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No.24918の一覧
[0] 5/19外伝公開(sage更新)ヤンデルイズ(ルイズヤンデレ逆行?もの2スレ目)【完結】[YY](2011/05/19 20:19)
[1] 第九十八話【禁忌】[YY](2010/12/21 17:25)
[2] 第九十九話【憤怒】[YY](2010/12/17 20:56)
[3] 第百話【黒幕】[YY](2010/12/21 17:29)
[4] 第百一話【探索】[YY](2011/01/14 18:02)
[5] 第百二話【蜜月】[YY](2011/01/09 00:03)
[6] 第百三話【金髪】[YY](2011/01/21 17:56)
[7] 第百四話【序曲】[YY](2011/02/03 17:31)
[8] 第百五話【誘拐】[YY](2011/02/03 17:39)
[9] 第百六話【崩壊】[YY](2011/02/08 17:23)
[10] 第百七話【再怪】[YY](2011/02/21 17:45)
[11] 第百八話【忘却】[YY](2011/02/22 17:35)
[12] 第百九話【狂王】[YY](2011/03/08 19:07)
[13] 第百十話【不殺】[YY](2011/03/08 19:09)
[14] 第百十一話【不眠】[YY](2011/03/16 00:15)
[15] 第百十二話【事実】[YY](2011/03/28 23:39)
[16] 第百十三話【動乱】[YY](2011/05/01 06:34)
[17] 第百十四話【愛比】[YY](2011/05/01 06:35)
[18] 第百十五話【先住】[YY](2011/05/01 06:36)
[19] 第百十六話【爆炎】[YY](2011/05/01 06:36)
[20] 第百十七話【激怒】[YY](2011/05/01 06:37)
[21] プロローグにしてエピローグ[YY](2011/05/01 06:38)
[22] 外伝1【それからのとある日常】[YY](2016/01/03 22:00)
[23] 外伝 【END EPISODE ~終章~】[YY](2011/05/19 20:14)
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[24918] 第百十話【不殺】
Name: YY◆90a32a80 ID:0f7e5018 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/08 19:09
第百十話【不殺】


 蒼い髪の少女が、ただぼうっと床を見つめてベッドに腰掛けている。 

 彼女の身の丈には不相応な、大きなシングルベッドが一つとテーブルセットが一組あるだけの、他には何も無い一室。

 窓は一箇所、開けばバルコニーとなっているが、それだけだ。

 比較的高い位置に存在するこの部屋のバルコニーからでは、外の空気を吸うことは出来ても脱出することは叶わない。

 杖があればまだ対処のしようはあったが、“あの男”がそれを許す筈もなく、自分は戦う術の一切を奪われている……肉体を除いて。

 だが、その“自身の体”を使ったメイジらしからぬ戦いも、“あの男”を驚愕させることは出来たものの、倒すには至らなかった。

 少女、タバサは“あの時”の事を回想する。




***




 事の始まりは、彼女が最も信を置く腹心とも呼べる存在……ガリア東薔薇騎士団のバッソ・カステルモールからの報告だった。

 それはジョゼフがオルレアン公夫人……タバサの母親をとうとう“不要”として“処分”する方針らしい事を内々に進めているというものだった。

 かつて薬によって心を壊された夫人は、今もって“人形”をタバサと思いこみ、大事に抱え、本物の娘であるタバサ……否、オルレアン夫人とジョゼフの弟シャルルとの間の娘、シャルロット・エレーヌ・オルレアンこそを回し者と思い込むようになった。

 故にタバサは、元は“人形の名前だった”タバサを自らの名として語り、その胸に“いつか”を刻み込んで生きてきた。

 しかし、“いつか”とは言っていられない事態が近づいてきた事を報告によって知ったシャルロット……いやタバサは、ジョゼフ打倒を大幅に前倒ししなければならない事態に追われた。

 母を助ける一心で生きていた何年もの月日が、このままでは無駄になってしまいかねない。

 タバサは藁にも縋る思いだった。

 そんな時、彼女は希望の光を“二つ”見つけた。

 それは希望というには小さい……いや、ただ武器にはなるという程度のものでしかない。

 それでも、彼女にとっては可能性が僅かでもあるならそれに縋りたかった。

 一つは、彼女の学友の使い魔だった。

 彼は伝説の系統……“虚無”の使い魔の一人、ガンダールヴであるらしい。

 以前にも考えた事があったが、ガンダールヴと自分が知る物語の中の勇者、“イーヴァルディ”とは似通った点が多かった。

 その事から、彼はイーヴァルディではないか、また見た目が“平民”ならば相手も油断するのではないかとの策を考えたことがあった。

 当初は何も関係の無い人間を巻き込むのは憚られるとその思考を捨てていたが、切羽詰まった状況ではやむをえない。

 彼女は行動を起こし、“使い魔”の協力を求めようとしたが……それは失敗に終わる。

 下手をすると、彼女は憎い仇に殺される前に、“悪魔”に息の根を止められる所だった。

 これは比喩でもなんでもない。

 北花壇騎士として幾たびも“死”を匂わせる任務をこなしてきたが、“アレ”はまるでレベルの違うものだ。

 タバサは助力を請うどころかその時自分の命さえも諦めかけた。

 咄嗟の機転が相手に効果があったから良かったものの、そうでなかったら確実にジョゼフへ一矢報いる前に棺桶の中だったに違いない。

 運良く事なきを得たタバサは、使い魔の事は諦め、もう一つの頼みの綱へ向かった。

 元々、ダメ元ではあったのだから、助力を得られなかった事自体にはそれほど気落ちしなかったのは救いでもあった。

 思考を切り替え向かった先は魔法学院の“火”の担当教諭だった。

 彼は強い……タバサは偶然目撃した情報と、彼の挙動からそれを悟っていた。

 魔法もさることながら、彼は間違いなく肉体を使った“武”に長けているといえる。

 そしてそれは自分には無い“武器”だった。

 もとより、戦力的に不利なこちらが取れるのは奇襲のみ。

 なれば“無い筈の武器”を揃えられるのはこの上無いワイルドカードとなる。

 タバサは教諭に頼み込み、一度は断られたものの、どうにか指導を受ける事を許された。

 だが、この時の彼の言葉が、最終的に彼女を失敗させる。



『無闇に多用しないこと、力を誇示し人道から外れた道……とりわけ人を“殺める”ような行為に利用しないことを約束して下さい』



 彼の言ったこの言葉に、当時のタバサは応えなかった。

 だが、その言葉は深く彼女の中に根付いていた。

 正直、本当に……本当に惜しい所まではいったのだ。
 
 ジョゼフの前に謁見する際には、杖を奪われ簡易な身体検査を受ける。

 向こうも自分が良い感情を持っていない事は承知しているのだろう。

 だが、どんなに検査を受けようと、“肉体の技能”は身体検査ではわかりえない。

 この日の為にタバサはいくつも用意を重ねてきた。

 自分が謁見に入ると同時、外ではカステルモールが騒動を起こし、場を混乱させてもくれた。

 一瞬の動揺を突き、素早くジョゼフに近寄り、顎への的確な一撃を当てる。

 小柄な体の一撃と侮るなかれ。

 全身の“伸び”を生かした下から突き上げるような一撃はそれそのものが凶器になりうる。

 加えて、タバサは自身の拳が壊れるのも厭わず、“マントの留め具”を拳の中で握っていた。

 拳の破壊力もそれだけで跳ね上がる。

 ジョゼフは背中から倒れ、タバサは即座に馬なりに飛びかかる。

 この日の為に、タバサは“歯”を削って来ていた。

 左右の奥歯、上下四本の歯をとりわけ鋭利にし、魔法は一切使わず歯の強度も何度か確かめた。

 火の教諭の教えはある意味恐ろしい物でもあり、メイジとしての戦い方ばかりを磨いていた自分には勉強にもなった。

 それは魔法には生活面での利便性と攻撃面があるように、人体もまた同じであるというもので、まさに衝撃でもあった。

 “体の運び方”一つで、やりようによっては自分より重く、体格の大きい相手でも魔法を使わずに無力化出来る。

 “考え方”と“体の使い方”で、あらゆる戦局を有利に進める事が出来るという“個人講義”は、タバサの中で革新的だったのだ。

 ただの学院生徒、花よ蝶よと育てられた貴族なら、そんな戦いは美しく無いと一笑に付す者もいるかもしれない。

 しかし、“死”を匂わせる程の任務をこなした事のあるタバサにとっては、美しいか美しくないかだけで戦法を狭めるのは愚か以外の何者でもない。

 “そんなこと”など言ってはいられないのだ。

 だからこそ自分はスピードを生かした“暗殺じみた”技術を磨いてきた。

 だが自分も視野が狭かったと言わざるを得ない。

 環境故の仕方ない面もあるが、飽くまで“メイジ”としての戦い方で工夫を凝らしていたのだから。

 だが、彼はこれほどの力を持ちながらそれを無闇に振るうことはせず、他の者にもそれを望まない。

 そう考えた時、この人がどれだけ尊い人なのか、とタバサは思うようになっていた。

 だからだろう。

 彼に教わり、彼の考え方を真似たやり方で、ジョゼフをまさに殺そうとしたその時、彼のあの言葉を思い出してしまったのだ。



『無闇に多用しないこと、力を誇示し人道から外れた道……とりわけ人を“殺める”ような行為に利用しないことを約束して下さい』



 タバサはジョゼフの喉に噛みつこうとしていた。

 いや、噛みついてはいた。

 このまま顎に力を込めれば恐らく喉を引き裂ける。

 こちらも歯がおかしくなるかもしれないが、もとよりそれは覚悟の上だ。

 だが、あの“優しい先生”の言いつけを破る覚悟は、残念なことにタバサはしていなかった。

 考えないようにしていただけかもしれないし、ギリギリまでは気付かなかったのかもしれない。

 だがどちらにしろ、土壇場でタバサは気付いてしまった。

 この行為は、先生との約束を……期待を裏切る行為だと。

 いつしか、優しい先生を亡くなった父に重ねる事があった。

 父の仇とも思った相手に、“父のような男性”から咎められるであろう事をしようとしている自分。

 そこに迷いが生じてしまった。

 もしかしたら先生は事情を聞いて咎めずにいてくれるかもしれない。

 それでも、一度少しでも迷ってしまったタバサは、絶好の好機を……これ以上無く、そして恐らくこれから二度と起きない好機を、逃してしまった。


「……噛み切らないのか」



 何故だか、とても残念そうな声だけが、タバサの耳に残った。




***




 あれからどれだけ経っただろうか。

 自分の迷いのせいで、全てが水泡に帰してしまった。

 自分や母の為に騒ぎを起こしてくれたカステルモールは無事だろうか。

 母はまだ無事だろうか。

 思考は巡るものの、考えはいつも一箇所に帰結する。



 本当に自分は殺さなくて良かったのか。



 その答えが知りたくて、タバサは今日も一日思索に耽る。

 元より、何も無いこの部屋で出来ることなど思索に耽るかバルコニーから飛び降り自殺するかの二択程しか無い。

 だから、決して“一人では見つからぬ”その答えを思索し、今日も一日を無駄に終える。

 昨日も一昨日も……ここに軟禁されてからずっとそう過ごしてきた。

 これからも何かに利用されるか殺されるまではずっとそうなんだろう、そう思っていた。

 急に扉が開いて一人の少年が放り込まれて来るまでは。

「うわっ!? 何すんだよ!! まだ質問にも答えてもらってねーぞ!!」

 その少年は意外な事にタバサも良く知る少年だった。

「おい!! 聞いてんのか!? クソッ!! 鍵締めやがったな!!」

 その少年はかつて自分が助けを求めようとした平民であり、

「どうすっかなぁ……ん?」

 虚無の使い魔ガンダールヴであり、

「女の子? ……君もここに閉じこめられてるのか?」

 あの極限まで“死”を感じさせられたある意味元凶でもある。

「おーい? 聞いてるー?」

 何故彼がここにいるのだろうか。

「おーいってばー」

 まさか“彼女”がここに来ているのだろうか?

「もしもーし」

 だとすれば……ヤバイ。

「返事してくれよぉ」

 “彼女”が、彼と二人きりで部屋に居るという事実を知ったら、とんでもない事になる。

「……何故、貴方はここにいるの? 貴方の主は?」
 
「お? やっと反応してくれた。てっきり喋れないのかと不安になっちまったぜ」

「いいから質問に答えて。早く」

 早くしないと取り返しがつかないことになりかねない。

「な、何だよ、やっと口聞いてくれたと思ったらいきなり尋問かよ。主って何だ? あ、そういや俺使い魔、なんだっけ?」

「そう。貴方は魔法学院の女生徒、公爵家の娘でもあるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔。その貴方がどうしてここに?」

「わかんねぇ」

 サイトは自分でも不思議そうにしていた。

「……どうして?」

「夜寝ていて、気付いたら拉致されていた。何を言ってるのかわからねーと思うけど俺も何が起きたのかわからなかった。でも尻は護れて良かった」

 どうにも要領が得られない、そうタバサが思っていると、

「君、使い魔云々の事知ってるって事は俺の事知ってる……んだよな? 悪い、俺どうやら記憶喪失らしいんだ」

 その答えと共に爆弾を投下した。

 万一彼女にこれを自分の責任されてしまっては今度こそ彼女にターミネートされてしまう。

 ただでさえ彼と二人きりでいるという事は危険であるのに、その彼は記憶喪失ときた。

 一体自分に、この大きなシングルベッドが一つとテーブルセットが一組あるだけの、他には何も無い一室でどうしろというのだ……ベッドが一つだけ?

 タバサに最悪の予感が奔る。

 ベッドが一つしか無い部屋に男女が一組。



 誤解される要素しかない!?


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