はい、というわけで完全な閑話その1。
感想で旅行だとか言われたのでこんなのが出来ました。
「別の隊が探索してた世界で新種の竜種が目撃されたらしいんだ」
とある日の夜、珍しく休みで家にいる父が、ショットグラス片手にそんな事を言い出した。
「へぇ、竜種って珍しいんだよね?」
「あぁ、珍しいわ強いわで管理局内でも見かけたらなるべく穏便に、ってのが筋だな」
『その竜種と喧嘩したり友達になったりしてるのはどこの誰ですか』
アイラの突っ込みに「ばっかおめー竜っつったら漢のロマンだろ」とか返している父親。
次元世界における竜、というのは実は全て竜の形をしてるわけではない。
世界一つを滅ぼせる程強かったり、希少能力を持つ特殊な原生生物等の総称である。
中にはランク的にSSSランク近いと言われる「古代種」と呼ばれるものも含まれている。
「で、その竜がどうかしたの?」
「あぁ、なんでもその世界じゃ最近発見されたそいつを倒せるかって話をしてるらしいんだが……」
「竜種に喧嘩売るとかその世界の人たちはそんな強いの?」
「まぁ、非殺傷設定なんて存在しない世界だが……
似たような竜種が他にもいる世界で狩られた記録も残されているから
強さ的にはシングルSいってる奴もいるんじゃないか?」
「ふーん…って事はもしかすると狩られちゃう可能性もあるかもしれないね」
「……よし、ちょっと見に行くか」
「…は?」
何言ってんのこの親父。といった顔で父親の顔を見やると、やたらと暑苦しい笑顔で
「よっしゃ、俺もたまには家族サービスもしないとな!家族旅行行くぞ!」
なんて言い放ちやがった。
父親が艦長を務める次元航行艦「オルレアン」は管理局が使う艦船の中でも特に大きいものである。
アースラの1.5倍の大きさを持つオルレアンはS級4番艦。
なんでアースラがLでそれより大きいオルレアンがSなのか甚だ突っ込みたくなったのは昔の話である。
なんでもLやSというのは大きさを表しているのではなく、設計者の頭文字なのだとか。紛らわしいにも程がある。
ちなみに、一番普及率が高い艦種はM級、なんて事はない。これ以上ツッコミを入れるのはごめんである。
さて、そんな管理局でも大型艦の提督をやっているうちの父親だが、先のやり取りを見てわかる通り自由奔放を地で行く人間である。
にも関わらず、管理局内での信用度はそこそこ高い事で知られている。
曰く「まぁディル提督なら余程の事が起きてもなんとかなるだろう」だとか。
正直そこまで出鱈目ならこの人にStS解決してもらえばいいんじゃね?とも思うが
先の竜種しかり、このリリカル世界には平気で世界を滅ぼせる存在がゴロゴロしている。
さすがにZ戦士のような存在は確認されていないようだが
世界を渡り、人の願いを叶える竜なんてものが旧世界の文献に残されていても不思議じゃないのがこの世界なのである。
そんな危険な世界を探索する部隊のうちの一つをまとめ上げているのがうちの父親なのだ。ご苦労様としか言えない。
もっとも、家族連れで未探索世界に遊びに出かけるなんて言い出してる時点で尊敬もへったくれもあったもんじゃないが。
「で、父さん。部下の皆さんにはなんて言ったの?」
そう、このバカ親父は自分の家族旅行のためにオルレアンを動かしやがったのである。リンディさんより酷い。
ここが軍なら懲罰会議モノである。だが父親はなんの気負いもなく
「ん?普通に探索中惑星の実地観測、という名目で1泊2日の旅だ」
なんて言い放ちやがった。もうやだこの父親。
ちなみにだが、今回の家族旅行には家族の他にオマケがついている。
「わ、わ、凄いよスバル!お星さまがいっぱい!」
「…これが、宇宙」
そう、何を隠そうスバギンである。
家族旅行が決まった日、クイントさんから旅行中の日に預かってくれないか、という連絡を貰ったのだが
それを聞いたうちの両親が「よければ一緒に旅行に連れて行く」とか言い出しやがった。
ナカジマ夫妻は遠慮したが、提督の前には強くも言えず、こうしてロンド家+スバギン姉妹という構図になった。
どうしてこうなったと言わざるをえない。
「ちなみにギンガとスバルは行先知らされてるのか?」
『竜を見に行くのに旅行もへったくれもあったものじゃないと思うのだけれど』
「竜見物とか普通に襲われるフラグしか想像がつかないお…」
なんて話していると窓から宇宙空間を眺めていたギンガがこっちに寄ってきた。
「どうしたの兄さん?」
「なぁ、ギンガ達って行先知ってるか?」
「竜が見れて温泉があるってルクレさんから教えてもらったよ!」
温泉というのは初耳だ。大体息子の俺が行先がどういう所なのかよくわからない。
だが竜見物はともかく温泉というのは嬉しい情報かもしれない。
もしかすると案外まともな旅行になるのか?
正直旅行のために駆り出されたとも言えるクルーの皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱいだったが
温泉があるというのならせめて浸かれ…無理だろうなぁ普通にクルーの総数100人超えてるし。
「温泉ねぇ…どんな所なんだか」
「楽しみだよね!」
「ギンガもスバルも温泉は初めてか?」
「うん。ミッドチルダじゃ温泉ってあんまりないからお母さんが羨ましがってた」
「あー…売ってたら温泉まんじゅうくらい買って行ってあげよう」
「温泉まんじゅう?」
「湯煙と血煙で赤茶けたサスペンスの銘菓だ」
「わぁ美味しそう!」
「……なんなんだろうな、ナカジマ家って」
『私も楽しみよ?温泉まんじゅう』
赤茶けてるのは血煙のせいじゃないからごめんそんな無垢な顔でこっちみんなバーローとか適当に会話をしながら到着まで時間を過ごした。
「ヴェルーディルさんが着いたってー」
「ん、わかった。んじゃ行くか二人とも」
「「うん」」
ブリッジに上がると父親が艦長席に座っており、行くときに挨拶したクルーの数人が微笑ましいといった目線を向けてきた。
いい人たちなのになんで父親の部下なんてやってんですかと言いたくなるが、「ディル提督ならなんとかするだろう」というのは
先にも言ったが比喩でもなんでもないので、探索部に回される人員はオルレアン勤務を希望する人が後を絶たないのだとか。
「お、来たなチビ共。んじゃ行くか!」
「艦長、静止軌道上からの座標軸の固定終了しました」
「おう。あーお前ら、今回は一応地質調査も項目に入ってる。
だから水質調査って事で地下から温泉を転送魔法で引っこ抜く
なんて事も出来るわけだが…まぁ程ほどにしておけよ」
「「「aye, aye, sir.」」」
アイラが突っ込まないって事はこれもいつもの事なんだろう。
だから俺が何か言う必要もない。むしろ現地の人うちのバカ親父が申し訳ありませんとしか言えない。
ちなみに今回の調査について、一緒に実地調査に回される人員は旅行組以外に10名弱。
戦闘要員は他にもいるのだが、今回は竜がいる惑星という事で
全員がAランク以上という高ランクで形成された少数精鋭になっている。
なんて考えながら転送陣のある部屋まで移動し、ロンド家+αは惑星へと転移した。
既に地上に転移して待機していた数名の部下に向かって
「お前らも面白そうなもんあったら連絡寄越せ。見に行くからよ」
彼らは連絡しない気がする。
堅実に調査して確実に温泉を転送させるだけのような気がする。
まぁ、不平不満が出ないように頑張って温泉転移させてくれ。やりすぎて枯らせるのはダメだが。
つらつらと考えているうちに現地の服装についての説明を受ける。
「といってもこの世界の服装はかなり異色だし、地方による差異が大きいから
私服でもバリアジャケットでもあまり怪しまれないからそのままで大丈夫なんだがな」
服装説明終了。
っていうか父親以外のロンド家+αは普通に私服だし、他の人は普通に武装隊仕様のバリアジャケット装備してるし。
「まぁ、よしんば怪しまれそうになってもバリアジャケット着ればまず問題ないだろう。一応危険度もそこそこ高い世界だしな」
てなわけで私服はともかく出来ればバリアジャケットで、と言うので俺はいつものセルシウス仕様になる。
ちなみに父親はバリアジャケットに変えても服装が管理局制服に近いままという無駄な仕様だったりする。
曰く「仕事服で戦うのがロマン」というしょうもない理由だが、特に害も利益もない。
「母さんとギンガ達はどうする?」
「母さんは現地の服装に合わせるわ」
「私とスバルはそのままで大丈夫って言われてるけど……」
母親が変身魔法の応用で服装を変化させる。
出来た格好はどことなくアジアンテイスト…なんだこの世界。
「わ、いいなー」
「ふふ、ギンガちゃんたちも着る?」
「お願いします!」
なんてやり取りで結局女性人は現地仕様の服装に。
そこはかとなく嫌な予感を感じさせながらも
ユクなんたら村なんて名前の村に着くと、そこにはやたら凶悪な見た目だったり
露出度が高い服装の人とアジアンテイストの服を着た人達が行きかっていた。
「父さんだけなんか浮いてる気がするけど」
「まぁ大丈夫だろ。むしろお前のジャケットがなんで溶け込んでんだよ」
「さぁ?」
としか言えない。セルシウス仕様のモンク服は正直この世界でも違和感ないから困る。
と、村の入り口から少し歩いたところに耳の長い綺麗な女性がいた。
彼女はこちらを見つけると、微笑みながら話しかけてきた。
「ようこそ。ハンターの方ですか?」
「あぁいや、観光で来たんだが」
「そうですか。お泊りになられる予定なのですか?」
「いや、そこまで考えてないんだが、泊まれる所があるのか?」
「この村で一番大きい銭湯に宿泊施設が併設されていますよ」
「それじゃ泊まるのもアリだな……お前らもそれでいいか?」
「私はいいわよー」
「俺も別に」
「「お願いします」」
「てなわけで泊まらせてもらう事になった。良ければ宿の場所を教えてもらえないか?」
「ふふ、わかりました。着いてきてきて下さいな」
そんなわけで女性の案内で宿泊兼温泉の出来る施設へと向かう。
「あぁそれと、この村の近くに渓谷があるのですが、渓谷の中には降りて行ってはダメですよ」
「なにかあるのか?」
「最近、竜種がよく出没しているんですよ。
それで村人や観光者の方には近寄らないようにという御触れが出てまして。
村でハンターの招致を開始したのですが、まだ全て追い払いきれていないようですし」
それを聞いて目の色を輝かせた父親とスバギンに更に不安を煽られながらも
女性の案内で宿の手続きを済ませ、女性に礼を言って別れた。
「あの方はこの村の村長さんなんですよ~」
なんて係の人の爆弾発言に全員驚愕しつつ、部屋に案内される。
部屋は家族部屋ということで、子供用の寝室と大人用の寝室を居間で挟んだ間取りの部屋。
「入浴施設は宿泊者には一日中解放されております。それでは、ごゆるりとおくつろぎください」
てなわけで母親はスバギンを連れて温泉へ。
何?混浴フラグ?幼女の裸でテンパる俺なんか見ても面白くもなんともないだろう。よってお断りする。
『ヘタレね』
氷の女王の呟きを無視してなんとか言い含め、スバギンは渋々温泉へ向かい、俺はというと
「よし渓谷行くz「落ち着け父さん」なんだ?行かないのかお前?」
「いや、別に行ってもいいんだが、ギンガ達も楽しみにしてるみたいだから。俺らだけで行くってのはアレだろ?」
「んーそうだな、じゃあまずは軽く竜の情報集めでもしてみるか」
そんなわけで施設を出て村人に噂を聞いて回ると
村人A「なんかものすごく強いらしい。強いハンターでも一人ではとても太刀打ちできないのだとか」
村人B「電気を出す虫を集めて自分の体を強化してるんだと。それでものすごい速さで動くって聞いた」
村人?「上位太刀ソロ無理www友達やってねぇしwwwボスケテwww」
なんて話を聞く事ができた。
最後のはよくわからない情報だったがまぁいい。
「で、やっぱり行くの?なんか電気とかむっちゃ速いとかそこはかとなくチート臭がするんだが」
「当たり前だろう。といっても今日は行かない。温泉入って飯食って寝る。明日行こうぜ」
「わかった」
なんてやり取りをしながら宿へ戻ると、女性陣は戻ってきており
「あ、どこ行ってたの兄さん!温泉すっごく気持ちよかったのに!」
「ちょっと父さんと竜の話を聞きにな。なんでも電気を使って速くて強いんだそうだ」
「へぇ~」
「強いの?」
「まぁ父さんいるしな。この人のチート具合はちょっとおかしいから」
余談だが父親の魔導師ランクはS+。チート具合は管理局内でも折り紙つきである。
特殊なデバイスであるアイラを用いた全力攻撃はSSランク扱いだとか言われている。
父親曰く「アレで倒せない敵はあんまりないな」だそうだ。どういう強さをしてるんだか。
そんな父親の方を見やると
「はっはっは!この星の酒はうめぇ!」
「ほんと、美味しいわねー」
「よし、湯船酒と行くか?」
「いいわねー。それじゃヴェル、お母さんたちもう一度お風呂行ってくるわー」
なんて事を言われ、子供三人残される。
「ねぇ兄さん、村で面白そうな場所ってあった?」
「ん?あぁ、そういや情報収集だけしかしてないから全然見てないな。一緒に周るか?」
「うん!」
「行く」
なんてわけで子供三人で村を散策することに。
ここ、ユクなんちゃら村はそこまで広いわけではない。
ハンターや観光者を含めても常時100人程だろうか。
とはいえ村としてはそこそこ知られている。霊峰から湧き出る豊富な湯は湯治場として村を発展させた。
若くして村長となったあの女性の経営手腕もあって、そこそこ村は潤っているのだそうだ。
新種の竜種が近くで暴れはじめたのは最近の話だそうだが、ハンターを招致したことで一応村の安全は守られている。
そんなわけで村の外れまで一通り出店を覗いたり村の子供たちと話をしながら時間を潰していたのだが
「お兄さんうちのご主人様を助けてニャ!!」
渓谷へ向かう道付近で唐突に声をかけられた。
「わ、わ、可愛い猫さんだ!」
「二足歩行の猫……」
スバギンはやたらキラキラした目線でみているが、猫は必死な表情で俺に言う
「うちのご主人様が竜討伐の以来を受けてこの先の渓谷近くで戦ってたんだけど、足を怪我して動けなくなってるのニャ。
逃げようにも近くにはまだオウガがうろうろしてるし。だからオウガを倒して欲しいのニャ」
「いや無理だって。大体子供に頼むなよ…」
「御主人友達いないから助けてくれる人がいないのニャ……」
「……それは切ないな」
「うん、兄さんなら助けてくれるよ!」
「頑張ってお兄ちゃん」
「いやいやいやいや………」
そんなわけで何故かギンガと猫モドキの両方から引き摺られて渓谷へと連れて行かれた。
「で、なぁにあれ?」
『大きいわねぇ』
「わーかっこいいー」
「……竜に見えない。ちょっとがっかり」
「ご主人様!助っ人連れてきたニャ!ってあぁ、気絶してるニャ」
そこはかとなくカオスな雰囲気を保ったまま竜が陣取る渓谷の一角へ着いたわけだが。
何だあの四足歩行のよくわからないデカいのは。
ハンターさんは怪我した足では避けられなかったのか吹き飛ばされたらしく、気絶していた。
そして竜はめっちゃこっち見てる。これは逃げられんね。
「ん、なんだこのデカい太刀?」
『あら、いい剣ねソレ。使わせてもらいましょう』
「デカいし持ちづらそうだが無いよりマシか。だが効くかわからんぞ?」
『魔力も流せるみたいだし、それで強化すれば大丈夫よ』
そんなわけで、倒れていたハンターさんのものと思われる落ちていた太刀を拾って構える。
オウガとか呼ばれていたその竜は、光の粒を体に集め、帯電しているのかバチバチと音を鳴らせながらこちらを威嚇している。
「兄さんがんばってー」
「頑張って」
「お兄さん頼んだニャー」
いつの間にか離れた所から理不尽な声援を送る少女二人と猫モドキ一匹。
ハンターさんはまだ気絶してるっぽし何故か戦うムード一色に何もかも投げ出したくなった。
「…やりゃいいんだろやりゃあ……」
不本意すぎる戦闘に巻き込まれてテンションこそダダ下がりだが、ここで死ぬとか終わり方的にもアレなので頑張るしかない。
と、咆哮を上げながらその巨体から想像もできないようなスピードで竜が突っ込んできた。
「うおっ!」
流石に現地人がいる前で魔法行使はどうかと思ってたがそんな余裕はない。
魔法陣を一瞬だけ展開し、高速で氷の足場を形成して横っ跳びに滑って躱す。
だが避けたところに今度は尻尾の一撃が飛んでくる。それをなんとか太刀で受け止めたが、反動で吹き飛ばされた。
「あっぶねぇ…」
『速いわねぇ…クイント程じゃないから反応できないわけではないけど』
「だな……後はこの太刀で攻撃が通るかなんだが…」
攻撃を避けながらひたすら後ろに回って斬りつける。
だが細かい傷が出来たり、太刀に付与された魔力で体の一部が凍りつくだけで、ダメージらしきものは与えられていない。
「尋常じゃない頑丈さだな…」
『いっそEFBで凍らせてしまう?』
「人前じゃなるべく使いたくない……かといってずっと斬ってるのも時間かかりそうだし」
さてどうしたものか。4尺近くある太刀を肩に担ぐようにして竜の両前足や体全体を使った攻撃を避けながら考える。
大太刀と言えばセフィロス。セフィロスと言えば八刀一閃な感じで切りつけてもあんまり効果がないのならば
「弱点狙うしかないだろ」
『そんなものあるの?』
「竜なんだからどっかに逆鱗くらいあるだろ。なぁ猫モドキ、こいつに逆鱗みたいな弱点ってないか?」
そう問いかけると
「逆鱗はお腹の位置のどこかに色違いの鱗が生えてるニャ。それと猫モドキじゃなくてオトモアイルーのスフィンクスニャ!」
スフィンクスとはまたけったいな名前だな。どこのバカがつけたんだか…あのハンターさんか。
この巨体の腹を狙うとなると…突進にカウンターか?
「レティニア、全身強化して竜を転ばせる」
『ヴェルって以外と無茶するわよね』
「だってそれ以外に思いつかないんだもの」
とか言っていると竜が帯電させた体を突撃させてきた。
氷の足場で頭を避け、前足の片方に思いきり太刀を叩きつけると、竜はバランスを崩して倒れ込みながら3m程滑って止まる。
「よっしゃ腹が見えた。行くぜ」
『逆鱗の位置は?』
「えーっと、あれか?」
腹の細かい鱗の中の一つに色違いのものをみつけ、それを思いっきり斬り付ける。
頑丈なのか、一回の斬撃で壊れる事はなかったが、凍り付いた事で壊れやすくなったのかなんとか壊す事ができた。
逆鱗を壊された竜は断末魔の悲鳴を上げながらしばらくもがいていたが、やがて動かなくなった。
「…ふぅ」
『お疲れ様』
刀を地面に刺して寄りかかって片膝をつく。
…超面倒だった。正直太刀無かったら壊せなかったかもしれん。
なんて思っていると少女二人と猫一匹が近寄ってきた。
「兄さんすごーい!」
「…あんまり強くなかった?」
「お兄さん凄いのニャ。オウガをソロで倒しちゃったのニャ」
「いや、正直ものっそいしんどかった。さっさと宿で寝たい」
「これでご主人様のクエストも終わりだニャ。他の大型種はもう狩ってあるし、本当に助かったニャ。それじゃオイラ達はそろそろ行くニャ」
「ん、まぁ終わってみればいい修業相手になった。あぁ、それと太刀借りちゃったけど返すぜ」
「その太刀はご主人様がオウガ用に作った太刀だからオウガを倒したらいらないものだった筈ニャ。だからあげるニャ」
「は?いやでもこれ「それじゃばいばいニャー」…あの体格で大人引き摺ってくのってシュールだな…まぁいっか。太刀なんて使い道ないぞ?」
『ソフィアのストレージに入れとけばいいんじゃない?』
「物質保存ってやたら容量食うんだが…あ、入った。容量二割も食われてるけど」
「いいなぁ兄さん」
「ん、砕けてるけど逆鱗持ってくか?」
「いる!」
「綺麗だねコレ」
「よし、じゃあ宿に戻ろう」
まぁそんな感じで宿に戻ったわけだが、当然のごとく親父からは「は?ヴェルが倒した?俺もみたかったのに……」と拗ねられた。
というか俺が竜を倒した事についてツッコミはないのかと言いたいが
報告を受けて知った他の管理局員は「まぁ、ディル提督の息子さんだし…」で済まされた。不本意すぎる。
――そして翌日
「お母さんただいまーー!」
「ただいまお母さん」
「二人ともお帰りー!楽しかった?」
「うん!これお土産!」
「あら、綺麗な色してるわねコレ?」
「うん!オウガって竜のげきりんって言う鱗なんだって!」
―クイントさんがオウガの逆鱗を手に入れました。
後書き
実を言うと作者は某魔物ハンターシリーズは一本もやったことないんです。
この作品内でやられたり気絶してるハンターさんは、私の友人です。
友「お前もやれよ。そして助けてくれよ」
作「やってやるからPSP買ってくれよ」
こんな感じです。
作者はポータブルハードの作品にはあまり興味がありませんので。
今回無謀にも何故か世界観をもってきてしまったのですが
作者はあくまで模倣しただけですので
実際のゲームとは設定が違う所が多々あると思います。
ですがそこは突っ込まないで頂けると。
アンケートですが、予想以上のご意見を頂き作者困惑しておりますwww
今の所A'sから介入というのが一番多いですね。
それ以外はまさかの同数くらいというのにも困惑。
ノーマルエンド希望とか誰が得するんだ。そして全ルート書けと言う鬼畜な意見に作者びくんびくんしちゃう。
そしてアンデビさまはARMS自重。作者がコーヒー吹き出します。
あと荒城乃月様のvividも吹きました。
ひこさんやChaosさんの意見も鑑みて、これはもうメガーヌとルーテシアの母娘丼エンドを目指すしかないか…!?
なにはともあれ、混浴編をスルーできてよかった!
この作品に登場する幼女は全員18歳以上なんて事はないから安心した!
………え?何?書け?えっちなのはいけないと思います!