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No.25755の一覧
[0] 【完結】 Demon murder is called D デモンズソウル二次創作[hige](2014/09/12 00:18)
[1] 第二話[hige](2011/03/02 00:11)
[2] 第三話[hige](2011/02/26 18:30)
[3] 第四話 [hige](2011/03/01 22:11)
[4] 第五話[hige](2011/02/26 18:30)
[5] 第六話[hige](2011/02/26 18:31)
[6] 第七話[hige](2011/02/26 22:51)
[7] 第八話[hige](2011/03/01 22:16)
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[25755] 【完結】 Demon murder is called D デモンズソウル二次創作
Name: hige◆53801cc4 ID:2c20a3f7 次を表示する
Date: 2014/09/12 00:18
注意書き

すみません。近いうちに新しく序章を投稿、全話加筆します。sage更新になります。

序章は一万字ちょいくらいです。加筆は固有名詞の説明や状況描写等。

「なんだよ!今まで読んだのは不完全なものだったのかよ」と思われても言い返せません。トイレの合間のなどの時間つぶしにチェックしてもらえれば幸いです。

5/9追記 毎日チェックしてくれ、PV稼いでますって感じですね。申し訳ない。一ヵ月後くらいに覚えていたらチェックしていただければ。一度完結と銘打ったものをage投稿するのはどうかと思いsageにします。

PS3ソフト、デモンズソウルの二次創作です

いわゆる「ゲームプレーヤー」が出てきます

私の脳内設定があります。ゲーム内のシステムを勝手にファンタジーに変換等
例えばゲーム内でのブラインドは盾無効なのに、盾でパリィされますが、このSS内ではパリィ不可です。

またキャラや武器のステータスは明記しません。
「ふー体力にガン振りしてなければ即死だったぜい」という表現はありません



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第一話



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北の国、ボーレタリアの王、オーラントは偶然にもその巨大な神殿を見つけ、そこでソウルの業を見つけた。
ソウルとは人の魂、自分を司るもの、そして人に隠された力とされ。それを使う、あるいは取り込むことで人の力を越えることができる可能性を秘めている。自分の老いを憂いた王はソウルの業に見入られ、神殿の、後の楔の神殿の奥に眠る古い獣を目覚めさせた。

程なくしてボーレタリアは原因不明の深い霧に包まれ、デーモンと呼ばれる化け物が出現し、人々のソウルを奪っていった。ボーレタリアは亡国へと変わり、ソウルを求める異形、ソウルに取り付かれ、狂ったものが徘徊するようになった。何人もの英雄、手練の傭兵、豪傑たちが原因究明へとボーレタリアに侵入したが、帰ってきたものはいまだおらず…………



ボーレタリからあふれ出る深い霧は隣国へと、世界を覆うかのように広がる。





「勇気を出して降りるべきか、いやそれとも……」

どんよりと曇った空の下で一人、ガチャリと全身をすっぽり包むフリュ―テッドアーマーをならし、腕を組む。

僕がここでにっちもさっちも行かなくなってから、およそ二時間がたとうとしていた。父であり、ボーレタリアが深い霧に包まれ、ソウルに飢えた者共が徘徊し、強力なデーモンに蹂躙され、全てが崩壊していく原因を作ったあらゆる悲劇の元凶、狂王オーラントを討たんと、勇んで城に侵入したはいいが、このとおり、僕は無駄に時間を浪費している。

一刻も早く父を止めなければならないのだが、僕がいる高台の下には奴隷兵が何人もいる、下手に降りれば多勢に無勢、勝ち目は薄いだろう。

奴隷兵は人の姿をしているけど、もう、人ではない。ソウルの業に魅入られ、本能のままにソウルを求めるだけの生き物となってしまっている。だから説得なんて意味は無い。

幸いにも、下からこの高台へは上るすべは無く、高台は頑丈な石で作られており、ちょっとやそっとじゃ壊れないし、みすぼらしい錆付いた剣しか持っていない奴隷兵たちが僕に直接攻撃することはできない。が、この高台から降りなければ先へと進むことはできない。

僕だって好き好んでこんな場所にいるわけではない。

最初は順調だった、奴隷兵の攻撃を華麗に防御し、その隙を突き倒してきた。そりゃあ途中で死体処理の穴に落下しそうになったり室内に入った後に背後の敵に襲われたりもしたがそれほど問題じゃない、と思う。誰にだってあることだろう?

ただあの青い目の騎士が問題だった。黒い甲冑、鋭い直剣、硬鉄のカイトシールド。視界確保のため兜に入れられたスリットからは、青く仄暗い、うつろな光りが揺らめいていた。

とても敵いっこないと判断した僕は即座に逃……戦略的撤退をしたんだ。ただちょっと慌てていて、勢いよく階段を下りたら通路の手すりを乗り越えてしまって、この高台に落っこちてしまっただけなんだ。まあ、あの青目の騎士を撒いただけでもよしとしよう。

しかし、ホントどうするべきか。

武器が無いわけではない、相棒とも半身とも呼べる装備なのだが……

「うーむ」

奴隷兵達を眺めていたって事態は好転するはずがないのはわかってはいる、わかってはいるのだけれど。

腕を組みなおし、打開策を捻っていると剣戟の音が聞こえた、まさか!?

偶然にも僕が果敢に下へ降りようと決心した矢先のことだったが、かまわず声を上げた。ああ、ぜんぜんかまわないさ。返事があればいいのだけれど。

「おお~い、たすけてくれ~!」

三合ほど金属と金属が激しくぶつかる音が聞こえた後、微かにくぐもった断末魔が聞こえた。まさかやられてしまったのだろうか?だとしたら最悪だ、僕が大声を上げたせいで青い目の騎士が僕に気づいてやってくるかもしれない!なんて軽率なことをしたのだろうか……

「だれかいるのか」

野太く、力強い声が聞こえた。人だ、人間の声だ!

うつむいた顔を上げ、声を張り上げる

「おお~い!こっち、こっちです!」

軽快な足音と共に人が近づく気配を感じる、ああ助かった。幸いこの高台には建設用の材料などが置いてあり、その中にはロープもあった、このロープで僕が落ちたところから引っ張りあげてもらえれば……















しかし、その希望は断たれた










なぜなら。

なぜならその男は、手すりに左手をつき、体重を支え、華麗に手すりを飛び越えて僕のいる高台に降りてきたからである。

彼はスタッと音を立て、ひざを曲げ、着地の衝撃を吸収させると。

「よっと、ふー。お前さん、こんなところでなにやっているんだい?」

額の汗を手で軽くぬぐい、ブラウンの短い頭髪を後ろになでつけ、あごひげを蓄えた、いかめしい顔で、降りてきた青年はニカッと笑いながらそう言った。

「何って、見ればわかるでしょう!」

僕は下の奴隷兵達を指差して答えた。

「降りるに降りられなくて困っていたんですよ」

「ん?あ~結構な数がいるな。しかしまあただの奴隷兵だ、なんとかなるだろう」

ちらと下の敵を見やり、彼は答えた。しかし――



しかし、この人かなり軽装だ。頭部を保護するものはなく。装備している防具は狩人が好んで使うと聞くレザーアーマーを着用している。

レザーアーマーはなめした皮に簡単な防刃処理を施したものを数枚重ねただけのもので、材料と手間から、比較的安く手に入る。ただし、防御力も値段相応といったところだ。

ちなみに僕の装備しているフリューテッドアーマーは、軽量化のため、従来よりも薄い鉄板を使用しているものの表面に溝を打ち出し強度不足を補っている優れものだ。



そして彼のその両手には――



アイアンナックル!?

掌より一回りほど大きい、ぶ厚い鉄の板に取っ手をつけただけの武器であの青目の騎士を倒したのか。

「なるほど、腕に自信があるのですね」

この装備でここまで来たのなら、そうとうに腕が立つはずだ。青目の騎士を倒したときは他の武器を使ったのかもしれないけど。

よくよく考えてみれば戦力が増えたのだ、戦略を練り、隙を見て突撃すればなんとかなるかもしれない。うん、ここにある材木やなんかを利用したりして。

しかし僕の思惑を無視して彼は――

「二人でならば、なっ!」

勢いよく飛び降りた。

「な、ちょっと、ええー」

なんということだ、しかし彼一人にあの数の敵と戦わせるわけにはいかない。覚悟を決めて僕も飛び降りる。

「ふんっ」

ガチャリと音を鳴らし着地、と同時に剣と盾を構える。

僕の使っている剣と盾は、鈍く黄金色に輝いており、剣格を中心に繊細な意匠がほどこされている、盾も同様に美しい紋章のような形だ。一見すると観賞用かと思うかもしれないが、どちらも強力な魔法によって強化されている一品だ。盾なんかは隙間だらけに見えるが、かけられた魔法の力できちんと敵の矢とかも防いでくれる。

銘もある、ルーンソードとルーンシールド、王家代々受け継がれる由緒正しき武器だ。

「さあ、来い!」

腰だめになり盾を構える、これまでと同じ戦い方だ。相手の攻撃を防ぎ、相手がひるんでから確実に斬りつける……さあ、早く攻撃してくるがいい!



「おい!後ろだ!」

彼の声に反応して――

「うわあっ」

とっさに横転しかろうじて敵の攻撃をかわす、背後から襲うとは卑怯な!

「相手の攻撃を待つな、自分からから攻めろ!」

ちらと彼を見やるとアイアンナックルで奴隷兵の横顔をぶん殴っていた。あれ、相手に当たるところがギザギザになっているんだよなあ、痛そうだ。

と、悠長に構えている暇はない、彼の助言どおり、こちらから攻めさせてもらう!

「はっ!」

渾身の袈裟切りを放つと、あっけないほど奴隷兵を切り伏せた。死体から流れ出たソウルが僕の体に吸い込まれた。

あれ?こんなに弱いのか。

あっけに取られる僕をよそに、背後から敵のうめき声。

すかさず振り向き、いつもなら盾で防御するところを――

いけるっ!

盾で敵の攻撃を横から弾く、パリィと呼ばれる技術だ!

「フッ!」

がら空きになった敵の腹部めがけて、剣を突きさすと、これまたあっけなく絶命した。

ひょっとして、僕はやればできるんじゃあ……というより今まで怯えすぎていただけ、か?

結局ものの数十秒で七体ほどの奴隷兵の死体ができあがった。

「ふー、なんとかなりましたね」

自分が思ったより強かったのと、危機を脱したのが素直にうれしい、もちろん実力を過信してはいない。

「そうだな、じゃあ」

と言って彼は歩き出してしまった。

「あ、ちょっと。待ってください」

「何だい?」

「私はボーレタリアのオストラヴァ。感謝の気持です、受け取ってください」

彼がいなければ、しばらくあそこで足止めを食らっていただろう。感謝の気持ちに真鍮の遠眼鏡を渡した。貴重なものだが、こんなところでまともな人間に会うのがうれしかった。決して寂しかったわけではない。

「ああ、ありがとう。それとオストラヴァ。ここは危ないから、安全なところへ非難しなさい。この辺りの敵は倒しておくから」

じゃあ、と彼はさくっと受け取ってその場を去った。

「……」

いや別にいいのだが、少しさっぱりしすぎではなかろうか。

「って、いやちょっと名前を」

僕の声が聞こえなかったのか、奥へどんどん進んでゆく。

「とりあえずひと段落着いてから、なあっ!」

あっという間に兵士を倒し、進んでゆく。すごい手際だ。青目の騎士の攻撃を華麗にパリィした後、がら空きになった腹に食らわせたパンチが胴体を突き抜けている、どんな筋力だ。

と、とりあえずついて行……共闘しよう。



それから、城の攻略はあきれるほど順調に進んだ。と言っても、まだここは本殿から程遠い。

ボーレタリア城は大きく分けて四つの構造から成る。

まず、僕がいる城の正門区画。侵入者に、長く狭い城壁の上を進ませ、迎撃する城壁区画。兵士達や、攻城兵器を保管してある保管区。それらを通過し、最後に本殿だ。

まだまだ先は長い。

しかし、とにかく彼が強い、おそらく『いくつもの戦争を経験した』手練だろう。僕も少しは役に立っただろうが、ほとんどついて行く形になってしまった、不本意ながら。

危なかったことと言えば、僕の不注意で巨大な鉄球に轢かれそうになったり、橋を渡る途中ワイバーンに火を噴かれ、間一髪だったり、したくらいだ……

失敗は誰にでもあることだ、そうだろう?



「これでよし、と」

ワイバーンのブレスを走り抜けた先の部屋で、彼は大きなレバーを引きそう言った。

「何のレバーなんです?」

「これか?これはまあ城の正門の扉を開くためのレバーだよ」

少しペースを落としていくかとポツリと呟くと彼は歩き出したので僕もついていく。

さきほどまでは強行軍もいいところで。ろくに名前を聞く暇もなかった。恩人の名前くらいは知っておきたいし、いろいろと不便だ。

「それで、あなたのお名前は?」

「ああ、そういえばまだ名乗っていなかったな。私は――」

しゃべりながらも部屋を出たところを待ち構えていた二人の奴隷兵を打ち倒していく。

「私は、あードンキーと呼ばれている」

「ドンキー?」

呼ばれている、と言うことはあだ名のようなものだろうか。

「Don Quijote(ドン・キホーテ)って知っているだろ?両親がそれにちなんで名づけてくれた。ドンキーはあだ名さ。ところで、オストラヴァはなんでボーレタリアに?」

再び室内に入ると、そこは兵士の休憩室のようで、当然兵士との戦闘になった。二人で室内の兵士たちを手際よく片付ける。今思えば会話しながら戦うなんて、あの頃の僕からしたらとんでもない余裕だ。

「決まっているじゃないですか、ハアッ!狂王オーラントを止めるためですよ。おっと」

火炎壷を投げようとしている敵にすばやく詰め寄り、切りつける。この兵士で最後のようだ。

「ドンキーさんは、なぜボーレタリアに?」

「うーん、まあそうだな。会いたい人がいるからかな。お、松脂か持っていくか」

ドンキーさんは棚においてあった松脂を拝借して、腰にくくり付けてある魔法のポーチに入れた。

このポーチは魔法がかけられており、見た目に反してかなりの物が入る、それこそ、身の丈より大きなハルバードだって。ただし重さは変わらないので、自分の持てる重さを超えると持ち運べない。それでも十分に便利な代物であることに変わりはないのだが。ちなにに僕も持っている、というより冒険者や旅人の必需品でもあるので、当たり前だけど。

「会いたい人?」

壁に沿って造られた長い階段を降りていくと、腰ほどの高さの黒いゲルのようなものが現れた。見たところ魔法が関係している生物のようだ、それなら僕のルーンソードとルーンシールドが有効かもしれないと、僕が前に立つ。ドンキーさんは何か言いたそうだったが僕だって少しは役に立つということを証明したい。

「ま、そんなところだ。しかしオストラヴァ、オーラントを倒すっていったって勝算はあるのかい?」

ルーンシールドを構え様子を見るに、こいつは自分の体の一部を槍にして飛ばすようだ、前面には盾の模様が浮き出ており生半可な攻撃は聞かないだろうしかし――

「勝算は、あります」

「ほう、聞いてもいいか?」

僕のルーンソードは魔法によって強化されている、試す価値はありそうだ。

思ったとおり、数回切るとゲルは、より液体に近い状態になり、床に広がった。倒したのだろう、たぶん。

そのまま階段を降り、レバーを引いて出口の扉を開ける。

「それは、この城のどこかにいる古き王ドランを見つけ、彼が守護するという、デモンブランドを手に入れること、です」

幼き日に見た、祖父であるドランを思い浮かべて。僕はドンキーさんに振り返り、答えた。



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私はオストラヴァの言葉を反芻し、慎重に言葉を選んだ。

「なるほど、オーランドが持つというソウルブランドと対なる剣か……」

たしかにあれはオーラントを倒すのには有用だろう、が。果たしてオストラヴァは手に入れることができるのだろうか、霊廟の鍵はオストラヴァが持っているはずだが。いや、しかし……と言うより無理だろうな、おそらく。

ともあれ、まさかあのオストラヴァがここまでついてくるとは思わなかった。このまま共に城を進んでゆくのだろうか?などと考えふけっていると。彼が口を開いた。

「しかしドンキーさん、ずいぶんとこの城の構造に詳しいのですね」

しまった!私がこの城を知り尽くしているのは当然なのだが、オストラヴァからすれば不思議に思われても仕方ないか。

「私の、会いたい人と言うのがこの城に勤めていてね。たびたび城に招待されていたからそれなりに詳しいのさ」

「なるほど」

頭部をすっぽりと覆うヘルムの間からかすかにのぞく眼からは、疑いの色は無かった。先ほどの質問はちょっとした世間話程度のつもりだったのだろう。私の苦しい言い訳に納得してくれたようだ。

出口からから出てすぐ右手にこの城の巨大な正門があり、そこでオストラヴァと二人で並んで立った。正直オストラヴァがここまでついてくるとは思わなかった。これから先も同行するつもりなのだろうか。ここで確かめておこう。

「オストラヴァ」

と、あらためてヘルムの奥にある彼の瞳を見て、問う。

「この先に強力な敵が待ち構えているかもしれない、もしそいつを倒してもまた新たな敵が現れるかもしれない、それでも一緒に行くかい?」

「もちろんです、ボーレタリアのため共に闘いましょう」

視線をそらさず答える様は、なるほど一国の王子だ。そうだ、間違えて彼のことを『アリオナ』と本名で呼ばないように気をつけなければな、それに『ある程度のことは知らないようにふるまわなければ』ならない。知識がありすぎるというのも考え物だな。

「うむ、では行こうか。と、その前にポーチの中身の確認はいいかな?」

オストラヴァは自分の腰にくくり付けてある魔法のポーチを確認した。

「はいっ!大丈夫です」

「では行くか!」

二人でそれぞれ左右の扉を力いっぱい押すとゆっくりと扉は開いた。人一人分の隙間が開いたので、オストラヴァ、私の順ですばやく体を滑り込ませると、ゆっくりと扉が閉まった。

そこは何も無い巨大な部屋だった、太い柱が何本か立っているだけの。窓も無く、壁と柱に掛けられた松明が石造りのこの空間を怪しく照らしている。

私たちの立っている視線の先には、正門より一回り小さい扉があった。

「敵はいないようですね。進みましょう、ドンキーさん」

オストラヴァが辺りを警戒した後言った。

「いや、上だ!」

アイアンナックルを構え、戦闘態勢をとる。すると天井からボチャリボチャリと黒いゲルが落ちてきた。まさかこんな登場の仕方とは、悪趣味な。

「あれは……さっきのゲル!?」

オストラヴァも剣と盾を構える。

「さっきのやつとは比べ物にならんぞ。こいつは」

天井の隙間から落ちてくるゲルは速度と量を増して、見る見るうちに体積を増やしていき、半径十数メートルの半球状になり、仕上げとばかりに表面は先ほど階段で見たような盾で覆われ、その隙間からは鋭い槍がいくつも飛び出ている。

「ドンキーさん、ここは僕が。ヤツが先ほど倒したゲルの集合体なら、ルーンソードが有効のはずです。あなたの武器ではやつらに傷を負わせるのは難しいでしょう」

と、オストラヴァが一歩踏み出す。別に魔法がかけられている武器が無いわけではない、ポーチの中にある、とびきりのヤツを使えば難なく倒せるが、そんなものをここで出せばオストラヴァは私を疑いの目で見るだろう、もしそれを使おうものなら『なぜあなたがその剣を……まさか……古き王ドランを見つけたのですか!?』と言った具合に、出所を疑われる。もちろん愛用していた、戦い続ける者の指輪、は外しておいた。ここはオストラヴァにまかせて私はフォローに徹し、危なくなれば助けよう。

「頼んだぞ、オストラヴァ。死ぬなよ」

もちろんですよ、と言い残しオストラヴァは巨大なゲルへと駆け出していった。私は敵の槍を飛ばす攻撃が少しでもこちらへ向かえばと、柱に隠れながらスローイングナイフを投げることにした、たいしたダメージはならないが、少しでもオストラヴァの負担を減らしたいのだ。



しばらくして、オストラヴァが槍を防ぎつつ敵を切りつけていると変化が起こった。巨大なゲルが体の一部を切り離し、それが小さいゲルへと変わったのだ、生み出される小さいゲルは瞬く間に数を増し、これによりオストラヴァは窮地に陥る。

「オストラヴァ早く部屋の中央に逃げろ」

「これは……マズイッ!」

オストラヴァは自分が部屋の隅に追いやられ、包囲されつつあることに気がつき脱出を試みるが、飛来する槍が思うようにさせなかった、すでに十体ほどのゲルが部屋の角を背にするオストラヴァを包囲している。まずいな、オストラヴァを死なせたくはない!

私は柱の影から飛び出した。

「オストラヴァ、私がこいつらの気をひきつける!なんとかそこから隙を見つけて脱出するんだ!」

「無茶です、どうやって!」

「派手に暴れる!」

突き出され、あるいは飛来する槍をなんとか防ぎ、いっぱいいっぱいの声でオストラヴァが答えた。

「無理ですアイアンナックルじゃあ!僕のことはいいから、逃げて!」

「ならこいつを使う!」

言うが早いか駆け出す!駆けながら先ほど手に入れた松脂を魔法のポーチから取り出した。

松脂と聞けばどろりと粘質の液体を想像するかもしれないが、戦うための道具であるこの松脂は、特殊な液体と混ぜられており、少し水っぽい。

私は木で作られた十数センチほどのボトルの栓を開け、中の松脂をアイアンナックルにぶっかけた。

火をつける時間も惜しい。アイアンナックルで地面をえぐるようにこすりつけ、生じた火花で点火する!

ゲルの背面には盾が無く、点火した勢いで半身を突き出す勢いを持って、そこに思いっきりアイアンナックルをねじ込んだ。すぐに別のゲルを殴る、殴る、殴る。別に倒さなくていい、オストラヴァをこの窮地から脱出させればそれで。

小さいゲルばかり狙うとやつらがこちらに狙いを定め始めた。

「今だオストラヴァ!そこから逃げろ!」

「いやドンキーさん!このまま押し切りましょう、挟み撃ちの形になります!それにドンキーさんの攻撃、こいつらに効いていますよ、魔法と炎が弱点のようです」

さっきまで死にそうな声を出していたくせに、切り替えが早いなあ。しかし、一理ある。このまま闘うとしよう………………



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それからは消化試合だった、ひたすら二人で小さいゲルをつぶしていった。ゲルを生み出しすぎた最初の巨大なゲルは、ふた周りほど小さな透明なゲルになっており、槍を出すことも無くった。二人でちくちく攻撃してたら、オストラヴァの攻撃で溶け、ソウルと化した。

膨大な量のそれはオストラヴァを包み込み、一体となった。

「なんとかなったな、一時はどうなることかと思ったよ……オストラヴァ?」

「…………」

どこか、心ここに在らずといった感じで突っ立ている。

「どうしたどこか、怪我でも負ったのか?」

「あ、いえ。調子が悪いわけではありません、むしろ力がわいてくるようで。ところでこの剣は何でしょうね?ゲルを倒したら急に出てきたみたいですが」

部屋の中央辺りに、小さな石に美しく装飾された細身の剣が突き刺さっていた。

「さあな。まあ何でもいいじゃないか、ヤツの墓標とでもしておこう、それより先を急ごう」

ビチャビチャとゲルの死骸を鳴らしながら部屋を抜け、奥の部屋に居た小さいゲルを倒しながら進む。

「あなたには助けられてばかりだ」

「まあ持ちつ持たれつってところだよ、『たまたま』やつらが炎に弱かったことも幸いした」

と会話もそこそこにして開けた場所へ抜けた、高い城壁のうえだ。この長い城壁の上を進まなければならないのだが……

「うっ、焼け焦げた死体があんなに、先ほどのワイバーンの仕業ですかね」

ほとんど炭化しているためか、匂いはそれほどきつくは無かった。

「だろうな、一気に駆け抜けたほうがよさそうだ、幸い城壁の途中にはいくつか立派な石造りの物見やぐらがある、ひとまずあそこまで」

私としては見慣れた光景なのだが、オストラヴァはまだ慣れてないらしい。

「そう、ですね。合図はお任せします」

「わかったでは、いち、にの、さんっ!」

オストラヴァと共に駆け出す、すると背後から待ってましたと言わんばかりにワイバーンが炎を吐きながら迫ってきた。

「ドンキーさん!」

「考えるなっ走れ!」

なんとか、物見やぐらに滑り込みワイバーンのブレスを逃れた。二度目ともあり、少し余裕があったように感じた。

「さあオストラヴァ次だ、今度は君が合図をしてくれ」

「わ、わかりました」

「行きますよ、いち、にの、さん!」

すこし、オストラヴァが先行しながら走った。視界の端で、ワイバーンがこちらへ向かってくるのを捉える。途中で邪魔をする奴隷兵を無視して走っていると私の目にあるものが止まった、スパイクシールドとは珍しい。スパイクシールドとはその名のとおり、盾に棘がついていると言う、大変ロマンあふれる一品だ。


もらっておこう。


「痛っ」

走りながら拾い上げるつもりが棘に指をぶつけてしまい、失敗した。しかしこうなってはこちらも意地だ。特に使う予定は無いが欲しくなってしまう。

足を止め、たった二秒そこらで回収。しかし――

「しまっ」

ワイバーンのブレスはもうすぐそこまで迫っていて――

ふと先行していたオストラヴァを見ると、彼はすでに物見やぐらについていた。

「よかった」



私は灼熱に身を包まれた。



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あの日、私はいつものように……

頭痛?思い出せない……



謎の浮遊感が意識を包む、どこかで感じたことのあるこの感覚。そう、夢……夢に近い。

夢……?あの時もそうだと思った。目を開いても暗闇しか映らず、自分の体さえも視認できない。ただそこにあるということはわかっていたが。

前触れも無く一方向へと吸い寄せられた。最初はゆっくりとしたものだったのだが、しだに速度を増してった。

そして衝突。軟らかい、弾力のある壁のように感じた。衝突したときの痛みは無かったが、私は引き続き吸い寄せられる感覚を味わった、壁の向こうへと。



(おい)



壁にめり込む、自分の体。じわりじわりと痛みを伴いだし、完全に埋まったと実感したときは、絶えず全身に激痛が走っていた。悲鳴を上げようにも声は出ず……それでも尚、吸い寄せられ、壁の中を移動していく。

本来であれば、絶対にその壁を通過してはいけないような、通過などできないような。そんな意味のわからない思考が渦巻いた。



(なあ、あんた)



どのくらいの時間、痛みを堪えていたのか。

ボコリ、音はしなかったが感覚としてはそうだった。壁を突き抜けたのだろう勢いよく飛び出し、再び加速に翻弄された。

それは奇跡のように感じられた。越えてはならぬ一線、何かを嘲笑うような。

絶望、確立、次元、分子、繰り返す、拡散=平行世界、未来、希望、超越、過去、運命、分母――

意味のわからない情報が脳を通過する。

恐らく、あの日々を憂う日常からは隔絶されたと思う、永遠に。

そして覚醒。



私がボーレタリア王城前に立っていたときは夢かと、仮想かと思った。『なぜいきなりこんな場所へ?』しかしあの奴隷兵を殺した感覚は、命を奪う感覚はまさに現実。私があの場に突如として出現した意味はわからない。誰からも命令されていない、頼まれてすらいない。

(おい、あんた)

ならば、好きにさせてもらおう、私の持つ『知識』と経験と、この若い、鍛え上げられた肉体で、オーラントを倒そう。オストラヴァを救おう、最初期にボーレタリアを訪れ、救わんとしたアストラエアもガルも。他意はない、偽善と言われようとも、例えこの世界が空想だったとしても。

そう思って……
「おい起きろ」

「うおあ!」

眼を開けたら青いおっさんが至近距離に!

私は中年男性を押しやり、跳ね起きた。さっきの夢の所為か、内容は覚えてないが、頭がうまく働かない。視界がぼやける。

「うなされてるから、起こしてやったのにずいぶんだな」

かすれた、生気の無い声が聞こえる。

「こ、ここは?一体」

「ここは神殿だよ、神殿。楔の神殿さ」

そう答えると、彼はのどを鳴らすように力なく笑った。



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もしあなたの身の回りの人間が「自分は別の次元からこの体に憑依した存在だ」と告白した場合、どうしますか?

確立で起こりうることでしょうか?とても信じられません、まだ鶏がひよこに戻ったという方が信憑性があります。

聞けば一笑に付すような、まるで荒唐無稽、夢見物語。

奇跡とは理解できないもの。

確立で起きたとしても、それは――



この世界は依然として――


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