はやてたちに帰りの時刻とおおまかな場所は伝えてはあったものの、予定の場所よりだいぶズレてしまったうえにかなり早く着いて
しまった。
　夕方と言ったはずが、陽がまだ高いあたりからするとまだ昼過ぎであるに違いない。こういうときは所定の位置に移動すべきか、そ
れとも下手に動かないのが吉なのか。まぁとりあえず、頭の中で誰かが「動くなよ！　ぜったい動くなよ！？」と叫んでいるのに従い、
ひとまずその場で待機することに。

「うー、いないっス……クア姉が集めた情報だと、裏をかいてこのへんからって予測なんスけど……ちょっと早すぎたっスかね……？」

　と思ったら、何かが茂みの奥でごそごそと動いていた。
　何だろうと思ってポケギアをかざしてみると、すぐさまテロップが流れ始めた。

『あ！　やせいの　ウェンディがとびだ』
「モンスターボールを相手のゴールにシュウウウウウウウ！！」
「わわっ！？」

　ウインディと読んで超エキサイトしてモンスターボールを投げてしまったが、さすがレアモン。避けられてしまって大変悲しい。

「超エキサイトって入力すると懲役サイトって変換されるんだ。まさにエキサイト翻訳。ゼロの使い魔さんしょんぼり」
「いきなり何するんスか！　……あっ、お、お前はっ！」

　野生のウインディは俺の顔を見るなり、驚いたような顔してびし、と指を差す。綺麗な赤いたてがみが印象的だが、ウインディらし
からぬ服がなにやら奇妙だ。ウインディというより、ザフィーラのような。

「たったひとつの拾い物のボールだったのに、体力削って無かったし石もぶつけてなかった不覚すぎる。あと何か用？」
「ずいぶん予定の時間とズレてるっスけど……でも好都合っス！　今こそクア姉たちの恨み、ここで会ったが百人一首！」
「『ポケモンを　さがしに行って　ムイチモン』」
「い、一瞬で五七五を！　タダものじゃないっスね……あ、でも、下の句はどこに？」
「実は前リイン妹が言ってたらしいんだ。五七五にほとんど誰も気付かなかったからスペースまで入れて再使用したんだ悲しい……」
「……なんかよく分からないけど、ええと、ご愁傷さまっス」

　しょぼくれた俺の肩をぽんぽんと叩いてくれるウインディ様。初対面だけど、結構いいやつなのかもしれない。

「それはともかく、いきなり何を投げて来たんスか？　……あっ。あそこの紅白のボール？」
「本当はウインディだと思ったんだ。石を投げようとも思ったが、野生のウインディとか聞いたらもう我慢できなかった(´;ω;)」
「ウイン……ああ、人違いっスね？　わたしの名前はウェンディ、ウインディじゃないっス！」
「イエス様は言いました。『まず罪の無い者が石を投げつけなさい。そのあと私がサファリボール！』」
「聞いてない！？　ちゃんと聞くっス！　ウェンディっス！」
「どちらかというとロッテリアが好きです」
「ウェンディーズじゃないっス！　……あと、どっちもなかなか甲乙つけがたいと思うっス」
「ロッテリアのはサイズ小さくさえなかったら。モスはちょいコストパフォーマンスがなぁ」
「ポテトだけだったらマクドナルドの圧勝なんスけど……」
「よく分かってるな。やるじゃん」

　照れているのか嬉しいのか、えへーと笑うウインディ様。しかし脱線していることに気付いたのか暫くすると、恥ずかしそうにこほん、
と咳払いをした。

「……と、とりあえずもう一度、メイドのミヤゲに教えてやるっス。わたしの名前はウェンディっス」
「よろしくブレンディ。でも違いのわかる男たる俺はネスカフェゴールドブレンディ」
「うぐ、何度言ったら……ウェンディっス、ウ・ェ・ン・デ・ィ。さん、はい」
「リ・ン・デ・ィ」
「うう、ひょっとしてわざとやってるっス？」

　目をうるうるさせてこちらを見上げてくるうどんでい。いやそれは花の慶次だったか。
　それはともかく、さすがにやりすぎかもしれない。名前くらいはちゃんと言ってあげよう。

「う・え・ん・で・い」
「び、微妙にイントネーションが……でも許すっス！　さぁ、ウェンディが寛大さを見せつけたところで、大人しくお縄に」
「天国、地獄、大地獄」
「ガンスルーして占いをはじめた！？」
「大地獄、大地獄」
「て、天国と地獄が、天国と地獄が空の彼方に！」
「さぁさぁ、大地獄にどんどんしまっちゃおうねぇ」
「クアねぇ、クアねえーっ！　こんなの手に負えないっスぅーっ！」
（あっ、お、お馬鹿、こっちに来たら居場所が……！）
「おおクワトロさんそこか久しぶりですね。まともに相手してやろうと思ったんだけど口が勝手にですねさそうおどり」
「！？」

　半泣きのブレンディのお陰で忍び寄っていたアズナブルさんを久しぶりに発見し、トレンディな足さばきで動きを封じつつにじり
寄る俺オリエッティ。







「おいこのガジェットＡＭＦなくても魔法反射すんだけど。やたらメタリックだし」
「えええっ！？　そ、それってリインさんと同じ……！」
「まぁそれでもぶっ叩けば問題ないわけだが。まだ時間もあるし、万が一に備えてリインが待ち合わせ場所に向かってるしな」
「じゃあ私たちは牽制だね。行くよっ、ティアナ！」
「は、はい……」

　せっかくＡＭＦ対策でコーティング弾まで作ったのに、と落ち込みながら戦い始めるティアナなのであった。



（続く）

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イエス様自重。



Ｑ．クアットロさんその人選はどうなんでしょうか？
Ａ．一番抵抗力ありそうな人を連れてきたらこのザマです。
Ｑ．どうやったら彼とまともに会話できますか？
Ａ．はい、それはイオナズンです。

【新・全盛期のオリーシュ伝説】
　済　　エンカウントのテロップが流れ終わるよりモンスターボール投げる方が早かった
　済　　オリーシュにとってのウェンディはウインディの成りそこない
　未 　あまりにポケモンが好きすぎるからドゥーエとディードもストライク扱い
　未 　その２人にもモンスターボール