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No.25132の一覧
[0] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~[ごじゃっぺ](2011/01/21 16:08)
[1] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第1話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:48)
[2] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第2話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:49)
[3] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第3話[ごじゃっぺ](2013/01/02 00:53)
[4] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第4話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:50)
[5] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第5話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:51)
[6] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第6話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:52)
[7] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第7話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:52)
[8] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第8話[ごじゃっぺ](2012/05/20 02:13)
[9] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第9話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:53)
[10] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第10話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:53)
[11] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第11話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:54)
[12] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第12話[ごじゃっぺ](2013/01/02 00:53)
[13] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第13話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:55)
[14] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第14話[ごじゃっぺ](2013/01/02 00:54)
[15] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第15話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:56)
[16] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第16話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:57)
[17] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第17話[ごじゃっぺ](2013/01/02 00:55)
[18] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第18話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:57)
[19] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第19話[ごじゃっぺ](2011/10/18 21:58)
[20] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第20話[ごじゃっぺ](2013/01/02 00:55)
[21] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第21話[ごじゃっぺ](2013/01/02 00:57)
[22] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第22話[ごじゃっぺ](2013/01/02 00:59)
[23] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第23話[ごじゃっぺ](2013/01/02 01:02)
[24] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第24話[ごじゃっぺ](2013/01/02 01:04)
[31] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第25話[ごじゃっぺ](2017/02/11 21:52)
[32] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第26話[ごじゃっぺ](2013/01/02 01:08)
[33] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第27話[ごじゃっぺ](2013/01/02 01:10)
[34] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第28話[ごじゃっぺ](2013/01/02 01:10)
[35] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第29話[ごじゃっぺ](2012/05/20 02:12)
[36] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第30話[ごじゃっぺ](2012/05/23 22:45)
[37] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第31話[ごじゃっぺ](2017/02/11 21:53)
[38] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第32話[ごじゃっぺ](2017/04/16 00:03)
[39] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第33話[ごじゃっぺ](2017/04/18 22:43)
[40] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第34話[ごじゃっぺ](2017/12/09 00:36)
[41] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第35話[ごじゃっぺ](2020/10/19 21:30)
[42] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第36話[ごじゃっぺ](2020/10/19 21:32)
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[25132] タケルちゃんの逆襲 ~Takeru's Counter Attack~ 第17話
Name: ごじゃっぺ◆cedeedff ID:f61f25af 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/01/02 00:55
11月30日 (金) 午前 ◇帝都城・悠陽私室◇ 《Side of 悠陽》


まだ3日………されど3日。
こんなにも恋焦がれることになろうとは。今ほど、自分の立場を疎ましいと思ったことはありませんね。

 「はぁ…………」

溜息を吐く回数が、自分でも分かるくらい格段に増えました。思うは、愛しい殿方のこと。
嗚呼――武殿。そなたは今なにをなさっているのでしょう。

本当ならば私が傍で支えなければならぬのでしょうが…想い人から叱咤激励されたのですから、全身全霊を賭して取り組まねば、顔向けできなくなってしまいます。
私は武殿を探すことで頭がいっぱいになり、他の本来やるべき事を見失っていました。
そして武殿が見つかったとの報せが入ると浮かれ、公務にも身が入っていなかったのでしょうね。
そのせいで沙霧大尉らに、酷な使命を全うさせることになるやもしれなかったのです。
その事実を突きつけられたとき、私は己の不甲斐無さを痛感し、この立場から退くことが脳裏を過ぎりました。
ですが、武殿はそんな私の背中を押してくださったのです。


君しかいない――と。これに応えねば女が廃るというもの。


武殿が横浜にお帰りになった後すぐ、各方面に文書でこれまでの謝罪と体制を変えるとの通達を出しました。
極一部から反対の声も上がりましたが、それを一蹴し、全て本来あるべき形へと戻しました。いえ……まだ完全には戻っていないのですが………

 「悠陽様――横浜より客人がお見えになりました」
 「左様ですか。では、参りましょう」

マヤさんが客人の到着を知らせにきたので、私は思考を中断しました。先日連絡のあった客人が到着したようですね。
なんでも、武殿に関するお話で急を要するということだそうなのですが……どういった用件なのでしょうか。
武殿、私はここから出来ることをさせて頂きます。どうか見守ってくださいまし――



◇帝都城・謁見の間◇ 《Side of 純夏》


 「――というのが現在考え得る限り、最良の策かと考えております」
 「そこで私の協力が必要になったと――」
 「はい。この件を私の力だけで解決することは、もはや不可能と判断しましたので」

ほえ~~。
香月博士がこんなに丁寧に話しているところ、初めて見たよ。横浜じゃ基地司令にだって、こんな話し方はしない人なのに。
さすがに相手が将軍様だと、ちゃんとするんだね。

 「この件、私はお受けしても良いと思うのですが………マヤさん、どうでしょうか?」
 「正直に申し上げまして………こちらには何の益も無いかと。個人的には是非とも協力さしあげたいところでは御座いますが…」
 「その点で提案が御座います。まず、こちらの映像を御覧になって頂きたいのですが」

博士は持っていたA4サイズ程のノート型のコンピュータを操作して、将軍殿下のほうに向けた。
それを月詠中尉――横浜にいる月詠さんと親戚なのかな?――が受けとって、殿下が画面を見やすいようにした。
ノートパソコンを殿下に持たせるわけは無いので、月詠中尉はそのまま膝をついた姿勢で将軍様と同じように画面を見つめる。

 「これは――?」
 「約ひと月程前に行った、私直属の部隊の演習の映像です」
 「不知火9機と吹雪が1機………――!」
 「なんだ…この動きは!?――こんな……」
 「その吹雪の動き、通常であればどんなに優秀な衛士や、良い機体であったとしても不可能です。中尉なら、そのことをお分かりになりますね?」

博士にそう言われると、月詠中尉は顔をしかめて何も答えなかった。この沈黙は肯定だって受け取っていいんだよね?
まぁ…ムリないよねぇ~~。いくら吹雪だっていってもXM3を積んでるし、何より動かしてるのはタケルちゃんだもん。
あ、2人はタケルちゃんだって知らないんだった。

 「では――どのようにして、このような動きを可能としているのです?」
 「新OS……XM3です、殿下」
 「エク、セム、スリー?」

聞きなれない単語に首を傾げる将軍殿下。その仕草は年相応の女の子のようで可愛かった。
タケルちゃん、この人に呼ばれて帝都に来たんだよね……私の予想が正しければ、たぶん――はぁ…………
私が物思いに耽っている最中、香月博士は2人にXM3の説明をしてた。
説明を受けた2人は、殿下はイマイチ実感が湧かないようだったけど、月詠中尉はとても驚いてたよ。

 「そして、このOSは…白銀武の発案によるものです。テストパイロットは白銀自身が務めており、先程の映像の吹雪の衛士も彼ですわ」
 「「――!!」」

お~~。すんごく驚いてる。
思わず笑いそうになっちゃったよ……危ない危ない。

 「このOSを――帝こ……斯衛軍へと技術提供する、ということで如何でしょう」
 「それは……」
 「実戦での有用性も、先程の説明で御理解頂けたかと思いますが?」
 「はい。さほど詳しくない私でも理解できました。――マヤさん…私はこの話、お受けしようと思います。
  アレも――本来の役割を果たすべきでしょう。少々、私の手には余るものです故」
 「は。――では香月博士、詳しくはこちらで――」

博士は頷いて月詠中尉の言葉に頷き、別室へと移動しようとしたので私もついて行こうとしたけれど、不意に呼び止められてしまった。

 「――鑑純夏さん、と申しましたね。少々お話をしたいのですが、宜しいですか?」
 「え…?っと――……」

突然のことでどうしていいか分からなくなった私は、香月博士に助けを求めるような視線を送った。
すると博士は、

 「粗相をしないようにね?」

なんてニヤっとしながら言うもんだから、私は頬っぺたを膨らませて抗議したけど博士はそのまま出てっちゃったよ。ぶぅ……
内心ふて腐れながらも将軍様のほうに向き直ると、将軍様はと~~~~っても優しい笑顔をしてた。

 「鑑さん……香月博士の助手をしてらっしゃるそうですが、その………たけ――白銀大尉も共に行動しているのでしょうか?」
 「タケルちゃんですか?そうですねぇ~~………」
 「タ、タケルちゃん――?」

あ…………なんかデジャヴ。
御剣さんのときも呼び方間違えたせいで――おかげ、かな?――すぐに打ち解けられたんだよね。
また間違えちゃうとは。ま、いっか~~。

 「私、タケルちゃんと幼馴染なんです。呼び方は昔から……」
 「なんと――そなたも武殿と幼馴染なのですか!?」
 「武殿っ!?」

おおぅ…まさかタケルちゃんが将軍様に武どのなんて呼ばれてたなんて………でも将軍様からしたら、私がタケルちゃんなんて呼んでるのもビックリなんだよねぇ~。

 「鑑さん――私、あなたとはとても仲良くなれそうな気がするのですが」
 「――私もそう思いました。すごく――」
 「ほほほほほほほ」
 「あはははははは」

それから私たちは、博士たちが戻ってくるまで談笑――っていうか、タケルちゃん自慢?みたいな話で盛り上がった。
話の途中で将軍様が、悠陽と呼んでくださいって言ってくれたから、私も純夏って呼んでくださいってお願いした。
そんなわけで、御剣さんのときと同じように悠陽さんとも仲良くなれた。
悠陽さんはタケルちゃんの話題になると将軍としての仮面が外れるのか、印象がガラリと変わるのには驚いたけど…

 「――またお話しましょう、純夏さん」
 「はい!」
 「では殿下。我々は一度横浜へ戻り、仕度を整えて参ります」
 「分かりました。マナさ――横浜基地の月詠中尉へは、こちらの方で伝えておきます故」
 「お願い致します。それでは――」

それから大急ぎで横浜に帰る道中、博士と今後の動きを話し合った。
時間が無いからという事で、悠陽さんからの昼食のお誘いを丁寧に断ったくらいだもん。
とてもすごく忙しくなりそうな予感…

 「悪いけど、訓練小隊への合流は諦めなさい。しばらく缶詰よ」
 「は~~い」
 「協力を取り付けられて良かったわ…これで向こうはフル稼働してくれるでしょうね」
 「ですね。こっちで試作してあったと、向こうで用意してもらうのを合わせれば、20日前後で完成すると思いますよ?設計は終わってますし、設備さえ整えば――」
 「アンタがそう言うなら信じましょ。しっかし――ギリギリねぇ………」

そう言った博士の顔はヤレヤレ…と困ったように見えるけど、その実、楽しんでいるみたい。
これからの事を考えたら、普通ならゲンナリしそうだけど……やっぱり博士ってスゴイかも…

 「来週辺りにトライアルやろうかしらね」
 「えぇっ!?………冗談ですよね?」
 「あら――読んでみたら?忙しくなるわ~~~」

ふふふ――と不敵に笑う博士。
ヤバイよ。この目は本気だよ…本当にやる気だよ、この人。読まなくたって分かるよ。
……私ダイジョブかなぁ~………タケルちゃん、私を護って――な~~んてね。ふふ――



午後 ◇横浜基地・市街地演習場◇ 《Side of 冥夜》


現在、我等207訓練小隊は市街地での戦術機訓練の最中である。
内容は模擬戦。相手は――撃震2機。ちなみに僚機は207小隊の吹雪5機。1機少ないのは、鑑が居ないためだ。
なんでも、香月副司令の特別任務でしばらく隊を離れるそうだ。

 『――03 (珠瀬)!動きを止めないで!!来てるわよっ――!』
 『り、了解!』
 『01 (榊)、援護……』

相手もXM3搭載型とはいえ、第1世代の機体に押されているのは甚だ遺憾ではあるが、撃震の衛士が我らの教官2人であるという事実を踏まえると、納得出来るであろう。
教官たちのエレメントは、まさに理想といえる程に機能している。隙を見つけられない………

 「榊!接近するのは危険だが、遠距離からの攻撃が効かぬ以上やるしかないぞ!!」
 『――何か考えはあるの!?』
 「考えという程のモノではないが…」

回線は友軍間ではオープンで固定しているので、そのまま軽く説明をする。

 『……のった』
 『そうだね。ボクも賛成だよ!』
 『わ、私もですっ』
 『いいわ。やってみましょう――』

全員の了承はもらったが…果たして上手くいくのか……いや、やる前から弱気になってどうする、御剣冥夜!
今までの厳しい鍛錬を乗り越えてきた、己と仲間たちを信じなくてどうする!!やれるはずだ、必ず。

 「ゆくぞ――!!」
 『『了解!』』

合図と共に散開する僚機たち。撃震とは思えぬほど機敏に動き回るアグレッサー。
つくづく、とんでもない衛士たちだ。そんな2人に師事できることを誇りに思う。――が、今は勝たせてもらう。

現状、敵機の場所は把握できている。
こちらは珠瀬の場所を知られてしまったので狙撃は使えない。斥候に出ていた鎧衣も発見され、榊と珠瀬の援護を受けなんとか踏みとどまっている状態だ。
私と彩峰は相手を振り切ってから、しばらく動かなかったので発見されてはいないはず。

 『02!――これ以上は抑えられない!限界よ!!』
 「了解!04、やるぞ!!」
 『ん――』

勝負は一瞬。3機が足止めしてくれている今しかない。
彩峰とタイミングを合わせて遮蔽物から飛び出し、突撃砲を斉射しつつ一気に接近する。
アグレッサー2機は榊たちからの十字砲火を受けながらも、互いに背を合わせ反撃してくるが、狭い場所で満足に動けるはずもなく、完全に足が止まった。
それを見計らった私は突撃砲を投棄して長刀を装備する。
やはり長刀のほうが、しっくりくる…彩峰は同じように短刀を装備し、互いに撃震へと斬りかかる――




――が………その寸前、撃震2機の周囲の地面が爆発した。




突然のことに対応が遅れる。
大量の土砂や瓦礫が舞い上がり、それらで視界が遮られてしまった。十字砲火を行っていた榊たちも状況を掴めぬようで、混乱した声が聞こえる。  
咄嗟にレーダーを確認したが、そこに移る機影の数に変わりない。状況が理解できぬが後にも引けぬ。
私は突撃の続行を決意した――

 (見えぬが居るはずだ――このまま斬る…!!)

長刀を上段に構え、水平噴射跳躍で砂埃の舞う中に突っ込み長刀を振り下ろそうとしたとき、前方から凄まじい衝撃が襲ってきた。
長刀を振り下ろす直前で、両腕を振り上げていたのが災いし、胴体部に衝撃をモロに喰らった。

 「くぅ――っ!?」

コクピット内もかなり揺さぶられたが、なんとかレバーを離さずに済んだ。
その衝撃に突き飛ばされるように、後方へ押し返される自機の姿勢を制御しようとするが……思いのほか衝撃が重く、思うように立て直せない。
そのまま砂埃の中から押し出され、視界が戻った私が初めに見たのは自機に密着する92式多目的装甲と、それを持つ撃震だった。

 『――良い連携だ。危なかったぜ』
 「タ、タケル!?」
 『おぅ』

接触したことで通信を入れてきたのか、タケルの顔が網膜に映る。

 『悪いな、冥夜』
 「く――」

タケルはニヤリと笑い、装備していた突撃砲を密着したまま発砲。こう密着されれば長刀など役に立たない。長刀を放棄して武装変更しようにも間に合うはずもない。
機関部、動力部、上腿部に被弾。致命的損傷、大破。
容赦無く打ち込まれたペイント弾が、私の乗る吹雪を染め上げた。

やられた……私の行動が完璧に予測されていたのかもしれない。それ故、タケルはあのような手段を取れたのだろう。

 「精進せねば………」

ふぅ――と息を吐き肩の力を抜く。
私を墜としたタケルは反転し、再び砂埃舞う中へ戻っていった。
実機の訓練に移行してから、およそ半月。目標としている背中は、まだ遠かった――



《Side of まりも》


よく思いつくものね…
完全に包囲され、下手をすれば撃墜されかねない場面だったのに、白銀大尉の機転の利いた行動により窮地を脱した。
追加装甲に搭載されている指向性爆薬を、対物で使うなんて普通は考えもしないでしょう?実戦でも滅多に使わない装備なのに、こんな使い方で日の目を見るなんて……
それにしても――私がアグレッサーを務めるのは今日が初めてではないが、この子たちの成長速度には相手をするたびに驚かされる。
ここまでハッキリと、日に日に成長していくのが見て取れるなんて、極めて稀。今までの私の教え子にはいなかった。

 『――すみません。思いつきに巻き込んじゃって』
 「いえ――おかげで助かったわ。接近戦で予想以上に粘られちゃったけど…」
 『彩峰ですからねぇ~~。仕方ないっすよ』

確かに……接近戦の御剣と彩峰、狙撃の珠瀬、状況判断の鎧衣、そして我の強い彼女たちを上手く纏め上げられる榊など、各々が分野ごとに突出している。
ここにオールラウンダーの鑑が加われば、小隊単位ではA-01に匹敵するだろう。つくづく、とんでもない教え子たちだ。
彼女たちはまだ知らないことだが、任官すれば戦友となるのだから、成長してくれることは素直に喜ばしい。

しかし、いかに腕を上げてこようとも、私も教官としてまだ負けるわけにはいかない。
不知火でのシミュレーションを増やしているとはいえ、撃震に搭乗していた期間のほうが長い。
スペック差に多少戸惑うことはあるが、今日は特に調子が良いし、白銀大尉とのエレメントは気持ちが良い。
エレメントを組むって決まったとき、ちょっと嬉しかったのは内緒。
伊隅大尉から不調で苦しんでいるとは聞いていたけれど、彼がおくびにも出さない以上、踏み入って聞くのは止めた方がいいだろう………

それよりも今は訓練に集中しないとね。

 「教え子たちには悪いけれど、勝たせてもらいましょうか――」
 『ははは――了解』

網膜に映る白銀大尉の笑顔に内心照れつつ、私は撃震を次の目標へ向かわせた。



夜 ◇帝都・帝国軍詰め所◇ 《Side of 沙霧》


先日の大チョンボ……今となっては良かったのかもしれんが。――アレから私は各方面に自ら赴き、殿下の御考えを伝えていった。
クーデターへの協力を申し出てくれていた、ほぼ全ての者たちが初めは、私の言葉を不信に思い難色を示していた。
しかし、殿下から直接通達を受け、最終的には全て説き伏せることが出来た。今はもう、戦略研究会という組織は存在しない――
極一部の者が、未だ私に起つように言ってくるが、それに応える気は毛頭ない。
殿下の御言葉に虚偽は無いのだ。あの偶然の謁見から間もなく、通達が出されたのが何よりの証拠となるだろう。実際に改変が進んでいるとの話しも聞く。

 「これも全て、あの男の存在あってこそか……」
 「白銀武ですか――」
 「あぁ…」

勤務時間はとっくに終了しているので、コーヒーを飲みながらユッタリとしている駒木中尉が私の呟きを拾った。

 「良かったのですか?」
 「無論だ。偶発的にとはいえ、殿下に直談判することが出来たのだからな」
 「それはそうでしょうが……」
 「――すまないな。君には本当に苦労を掛ける………」

計画を立ち上げる以前から、常に世話になっている部下に頭を下げる。すると彼女は、いつものように苦笑するだけだった。

 「ところで、少々お耳に入れたいことが――」
 「なんだ?」
 「戦略研究会に所属していた内の数名が、不穏な動きをしているとの情報が」
 「なんだと――」
 「密かに監視をつけてあります。斯衛の月詠中尉には報せておきました」

今度は私が苦笑する番だった。
私に指示を仰ぐ前に、中尉が迅速に対応したようだ。その対応も私の考えと同じなのだから、もう脱帽するしかない。
これほど優秀な人材が副官に就いてくれたのは、まさに僥倖だ。優秀な副官に恥じることがないよう、私も引き続き精進せねばならん。

 「ならば、しばらくは様子を見てみよう。何事も無ければ良し。そうでないときは――」
 「殿下の名の下に、これを裁く……ですか?」

ふふ――と小さく笑う中尉。彼女は心が読めるのではないかと思うことがある…
それはさて置き、事態がどう変わるか分からん以上、しばらく推移を見守る必要がありそうだな…


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