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No.25220の一覧
[0] サトリのリリカルな日々 (リリカルなのは オリ主)【sts編変更、修正しました】[kaka](2011/08/16 01:01)
[1] 第一話[kaka](2011/08/16 00:25)
[2] 第二話[kaka](2011/08/16 00:26)
[3] 第三話[kaka](2011/08/16 00:27)
[4] 第四話[kaka](2011/08/16 00:28)
[5] 第五話 前編[kaka](2011/08/16 00:32)
[7] 第五話 後編[kaka](2011/08/16 00:34)
[8] 第六話[kaka](2011/08/16 00:35)
[9] 第七話[kaka](2011/08/16 00:36)
[10] 第八話[kaka](2011/08/16 00:37)
[11] 第九話 A’s[kaka](2011/08/16 00:39)
[12] 第十話[kaka](2011/08/16 00:40)
[13] 第十一話[kaka](2011/08/16 00:41)
[14] 第十二話[kaka](2011/08/16 00:41)
[15] 第十三話[kaka](2011/08/16 00:42)
[16] 第十四話[kaka](2011/08/16 00:44)
[17] 第十五話[kaka](2011/08/16 00:45)
[18] 第十六話[kaka](2011/08/16 00:46)
[19] 第十七話[kaka](2011/08/16 00:47)
[20] 第十八話[kaka](2011/08/16 00:48)
[21] 第十九話[kaka](2011/08/16 00:48)
[22] 第二十話[kaka](2011/08/16 00:49)
[23] 第二十一話 A’s終了[kaka](2011/08/16 00:49)
[24] 第二十二話 sts編[kaka](2011/08/16 01:02)
[34] 第二十三話[kaka](2011/08/25 01:16)
[35] 第二十四話[kaka](2011/09/14 02:37)
[36] 第二十五話[kaka](2011/09/14 02:35)
[37] 第二十六話[kaka](2011/09/25 22:56)
[38] 第二十七話[kaka](2011/10/13 02:00)
[39] 第二十八話[kaka](2011/11/12 02:02)
[40] 第二十九話[kaka](2012/09/09 22:02)
[41] 第三十話[kaka](2012/10/15 00:10)
[42] 第三十一話[kaka](2012/10/15 00:09)
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[25220] 第二十五話
Name: kaka◆0519be8b ID:5d1f8e6e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/14 02:35

【Sideザフィーラ】

 希が宣戦布告をしてから、二週間以上が過ぎた。
 今のところ希に目立った動きは見られない。
 今まで通り、こちらが見つける前にレリックの回収済ますという作業しかしていない様に見えた。
 だが、そんなことで終わるはずがないと、六課の全員が思っている。
 あの、管理局の悪魔が、一ノ瀬希が宣戦布告までして来て平穏が続くわけがない、と。
 故にこの二週間、希の行動は探れるだけ探り、何時どんな事態が起きようとも対処できるように警戒もしてきた。
 それでも、たいして希の行動が把握できていないので気休め程度だが。
 皆も何かせずにはいられなかったのだろう。
 しかしそれにも限度がある。
 このまま緊張状態が続いたのなら、おそらくこちらの方が先に参ってしまうだろう。
 あるいは、希の狙いはそれかもしれない。そうやって、手のひらの中で踊らされているのでは……と、不安も浮かび上がる。
 状況は、我々にとって不利にしか進んでいなかった。
 あの、最悪な連絡が来るまでは……






【Side希】

 はやてに宣戦布告をして、二週間以上が過ぎた。
 その間も俺は、表面上は今までと同じように、六課が見つける前にレリックを回収するという作業を繰り返し続けた。
 だが、六課の見つからないところで、秘かに行動は進めていた。
 元々はやてが条件をのんでくれる可能性は低いと思っていたため、前から準備はしていた。なので、今のところ六課に気付かれることなく事を進める事が出来ている。
 そして俺は今、六課を潰す上で山場となるであろう事に取りかかっていた。
 はやての後ろ盾の中で最も力がある者、三提督の懐柔だ。




「……と、いうわけです。いかがでしょう? 能力、実績共に申し分ないと思います。三提督さえ受け入れていただければ、すぐにでもこちらの準備は整います」

 その、俺の提案に三提督は三者三様の受け取り方をする。
 ミゼット・クローベル幕議長は困った様に溜息をつき、ラルゴ・キール元帥は不機嫌そうにフンっと鼻を鳴らし、レオーネ・フィルス相談役は考えるように口元に手をやる。

「ふむ、確かに、君の言うとおりだ。確かに、君の提案する部隊の方が機動六課よりも戦力の大きい集団にすることができるだろう」

 そう、レオーネ相談役は俺の提出した資料に目を通しながら呟いた。
 俺が三提督を懐柔するにあたって使用した手段、それは単純だった。
 機動六課本来の存在理由、非常時のための戦力という役割を奪ってしまうというものだ。
 そのために、各種機関に出向いて優秀な戦力を引っ張ってきた新しい部隊の設立を提案した。

「でも、こんな集団じゃ陸を必要以上に刺激してしまうんじゃないかしら?」

「問題ありません。そこは私が責任を持って抑えつけます。それに、いざとなったら部隊ごと切り捨ててくれればいい」

 その俺の発言に、ミゼット幕議長はもう一度溜息をついてからまた資料を眺める。
 だが、反論自体は何も言ってこなかった。
 事実、俺の集めた戦力達はいつ切り捨てられても文句を言えない様な問題児だらけだったからだ。
 戦闘能力は高いが、命令違反や素行不良が目立つ落ちこぼれたち。
 むしろ最終的に部隊ごと切り捨てたほうがいいのではないかという意見が出てもおかしくない集団だ。

「まったく、好き放題やってくれとるのう、小僧」

 それでも、ラルゴ元帥はおもしろくなさそうだった。
 やり方、というよりも俺が六課に敵対しているという状況が気に入らないのだろう。
 三人は知っているから。俺が管理局に留まる理由を。
 そんなラルゴ元帥を窘めるようにレオーネ相談役が言う。

「うむ、しかし制約を破っているわけではない。その上での行動なのだから、あまり強くも言えないだろう」

 それでも、ラルゴ元帥の機嫌は直らない。
 むしろ制約の話を出したせいで悪化したほどだ。

「フンっ、あの胸糞悪い首輪か。あれ自体、わしは好かん」

「論点がずれています。今はその話をしているわけではありません」

 制約。
 もちろん、俺にもそれはある。
 ただし、それは一般の職員には知られていない。
 それを知っているのは俺に対して絶対的な対抗手段を持っているもの。
 つまり、はやてとの関係を知っているものだけだ。

「それに、その話はもう終わった事ですし」

 俺の能力が知られたとき、誰が俺を所有するかはとても重要な問題だった。
 なにしろ、情報戦において圧倒的なアドバンテージが取れるのだ。
 権力者はこぞって俺を欲しがった。
 その力を求め、権力者同士で潰しあいが起こってしまうほどに。
 その潰しあいが泥沼化し、これ以上は管理局の運営に支障をきたすという段階になってようやく皆は妥協案を出す。
 この能力は、知っている者全員で分け合おうと。
 そこで、制約ができた。

「私も納得しています」

 一つ、秘密を知る者同士の潰しあいに加担してはならない。
 これは単純にこれ以上上の人間が減っては困るからと、自分たちの保身のためにつけられた条件。
 二つ、行動は常に監視し、管理局の情報を外に漏らしてはならない。
 これも理由はそのまま。
 ただ、その方法で少し揉めた。本来なら、常に監視の人員をつける事が一番なのだろうが俺と常に一緒に居るなんて事をしたがる人間が一人もいなかったからだ。
 なので、妥協案として常にGPSと盗聴器、監視衛星を用いて監視することになった。
 三つ、生存の義務。
 この能力は、管理局にとって危険も多いがその分見返りも大きい。故に、簡単に死なれては困るのだ。
 なので、非魔導師であるにもかかわらず死ぬほど訓練を受け、自衛の方法を身に付けた。
 そして、護衛も知る者達が選んだ精鋭がそれぞれ数人。ただしこちらもつきっきりというわけにはいかないので、俺が危険に落ちいった時のみ転送魔法で護衛が送られてくる。
 他にも細かいものは多々あるが、主要な制約はこんな感じだ。

「それよりも、答えをお願いします。機動六課にこのまま任せるか、それとも私の部隊に引き継ぐか」

 俺は強引に話を進めようとしたがそれは無理だった。
 ラルゴ元帥は俺の問いを聞いてから紅茶を一口飲むと、一転して真剣な様子で

「はやてちゃん達では、そんなに危険かの?」

 確信を突いた質問をしてくる。
 ラルゴ元帥は言う前に盗聴器のスイッチを切っている。
 能力を知る者だけの特権で、俺と密談したいとき彼らは盗聴器のみ切る事ができる。
 つまり、監視は気にせず本音で喋れという事だ。

「……えぇ、そうですね。正直、こんな仕事を彼女に回した聖王教会とあなたたちを捻り潰したいと思う程度には」

「なるほどのぅ」

 ラルゴ元帥は俺が忌々しげにいった言葉に対し、ひげをさすりながら思案する。
 すると今度はレオーネ相談役が

「しかし、君が強引にそんな真似をしたら、彼女たちはどう思う? 事情を知らない彼女はどう思うかなど、君にはわかっているだろう? そんな事に耐えきれるのかい?」

 と、質問をしてくる。
 ……だから、この人達と話すのは嫌なんだ。

「……少なくとも、彼女たちは危険から遠ざかる。それなら、そんなことは些細な問題です」

「はぁ、そんなわけはないだろう」

 そう言ってレオーネ相談役は溜息をついた。
 この人達は苦手だ。
 俺の身を心配してくるから。
 散々好き勝手やって迷惑をかけた俺に対し、善意で接して来るから。
 だから、苦手だ。

「……ねぇ、一坊。貴方の決意は私達も理解してるつもりだわ。でも、今回だけ。今回だけそこを曲げてはやてちゃんと協力してみたら?」

「それはないです」

 ミゼット幕議長の提案を俺はすぐさま却下した。
 今さら戻れるはずがない。
 それでも、ミゼット幕議長は辛抱強く説得を続けた。

「でも一坊、辛いんでしょう?」

「そんなことは言っていません」

「言っていないだけでしょう?」

「仮に、そうだとしても彼女と協力するという結果にはつながらない」

「だから、あなたがはやてちゃん達と組めば、辛い思いで苦労するよりも簡単に状況改善できるんじゃないかって言っているのよ。一坊の身はきっとヴィータちゃん達が守ろうとする。一坊は一坊で中からはやてちゃんたちを守ればいいじゃない」

「そんな危険は冒せない。このまま俺が離れていた方が彼女の安全性は高い。それに、俺は騎士たちの身を危険にさらす気もない」

「……はぁ、まったく。強情な子ね」

 結局ミゼット幕議長の俺への説得は失敗に終わった。
 気持ちはありがたいが、到底受け入れられるものじゃなかったから。
 いまさら彼女たちの隣になんて、俺はいけない。

[マイスター]

 すると突然俺のデバイス、アハトが

[ガジェットが出現しました]

 敵の襲来を知らせた。





 報告を受けた俺はすぐに立ち上がる。

「では、そういうことなので失礼します。先ほどの件、どうかご検討ください」

 こっちが伝えることは伝えた。

「まだ、話しは終わっていないんだがな」

「そうですか。では、続きはまた今度にしてください」

「まったく、私たち三人が会する事が出来る日など限られることは知っているだろう」

 レオーネ相談役は咎めるように言ったが俺の行動を特に止めようとはしなかった。
 なので、俺はそのまま三提督に背を向け、歩き出そうとすると

「待て、小僧」

 ラルゴ元帥が険しい表情をしながら俺に警告してきた。

「嫌な予感がする。行くのなら、十二分に警戒せい」

 それに伴い、ミゼット幕議長とレオーネ相談役も表情を変える。
 そして俺も。
 ラルゴ元帥のカンは良く当たる。
 それはもう、予知能力でもあるのではないかと疑いたくなるほどに。
 だから、この警告は警戒を高めるのに十分な価値がある。

「分かりました。では」

 それだけ答えて、俺はこの場を後にした。
 さて、どんな試練が待っているのやら。






 なるほど。
 やはりラルゴ元帥の予感は良く当たる。
 今回、今まで沈黙を守ってきたスカリエッティの主戦力達が出張ってきた。
 ナンバーズと名のる戦闘機人達。
 俺は移動中、能力の効果範囲を最大にすることでそいつらの存在を感じ取った。
 そして、保護した少女の正体も。
 モンディアルとル・ルシエも随分と重要な人物を保護したものだ。
 出来れば、このような事態が起きる前にはやてにはこの事件から手を引いて欲しかったが。
 とはいえ、こうなってしまった以上は仕方がない。
 六課はまだこの少女の重要性に気が付いていないようだし、後で回収することにしよう。
 今回ばかりは多少強引にでも。
 とはいえ、今奪還されてしまっては元も子もない。
 何としてでもこの少女は死守しなくては。
 急ごう。
 そう思い、俺はアクセルを強く踏みこみスピードを上げる。
 結果的に協力する形になってしまうが、まずは幻影を使って高町たちを足止めしている奴でも潰しておくかな。
 などと、考えていると




 眼の前に数十体に及ぶガジェットドローンⅠ型改と三体ものガジェットドローンⅢ型が現れた。


 っち! 遠隔召喚か!
 ガジェットを確認するや否や俺は車の外に飛び降りた。
 それと同時にガジェットⅠ型改からのミサイルが発射され、俺の車は爆破されてしまう。
 俺はその爆風を転がりながら受けつつ、状況確認をする。
 っく、まずいな。狙われたか。
 つけられてはいなかったから、おそらくあの狂人が作った盗撮用おもちゃでもつけられていたのだろう。
 一応アハトにはそういったものを探知する機能をつけているんだが。
 やはり機械に関しては向こうの方が一枚上手か。
 しかし、この程度の数のガジェットなら問題ない。
 単独で戦えば時間がかかるかもしれないが、応援を呼べばいい。
 一応はトップたちが選んだ精鋭だ。ガジェットごときに後れは取らない。
 問題は、このままではナンバーズの確保にいけない事だな。
 一人くらいは捕まえるか、触れておきたかったのだが……
 などと、体制を直しながら今後のプランについて考えていると違和感を覚えた。
 おかしい、応援が来ない?
 監視衛星を見れば現状は一目瞭然のはずだし、念のためアハトが救難信号も出したはずなのに?
 そんな疑問を抱いていると、眼の前に魔法陣が現れる。
 そこから

「……なるほど、はめられたか」

 ゼスト・グランガイツが転送されてきた。







「何か用か? ゼスト・グランガイツ」

 俺はなるべく平静を装ってゼストと相対した。
 内心歯ぎしりしたくなるほど最悪な状態だが。
 どうやら、初めから狙われていたようだ。
 やはり、ラルゴ元帥の予感は頭にくるほど良く当たる。

「……やはり、私の正体に気付いたか。さすがは悪魔と言ったところか」

「貴様は有名な騎士だ。俺でなくとも分かる」

 騎士ゼスト・グランガイツ。
 古代ベルカ式・S+ランク魔導師。
 近接戦闘のスペシャリストで強力な騎士。

「騎士、か。いや、今の私はただの死者だ」

「ならば、土に還れ。その名が泣くぞ」

 状況は最悪だ。
 護衛の連中がこの状況に気付いていないという事も、救難信号が届いていないということはないだろう。
 きっと、やられてしまったのだ。転送魔法が使えるものが。
 護衛の者は基本的に俺の能力範囲に入っていない。
 つまり、必然的に長距離転送魔法を使えるものが必要となってくるのだが……そいつらはサポート専門なので戦闘は不得意だ。
 他のナンバーズに強襲され転送どころではないのか、あるいはもう……
 騎士ゼストの邪魔をしないようにしているのか、ガジェットが攻撃してこない事が唯一の救いか。
 ガジェットは俺と騎士ゼストを円形に囲んだまま、動こうとしないでいる。
 まるで決闘だな。これも騎士の矜持か?

「そういうわけにはいかない。私には、やるべき事がある。それには」

 更に最悪なことに六課ロングアーチの面々にこの状況を知られてしまった。
 アハトが発した救難信号を拾って。
 ご丁寧に俺の援護のため、シグナムをこちらに向かわせている。おそらく、十分ほどでこちらに到着してしまうだろう。
 敵対宣言をしてるのだから放っておけばいいものを。
 本当に最悪だ。
 俺に残された道は一つ、か。

「お前が、邪魔だ」

 十分以内に、騎士ゼストに勝つしかない。







 騎士ゼストは言うや否や俺に接近し、槍で袈裟がけに斬りかかってくる。
 踏み込みの瞬間に地面を抉るほどの、すさまじいパワーとスピードを持った攻撃だった。
 それを予測していた俺はすべるようにしてギリギリでかわす。
 脳内のリミットはすでに外してある。
 十年間、鍛え上げたおかげで十分くらいなら回復魔法なしで脳内リミットを外したまま動いても大丈夫になった。
 どの道制限時間は十分だ。出し惜しみする必要はない。
 そもそも、この男相手に出し惜しみなどできない。
 そんな事をすれば一瞬でやられてしまう。
 騎士ゼストは俺にかわされたことに大した驚きもなく、すぐさま刃を返し切り付ける。
 冷静に、素早く。
 その攻撃に合わせて懐に入ろうと思っていたのだが、予想以上の攻撃速度に俺はたまらず後ろに一歩引いてしまった。
 その一瞬の攻防に出さえ、この男の技量がうかがえる。
 この距離は奴の距離だ。早めに脱しないとまずい。
 奴の追う様に迫ってくる矛先を見ながら、俺は大きく後ろに飛んだ。
 当然、奴もそれについてくる。
 そのままガジェットの前まで行くと俺は急激に横へと方向転換した。
 奴はそれに合わせて槍を振るってきたがそれも空を切る結果になった。
 かかった。
 そのゼストに向かって、正確に言えば俺の元いた場所目掛けてガジェットが熱戦を発射してきた。
 予測通りだ。
 ガジェットが攻撃を仕掛けてこない騎士ゼストの邪魔をしないため。囲っているのは俺を逃がさないため。
 ならば、俺がこの包囲網から脱出しようとすれば俺に攻撃を仕掛けてくるだろうと読んだのだ。
 その読み通り、ガジェットは俺に攻撃を仕掛けてきた。それを逆に利用できた。
 しかし

「随分と、狡い真似をする」

 騎士ゼストにはノーダメージだ。
 期待もしていないがな。

「使えるものは使う主義だ。それに、こんなおもちゃを使ってまで人を囲ってる奴に言われたくはない」

「そうだな」

 騎士ゼストはそういいながら自嘲気味に笑うとまた俺に突っ込んでくる。

「だが! 逃げられてしまえば元も子もない! 何せ、常に身を隠し、守られている貴様を倒すチャンスなどめったにないのでな!」

 騎士ゼストの攻撃は確実に俺の急所を狙ってきている。
 攻撃方法も初めと違いスピード重視のものに変えてきた。

「そうか! 放っておくという選択肢はなかったのか!? お前が手を出さなければ、俺も手を出さないぞ!」

 それを俺も紙一重でかわし続ける。
 速い。集中を切らせば、すぐにでも斬られてしまう。

「ないな! 貴様がいると、我々のレリック集めの重大な障害になる! 貴様がレリック集めを諦めるというのなら話は別だがな!」

「それこそない!」

「ならば!」

 集中しろ。
 敵を良く見ろ。一挙手一投足を監視し、心を読め。先の先を取れ。
 でなければ

「消えるがいい!」

 死ぬ。






 戦いは拮抗した。
 傍から見れば攻撃をすべてかわしきっている俺の方が有利に見えるかもしれないが、実際はそうでもない。
 俺の場合、一撃でも当ればやられてしまう。
 騎士ゼストの攻撃は、鋭く、的確だ。
 被弾こそしないものの、疲労度合がキツイ。
 そして、こちらからの攻勢のチャンスをことごとく潰されている。
 防戦一方だ。
 触れれば倒せるのに。
 だが、焦ってはいけない。
 この拮抗は、こちらとしても苦しいが向こうも苦しいのだから。
 何せ奴は長時間戦えない。
 いつかきっと、動きにほころびが出てくるはずだ。
 待っていれば、必ず勝機はある。
 問題はそれが時間内に出るかどうかだが……
 そうやってかわし続けていると突然騎士ゼストは攻撃を中断し、止まる。
 なんだ?
 すると

「……キリがない。それにあまり時間をかけ過ぎては、こちらが不利か」

 そう呟くとその場で一度槍を振り、カートリッジをロードしていく。

「最後に、聞いておこう」

 一発、二発、三発と。騎士ゼストの槍から薬莢が飛び出る。

「貴様にも、誰かに残しておきたい言葉はあるのか?」

 四発、五発、六発。奴の槍の中に残っていたすべてのカートリッジが吐き出された。
 これは……
 フルドライブ。
 魔導師達が持つ、戦闘における最終形態。
 膨大な魔力を消費する代わりに、強力な力を得る事が出来る必殺の型。
 騎士ゼストの今の不安定な肉体では負荷が大きすぎると知りながら、それを使おうとしている。

「……さぁな」

 大した覚悟だ。
 だが、だからと言って負けるわけにはいかない。

「そうか。では」

 おそらく、あの状態で出来る攻撃は二撃が限界のはず。
 それさえ躱せれば……

「終われ!」

 俺の勝ちだ。




 瞬間、全神経を騎士ゼストに向ける。
 能力もすべて騎士ゼストに向け、無意識の思考も読み取り、先の先をとる。
 俺が生き残るには、相手の動きを先取りするしかない。
 超集中で、視界がゆっくりとなる中、騎士ゼストがついに攻撃の間合いに入った瞬間




 背後から、俺を何かが貫いた。





「は?」

 一瞬、何が起こったのか分からなかった。
 騎士ゼストもそれを驚愕の表情で見ている。
 いったい、なにが?
 そう、呆ける暇もなく、一気に痛みが襲いかかってくる。
 それで俺はやっと自分が刺されたということに気がついた。
 体内に入った異物が燃えるように熱い。
 足から力が抜け、倒れ伏せてしまう。
 そのせいで俺を貫いていた刃が抜け、そこから勢いよく血が吹き出た。
 この傷は、まずい。
 それに、次に攻撃をされては避けることなど……

「ッ! 貴様ーー!!」

 そう思っていると、騎士ゼストが俺に仕掛けようとした攻撃をそのまま後ろの何かに当て、そいつを破壊した。
 あぁ、まったく、騎士ではないといいながら、随分と騎士道精神にあふれた奴だ。
 などと、あまり意味のないことが頭をよぎった。

「おやおや、騎士ゼスト。せっかく手伝ってあげたというのに、何を怒っているんだい?」

「……頼んだ覚えはない。卑怯な横やりを入れるな」

「これはすまない。ただ、こちらも必要だったものでね。あぁ、そんなに怒らないでくれ。君にはこれから頼みたい事があるのだから」

「なんだと?」

 混濁していく意識の騎士ゼストがガジェットの一体と話しているのは聞こえた。
 だが、内容は頭に入ってこない。
 やばいな。視界がぼやけてきた。
 これは……ダメだな。
 俺は最後の力でアハトを取り出すと、それに向かって

「後は、まかせる」

[……Jawohl]

 と、言うとそれを壊した。
 そして意識はなくなっていく。






 ごめん、はやて。




【Sideシグナム】

 グリフィスからの連絡を受け、私は最高速度で飛んでいた。
 共に居たシスターシャッハを置き去りにする勢いで。
 状況は聞いた。
 それは、最悪と言っていい状態だった。
 あいつは機械の相手は不得手にしている。それに加えてS+ランクの魔導師を相手取るなど。
 無理だ。
 さすがに勝てるとは思えない。
 それでも、希は回避だけなら天才的だ。
 勝利はできずとも私がつくまで持ってくれる可能性はある。
 だから、急ぐ。
 少しでも早く希の元にたどりつけるように。
 焦りを伴って。




 もう少しで現場につくという頃になって、それが変わった。

「こちらライトニング02。現場の状況はどうだ?」

 ロングアーチに連絡を取ったが、返事がない。
 一気に嫌な予感が加速する。
 もう一度通信。

「どうした? 応答しろ?」

 また返事がない。

「おい! どうした! 何かあったのか!?」

 その言葉に弾かれた様に、グリフィスがやっと反応してくれた。
 しかしそれは私にとって最悪のものだった。

「急いでください! 一ノ瀬捜査官が!」

 焦燥にかられた声。
 それだけで私は状況を把握してしまった。
 同時に背筋が凍る。
 そんな? まさか? いや、だめだ。
 今まで感じていた焦りがすべて恐怖へと代わる。

「っ! シグナム!」

 シスターシャッハの呼びかけも聞こえず、私は恐怖にかられるようにスピードを上げていた。
 カートリッジを使って、限界を超えて。
 シスターシャッハは完全に置き去りにし、私自身も早すぎるスピードに視界がぶれ、リンカ―コアも痛む。
 だがそんなことは関係なかった。
 そんな事を気にしている余裕など残っていない。
 そんなはずがない。そんな事があっていいはずがない。希が……
 勢いをそのままに、希がいた場所へとたどり着く。

「希ーーーーーー!!!!」

 着地もままならず、まるで隕石が落ちたかの様にクレーターを作りながら私は地面に降り立った。
 その衝撃によってバリアジャケットはボロボロになり、怪我を負ってしまった。
 それでも私は希を探す。
 周囲にあるのは数機分のガジェットと希の思わしき車の残骸。




 希はいない。




 いや、そんなはずがない。もっとよく探せ。
 ぼやける視界で、ふらふらと歩きながら私はすがるように希を探す。




 それでもやはり、希はいない。




 何故だ? 何故いない? いやだ……なんで?

「のぞみぃ……」

 絞り出すような声で呼ぶ声に、返事はない。
 そんなとき何かに足を滑らせ、私は転んでしまった。
 それは、血。
 大量にこぼれ落ちた、血液。
 その横で






 壊れた希のデバイスを見つけてしまった。





「う、あ、あぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 その意味がわかってしまい、私はその場で絶叫した。





【Sideリインフォース】

 隊舎の上空、そこで主はやてとユニゾンしていた私にも、その異変はすぐに伝わった。
 それは、主はやてと共に敵に向け広域空間攻撃を放った直後だった。
 一度は切り離したはずの騎士システムから逆流するほどの、強い悲しみ。
 それは、シグナムから発せられていた。
 一体、何が?
 そう思ったのは一瞬で、すぐさま最悪の想像が頭をよぎる。
 シグナムは今、誰の援護に向かっていた?
 あのシグナムがこれほど動揺する様な事に心当たりは?
 その考えが思いついた瞬間、一気に血の気が引いた。
 ま、さか……

「ロング、アーチ、一体、何が?」

 答えを聞くのが怖かった。
 心の中で、いやな予感が急激に広がっていく。
 そして、帰ってきた答えは

「……一ノ瀬捜査官の反応が消えました。それと、一ノ瀬捜査官の物と思われる壊れたデバイスと、血だまりが……」

 最悪のものだった。
 ……そんな、バカな? だって、私たちはまだ何も……
 私が茫然と、何も考えられずにただその事実を受け止められずにいると、強制的にユニゾンが解除されてしまった。
 主はやての急激な動揺によって。
 何事かと主はやてを見てみれば、私以上に絶望的な表情をした主がそこに居た。
 そこに、ロングアーチから映像が送られてくる。
 それは、希が戦闘を行っていたと思われる場所。
 そこには、血だまりの中で膝をついた、シグナムがいた。
 私がその光景に絶望のどん底に落とされかけた時、主はやてがフラフラと落ちていってしまった。

「っ! 主!」

 それを見た私は慌てて主はやてを受け止める。
 主はやては飛行魔法を保てないほどに動揺していた。
 顔色が真っ青だ。

「……う、そ、やろ」

「……主」

 私の声も届いていないのかこちらの声にも反応出来ずにいる。

「そん、な……嫌や……これから、なのに……まだ何にも始まってないのに……これじゃ、私は、何のために……」

 そう、小さな声で呟きながら、主は夜天の書とシュベルトクロイツを落としてしまった。
 そこに私は違和感を覚える。
 何も、始まっていないとはどういう事だ?
 だが、次の一言でその違和感を解消する答えが見つかってしまった。

「……希君」

 その後の主はやては、言葉を発することもできず、地面に膝をついて動かなくなってしまう。




 主はやて、あなたはもしかして……


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