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No.25220の一覧
[0] サトリのリリカルな日々 (リリカルなのは オリ主)【sts編変更、修正しました】[kaka](2011/08/16 01:01)
[1] 第一話[kaka](2011/08/16 00:25)
[2] 第二話[kaka](2011/08/16 00:26)
[3] 第三話[kaka](2011/08/16 00:27)
[4] 第四話[kaka](2011/08/16 00:28)
[5] 第五話 前編[kaka](2011/08/16 00:32)
[7] 第五話 後編[kaka](2011/08/16 00:34)
[8] 第六話[kaka](2011/08/16 00:35)
[9] 第七話[kaka](2011/08/16 00:36)
[10] 第八話[kaka](2011/08/16 00:37)
[11] 第九話 A’s[kaka](2011/08/16 00:39)
[12] 第十話[kaka](2011/08/16 00:40)
[13] 第十一話[kaka](2011/08/16 00:41)
[14] 第十二話[kaka](2011/08/16 00:41)
[15] 第十三話[kaka](2011/08/16 00:42)
[16] 第十四話[kaka](2011/08/16 00:44)
[17] 第十五話[kaka](2011/08/16 00:45)
[18] 第十六話[kaka](2011/08/16 00:46)
[19] 第十七話[kaka](2011/08/16 00:47)
[20] 第十八話[kaka](2011/08/16 00:48)
[21] 第十九話[kaka](2011/08/16 00:48)
[22] 第二十話[kaka](2011/08/16 00:49)
[23] 第二十一話 A’s終了[kaka](2011/08/16 00:49)
[24] 第二十二話 sts編[kaka](2011/08/16 01:02)
[34] 第二十三話[kaka](2011/08/25 01:16)
[35] 第二十四話[kaka](2011/09/14 02:37)
[36] 第二十五話[kaka](2011/09/14 02:35)
[37] 第二十六話[kaka](2011/09/25 22:56)
[38] 第二十七話[kaka](2011/10/13 02:00)
[39] 第二十八話[kaka](2011/11/12 02:02)
[40] 第二十九話[kaka](2012/09/09 22:02)
[41] 第三十話[kaka](2012/10/15 00:10)
[42] 第三十一話[kaka](2012/10/15 00:09)
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[25220] 第十二話
Name: kaka◆0519be8b ID:ee322f37 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/16 00:41
 その日、八神家に騎士たちは戻ってこなかった。俺は夕飯と手紙を置いて八神家を後にする。
 翌日も、いつも通り早朝に八神家に向かったがすでに騎士たちの姿はなかった。
 昨日置いておいた夕飯がなくなっているので一度帰宅していることは分かったが、それでも根を詰めすぎだ。
 昨日のことがよほど堪えたらしい。
 俺にも原因の一端はある。
 ここは騎士たちの体のことを思うのならば説得して止めるべきだろうが、俺はそれをしなかった。
 ただ、はやての見舞いにも時々行ってやってくれとだけ書き置いただけだ。
 ……もう、時間がない。
 俺の作戦にも、蒐集の完了が必要だ。
 だから、騎士たちに悪いと思いながらも無理をしてもらうしかなかった。
 そして、騎士たちははやてのお見舞いに行く以外の時間はほとんど蒐集に回す様になった。そのお見舞いも、俺が来ると後のことを任せすぐに蒐集に向かってしまう。




 そんな日が続き、いつものようにはやてと病院で話していると

「「こんにちは~」」

 と、月村とバニングスがやってきた。

「おぉ、すずかちゃんやん。来てくれたんか。それと……」

「私はアリサ・バニングスよ。よろしくね」

「アリサちゃんか。すずかちゃんから話は聞いてるで。よろしく」

 ……まぁ、知っていたが。今日来ることぐらいは。
 今となってははやてに友人が増えることは喜ばしいことだから邪魔もしなかったわけだが……二人っきりを邪魔されてしまうのは少し……

「あっ希! あんたもはやてが入院したんならさっさと教えなさいよね。せっかくすずかが発見したんだから!」

「発見したって……私は未確認生物かい!」

 バニングスは早速はやてに突っ込みを入れられている。
 この分ならすぐに仲良くできるだろう。

「悪かったな。とりあえず二人とも座ってくれ」

 二人は俺が用意した新しい椅子に座る。

「あ、これお見舞いのフルーツ」

「おぉ、わざわざありがとう」

 はやてはお礼を言ってフルーツの入った籠を受け取った。
 その中にはやたら高そうなフルーツ各種が詰まっていた。

「……なんやえらい豪華なもんはいっとるけど、本当に頂いちゃってええのん?」

「うん、大丈夫だよ」

「でも」

「いいから貰っちゃいなさいよ。せっかく持ってきたんだから」

「うん……ありがとう」

 はやても遠慮する方が失礼だと思ったのか素直に受け取ることにした。

「しかし、こんな高そうなもんをポッと持ってこれるなんて。もしかしてすずかちゃんてめっちゃお金持ちなん?」

「あぁ、そうだ。前にも言ったと思うが。月村だけでなくバニングスもお嬢様だ」

「お嬢様だなんて……そんなことないよ」

「なんかあんたが言うと嫌みに聞こえるわね」

 月村は照れていたがバニングスは俺を睨んできた。
 事実を言っただけなんだが。

「前に言うとったって……あぁ、前に話とった希君の友達の美少女のお嬢ってこの二人やったんやね。あのバカでかいお屋敷に住んどるっていう」

「そうあのバカでかいお屋敷に住んでるのがこの二人だ」

「バカでかいって、あんた達ね~」

 バニングスはこめかみをぴくぴくさせている。怒るようなことを言ったつもりはないんだが。
 事実だし。

「あはは、ごめんごめん。まさかリアルお嬢にこんなとこで会うと思ってなかってん」

「リアルお嬢って」

「まぁまぁ」

 怒りだしそうなバニングスをいつものように月村がなだめる。
 するとバニングスはにやりと笑って反撃に出た。

「それを言うなら、私だってリアル愛しの彼女に出会えるとは思ってなかったわ」

「へ?」

 はやては思わぬ反撃に驚いている。

「希からいろいろ聞いてるわよ~。惚気話とか」

「の、惚気話って……」

 はやての額に冷や汗が流れる。
 それを見たバニングスがますます笑みを広げる。

「いつも言ってるわよ。『はやて可愛い、はやて可愛い』って。耳にたこができるくらいにね」

「なっ!」

 はやての顔が一気に赤くなった。
 おぉ、最近は俺が言っても平気だったのに。やはり他人に言われると違うものなのか。
 しかし、赤面しているはやてはやっぱり可愛いな。
 俺が赤面顔を堪能しているとはやてはギギギッとことらの方へ顔を向けてきた。赤い顔には笑顔が張り付いている。
 あっ、やばい。

「希く~ん? どうゆうことか説明してくれへんかな~」

「え、あ、その、な?」

 これはやばい。お冠だ。
 ちっ、バニングスめ! 余計なことを。
 それからはやてのお説教タイムが始まった。
 内容はいつも通り。恥ずかしいことばっか言ううなというものだが今回はよほど恥ずかしかったのかちょっと長かった。
 うん、怒っているはやては怖いから今度からちゃんとしよう。
 しかし、怖い中にも可愛さがあるとはどういうことなんだろう?
 バニングスと月村は俺がはやてのお説教されている姿を面食らったように眺めていた。
 俺がしゅんとしている姿を見て驚いたようだ。
 その後、はやての許しを得て皆でまたお喋りを再開したのだがたびたび二人は驚いたような顔をしていた。
 そのことに気付いたはやては

「どうしたん、二人とも? さっきからたびたび何かに驚いてるみたいやけど」

 と、質問した。

「あ、いや、ねぇ」

「うん、希君がそんなふうに笑ったりしてるのが、その、新鮮で」

「? 希君ってよう笑う子やん」

 はやてはわけがわからないと言った様子だ。

「うん、そうみたいね。あんたがどんだけ愛されてるかがわかったわ」

「えっ! ちょ! なんなん!?」

 はやては急な話題変換にまた赤くなる。
 そう言えば気付かなかったが、俺ははやての前だとよく笑っているのか。基本、無表情だと思っていたんだが。
 やっぱり、はやてには気付かないだけでいろいろなものを貰っているんだなぁ。
 感謝しているよ。
 ……だからここで俺を睨むのは止めて欲しいな。




 面会時間はあっとゆう間に過ぎ、俺たちは帰宅することとなった。
 はやてとバニングス達はすっかり仲良しになって、また必ず来ると約束をした。今度は高町とテスタロッサも呼ぶらしい。
 ……騎士たちとかち逢わない様にしないとな。




 しかし、そんな俺の願いもむなしく、ついに彼女達は出会ってしまった。






 クリスマス・イブ。
 学校の終業式が終わった俺は一旦家に帰り、クリスマスケーキを作っていた。
 はやては入院しているが特に食事制限をされているわけではないからな。
 騎士たちにも今日くらいは休んで一緒にクリスマスパーティーをして欲しいと言ってある。彼らもその要求をのんでくれた。
 なので、今日は久しぶりにみんなで集まる予定だった。
 それがいけなかった。
 俺が暢気にケーキを作っている間に、高町たちがはやてのお見舞いに来てしまったのだ。


 そこで、彼女達は出会ってしまった。








「おまたせ、みんな。ケーキ作ってきたぞ」

「おぉ、やっときた。まっとったで」

 俺がはやての病室に着いた時、すでに高町たちは病室に居た。
 騎士たちを見て驚きながらも、今は何も言っていないようだった。
 騎士たちも何も言っていないが、気まずそうにしている。

「おっそいわよ! 待ちくたびれたじゃない!」

「特製ケーキを作るのには時間がかかるんだ。それにお前達が来るなんて聞いていなかったぞ」

「ごめんね。驚かそうと思って」

「ええやん、私は嬉しいよ」

「はやてがそう言うのなら、問題ない。量も多めに作ってきたからな」

 実は月村とバニングスが来ることは知っていた。
 最近は能力を常に使っているから当然だ。
 しかし、高町とテスタロッサは本来来る予定ではなかったはずだ。今日も、騎士たちの警戒のため彼女らの判断で待機しているはずだった。
 だが、直前になってそれを知った艦長が行ってきていいと言ってしまった。
 そのせいで、こんな事態に陥ってしまったのだ。
 もとからこの二人が来ると知っていれば、時間をずらしたものを……

「しかし、この人数だと椅子が足りないな。とってくるか。ザフィーラ手伝ってくれるか」

「あぁ、わかった」

「ヴィータ、ケーキと、こっちはアイスだ。アイスは冷凍庫に入れといてくれ」

「お、おう」

「あんたこの寒いのにアイスなんか作ってきたの?」

「ヴィータの好物だからな。行くぞ」

 俺はヴィータにケーキとアイスを渡すと、ザフィーラを連れて外に出た。
 少しあるいて病室から離れると本題に入る。

「ザフィーラ、念話で伝えてくれ。騎士たちには今はこのまま普段通りを装ってくれと。高町たちには後で話があるから少し待っていてくれと。俺からだというのを忘れずに」

「……わかった。しかし、どうするつもりだ?」

「なんとかするさ」

 それだけ伝えると、俺たちはすぐに椅子を持って病室へと戻っていった。




 俺達が部屋に戻ると、クリスマスパーティーが始まった。
 さすがに料理は持ち込めなかったので、俺が作ったお菓子とケーキをみんなで食べる。
 どうやらみんなの口にあっていたようだ。全員おいしいと言ってくれた。
 普段俺をあまり褒めないバニングスまでほめてくれたのだから上出来と言っていいだろう。
 途中、俺がはやてと話している様子を見て高町とテスタロッサ驚いていたが気にしなくていいだろう。先日の月村とバニングスの驚きと同じ種類のようだし。こっそり月村が二人に説明をしていたのではやてに気付かれることもないだろうからな。
 はやてが気付いたらまた怒られるかもしれないし。
 そんなこんなでパーティーは続き、いよいよ最後のプレゼント交換の時間になった。
 と、言っても皆ではやてにプレゼントを渡すだけだが。

「みんなありがとう。でも、私だけみんなにあげるもんがなくて……」

「何言ってるのよ、あんたはただ早く元気になってくれればいいの」

「そうだよ、はやてちゃんが元気になってくれるのが私達への一番のプレゼントだよ」

「アリサちゃん、すずかちゃん」

 はやては涙ぐんでいる。
 その光景を高町たちは微笑ましそうに、騎士たちは悲痛な覚悟をもった目で見ていた。

「じゃ、辛気臭いのはこれくらいにして……はい、これは私たちからのプレゼントです!」

 そう言って高町、テスタロッサ、バニングス、月村は四人一緒に一つのプレゼントをはやてに渡した。

「ありがとう、開けてみてええ?」

「うん、どうぞ」

 はやてが箱を開けると、中にはトナカイとサンタクロースの人形が入った小さなスノードームが入っていた。

「綺麗や……。ありがとう、すずかちゃん、アリサちゃん、なのはちゃん、フェイトちゃん」

「どういたしまして」

 はやてが4人にお礼を言うと次は騎士達が前に出た。

「私たちからはこれを。セーターとマフラーです」

 シグナムが渡した袋にはあったかそうなセーターとマフラーが入っていた。

「すいません。こんな物しか用意できなくて」

「何ゆうてんの。充分嬉しいよ。ありがとう、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ」

 はやてがお礼を言うと騎士たちはホッとした様だった。
 蒐集で忙しかったからな。あまりプレゼントを考える時間がなかったのだろう。

「最後は俺からこれを」

 そう言って俺ははやてに近づき、首にネックレスをかけてあげた。

「これ……」

「俺が父さんと母さんからもらったアメジストの原石の片割れを加工して作ってみた。気に入ってくれるといいんだが」

 父さんに頼んで加工のための機材をそろえたりと大変だったからな。試作も含めたらかなりの時間がかかってしまった。

「えっ、うそ。あれ自分で作ったの?」

「わぁ、すごい綺麗」

「こんなの初めて見たの」

「希、すごい」

 高町たちがそれぞれ感想を口にしているがそんなことはどうでもいい。
 大事なのははやての感想だ。
 はやてはしばらくネックレスを見つめてから

「……ありがとう、凄く嬉しいわ」

 と、満面の笑みで答えてくれた。
 よかった。気に入ってくれて。苦労した甲斐があった。
 俺まで思わず顔がゆるんでしまう。

「そうか、はやてが喜んでくれて俺も嬉しいよ」

 俺とはやては見つめ合い、お互いに笑っていた。
 その横で高町たちが信じられないものを見た、と言った様子で驚愕していたが関係ない。


 これでもう、思い残すこともない。






「それじゃあ、今日はそろそろ」

「うん、今日はほんまに楽しかったわ。みんなありがとうな」

「私達も楽しかったわよ。じゃあ、また来るからね」

「バイバイ、はやてちゃん」

「また必ず来るからね」

「またね、はやて」

「では、私達もこれで」

「はやてちゃん、また明日ね」

「また明日なー、はやて」

「では、失礼します」

「はやて、また、な」

「うん、また明日な~」

 それぞれに別れの言葉を残して、俺たちははやての病室を後にした。

「じゃあ、私たちはこれで」

「あんたたちも一緒に乗っていく? 送っていくわよ」

 バニングスは待機させてあった車に乗りながら俺たちに聞いてきた。
 彼女達はこれから家でもパーティーがあるらしい。

「いや、俺たちは歩いて帰るからいい」

「うん、私たちもちょっと寄りたいところがあるから」

「ごめん、すずか、アリサ」

「そう、分かったわ。じゃあ、またね」

「また連絡するね」

 そう言ってバニングスと月村は車に乗って帰っていった。
 残ったのは俺と高町、テスタロッサに騎士たちの7人だけとなった。

「……ふぅ、場所を変えるぞ。ここじゃ、さすがにまずいだろう」

 俺はまとっている雰囲気を一変させて高町たちに言う。

「……希君」

「……希」

 二人は驚きつつ、悲しそうに俺の名を呼ぶ。

「場所は……そうだな、臨海公園がいいだろう。いくぞ」

「……やはり、ついてくるつもりか」

シグナムが辛そうに俺に聞いてくる。

「今さら隠すのは無理だろう? どちらにせよ、ついて行くつもりだ」

「……わかった」

「希君、やっぱり」

「全部そっちに行ったら話してやるから待っていろ。なんなら、執務官や使い魔どもを呼んでも構わない」

 そう言って俺は歩きだしてしまう。
 高町たちはまだ何か言いたそうにしていたが、何も言わず黙ってついてきた。騎士たちも黙ってそれに続く。




 臨海公園に着くと、すでに執務官と使い魔たちがいた。
 あぁ、ユーノ・スクライアは使い魔じゃなかったか。まぁ、そんなことは置いといて

「シャマル、結界を」

 と、高町たちに聞こえないよう小声で指示を出す。

「結界?」

「普段通りの奴でいい。ただし、俺だけは入れるようにしてくれ」

「分かったわ」

 シャマルが結界を張ると、執務官が身構えた。
 俺はそれを制する。

「そう警戒しなくていい。話し合いをしに来た」

「話し合いだって?」

 怪訝な顔をしながら、執務官が聞いてきた。
 高町たちは執務官たちと合流すると、困惑しながらに聞いてきた。

「希君、やっぱり……」

「そうだ。俺が闇の書の主だ」

 俺の発言に、高町たちだけでなく、騎士たちまで悲しそうな顔をした。
 あらかじめ取り決めておいたことだがそれでも騎士たちは認めたくないようだ。

「蒐集を指示したのも君か?」

「そうだ。必要だったからな」

 俺の淡々とした受け答えに執務官は若干の怒りを感じていた。

「……大勢の人や生物を傷つけているんだぞ」

「そうだな。だが仕方ないことだ」

「その中にはなのはやフェイトもいたんだぞ」

「知っている。だからなんだ」

「貴様!」

 執務官は俺に攻撃を加えようと杖を振るおうとした。
 しかし、高町とテスタロッサによって止められてしまう。

「待ってクロノ君! 話を聞いてあげて!」

「クロノ! お願い!」

 必死に止める二人をみて、執務官は杖を下した。
 彼に攻撃の意思がないことを確認した俺は、かばって俺の前に出た騎士たちを下げる。

「平気だ。下がっていてくれ」

「しかし」

「これでは話がしにくい」

 渋々といったふうに、騎士たちは下がった。ただ、いつでも飛びだせるように臨戦態勢だけは崩さない様にしている。
 俺は前に出て再び高町たちに声をかける。

「で、他に聞きたいことは」

「なんで、こんなことを」

 執務官に変わり質問をしてきたユーノ・スクライアに俺は答える。

「目の前に何でも願いが叶う力があれば使いたくなるだろう」

「もしかしてはやてちゃんを……」

 高町が質問にテスタロッサたちはハッと気付いた様子だったが、俺はすぐさま否定した。

「八神はやてのことは関係ない」

「嘘! だって希君」

「関係ないと言っている」

「……でも」

 聞いたことのない俺の凍りつく様な冷たい声に、高町は黙ってしまう。
 するとテスタロッサが後を引き継いで話を続け始めた。

「あのね、希。聞いて欲しいんだ。蒐集が終わったとしても、願いをかねえることはできない。闇の書はもう、壊れてしまっているから」

「嘘だ! でたらめ言うな!」

 テスタロッサの発言にすぐさまヴィータが反論する。他の騎士たちも信じられないと言った様子だ。

「嘘じゃない。蒐集が完了した闇の書は」

「主を取り込んで暴走し、魔力の尽きるまで世界を破壊しつくす。か」

「「!!」」

 俺がテスタロッサの言葉を先取りするとこの場に居る全員が驚愕した。
 それにも構わず、俺は話を進める。

「だからどうした。そんなことはとっくの昔に知っている。それでも、目的のために蒐集は必要だ」

「目的って……」

「悪いがそれは言えない」

 高町たちは依然困惑しているようだが、騎士たちは俺の言葉を聞いて立ち直ったようだった。
 随分と信用されたものだ。

「他に聞きたいことはないな。なら、こちらからの要求は一つだ」

「……なんだ」

 立ち直った執務官が警戒しつつ、俺に聞いてきた。

「俺達を見逃して欲しい。蒐集が終わるまでそっとしておいてくれ」

「なっ!! できるわけがないだろう!」

 即座に否定する執務官を無視して俺は高町とテスタロッサの目を見て懇願した。

「なぁ、頼む、高町、テスタロッサ。今回だけでいい。執務官たちを説得してくれ。このお願いだけ聞いてくれれば何でもするから。友達じゃなくなってもいい。お前達の奴隷になってもいい。プライドだって捨てる。なんだってするから。言われれば靴だって舐める。軽蔑してくれてかまわない。だから、お願いします。見逃してください」

「……希君」

「……希」

 俺が頭を下げる姿を二人は辛そうにしてみていた。
 ……卑怯な手だ。こんなことをしても、答えは分かっているのに。二人を精神的に追い詰めるためだけにこんなことをして。

「……ごめんなさい。そのお願いだけは、聞けないの」

「ごめん、希」

「……こんなに頼んでも、駄目か?」

「…………」

 二人は目を伏せ、黙ってしまう。
 ……潮時か。

「……そうか、そうだよな。仕方ない」

「分かったのなら、おとなしく投降してくれ。君達の素性は割れた。もう、逃げられない」

 俺ががっくりと頭に手をやってうなだれている様子を見た執務官が諦めたと思ってゆっくりと近づいてきた。

「そうだな。もう逃げられない」

「……希」

 俺のつぶやきに、シグナムが悔しそうに声を漏らす。
 そのまま執務官が俺の間合いに入った瞬間

「ヴォルケンリッター!」

 と、俺は叫んだ。突然の怒鳴り声に皆びくりとし、執務官は身構える。
 そして

「非殺傷設定解除!!」

「なっ!」

 非殺傷設定の解除。つまりは、こいつらを殺せという意味だ。
 全員が驚愕し、一瞬だけ思考を止めた。
 俺はその隙を見逃さなかった。

「がっ!」

 間合いに入っていた執務官の腹部に蹴りをめり込ます。
 それも通常の威力ではない。先ほど、頭を触っていた時に応用能力を使い脳のリミッターを外している。そのおかげで、通常の何倍ものスピードと威力を出すことができた。
 そのまま吹っ飛んだ執務官を追いかけつつ指示を出す。

「殺せ! そうすれば少なくとも数日は追手が来なくなる!」

 叫びながら再び執務官に攻撃を加えようとしたが、彼はすでに防御態勢を取っていた。バリアジャケットのせいで威力がかなり殺されてしまったようだ。しかも奴は魔力をためており、攻撃を受けてからすぐに反撃に出る気のようだ。
 俺はすぐさま攻撃対象を変え、最も近くに居る高町に襲い掛かった。

「なのは!」

 しかし、俺の拳は呆けている高町を守ろうと出したユーノ・スクライアのシールドに阻まれてしまった。
 俺はシールドに当たる寸でで拳を止め、同時にテスタロッサの使い魔から放たれたバインドを避ける。

「! かわされた!」

「希に何しやがんだー!」

 すると、騎士たちもせきを切ったように飛び出してきた。
 覚悟を完了したのか、それとも単に俺が攻撃を受けたのを見てつい飛び出してしまったのか。
 ともかく、ヴィータが高町にアイゼンで殴りかかり、シグナムがテスタロッサにレヴァンテンで斬りかかり、ザフィーラが使い魔に魔力弾を飛ばし、シャマルがユーノ・スクライアにバインドを仕掛けた。

「やめろ! お前ら自分が何をやっているのか分からないのか!」

「お願い! やめて!」

「こんなこと無意味だよ!」

 執務官、テスタロッサ、高町の叫びにヴィータが高町に攻撃を加えつつ怒鳴り返した。

「うるせー! お前らさえ、お前らさえいなければ希もこんな決断しなくて済んだんだ!」

 シグナムも苦渋に満ちた声で反論する。

「もう、後には戻れん。ならば! 希を信じてわずかな希望に賭けるのみ!」

「くっ! なら」

 そう言って執務官は騎士たち向かって魔法弾を放とうとした。

「スティンガーブレ」

「させるか!」

「ぐっ!」

 俺は執務官が攻撃に移る前に石を投げて魔力刃を爆散させた。
 そのまま接近し、体当たりをかます。
 しかし、執務官の反応は早く、シールドを張られてしまった。
 俺が間一髪で止まると、執務官はすぐさま魔力を帯びたデバイスで切りかかってくる。

「くっ!」

 俺それでも下がることなく、逆に前進し、懐に入ることで魔力刃をかわした。
 そのまま近距離で顎を狙いアッパーを放つ。それを執務官は状態を反らす形でかわすと、 そのままバク宙の要領で一回転し、同時に蹴りをはなった。

「ちっ!」

 俺は仕方なく一歩下がりそれをかわした。
 少し両者の間に距離ができると、執務官はそれを広げようと魔力弾を複数撃ってきた。
 近距離戦闘は不利だと考えたようだ。
 しかし、俺も距離を離されてしまえば攻撃手段を失ってしまうので食い下がる。
 魔力弾をすべてギリギリでかいくぐりながら再び距離を詰める。

「なんだとっ!」

 その様子に、執務官は眼を見開いて驚愕した。
 今の俺ならこの程度の攻撃を避けることは難しくても無理ではない。能力をフルに使い、敵の攻撃を先読みし、身体能力を強化しているからだ。
 ただ、この状態も長くは持たない。早急に決着をつけねば体のほうが先に壊れてしまう。
 距離が詰まると、再び接近戦が始まった。
 今度は距離が取れないよう、こちらはけん制程度の攻撃を主体として避けることに専念する。
 すべてギリギリでかわしているためにだんだんと余波のダメージを受けていっているがそれでも耐えてかわし続ける。

「なぜだ! こんなことをしたところで君の願いは叶わない!」

 攻撃しつつ、執務官は俺に叫びかけてくる。

「黙れ」

 俺は彼の攻撃をかわしながらチャンスを待つ。

「身勝手な理由で次元世界全体を危機に陥らすつもりか!」

 執務官は語気を荒げ、攻撃の勢いも増す。

「それがどうした。世界なんかよりもこっちの方が大切だ!」

「貴様ー!!」

 完全に頭に血が昇った執務官が強引に魔力弾を形成してきた。

「スティンガーレイ!」

 高速の光の弾丸が俺に迫ってきた。
 だがそれを読んでいた俺は一歩引くことでそれを避ける。
 そのことで視界が開けた執務官は目の前の光景に一瞬目が奪われる。

「なっ!」

 弾丸の直線射線上には、戦闘中のテスタロッサがいたのだ。
 しかも、彼女は執務官の魔法弾に気付いていない。

「くそっ!」

 慌てて弾道を変えた執務官だったがそれは致命的な隙となった。
 それを見逃すわけもなく、俺は執務官の腕を掴むことに成功する。

「死ね」

「っ!!」

 その瞬間、執務官の脳に処理能力を超えた感情を一気にたたきこんだ。
 それに耐え切れるわけもなく、自己防衛のため彼の脳はシャットダウンしてしまう。つまり、気絶してしまった。

「っ!! クロノ君!」

「クロノ!」

 執務官がいきなり気絶してしまった様子を見て、高町とテスタロッサが驚きの声を上げる。
 俺はそれを気にせず、そのまま俺はとどめを刺そうと執務官の首に手を延ばす。
 が、途中でその手を止め、その場を離脱した。
 次の瞬間、その場にバインドが現れる。
 その魔力光はその場に居る誰のものでもなかった。

「誰だ!」

 それに気付いたシグナムが叫ぶと、バインドを仕掛けた相手が現れた。
 仮面を付け、返信魔法を使ったリーゼロッテとリーゼアリアだ。
 そして、現れたのは彼女たちだけではなかった。

「……はやて」

 彼女らの前には車いすに座ったはやてがいた。




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