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No.24918の一覧
[0] 5/19外伝公開(sage更新)ヤンデルイズ(ルイズヤンデレ逆行?もの2スレ目)【完結】[YY](2011/05/19 20:19)
[1] 第九十八話【禁忌】[YY](2010/12/21 17:25)
[2] 第九十九話【憤怒】[YY](2010/12/17 20:56)
[3] 第百話【黒幕】[YY](2010/12/21 17:29)
[4] 第百一話【探索】[YY](2011/01/14 18:02)
[5] 第百二話【蜜月】[YY](2011/01/09 00:03)
[6] 第百三話【金髪】[YY](2011/01/21 17:56)
[7] 第百四話【序曲】[YY](2011/02/03 17:31)
[8] 第百五話【誘拐】[YY](2011/02/03 17:39)
[9] 第百六話【崩壊】[YY](2011/02/08 17:23)
[10] 第百七話【再怪】[YY](2011/02/21 17:45)
[11] 第百八話【忘却】[YY](2011/02/22 17:35)
[12] 第百九話【狂王】[YY](2011/03/08 19:07)
[13] 第百十話【不殺】[YY](2011/03/08 19:09)
[14] 第百十一話【不眠】[YY](2011/03/16 00:15)
[15] 第百十二話【事実】[YY](2011/03/28 23:39)
[16] 第百十三話【動乱】[YY](2011/05/01 06:34)
[17] 第百十四話【愛比】[YY](2011/05/01 06:35)
[18] 第百十五話【先住】[YY](2011/05/01 06:36)
[19] 第百十六話【爆炎】[YY](2011/05/01 06:36)
[20] 第百十七話【激怒】[YY](2011/05/01 06:37)
[21] プロローグにしてエピローグ[YY](2011/05/01 06:38)
[22] 外伝1【それからのとある日常】[YY](2016/01/03 22:00)
[23] 外伝 【END EPISODE ~終章~】[YY](2011/05/19 20:14)
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[24918] 第百一話【探索】
Name: YY◆90a32a80 ID:a8e2e792 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/14 18:02
第百一話【探索】


「……ふぅ」

 整った金髪が湿るほどに汗をかいていた少年は一息を吐く。

 目の前には青銅によって出来た青銅像とも呼ぶべき像が一体。

「こんな感じで良いだろうか。“彼”の服は何処を探しても似たものさえ見つからないから記憶だけが頼りだったが……」

 金髪にして“隻腕”の少年は自らの魔法“錬金”によって公表されていない戦争の英雄像を作りあげていた。

 “誰も知らない戦争の英雄”はこの戦争において文字通り多大な貢献と活躍を果たした。

 トリステイン軍はその彼の功績によって救われたと言っても良い。

 だが、それが表に大きく公表されることは無い。

 何故ならその彼とは平民だからだ。

 誇り高い貴族より高い戦果を魔法も使えない一平民が上げたという話は到底信じられぬものであるのと同時に一般的な貴族にとっては認めたくないものでもある。

 今回の事も“彼”の事は戦争に参加していた一部の人間しか知らない。

 それがこの貴族社会というものだと幼い頃から学んできた。

 だが、いざ自身の知っている人間にそれを当てはめられてみるとこんなに苛立たしいことは無い。

 退陣の指揮を執ったウィンプフェンは外では大変な英雄扱いだが、彼がしたことは人員の配置と退却指示だけだ。

 評価されるべきではあれど、真に英雄と評価されるべき人間は別にいる。

 ここ数日、金髪の少年……戦争で武勲を挙げ勲章まで授与されたトリステインが誇る元帥グラモンの四男、ギーシュ・ド・グラモンの心はさざ波だっていた。

 自分達が生きてここに帰って来れ、勝利国となったのは誰のおかげだ?

 無論ここまで辛い戦いを戦い抜いてきた兵、指揮を取った指揮官、突然のガリアの協力もその理由には挙げられる。

 だが、一番の理由は別だろう?

 多くの国にとって重要な人物は、勝利を喜ぶにもっとも相応しい前線の兵達は“彼”によって生きてアルビオンから帰国できた。

 “彼”は殿という最低最悪の任を押し付けられ、立派にそれを果たしてみせやがったのだ、こんちくしょう。

「そうだこんちくしょう……!! 君は馬鹿だサイト、何故今君はここにいないんだ。こうやって生きて帰ってこれても、その生きて帰れるようにしてくれた君がいなきゃ何も意味が無いじゃないか!!」

 ギーシュはその場で膝を折って額を地面に擦りつけ、何度も片腕の拳で地面を殴りつける。

 トリステイン魔法学院。

 自分の通う魔法学院の広場で黙々と作り続けていた青銅像が完成したのと同時、堰を切ったようにギーシュの中に喪失感が襲い掛かってくる。

 親しい者が死んでいくという喪失感。

 戦争なんだからという免罪符を使えば、成程とそう思うことも出来るだろう。

 だが、戦争だからといって命を奪い奪われる事への正当性は全く無い。

 自分も戦争に参加した身で、その杖で幾人も敵を屠って来た。

 そんな自分がこう思うことなどおこがましいのかもしれないが、それでも思わずにはいられない。

 何故戦争で人は死なねばならないのか、と。




***




「むぅ……!!」

 アニエスは悩んでいた。

 戦争が終わった今、アニエスにはこれ以上トリステイン魔法学院に逗留する理由が無い。

 もともと、戦時中の手薄となる魔法学院の守備隊としての臨時防護が任だったのだから当然といえば当然だ。

 アニエスの手には今、アンリエッタからのその旨と次の任務を伝える旨の手紙があった。

 本来ならばアンリエッタに忠誠を誓ったこの身はすぐにでも女王の元に馳せ参じ、任を全うしなければならない。

 それが、大恩あるアンリエッタへの誠意と忠誠でもある。

 だが、今この魔法学院を離れるという事は、今もって継続中の別の戦い……ある意味でこちらも戦争と化している戦場、“コルベール争奪戦”から外れることを意味する。

 自分は一歩も二歩も出遅れているのに、ここで間を空ければ一気に突き放され戦線復帰すら危ぶまれる。

 折角先日は奴を落とすために用意した茶を気に入る言葉をもらったというのに、それも意味をなさなくなってしまう。

 次の策として役立ちそうな書物も、メイド達から聞いてメイド伝に『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』という本を入手していたのだが、読む暇も無かった。

 アニエスは歯噛みする。

 次の任務はよりのもよって遠征なのだ。



『アルビオンに赴き、“行方不明”となっているラ・ヴァリエール公爵家三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとその使い魔の探索を命じる』 



 手紙にはそう記されていた。

 折角今、争奪戦に密かに参加しつつあった一人が里帰りだとかでいないというチャンス時に、自分もまたこの場を離れなければならないとは。

「どうかしたのですかな?」

「どうしたもこうしたも無い、陛下からの新しい任……うわあっ!?」

 アニエスは何時の間にか背後にいたコルベールに驚き慌てふためいた。

「すみませんな、驚かせるつもりは無かったのですが、何やら難しい顔で私の部屋の扉の前に居られるもので」

 どうやらアニエスはコルベールの部屋の前につっ立ったまま考え込んでいたらしい。

「いやっ!? これはその、なんというかだな……!!」

 身振り手振りを大きく動かしアニエスは何とか弁明しようと試みる。

 が、慌てすぎたのもあって、手にしていた任務内容の手紙を落としてしまう。

 それを、コルベールが拾った。

「これは……探索命令、ですか」

「う……」

 極秘任務で無い以上、任務自体を知られることにさほど大きな問題は無い。

 もっとも王宮、それも女王からの書簡によっての任務状を関係ない他者に見られるというのはあまり良いとは言い難いが。

 だが、アニエスの取り乱し様を余所に、コルベールは難しい顔をしながら任務状をアニエスに返すと、

「ミス、もし良ければ私も同行させては貰えないだろうか。なに、人探しの人員は多い方が良いだろう」

 真面目な顔でそう言って来た。

 今のアニエスにとっては願ったり叶ったりである。

 むしろ他の奴らよりリードするのに好都合になるのだが、疑問も残る。

「それは何故だ?」

「……私の教え子、生徒“達”の無事を確かめたい。ミス・ヴァリエールとサイト君に生きて再会したいのです」

 真摯に答えるコルベールの瞳は、頭頂部よりもある意味純粋に輝いていて。

 人の為に、と思わせるその顔は、遠い昔、何所かで見たことがあるような、そんな懐かしさをアニエスに与えた。

 アニエスはその懐かしさ……既視感とも呼べるそれを思いだそうとしてコルベールを見つめ、コルベールもまた連れて行くのにあたっての見極めだろうと真摯にアニエスを見つめ返し、二人はそのままややしばらく見詰め合っていたのだが、

「あーっ!?」

一人の……いや、

「ミスタ……?」

 二人の乱入者によってそれを邪魔される。

 邪魔者の一人、キュルケはコルベールを訪ねようとして見つめ合う二人を見つけ憤慨した。

 最近いつもつるんでいるタバサが急な帰省をすることになって特に暇を持て余していた。

 その分をコルベールとの進展時間に充てようと思ったのだがイキナリの抜け駆け現場の目撃だ。

 抜け駆けはするのは良くてもされるのは許せない、それがツェルプストー家の家訓みたいなものの一つだった。

 だからこそ彼女の家はヴァリエール家との恋人を取り合う不倶戴天とも言える敵同士にまでなったのだが、家の事を別にしても、未だ少女の域を出ないキュルケにとって、それは自身のプライドをくすぐられることだった。

 彼女の中に流れる血筋含め、彼女は恋に恋することが生きている実感を得られる最高にして最大のスパイスなのだ。

 まして抜け駆けという彼女の専売特許を盗られたとあっては、心沸き立たないはずが無い。

 対して、一緒にゼロ戦を整備……もとい“改良”していたエレオノールはコルベールの戻りが遅いので見に来てみれば一番確率の低いはずの女と見詰め合っているではないか。

 先約の自分をすっ飛ばして、これはとんでもない裏切りに等しい行為でもある。

 エレオノールはルイズのこともあって、最近ではパイロット無しで戻って来たゼロ戦を何かに憑かれたように整備していた。

 エレオノールとて、その小さな胸をルイズのことで痛めていた。

 無事を信じたいが、彼女の冷静にして上等な頭は確率論と非情な答えばかり突きつけてくる。

 それ考えないように一心不乱に整備をしていると、いつしかそれにコルベールも付き合うようになった。

 そこにいるのが当たり前のように、コルベールはエレオノールの手伝いをしていた。

 それにエレオノールはどれだけ救われただろうか。

 ふと手が止まって嫌な考えが頭をよぎった時は、涙が出そうにもなった。

 だが、そんな時は決まってコルベールが声をかけ、暖かく包み込んでもくれたのだ。

 エレオノールはそれに救われ、彼女の心はもはやそれ無しでは落ち着かないほどに不安定にもなっていた。

 それが無ければ気丈な自分が保てないほど、依存し始めていると言っても良い。

 彼女にとってゼロ戦 = コルベールであるのと同時に、彼と行うゼロ戦弄りが精神安定剤にもなっていた。

 同時に、彼女の心の想いも彼が包み込んでくれるたびに強くなっていた。

 そんな二人にコルベールは、



「丁度良かったお二人とも。私はこれから生徒達を探しにアルビオンへ向かおうと思っています。お二人はどうなさいますか?」



 答えがわかりきっているだろう質問をした。




***




 ギーシュは汚れるのにも構わず広場で仰向けになって空を見上げていた。

 空は果てしなく広く、青い。

 あの戦争中のような、爆炎によってどんよりとした灰色の空は何処にも無い。

 青い空は平和を表しているようだった。

 ツンツンと彼の使い魔であるジャイアントモール、巨大なモグラのような出で立ちのヴェルダンデが鼻先で心配そうに突いてくる。

「……すまないヴェルダンデ。大丈夫だよ」

 その使い魔の優しさにギーシュは空を見つめたまま頭を撫でる事で答える。

 だがギーシュの心はかつて戦時中に見たあの曇り空のように一向に晴れない。

 そんな、鬱葱としたギーシュの顔を覗き込む光る頭……もとい“火”の担当教諭が一人。

「どうしたのですかな? こんなところで寝ていると風邪をひきますぞ?」

「ああ、ミスタ。世界はこんなにも平和で穏やかなのにちっとも僕の心は晴れないんです。風邪ですか? いっそこんな鬱々として空虚な気持ちを延々と持ち続けるなら酷い風邪をひきたいものです」

 ぞろぞろと何人か引き連れているらしい教諭の声が聞こえるが、今のギーシュの耳にはたいして残らない。

 そういえばさっきもモンモランシーと似たような会話をしたような気がするな、とは思ったが完全には思い出せなかった。

 それだけぼうっとしていて、何も考えたく無かったということだ。

「そんなことを言ってはいけませんぞ。立派な像ではないですか。きっとサイト君も喜びます。何だったら本人に聞いてみれば宜しいでしょう」

 ガバッとギーシュは起き上がる。

 今の言葉にカチンと来たからだ。

「ミスタ・コルベール!! サイトはもう……!!」

「死んでいると? 彼を大事に思う君がそんなことで良いのですかな? 私はこれからアルビオンに渡って“遅刻”している“教え子達”を探しに行くつもりですが君は諦めていると?」

「っ!? そ、そんなわけ……そんなわけありませんよミスタ!! 僕も行こうと思っていたところです!!」

 ギーシュの、死んだような目に光が戻る。

「では、一緒に向かいましょう、“彼ら”を探しに」

 コルベールは優しい、先導者の顔でギーシュに微笑んだ。


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