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No.25752の一覧
[0] 犬夜叉(憑依) 【完結】 【桔梗編 第六話投稿】[闘牙王](2012/02/27 00:45)
[1] 第一話 「CHANGE THE WORLD」[闘牙王](2011/04/20 21:03)
[2] 第二話 「予定調和」[闘牙王](2011/04/20 21:08)
[3] 第三話 「すれ違い」[闘牙王](2011/04/20 21:18)
[4] 第四話 「涙」[闘牙王](2011/04/20 21:28)
[5] 第五話 「二人の日常」[闘牙王](2011/04/20 21:36)
[6] 第六話 「異変」[闘牙王](2011/04/20 21:47)
[7] 第七話 「約束」[闘牙王](2011/04/20 21:53)
[8] 第八話 「予想外」[闘牙王](2011/04/20 21:57)
[9] 第九話 「真の使い手」[闘牙王](2011/04/20 22:02)
[10] 第十話 「守るもの」[闘牙王](2011/04/20 22:07)
[11] 第十一話 「再会」[闘牙王](2011/04/20 22:15)
[12] 第十二話 「出発」[闘牙王](2011/04/20 22:25)
[13] 第十三話 「想い」[闘牙王](2011/04/28 13:04)
[14] 第十四話 「半妖」[闘牙王](2011/04/20 22:48)
[15] 第十五話 「桔梗」[闘牙王](2011/04/20 22:56)
[16] 第十六話 「My will」[闘牙王](2011/04/20 23:08)
[17] 第十七話 「戸惑い」[闘牙王](2011/04/20 23:17)
[18] 第十八話 「珊瑚」[闘牙王](2011/04/20 23:22)
[19] 第十九話 「奈落」[闘牙王](2011/03/21 18:13)
[20] 第二十話 「焦り」[闘牙王](2011/03/25 22:45)
[21] 第二十一話 「心」[闘牙王](2011/03/29 22:46)
[22] 第二十二話 「魂」[闘牙王](2011/04/05 20:09)
[23] 第二十三話 「弥勒」[闘牙王](2011/04/13 00:11)
[24] 第二十四話 「人と妖怪」[闘牙王](2011/04/18 14:36)
[25] 第二十五話 「悪夢」[闘牙王](2011/04/20 03:18)
[26] 第二十六話 「仲間」[闘牙王](2011/04/28 05:21)
[27] 第二十七話 「師弟」[闘牙王](2011/04/30 11:32)
[28] 第二十八話 「Dearest」[闘牙王](2011/05/01 01:35)
[29] 第二十九話 「告白」[闘牙王](2011/05/04 06:22)
[30] 第三十話 「冥道」[闘牙王](2011/05/08 02:33)
[31] 第三十一話 「光」[闘牙王](2011/05/21 23:14)
[32] 第三十二話 「竜骨精」[闘牙王](2011/05/24 18:18)
[33] 第三十三話 「りん」[闘牙王](2011/05/31 01:33)
[34] 第三十四話 「決戦」[闘牙王](2011/06/01 00:52)
[35] 第三十五話 「殺生丸」[闘牙王](2011/06/02 12:13)
[36] 第三十六話 「かごめ」[闘牙王](2011/06/10 19:21)
[37] 第三十七話 「犬夜叉」[闘牙王](2011/06/15 18:22)
[38] 第三十八話 「君がいる未来」[闘牙王](2011/06/15 11:42)
[39] 最終話 「闘牙」[闘牙王](2011/06/15 05:46)
[40] あとがき[闘牙王](2011/06/15 05:10)
[41] 後日談 「遠い道の先で」 前編[闘牙王](2011/11/20 11:33)
[42] 後日談 「遠い道の先で」 後編[闘牙王](2011/11/22 02:24)
[43] 珊瑚編 第一話 「退治屋」[闘牙王](2011/11/28 09:28)
[44] 珊瑚編 第二話 「半妖」[闘牙王](2011/11/28 22:29)
[45] 珊瑚編 第三話 「兆し」[闘牙王](2011/11/29 01:13)
[46] 珊瑚編 第四話 「改変」[闘牙王](2011/12/02 21:48)
[47] 珊瑚編 第五話 「運命」[闘牙王](2011/12/05 01:41)
[48] 珊瑚編 第六話 「理由」[闘牙王](2011/12/07 02:04)
[49] 珊瑚編 第七話 「安堵」[闘牙王](2011/12/13 23:44)
[50] 珊瑚編 第八話 「仲間」[闘牙王](2011/12/16 02:41)
[51] 珊瑚編 第九話 「日常」[闘牙王](2011/12/16 19:20)
[52] 珊瑚編 第十話 「失念」[闘牙王](2011/12/21 02:12)
[53] 珊瑚編 第十一話 「背中」[闘牙王](2011/12/21 23:12)
[54] 珊瑚編 第十二話 「予感」[闘牙王](2011/12/23 00:51)
[55] 珊瑚編 第十三話 「苦悶」[闘牙王](2012/01/11 13:08)
[56] 珊瑚編 第十四話 「鉄砕牙」[闘牙王](2012/01/13 23:14)
[57] 珊瑚編 第十五話 「望み」[闘牙王](2012/01/13 16:22)
[58] 珊瑚編 第十六話 「再会」[闘牙王](2012/01/14 03:32)
[59] 珊瑚編 第十七話 「追憶」[闘牙王](2012/01/16 02:39)
[60] 珊瑚編 第十八話 「強さ」[闘牙王](2012/01/16 22:47)
[61] 桔梗編 第一話 「鬼」[闘牙王](2012/02/20 20:50)
[62] 桔梗編 第二話 「契約」[闘牙王](2012/02/20 23:29)
[63] 桔梗編 第三話 「堕落」[闘牙王](2012/02/22 22:33)
[64] 桔梗編 第四話 「死闘」[闘牙王](2012/02/24 13:19)
[65] 桔梗編 第五話 「鎮魂」[闘牙王](2012/02/25 00:02)
[66] 桔梗編 第六話 「愛憎」[闘牙王](2012/02/27 09:42)
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[25752] 第十四話 「半妖」
Name: 闘牙王◆53d8d844 ID:e8e89e5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/20 22:48
「結構集まったわね。」
小瓶に入った四魂のカケラを見ながらかごめが呟く。
犬夜叉たちは四魂のカケラを新たに一つ手に入れ村に戻ろうと森を進んでいるところだった。

「でも誰もこの四魂のカケラを持ってなかったなんて珍しいわね。」

「たまにはこんなこともあるだろ。」
かごめの言葉に犬夜叉が答える。
崖の洞窟という人目に付かないところということもあってか今回の四魂のカケラは妖怪や人間の手に渡っていなかった。
かごめが感じる四魂のカケラの気配を頼りに犬夜叉が崖を登っていき四魂のカケラを手に入れたのだった。しかし

(なんだか今日は妙に体が重い…。)
犬夜叉はいつもの体の違和感とは違う感覚に戸惑っていた。

「残念じゃ、もし妖怪が持っとったらおらが退治してやったのにのう。」
七宝が胸を張って威張りながら言う。

「じゃあ次の時は七宝に戦いは任せるか。」
「えっ?」
犬夜叉の言葉に固まる七宝。

「い…いや、あまり弱い妖怪だとおらが相手するまでもないからな。犬夜叉に任せてやるわ。」
「遠慮すんなって。」

「二人ともいつまでやってるのー。早く行くわよー。」
かごめが少し離れた所から呼びかける。
これが四魂のカケラ集めの道中の日常だった。

村に戻ろうとした一行だったがもう夜に近いということで今日は野宿することになった。
犬夜叉は一人で簡易式のテントを組み立てている。そしてかごめと七宝は二人で犬夜叉が匂いででたまたま見つけた温泉に入っていた。

「うわ~。気持ちいい~。」
かごめが嬉しそうに温泉に入る。

「とうっ!」
七宝も続いて温泉に飛び込む。

「こら、七宝ちゃん行儀が悪いわよ。」
二人で温泉でしばらく温たまったところで

「なんでかごめは犬夜叉と風呂に入らんのじゃ みんな一緒のほうが楽しいではないか。」
七宝がかごめにそう尋ねる。

「そ…それは…、男の人と女の人はお風呂には一緒に入っちゃいけないのよ。」
何とかうまく説明しようとするかごめ。しかし

「おらはおとうやおっかあが生きてた頃はいつも一緒にはいっとったぞ。」
七宝は不思議そうに言う。

「それは…七宝ちゃんのお父さんとお母さんが夫婦だからよ。」
何とかうまくごまかせたと思ったかごめだったが

「かごめと犬夜叉は夫婦ではないのか?」
「えっ?」
七宝の予想外の言葉にうろたえるかごめ。

「ち…違うわよ!」
かごめはそれを慌てて否定する。

「そうなのか。二人がおとうやおっかあみたいだから夫婦かと思っとったんじゃ。」
そう言いながら納得したのか温泉で泳ぎ始める七宝。

かごめはその言葉で妙に犬夜叉を意識してしまうのだった。


かごめと七宝が温泉で騒いでいる頃犬夜叉は一人、木にもたれかかりながら空を見上げていた。

(そういえば…一人になるのは久しぶりだな…。)
七宝が仲間になってからは特に騒がしくなり犬夜叉が一人でいる時間はほとんどなくなっていた。
かごめがいて楓がいて七宝がいる。そんな生活が当たり前のものなっていた。しかし犬夜叉は自分の手の平を見つめる。
犬夜叉にはいくつも気にかかることがあった。

一つは体への違和感。
修行を終えても犬夜叉の体への違和感はやはりなくならなかった。
体が自分のものではないような違和感、異物感が時折犬夜叉を襲う。
それがひどい時は夜眠れないこともある。
かごめや七宝に心配をかけないために何もなかったように振る舞ってはいるが楓にはおそらくバレているだろう。

次に記憶の欠落。
徐々に記憶が戻りつつあるものの何か重大なことをいくつも見落としているような気がしてならない。

そして最も気になるのが本物の犬夜叉について。
本物の犬夜叉はどこに行ってしまったのか。
自分がこの体に乗り移ったことで消えてしまったのか、それともまだこの体に眠っているのか。もし本物の犬夜叉が目覚めてしまったら自分はどうなってしまうのか。多くの不安が犬夜叉を襲う。しかし

(かごめ…。)
犬夜叉はいつも一緒にいてくれる少女のことを想う。
かごめと一緒にいるときは多くの不安も和らぐ。
言葉には出せないが心からかごめに感謝している犬夜叉だった。
犬夜叉は再び空を見上げる。そして

月が消えかかっていること気付いた。


「かごめっ!!」
犬夜叉が急いでかごめの元に向かう。しかしそこには

「え?」
生まれたままの姿のかごめがいた。

二人の時間が止まる。そして

「おすわりっ!!」
その瞬間、時間は再び動き出した。

犬夜叉は着替え終わったかごめと七宝に説明した。
半妖は定期的に妖力が消えて人間になる日があり、犬夜叉の場合それは朔の日の夜であること。
日が落ちると突然人間になり、日が昇ると半妖に戻ること。
半妖にとってその日を知られることは命取りになる為、絶対に他人に教える事は無いこと。

「半妖はいろいろ大変なんじゃな。」
それを聞いた七宝は事の重大さを分かっていないのかあっさりしている。

「人間になるとどうなるの?」
かごめは人間の姿になった犬夜叉がどうなるのかに興味がわいたらしい。

(こいつら…。)
全く危機感がない二人に呆れつつ犬夜叉は二人に背中を向けて屈む。

「とにかく急いで村に帰るぞ。早く背中に乗れ。」
犬夜叉に急かされ背中に乗る二人。

「行くぞっ!」
しかし犬夜叉が合図し走り出したところで犬夜叉は地面に転んでしまった。

「犬夜叉…?大丈夫?」
かごめが地面に突っ伏したままの犬夜叉に話しかける。

「…ああ。大丈夫だ。」
不機嫌そうにそう言いながら犬夜叉は立ち上がる。
その姿はいつもと大きく違っていた。
髪は普段の銀髪とは違い黒になり、爪もなくなり、犬の耳もなくなっている。

犬夜叉は人間になっていた。

「本当に人間になっとるの。」
「本当ね。」
七宝が犬夜叉の頭に乗り犬の耳があった場所を触っている。
かごめも犬夜叉の体のあちこちを触っていた。

「お前ら…いい加減にしろよ…。」
二人にいいようにおもちゃにされている犬夜叉がぼやく。

「しかし人間になった犬夜叉の姿も面白いの。」
七宝がそう言いながら犬夜叉をからかう。

「そんなこと言ってていいのか。七宝。」
「え?」
犬夜叉の言葉の意味が分からず首をかしげる七宝。

「今のおれは人間だ。もし今妖怪が襲ってきてもお前らを守ることはできねぇ。本当にお前が戦わなきゃいけねぇんだぞ。」
その言葉を聞き現状を理解したのか七宝の顔に焦りが現れる。

「だ…大丈夫じゃ! 妖怪の一匹や二匹…おらがなんとかしてやるわい!」
声を震わせながら答える七宝。そして

「大丈夫よ。私と七宝ちゃんに任せて!」
かごめもその言葉に続いた。

「かごめ!?」
まさか肯定されるとは思っていなかった七宝が驚きながらかごめを見る。
犬夜叉も妙に自信満々なかごめに驚くのだった。

結局村まで戻るのはあきらめ犬夜叉たちはテントで野宿をすることになった。

「おらがしっかりせねば…おらがしっかりせねば…。」
七宝は先ほどの犬夜叉の言葉がよっぽど気になったのかテントの中でぶつぶつと独り言をつぶやいている。
犬夜叉は鉄砕牙を抱えたまま座り込んでいた。

「眠らないの?犬夜叉。」
そんな犬夜叉の様子に気付いたかごめが犬夜叉に話しかける。

「落ちつかねぇからな。先に寝ていいぞかごめ。」
そう言いながら自分の体を見つめている犬夜叉。

「犬夜叉…。」
かごめがさらに犬夜叉に話しかけようとしたとき

「きゃああっ!!」
女性の悲鳴と水の音が聞こえた。

「何だっ!?」
犬夜叉たちは慌てて様子を見に行く。見ると川で一人に少女がおぼれていた。
泳げないのかそのまま川の流れに流されていってしまう。

「早く助けなきゃっ!」
「任せろっ!」
犬夜叉が川に入り少女を引き上げようとするが

「うわっ!」
人間の体であることを忘れていた犬夜叉は力の加減を間違え一緒に流されてしまう。

「何やってるのよ。」
呆れながらかごめも川に入り少女を引き上げるのを手伝う。

「やはりおらがしっかりせねば…。」
そう言いながらも全く役に立っていない七宝だった。


「ありがとう、助かったよ。」
火を起こし暖をとっている少女が礼を言う。犬夜叉はその少女を見て記憶を思い出す。

「なずな」
かごめと同年代の少女。
父親を蜘蛛頭という人間の頭をした妖怪に殺され妖怪を憎んでいた。
寺の和尚によって救われ以来その神社で暮らしていたがその和尚の正体は蜘蛛頭の親玉であり犬夜叉たちの四魂のカケラを手に入れるためになずなを利用していた。
人間化していた犬夜叉は苦戦するがかごめたちの助けもあり何とか蜘蛛頭たちを撃波。犬夜叉との触れ合いでなずなも妖怪に対する偏見もなくなり犬夜叉たちと和解した。

「全く人騒がせな奴じゃ。」
七宝がなずなに向けて悪態をつく。

「ふん、なんで妖怪が人間と一緒にいるのさ。」
なずなは妖怪である七宝に冷たい態度をとる。

「何じゃとっ!」
怒る七宝を横目に立ち上がるなずな。

「もう帰るのか?」
犬夜叉が問いかける。

「ああ。和尚さまが心配するといけないからそろそろ帰るよ。」
そういいながら立ち去ろうとするなずなに

「今日はもう遅いから泊って行けよ。」
犬夜叉はそう声をかけた。

「何、犬夜叉その子を口説いてるの?」
かごめが犬夜叉に軽蔑のまなざしを向ける。

「そうじゃねぇっ!」
あらぬ誤解を受け弁明する犬夜叉。
そのまま痴話げんかとなってしまいその間になずなは寺に戻ってしまった。
かごめが落ち着いた後、犬夜叉はなずなの事情を二人に説明していた。

「それじゃあ早く助けにいかなくちゃっ!」
そう言いながらかごめは弓を準備する。

「…そうだな。」
犬夜叉としてはなずなに朝になるまで一緒にいてもらい妖力を取り戻してから戦いに臨みたかったがこうなってしまっては仕方がなかった。

「七宝、おまえの狐火が頼りだ。頼むぜ。」
犬夜叉が七宝に話しかける。

「お…おうっ! 任せろっ!」
そう言いながらも膝の震えが止まらない七宝だった。


三人はなずなの後を追い寺に到着した。
なずなは犬夜叉たちに気付き寺から急いで出てきた。

「何だあんたたち結局寺についてきたのか。寺に入りなよ。中に和尚様がいるから。」
そして犬夜叉たちは寺の中に案内される。

「和尚様、この人たちがさっき私を助けてくれた人たちです。」
なずなが和尚に犬夜叉たちを紹介する。

「なずなが危ないところを助けていただいたそうで。何もないところですがどうか今宵はこの寺に泊って行かれるといい。」
和尚がそう犬夜叉たちに提案する。しかし

「しらじらしいこと言ってんじゃねぇぞ。蜘蛛頭が。」
そう言いながら犬夜叉が鉄砕牙を構える。

「そうじゃ。全部分かっとるんじゃからな。」
犬夜叉の後ろに隠れながら七宝が続ける。

「…ほお、一目で気付かれるとは驚いたわ…。」
そう言いながら和尚の体が変化し巨大な蜘蛛のような体になっていく。

「まあいい、予定は狂ったが貴様らが持つ四魂のカケラをいただくぞ!」
蜘蛛頭が蜘蛛のように増えた手を伸ばし犬夜叉たちに襲いかかる。

「七宝っ!」
「任せろっ!」
犬夜叉の合図で七宝が狐火を放つ。
その熱さに蜘蛛頭が一瞬ひるむ。
そしてその隙に犬夜叉が蜘蛛頭に鉄砕牙を叩き込む。

「ぐわあっ! !」
鉄砕牙の結界によって蜘蛛頭は手傷を負う。

「なずなっ! 今のうちに逃げろっ!」
犬夜叉がなずなに向かって叫ぶもなずなは座り込んだまま動こうとしなかった。

「そんな…和尚さまが蜘蛛頭だったなんて…。」
なずなは信頼していた和尚が妖怪だと知ってショックで動けなくなってしまっていた。

「ふん、バカな奴よ。父の敵のわしを信じ切って仕えていたのだからな。」
そう言いながら手をなずなに向ける。

「もうお前は用済みだ。せめてわしの手で苦しまないように殺してやろう。」
そして蜘蛛頭の手がなずなに向かって伸びていき触れようとした時
蜘蛛頭の体が吹き飛んだ。

「何っ!?」
蜘蛛頭は何が起きたのか分からず混乱する。
それはかごめが放った破魔の矢によるものだった。

「許さないっ!」
そしてかごめが次の矢を構えようとする。

「おのれっ小娘!」
矢を放たせる間を与えない速度で蜘蛛頭が襲いかかる。

「かごめっ!」
犬夜叉がかごめを庇おうとする。しかし

「ぎゃあああああっ!!」
かごめが手をかざした瞬間蜘蛛頭の手が浄化されていく。
かごめは肉づきの面の戦いから神通力を扱えるようになっていた。

(すげぇ…。)
その光景に目を奪われる犬夜叉。

「おのれ…こうなったら…。」
このままではかなわないと悟った蜘蛛頭は標的を変える。

「貴様からだっ!」
犬夜叉に襲いかかる蜘蛛頭。

「くそっ!」
犬夜叉は何とか避わそうとするも捕まってしまう。

「ぐあああっ!!」
腕の骨が折れてしまうほどの凄まじい力で締め付けられる犬夜叉。

「犬夜叉っ!」
かごめが犬夜叉を助けようと弓を構えようとするが

「動くなっ!妙なことすればこいつの命はないぞ!」
蜘蛛頭の言葉によってそれを止められてしまう。

「さあ、さっさと四魂のカケラをよこせ。」
そう言いながらさらに締め付けの力を強めていく。

(どうすれば…。)
かごめは犬夜叉を助ける方法を必死に考える。

(ちくしょう…。)
痛みで朦朧とする意識の中で犬夜叉は自分の不甲斐無さを呪っていた。

(せっかくかごめが強くなってくれたってのに俺のせいで…。)
何とかこの状況を抜け出す方法を探す犬夜叉。
犬夜叉は自分の動くほうに手に握られた鉄砕牙に気付く。
そして犬夜叉は残った力でそれを蜘蛛頭の手に突き刺した。

「何っ!?」
結界の力によって腕が破壊され犬夜叉は拘束から逃れる。

「かごめっ、そこの部屋に逃げ込めっ!」
そう言いながら犬夜叉も走り出す。

「わ…分かったっ!」
かごめたちも急いで部屋に駆け込む。

「逃がすかっ! !」
蜘蛛頭がなおも襲いかかってくる。
かごめたちに続いて犬夜叉は間一髪で部屋に駆け込むそして鉄砕牙を戸に突き立てた。

「おのれ…。」
蜘蛛頭は鉄砕牙の結界によって部屋に入ることができなかった。

「これでしばらくはしのげるはずだ…。」
そう言いながら床に倒れこむ犬夜叉。

「犬夜叉っ!」
かごめが慌てて犬夜叉に駆け寄る。
犬夜叉の体は締め付けによっていたるところの骨が折れていた。

「大丈夫だ…朝になって半妖に戻ればすぐに治る…。」
「そういう問題じゃないでしょ!」
犬夜叉の軽口に怒るかごめ。

「ごめん…あたしが騙されてたばっかりに…。」
なずなが泣きながら犬夜叉に謝る。

「これからどうするんじゃ、かごめ?」
七宝がかごめに尋ねる。

「とにかく朝になって犬夜叉が元に戻るまで待ちましょう。」
かごめだけなら蜘蛛頭を倒すこともできるが満身創痍の犬夜叉となずなを庇いながら戦うのはさすがに無理だった。

籠城からしばらくの時間が経った。
かごめは犬夜叉が少しでも楽な体勢になるよう膝枕をしていた。
なずなと七宝は疲れ切ってしまったのか今は眠っている。

(そういえば前も膝枕をしてあげたことがあったけ…。)
そんなことをかごめが考えていた時

「うっ…。」
犬夜叉が目を覚ました。

「大丈夫、犬夜叉?」
かごめが心配そうに犬夜叉の顔を覗き込む。

「…ああ。だいぶ楽になった。」
そう言いながら犬夜叉は自分の体をじっと見つめている。

「どうしたの?」
その様子に気付いたかごめが犬夜叉に尋ねる。

「…いや現金なもんだなと思ってさ…。」
「え?」
犬夜叉の言葉の意味が分からず聞きなおすかごめ。

「前はこんな半妖の体なんかなくなってしまえばいいと思ってたのに…今は半妖に戻りたくて仕方がない…。」

「犬夜叉…。」
犬夜叉に言葉に返す言葉がかごめには見つからなかった。

しばらくの沈黙の後、

「強くなったよな…かごめ…。」
そう犬夜叉が呟いた。

「…そうね。妖怪に襲われる生活を送ってるんだもん。普通の中学三年生よりはずっと強いつもりよ。」
笑いながら答えるかごめ。そして

「でもそれは犬夜叉もでしょ。」
そう付け加えた。

「え?」
その言葉にあっけにとられる犬夜叉。

「だって犬夜叉だって中学二年生じゃない。いくら半妖の体になったからってそんなにすぐ強くなれるわけないじゃない。だから犬夜叉も強くなってるわ。」
犬夜叉の頭を撫でながらかごめはそう続ける。

犬夜叉は目を閉じる。そしてしばらくの時間がったった後

「かごめ…。」
犬夜叉がかごめに話しかける。

「何?」
かごめがそれを聞き返す。

犬夜叉は

「もし四魂のカケラ集めが終わっても…会いに来てくれるか…?」
呟くようにかごめに尋ねた。

「何言ってるのよ…。」
かごめは犬夜叉に顔が見えないよう横を向く。そして

「そんなの当たり前でしょ。」
そう答えた。


「ん…。」
浅い眠りに入っていたかごめが目を覚ます。外は少しずつ明るくなる始めていた。
外から中に入ろうとしていた蜘蛛頭もあきらめたのか物音ひとつしなくなっていた。

(今何時だろう…?)
そう思いリュックの中にある時計をとろうとした時突然床から蜘蛛頭の腕が生えてきた。

「きゃあっ!」
突然の出来事におどろくかごめ。
鉄砕牙の結界が及ばない地面の下から襲いかかってきたのだった。
そしてその隙にリュックの中にある四魂のカケラが奪われてしまった。

「ついに手に入れたぞ! 四魂のカケラ!」
四魂のカケラを取り込んだ蜘蛛頭は妖力を増していく。
そしてついに鉄砕牙の結界の力が破られてしまった。

「もう恐れるものはないわ!」
蜘蛛頭は再び犬夜叉を捕える。

「犬夜叉っ!」
かごめが弓を放とうするが蜘蛛頭のほうが早かった。

「死ねっ!!」
蜘蛛頭が腕に力を込める。犬夜叉の体は粉々になるはずだった。しかし

犬夜叉の体に大きな鼓動が走る。

「何回も同じ手が通じると思ってんのか?」
腕の拘束が力づくで解かれていく。
犬夜叉の体は粉々になるどころか傷が急激に癒されていた。
そしてかごめは寺の外から朝日がさしていることに気付く。

この瞬間、犬夜叉が復活した。

「散魂鉄爪っ!!」
犬夜叉の爪によって蜘蛛頭の腕が粉々に砕かれる。

「おのれぇぇぇっ! !」
蜘蛛頭は四魂のカケラの力で再生しながらなずなを人質にしようと襲いかかる。しかし

「狐火っ!」
七宝の狐火によってそれを防がれた。

「七宝ちゃん!」
「よくやったっ、七宝っ!」
そう言いながら犬夜叉とかごめがなずなと七宝を庇うように前に立つ。

「おらだってやるときはやるんじゃっ!」
肩で息をしながらも威張る七宝。

「かごめ、四魂のカケラは?」
犬夜叉は鉄砕牙を拾い上げながらかごめに問う。

「衣の横の頭よ!」
かごめが指をさしながら叫ぶ。

「なめるなぁぁぁっ!!」
蜘蛛頭がすべての腕を使って犬夜叉たちに襲いかかる。

「かごめっ!」
それに向かって走りながら犬夜叉が叫ぶ。

「うんっ!」
犬夜叉の言いたいことを理解したかごめが神通力を使う。
その瞬間蜘蛛頭の腕が次々に浄化されていく。犬夜叉はその隙に鉄砕牙を鞘から抜く。

「これで終わりだあああっ! !」
犬夜叉の鉄砕牙が蜘蛛頭の頭を切り裂く。そして同時に四魂のカケラを取り戻した。四魂のカケラがなくなったことで蜘蛛頭の体が消滅していく。
長い夜の戦いがようやく終わりを告げた。


「あんた…半妖だったんだね…。」
別れ際になずなが犬夜叉に話しかける。

「…ああ。」
罰が悪そうに答える犬夜叉。しばらく見つめ合った後。

「ありがと犬夜叉、あんた良い妖怪だったんだね。」
なずなはそう犬夜叉に礼を言ったのだった。

「今回はおらの大活躍でみんな助かったんじゃからな」

「本当ね。七宝ちゃんのおかげよ。」
七宝とかごめが賑やかに話しながら歩いている。犬夜叉はそれを少し離れて歩きながら見つめている。
かごめや七宝、楓に会えたのもこの半妖の体のおかげだ。そう考えればこの半妖の体も悪くない。そんな風に考えていると


「犬夜叉何してるのよ。置いてくわよー。」
「早く来んか、犬夜叉。」
かごめと七宝が立ち止り犬夜叉に手を振っている。

「ああ、今行く。」
そう言いながら犬夜叉は二人に続いていく。

犬夜叉は今がずっと続けばいい。

そんな叶わない願いを願うのだった。


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