」

「は? 何そのふざけた名前」

 お前には言ってない、神楽坂明日菜。
 ソレを軽く無視し、視線をぼーやに向ける。

「いえ、明日菜さん。実際にある呪いなんですよ」

「……マジで?」

「内容は省くが……まぁその名の通り、学校に登校し続けさせられる呪いだ」

「嫌ぁ、それだけは嫌だわ」

 ああ、まったくもって同感だ。

「そして、私はその呪いに囚われている訳だ」

「そ、そうなんですか?」

「……ああ」

「うわぁ」

 神楽坂明日菜、お前は黙っていろ。
 折角の緊張感が台無しだ。まったく。

「……はぁい」

「そして、その呪いを解きたい訳だ」

「ん? どうしてそこでネギなのよ?」

「黙っていろといったぞ」

 まったく。
 喋ってないと死ぬとかいう人種か、お前は。

「この呪いを掛けたのがぼーやの父親だからだ」

「…………はい?」

 はぁ。

「ナギ・スプリングフィールド。ぼーやの父親が、私に呪いを掛けたんだよ」

「父さんが?」

「ああ。15年前にな」

 ――――光に生きてみろ。
 今でも覚えている……きっと、忘れられない言葉だ。

「そして、3年後……呪いを解きに来ると言って――来なかった」

「そんな……」

「別に、恨んで……はいるが、まぁ、それは今はどうでも良い」

 だがな、ナギ。
 お前は一つ間違えていた……正しくて、でも一つ間違えていたよ。
 光で生きるだけじゃ駄目だったんだ。
 陽の下で生きるだけじゃ、意味は無かったんだ。
 光を知り、陽の下を歩く事に“意味”を見出さなければ。
 言葉足らず――魔法学校中退のお前らしい、間抜けさ。

「だから、諦めていたんだが……ぼーやが来た」

「僕に呪いを?」

「いや、血を少し分けてくれれば良い」

 血!? と騒ぐ神楽坂明日菜を一睨みで黙らせる。

「どうしてですか? ……エヴァンジェリンさんは」

「悪い吸血鬼だから、信用できないか?」

 そうだよな、と。
 それが、普通の反応だ。
 吸血鬼。悪の魔法使い。闇の福音。
 それが私の呼び名。
 それが――私と言う存在なのだ。

「ほ、他に方法無いの? 血って、死んじゃうんじゃないの? 吸血鬼になるとか」

「……あのなぁ、そこまでする筈ないだろうが」

「え?」

 はぁ、と。
 溜息を一つ吐く。

「私は今魔力を封じられている。それはぼーやも判るだろう?」

「そ、そうですね。今のエヴァンジェリンさんからは、魔力は感じられません」

 だろう? と。

「なのに、15年も無事だった……何故だと思う?」

「え? 何でよ?」

 少しは自分で考えろ、と言いたくもなるが、まぁいいか。

「死んだ事になってたから……?」

「ぼーやは正解だ」

「え? エヴァってここに生きてるじゃん」

「……裏…魔法世界や賞金稼ぎの世界じゃ死んだ事になってるんだよ」

 まったく、と。

「つまり、だ。平和なんだよ、今の私の周りは」

 争いと言っても、麻帆良への侵入者くらい。
 じじいの庇護があるから、他の魔法先生も私へは手を出せない。
 私から関わらないなら、争いというものは――偶にあるくらいなのだ。

「……まぁ、吸血鬼が学校に通ってくらいだしねー」

「そう言う事だ」

 で、だ。

「ぼーやを傷つければ、どうなると思う?」

「……えっと、生きてるのがバレると言う事ですか?」

「正解だ」

 流石にそれは、私も御免被りたい。

「争いが嫌いな訳じゃないが、そこまで好きな訳でもないんでな」

 それで、と。

「流石にな、中学生活にも飽きた」

「えー!?」

 あーまったく、煩いなぁ。

「卒業するには、ぼーやの血が要るんだよっ」

「……そうなの?」

「いきなり封印を解くと面倒だからな、少しずつ解いていく。大丈夫、命に関わる吸い方はしない」

「はぁ……なら良いですけど」

「良いんだ!?」

「だって、卒業してもらう為なら……それに、少しなんですよね?」

 ああ、と。

「修学旅行前には、少し多めに貰うかもな」

「なんでよ?」

「この呪いの所為で、麻帆良から出られないんだよ……」

 あー、と。

「だからあんた、今までの行事サボってたんだ」

「好きでサボってたわけじゃないっ」

 私だってなぁ……そりゃ、外に出たいんだ。
 いくら大きな街とはいえ、15年も居れば飽きる。

「でも、エヴァンジェリンさんって……だったら麻帆良から出て大丈夫なんですか?」

「その辺りはじじいと相談する」

「学園長と?」

 ふん。

「呪いを解いて良いと言ったのはじじいだからな。そのくらい覚悟の上だろう」

「良いのかなぁ」

「それで、ぼーや。答えは?」

 え? と。
 おいおい、今の話を聞いていたのか?

「……少し、考えさせて下さい」

「判った」

 ま、別に今すぐ答えが出るとも思ってない。
 そう言い、立ち上がる。

「あ、でもそれだと今度の修学旅行はエヴァも一緒に行けるんだ」

「まぁ、まだ判らんがな」

「じゃあさ、同じ班になろーね」

「…………気が向いたらな」

 はぁ、と。
 頭が痛いのは、花粉症の所為以外だな。

「それじゃ、また明日な。神楽坂明日菜、ぼーや」

「うん、また明日ね、エヴァ」

「はい、エヴァンジェリンさん」

 まったく……。

「今度こそ、もう魔法には関わるなよ、神楽坂明日菜」

「ぅ、うん」

「それと、夜遅くに出歩くなよ?」

「またそれ!?」

「昨日言ってもう魔法関係に首突っ込んだのは誰だっ!」

 はぁ。

「だって、エヴァの事じゃない」

「だってじゃない」

 ……関わり過ぎたら、記憶を消されるんだぞ。
 ――まったく。
 本当に危なっかしいヤツだな、コイツは。

「いいな? もう関わるなよ?」

「……はぁい」

「ぼーやも、オコジョになるだけじゃ済まなくなるからな?」

「ぅ」

 どうして私が子守りをしなければならないんだ。
 こういうのはタカミチかじじいの仕事じゃないのか?
 はぁ。
 さっさと帰るか……頭が痛い。





――――――今日のオコジョ――――――

「はい、どうぞ」

 オレっちは……オレっちは、今猛烈に悲しいっ。

「わー、食べたよゆえゆえ」

「このか、動物は差し出されたものは食べるものです」

 このオレっち、アルベール様をそんじょそこらの野良と一緒にするなっ。
 と声に出して言いたいが……喋れねぇ。
 しゃ、喋ったら……。

「震えだした……大丈夫かな?」

「寒いのでしょうか? 何か布が無いか探してくるです」

 しかし、凄ぇ。
 ここは凄ぇぜ兄貴っ。
 魔力の高い娘っこが多いこと多いこと。
 ここなら……これなら……グフフ。
 ―――でも、檻の中なんだよなぁ。
 ああ、早くこの事を兄貴に伝えて……どうにかしてバレない仮契約とか、できねぇかな?



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