10月25日 (木) 午後 ◇射撃訓練場◇ 《Side of 榊千鶴》今日は神宮司教官が別件で訓練に来られないとのことで、午前中は自主訓練を行っていた。今は、白銀大尉が教官役として訓練を見てくださっている。頭に包帯を巻いていたので気になって尋ねてみたのだが、どうやら訓練中の事故で負傷したらしい。 「榊~~~!」 「――!はいっ!!」今まで静観していた大尉に突然呼ばれ驚いたが、返事をして呼ばれた方を見ると白銀大尉が手招きしていた。私は駆け足で彼の下に向かう。 「射撃動作で気になったことがある。みんなを集めてくれ」 「了解。――射撃止め!分隊集合!!」私の声に反応して、隊員たちが駆け足で集まってくる。全員が集合したのを見て、白銀大尉が話し始めた。 「今見ていて思ったんだが、みんな訓練に慣れすぎて間違ったところに意識が行ってしまってると感じた」 「――どういうことでしょうか?」 「構えてから撃つまでが早すぎる。射撃場に慣れた撃ち方になってしまってるんだよ」 「「――?」」 「今は生身の訓練だけど、ここで変な癖をつけると戦術機に乗ったときに悪い影響が出る」彼の言葉に私を含め、全員が聞き入っているようだ。 「戦術機に搭乗した場合、本来は人間が行っている判断とか動作が自動化や高速化されている。だから今の射撃動作だと、反射的にトリガーを引いちまってムダ弾を増やすことになる」 「「………」」 「IFFがあるから味方誤射は無いかもしれないが、戦場で動きを止めて撃つことは滅多に無い。遮蔽物だってあるだろう。 しかし一呼吸遅らせれば、的確に状況を把握する余裕が生まれ正確な射撃が出来る」そこまで考えて訓練していなかった。私たちが何を目標にしているかを考え効率良く訓練しろ、ということか。 「――と、言うわけで……その辺を気にしながらやってみてくれ」 「「了解!!」」ただボーっと見ているだけかと思っていたのだが………やはり衛士ともなると見るところが違うのか、今まで意識していなかった事を指摘された。これからの訓練に生かさなければ―― 「――んふふ……さすがだね~」 「――ふふ。当然であろう。あの者ならば」訓練に戻る際に、鑑がポツリと呟いたのが聞こえた。それに同意する御剣の声も。あの2人、今朝になってから妙に仲が良くなっていた。鑑とは昨日知り合ったばかりだが、彼女の人懐こい笑顔や自己紹介のときのアレもあり、少しずつではあるが確実に打ち解けている。しかしあの二人は、事情を知らなければ、昨日知り合ったとは思えないくらいだろう。何があったのか気になるところではあるが、今は大尉に教えて頂いたことを無駄にしないよう訓練に集中しよう――◇横浜基地・シミュレータールーム◇ 《Side of 涼宮茜》今日の訓練は、神宮司軍曹も参加して行われている。ここにいる全員にとって、神宮司軍曹は恩師。だけど、それ以上に怖………コホン。神宮司軍曹――神宮司教官と一緒に訓練をすることに戸惑っていたのは、私だけでは無いと思う。新任の私たちは、数ヶ月前に戻ったような気持ちだったけれど、先任の速瀬中尉や宗像中尉、伊隅大尉すらも緊張していたみたいだった。神宮司軍曹は初め、私たちに敬語を使おうとしたけど、全員から「それだけは止めてくれ――」という懇願を聞き入れてくれて、以前と変わらない調子で接してくれた。でも、そこで教官が放った一言に、私たちは度肝を抜かれた。 「――着任初日の白銀大尉にも同じことを言われたのよ」その一言に、まず宗像中尉が喰い付き、そこから他の面々も次々と教官に質問を浴びせた。最初は毅然とした態度でいた教官も、質問が次第に際どい物になっていくにつれて態度を崩し、最後は無理矢理引き締めたようで宗像中尉たちを追い払っていた。……あんな表情をする教官を見たことが無かったので驚いた。白銀大尉の話だと、神宮司軍曹もA-01に配属されるそうなので、今後も軍曹が訓練に参加することになると思う。より一層、訓練に気合が入る。私も千鶴たちに負けないように、しっかり訓練しなくちゃね。夜 ◇横浜基地・PX◇ 《Side of 武》久しぶりに207の訓練に参加した。参加――と言うと語弊があるか。訓練兵としてではなくて、教官としての参加だったしな。あいつ等、相変わらず良い腕をしてやがる。技術的な面では、ほとんど言うことは無い。俺は自分の過去の経験から、所々アドバイスするくらいしかなかった。戦術機に乗ることを意識させて訓練していけば良いのかな………さっさと戦術機に乗って欲しいんだけど、そうもいかねぇもんな~~~~。どうしたもんかね~~~ 「――白銀?」 「……んぁ?――げ」 「げ――とはまた、ご挨拶ですね~~。大尉殿?」 「あははは。やだな~~~、そんなこと言うわけ無いじゃないですか」いつの間にか、午後の訓練を終えたらしい伊隅大尉たちがPXに来ていた。俺の周りに勢揃いしているのに、気付かない俺って…… 「まぁ良いわ………ここ座るわよ」 「どうぞどうぞ――」速瀬中尉が俺の向かい側に座ったのを皮切りに、他のみんなも思い思いに座り食事を始めた。なんか懐かしいな…この人たちと食事するのも。 「どうですか?アレは」食事も進み、落ち着いてきた頃を見計らって、みんなに感想を聞いてみる。 「――どうもこうも無いわよっ!!」 「……口に物を入れたまま喋らないで下さい…飛んでますよ、速瀬中尉」 「そんなことより!」 「水月~~。ちょっと落ち着きなよ~~~」涼宮中尉に言われ、ズズ~~~~~っと、お茶で口の中の物を飲み下した速瀬中尉。そんなに興奮しなくても良いと思うんだけど… 「コホン――本当にとんでもないモノを造ってくれたわね。アンタと副司令は――」 「まったくだ。今まで蓄積してきたデータを軽々と超えてしまったのだからな」 「信頼性も問題は無さそうですしね。シミュレーターで体感して分かりましたが、あの機動は急造の機体でやるものではないですね。せめて、ちゃんと整備をした機体じゃなければ危ないですよ」宗像中尉の指摘に、俺は乾いた笑いをするしかなかった。仕方ないじゃんなぁ?あの模擬戦で不知火を使ったんじゃ意味ないし、かといって撃震なんか余っているわけも無い。だからハンガーの隅に転がってた吹雪のパーツと、不知火のパーツを使うしかなかったんだけどな……時間が足りなかったんですよ… 「とにかく!早くアレに慣れないと話にならないわ!!」 「あぁ――全てのシミュレーターへの換装は、いつ終わりそうなんだ?」 「そうですね~~………明日か、遅くとも明後日には終わると思いますよ」そうか――と短く頷いた伊隅大尉は、止めていた箸を再び動かし始めた。シミュレーターの換装は純夏とピアティフ中尉にやってもらっている。ここに来てから、純夏には動いてもらってばかりだから体調が少しだけ心配だ。――少しだけだぞ? 「私たちの不知火への搭載はいつ頃になるのでしょうか?」 「そっちは夕呼先生が指示を出してくれてるみたいですよ。もうしばらくかかると思いますけど、来月の頭には終わってるはずです」 「そうですか――」 「実機に乗ったときに扱えないんじゃ仕方ない。今はシミュレーターで慣れておかないとな、祷子」 「はい」 午前中だけA-01の訓練に参加して、俺は軽く指導したんだが、そのときの感じだと予想以上に早く慣れてくれそうだった。最初こそ転倒や障害物への激突が目立ったが、訓練を繰り返すにつれ、目に見えて動きが良くなっていた。ま、さすがヴァルキリーズってとこかな。午後の訓練は見てないけど、良くなっているのは間違いないはずだ。 「あの~~大尉~~~」 「――ん、なんだ?涼宮」 「キャンセルとかコンボっていうのがまだ――」 「使ってれば分かってくるよ。今はOSに慣れることだけに集中してくれ」 「……説明が面倒くさいのでは?」 「んな――!?違いますって!キャンセルとコンボは説明して出来るようにはなりませんよ。自分でやって慣れるしかないんですってば」なんてこと言うんだ、宗像中尉。…ちょっとだけ思ったけどさ。 「むぅ…やっぱり慣れるしかないかぁ~~~」 「――茜。さっさと慣れて白銀をギャフンと言わしてやれば良いのよ!」 「そうですね――よ~~し、頑張るぞ~~~!!」速瀬中尉が何やら物騒な事言ってるな。涼宮も、なんか妙なヤル気スイッチがONになった気がするけど……まぁ良いか。早く慣れてもらうに越したことは無いからな。 「――あ、そうだ………白銀大尉、お聞きしたいことがあるのですが、宜しいですか?」 「…?――なんですか?」宗像中尉が何か思い出したように尋ねてきた。俺はノンビリお茶を啜りながら聞いていたのだが―― 「どうして神宮司軍曹に敬語を使うな――と懇願したんです?」 「――ッ!?ゲホゲホゲホ………………」思いっきり咽た。 「大丈夫か?白銀」 「「………………………」」うげ~~~~変なとこ入ったじゃねぇか。隣に座っていた伊隅大尉が背中を摩ってくれた。ありがたや、ありがたや。 「「………………………………」」 「う、お……?」視線を上げると全員からの無言のプレッシャーを感じる。危険だ――俺の何かが告げている。このままではマズイ。非常にマズイ。逃げろ――と。だが、現実はそう上手くはいかないらしい。背中を摩ってくれていた伊隅大尉の手に、いつの間にか力が入っているのに気付いてしまった……… 「い、いやほら――みんなと同じ理由ですよ?」 「「………………………」」くっ――何故に無言だ!?ここは正直に言うしかないか。 「………実は――昔凄くお世話になった人に似ていたんですよ。神宮司軍曹が」 「ほう――」 「それで敬語を使われるとむず痒くて」 「「………………………」」納得してもらえたか…? 「そうでしたか。すみません、変なことを聞いてしまって――」 「い、いえ――」ほ……なんとか納得してもらえたみたいだ。助かった~~~~。解決した安心からホッと一息。お茶を一口… 「――それで、大尉はその人と只ならぬ関係だったというわけですか」 「――ブフゥッ!?」どう解釈したら、そういう結論になるんだよ!? 「ゲホゲホゲホ……な、なんでそういうことになるんですか!?」 「いえ――神宮司教官に似ていて、お世話になったということは、おそらく大尉よりも年上。それだけなら別に、たとえ教官が似ていたとしても敬語を使うな、とは言わないと思いまして」なるほど――って納得しないでくれよ、速瀬中尉。他の連中も宗像中尉の推理に感心したように、おぉ~~~~とか言うなっての。 「教官に懇願までしたということは、大尉にとってその人は余程特別な存在だったのでは――と思っただけですので、気にしないで下さい」 「そっすか…」 「ふふ――」わざとだ、この人。絶対面白がってるよ……まぁ特別ってのは間違ってないけど、もう余計なことは言わない。絶対に言わない。言うもんか。 「さ――お前たちも早く食事を済ませてしまえよ。この後も訓練があるんだからな」 「「は~~~い!」」今度こそ終わった。ふぃ~~~助かったぜ。伊隅大尉には助けてもらってばっかりだな。命の恩人に感謝―― 「面白い話は後でも出来るんだからな――」 「いぃぃ――!?」 「「了解!!」」マジかよ。伊隅大尉そりゃないって………この後の訓練は、少し厳しくしておいた。これくらいの反撃は許されると思うんだ。10月26日 (金) 午前 ◇横浜基地・教室◇ 《Side of 冥夜》火器整備の訓練中、香月博士の使いだという社に呼ばれ、鑑が行ってしまった。鑑が訓練に参加するようになってから数日しか経っていないが、このような事が頻繁にある。一体、何者なのか……この207Bに配属されたということは、一般市民である可能性は低い。それにタケルとは幼い頃からの仲だという。この事実こそが、私が最も危惧していることだ。――鑑と過ごすようになって数日だが、彼女は信じられる人物だと判断しているので、他の事は言ってしまえばどうでも良い。 「――副司令に呼ばれるなんて、鑑さん凄いよね~~~」 「凄いけど不思議…」 「鑑も貴女には言われたく無いんじゃない?」不思議か。普段の鑑を見ていると、確かにそう思わなくも無い。鑑は極めて明るい性格で、いつも笑顔を絶やさない。訓練後にバテている事もしばしばある。特に突出した能力があるわけでも無かった。そんな彼女は初対面のときに、自分は少し特別だから――と言っていたが、こういう意味だったのだろうか? 「お喋りはそのくらいにしておけ――今は訓練に集中しなさい」 「「はい――!」」神宮司教官に叱られてしまった。今は訓練に集中しよう。このような所で躓いているわけにはいかぬ――タケルがこの先で待っているのだ。何があろうとも私は先へ進んでみせる。◇夕呼執務室◇ 《Side of 夕呼》 「――悪いわね~~~、頻繁に呼び出して」 「あはは。大丈夫ですよ~」ここのところ、鑑をXM3関係のことで頻繁に呼び出していた。まぁ、本来は訓練兵に混じっての訓練なんて必要ないのだから、あまり気にしてはいないのだけど。 「それで今度はなんですか?」 「凄乃皇のことよ」 「――?」なんでこの時期に――って顔ね。思考をリーディングすれば済むはずだけど、いつも読んでるわけじゃないみたいね。 「せっかくアンタっていう切り札があるんだから、やれることはさっさとやった方が良いでしょう?白銀から聞いたけど、満身創痍だったみたいじゃない。 オリジナルハイヴを落とす直前なんて酷かったって言ってたわよ?」 「あ~~~………確かに酷かったですね」 「四型も不完全な状態で出撃したそうだから、今回は出来るだけ万全な状態にしよう――って決めたのよ」 「分っかりました~~!じゃぁ私は何をすれば良いんですか?」 「各種機関、装備の小型化、及び強化よ」 「小型化と強化ですか?」えぇ――と短く返答する。先日、白銀から聞いた話によると、佐渡島での弐型には機体の問題は無かったが、あ号での四型には、多数問題があったそうだ。まず弾薬の問題。想定していたよりも消費が激しくメインホールに到達する頃には、残弾がほとんど無い状態だったらしい。他にも武装のほとんどを排除するしかなかったりと、凄乃皇・四型は本来の能力を出せなかったらしい。なので、小型化できる部分は小型化して容量を増やしたりと、それなりに大掛かりな改修をする予定だ。だが…その前にもやることは山積みになっている。実際、凄乃皇本体の受け渡しも難航しているのだ。さっさと現物を搬入してしまいたい。白銀が言うところの“今回”も“前回”と同じでは仕方ない。 「現時点で可能なだけで良いわ。すぐにとは言わないから、可能かどうか検討してみてちょうだい。可能ならデータにして送ってもらえると助かるわ」 「了解!!やってみま~~す――」 「じゃ、任せたわね」元気良く返事をして鑑は訓練に戻っていった。私は、いくら量子電導脳を持つ鑑であっても1週間以上はかかると思っていた。なので鑑が、この5日後に可能だという報せと、そのデータを送ってきたのには、さすがの私も驚いた。10月28日 (日) 午後 ◇シミュレータールーム◇ 《Side of まりも》今日は207BもA-01も訓練は休みだが、私はシミュレーター使用の許可を取り自主訓練をしている。私は数日前、近々A-01に配属すると宣告された。過去に実戦に出た経験があるとはいえ、一度実戦から離れてしまった今の私では、彼女たちと比べると腕も勘も鈍っている。それを実戦部隊の訓練に参加させてもらって痛感した。A-01の訓練に参加したくらいでは、足手まといになるだけだろう。なので、こうして休日も訓練に当てることにしたわけ。白銀大尉のデータを拝借して訓練をしているが、やはり一筋縄ではいかない。簡単にやれるとは思っていなかったけど、ここまで滅茶苦茶だと何をどうすれば良いのかも分からない………彼は一体どういう訓練をしてきたのか、彼を鍛え上げた人はどういう人なのかも興味がある。出来ることなら、彼の教官に会って教えを請いたいくらいだ。 「――悔しいけど、教官を交換するのは仕方ないわね……」あの娘たちが総戦技演習を突破するのは、そう遠くないはず。彼女たちの能力には問題は無い。そして鑑の加入により、彼女たちの結束は強まりつつあるようだ。あとは鎧衣の復帰を待つばかりか。何かとしがらみの多い娘たちだけど、大切な教え子であることに変わりは無い。出来ることなら最後まで指導してあげたい。しかし私の実力では、このOSを完全に使いこなすことは、今はまだ無理だ。XM3を使えるようになっておけば、白銀大尉の変わりを任せてもらえるかもしれない。A-01に合流しても恥ずかしくないようにしておかなければ気がすまないし、そういう意味で、この自主訓練は一石二鳥といえるかもしれない。しかし本音を言うと、まだまだ教え子には負けていられない――という気持ちが大きい。◇ブリーフィングルーム◇ 《Side of 宗像美冴》何度見ても凄い――私は祷子と、この間の模擬戦の記録映像を見ているのだが、やはり凄い。いや、オカシイと言ったほうが良いだろう……彼の動きは。XM3を与えられてから、連日の猛特訓もあり、ようやく白銀大尉の動きが見えるようになってきたので、幾度となく見直した先日の模擬戦の映像を再び見てみたのだが…なまじXM3を使えるようになってしまったので、彼の凄さを理解できてしまった。 「さすが開発者というか何というか………恐ろしいな。XM3も白銀も」 「はい…」最初に映像を見ながら白銀大尉の機動パターンと操作ログを見比べたときは、不可解な点がいくつかあったが、一通り教導されている今なら理解できる。以前、操作ログの不可解な点を白銀に聞いてみたところ、彼はただのクセだと言っていたが、実際にはXM3を最大限に活用する技術なのだろう。速瀬中尉を撃墜したシーンでは、XM3の効果が最大限に発揮されていると思う。壁面に着地した白銀機は、そこから再び飛び上がるような操作を入力していたが、飛び上がる前にビルが倒壊して体制を崩した。従来のOSなら、ここで速瀬中尉に撃墜されてしまうだろうが、彼は体制を崩したままで機体を制御し、速瀬中尉の撃墜に繋げている。OSがあれば誰でも簡単に出来る――そう思っていた自分が恥ずかしい。そんな甘いもではなかった。白銀大尉の衛士としての実力を侮っていた。 「美冴さん。参考になりそうな部分は纏めておきましたわ」 「ありがとう祷子。それじゃ今日はこのくらいにしておこうか。そうだ――せっかくの休みだし、久しぶりに聴かせてくれないか?」 「はい――私の部屋でよろしいですか?」たまの休日、休まないと勿体無い。私は頷き、祷子と共にブリーフィングルームを出る。久々の演奏だ。楽しもうじゃないか――