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No.25029の一覧
[0] 妹「声優になる」《連作?短編》[桃缶ゼリー](2010/12/21 16:13)
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[25029] 妹「声優になる」《連作?短編》
Name: 桃缶ゼリー◆22f731d9 ID:9599806f
Date: 2010/12/21 16:13
 事の始まりは中学三年生になった妹が進路希望調査票に《声優》と書いたことだった。
 妹は俺とは対照的に全国模試でもトップ50に載るくらい頭が良く、親父もお袋も自慢の娘だと近所に言いふらしていて、俺も親父もお袋もてっきりイイトコの進学校に進むのだとばかり思っていた。
 それが、中学三年生の7月、夏休み前になって声優になる、と表明したのである。
「高校には行かない。ボクは養成所に通うから」
 親父もお袋もひっくり返った、リアルで。いつの間にか妹の一人称はボクになっていて、なんでも次回のオーディション(個人でも受けられるそうだ)でボクっ娘キャラが課題になっているのでこれからオーディションまでは一人称ボクで過ごすらしい。一人称が僕とか俺の女の子って極稀に見かけるけど、大抵、違和感が物凄くて見ている側としてはどん引きなのだけれど、悔しいことに妹は声優志望者だけあって違和感なく一人称ボク娘を演じきっていた。おまけに容姿はかなり可愛いときたもんだ。一部の男子のツボをついたらしく、ただせさえ高かった人気が急上昇中らしい。知ったこっちゃないけど。
 最近、髪を切ってショートヘアにしたのも役に集中するためらしく、相当、本気のようだ。
 しかし当然、親父とお袋が「そうか声優か! 応援しよう!」と言うわけもなく、ひたすらそういった芸能活動で成功するのはごく一部だけということと、まずは高校に進学してからでも遅くはないだろう、など一般的な説得を繰り返したのだが、妹は歳相応に反抗期なのか一切耳を貸さず、そしてほとほと参った両親は俺に説得してくれと頼み込んできた訳なのだ。
 そして今に至る。戦場はリビング。俺は妹である理央(リオ)にさりげなく声をかけた。
「なあ、リオ」
「なに?」
 ソファーに寝転がり、声優雑誌を見ながら足をぱたぱたさせて答える。
「お前、声優になりたいんだってな」
「そうだよ」
「あのな」
「お父さん達から説得しろって言われたの?」
 先手を打たれて、俺はたじろぐ。
「言っとくけど、お兄ちゃんが何を言ってもボクは意見を曲げないよ」
「お前、本気なのか?」
「本気だよ。ボクは声優になるんだ」
 まるで少女漫画の主人公のような口調で言う。アニメの第一話に出てきそうな爽やかな台詞言いやがって。
「なるって言ってなれるほど世の中甘くないぞ」
「はいはい。そういうのいいから。お父さんにも散々言ったけど、甘くないってことは承知の上。ボクの人生なんだから、ボクの好きにさせてよ」
「お前な、何を」
「生意気なことを言ってるんだ、って?」
 先回りされて、またもやたじろぐ俺。
「心配してくれるのはうれしいけど、ボクはボクの道を進むよ。あ、お金なら自分で払うから。奨学金制度があるんだ。家もでていくよ。アルバイトしながら、声優を目指して勉強していくつもりだから」
 俺は呆れてものも言えなかった。
「自立するから干渉するな、ってか? アホか。未成年が一人暮らししてやっていけるわけないだろバーカ」
 バカという言葉に反応したのか、リオは雑誌を閉じて起き上がり、しかめっ面をこちらに向ける。
「なんだよ、知ってような口聞いて。お兄ちゃんだってまだ未成年じゃん」
「そーだよ。親の庇護の下暮らしてるごく平凡な高校生だ」
「偉そうに言うなよ。だったらなおさら説得力ないね」
「未成年ってのは権限が制限されてるんだよ。一人で暮らすだの何だのっつーのは成人してから言え。未成年のお前が言っても現実味ねえよ」
「お兄ちゃんは夢がないね。夢を追ってる人なら、そんなこと言わないよ」
「俺からすればお前は現実を軽く見過ぎだ。声優はそんな簡単になれるもんじゃないだろ?」
「努力すれば、なれるよ。そうやって人の足を引っ張るのは夢がないからだよ。ボクに嫉妬してるんだ」
 リオは眉をひそめて俺を見る。俺は少し安心した。リオは昔から妙にいい子で、なんというか子供っぽくないところがあった。
 けど、こんなに子供っぽい所があったとは。……と、感心してる場合じゃない。とりあえず、俺は親父達から課せられたミッションをクリアしないとな。
「お前さ、声優は倍率がすごいんだぞ? 生き残るためには汚れ仕事だってしなきゃいけないんだぞ?」
「知ってるよ。汚れ仕事だろうと何だろうと、する覚悟はあるもん」
「ほんとに?」
「ほんとだよ」
「じゃあ、エロい台詞やれって言われたらやるのか?」
 動揺したのか、リオの目が少し見開かれる。最近は一般アニメでもきわどいシーンや台詞があったりすることは俺でも知っている。
「……やるよ」
「おしゃぶりする台詞があったら、お前やるのか」
「はっ!?」
 リオの顔が一気に赤くなる。同時に軽蔑の目を向けてくるが、俺は平然と続ける。
「いや、だからあれだよ。男のあれを、こう、ちゅぱ……ってするやつ。あ、こんなことも知らないのか? 声優志望なのに?」
「し、ししし知ってるよ! バカにすんな!」
「で、やるのか?」
「…………や、やるよ。仕事は選べないもん」
「へぇー。じゃあ、ちょっとやってみてよ。今ここで」
「なっ……!」
 これは予想外だったのか、リオはかなり驚いているようだった。
「ば、ばかじゃないの? 何でそんなこと……へ、変態」
「はぁ? できないの? 本番でもそうやって恥じらって監督とか困らせるの?」
「うう……」
「何が本気だよ、全然本気じゃねーじゃん。おしゃぶりの一つも出来ないガキがオーディション受けたって予選落ちだよ、予選落ち。制作の人たちに迷惑かかるだけだな」
「こ、このっ……!」
 挑発的な俺の台詞に、リオは顔を、怒りと恥じらいからか、真っ赤にして手を振り上げる。
 しかし、その手は振り下ろされることなく、リオは一度深呼吸をして。
「出来るもん。おしゃぶり、くらい」
「ふーん。じゃあ、やってみてよ」
 腕を組んでそう言うと、リオは指を口にくわえて、視線を俺からそらしつつも、おしゃぶりをはじめた。
「ん……れろ、ん、ちゅ、れろ、ちゅうう、れろ」
「もっと激しく」
「……っ! ん、じゅるる! じゅるるるるっ! じゅる、れろ、じゅるるるるっ! じゅるるるっ!」
 指示されたとおり、リオは指をさらに過激にしゃぶる。
 目を閉じたら、本当にアレをしているように聞こえるだろう。経験ないからわからないけど。
「……も、もういいでしょ? これでボクの覚悟、分かってもらえたよね?」
「いや、まだだな」
「はぇ?」
 俺は首を横に振る。
「喘ぎ声」
「……!?」
「次は喘ぎ声だよ、早くやれよ」
「な、なな……」
 リオの顔はかなり引きつっている。
 まあ、実の兄にこんな要求をされれば普通はそういう反応するよな。
 だが俺はやはり腕を組んでふてぶてしく続ける。
「どうしたんだよ? わかんねーのか? 喘ぐんだよ、あん、やん、って」
「へ、変態! バカじゃないの!? そんなの出来るわけないじゃん!」
「は? 何で? オーディションで喘いでくださいって言われたら、お前やらねーの?」
「う、そ、それは」
「どうすんだよ。失格か? 辞退しますか?」
 リオは首まで真っ赤にさせて、
「や、やるよ!」
 頷いた。ソファーに腰をかけて、息を大きくすって、
「や、あぁん……あぁ、んん、ふぅ……ふ。……んくぅ……ぁ、んっ」
 淫靡な声を出し始めた。
「聞こえねーよ。もっと大きく」
「……。あん! あ、やぁ、はぁぁん! ん、んー! やぁ! あぁぁぁん!」
「ふーん」
 俺は黙って妹の喘ぎ声を聞いた。リビングで。
「……ね、ねえ。もういいでしょ? ボクが本気だってことわかったでしょ?」
「なんか今の違うんだよな」
「え?」
「今の喘ぎ声、作ってるっていうか、自然な感じがしなかった」
「な! そんなこと」
「オナニーしろよ」
「……!?」
 リオの顔が完全に固まった。俺は大声でもう一度言う。

「オナニーしろよ! 今、ここで、俺の前で!」

 シン、と沈黙が流れた。
 リオは金魚みたいに口をぱくぱくさせて、やがて再び顔を真っ赤にし、
「お、お兄ちゃんの変態! バカ、死ね!」
 クッションを投げつけてきた。俺は軽く受け止めながら
「んだよ、お前の覚悟ってそんなもんか? 声優になるんじゃねーのか? 俺を説得しねーと親父達も納得しねーぞ。だから早くオナニーしろよ! オナニー!」
「い、嫌だ! そんなことしてまで……な、なりたくない! もういい! 死ねバカ!」
 最後は涙目になりながら、リオはリビングを飛び出していった。
 俺はため息をついて、歩き、ソファーに座り込んだ。


 それから、リオは声優志望を撤回し進学することに決めたらしく、今は塾の夏期講習に通っている。親父とおふくろには「やっぱり高校に入ってからじっくり考える」と言ったようだ。さすがに兄に自慰を強要されたから諦めた、とはいえなかったようである。
 その後の俺とリオの関係はかなり最悪で、かなり露骨に避けられている。まあ、どうでもいいさ。それですむなら安い代償だと思うことにする。
 ふと、ある日、夏休みだというのに予定がなくだらだらとネットサーフィンをしていると、リオが通いたいといっていた養成所のPR広告があった。
 オーディションの合格実績や、カリキュラムなどが小奇麗にまとめられていた。
(なるほど、これは引っかかるよな)
 この養成所は今、とある大手チクリサイトで大いに叩かれている。何でも、この実績はほとんどが枕営業によるもので、かなり悪どい養成所として関係者からリークされて炎上している真っ最中なのだそうだ。
 まもなく被害届を出す、という書き込みがあり、祭りは最高潮になっていた。
 おそらく、近いうちに新聞沙汰になるだろう。同時に声優という職業はかなり風当たりが悪くなると容易に予想できる。
 俺は思う。
 もし、この不祥事が公になり声優という職業が叩かれても、それでもリオが声優を目指したいというのなら、俺は全力で応援しよう、と。
 実際、リオがかなり声優に入れ込んでいて、発声練習やら、演劇部に頼み込んで演劇の練習やらをやっていたことは知っていた。
 ――お兄ちゃんには夢が無いね。
 リオの声が頭の中に響く。ああ、そうさ。俺には今のところ夢はない。将来なにするかも決まってないし、ダラダラと毎日を過している。
 けど、もしもお前が本気で声優になりたいって言うんなら、俺はお前の一番のファンになってやる。お前が夢に向かって活躍することが、俺の夢になるんじゃないかな、と思うんだ。
 そうだ、マネージャーってのもいいかもな。俺がマネージャーなら枕なんて絶対させねーぞ。
 ……まぁ、現状、例のオナニー事件から一切口をきいてくれなくなったので、それは現実的ではないか。
 俺は背伸びをして、マンガでも読むか、と棚に手を伸ばしたところでスカイプのチャットが届いた。
「誰だ?」
 見ると、それはリオからのチャットだった。
 そこには、一言だけこう書いてあった。
「ご飯できたから一階に降りてこい、オナ兄」
 どうやら、しばらくは不名誉なあだ名で呼ばれることになりそうだ。
 俺は苦笑いしながら、飯を食うべくリビングへと向かうのであった。


終わり
 


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