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No.24886の一覧
[0] 「とある金髪と危険な仲間達」【とある魔術の禁書目録 TS 憑依?】[カニカマ](2012/01/31 15:53)
[1] 第零話「プロローグ」[カニカマ](2011/04/28 14:54)
[2] 第一話「私こと藤田 真はまだ元気です」[カニカマ](2011/04/28 14:56)
[3] 第二話「ファーストコンタクト」[カニカマ](2011/09/08 00:08)
[4] 幕間1「フレンダという名」[カニカマ](2011/09/08 00:09)
[5] 第三話「Nice Communication」[カニカマ](2010/12/12 07:46)
[6] 第四話「とある奴隷の日常生活」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[7] 第五話「今日も元気に奉仕日和」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[8] 第六話「ルート確定余裕でした」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[9] 第七話「  闇  」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[10] 幕間2「私の所有物」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[11] 幕間3「『道具(アイテム)』は闇へ……」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[12] 第八話「この台詞二回目ですね!」[カニカマ](2011/04/28 15:02)
[13] 第九話「暗部の常識? 知らぬぅ!」[カニカマ](2011/09/08 00:16)
[14] 第十話「『俺』の生き方は『私』が決める」[カニカマ](2011/09/08 00:18)
[15] 幕間4「知らぬ所で交錯するっていう話」[カニカマ](2011/04/28 15:04)
[16] 第十一話「原作キャラ可愛すぎです」[カニカマ](2011/04/28 15:05)
[17] 第十二話「友達が増えたよ!」[カニカマ](2011/04/28 15:06)
[18] 第十三話「来てしまった今日」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[19] 第十四話「とある金髪の戦闘行動(バトルアクション)」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[20] 第十五話「幻想御手と無能力者」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[21] 第十六話「話をしよう」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[22] 第十七話「電磁崩し」 幻想御手編 完結[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[23] 予告編『絶対能力進化計画』[カニカマ](2011/02/10 17:36)
[24] 第十八話「とあるお国のお姫様」[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[25] 第十九話「とあるお国のお友達」[カニカマ](2011/04/28 15:11)
[26] 第二十話「予想外」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[27] 第二十一話「やるしかない事」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[28] 幕間5「認めたくない過去、認められない未来」[カニカマ](2011/04/28 15:13)
[29] 第二十二話「フレンダですが、部屋内の空気が最悪です」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[30] 第二十三話「偽善」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[31] 第二十四話「覚悟完了」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[32] 第二十五話「最高の危機」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[33] 幕間6「それぞれの戦い・前篇」[カニカマ](2011/04/28 15:16)
[34] 幕間7「それぞれの戦い・後篇」[カニカマ](2011/04/28 15:25)
[35] 第二十六話「戦いの終わりに」『絶対能力進化計画』編 完結[カニカマ](2011/04/29 09:21)
[36] 第二十七話「お見舞い×お見舞い」[カニカマ](2011/05/23 01:07)
[37] 予告編『最終信号』編[カニカマ](2011/05/23 01:10)
[38] 第二十八話「復活ッッッ!」[カニカマ](2011/06/05 12:46)
[39] 第二十九話「俺、故郷に帰ったら結婚するんだ……」[カニカマ](2011/06/29 20:01)
[40] 第三十話「白と毛布とイレギュラー」[カニカマ](2011/07/16 15:41)
[41] 第三十一話「(話の)流れに身を任せ同化する」[カニカマ](2011/07/17 23:48)
[42] 第三十二話「朝一番」[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[43] 第三十三話「ミサカネットワーク」[カニカマ](2012/01/31 15:49)
[44] 第三十四話「逃げたいけれど」[カニカマ](2012/01/31 15:52)
[45] *「簡単なキャラクター紹介」*キャラ追加&文追加[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[46] 番外1「とある首輪と風紀委員」[カニカマ](2011/04/28 15:18)
[47] 番外2「転属願い届け出中」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[48] 番外3「二人のお馬鹿さんと一人の才女」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[49] 番外4「とある部隊の不幸体験」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[50] 番外5「宝物」[カニカマ](2011/04/28 15:20)
[51] 番外6「寝顔シリーズ」<『妹達』、佐天さん追加>[カニカマ](2011/06/25 16:11)
[52] 番外シリーズ1「『学園都市』の平和な一日・朝」[カニカマ](2011/04/28 15:21)
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[24886] 番外6「寝顔シリーズ」<『妹達』、佐天さん追加>
Name: カニカマ◆b465aa7c ID:500ae757 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/25 16:11
「寝顔シリーズ」



<麦野の場合>

「フレンダ、フレンダ~? いないの~?」

 自室から出た麦野はのんびりとした口調で呟くように言いながら眉を顰める。絹旗は佐天、初春と一緒にお出かけ。滝壺は近くに出来たケーキバイキングに食事をしに行っている。だから今日は自分とフレンダしかいないため、数少ないチャンスとして二人きりで出かけようと考えていたからだ。
 奴隷の癖に自分の考えを無視しようなんて、麦野にとってはこれとない屈辱であり同時に悲しくもある。別に滝壺や絹旗がいて嫌という訳ではないが、それでも二人きりで出かけたい事もあるのだ。だからこそ麦野は諦めない。
 先程までフレンダがいたであろうリビングへ向かう。が、リビングに入った瞬間視界に入った光景に、麦野は拍子抜けと言いたげな表情を浮かべた。

「いるんじゃないの。だったら返事しなさいよ」

 麦野の視界に入った光景は、ソファーからはみ出る様に出ている見慣れたフレンダの足だった。だらしなく投げ出されるようにソファーの端から飛び出ていて、本人が完全にリラックスしているのだという事が分かる。
 が、麦野にとってそこは問題ではない。いや、確かにリラックスしている奴隷というのも良いものであるし、それに投げ出されている足は生足でありそれがまた良いとも感じる事は出来るが、今はそれが問題ではないのである。今の最大の問題は自分の声を無視してだらけている事なのだ。と、麦野はわざと足音を立てて不機嫌さをアピールしながらソファーの正面へと回りこむ。

「アンタ、ご主人様の声を無視するとは良い度胸してる……じゃ……」

 さて、脅かしてやろうと意気込んだ麦野はそこまで言葉が出たものの、尻すぼみにそれは弱まっていく。そして麦野の声が聞こえた後に部屋に残った音は、静かな寝息のみだ。
 フレンダはソファーに寝転がって安らかな寝息を立てていた。そういえば昨日は絹旗に付き合って深夜まで映画を見ていたのだっけ? と麦野は記憶を辿る。大方絹旗が寝た後も映画が終わるまで見続けていたのであろうが、だからといって自分と二人きりで出かけられる時に限って寝るなんて奴隷に許されるのか? と、麦野は大きく溜息を吐いた。

「こんのお馬鹿。さっさと起きなさいよ」

 人差指で眠っているフレンダの頬をぷにぷにと突く。相変わらず手入れも殆どしていない癖にこの艶と張り……餅肌め。と麦野は八つ当たり気味に心の不満をぶつけた。が、それをやってもフレンダが起きる気配は無い。それどころか、「ふにゃっ」と、人懐っこい笑みを浮かべて手足を完全に投げ出した。これはいつまで経っても起きないだろう。無論、麦野が本気になって声の一つも上げれば切羽詰まった様子で起きるのは間違いないのだが、麦野は先程フレンダが浮かべた笑顔で毒気を抜かれてしまっている。

「ったく……仕方ない」

 そう言いながらソファーに寄りかかりながら床に座る。そしてフレンダの顔を見て笑顔を浮かべた。

「たまにはこういうのも良いかもね」

 そう言って目を瞑る。自らが大切だと思える友達と同じく、夢を見る為に……






<黄泉川の場合>

「あ゛ー、疲れたじゃんよー」
「お疲れ様です」
「ん……さんきゅ、鉄装」

 書類仕事を終えた黄泉川はそう言いながらコーヒーを受け取る。それを一息に飲み干すと、首を鳴らしながら体を伸ばした。別段きつい仕事ではないのだが、黄泉川的にはこういった事務仕事は体がなまってしまう為、外勤の方がいいのである。むしろ書類仕事が久しぶりすぎて体が凝ったという感じだ。

「ふう、やっぱり私にはこういう仕事は似合わないじゃんよ。外で見回りでもしてる方が気も楽じゃん」
「駄目ですよ、こういう仕事も大切です。あ、それとお客さんが来てましたよ」
「客? こんな時間に一体誰じゃん?」
「フレンダちゃんですよ。どうしても聞いて欲しい事があったみたいですね。今は待合室でまってもらってるんで、すぐに行ってあげて下さい」
「あらら……こんな事なら仕事をもっと早く終わらせれば良かったか……」

 鉄装にもう一度礼を言い、黄泉川は足早に待合室へと向かう。
 フレンダが『警備員』の詰め所に訪れるのは決して珍しい事ではない。よくお菓子を持ってきたりしてくれるし、迷子などを連れてきたりする事も多々ある。そのせいかフレンダが来た場合には最初に出会い、この詰め所に関わるキッカケを作った黄泉川が対応するのがいつもの事なのだ。無論、他のメンバーもフレンダとは仲が良い。
 さて、今日は何の話をしにきたのだろうか? と考えながら黄泉川は待合室の扉に手をかけて開く。視界に入ったのはソファーに座るフレンダの後ろ姿だ。黄泉川は笑顔を浮かべて近付いていく。

「フレンダー、今日は一体何の用で来たじゃん? もしかして学校の件考えておいてくれた……って、おやま」

 正面に回った黄泉川が目にしたのは、ソファーに座ったまま眠るフレンダの姿だった。こっくりこっくりと頭を揺らし、静かな寝息を立てている。その寝息も良く良く耳を澄まして聞こえるほどで、黄泉川も近くに来るまでは全く気付かなかった。
 そんなフレンダを見て黄泉川は苦笑すると、部屋に備え付けられている仮眠用の毛布をフレンダの体にかける。一瞬むずかゆい様に体を揺らすフレンダだったが、すぐに毛布にくるまる様にして動きを止めた。

「全く……こういう時は本当に子供っぽいじゃんよ」

 黄泉川はそう呟くと携帯電話を取り出す。今から電話する相手はここに来るのは嫌がるだろうが、フレンダが寝てしまっている以上来ざるをえないだろう。久しぶりに思い切り説教でもしてやろう、と考えて黄泉川は電話をかける。

「お、麦野じゃん? 久しぶ……って、おいおい切るな。ちょっとフレンダが……」





<絹旗の場合>

 部屋の中にすやすやという安らかな寝息が静かに響く。その発生源である金髪の少女、フレンダはクッションを枕にして床の上で直に眠っていた。実はこれの前に洗濯を終え、取りこむまで少し休もうと寝転がったところ眠ってしまったのであるが、今はその話は良しとしよう。
 そんな熟睡しているフレンダの隣で、正座のまま顔をジッ、と見つめる一人の少女がいた。「絹旗 最愛」、フレンダと同じく『アイテム』に所属する構成員の一人だ。『無能力者』であるフレンダとは違って、絹旗は『大能力者』。その中でも極めて強力な部類に入る『窒素装甲』と呼ばれる能力を有している。本人の弁であるが、全力で能力を行使すれば小型のロケット砲ですら易々と防ぐ事が出来るほど強力な能力だ。
 そんな能力を持つ絹旗であるが、今はその装甲を完全に解いた状態になっていた。本来ならばどんな状況であったとしても奇襲に備えて能力を展開しているのだが、今はそれが邪魔となってしまうので解いている状態なのだ。そして目的を果たす為に絹旗はゆっくりと移動し始める。

「よいしょっ、と……」

 寝ているフレンダに更に接近すると、絹旗は真隣りにゴロン、と寝転がった。そしてフレンダを起こさない様慎重に気をつけながら体勢を整える。フレンダの力が抜かれた手は自らの頬に、自らの腕はフレンダの体を包むように掴む。

「んぅ~……すー……」
「超よいしょ……よし」

 手慣れた手つきで全ての準備を整えると、絹旗は満足げに笑みを浮かべた。二人の今の体勢は眠っているフレンダが絹旗を包むようにして眠っている感じであり、端から見ると仲の良い姉妹が二人で昼寝でもしている様に見える。絹旗はそのまま瞳を閉じてフレンダの懐へと体を潜らせた。

(超……落ち着きます……)

 そう心の中で呟くと、絹旗も同じく静かな寝息を立て始める。その顔に幸せな笑みを浮かべながら……





<滝壺の場合>

 朝四時……夏が近いだけあって真っ暗ではないものの、まだ日も殆ど昇っていない時間帯。フレンダはまだリビングに敷いている布団の中で眠りに着いていた。あと一時間くらいで起床時間であるが、逆にフレンダは余程の事が無いとそれ以前の時間には目を覚まさない。以前大音量で『連絡人』から通信が来た時は、麦野達が起きたにも関わらずリビングですやすやと眠りに着いていた程だ。その時は起こされて不機嫌になた麦野にオシオキされたのだが、それはまた別の話である。
 そんな中、リビングのドアがゆっくりと開く。それでもフレンダは微動だにせず眠り続けており、やがて一人の少女がリビングに入ってきた。

「ふれんだ?」

 窺うようにしてリビングに入ってきた滝壺は、とろんとした半開きの目をフレンダに向ける。それで反応がないのを確認すると、そそくそとフレンダが眠る布団の隣へと移動してその場に正座した。当然滝壺はフレンダの顔を見下ろすような形となり、滝壺はジッ、とフレンダの顔を見つめる。

「くふ」

 そこで口元を軽く歪めて笑みを浮かべると、ポケットから何かを取りだした。それはカチャカチャと操作され、滝壺は邪悪な笑みを浮かべながらそれを安らかに眠るフレンダの顔に近づける。
 カシャリ、とそれは音を鳴らした。滝壺の携帯電話であるそれは何度も音を鳴らして次々にデータを増やしていく。やがてそれらをいくつか撮り終えると、滝壺は満足げな顔で携帯をポケットにしまった。

「さてと」

 そう言って滝壺はフレンダを起こさない様にしながらずれた布団やシーツなどを直していく。それが終わると立ち上がり、リビングのドアへと向かってそれを開けた。そしてリビングから出る前にフレンダへと振り向いて口を開く。

「今日もよろしくね、ふれんだ。また後でね」

 そう言って部屋へと戻る。フレンダが目を覚ましたのはそれから一時間後の事であった。





<田辺の場合>

 午前二時、田辺が副施設長を務める施設は既に静まりかえり、一部の電灯以外は灯されていない。普段は子供達の声で賑わっているのにも関わらず、夜はまさに静寂が施設を支配していた。
 だが、施設に勤めている職員達の仕事は終わらない。夜勤に入る人間はその日の日誌を確認したり、時間ごとに部屋を見回ったり、朝の準備をしておかなければならないのだ。そして、この日はとある男性職員が夜勤の筈……だったのだが。

「ふぅ……」

 日誌を書き終え、田辺は軽く息を吐いて全身の筋肉をほぐす様に伸ばした。コキコキ、という骨の小気味よい音と共に少しの痛みと気持ちよさが全身を巡る。それらの動作を終えると、田辺はゆっくりとした動きで夜勤室の部屋にあるソファーへと視線を向けると、見えた光景に対して思わず破顔した。
 そこにいたのは毛布に包まって寝息を立てているフレンダの姿があった。静かに寝息を立てたままぐっすりと眠っており、全く起きる様子はない。
 何故ここにフレンダがいるのか? その理由は、今日この施設で行われた誕生日パーティで出された職員用のお酒に誤って手を着けてしまったのだ。フレンダは一杯お酒を飲んで酔っ払い、そのまま床で就寝。本当はそこで麦野達に迎えに来てもらう予定だったのだが、久しぶりなので泊めてはどうか? という意見が出たのである。
 そこで大問題になったのがどこで寝るのか? という事であった。特に某お馬鹿な男と某お馬鹿な少女が熾烈な争いを行い、某聡明な少女にブッ飛ばされた事はまた違う話にするとしよう。これでは収集が着かない……そんな時だった。

『じゃあ、今日は夜勤室に泊まってもらいましょう。それなら皆公平よね?』

 田辺の発言に子供達は最初難色を示したが、やがて明日の朝になれば会えるという事と眠くなってきたのが重なり、その場はお開きとなった。これが今回フレンダがここに寝ている理由である。
 また、男性と一緒に泊めるのは流石に……という事で今日の夜勤は田辺が変わったのであった。

「ふふ、あの子達には嫉妬されちゃうかもね」

 そう言いながら田辺はフレンダにゆっくりと近付くと優しい手つきで軽く頭を持ち上げるとフレンダの頭があった場所に腰を下ろし、フレンダの頭を自分の膝の上へと乗せた。フレンダはしばらくもぞもぞと動いていたが、やがて落ち着いたのかぴたりと動きを止める。
 そんな様子を見た田辺はクスリと笑みを浮かべ、フレンダの髪を手で梳いた。一度も引っ掛からずに指が通り、フレンダの髪が如何にさらさらしているかを物語っている様でもある。

「今日はありがとね、「    」……フレンダちゃん」

 一度何かに耐える様な顔を浮かべ、田辺はそう呟くように言う。まるで何かに懺悔をしているかのように……





<下部組織の二人の場合>

「なぁ……」
「……なんだよ?」

 『アイテム』の下に着いている下部組織の男二人組はワゴン車の運転席と助手席にいながらも、後ろの席を眺めながら話し合っていた。そしてその視線の先に居るのは、すぅすぅと寝息を立てるフレンダの姿だ。
 現在、『アイテム』は仕事中であり二人は今日の運転と雑務を任命されて待機中なのであるが、フレンダは今回の仕事(破壊活動中心)の役に立たないからという事で車に待機を命じられたのだ。そして先程眠りについてしまったのである。

「フレンダさんマジ可愛いよなぁ……」
「……そりゃあ、まぁな」

 そう返しながらも運転席の男はキョロキョロと外を見回す。周囲に人間がいない事を確認すると視線を助手席にいる男へと戻した。

「あんまりそういう事言ってると、麦野さん達にブッ飛ばされるぞ」
「だけどよぉ……今まで色んな所たらい回しにされて、この『アイテム』に来てからやっと人並みの生活が出来る様になってさぁ……そういう恋愛とかに憧れるじゃねぇか」
「……お前こんな話知ってるか?」
「どんな話だよ?」

 男はもう一度周囲の様子を確認すると、ゆっくりと緊張感の溢れる顔で口を開く。

「この前フレンダさんが出かけた時、『武装無能力集団』にナンパされたらしいぞ」
「MAJIDE!? ちょっとそいつ等ハイスラでボコるわ……」
「最後まで話は聞けよ。それでそいつ等フレンダさんに断られてな、罵声浴びせてどっか行っちまったらしいんだが……」
「……だが?」

 ごくり、と生唾を飲み込む音とフレンダの安らかな寝息が車中に響く。男は一筋の汗を垂らすと、緊張した面持ちで話を続ける。

「そいつ等な……次の日全員が裸にされてアッチ系の店の前に転がされてたらしいぜ」
「ぎ、ギャアアッー!?♂ 何それ、怖い!」
「怖いだろ? それでな、それをやったのが」

 その瞬間だった。
 コンコン、と車の扉が叩かれる。ハッ、とした男達がそちらに視線を向けると、そこには滝壺がぼんやりとした表情で立っていた。慌ててキー開けると滝壺はのんびりとした動作で車へと入り込む。

「お、お疲れ様っす」
「麦野さん達は?」
「むぎのときぬはたもすぐに来るよ。私は少し早く来ただけ」

 そう言いながら滝壺は寝ているフレンダの髪を撫でる。そして男達へと視線を向けて口を開いた。

「何もなかった?」
「な、何もなかったッスよぉー!」
「そう、良かった」

 それを最後に車中は良く分からない沈黙と重さに包まれる。その中でフレンダの寝息だけが安らかに響き続けた。





<『妹達』の場合>

 病院の待合室……そこにあるソファーの上で、金髪の少女が座ったままうつらうつらと眠っている。本当は風邪気味になってしまったので診断の為に来たのであるが、自分の診断結果が出るまでの間にそのまま寝てしまったのだ。体力が落ちていたのもあってか、全く起きる様子はない。それこそ、自分を同じ顔と服装をした少女が四人囲んでいるとしても、だ。

「眠っていますね、とミサカ10032号はジロジロと視線をこの人に向けつつ言います」
「全く起きる気配がありませんね、とミサカ10039号は隣で息を荒げている存在に辟易しつつ口にします」
「フレンダたんの髪に顔を埋めてクンカクンカモフモフしたいお……とミサカ13577号は真面目な顔で自分の本心を露わにします(ドヤッ」
「ミ、ミサカ19090号は……せっかくお礼が言いたかったのに寝てしまっている目の前の人にがっかりしつつ、とても残念なので落ち込みます」

 全く同じ顔、同じ声の四人であるが、良く良く見ると四人全員に個性が見て取れる。一人は無表情であるが目の前で寝ている少女に対して親愛とも言える視線を向け、一人は溜息が多く冷めた目で隣の人物へと視線を向け、一人は真面目ぶった表情であるものの落ち着きがなく時たま息を荒げたり熱っぽい視線を少女に向け、一人はおどおどとしつつ涙目で少女を見つめている。似てこそいるがまさに個性剥き出しと言った感じだ。

「しかし残念ですね、今日病院に来ると聞いていたので久しぶりに話が出来ると思ったのですが……とミサカ10032号は残念な気持ちで肩を落とします」
「仕方ないのでは? とミサカ10039号は応えます。この人も普段忙しいですし、こういった時に休息をとっているのだと思います」
「是非ともフレンダたんのお世話受けたいでござる……うほっ、何かやらしいお店みたいで興奮してきた! とミサカ13577号は鼻息を荒くしてそわそわと体を動かします」
「と、隣にいる13577号が怖いです……とミサカ19090号は怯えて涙目になりつつ口にします」

 そんな感じに会話は進むが誰一人として少女に触れようとする者はいない。遠慮半分、そんな事をすればネットワークで全ての『妹達』にばれる上に一部の『妹達』が

『全力でいくぞ』

 という訳の分からない言葉とともに妙な団結力を生み出すのでそう簡単に抜け駆けは出来ないのだ。ちなみにここにいる13557号は頻繁にその『全力』を受けてフルボッコにされている。が、全く懲りる様子はない。

「ミサカ13577号はもう少し自重すべきだと思います、とミサカ10032号は忠告します。少なくとも迷惑をかけたりした日にはネットワークから総スカンを喰らいますよ?」
「ミサカ10032号の意見に賛成です、とミサカ10039号は意見します。ただでさえ同室にいる時にうざくてこの上ないんですから、その豚みたいに汚い視線をこの人に向けるのは不愉快としか言いようがありません、と10039号は汚物を見るかのような視線を向けて言い放ちます」
「い、10039号が怖いです……と、ミサカ19090号は気絶しそうになる自分を叱咤しつつミサカ13577号に自粛を求めます」

 他のミサカ三人からの圧倒的なプレッシャー……それを真っ向から受けた13557号は何を思ったのか妙な表情を浮かべるとその場に座り込む。

「そ、そんなに蔑まれると13577号は悔しいでも……ビクンビクン」
「駄目だコイツ……早く何とかしないと、とミサカ10032号は戦慄を露わにします」
(叩いても叩いても効果なし……末期ですね、とミサカ10039号は溜息を吐きます)
「あうぅ……」

 全く話は進まず、そのまま互いに牽制し合ったりののしり合ったりして時間は延々と流れていく。少女が病院に来る時に毎度見られる光景に看護師たちは苦笑して仕事へと戻っていく。
 『妹達』は今日も平常運転である。





<佐天さんの場合>

「フレンダさん、起きて下さいよ~」

 黒い髪を垂らした少女、「佐天 涙子」は自分のベッドでゴロンと寝転がっている金髪の少女を揺さぶりながらそう言うが、寝ている少女は全く起きる様子もなく安らかな寝息を立て続けている。佐天は時計へと視線を向けて時間を確認すると、既に少女が帰らなきゃいけないと言っていた時間を過ぎていた。本来なら自分が起こさなければならない立場にあるのだが、余程疲れていたのか金髪の少女は全く目を覚ます様子はない。

(うー、全然起きてくれないよー)

 どうしてこうなった? と佐天は思い返す。本来、今日は少女を家に招いてお喋りをするという予定だったのだが、どうやら少女は昨日夜中まで何かをしていたらしく眠そうにしていたのだ。それを見かねた佐天は、眠いなら自分のベッドで少し寝ても良いですよーと言ったのだ。最初はやんわりと断った少女だったのだが、本当に眠かったらしくしばらくすると安らかな寝息を立てていた。そして今の現状に至る訳である。

「フレンダさん、遅れたら麦野さんに怒られるって言ってたじゃないですか。早く起きないと電車も間に合いませんし起きて下さいってー」

 先程よりも強く揺すって声をかける。が、少女は全く目を覚ます様子もなく、それどころか揺すっていた手をギュッ、と掴むと「ふにゃっ」とした笑みを浮かべた。佐天は急に腕を掴まれたあわあわと慌てて赤面するが、少女が腕を離す様子はない。やがて佐天は諦めたかの様に溜息を吐くと軽く笑みを浮かべる。

「全く……フレンダさんの方が年上なんですよ? それなのにこんな……」

 そう言う佐天の顔は全く怒ったりしている様子はない。ただ、今過ごしているこの時間を楽しんでいる様子しか見受けられないものだった。佐天は開いているもう一つの手を繋いでいる手へと向かわせると、少女の手を包み込むように掴む。その腕を掴みながら佐天は苦笑すると口を開く。

「あはは、私も白井さんの趣味とか馬鹿に出来ないかもなぁ……」

 そう言って少女の顔へ視線を向ける。憧れる様に、そして恋焦がれる様な視線を……



<あとがき>
少しずつキャラを増やしていく短編な感じです。このキャラが見てみたい! というのがあったら不定期に更新しようと思うので、気長に待って頂けたら幸いです。サブキャラ書くの楽しい……黄泉川先生マジ先生。
そして『妹達』の個性を出すために変態にしすぎた……10039号はドS、13557号は変態&M、19090号は原作通り気弱な感じです。どうしてこうなった……


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