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No.25186の一覧
[0] 絶望と勝利を、君に[1-](2011/01/11 16:46)
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[25186] 絶望と勝利を、君に
Name: 1-◆2aeefb13 ID:9806fa44 次を表示する
Date: 2011/01/11 16:46

前書き

よくある転生ものです。
主人公は二人。
もう一人の登場は少し後になると思います。

グロテスクな表現なんかも結構出てくる予定なので、そういうのが苦手な方は注意!













「水…水!」

砂漠のように乾いた喉。
その喉の主張が、まるで言葉を放っているかのようだ。

――水が、欲しい。

この森に入ってかれこれ3日、水を口にしていない。
甘かった、水くらいすぐ手に入ると思っていた。
これも『前世』の感覚が残っているからか。
水も持たずにこの森に入った、愚かな3日前の自分を殺してやりたい。
植物を齧ったくらいじゃ喉は潤せない。
獣の血は飲み干そうとしてその生臭さに吐いた。
ちょっとした小川でいい、何なら水溜りでも構わない。
それなのに…雨すら降らないとは、この世界はとことん俺を嫌ってやがる。

そして彷徨い続けて…ようやく耳にしたこのせせらぎの音。
これがもし幻聴であったのなら、俺はもう小便でも血液でも口にするしかない。

身体をふらつかせながら何とか前に進む。
そんな俺の目に入ったのは――川、だった。

「……!!」

声さえ上げられない。
先ほどふらついていたのは何だったのか、急に気力を取り戻した身体はその力を振り絞って駆け出す。
倒れこむように川に顔をつける。
濁っちゃいるがそんなのは関係ない。
今の俺には天の川のようにも見える。

…あぁ、最高だ。






腹いっぱいになるまで水を飲んだ。
後で腹を下すかもしれない。
だがそれでもいい。
今はこの満足感に浸りたい…。

それにしても、水ごときでこんなに苦労する羽目になろうとは。
考えられねぇな。
それもこれもあいつら…いや、この国のせいだ!

あ?なんで俺がこんな状況になってるかって?
なんだあんたも物好きだな、俺の話を聞きたいってか。
それなら話してやるぜ、今の俺は最高に機嫌がいいんだ。







なんつーかな、俺は、生まれ変わったんだよ。
いわゆる転生ってやつだな。
交通事故で意識を失ったら、次に目を覚ますと赤ん坊ってパターンだ。
前世で俺がどういう人間だったか、ってのはつまらねー話だから割愛しておく。
赤ん坊の間の生活も同じく。
どうせ赤ん坊の仕事なんざ食って寝るだけだ。

で、生まれついたこの世界。
『この世界』って言えばわかるだろ、異世界転生ってやつだ。
しゃべってる言葉はどう聞いても日本語、なのに町並みは中世西洋。
おまけに『魔法』まで存在してやがる。
王道もいいところだろ?

で、そんな世界で俺が生まれたのは、その世界の中でも1,2を争う大国の、そのまた1,2を争う大貴族の家。
恵まれてるなんてもんじゃねーよな、どこの主人公だよって感じだ。
容姿にも才にも恵まれた。
前世を考えてみれば、この上ないスタートダッシュだ。

両親もできた人達でな。
母親は大貴族の夫人にもかかわらず優しくおおらかな人で俺を熱心に育ててくれた。
普通は乳母やらなんやらに任せるもんだと思うんだけどな。
親父もまぁ厳しい人間だったが、俺を嫌うわけでもなく、温かく見守ってくれた。

そんな恵まれた環境で育った俺は、よくある物語の主人公みたいな行動をとった。
魔法や武術の訓練を懸命にしたり。
前世の知識による領土発展策の提案をしたり。
ほとんど奴隷同然の平民の家臣達にも丁寧に接したり。
まぁそんな感じで順調だったんだ。
俺は自分で言うのもなんだが上昇志向の強い人間でな。
だから将来は国の重鎮、可能ならトップ…を目指して邁進していた。

え?なんでそんな奴が水が飲めずに死にそうになってたんだって?
まぁそれはこれから話すから、落ち着いて聞いてくれよ。








状況が激変した理由。
まぁ一言で言うとな。
――革命だよ。
革命が起きたんだ。
清教徒革命とか歴史で習ったろ?
あんなのを想像してもらえばいい。
この国――あぁ、国名はマヤトっていうんだが。
マヤトは王政をとってはいるんだが、内実は中世封建制度でな。
まぁそれは先に言った領主云々で想像できてたと思うが。
つまりは、貴族が各々の領地を治めて平民が農奴扱いっていうあれだ。
一応は王はいるんだが、どちらかというと貴族の代表みたいなもんだ。
まぁ細かい話は面倒だから省く。

とにかく、その扱いに不満をためていた平民達が蜂起したんだよ。
啓蒙思想や市民主義なんかの考えが広まったのも原因らしいが。
そんな思想広めた奴は絶対ぶっ殺す!
…あぁ、まぁそれは置いといて。

革命がどれだけ血なまぐさいものか知ってるか?
歴史上では無血革命なんて呼ばれてるものもあるけどよ、普通は違う。
夥しい血が流れる。
前世の歴史でも、革命の最大のショーは王の処刑だったろ?
つまりこの世界では――貴族が、その対象だ。

親父が良政を敷いていた?
お袋が優しい人だった?

そんなのは一切関係なかったね。
結局は「平民と貴族」そのひとくくりにされちまうわけだ。
人格も何も関係なく。
あれだけ親父達が手厚く扱ってた家臣たちも処刑に嬉々として参加していたからな。

親父は大勢の民衆の前で散々リンチ食らった後にギロチンで首を落とされた。
お袋はもっとひどい。
屋敷に乱入してきた暴徒達に散々レイプされた。
股座が裂けて血と精液を流しながら気を失っても、奴らはやめなかった。
あげく、最後にはその股座から槍を突き刺して殺した。
俺の目の前でな。
え、お前は何をしていた、助けなかったのかって?
いや、俺はただ震えていたよ。
怒りで、じゃねえよ?
恐怖で、だ。

ここで物語の主人公なら、その暴徒達からお袋を助けるとか、暴徒達を諭すとか。
あるいはそれができなくても、目の前の光景を刻み付けて復習の炎に身を焦がす、とかするんじゃないか?
でも俺はそんなんじゃなかった。
次は俺の番かと、ただ恐怖でおかしくなってただけだ。

結局、俺はまぁこうして生きているわけだけど。
なんで俺が生かされたのかはわからねえ。
まだ10歳の子供だからか。
それとも奴隷達にも優しくしてたのがここで効いたのか?
まぁ親父やお袋の扱いを見てれば後者はねえよな。
散々殺しといて、子供を殺すのは良心が痛むのかねぇ?

まぁ、とにかくなんとか生き残った俺。
だがそんな俺を拾ってくれるとこなんざねぇ。
親戚は皆殺されてるし、平民が貴族の子供なんか良いように扱うはずがねえ。
そんなわけで、俺は10歳ながら家なしになったわけだ。

まぁ、とはいえ俺は前世の記憶がある。
前世での30年と合わせて、精神年齢は40歳だ。
若干身体に精神も引き摺られて幼くなってるような気はするが、それにしたってただのガキじゃねぇ。
一人で生きるくらい、どうにでもなると思ってたんだ。







…で、冒頭に戻るわけだ。
まぁ甘かったわな。
このマヤトは現代日本じゃねぇんだ。
子供が一人で生き抜くのはかなり難しい。
群れから逸れた動物の子供の運命は?
死、のみだ。
人間様の知恵があっても、それはなかなか覆らない。

それに、前世でも今世でも、サバイバルなんてしたことがないからな。
これでまだそっち方面の知識でもありゃ野生児として生きていけただろうけどよ。
実際はこの有様だ。
水を手に入れるのにも苦労する始末。
魔法があるからまだ動物を狩ることができるだけマシだが。
この魔法だって万能じゃない。

この世界の魔法は、物語によく出てくる魔法のように使い勝手のいいものじゃない。
魔力は、自分の体内にしか存在しない。
つまりは熱量(cal)みたいなもんだ。
人間一人の魔力なんて限られてるし、増してや子供のそれなんて僅かもいいところだ。
身体が弱れば行使できる魔法もほとんどなくなる。
水や食事を生み出す魔法なんてあったら便利なんだけどな。
そんなにうまい話はないと。






さて、まぁとりあえず俺が陥った状況については理解してもらえたな?
次は、これからどうするかだ。
いや、まぁとりあえずなんとか生き延びなきゃ話にならねぇけどよ。
その先を決めておかなきゃな。
俺は、目標を決めなければ行動できない人間だ。
これは俺の持論だが、人間は弱っちい。
楽なほうに、簡単な方に、甘い方にすぐに流れる。
性善説より性悪説を信じるといったほうが話が早いか。
もしかしたら、ただ生きているだけでも自分を律することができる聖人みたいな奴もいるのかもしれねぇ。
でも少なくとも、前世と合わせてこの40年で見たことはないな。

だから、目標を決める。
最初にでかい目標、最終目標を決めて、そっから段々と小さな目標を決めていく。
いつだったか参加したセミナーで教わった成功者の思考法だな。
目標は、言い換えれば欲望だ。
人間は、欲の深い奴のほうが成功する。
欲のない奴は弱い。
他人を蹴落としてでも、成功したい――そういう嫌な奴のほうが成功するようにできてんだ、人間ってのは。






話がそれたな、とりあえず目標を決める。
革命が起こるまでは、国のトップになることが最終目標だったんだけどな。
国そのものが変わっちまったからねぇ。
親父やお袋を殺した連中と雁首並べて、ってのはどうにも気がすすまねぇ。
じゃあ逆にこの国をぶっ壊す?
壊す、ていうのも曖昧だよな。
なんかただのテロリストになりそうだし。
あぁ、ならようやくでき始めたらしい議会政治をぶっ壊すか?
そもそも俺は民主主義ってのが嫌いだ。
元日本人ではあるけどな。
民主主義ってのは、国民の平均の知能がそれなりってのが前提だ。
もしその前提が成り立っていても、結局行われる政治は「それなり」にしかならねぇ。
じゃあその前提すら成り立ってなかったら?
まぁ前世が良い例だわな。
どう考えても実現不可能な公約を掲げる馬鹿な政治家。
それを鵜呑みにして投票する更なる馬鹿ども。
そんな奴らのせいでひどい有様だった。
お前らが勝手に馬鹿やってるのは良いが、ほかの奴まで巻き込むなってのが心情だ。
だから、政治なんて一部の有能な奴に丸投げしちまえば良いのさ。
その方がよほどうまくいく。

うん、考えりゃ考えるほど俺は民主主義が嫌いだ。
親父とお袋も民主化が殺したようなもんだし。
よし、なら俺はこの国の政治をぶっ壊して、王政を復活させてやろう。
別に俺が王にならなくてもいい。
後世の歴史家に「民主政治を百年遅らせた大罪人」って呼ばれてやろう。

そうと決まれば、それをどう実行するかだな。
そのために必要な行動も考えていかなければ。
今はただの浮浪児だけどな。
必ず達成してやるぜ?
なぁに、人間、必ずやり遂げるという気概とそのための行動さえあれば、なんでもできるもんだ。








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