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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 11話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/09 15:24

――――――エヴァンジェリン

「春になると、あー言う馬鹿が湧くものなのかもな」

「……マスター、お怪我は?」

「大丈夫だ」

 じじいからの要請通り、侵入者を撃退したのは良いが……どうにも、この時期になると馬鹿が増えて困る。
 やはり、こういう奴らも春の陽気に誘われるものなのかもしれないな。
 もしかしたら案外的外れでもない事を考えながら、帰路につく。
 もうすでに日が落ちて時間が経っている。
 疲れたわけではないが、そろそろ寝ないと明日の朝が辛いのだ。
 吸血鬼の数少ない弱点である。

「明日の準備はできているか?」

「はい。明日からは新学期ですので、早く御就寝していただけますと助かります」

「判っている――まったく、誰の入れ知恵なんだか……」

 短く溜息を吐き、

「……明日からまた、先生が来るなんて事は無いよな?」

「伺ってはおりませんので、おそらく」

 なら良い。
 流石に始業式をサボって目を付けられるのも嫌なので、明日は登校するつもりだが。
 どうしたものかな――。
 そんな事を考えていた時だった、

「マスター、佐々木さんです」

「なに?」

 その声とともに、向こうから来るのは……確かに、クラスの佐々木まき絵がこっちに歩いて来るのが見えた。
 持っているものから察するに風呂帰りだろうが――やたらと薄着である。
 いくらここが麻帆良でも、アレは流石に無いだろう。
 まったく。

「茶々丸、下がっていろ」

「はい」

 この時間に茶々丸と一緒の所を見られるのも、何かと都合が悪いので一応木の陰に控えさせる。
 良くも悪くも、女子校と言う所は噂が絶えない所なのだ。面倒な事に。

「おい」

「え?」

 一応注意でもしておくか、と思いそう声を掛けると、その顔がこちらを向き――硬直する。
 なに?

「ひ――」

 引き攣った声。
 そこで、自分がどのような姿か思い出した。
 黒の三角帽子に、裾の切れたボロボロのマント……御伽噺の吸血鬼を模したような格好である。
 ちゃんと、この衣装にも纏っている意味はあるんだが――。

「おい、佐々木ま――」

「きゃーーーっ」

 再度声を掛け、落ち着かせようとした矢先……全力で走りだした。
 いや、判るが。
 流石にこの時間に、こんな黒ずくめに話しかけられたら――まぁ、判る。
 が――仮にも2年一緒のクラスにいたと言うのに、声も判らんのか。
 ……そう言えば、佐々木まき絵と話した事は、数回くらいだった気がする。

「危な――っ」

 完全に前を見ていなかったんだろう、思いっきり桜の木につっこんだ。多分、顔から。
 ……わ、私が悪いんだろうか?
 気を失っているだけだろうが、確認する為にその傍らに膝をつく。
 はぁ――打ったのは、頭か?

「どうしてうちのクラスの連中は、こうも事あるごとに何か起こすんだ?」

「うぅ……」

 まったく――打った箇所に手を乗せ、診てやる。
 腫れてはいるが……どうだろうか?
 怪我の知識も、そうある方じゃない。
 裂傷ならともかく、打撲となるとな……まぁ、木にぶつかっただけだから、そう酷くは無いと思うが。
 手の平に軽く魔力を集中し、患部を冷やす。
 が、あまり上手くいかない。
 当たり前か。今まで、こんな魔法の使い方なんてした事無いんだし。

「茶々丸」

「はい」

「女子寮の方まで運んでやれ」

 それくらいはしてやった方がいいだろう……一応、私も関わってるんだし。
 それに、これ以上じじいに目を付けられるのも面倒だしな。

「かしこまりました。記憶の方は?」

「……勘違いしていたようだ。必要無いだろう」

「判りました」

 それに、面倒……というのもある。
 記憶を簡単に弄るのは、どうかと思うしな。

「先に戻る。お前も佐々木まき絵を送ったらさっさと戻れ」

「はい」

 はぁ――明日から新学期だと言うのに、間の悪い事だ。
 この調子じゃ、もしかした今年1年も面倒事が多いかもな、と予感せざるを得ない。
 憂鬱な事だ。

「理由は適当に言っておけ。桜通りで倒れていたから拾ったとでも、な」

「わかりました。では――」

 はぁ……戻るか。







 朝は憂鬱である。
 それは、仕事柄夜遅くまで起きている事が多く、更に私が吸血鬼であるからだ。
 小さく溜息を吐き、通学路を歩く。
 明日からはその上、もっと憂鬱な授業を受けなければならないのだ。
 嫌でも溜息が出てしまう。

「おはよー、エヴァ、茶々丸さん」

「おはようございます、明日菜さん」

 そして、この存在である。
 気付いてはいたが、無視していたというのに……見つかるとは。
 やはり、もう少し遅くに登校すべきだったか。

「おはようー、エヴァンジェリンさん、茶々丸さん」

「おはようございます」

 ……その声についてくる、二つの声。
 同室の近衛木乃香とネギ先生の2人。
 朝から、もう一度――少し深い、溜息。

「おはようございます、ネギ先生、木乃香さん」

「――――おはよう」

 どうしてこの私が、吸血鬼の私が、朝の挨拶など。
 もはや面倒という感情を浮かべる事すら面倒な気分になってしまう。
 はぁ。

「朝から元気無いわねー」

「うるさい。朝は苦手なんだ」

「あー、判るわその気持ち。それに、まだ少し寒いもんね」

 そう言う意味じゃないわ、バカレッド。
 ……心中でだけ、呟く。
 返事をする事すら面倒臭い。

「風邪には気を付けて下さいね?」

 まったく、この子供は。
 内心で辟易しつつ、どうしてか3学期の最後から懐かれてしまった神楽坂明日菜達と、並んで歩く。
 面倒な事この上ない。
 どうしてこうなったのか――ああ、原因はあの先生か。
 何度目かの同じ思考。
 何度考えても、同じ答え。
 私が登校している原因。この現状の原因。

「ふん。判ってるよ」

「はいっ」

 答えないと面倒な事になるというのは、もう判っているので適当に答える。
 昨日何の番組を見た。
 春休みの宿題はやったか。
 これから1年楽しみだ――そんな事を話しながら通学路を歩く。
 ……私は適当に相槌を打つだけだがな。

「今日から1年、私達の担任なんだから、ちゃんとしなさいよ?」

「ぅ、わ、判ってますよ」

「あんま、先生に頼らんようにせななぁ」

「わ、判ってますって」

 ふと、話題があの先生の事になっていた。
 どうやら、部屋では良くあの先生の事を話しているらしい。
 ……聞こえてくるのが、内容なだけに、どんな事を話しているのかは予想がつくが。
 まぁ、歳が歳だしな。
 それが当たり前だとも思うが……じじいもどうして、こんな子供を担任に据えたのか。

「私は心配しかないわ」

「ひ、酷いですよ明日菜さん」

 神楽坂明日菜達の遣り取りを横目で見ながら、小さく笑ってしまう。
 ――その様子は、どう見ても教師には見えない。
 なのに、私達のクラスの担任なのだ。
 笑うしかないだろう?

「ネギ先生、大丈夫です」

「ありがとうございます、茶々丸さん」

「あ、茶々丸さんはネギ先生の味方なんやね」

「はい」

 無表情ではあるが、その低い位置にある頭を撫でる茶々丸も――変ったものだ。
 成長した、と言うべきか?
 今までは、本当に私と葉加瀬、超鈴音の言う事だけを聞く人形だったというのに。
 最近は自分の意志のようなモノを持って、行動している。
 それは喜ぶべき事な半面――その変化がどの時期に始まったのかを考えると、素直に喜べない所もある。

「大丈夫です。ネギ先生を信頼してますから」

「はいっ、ありがとうございますっ」

「あー、それウチの台詞だったのにー」

 まったく。

「ほら、急ぐぞ? ここまで来て遅刻は、笑えん」

「はーい。ほら、木乃香、ネギ、少し急ぐわよ」

 まったく――どうしてこの私が、こんなにも慣れ合わなければならないのか。
 人に……そして、ネギ=スプリングフィールドに。




――――――

「学園長がですか?」

「うん。始業式が終わったら、帰る前に学園長室に行くように言ってもらえるかな?」

「は、はぁ……ありがとうございます、瀬流彦先生」

 何で学園長がマクダウェルに用があるんだろうか?
 新学期の初日だし、2年の時もちゃんと出席日数も成績も足りてたはずなんだが。
 ……何かしたんだろうか?

「まぁ、そう怒られるような用じゃないから、大丈夫だと思うよ?」

「そうですか」

 なら良いんですけど……まぁ、マクダウェルと学園長って知り合いみたいだし、そっちの方かな?
 始業式後に配るプリントをまとめながら、小さく溜息。
 いや――大丈夫。最近のマクダウェルは結構真面目だし。

「それとね?」

「はい?」

 まだ他にも、誰か何かやったんだろうか?
 ……はぁ。

「始業式でも言われると思うけど――出たらしいよ」

「……はい?」

 出た?

「これこれ」

 そう言って、胸の前に両手を持ってくる仕草。

「幽霊ですか?」

「そうそう」

「夏じゃあるまいし……それで、何処で出たんですか?」

「昨日。先生のクラスの佐々木さんが見たらしいよ」

 ……佐々木が?
 しかも昨日って……。

「女子寮でですか?」

「ううん。桜通りで」

 アイツは……幽霊が出るような時間に、桜通りで何をしてるんだ?
 まったく、後でそれとなく注意しとくか。

「もしかしたら、不審者とかじゃ」

「かもしれないね」

「……笑えないんですけど」

 それでも瀬流彦先生の笑顔は崩れない。
 ??

「でもさ、不審者が気絶した女の子に何もしないで立ち去る?」

「あー……」

「しかも、物も取ってないし……一応、僕と弐集院先生、高畑先生で調べたけど問題は無かったよ」

 それは、確かに。
 でも、

「それじゃ、準備してクラスに行きますね」

「あ、うん」

 やっぱり、少し心配だ。見たのがウチのクラスの佐々木だし。
 後で少し聞いてみるか……心配だけして、取り越し苦労なら別に良いし。

「真面目だねぇ」

「う……まぁ、そう言う性分なんですよ」

「先生らしい、って言えるのかもね」

 褒められてる気がしないなぁ。
 苦笑して、俺は準備に戻る。
 そろそろネギ先生も来るだろうから、先生に渡す書類も整理しとかないと。
 春休みの宿題、皆やってきてくれてると良いんだが。
 ああ、やる事が多いなぁ。







「それじゃ、連絡事項は以上です。先生からは何かありますか?」

「いえ、自分の方からも特には――あ、佐々木とマクダウェル、後でちょっと来てもらえるか?」

「え!? わかりました」

「―――判った」

「えっと、それじゃ、今日はここまでですね」

 無事に始業式も終わり、今日は授業も無いのでこのまま終了である。

「明日は教科書の受け取りと、午後から授業があるから、ちゃんと道具は忘れないようにな」

「それと、始業式でも言われましたが、あまり遅くに出歩かないようにお願いします」

 はーい、という元気な声とさようならと言う声を聞きながら、クラスに置かれている教員用の椅子に腰を下ろす。
 さて、どう聞いたものかな……まぁ、勘違いというのが、一番濃厚な線なんだけど。
 ネギ先生はそのまま退室していく。
 職員室でいくつか仕事を用意していたので、まずはそっちを片付けてもらうように言っている。
 明日配る教科書の用意とか、休み明けテストの範囲の書き出しとか。

「何の用だ、先生?」

「ああ、マクダウェル。なんか学園長が呼んでるらしいから、学園長室に行ってくれ」

「ちっ」

 間髪入れずに舌打ちはどうかと思うんだが……。

「……マクダウェル?」

「判った判った。すぐ行くからそんな声を出すな」

「そこまで変な声じゃなかっただろ」

 少し低い声で行ったつもりだったんだが、即座に返事が返ってきた。
 俺って怒ったりするの、合わないのかもしれない。
 ちょっとショックを受けていたら、その後ろから佐々木が来た。

「どうしたの、先生?」

「…ああ。昨日の夜の事で、ちょっとな」

「ぅ」

 その笑顔が、引き攣る。
 まったく。

「昨日の夜……だと? 始業式で言っていた不審者か」

「ああ。昨日、佐々木が幽霊を見たらしいんだ」

「………………幽霊?」

 おー、マクダウェルのそんな顔は初めて見たな。

「なんだ。マクダウェルは幽霊は信じない派か」

「…………そんな派閥はどうでもいいが、幽霊だと?」

「そうなんだよ、エヴァちゃん。昨日ね――」

「おい、ちょっと待て。何だその呼び方は?」

「え? 明日菜がそうよ」

「じじいの所の前に、行く所が出来たな」

 ……………
 ………
 …

「仲良いなぁ、あいつら」

「だねぇ。エヴァちゃんって、もっと取っつき難いイメージがあったんだけど」

 流石、神楽坂。
 あのマクダウェルがなぁ。
 とりあえず忘れてはいないだろうが、その背に学園長室なー、と声は掛けておく。
 返事は無かったが……まぁ、大丈夫だろう。
 アレで中々、言った事はちゃんと守るやつだ。

「あ、それで何だったっけ?」

「そうだそうだ」

 ええっと。

「まぁ、昨日の夜の事でな。何でそんな幽霊が出る時間に桜通りなんて通ってたんだ?」

「お風呂に入った後、涼みに少し歩いてたんです」

「……いくら慣れた場所だからって、無防備すぎるだろ」

「あ、あはは……うん、もうしない」

「そうしろ。それで、散歩してたら出くわした、と」

 うん、と言う声を聞き――まぁ、そうだろうな、と。
 もう少しいくつか聞いたが、特に不明確な所も無い。
 何かと見間違えたか、そんな所か。

「茶々丸さんが見つけて、女子寮まで運んでくれたんだって」

「そうらしいな」

 その絡繰は、超包子の帰りに見つけたらしい。
 うん。

「ま、さっき言ったみたいにしばらくは遅い時間の外出は控えるようにな」

「うん。流石にもうこりごりだよ」

「今度こんな事があったら、全校集会で名前が出るかもな」

「それだけは嫌だよー」

「なら、用心してくれ」

 まぁ不審者でもないみたいだし……大丈夫だろう。
 当分は俺や新田先生、瀬流彦先生と言った男性教員で巡回する予定だし。
 大丈夫だろう。

「はーい」

「それじゃ、もう帰って良いぞ」

「うん。それじゃね、先生」

 気を付けて帰れよー、と声を掛け……さて、どうしたものか、と。
 色々とやる事が多くて、どれから手を付けたものか。
 HR終了と同時に人の居なくなった教室で溜息を一つ。
 ……まずは、昼食を摂るか。







 仕事が終わり、外に出た時はもう夕方だった。
 休み明けだからか、いつもより少し疲れたなぁ。
 そのまま明日の仕事の事や休みに何をしていたなどと話しながら帰る。
 ネギ先生はいまだ女子寮暮らしなので、入り口まで送るつもりだ。
 勘違いかどうかは判らないが、不審者が居るかもしれないからである。

「ネギ先生は、こっちの暮らしはもうだいぶん慣れました?」

「はい、木乃香さんや明日菜さんが色々と、教えてくれました」

 生徒と教師の関係としてはどうかと思うが、ネギ先生はまだ10歳の子供である。
 やはり、身近に見ていてくれる人が居ると安心する。
 ……生徒なんだけど。

「今度、何かお礼をしないと」

「そうですね。何か美味しいものでも奢ってあげたらどうですか?」

「食べ物が良いでしょうか?」

 ……そうだなぁ。
 どうだろう――今頃の、女の子がどんなのを喜ぶかはどうにも自信が無い。
 自分で言っておいてなんだが、どうでしょう、と苦笑してしまう。

「でも、あんまりお金を掛けたものだと、相手は貰い難いでしょうね」

「あ、そうか……」

「それか、明日辺り源先生か葛葉先生に相談してみましょうか?」

「そうですねっ」

 まぁ、あの二人なら、何でも喜ぶんだろうなぁと思ってしまう。
 近衛はそういうのは感情を大切にするタイプだし、神楽坂も口は悪いが根は良い子である。
 そう言う意味では、ネギ先生は同室の相手に恵まれているんだと思う。
 しかし、この歳で贈り物か……俺がネギ先生の歳くらいの時に、そんな考えってしたかな?
 うーん……。

「それでは、ネギ先生。あんまり夜は出歩かないように」

「はい、先生も帰り道は気を付けて下さい」

 女子寮入り口での別れ際の挨拶。
 それじゃ、俺もまっすぐ帰るとするか――と数歩足を進めた時、向こうからの人影に気付いた。
 苦笑し、さらに数歩進めると向こうもこっちに気がついたのか、急いでこちらに来る。

「アレ? 先生どうしたんです?」

「ここ、女子寮の前ですえ?」

「ネギ先生を送ってきたんだよ。始業式の時に言ってただろう?」

 不審者が居るかも、と言うと二人……近衛と神楽坂がああ、と頷く。
 さっきまで話題に上げていた相手なだけに、こっちも笑うしかない。

「流石に、ネギ先生を一人で帰らせる訳にもいかないだろ」

「あ、そっか。今度から気を付けとかないと」

「あー、そこは気にしなくていいから」

 流石に、教師の事で生徒に迷惑を掛けるわけにもいかない。
 苦笑して手を振り、大丈夫と言っておく。
 ま、しばらくは俺が送っていく事にしよう……結構遠回りなんだけど。
 それか、この近くに教員で誰か住んでたかな?
 今度聞いてみるかな。

「それより……買い物か?」

 神楽坂の手に持っているのは、近所のスーパーの買い物袋。
 まぁ、晩飯の買い出しといったところだろう。

「晩御飯と、お弁当のおかずの買い出しですえ」

「そう言えば、その辺りは近衛が担当してるんだったな」

 その歳で凄いなぁ、と。
 俺は、この歳でも料理はしないからなぁ。

「ぅ、一応私もある程度の物は作れるんですけど……」

「……その辺りは、ネギ先生に聞いた事しか知らなくてなぁ」

「本気で驚いてるし」

 いや、すまん。
 ちょっと予想外だったんだ……本当にすまん。

「ふふ、先生酷いですえ」

「ぅ――」

 頬を掻いて、視線は余所へ。
 さて、どうやって切り抜けたものか。

「先生は、ご飯はどうしてるんですか?」

「先生はいつもコンビニのお弁当らしいえ」

 その神楽坂の質問は、何故か近衛から答えられた。
 あー…そう言えば、この前そう教えたんだっけ。

「この年くらいの男は、そう言うもんだ」

「……高畑先生も?」

 うーん――ある意味予想できていた質問に、首を傾げる。
 どう答えたものか、と。
 実際は店屋物を頼んでるのだが、下手に答えて弁当なんか言い出されたら困る。
 ふむ。

「高畑先生は、自炊したり、偶に店屋物とかだったな」

「そっかー」

 弁当を作ってくる相手に弁当を、とは流石に言わないだろう。
 それに、良く考えたらこの子にそれを言いだせる勇気は……うーん。
 偶に、いきなり突拍子の無い行動に出るからなぁ、神楽坂は。

「それじゃあな、二人とも。夜はあんまり出歩くなよ?」

「はーい」

「判ってますえ」

 そう言って神楽坂は歩き出し、近衛は小さく笑って

「先生、嘘は感心しませんよ?」

 と言われてしまった。
 ふむ。

「バレバレだったか」

 俺の嘘が判り易いのか、それとも高畑先生のお昼事情を知っていたのか。
 ……多分前者だろうなぁ。
 苦笑して、帰路につく。
 さて、夜も見回りがあるし、さっさと帰るか。



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