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No.25220の一覧
[0] サトリのリリカルな日々 (リリカルなのは オリ主)【sts編変更、修正しました】[kaka](2011/08/16 01:01)
[1] 第一話[kaka](2011/08/16 00:25)
[2] 第二話[kaka](2011/08/16 00:26)
[3] 第三話[kaka](2011/08/16 00:27)
[4] 第四話[kaka](2011/08/16 00:28)
[5] 第五話 前編[kaka](2011/08/16 00:32)
[7] 第五話 後編[kaka](2011/08/16 00:34)
[8] 第六話[kaka](2011/08/16 00:35)
[9] 第七話[kaka](2011/08/16 00:36)
[10] 第八話[kaka](2011/08/16 00:37)
[11] 第九話 A’s[kaka](2011/08/16 00:39)
[12] 第十話[kaka](2011/08/16 00:40)
[13] 第十一話[kaka](2011/08/16 00:41)
[14] 第十二話[kaka](2011/08/16 00:41)
[15] 第十三話[kaka](2011/08/16 00:42)
[16] 第十四話[kaka](2011/08/16 00:44)
[17] 第十五話[kaka](2011/08/16 00:45)
[18] 第十六話[kaka](2011/08/16 00:46)
[19] 第十七話[kaka](2011/08/16 00:47)
[20] 第十八話[kaka](2011/08/16 00:48)
[21] 第十九話[kaka](2011/08/16 00:48)
[22] 第二十話[kaka](2011/08/16 00:49)
[23] 第二十一話 A’s終了[kaka](2011/08/16 00:49)
[24] 第二十二話 sts編[kaka](2011/08/16 01:02)
[34] 第二十三話[kaka](2011/08/25 01:16)
[35] 第二十四話[kaka](2011/09/14 02:37)
[36] 第二十五話[kaka](2011/09/14 02:35)
[37] 第二十六話[kaka](2011/09/25 22:56)
[38] 第二十七話[kaka](2011/10/13 02:00)
[39] 第二十八話[kaka](2011/11/12 02:02)
[40] 第二十九話[kaka](2012/09/09 22:02)
[41] 第三十話[kaka](2012/10/15 00:10)
[42] 第三十一話[kaka](2012/10/15 00:09)
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[25220] 第八話
Name: kaka◆0519be8b ID:ee322f37 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/16 00:37

「ごめんね、希ちゃん。母さんもう、限界みたい」

 週に一回行われるようになった八神家と一ノ瀬家の合同夕食会の時、母さんはいきなり申し訳なさそうに切り出した。

「なにが?」

 母さんの様子にシグナム達は何事かと心配しているようだ。
 しかし、俺と父さんは特に気にしていなかった。
 これはたぶん前フリだから。

「希ちゃん夏休みの間中はやてちゃんの家に入り浸りじゃない? そうなると私たちと一緒に居る時間が必然的に減るでしょ? それがちょっと……」

 八神家の面々が申し訳なさそうにしている。
 いや、俺が勝手にそっちに行っているだけだからお前らがそんな顔する必要はないのだが。

「それでね、勝手なこと言って悪いんだけど……」

 母さんはそう言って少し間をとった。
 俺たちの反応を見ているようだ。
 八神家の皆は心配そうに次の言葉を待っている。
 俺が出禁にでもなると思っているようだ。
 それでこんな反応をしてくれるというのはなんか嬉しいな。
 一方、俺と父さんは落ち着いていた。
 たぶん、流れ的に次辺りで……

「旅行に行くことにしちゃいました~! 温泉よ温泉! はやてちゃん達の分も一緒に予約しちゃったからね!」

 ほらネタばらしだ。
 しかし温泉か。家族旅行は毎年行っているが、この時期に温泉に行くのは初めてだな。

「あの……私らも行ってええんですか?」

 はやてがおずおずと聞いてきた。
 家族水入らずの場所を邪魔してしまうとでも思っているようだ。
 そんなこと気にする必要もないのに。
 それにおそらく

「やーね、良いに決まってるじゃない! はやてちゃんたちが来ないと希ちゃんが素直に楽しめないでしょ? 父さんも母さんもはやてちゃんたちなら大歓迎だし! それにはやてちゃんでも十分楽しめるように温泉を選んだのよ!」

 だろうと思った。
 さすがは母さんだ。ちゃんと全員のことを考えている。

「ちなみにもう変更はできないわ! 出発は明日だから!」

 ……さすが母さんだ。こんな直前まで連絡しないとは。
 というか俺も最近は家で能力使うことがなかったから分からなかった。
 それとも、本当に突発的に予約してしまったのだろうか? ……そっちの可能性の方が高いな。

「場所は海鳴温泉よ! 急な申し込みだったから一泊しかできないけど」

 やはり後者か。しかし、一泊でも問題ないだろう。
 すると今度は父さんが大げさに立ち上がりながら言う。

「よくやった母さん! 実を言うと父さんだって限界だったのだ! 早速用意をしなければ!」

「仕事はいいの?」

「そんなものよりこっちの方が重要だ!」

 さすが父さん。
 こっちはこっちで即順応か。仕事をそんなもの扱いだし。
 一方、はやてたちはいきなりの展開についていけないようだ。

「はやてちゃんたちは明日の予定とか平気よね!」

「はぁ、平気ですけど」

「なら明日は八時には迎えに行くから待っていてくれ! 荷物は着変えだけでいいぞ!」

「温泉楽しみね!」

「楽しみだな!」

 さすが両親だ。どんどん話を進めていって断る隙をなくしてしまった。
 しかし、はやてと一緒に温泉旅行か。

「楽しみだね、はやて」

「へ? あ、うん」

 こうして俺たちは一泊二日の旅行に出かけることとなった。






 翌日、俺たちはレンタカーを借りて温泉旅館に向かった。
 昨日は突然のことでただ驚いていたはやてたちだが、一日たって落ち着いたのか旅行を喜んでようだ。
 車内で旅行のことを楽しそうに話し合っている。

「しかし、急やったな。驚いたわ」

「そういうこともよくある。うちの両親だからな」

「ごめんなさいね~。もうちょっと余裕のあるプランにしてもよかったんだけど、行くと決めたら早く行きたくなっちゃたの」

「はははっ! 母さんはせっかちだな」

「何よ、父さんだって当日に急に思い立ってスキーに行ったことがあるじゃない。しかもその後会社大変だったんでしょ?」

「はははっ! 家族サービスの方が仕事ごときよりよっぽど大切さ!」

「こういう両親だからな」

「さすがは希君の親やな。まぁ、楽しそうやからええけど」

 はやては苦笑しながら言った。
 うちの両親はいろいろとぶっ飛んだところがあるからな。主に俺に関することとなると。

「なぁなぁ母ちゃん、鳴海温泉ってどんなとこなんだ?」

「山の中にある静かな所よ。自然に囲まれてるからゆっくりするには最適な場所ね!」

「山か~、楽しみだな!」

 ヴィータは初めての旅行でウキウキしているのかテンションが高い。

「近くに小川も流れているようだぞ」

「なら川遊びとかもできるのかしら?」

 シャマルはどんなところか期待に想像をふくらましている。

「ふふっ、あまりはしゃぎ過ぎるなよ」

 そういうシグナムも楽しみにしているようだ。

「…………」

 ザフィーラはいつもどおりを装っているが尻尾が触れている。楽しみなのだろう。

「温泉かぁ~、わくわくするわ~」

 はやても楽しそうだ。
 ……若干邪な欲望が見え隠れしているが気にしないでおこう。後でシグナムには頑張ってもらうしかない。

「ほら、もう見えてきたぞ」

「「「「おぉー!」」」」

 さて、温泉はもう目の前だ。
 どんな旅行になるのやら。期待が膨らむな。






「ふぅ、気持ちがいいな」

「あぁ、そうだな」

 俺たちは宿に着くと男女に分かれて部屋に入った。
 食事などは一緒に食べるつもりだが、さすがに8人同じ部屋は狭いからな。
 荷物を整理した後、俺たちは早速メインの温泉につかることにした。
 はやてとは少しの間別行動になってしまうが仕方がない。さすがに一緒に入るわけにはいかないからな。
 今は男三人で露天風呂を満喫することにしよう。

「はっはっは! しかし本当にみんなで一緒に入らなくて良かったのか? せっかく家族風呂も予約したというのに」

「無理だ、さすがに」

「希はうぶだな~」

 いや、何を言っているんだこの父さんは。
 母さんと一緒にだって最近はためらうのに今回ははやてや騎士たちもいるんだぞ。
 というか父さん的にはシグナム達と入るのは大丈夫なのか?
 母さんも特に気にしていなかったようだが。

「しかしさすがに予約しておいてはいらないのももったいなかろう。後で順番を決めてはいったらどうだ?」

「それもそうだな」

 確かにザフィーラの言うとおりだ。
 せっかく予約しておいて使わないのは損だろう。
 それにそこならザフィーラも人目を気にせず尻尾と耳を出せる。隠すのは微妙に疲れると言っていたからな。
 後でみんなと相談してみるか。

「おぉー、露天風呂もええ感じやん!」

「本当ね~、海も見えていい景色だわ~」

「ヴィータ、走るな。危ないぞ」

「平気だって! シャマルじゃあるまいし、こけたりしねーよ!」

「私だってこけたりしないわよ!」

 どうやら、向こうも露天風呂に移動したようだな。となると

「さて、そろそろ内湯に移動するか」

「? もうか?」

「だって、なぁ」

 そう言って俺は女湯の方をちらりと見る。
 ザフィーラはそれだけで何が言いたいのか気付いてくれた。

「あぁ、そうだな」

「なんだ、二人は行ってしまうのか? 父さんはもう少しここでのんびりしたいんだが」

 父さんは俺の意図に気付いてくれていないのか移動しようとしない。

「もうちょっと一緒にのんびりしていこうじゃないか」

 いや、気付いていて移動してくれないようだ。
 なんかニヤついてるし。
 そんなに隣の声が聞きたいか。
 むしろ、それを聞いた俺の反応が見たいのか。
 それなら

「俺、父さんと一緒にサウナに入りたいんだけど……だめかな?」

「よし! すぐ行こう! 早く行こう! 露天なんてもう知らん!!」

 作戦成功。ちょろいな。ちょっと弱弱しく頼んだらいちころだ。
 ……何だザフィーラ、その目は。仕方ないだろう。
 そろそろ隣も始めるだろうから。
 俺たちが内湯に移動しはじめると遠くからなんだか聞いてはいけない声が聞こえ始めた。

「しかしシグナムは立派やな~。どれ、一つどんな具合か確かめさせてもらうで~」

「あ、主! ま、待ってください! こんなところで! あっ!」

「シグナム……がんばってね」

「なら母さんはシャマルちゃんのを楽しもうかしら?」

「えっ! お母様何を! あっ!」

「広いお風呂も気持ちいいもんなんだな~」

 ……母さんまで何をやってるんだ。頑張ってくれ、シグナム、シャマル。
 あとヴィータはもう少し周りに関心を示せ。




「ぷはー! やはり風呂上りのビールは最高だ! ほれ、ザフィーラ君も飲め飲め!」

「いや、私は……」

 先に風呂から出た俺たちはエントランスではやてたちを待っていた。
 父さんは風呂の近くにあった自販機でビールを買ってご満悦だ。
 ザフィーラの分まで買っているし。
 俺は定番のコーヒー牛乳を買って飲んでいる。やはり風呂上がりはこれだろう。

「しかし母さんたちは遅いな。何をやっているんだ?」

「女の風呂は長いものだろう。男と違って色々とやることもあるだろうからね」

 まぁ、俺達もかなりゆっくりつかっていたんだが。それでも向こうの方が時間はかかるようだ。
 ……シグナムとシャマルは大丈夫かな?
 そんなことを考えているうちにはやてたちがこっちにやってきた。
 シグナムとシャマルは予想通りなのだか風呂に入る前より疲れているようだ。はやてと母さんは逆につやつやしている。

「お待たせ~。気持ちよかったわよ~。ねぇ、はやてちゃん」

「うん! めっちゃよかったわ」

 しかし今そんなことどうでもいい。

「遅かったな母さん。待ちくたびれたよ」

「ごめんなさ~い。つい盛り上がっちゃって」

「いやいや、楽しんでいたのならいいんだがね」

「ん? 希君どうしたん?」

 大事なのは今はやてが浴衣姿なことだ。

「……はやてかわいい」

 前に見たお祭りの時とは違う。
 温泉旅館に備え付けの質素なやつだがはやてが着ることでその魅力が何十倍にも増している。ほんのりと上気した頬としっとりと濡れた髪のポイントが高い。
 なんだこれ? 反則じゃないか。

「浴衣すごい似合ってる。はやては基本何着ても可愛いけどその中でもトップクラスだ。すごい可愛い。いや、もうすごいなんてものじゃない。天使かってくらい。いや、この場合天女か」

「はいはいストップや! 恥ずかしいセリフは終わり! というかお母ちゃんたちがおんのに何ゆうとんねん!」

 はっ! しまった! 思わず口からこぼれていたようだ。
 またやってしまった。はやても両親の前ではさすがに恥ずかしかったのか久しぶりに少し赤くなっている。
 うん、赤くなっているはやても可愛い。

「あらあら、はやてちゃんは愛されてるわね~」

「ところで今のセリフはどこら辺が恥ずかしい物だったんだい? すべて事実だろう?」

「そんなこと言えへんわ! なんやその羞恥プレイは!」

 はやて、父さんはからかうとかじゃなくて本気で言っているんだと思うぞ。
 俺だってどこら辺が恥ずかしいのかいまいちよくわからないし。

「なぁ、そんなことより早く行こうぜ。なんかするんだろう?」

 おぉ、そうだった。
 はやてのあまりの可愛さに忘れていたが何かするために両親に呼び出されたのだった。

「おぉ! そうだった! 早く移動しよう!」

「そうね! 早くしないと意味がなくなっちゃうものね!」

「? 何をするのですか?」

 先ほどのやり取りの間にやっと復活したシグナムが聞いた。
 うちの両親のことだ。どうせ

「温泉と言ったら卓球だろう!」

「ええ! 温泉と言ったら卓球よね!」

 そんなことだろうと思った。
 もったいつけておいて。まぁ、楽しめれば何でもいいか。

「タッキュウ? なんだそれ」

「食べ物かしら?」

 どうやら騎士たちは卓球を知らないらしい。ザフィーラとシグナムもはてな顔だ。

「来たらわかるさ。行こう」

俺たちは全員で卓球場へと向かった。




「ふっ、あと一ポイントで俺たちの勝利だ。盾の守護獣を名乗っている割に守備が甘いんじゃないか? なぁ、ヴィータ」

「私たちが相手じゃしょうがないだろう。奴らなんてただ図体がでかいだけじゃねーか」

「くっ! 言わせておけば! だが状況はそれほど悪くもない。こちらとて次に点を取れば逆転のチャンスはある!」

「……盾の守護獣の力、思い知らせてやる」

「みんながんばって~」

「ほな、ちびっこチームのサーブからやね」

 現在、俺とヴィータ、シグナムとザフィーラのチームで対戦中だ。
 隣では両親がシングルスで争っている。
 そちらも白熱しているようだがこちらもそれは同じだ。
 初めこそルールを覚えたりしながらのんびりとやっていたのだがコツを掴むと勝負好きのシグナムがだんだんと熱くなって行き、それに引っ張られる形で俺たちも本気になっていった。
 3ゲームマッチで戦っているが今は互いに1ゲームづつ取っており得点も10対9とクライマックスを迎えている。

「いくぞ!」

 そう叫んだ俺は王子サーブを仕掛ける。某卓球少女の得意技だ。
 素人相手にやるような技ではないがそれほどまでにシグナム達は短時間で上達してしまった。

「なんの!」

 そう言ってシグナムは体制も崩さずらくらくレシーブしてくる。
 ご丁寧にスピードドライブまでかけてきた。

「あまいぜ!」

 しかし、コースを読んでいたヴィータによって危なげなく打球は返された。
 ヴィータも負けじと際どいコースを攻め立てる。

「ふっ!」

 その打球もザフィーラの守備は抜けなかった。
 先ほどは挑発のためあのようなことを言ったがやはり盾の守護獣の名は伊達ではない。
 そうやすやすとポイントを取らせてくれないようだ。

「はっ!」

 俺は打球にカットをかけて打ち返す。先ほどからこの緩急によってチャンスを作り、点を取ってきたのだ。

「なめるな!」

 しかし、そう何度も同じ手に引っかかってくれるほど相手も甘くない。
 俺の打球を読んでいたシグナムが強烈なドライブをかけて返球してきた。

「ぐっ!」

ヴィータは何とか球を拾ったが打球が浮いてしまった。

「そこだ!」

 そのチャンスをザフィーラが逃すわけもなく、強力なスマッシュを叩きこまれてしまった。

「くっ!」

 なんとか打球に反応することができたが、パワー負けしてしまい打球は明後日の方向に飛んでいった。
 しまった。これでデュースになってしまった。

「ふふふっ、これで振り出しに戻ったな。いや、流れがある分我々が有利だ」

 シグナムが不敵に笑って俺たちを挑発してくる。
 ちっ! 失敗した。

「すまんヴィータ。少し油断した」

「気にすんな。奴ら寿命が少し伸びただけなんだからよ」

 そう言ってヴィータは余裕そうにニッと笑って見せた。なかなか頼もしい相棒じゃないか。

「ふっ、言うじゃないか。我々古代ベルカの最強コンビにかなうとでも?」

「当たり前だ! こっちは現代の最強コンビだからな!」

「ほな次は大人チームのサーブから」

 この後も、俺たちの激闘は十分近く続き、最終的に俺たちちびっこチームの勝利が決まった。
 シグナムとザフィーラは悔しがっていたが、なかなか楽しかった。
 またいつかやりたいものだ。




 卓球が終わると、俺たち子ども組はもう一度温泉に浸かってから周囲の探索に出かけた。
 シグナム達大人の騎士は風呂に入った後両親に捕まり、酒盛りを始めてしまった。たぶん両親は彼らをしばらく解放してくれないだろう。
 なので夕食までは三人でのんびりすることにしたのだ。

「しかし父ちゃんたちはパワフルだな。希の両親だって言うのも納得だぜ」

「それは褒めているのか?」

「あはは! ほめ言葉として受け取ってええんちゃう? いい人やん。二人とも」

「そうだぜ? ほめてんだよ」

「そうか、ありがとう」

 三人で旅館の散歩コースを歩きながら雑談をする。
 ここは小川も近くに流れていてなかなか気持ちのいいところだ。

「知っての通り両親は俺のことを溺愛しているからな。そのせいで無茶なことをすることもある。だから、そんな両親を好意的に見ない奴もいる。まぁ、両親が気にしていないのならそんな奴らはどうでもいいんだが、はやてたちにはうちの両親を好きになってもらいたいからな。俺も両親のことは大好きだから」

 この二人が親でなかったら、俺はとっくに壊れてしまっていただろうし。
 するとはやてたちは笑って俺の願いを肯定してくれる。

「何言ってんだよ。あんないい人たちを嫌いになるわけないだろう? あたしだって大好きだよ」

「うん、私も希君の両親は大好きやよ」

「そうか、ありがとう」

「お礼を言われることでもねーよ」

「せや」

 うん、よかった。嫌ってはいないだろうと思っていたがやはり言葉にしていってくれると安心する。
 両親の中ではすでにはやてたちは家族認定されているようだし問題ない。

「これで嫁姑問題は心配しないでいいな」

 仲が良くって大助かりだ。

「あほ! 気が早いっちゅうねん!」

 どうやら声に出ていたようではやてにつっこまれてしまった。
 うっかりしていたな。これではシャマルのこともからかえない。

「はやて、気が早いってことは将来的にはありなんだろう?」

 するとヴィータがニヤニヤしながらこんなことを言い出した。
 何っ! いや、確かに嫌がっているようではないが……
 俺が期待を込めた目で見ていると、はやての顔はみるみる真っ赤になっていった。

「知らん! 知らん知らん知らん!!」

 そう言って俺から逃げるように一人先に行ってしまう。

「はやて、そうなのか!」

「知らんゆうとるやん!」

 俺とヴィータが慌てて追いかけて聞いたが結局はやてはその後もこのことについては教えてくれなかった。




「ただいま~、って酒くせー!」

 俺たちが部屋に戻ると、中の大人たちはすでに全員出来上がっていた。
 シャマルとシグナムは真っ赤になっていたし、両親は上機嫌、ザフィーラは見た目変わっていないが横に酒瓶が束になって置いてあり目が据わっている。

「あら、三人ともお帰り~♪ 遅かったじゃない♪ 早く母さんの所に来て~♪」

「主、ヴィータ、希。遅いじゃないですか。こっちで一緒に楽しみましょう♪」

「いやん。三人ともこっち来てちょうだい。私と一緒に飲みましょう♪」

「いやいや、みんなは父さんと一緒に飲むんだよな♪」

「……こっちに」

 ……全員呑ます気満々じゃないか。
 ヴィータはどうか知らないが俺とはやては小学生だぞ?

「……はやて、ヴィータ。どうやら部屋を間違えたようだ。いくぞ」

 そう告げて俺は方向転換し部屋から逃げ出そうとした。
 しかし、その前に横に居たザフィーラに足を掴まれてしまう。その上無言のまま行くなと圧力をかけてきた。
 見ると、はやてとヴィータも同様に酔っ払いどもに捕まっていた。
 ……仕方がない。

「分かった。その代わり俺とはやては酒はあと十年ほど待ってくれ。代わりにヴィータを好きなようにしてくれてかまわない」

「の、希! テメぇ!」

「頑張れ、鉄槌の騎士」

 誰か一人くらい生け贄にしなければ収まりそうもないからな。
 ヴィータとてシグナム達と同じヴォルケンリッターなのだから見た目が子供でも少しくらいは大丈夫だろう。……たぶん。

「ごめんなぁ、ヴィータ。頑張ってや」

「はやてまで!」

 はやても同じ結論に達したのだろう。手を合わして謝っている。
 しかし、ヴィータもはやてに言われてしまったら断れない。

「~~~っ! わかった! あたしだってヴォルケンリッターの一人だ! 酒ごときに呑まれるか!!」

 こうして、ヴィータまでもが酒の海に溺れていくことになった。
 その後も、酒盛りは盛り上がり続け、結局全員がつぶれてしまうこととなった。
 しかし、ヴィータの尊い犠牲のおかげで、なんとか俺とはやては無事に危険な夜を乗り越えることができた。
 ……帰ったら特製アイスを山ほど作ってやることにしよう。




 翌日、いつもより少し早めに起きた俺は朝風呂に向かった。
 父さんとザフィーラも誘おうと思ったが昨日の酒が残っているのか起きる気配がなかったので一人で行くことにした。
 そう言えば、せっかく予約した家族風呂の方を使っていなかったのでそちらに向かうことにしよう。
 結局、使用時間のことを話してはいなかったがこんなに早い時間なら他の人が来ることもないだろうからな。
 向こうも起きれないだろうし、唯一起きれる可能性を持つはやても一人では温泉に入れない。
 だが、念のため俺が入っているのがわかるように脱衣所にメモを残しておこう。




 中に入るとこちらもなかなかいい景色が広がっていた。
 家族風呂だけあって湯船こそ大浴場より小さい物だったがそれもサイズは十分で、なにより海が一望出来る。
 時間帯もあって朝日が海に反射し、キラキラと光っている。
 この景色を一人占めできるとは。やはりこちらに来て正解だった。
 そう思った俺は上機嫌でしばらく一人風呂を満喫していた。


 しかし、その気持ちよさもあって若干うとうとしていたのがいけなかった。
 脱衣所に誰かが入ってきていることに気付くことができなかったのだ。
 ほどなくして、浴場の扉が開き誰かが入ってくる。
 その音で覚せいした俺が振り返ると、そこには母さんがいた。

「おはよう希ちゃん。こんないいお風呂を一人占めなんてずるいわよ♪」

 それはいい。
 多少気恥ずかしいが母さんとなら何度も一緒に入っていたからな。
 問題は

「ちょ! お、お母ちゃん! 希君居るやん!」

 はやてが一緒に入ってきたことだ。
 ……落ち着け。冷静になって状況を把握するんだ。まだ慌てるような時間じゃない。まず俺は今何をしている? 温泉につかっている。温泉に浸かっているということは? 当然、俺は服を着ていない。はやては何をしにここにきた? 温泉に浸かるためだ。と、いうことは? 当然服を着ていない。はやては今何をしている? 俺がいると分かってから逃げ出そうとしている。しかし母さんに抱きかかえられた状態なのでそれができないのでせめて体をタオルで隠そうとしている。だがタオルは小さいので全部を隠すことはできていない。足とかが丸見えだ。

 ……良し、状況確認終了。

「……ヘブンッ!!」

「希ちゃん!」

「希君!」

 俺は急激に顔が赤くなるのを感じると、そのまま倒れてしまった。
 冷静になったところでこの刺激には耐えきれなかった。
 遠くで母さんとはやてが俺を呼ぶ声が聞こえる。
 だが、もう駄目だった。
 しかし後悔はない。
 最後に天使の姿を見れたのだから。




 目を覚ますと、俺は布団で寝かされていた。
 起き上がろうとしたがまだ若干ふらふらする。
 どうも湯当たりしてしまったらしい。

「まだ寝てなあかんよ」

 誰もいないのかと思ったが横にはやてが座っていた。
 ……こんな近くに居るのに気付かないなんて。やはりまだ本調子じゃないようだ。

「みんなは?」

「酔い覚ましに風呂にいっとる」

「そうか」

 ということは今はやてと二人っきりか。
 やばい。さっきの映像がまだ頭から離れないというのに。
 するとはやては俺の顔を覗き込んできた。

「う~ん、まだ顔赤いな~。平気なん?」

「だ、大丈夫だ!」

 そう言って俺は慌ててはやてから遠ざかってしまう。
 するとはやては少しムッとした顔になる。

「ん、なんや? 人が心配しとるのに」

「い、いや。だってさっき……」

 するとはやての顔も一気に赤くなった。
 先ほどのことを思い出したのだろう。
 このまま離れてくれればいいのだが。

「い、いや。さっきんは別に怒ってへんで。希君は悪ないもんな。ちょっと恥ずかしかったけど。別に希君になら見られても……私も見てもうたし」

 後半は声が小さすぎて聞き取れなかったがどうやら怒ってはいないらしい。
 そのままはやてはずりずりと距離を縮めてくる。
 しかし問題はそこじゃない。

「いや、そうじゃなくてだな。その……」

「? どうしたん? 珍しく歯切れが悪いやん」

 そう言いつつもはやては距離を詰めるのをやめない。
 さすがに俺だってあんなことがあった後じゃ……

「……恥ずかしくてな」

「ほぇ?」

 はやては一瞬間抜けな声を出した。
 そして言葉の意味を理解すると少し考えてから悪そうな笑みを浮かべた。
 あ、やばい。そう思うとすぐにはやてはにじり寄るスピードを上げてきた。

「は、はやて! だから恥ずかしいんだって!」

「うん、知っとる。希君の羞恥顔なんてめったに見られへんからな。今のうちに堪能しとこうと思ってん」

 そう言ってはやてはどんどん俺に近づいてきた。
 実に楽しそうな笑顔で。
 俺は耐えきれなくなり立ち上がろうとしたが。

「逃げちゃいやや」

 そうはやてに上目遣いで言われてしまって動くことができない。
 ついにはやてに捕まってしまう。
 その距離の近さに急激に顔が熱くなる。

「ふうん、なんや希君が真っ赤になっとるとこなんて初めて見たわ。いつも私のことを可愛い可愛いゆうとるけど自分の方こそ可愛いやん」

「あ、あの、はやてさん?」

 はやては至近距離で俺の顔を覗き込んできた。
 いや、まずい。普段でさえこの距離はまずいというのに今の状態だと

「なんや?」

「ちょっと近すぎるかと……」

「ええやん。少しは楽しんでも。なんも問題ないやろ?」

「いや、問題はあるんですけど……」

 問題大アリだ。
 特にはやてに

「何が問題なん?」

「あの……ですね」

 だめだ。限界が近い。
 なんとか離れてもらうために俺は内心を暴露した。

「さっきの刺激の後にこんな近くに寄られたら……理性が……」

 只でさえ可愛いはやてがこんなに近くに居るんだ。
 思わず抱きしめたくなる衝動を何とか抑えているところだ。
 あぁ、はやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛い。
 ……ッハ! 一瞬トリップしてしまった。
 気を抜くとまたトんでしまいそうだ。
 はやても俺の言いたいことが分かったのか顔を赤くさせている。
 よかった。これで離れてくれる。
 と、思ったが一向に離れる気配がない。
 ……そろそろ本当に限界なんだが。
 はやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛いはやて可愛い。
 俺が欲望と激しい戦いをしているとはやてが飛んでもない爆弾を投入してきた。

「……少しくらいならええよ。こうなったんも私のせいやし」

 ……今何て言った?
 無理だ。もう無理だ。俺はついに欲望に負けはやてを思いっきり抱きしめた。
 はやてに顔を向けるとトロンとした目をゆっくりと閉じてくれた。
 あぁ、はやて可愛いな。
 そして俺ははやての唇に自分の唇をゆっくりと近づけていく。
 あぁ、はやて愛おしい。
 あとちょっと、あとほんのちょっとで唇が重なるという瞬間



 ガタガタガタっ!!



 と、大きな物音と共に入口のふすまが倒れた。
 驚いた俺たちは慌てて身を離し、扉の方を向いた。
 そこには、お風呂に行っているはずのシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、父さん、母さん、つまり俺たち以外の全員が倒れこんでいた。

「いてて、おい! 倒れちゃったじゃないか」

「お前が押すからこんなことに」

「シグナムだってどんどん身を乗り出していったじゃない」

「……早くどいてくれ」

「あらやだばれちゃったわね」

「う~ん、失敗失敗」

 つまり、風呂に行くというのは嘘でずっと覗いていたようだ。
 ……なん……だと。

「……なんでお風呂にいっとるはずのみんながここにおるん?」

 振り返るとはやては笑顔で皆を見ていた。
 ただし、怒りのオーラが見え隠れするものすごい怖い笑顔で。

「ひっ! はやて、これはだな!」

「あ、主! 落ち着いてください! これはですね……」

「はやてちゃん! あのね、これはつまり」

「そ、そのなんだ! つまりだな」

「つまりなんなん? ちょっとお話ししようか。みんなこっち来て正座してくれる?」

 騎士たちは死刑宣告をされた容疑者のように顔を青ざめている。

「父さん、母さん。逃げるのなら一カ月は口を利かないと思うけどそれでいい?」

「そんな!」

「あんまりだ!!」

 (おそらく)主犯のくせに逃げようとするのが悪い。
 ……失敗だ。完全に油断していた。
 本調子でないとはいえあんな近くにいたこいつらに気付かないとは。
 せめて能力をオンにしておけば……あとちょっとだったのに


 その後、俺とはやてのお説教は一時間以上にも及び彼らは綺麗な土下座をマスターすることとなった。






 俺たちの説教が終わるとふらふらになっている彼らとながら朝食を食べ、また温泉へ入った。
 時間的に最後の風呂なのでゆっくりと堪能した。
 風呂から出るころになると俺とはやての怒りも収まっており、皆もいつもの調子に戻っていた。
 これも温泉効果だろうか?
 しかし、楽しい旅行もこれでおしまいだ。
 俺たちは荷物をまとめてチェックアウトする。最後にお土産を買いたいと言ったはやてたちのために土産物屋に少し寄ってから、俺たちは温泉旅館を後にした。
 ちなみに俺も少しだけお土産を購入した。はやてとおそろいのタヌキのキーホルダーとバニングス達用の温泉まんじゅうだ。
 あいつらにも何か買っておかないとうるさそうだからな。




 帰り道の車内、はやては遊び疲れていたのかすぐに眠ってしまった。
 ヴィータやシャマルも同じだ。シグナムは何とか起きようとしていたが少しうとうととしている。
 みんな疲れているんだな。すると狼形態になっているザフィーラが俺の足元までやってきて話しかけてきた。

「遊び疲れて寝てしまうとは……よほど楽しかったのだな」

「お前は寝なくて平気なのか?」

「私はまだ平気だ。希こそ大丈夫か?」

「俺も大丈夫だ。今は眠るよりもはやての寝顔を見ていたい」

 はやてのあどけない寝顔はとても癒される。俺にとっては温泉の何十倍も効果がある。
 これを見ないで眠るなんてもったいないことできない!

「相変わらずだな」

 そう言ってザフィーラは静かに笑った。そして前足をドアに掛け、窓の外を見る。
 そして感慨深げにつぶやいた。

「……楽しかったな」

「あぁ、そうだな」

「……だからこそ、少し寂しい気がする」

 ……まったく。何を言い出すのかと思えば。

「また来ればいいだろう。今度もみんな一緒に」

 するとザフィーラは俺の方に向きかえり、小さく笑った。

「あぁ、また来よう。みんないっしょに」

 そうだ。またいつでも来ればいい。
 できれば、次に来るときは、はやての足がもっと良くなっていますように。
 俺はそう、心の中で小さく願った。




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