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No.25786の一覧
[0] 普通の先生が頑張ります (更新再開…かな?[ソーイ](2011/06/08 19:02)
[1] 普通の先生が頑張ります 0話[ソーイ](2011/04/10 19:06)
[2] 普通の先生が頑張ります 1話[ソーイ](2011/04/10 16:49)
[3] 普通の先生が頑張ります 2話[ソーイ](2011/04/08 22:17)
[4] 普通の先生が頑張ります 3話[ソーイ](2011/04/08 22:52)
[5] 普通の先生が頑張ります 4話[ソーイ](2011/04/08 23:22)
[6] 普通の先生が頑張ります 5話[ソーイ](2011/04/08 23:43)
[7] 普通の先生が頑張ります 6話[ソーイ](2011/04/09 10:03)
[8] 普通の先生が頑張ります 7話[ソーイ](2011/04/09 10:16)
[9] 普通の先生が頑張ります 8話[ソーイ](2011/04/09 10:36)
[10] 普通の先生が頑張ります 9話[ソーイ](2011/04/09 13:58)
[11] 普通の先生が頑張ります 10話[ソーイ](2011/04/09 14:38)
[12] 普通の先生が頑張ります 11話[ソーイ](2011/04/09 15:24)
[13] 普通の先生が頑張ります 12話[ソーイ](2011/04/09 18:20)
[14] 普通の先生が頑張ります 13話[ソーイ](2011/04/09 22:23)
[15] 普通の先生が頑張ります 14話[ソーイ](2011/04/09 23:12)
[16] 普通の先生が頑張ります 15話[ソーイ](2011/04/09 23:47)
[17] 普通の先生が頑張ります 16話[ソーイ](2011/04/10 16:45)
[18] 普通の先生が頑張ります 17話[ソーイ](2011/04/10 19:05)
[19] 普通の先生が頑張ります 18話[ソーイ](2011/04/11 21:15)
[20] 普通の先生が頑張ります 19話[ソーイ](2011/04/11 21:53)
[21] 普通の先生が頑張ります 20話[ソーイ](2011/02/27 23:23)
[22] 普通の先生が頑張ります 21話[ソーイ](2011/02/27 23:21)
[23] 普通の先生が頑張ります 22話[ソーイ](2011/02/27 23:19)
[24] 普通の先生が頑張ります 23話[ソーイ](2011/02/27 23:18)
[25] 普通の先生が頑張ります 24話[ソーイ](2011/02/26 22:34)
[26] 普通の先生が頑張ります 25話[ソーイ](2011/02/27 23:14)
[27] 普通の先生が頑張ります 26話[ソーイ](2011/02/28 23:34)
[28] 普通の先生が頑張ります 27話[ソーイ](2011/03/01 23:20)
[29] 普通の先生が頑張ります 28話[ソーイ](2011/03/02 22:39)
[30] 普通の先生が頑張ります 29話[ソーイ](2011/03/04 22:42)
[31] 普通の先生が頑張ります 30話[ソーイ](2011/03/08 00:19)
[32] 普通の先生が頑張ります 31話[ソーイ](2011/03/07 23:33)
[33] 普通の先生が頑張ります 32話[ソーイ](2011/03/10 00:37)
[34] 普通の先生が頑張ります 33話[ソーイ](2011/03/09 23:47)
[35] 普通の先生が頑張ります 34話[ソーイ](2011/03/10 23:15)
[36] 普通の先生が頑張ります 35話[ソーイ](2011/03/13 23:11)
[37] 普通の先生が頑張ります 36話[ソーイ](2011/03/14 22:47)
[38] 普通の先生が頑張ります 37話[ソーイ](2011/03/15 23:56)
[39] 普通の先生が頑張ります 38話[ソーイ](2011/03/16 23:15)
[40] 普通の先生が頑張ります 39話[ソーイ](2011/03/17 23:03)
[41] 普通の先生が頑張ります 40話[ソーイ](2011/03/18 22:46)
[42] 普通の先生が頑張ります 41話[ソーイ](2011/03/19 23:49)
[43] 普通の先生が頑張ります 42話[ソーイ](2011/03/20 23:12)
[44] 普通の先生が頑張ります 43話[ソーイ](2011/03/21 22:44)
[45] 普通の先生が頑張ります 間幕[ソーイ](2011/03/23 07:49)
[46] 普通の先生が頑張ります 44話[ソーイ](2011/03/23 23:24)
[47] 普通の先生が頑張ります 45話[ソーイ](2011/03/25 23:20)
[48] 普通の先生が頑張ります 46話[ソーイ](2011/03/26 23:23)
[49] 普通の先生が頑張ります 47話[ソーイ](2011/03/28 00:29)
[50] 普通の先生が頑張ります 48話[ソーイ](2011/03/28 23:24)
[51] 普通の先生が頑張ります 49話[ソーイ](2011/03/30 00:25)
[52] 普通の先生が頑張ります 50話[ソーイ](2011/03/31 00:03)
[53] 普通の先生が頑張ります 閑話[ソーイ](2011/04/01 00:36)
[54] 普通の先生が頑張ります 51話[ソーイ](2011/04/01 23:50)
[55] 普通の先生が頑張ります 52話[ソーイ](2011/04/03 00:22)
[56] 普通の先生が頑張ります 53話[ソーイ](2011/04/04 23:45)
[57] 普通の先生が頑張ります 54話[ソーイ](2011/04/05 23:24)
[58] 普通の先生が頑張ります 55話[ソーイ](2011/04/06 22:31)
[59] 普通の先生が頑張ります 56話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:46)
[60] 普通の先生が頑張ります 57話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[61] 普通の先生が頑張ります 58話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[62] 普通の先生が頑張ります 59話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[63] 普通の先生が頑張ります 60話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:47)
[64] 普通の先生が頑張ります 61話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[65] 普通の先生が頑張ります 62話(修正前[ソーイ](2011/04/27 22:48)
[70] 普通の先生が頑張ります 56話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:46)
[71] 普通の先生が頑張ります 57話(修正版[ソーイ](2011/04/28 23:27)
[72] 普通の先生が頑張ります 58話(修正版[ソーイ](2011/04/30 22:52)
[73] 普通の先生が頑張ります 59話(修正版[ソーイ](2011/05/18 23:24)
[74] 普通の先生が頑張ります 短編 【茶々丸】 [ソーイ](2011/05/23 23:47)
[75] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 [ソーイ](2011/05/23 23:42)
[76] 普通の先生が頑張ります 短編 【エヴァンジェリン】 2[ソーイ](2011/05/25 23:21)
[77] 普通の先生が頑張ります 短編 【月詠】 [ソーイ](2011/06/08 23:06)
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[25786] 普通の先生が頑張ります 9話
Name: ソーイ◆9368f55d ID:052e1609 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/09 13:58

「あら先生、ご機嫌ですね」

 あ、源先生。

「いやー、そうでもないですよ? ええ」

 そんなに顔に出てい……るんだろうな。
 正直、嬉しくて仕方が無い。

「あらあら、本当かしら?」

「は、はは」

「何か良い事があったんでしょう」

「い、いやー」

 新田先生からもそう言われ、緩んでいるであろう頬を引き締める。
 今日、全学年、全教科の期末テストが終わった。
 そして――教師としてあるまじきことではあるのだが……2-Aのテストから先に採点してしまった。
 ……これくらい、なぁ。
 そして今現在、授業も終わり日も落ちた時間――頬がにやけてます。
 ご機嫌ですか? ええ、ご機嫌ですよ。
 だって。

「平均76……」

 今までより約10点の点数アップである。
 ちなみに、計算は3回したので、間違っていないと思う。
 これが喜ばずにいられようか? いや、無理だ。
 おぉ、皆頑張ったなぁ。
 教師として、これほど嬉しい事もないんじゃないだろうか?
 この調子で他の教科も頑張っていてくれよ。

「よっぽど、2-Aの皆さんは頑張ったみたいですね」

「あ、はは――バレてます?」

「もちろん。バレバレですよ」

 は、は……うーん、そんなに俺は判り易いか。
 あんまり、生徒の前じゃ顔に出さないように注意しないとな。
 嬉しいという気持ちはあるが、顔には出さないようにしないと。

「さて、今回はどのクラスが最下位かしら」

「まだわかりませんよ……」

 でも、ウチのクラスが最下位じゃないなら、別のクラスが最下位なんだよな。
 そう考えると、素直に喜べない……か。
 やっぱり、教師は難しい。
 自分と、自分のクラスだけを考えるだけじゃ、なぁ。

「でも、今くらいは良いんじゃないですか?」

「え、えーと」

「今は私と新田先生だけですから、喜んでも大丈夫ですよ?」

「あ、あー」

 そ、そんなに顔に出てるかな、俺。
 これでもトランプとかは得意なんだけどな。

「でも、早く帰らないといけませんからね?」

「は、はい」

 それはまるで、子供に言い聞かせるような言い方で――だからこそ、余計に恥ずかしく感じてしまう。
 うん。帰ろう――テストも終わったし、後はテスト返却と数日の授業で……終わりだ。

「――はぁ」

「今度は溜息ですか?」

「あー、すいません」

「いえいえ。どうしたんです?」

 くすくすと、職員室に小さな笑い声とチクタクと時計の秒針の音が響く。
 あー。

「……これで、2年生ももう終わりだなぁ、と」

「……そうですね」

 あっという間だったなぁ……1年。
 そう考えると、余計に感慨深く感じるのは――年取ったからかなぁ。

「今そんな事を言ってると、来年の今頃はどうなってる事やら」

「は、はは」

 そうですね、と。
 来年はあの子達も3年――卒業である。
 早いものだ……ついこのあいだ中学一年生として入学してきたのにな……。
 ……副担任なのに、卒業式で泣くかもしれん。
 それは流石に恥ずかしいなぁ。

「ですが、先生の気持も判りますよ」

「そ、そうですか?」

 新田先生も嬉しいですか? と聞くともちろんです、という答え。

「……先生。この後、一杯どうです?」

「あ、良いですねー」

 明日は休日ですし、この時間なら生徒もそう居ないだろうし。
 今日くらいは……。

「それなら、私もご一緒して良いでしょうか?」

「もちろんです」

 さって、そうと決まれば帰る準備をするか。
 残りのテストの採点は、明日、部屋でやろう。




――――――エヴァンジェリン

「それで、今度は何の用だ?」

「むぅ、そう毛嫌いせんでもええじゃろ」

 じじいがそう唇を尖らせるな、気色悪い。
 その様を一瞥し、先を促す。

「図書館島の件なんじゃが」

「言っておくが、私は何も手出ししてないからな?」

「それは判っておる。あの場には居たようじゃがの」

「ちっ」

 やっぱり覗いてたのか、このくそじじい。
 それで? と、促す。

「エヴァ、お主はどう思う?」

「今のところ、魔法使いとしては三流だな」

「……厳しいのぅ」

 ま、私も魔力しか見てないからな。
 どれほどの技術と頭を持ってるかは知らん。
 ――あのナギの息子なら、頭は切れるのかもしれんが。
 が、もうすでに一般人に魔法使いだとばれてるのは減点だろう。
 それに、

「どうせ、まだ実戦の一つもしてないんだろ?」

「うむ、そうなんじゃ」

 どうせ、今日呼んだのはその事だろう。
 年寄りの話は、どうしてこうも回りくどいのか。
 さっさと終わらせる為、こっちからその話題を振ってやる。

「ネギくんの事なんじゃが」

「ああ」

「お主、鍛えてみる気は無いか?」

「無いな。次言ったら殺すぞ、じじい」

 話は終わりだ、と立ち上がる。
 下らん。時間の無駄だったな。
 私があのぼーやに――。

「せっかちじゃなぁ」

「こうなる事は判って言ったんだろう?」

「そう悪い話じゃないじゃろ? 対価を言う事も出来る」

 それは――私の“呪い”の解呪法の事を、言っているのか。
 学園の長公認で、スプリングフィールドの血を、望んで良いと言う事か。
 ――――ふん。

「学園長の言葉じゃないな」

 魔法使いとしては――きっと正しい姿だ。
 闇の福音よりも、英雄の息子の方を優先すると言う事。
 ……だから、気に食わん。

「それだけか?」

「いや。それと、3-A……お主たちのクラスの担任、ネギ君じゃから」

「そうか」

 それは、きっと最初から決まっていた事だろう。
 アレがネギ=スプリングフィールドで、ここが麻帆良だから。
 しばらくは、この魔法使いの街に、英雄の息子を飼うと言う事か。

「エヴァ」

「なんだ?」

 扉を開ける。
 まったく……本当に無駄な時間だ。

「呪いを解くのは、自由にして構わん」

「ふん」

「お主はもう十分、“光”を知ったじゃろ?」

 そして、学園長室を出る。
 入り口に控えていた茶々丸に声を掛け、廊下を歩きだす。

「お疲れさまでした、マスター」

「――――ああ」

 そのまま無言で外に出……職員室にまだ電気が付いている事に気がついた。

「先生は居るのか?」

「判りません」

 そうか、と。

「ふ、ぁ」

 今はこんなにも吸血鬼の時間なのに――少し眠い。
 ……まったく。
 どうしてこうなったんだか――去年までの私は、何処に行ったのか。

「帰るか」

「はい」

 ――これから、どうなるのか。


――――――

「ふぁ」

「どうしたんだ? ずいぶん眠そうだなぁ」

 まぁ、いつも眠そうだとは言わないでおくけど。
 欠伸するほどじゃないからな。

「ふん。テストも終わったしな」

 テスト終了から数日後。
 学園へ向かう途中、あまりに眠そうなマクダウェルにそう声を掛けると、そんな答え。
 まぁ、判らなくは無いけど。
 俺もテスト終了の翌日は何時もより遅くに目が覚めたし。軽い二日酔いだったし。

「それで、夜遅くまで起きていた、と」

「はい。就寝なされたのは、深夜の2時過ぎでした」

「おい、バラすなっ!」

 まったく……。

「授業中に寝るんじゃないぞ?」

「テストはもう終わったんだ。どう足掻いても、今更だろ」

「それとは関係なく、だ。授業中は勉強するもんだ」

 はぁ。
 いくらテストが終わったからって、テストの点が最近落ちてきてるのは変わらないんだからな、と。
 少しは勉強して、3年で楽をさせてくれ。

「判った判った、ちゃんと寝ずに起きてるよ」

 また投げ遣りに言うなぁ。
 真面目に授業受ければ、もっと高い点数狙えるだろうに。

「絡繰、マクダウェルが寝たら起こしてくれな?」

「畏まりました」

「だから、何でそこで茶々丸に頼むんだっ」

「……だって、お前確実に寝るだろ」

「ぐ――ふ、ふん。教師は生徒を信頼するもんじゃないのか?」

「信頼していても、注意する所は注意するんだよ」

 大体、そう言うのは信頼とは言わん。

「ちっ、正論を……」

「諦めるんだな。俺の授業の時は、問答無用で起こしてやるから」

「はぁ――面倒な奴に目を付けられた……」

「お前がサボらなければ、大丈夫だったんだがなぁ」

「他人事のように言うなっ」

 はいはい。
 俺も、マクダウェルの扱いに慣れてきたもんだ。
 最近は素行も良いし――3年になったら、皆勤賞でも狙ってもらうかね。
 ……ああ、でも。

「そう言えば、そろそろ花粉の季節だけど、大丈夫なのか?」

「ふん――今年はそう花粉の量も多くないんだろ」

「酷くなったら休んでいいからな?」

「――ふん」

 マクダウェルって、花粉に酷く弱いんだったな。
 去年の今頃も、それで休んでたし。
 このまま、今学期中は大丈夫だと良いんだが。

「休むなと言ったり、休んでいいと言ったり」

「はは――まぁ、あんまり無理はするなと言う事だな」

「私にとっては、朝起きる事も無理の一つなんだがな」

「はいはい」

「……まぁ、別に良いがな」

 それじゃ、今日も一日頑張りますか。







「しっかし、毎回思うが派手だよなー、この学園」

 今、電光掲示板に表示されるのは一年生の期末での順位。
 一位から表示されるから、残ると本当に心臓に悪いよなぁ。
 まぁ、最下位から表示されても嫌なんだけど。

「うー、ドキドキするー」

「はは。まぁ、落ち付け佐々木」

 1年の時からそんなに力んでどうするんだ。
 だが、それももうすぐ終わる――次は、俺達2年である。
 いいから隣でハァハァ言うな。

「今からそんな調子じゃ、2年の時は気絶するぞ」

「う、うぅ」

 しかし、集まってきたな。
 周囲は人人人。何でも祭みたいに騒ぐのは、個人的には好きだけど、学校としてはどうだろう?
 ……これを楽しみにしてる生徒もいるみたいだし、良いのかなぁ。

「大丈夫かなぁ」

「……どうだろうなぁ」

「いや、そこは嘘でも大丈夫って言おうよ、先生」

「そうですえ、先生」

 おー、近衛達も一緒に来たのか。
 あれ?
 てっきり神楽坂も一緒だと思っていたが、来たのはネギ先生と近衛の二人だった。

「神楽坂は?」

「明日菜さんは、なんか用事があるそうです」

 場所は教えてたので、後で来られるかと、と。
 ネギ先生と神楽坂って、いつも一緒に居るイメージがあったが、そうでもないのか。
 まぁ、それはそうか。
 自分の考えに苦笑し、視線を電光掲示板に戻す。
 それにしてもどうしたんだろう?
 神楽坂も、こういう祭事は好きだと思ったんだが。

「それより、どう思います?」

「え? えっと……どうでしょうか」

 全教科の点数を聞いていないので、断言は出来ないが――数学だけなら、学年でも中位。
 おそらく最下位は無い――と思うが、問題は他の教科である。
 特に、英語は平均点が64点台……前回の中間より数点だけ上の状態である。
 ……良く授業中に喋ったり遊んだりしてたらしいし。
 来年はちゃんと授業を受けてくれたらいいんだが。

「ま、どっちにしろもうすぐ判りますか」

「で、ですね」

 さて、と。
 1年も終わったか……次は、2年。

「うー、ドキドキする」

「……俺も緊張して来たから、深呼吸でもしろ」

「ぅ。すーはーー」

 素直だなぁ、佐々木。
 その素直さで緊張を和らげ、俺も気付かれないように、小さく息を吸って、吐く。
 佐々木ほどじゃないけど、俺も結構緊張しているのだ。
 しょうがない――やっぱり、自分の受け持った生徒達の事なのだ。
 ……緊張しない訳が無い。

「あ、見つけたっ」

 ん?

「おー、神楽坂――マクダウェル達も来たのか」

 珍しい。神楽坂と一緒だなんて。
 気になって見るにしても、一人で見てると思ったんだが。

「えぇい、判ったから手を引っ張るな、神楽坂明日菜っ」

「だって、見失うじゃない」

「それは私の身長の事かっ」

「うん」

 あっさり言ってやるなよ……。
 それにしても、仲良くなったよなぁ、この2人も。
 良い事だ、うん。

「楽しそうだなぁ」

「何処をどう見たらそう見えるっ」

「先生、順位の方はどうですか?」

「あ、そうだった」

「無視するなっ」

 しかし、何時の間にこいつらは仲良くなったんだ?
 まぁ、この調子なら次の学年じゃマクダウェルのサボりも大丈夫だろうな。
 うん……神楽坂には感謝だな。

「私は別に、順位などどうでも良いんだがな……」

「いーじゃない、どうせ茶々丸さんと一緒に暇してたんだし。ねぇ?」

「はい」

「茶々丸っ! お前が同意するなっ」

 ネギ先生と佐々木は可哀想なくらい緊張してるのに、この二人は楽しそうだなぁ。
 ま、緊張が無いってのも、良いのかもな。

「おい、何だその顔は」

「ん?」

 そんな事を考えてたら、思いっきり睨まれていた。
 うーん……相変わらず、こういう顔は怖いなぁ。
 と言うか、教師を睨むな、教師を。

「いや、何時の間に神楽坂と仲良くなったんだ?」

「ふん……別に仲良くなんかない」

「そうかー」

 こういう所は判り易いなぁ、と。

「おいっ」

「ねー、エヴァ。ウチってどのくらいの順位か賭けようよ」

「あ、うちもー」

 おいおい、まったく。

「教師の前でそういう事を言ってくれるなよ」

「あ、えーっと……お昼の飲み物くらいで」

 しかも、小さいなぁ。

「じゃあ、うちは10位で」

「私は下から2番目かなぁ」

 それで、と二人の視線がマクダウェルに向く。

「…………7位だ」

 結局お前も乗るのな。
 それがまた微笑ましくて、苦笑してしまい……また睨まれた。
 だから怖いって。

「茶々丸さんは?」

「私もですか?」

 神楽坂は、本当に誰とでも仲良くなるなぁ。
 きっと、一種の才能なんだろうな。

「いや、絡繰が思ったように言って良いと思うぞ?」

 どうして俺を見る?
 流石に、俺も順位までは知らんからな。

「僕は4位ですっ」

「じゃあ私は9位」

 それだけ緊張しても、この話には乗ってくる二人に苦笑してしまう。
 ネギ先生も、随分2-Aに馴染んできたんですね。

「なら俺は5位でいこうかな」

「先生も高い所狙ってはるんですねー」

「はは――それだけ、皆が頑張ってたのを見てたからなぁ」

 テスト前の休日なんて、皆で集まって勉強会してたみたいだし。
 ……内緒にされてたのは結構ショックだけどなぁ。

「始まります」

「ふん」

 絡繰の声に、一斉に電光掲示板を見上げた。







 ふと、手が汗まみれなのに気付いた。
 俺も緊張してるんだな、と。

「今9位が終わった?」

「ああ……大丈夫か佐々木?」

「うん」

 流石に――そろそろ笑ってられなくなってきたな。

『第10位っ……2-M』

 遠くで、溜息の声。
 こっちは溜息もつけないと言うのに――。

「おいおい先生、大丈夫なのか?」

「いや、流石に順位までは知らされてないしな……」

「ちっ。肝心な所で役に立たんな」

「……本当に、もう容赦無いなのな、マクダウェル」

「ふん」

 お前だって、順位なんか関係無いとか言ってたくせに見入ってるじゃないか、とは言わない。
 きっと、この変化はマクダウェルにとっては良い事だと思うから。
 ――ああ、少しだけ……気が楽になった。
 だから、油断した。

『第11位――なんとっ、2-Aっ』

 だから、周りの皆が歓声を上げた時――俺一人だけ、声が出なかった。
 ぼんやりと、ただ……やった、と。そう思った。 

「おめでとうネギ先生っ、これでクビにならなくて済むねっ」

「おめでとう、ネギ」

「よかったえ、最下位やのぅて」

 一瞬で生徒に揉みくちゃにされてしまったネギ先生を、少し離れた位置から眺める。
 良かったですね、と。
 しかし、何時の間にあれだけ揃ったんだ? 全然気付かなかった……。
 それに、何でネギ先生の課題の事知ってるんだろう?
 ま――今は良いか。

「良かったじゃないか、先生」

「おー」

 気が抜けたと言うか、何というか。
 うん。
 やっぱり、俺は自分で思っていた以上に緊張していたみたいだ。

「何だその気の抜けた声は」

「ぅ……まぁ、なんというかな」

 絡繰は? と聞くと、彼女は何時ものようにマクダウェルの後ろに控えていた。

「先生、嬉しそうです」

「そ、そうか?」

 ま、あ――なぁ。
 最下位は無いって、思ってたが……実際、そうじゃないと判ると嬉しいもんだ。
 どれだけ頑張っていたのか知っている。
 それを見ていたし、少しは力に慣れたと思うから。
 でも、だ。
 世の中、どんなに頑張って無駄な事って言うのは確かにあるんだ。
 ――俺は、それを知っている。
 大人になると、それが嫌でも判ってしまう。
 だから……うん。
 ネギ先生を中心に、揃ったクラスの皆を見る。
 この子達の頑張りは無駄じゃなかった。
 その事が、一番嬉しい。
 今までが今までだったから。

「まぁ……そりゃ、嬉しいさ。皆が頑張った“結果”が出たんだから」

 一言一言に、感情が乗ってしまう。
 嬉しいという気持ちと一緒に、こう、何というか――自然と、笑ってしまった。

「ふん。その割には、先生が生徒より喜んでそうだがな」

「ぅ」

 そんなに顔に出てるのだろうか?
 手の平で両の頬を揉み解し、ソレを抑える。
 恥ずかしいなぁ。

「マクダウェルは嬉しくないのか?」

「ふん……別に、いつもと変わらんさ」

「……ふぅん」

 その割には、その視線はネギ先生達の方から動かない。

「――なんだ?」

「いや、別に……なぁ、絡繰?」

「はい」

「どうしてそこで茶々丸に振るっ」

 お前は本当に、最近は怒りやすくなったなぁ。
 それだけ感情を出すようになったのは良い事なんだけど、笑ったりはしてくれないものか。
 まぁそこは、神楽坂に期待するとするか。

「おいっ」

「しっかし、このクラスの来年が楽しみだな」

「……無理やり話題を変えたな」

「……さて、何の事やら」

 ネギ先生の方は生徒達に任せて、その様をぼんやりと眺める。
 うーん、羨ましい。
 俺も生徒達に囲まれてみたいものだ……相手は中学生だから反応に困ってしまうし、やっぱりいいや。

「来年、ね」

「来年こそサボるなよ? また迎えに行くのはしんどいからな」

「ふ――授業がつまらなかったら、判らんな」

 おー、そりゃ責任重大だなぁ……はぁ。

「喜んだり落ち込んだり、忙しい奴だな」

「あ、すまん」

 っと……生徒の前で顔に出てたかな?

「いや、これで後は卒業式だけだからな」

 もう、2年生の時間も終わる。
 ――それを、少しだけ寂しいと感じてしまった。

「来年はマクダウェルも受験だなぁ」

「……そうかもな」

「就職するのか?」

「そうかもしれないな」

「まだ決めてないんだな」

「――――そうだな、先生?」

「ん?」

 何気なく見上げてきた顔。
 その目。
 変わらない声音。
 なのにいつもより真剣に聞こえる声。
 そんな声で、

「あと1年、よろしくな」

「おう」

 それは、どんな意味があったのか。
 妙な言い回しに聞こえた。
 もしかしたらその言葉には、この子の“家庭の事情”が絡まっていたのかもしれない。
 でも、それがどんな意味であれ、答えは決まっている。
 だから、一瞬の間も置く事無く応える事が出来た。

「本当にか?」

「おー。先生がちゃんと卒業できるようにしてやる」

 進学か就職かも、相談に乗ってやる――。
 だから、変な事は心配しなくて良いからな、と。

「…………は。なら、来年も先生は苦労するな」

「そ、そうか」

 それは勘弁してほしいんだが、と呟き、ポンポン、とその低い位置にある頭を撫でてやる。
 まぁ、周りに生徒もいるし一瞬だけだが。
 やってしまった後、怒られるか? とも思ったが、お咎めは無し。
 よっぽど機嫌が良いらしい。
 いつもこの調子なら何の心配もないんだがなぁ。

「大変だな、先生」

「ま、しょうがない。先生だからなぁ」

 そうか、という小さな呟き。
 嬉しかった。
 テストの順位もそうだが……マクダウェルが、そう言ってくれた事が。
 教師として頼られた事が。
 うん――きっと、俺のこの一ヶ月は無駄じゃなかったんだ。

「その為にも、皆勤賞を狙ってくれるとありがたい」

「それは無理だな」

 即答か。
 まったく。

「絡繰、来年もこのダメなご主人さまをよろしく頼む」

「判りました」

「おいっ。茶々丸、そこは否定しろっ」

 だって、朝起きれないなんて駄目だろ。学生として。
 


 そして、終業式の日。
 3-Aの担任が誰になるか聞く事になる。
 大変な……本当に大変な、1年が始まる。



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