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No.24886の一覧
[0] 「とある金髪と危険な仲間達」【とある魔術の禁書目録 TS 憑依?】[カニカマ](2012/01/31 15:53)
[1] 第零話「プロローグ」[カニカマ](2011/04/28 14:54)
[2] 第一話「私こと藤田 真はまだ元気です」[カニカマ](2011/04/28 14:56)
[3] 第二話「ファーストコンタクト」[カニカマ](2011/09/08 00:08)
[4] 幕間1「フレンダという名」[カニカマ](2011/09/08 00:09)
[5] 第三話「Nice Communication」[カニカマ](2010/12/12 07:46)
[6] 第四話「とある奴隷の日常生活」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[7] 第五話「今日も元気に奉仕日和」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[8] 第六話「ルート確定余裕でした」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[9] 第七話「  闇  」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[10] 幕間2「私の所有物」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[11] 幕間3「『道具(アイテム)』は闇へ……」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[12] 第八話「この台詞二回目ですね!」[カニカマ](2011/04/28 15:02)
[13] 第九話「暗部の常識? 知らぬぅ!」[カニカマ](2011/09/08 00:16)
[14] 第十話「『俺』の生き方は『私』が決める」[カニカマ](2011/09/08 00:18)
[15] 幕間4「知らぬ所で交錯するっていう話」[カニカマ](2011/04/28 15:04)
[16] 第十一話「原作キャラ可愛すぎです」[カニカマ](2011/04/28 15:05)
[17] 第十二話「友達が増えたよ!」[カニカマ](2011/04/28 15:06)
[18] 第十三話「来てしまった今日」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[19] 第十四話「とある金髪の戦闘行動(バトルアクション)」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[20] 第十五話「幻想御手と無能力者」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[21] 第十六話「話をしよう」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[22] 第十七話「電磁崩し」 幻想御手編 完結[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[23] 予告編『絶対能力進化計画』[カニカマ](2011/02/10 17:36)
[24] 第十八話「とあるお国のお姫様」[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[25] 第十九話「とあるお国のお友達」[カニカマ](2011/04/28 15:11)
[26] 第二十話「予想外」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[27] 第二十一話「やるしかない事」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[28] 幕間5「認めたくない過去、認められない未来」[カニカマ](2011/04/28 15:13)
[29] 第二十二話「フレンダですが、部屋内の空気が最悪です」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[30] 第二十三話「偽善」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[31] 第二十四話「覚悟完了」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[32] 第二十五話「最高の危機」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[33] 幕間6「それぞれの戦い・前篇」[カニカマ](2011/04/28 15:16)
[34] 幕間7「それぞれの戦い・後篇」[カニカマ](2011/04/28 15:25)
[35] 第二十六話「戦いの終わりに」『絶対能力進化計画』編 完結[カニカマ](2011/04/29 09:21)
[36] 第二十七話「お見舞い×お見舞い」[カニカマ](2011/05/23 01:07)
[37] 予告編『最終信号』編[カニカマ](2011/05/23 01:10)
[38] 第二十八話「復活ッッッ!」[カニカマ](2011/06/05 12:46)
[39] 第二十九話「俺、故郷に帰ったら結婚するんだ……」[カニカマ](2011/06/29 20:01)
[40] 第三十話「白と毛布とイレギュラー」[カニカマ](2011/07/16 15:41)
[41] 第三十一話「(話の)流れに身を任せ同化する」[カニカマ](2011/07/17 23:48)
[42] 第三十二話「朝一番」[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[43] 第三十三話「ミサカネットワーク」[カニカマ](2012/01/31 15:49)
[44] 第三十四話「逃げたいけれど」[カニカマ](2012/01/31 15:52)
[45] *「簡単なキャラクター紹介」*キャラ追加&文追加[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[46] 番外1「とある首輪と風紀委員」[カニカマ](2011/04/28 15:18)
[47] 番外2「転属願い届け出中」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[48] 番外3「二人のお馬鹿さんと一人の才女」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[49] 番外4「とある部隊の不幸体験」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[50] 番外5「宝物」[カニカマ](2011/04/28 15:20)
[51] 番外6「寝顔シリーズ」<『妹達』、佐天さん追加>[カニカマ](2011/06/25 16:11)
[52] 番外シリーズ1「『学園都市』の平和な一日・朝」[カニカマ](2011/04/28 15:21)
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[24886] 第二十一話「やるしかない事」
Name: カニカマ◆b465aa7c ID:500ae757 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/28 15:12
「やるしかない事」



 科学の街である『学園都市』では常に光があり、それが途切れるという事は決してない。が、それはあくまで表向きの部分なんですよね。

「ちょ、ちょっと待て! 話せば分かる!!」

 路地裏の袋小路に追い詰められた男は両手を上げながらそう言い放つ。見た目は研究者といった感じで、正直男の俺でも生理的に受け付けない感じのメタボ体型です。白衣もよれよれだし、そんなんじゃ女の子にはモテないZO☆ としか言いようがありません。で、彼の周りには先程まで護衛に当たっていた連中。ちなみに『猟犬部隊』みたいな上等なモンじゃなくて、『武装無能力者集団』の中でも外道というか、暗部に染まってる連中は全て地に臥せってます。絹旗と麦のんが一晩で……じゃなくて、数分で鎮圧してくれました。俺も一人だけ倒したよ! 正直いなくても良かった気がする。

「ふぅ~ん、話せば分かるって一体何が分かるのかにゃー?」

 麦のんが軽い口調でそいつに話しかける。男は怒りに染まってない口調で少し安心した様子何だけど、それって死亡フラグですよ? 麦のん、こういう口調の時は大抵スイッチ入ってるからね。

「こ、ここで私を見逃してくれれば、必ず莫大な利益を得られるんだ! 当然、お前達にも分け前は渡す!」
「ほうほう」
「悪い話じゃない筈だ! こんな下らない仕事したって二束三文だろう? なっ? だから見逃し」

 男がそう口に出した瞬間、閃光が男の両足を貫いた。男は絶叫を上げてその場に倒れる……というか、麦のんはえぇ。早撃ち麦のんとでも言えばよろしいのかしら。

「余計なお世話なんだよぉ! 何が利益だ……もう一回言ってみろよ、あぁ!?」
「ひ、いいぃ! た、助け……!」
「下らねぇぇんだよぉぉぉ! そんなモンの為にこの『原子崩し』が動くと思ってんのか、この<ピーーー>野郎がぁぁ!」

 うわぉ……完全にスイッチ入ってらっしゃる。麦のんの怪力で踏まれて蹴られまくってるあの科学者なんだけど、良くある踏んでくれて「ありがとうございますっ!」、という風には絶対にならないね。だって麦のんが踏むたびに人体を踏んだとは思えない音と、血飛沫が舞ってるんだもん。結構長く仕事続けてるからいいけど、普通なら絶対にトラウマになるぞこれは。

「麦野、流石に超死んでしまいますよ。それくらいにしておきましょう」
「あ? 別にぶっ殺しちゃっても良いじゃないのよ」
「仕事前に生かして依頼者に突きだすと超決めたじゃないですか。決めた事は守る、私達の間での超不文律ですよ」
「……そうね、少し頭に血が昇ってたわ」

 そう言いながら麦のんは踏むのを止めたけど、アレ生きてるのかなぁ? と思ってたらピクピクと動いてるのが確認できたわ。何とかギリギリ生きてるみたいね。

「ま、これから死ぬよりも辛い目に会うんだしね」
「た、す……け……」
「その台詞、アンタが今まで苦しめてきた奴らに地獄で言いなさい」

 麦のんはそう言い放って去って行く。俺と絹旗もその後に続いて移動すると、色々な場所から暗部の掃除係みたいな連中が出てきた。倒れてる奴らと科学者はササッと車に積み込まれ、そのまま運ばれていく。何か、このシーンどこかで……あぁ! ドナドナか! 連れて行かれるのが処刑場という違いがあるけど。

「今日の仕事は超楽でしたね。滝壺さんの力も使わなくて済みましたし」
「普段からこれ位楽な仕事ばかりなら良いのにね」

 まぁ、そうはいかないのが暗部だけど。というか、どんだけ恨みとか不満があるんだよって位反乱とか裏切り喰らう街です。もうちょっと平和的に行きましょうよアレイスターさん……
 滝壺が待つワゴンへ戻り、中に乗り込む。中で待機していた運転手(22歳・男)に麦のんが指示を出すと、車はゆっくりと走りだした。それと同時に仕事の空気が消え、一気に弛緩したものへと変わる。

「お疲れ様でした、麦野さん」
「ん」

 お茶を差し出すと、麦のんはそう返してお茶を受け取る。絹旗と滝壺にもお茶を手渡し、最後に運転席の横にあるポーチにお茶を淹れた紙コップを差し出した。運転手の男は軽く笑みを浮かべて礼をすると、また運転に集中するため正面に向き直る。うむ、そういう姿勢俺は好きですよ。

「しかし、超楽な仕事でしたね。いつもこうだと良いんですけど」
「馬鹿ね。こういうのはたまにあるからこそ楽に感じるのよ。普段は少しくらい厳しい方が都合が良いわ」

 流石麦のん、テラキャリアウーマン思考ですね。俺としては常に楽でいたいけど。

「早くシャワー浴びて寝たいわね。こんなに夜更かししてたらお肌が荒れちゃうわ」
「え、夜更かしすると超荒れるもんなんですか? 私初めて知りました」
「大丈夫、少しくらい夜更かししてもお肌は普通だよ」
「あまり気にした事ないです」
「お前等帰ったら反省会な」

 ちょ! 今の台詞の何が気に障ったんディスカ!? 全く……正直に物を言ったら反省会になっちゃうとか……何て時代だ! せっかく帰ったら寝れると思ってたのにぃぃ。





 はい、アジト……っていうか家に戻ってまいりました。只今夜中の一時なんですが、とりあえず血とかで汚れたままの体を洗うためにお風呂に入ったのであります。はい、勿論アレですよ……全裸に首輪ですよ。というか、風呂の時くらい取ってほしいんだけどなぁ……

「はい、ふれんだ」
「あ、ありがと滝壺さん」

 んで、何でここに滝壺がいるのかと申しますと、一緒に入ったからなんだ。うん、すまない。浜面より先に滝壺の裸を見た男(今は女だけど)になっちゃったんですよね。いや、長年女として過ごしてきてるからいいんだけどさ、それでも滝壺の裸は異常な程魅力的ですよ。程良く肉付きが良くて、肌は真っ白で染み一つない……雪の様な肌とはこういうのを言うのでしょうかね? 原作だと不健康さが出てた滝壺なんだけど、今は全然そういうのが見えませんですよるまあ、これからなっていくんだろうけど。
 滝壺から下着を受け取ってさっさっと履く。うーむ、慣れたとはいえども偶にはトランクスを履きたい気持ちになるね……一回やったら麦のんにブッ飛ばされたんだけどね。理不尽です。

「ふれんだ、肌綺麗だね」
「え? そうかなぁ」

 まぁ、外国人(だと思われる)のフレンダは肌が白いし、きめ細やかではあるよね。でも手入れをしていないだけあって滝壺とかに比べると、どうしても劣って見えるんですよ。俺ってば基本的に化粧もしないしケアもしてないしね。多分肌年齢と髪年齢は危険な事になってると思われる。

「そんな事ないよー、滝壺さんの方が綺麗だって」
「……うーん、ふれんだの場合嫌味で言ってる訳じゃないから、タチが悪く感じる」

 いやいや、嫌味なんて事考えて言ってませんの事よ。それに何だかんだで肉弾戦しか手段のない俺は、頻繁に擦り傷切り傷負うしね。それでも『アイテム』の中核は滝壺なんだけど。

「とりあえず、早く服着よう。湯冷めしちゃう」
「うん、そうだね」

 手早く用意してあったパジャマを着込む。俺のは水色、滝壺は薄いピンク色のパジャマだ。以前『アイテム』のメンバー全員で買いに行き、色違いのお揃いを購入したんですよね。ちなみに麦のんが黄色で絹旗は黄緑色です。ちなみにこのパジャマも驚きの値段がするのですが、それは割愛しましょう。

「はぁ~、いいお湯だった」
「二人とも、お待たせ」

 バスタオルを首から下げてリビングへ行くと、そこにはテーブルの前の席に座っている二人の姿がありました。二人ともカルピス飲んでたみたい。よし、じゃあ自分と滝壺の分も作るかな……

「フレンダ、ちょっと待ちなさい」
「え? 麦野さん、何か用?」
「良いから、滝壺も一緒に座りなさい」

 むぅ、何か怒っている訳じゃないんだけど逆らってはいけない雰囲気が漂っている。絹旗も同じくシリアスな面持ちで黙ってるし。滝壺もそれを察したかのように黙って椅子に座る。ぶっちゃけて俺は喉渇いてるからカルピス飲みたいんだけど、この空気でそんな事言いだせる筈もないので大人しく席に着きましょう。俺と滝壺が座った事を確認して、麦のんはゆっくりと手に持っていたらしい紙をテーブルの上に置いた。良く見てるからすぐに分かったんだけど、これって仕事の内容を報せる紙ですね。いつも同じ感じの送られてくるので、すぐに分かりましたよ。どれどれ、今回はどんな仕事……

『研究所を襲撃する謎の人物の確保、及び撃破について』

 ……えぇ、見た瞬間に息を飲みましたとも。とうとう来ちゃったのね……いや、『妹達』見た時からそろそろだろうと覚悟はしてたんだけど、いざ目にするとドキッとします。それと同時にあの実験がこの街中でやってるとなると、マジで怖くなるね。マジキチ。

「これが今回の仕事、能力者は高レベルの『電撃使い』。カメラやセンサーにも捕えられないという事は、最低でも『大能力者』という事になるわ」
「研究所襲う『電撃使い』……」

 うん、それ以上の『超能力者』だけどね。滝壺は呟いた後、何か考え込むように目を細めている。情報少ないから、色々と考えを巡らせてるのかな?

「絹旗には、もう詳しい事は話してある。そして、今回の仕事なんだけれど……」

 はいはい、俺は反対しまーす! だって情報少ないし、それほど見合う報酬でもないし、本音は御坂と戦いたく……

「私の独断で絶対に受けるわ。フレンダ、滝壺、絹旗準備しておいて」

 ない、か……ら……?
 あ、あの……麦野サン? 今何と……

「麦野、決まりを破るの?」
「……」

 そ、そうだよね! 滝壺、言っちゃれ言っちゃれ!

「仕事を受ける時は全員の意見を聞いて、一人でもその仕事に反対する人がいれば仕事は受けない。そういう決まりがあったよね」
「えぇ、分かってるわ」

 麦のんはそう言って滝壺へ視線向ける。滝壺も真っ向から睨むように麦野を見つめたまま動かない。
 いやいや、何か空気が悪くなってきたですよ? ちょっと滝壺も麦のんも落ち着いて……

「むぎの、何か理由でもあるの? 言ってもらわなきゃ私は断固反対だよ」

 その言葉に、麦のんは黙って俺へと視線を向けてきた。え? どうしたの麦のん……もしかして俺が原因とかじやないよね? 怖いんだけど……絹旗に助けを求めようにも、絹旗はどちらかというと麦のん側に付いている感じがするんです……だってこの意見に反対とかしないし……

「フレンダ、滝壺、落ち着いて聞いて欲しいの」
「うん」
「は、はい」

 麦のんはそこで一度大きく息を吸うと、一瞬だけ大きく表情を歪めて口を開いた。

「この『電撃使い』は……御坂よ」

 うん、知ってる。と言いだせる空気ではありませんでした。滝壺は何となく分かっていた、と言いたげな顔で目を閉じているし、絹旗は先程と変わらず無表情だ。麦のんは辛そうというか、あれは怒ってる顔だね。何故麦のんが怒るし。

「むぎの、何となくむぎのの様子からみさかだって分かってた。だけど……私は全員の意見を利かないまま仕事を受ける気はないよ」
「滝壺……」

 流石は滝壺さんやでぇ……

「でも勘違いしないで。私はこの依頼を受けるのには賛成、みさかが心配だから」

 滝壺ザン……ナズェソウナルンディス!?
 滝壺は麦のんにそう一言言ってこちらへ振り向く。いつの間にか麦のんと絹旗もこちらに視線を向けてるし、これはあれか? 俺の意見を待ってるのか?

「え、えっと……」

 こ、この雰囲気……断れる雰囲気じゃないんですけど。これは日本の典型的な決まり、少数意見無視ではなかろうか? い、いやいや……ここで俺が受けないと言えば、滝壺の言うとおりに仕事は受けない事になる筈なんだ。だからここは勇気を持って仕事を受けないと言お……ん?
 お、紙に『アイテム』がこの仕事を断った場合について記述されておる。いや、断るつもりだけど断った場合どうなるか気になるし、ちょっと読んでみようか。ふむふむ、その場合にはもう一人の超能力者を有する『スクール』にこの仕事を依頼……『スクール』?
 え? 『スクール』ってあの『スクール』ですよね? あの『一方通行』に対して、正面からぶつかって一時的にとはいえ圧倒した『未元物質』が所属しているあの『スクール』ですよね? あ、そうだよねそうだよね。相手が『超能力者』なんだから、こっちも『超能力者』ぶつけるのが普通だよね。だからこそ『アイテム』に仕事を依頼したんだし……
 いやいやいやいやいや! 御坂が垣根に勝てる訳ないでしょ!? ただでさえ疲労してるだろうし、麦のんに苦戦してる程度じゃ垣根に傷一つ負わせられるかどうかすら不安だよ。何せ麦のん相手に大した事ない、と言える人間だしね。正真正銘の怪物すぎる……
 仕事を受けないと、御坂が『スクール』を相手にする事になる。い、いや……『スクール』だってまだまだ利用価値のある『超能力者』である御坂を殺せ、という依頼を受けてるとは到底思えない。だから受けなくても原作通りにすすむし、御坂だって死なない筈だ。だけど……もしそんな依頼が無かったら? 『スクール』が手加減無しに御坂と相対したらどうなる? 原作から外れる……それに御坂が死ぬかも。
 御坂が、死ぬ……

「麦野さん」
「……ん」
「受けよう……御坂さんが危ない」

 麦のんは俺の一言に最初から分かっていた、と言いたげな様子で頷いて滝壺に視線を向けて口を開く。

「全員の意見は一致ね。滝壺、これで良いかしら?」
「うん、おっけーだよ」

 まさかこんな事になるとは……いや、俺が死ななきゃ良いのさ! 御坂も助けて俺も死なない……両方こなさなきゃならないっていうのが、フレンダの辛いところだな……

「絹旗」
「はい」
「フレンダとそっちは任せたわよ」
「超了解しました」

 ん? 絹旗に俺の事頼んでるみたいだけど、何頼んでんだろ?





 まさかこんな配置にされるなんて、夢にも思ってなかったです。
 現在、俺は絹旗と一緒にワゴン車の中で待機しております。で、ここにいない麦のんと滝壺は別の場所で御坂を待ちうけているのです。
 はい、ここで原作(外伝)ブレイクですよ。本来ならフレンダは一人で御坂を迎え撃つ役割をもらった筈なんだけど、何か知らんが絹旗とペアにされたんでござる。原作だと絹旗は御坂が来ない方の研究所にいた筈だから、もしかして俺と御坂の戦闘フラグは折れたんじゃないかしらわふー! ……もしかしたら逆に絹旗がこっちに来たのかも知れないけどさ。それは考えない事にしよう。

「御坂さん、来るかな?」

 言っても無駄な事は分かってるんだけど、何か不安すぎて口に出してしまうのです。だって御坂来たら絹旗と俺じゃ太刀打ち出来ないし……

「来ませんよ」
「えっ?」

 き、絹旗何で言いきったし。あれか、予知が出来る能力に目覚めたとかそんなんなの?

「どうして言い切れるの?」
「麦野が超言ってたからです。麦野は何となくですが、御坂が次に襲う施設が分かってたみたいですね。だから私とフレンダをこちらの施設に回したんだと思いますよ」
「何で分かったんだろう?」
「さぁ? でも、こういう時の麦野の勘は超外れませんから安心して良いと思いますよ」

 絹旗の言うとおり、麦のんってたまに未来予知なの? と言えるくらいの勘を出す事があるんですよね。実際それで何度も助けられているし、信用は出来るんだけどな。

「でも、その麦野が私達を超こちらに回したのも何かあっての事だと思います。気は抜けませんよ」
「うん、確かにそうだね」

 えーっと、確か布束さんが潜入……というか、合法的に招かれた所で細工しようとするんだっけ? 細かくは覚えてないけど、絹旗に捕まったという所は覚えている。とか俺が考えていた所で絹旗の隣に置いてあったセンサーに反応がありました。ワゴン車に備え付けてあるテレビに目を向けると、梯子を降りる一人の女性の姿が……間違いなく「布束 砥信」ですな。

「行きましょう、仕事の時間です」
「うい」

 ワゴン車から降りる絹旗に続いて俺も降りる。その直前に運転席から「お気を付けて」、と聞こえたので笑顔で手を振り返しておきました。うーむ、やっぱり下部組織の人達とも友好的な関係を築くと気分が良いね。そんな俺と絹旗に続いて歩く下部組織の男二名……一人は「田中」、もう一人は「亭塔」という名前です。『アイテム』が指揮する下部組織の一員なんだけど、二人とも元々『武装無能力者集団』で色々あって暗部に来てしまったらしい。

「フレンダさん、今回の仕事麦野さんとかは居ないんスね~」

 このチャラ男っぽいのが「田中」。見た目こんなんだけど普通に良い人です。というか、見た目に反して気が小さいんですわ。最初は粋がってたんだけど、麦のん直々に「指導」が入ってから大人しくなりました。あまりにも可哀想だったので良く相手になってるんですけど、存外に仲良くなったんですよ。男友達が下部組織にしかいないとかどういうことなの……

「でも気は抜いたら駄目だよ。「亭塔」さんもお願いね」
「ウイッス」
「任せて下さい」

 「亭塔」さんは結構良い歳してて、俺達よりは明らかに年上なので「さん」付けしてます。言葉づかいも丁寧な上に度胸もあるので、結構頼りにしてたりする。あぁ、やっぱりこういう人との繋がり合いは大切だわ……ギスギスした仕事環境って最悪だからね。

「フレンダ、田中、亭塔。まずは私が仕掛けます。相手にもよりますが……その後の確保は田中に任せます。良いですか?」
「任して下さいよ~」
「……そう言ってこの前も超失敗したじゃないですか。今回失敗したら麦野に超報告しますからね」
「か、かかかか勘弁して下さい!」

 ありゃりゃ、麦のんからの「指導」が本当にトラウマ物だったんだね。ま何されたのかは詳しく知らないけれど、オシオキがトラウマになってる俺も俺なので責める事は出来ない……田中頑張れマジ頑張れ。

 その後、エレベーターを使い、一気に目的地へと向かう。辿りつくと、そこには何か作業をしている布束さんの姿が……それを確認した瞬間、絹旗は近付いていっていきなり布束さんを台に叩きつけた。絹旗の事だから手加減はしているだろうけど、あれは滅茶痛そうです。田中と亭塔さんも顔引き攣ってます。

「う、ぐっ……!」
「みさ……襲撃者は単独である事は間違いないが、それを利用した誰かが乗じて良からぬ事を企んでも不思議ではない。よってチームを二つに分け、片方は襲撃者に対し混乱するであろう施設の防衛に当たる……」

 そう言いながら、絹旗は押さえつけたままの腕を捻り上げる。短い悲鳴が布束の口から洩れるのを聞いた俺は、タマヒュンする思……タマがありませんでした、テヘッ☆

「麦野の予測通りでしたね。全く、こういう火事場泥棒的な奴は超嫌いですよ」

 いや、布束はそういう事でここに忍びこんだわけじゃないんだけどな。唯の実験道具である『妹達』を助けるために、自分の危険を顧みずにここまで……
 あれ? それを捕まえようとしてる俺達って極悪人ってレベルじゃなくね? 暗部だから悪人だよ、っていうのは確かだし、この後布束さんがどうなるか分からないけれど碌な目には会わないだろ。というか、高確率で消される気がする……頭いいから利用価値があるとみなされて生かされるかもしれないけどさぁ……
 とか俺がのんびり考えている最中に、事態は色々と展開しております。布束さんが何かをインストールして、それを絹旗が阻止しようとして機材ぶん殴って壊し……それって経費で落ちるよね? で、田中が相変わらず失敗というか、一回捕まえたのに布束さんに抜けられて絹旗が銃向けられてる。田中……骨は拾っておいてやる、麦のんからの「オ シ オ キ か く て い」乙。

「動かないで……! 出来れば、こんな物は使いたくないわ……」

 銃を突きつけながら言う布束さんに、絹旗は冷めた視線で応じる。この状態の絹旗って、実はスイッチ入った麦のん級に危ない状態です。無表情に相手をぶん殴ってたり、手加減しないで相手を<ピー>しちゃった事もある。大抵機嫌が悪い時とかそういう時になるものなんだけど、これは危ない……念のため、いつでも声が出せるようにしておく。

「超聞けませんね、特に貴方達の様な連中の言う事は死んでも聞きません」

 案の定の絹旗の言葉に対し、布束さんはギリッと歯を噛みしめた後……発砲しました。ただし、急所から強引に外したみたいだけど……無意味なんだよなぁ。

「ふむ……この期に及んで急所を外す心遣いは超見上げたものですが、私の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』は拳銃如きでは貫けませんので」

 絹旗はそう呟くように言い、驚愕の眼差しで見つめる布束さんに向けて腕を振り上げ……って、やっぱり殺す気か! えぇい、絹ゥゥ旗ァァァクゥゥゥゥンンン!!

「絹旗! おすわり!!」
「!? は、はい!」

 俺の言葉に対して即座に反応し、絹旗はその場に体育座りをした。瞬間、周囲の空気が凍りましたでございますよ。
 はい、これが俺の絹旗を止める手段です。いや、絹旗が来て俺に懐き始めてくれた時に色々と仕込んだ……いえ、教えたんですけど、その時出来心で昔買ってた犬と同じように躾けみたいな事をしてみたんですよ。自分よりも下の立場……というか妹みたいなのが出来て嬉しかったんだと思います、はい。今は本当に反省してるので、麦のんマジで許して。
 布束さんも、田中も、亭塔さんも、俺もピタリと制止しております。その中で唯一人、プルプルと怒りを堪えるかのように震えておられる方がおりますですよ。その人物は真っ赤になって涙目になった顔をこちらに向けました。あ、絹旗可愛……

「フレンダのぉ……超バカー!!」
「ぬわー!」

 殴られはしませんでしたが、ブン投げられました。この事秘密にするって約束してたし、絹旗マジすまねェ……





 あの後、布束を捕えた俺達はワゴン車に戻って待機中です。絹旗に投げられたときに腰を強打したのでマジいてぇ……まぁ、絹旗が受けた心理的な傷に比べたらマシですよね! とか考えながら隣に座ってめそめそしている絹旗の頭を撫でて上げています。

「うぅぅ……超酷いです。秘密にするって約束してたのに……」
「本当にごめんね、絹旗。でもあのままだと、絹旗この人の事殺しちゃいそうだったから……」

 俺はそう言いながら後部座席へと視線を向ける。そこには両手両足を縛られ、猿轡を噛まされた布束さんの姿。俺と視線が会うと、キッと睨みつけてきました。いや、その目で睨まれるとマジ怖いんですけど。勘弁して下さい……

「でも絹旗、あんなに怒るの久しぶりじゃなかった? 何かあったの?」
「……」

 うん、絹旗があんなに怒るなんて珍しいんですよね。仕事中にスイッチ入るのも極稀な事だし、普段はあんな事にならない筈なんだよね。いきなり出会った相手ぶっ殺そうとするのは麦のんだけで充分です、はい。

「……」
「あ、私は怒ってないよ。言いたくないなら良いんだけど……」
「いえ、大した事ではないので超聞いてください」

 そう言って絹旗は視線を俺に合わせて口を開いた。

「御坂は本来なら光に当たっているべき存在です、それは一緒に遊んだりした私達が超良く分かっています」

 うん? まぁ、確かに御坂は『学園都市』にいる『超能力者』では唯一有名な存在……というか、他の『超能力者』が一癖二癖有りすぎるんだろうけどね。垣根も麦のんも暗部だし、『一方通行』は今はやばい実験に、やがて暗部と関わりを持つし、削板はそもそも能力者なのかすら不明だし、何なんだこの街は……改めて考えると真っ黒すぎる。

「そんな御坂がこんな事をしなければならなくなった理由を作ったこいつ等の事を考えたら、超頭に血が昇っただけです……」
「き、絹旗……」

 わぁぁ、顔真っ赤にして言う絹旗が超可愛いです。これは犯罪級ですよ……

「絹旗がそんな事思ってたなんて、お母さんは嬉しいよー!」
「ちょっ、誰がお母さんですか!?」

 ガバッ、と絹旗に圧し掛かる。絹旗の力ならすぐに抜けられるけれど、個人的に絹旗が可愛かったのと、友達に対してそういう感情を抱いてくれたのが嬉しかったので強引にでもこれ続けさせてもらうのですよ。わふー♪

「フレンダさん、絹旗さん」
「ん、何? 亭塔さん」
「麦野さん達から連絡です。どうやらあちらも終わった様で……」
「超繋げて下さい」

 おお、どうやら御坂を退ける事が出来たのかな? 絹旗の言葉と共にテレビの画面が写る。それを見た瞬間、俺は軽く息を飲んだ。
 頭に大きく巻かれた包帯、煤けた顔、破れた衣服、普段余裕で相手を撃破する麦のんは怪我をする事自体珍しいので、一瞬勝敗よりも麦のんの具合を心配してしまった。そんな事気にしてる場合じゃないのに……

「麦野、超大丈夫ですか?」
『平気よ、見た目は結構やられてるけど大した怪我じゃないわ』
「そっか、良かった……」
『それより、御坂がどうして施設を襲撃するなんて真似をしてるのか分かったわ……帰ったら話すから、まずはアジトに戻って』
「超了解です。それと麦野、恐らく関係者であろう人間を捕えました。超どうしましょう?」
『連れて来い、絶対に逃がすな』
「分かりました、それではまた後で」

 それと同時に通信は切れ、聞いていたと思われる運転手がこちらの指示を前に車を発進させる。こういう空気が読めるって素晴らしいね。
 とりあえず麦野に大した怪我がないみたいで良かった……あの様子だと御坂も撤退したみたいだし、とりあえず原作通り進んだのかな? いや……まだここにイレギュラーが乗ってるけどね。と、考えていたら絹旗が顔だけ布束さんに向け、ゆっくりと口を開く。

「楽しみですね。麦野に八つ裂きにされる貴方の姿を見るのが」

 この時の絹旗の顔は、一生忘れる事が出来ないと思う。マジで怖かったれす……



<おまけ>

『とゆーわけで! この仕事もちゃちゃっと片付けてちょーだいよ』
「……」

 麦野は送られてきた資料を眺めながら、表情を険しくしていく。その様子に『連絡人』は異常……というか嫌な予感を感じ取ってすぐに通信を切ろうとするが、それよりも麦野が一歩早かった。

「今、通信を切ったら……」
『な、何よ……』

 その言葉を最後に、麦野は視線を画面から外す。『連絡人』としては、ある意味生きた心地がしない状況だ。今度はどんな無茶を言われるのか……それともまた爆弾発言されるのか。薬を飲んでいる筈なのに、胃がキリキリと痛んだ。

「おい」
『は、はい!?』
「この『電撃使い』……どうせアンタ達の事だから正体掴めてるんでしょ? 吐け」
『んなっ……し、仕事は仕事でしょ。別に聞かなくたって』
「吐 け」

 その麦野の威圧に、『連絡人』は溜息を吐きながら胃薬に手を伸ばした。


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