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No.24886の一覧
[0] 「とある金髪と危険な仲間達」【とある魔術の禁書目録 TS 憑依?】[カニカマ](2012/01/31 15:53)
[1] 第零話「プロローグ」[カニカマ](2011/04/28 14:54)
[2] 第一話「私こと藤田 真はまだ元気です」[カニカマ](2011/04/28 14:56)
[3] 第二話「ファーストコンタクト」[カニカマ](2011/09/08 00:08)
[4] 幕間1「フレンダという名」[カニカマ](2011/09/08 00:09)
[5] 第三話「Nice Communication」[カニカマ](2010/12/12 07:46)
[6] 第四話「とある奴隷の日常生活」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[7] 第五話「今日も元気に奉仕日和」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[8] 第六話「ルート確定余裕でした」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[9] 第七話「  闇  」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[10] 幕間2「私の所有物」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[11] 幕間3「『道具(アイテム)』は闇へ……」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[12] 第八話「この台詞二回目ですね!」[カニカマ](2011/04/28 15:02)
[13] 第九話「暗部の常識? 知らぬぅ!」[カニカマ](2011/09/08 00:16)
[14] 第十話「『俺』の生き方は『私』が決める」[カニカマ](2011/09/08 00:18)
[15] 幕間4「知らぬ所で交錯するっていう話」[カニカマ](2011/04/28 15:04)
[16] 第十一話「原作キャラ可愛すぎです」[カニカマ](2011/04/28 15:05)
[17] 第十二話「友達が増えたよ!」[カニカマ](2011/04/28 15:06)
[18] 第十三話「来てしまった今日」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[19] 第十四話「とある金髪の戦闘行動(バトルアクション)」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[20] 第十五話「幻想御手と無能力者」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[21] 第十六話「話をしよう」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[22] 第十七話「電磁崩し」 幻想御手編 完結[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[23] 予告編『絶対能力進化計画』[カニカマ](2011/02/10 17:36)
[24] 第十八話「とあるお国のお姫様」[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[25] 第十九話「とあるお国のお友達」[カニカマ](2011/04/28 15:11)
[26] 第二十話「予想外」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[27] 第二十一話「やるしかない事」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[28] 幕間5「認めたくない過去、認められない未来」[カニカマ](2011/04/28 15:13)
[29] 第二十二話「フレンダですが、部屋内の空気が最悪です」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[30] 第二十三話「偽善」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[31] 第二十四話「覚悟完了」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[32] 第二十五話「最高の危機」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[33] 幕間6「それぞれの戦い・前篇」[カニカマ](2011/04/28 15:16)
[34] 幕間7「それぞれの戦い・後篇」[カニカマ](2011/04/28 15:25)
[35] 第二十六話「戦いの終わりに」『絶対能力進化計画』編 完結[カニカマ](2011/04/29 09:21)
[36] 第二十七話「お見舞い×お見舞い」[カニカマ](2011/05/23 01:07)
[37] 予告編『最終信号』編[カニカマ](2011/05/23 01:10)
[38] 第二十八話「復活ッッッ!」[カニカマ](2011/06/05 12:46)
[39] 第二十九話「俺、故郷に帰ったら結婚するんだ……」[カニカマ](2011/06/29 20:01)
[40] 第三十話「白と毛布とイレギュラー」[カニカマ](2011/07/16 15:41)
[41] 第三十一話「(話の)流れに身を任せ同化する」[カニカマ](2011/07/17 23:48)
[42] 第三十二話「朝一番」[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[43] 第三十三話「ミサカネットワーク」[カニカマ](2012/01/31 15:49)
[44] 第三十四話「逃げたいけれど」[カニカマ](2012/01/31 15:52)
[45] *「簡単なキャラクター紹介」*キャラ追加&文追加[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[46] 番外1「とある首輪と風紀委員」[カニカマ](2011/04/28 15:18)
[47] 番外2「転属願い届け出中」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[48] 番外3「二人のお馬鹿さんと一人の才女」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[49] 番外4「とある部隊の不幸体験」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[50] 番外5「宝物」[カニカマ](2011/04/28 15:20)
[51] 番外6「寝顔シリーズ」<『妹達』、佐天さん追加>[カニカマ](2011/06/25 16:11)
[52] 番外シリーズ1「『学園都市』の平和な一日・朝」[カニカマ](2011/04/28 15:21)
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[24886] 第十四話「とある金髪の戦闘行動(バトルアクション)」
Name: カニカマ◆b465aa7c ID:500ae757 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/28 15:07
 「とある金髪の戦闘行動(バトルアクション)」



 七月二十日……

「田辺さん。朝御飯、こんな感じで良いですか?」
「どれどれ……? うん、ちょうどいいと思うわ。後は片付けして、お茶にでもしましょうか」
「やっほぅ、田辺さんの入れるお茶は久しぶりですね。楽しみですよー」
「私の入れるお茶なんて、大した物じゃないわよ。それよりも、ごめんね。いきなり呼び出して手伝ってもらったのにこんな事しか出来なくて……」
「いえいえー、あれは仕方がなかったですって」

 田辺さんとのんびり会話をしながら、俺は食器とその他の片づけを始める。ん? どうして朝っぱらから田辺さんの施設にいるのかって? それには山よりも高く、海よりも深い事情があるのですよ。
 昨日の夜の事なんですが、突如この施設が停電に襲われたんだよね。心当たりが原作見てる俺にとっては、かなりあるんだが……まぁ、そんな事はどうでもいいとしましょう。まぁ、施設の電源は全ておしゃかになってしまったのです。別段、一日くらい電気が無くても死にはしないし、暗くなったとはいえども『学園都市』には光が絶える事なんてないので、完全な闇になった訳じゃなかったんだけど。でも、想像してみてほしいのですよ? 今まで実験やらなんやらで辛い経験をして、しかも暗所が苦手な子供達が沢山いる施設でそんな事が起きたら、どうなるか……?
 結果は大パニック。子供達は大勢泣きだすわ、パニックで我を失う子供達やら、施設中大混乱になってしまったらしいです。んで夜勤の皆川さん(三十二歳女性)一人では全く対処出来ず、田辺さんが緊急出動。が、田辺さん一人増えた所で手が足りる筈もないのです。そして、何で俺が施設に来たかと言いますと、実はレイちゃんから助けて欲しいという電話が来たからなのでーす。
 田辺さんは俺に迷惑をかけまいと、何とか職員の方達だけでどうにかしようと思ってたらしくて、俺が来た時は大層驚いておりました。ちなみにその時施設にいて、かつ子供達のお世話が出来る人は田辺さん、皆川さん、そしてレイちゃんと他数名の中学生達のみ。いや、俺一人が来たからといって大して変わるものじゃなかったんだけど、何とかこの事態を鎮静化する事に成功したのでありますよぅ。大変だったわ……何故か来た瞬間パニックを起こしてた子供達に殺到された上、落ち着くまで抱っことかしまくってたからね。見ろ、腕が棒の様だ!

「本当なら、もっときちんとしたお礼をするべきなんだろうけど……」
「気にしなくていいですって。それに、私は田辺さんに返しきれない恩があるんですから、それの返済をさせてもらわないと困りますよ~」

 にひひ、と笑いながらそう言うと、田辺さんはいつも通り優しげな笑みを浮かべて、困ったように息を吐いた。うむ、美人さん。

「田辺先生、御飯の準備終わったんですか?」

 そう言いながら台所に入ってきたのは、長身の女の子。身長はどう見ても俺より高く、パッと見た感じ160の後半くらいはありそうだ。これでまだ中学生だから恐れ入るんだよね……髪は青みがかった長髪で、切れ長な目がふつくしい……もう、気付いたかな?
 そう、この子はレイちゃんです。俺が施設を出てから……何年だっけ? と、とりあえず結構経ちますけど、レイちゃんはとんでもない美人になってしまいましたー。いや、マジで凄い美人ですよ。メインヒロイン達にも劣ってないんじゃないかなぁ……というか、御坂とかインデックスよりは、間違いなく年上に見られる筈。スタイルも良い、し……

「フレンダさん……何か視線が怖いんですけど、何かありましたか?」
「イイエ、ナニモ」

 妬ましい スタイル抜群 妬ましい(字余り)

 いや、別にナイスバディになりたい訳じゃないですよ? ただ、お風呂場で麦のんや滝壺の体を見ていると何と言うか……羨ましい、じゃなくて一度はバインバイン(死語)になりたいとか思う訳てすよ。決して羨ましい訳では……あれ、心の涙が止まらない……!

「それよりもレイちゃん、いつも言ってるけど私の事お姉ちゃんって呼んでくれないの~?」
「もう中学生なんですから、そんな呼び方しません。いつまでも子供じゃないんですから」
「うぅ……お姉ちゃんは悲しいよ。私の引っ越しの時に泣いてまで別れを惜しんでくれたレイちゃんが、こんなに大人になってしまうなんて……ヨヨヨ」
「あ、あの時はあの時です! 恥ずかしい事思い出させないで下さい!」

 顔を真っ赤にして声を上げるレイちゃんを見て、俺と田辺さんは微笑ましい視線を向ける。いやぁ、お姉ちゃんって言われなくなったのは悲しいけど(萌え的な意味も含めて)、このレイちゃんはこれで可愛すぎます。俺が男だったら絶対に放っておかない美人さんだけど、現状彼氏が出来たとは聞かないなぁ。不思議不思議。

「レイちゃん、他の子は皆寝てるかしら?」
「そうですね、夜中まで泣いてた子達もいますし、大体寝ちゃってますよ。今日は学校も休みですから、もう少し寝かせてあげていても良いと思います」
「そだね、あんな事があった後だしね」

 夜中にあんだけ泣いたり騒いだりしてたら、そりゃあ起きれないわ。ちなみに俺は、朝早起きだし、暗部の仕事は時間が不規則なのでこれ位なら全然平気なのですよ。田辺さんも慣れてるのか全然平気そう。ちなみに皆川さんはかなりお疲れの様子だったので、只今仮眠してもらってます。
 田辺さんが入れてくれたお茶を飲みつつ、レイちゃんに視線を向ける。夜中から起きてるだけあって、かなり疲れているみたいだ。お茶を飲みながら、時折舟を漕いでるし。まだ中学生だし、夜中ぶっ通して動き続けるのは辛いものがあったかな? よぅし……

「レイちゃん、眠いの?」
「へ……? あ、いえ……少しだけ……」
「やっぱりね。無理はいけないよ~」
「無理なんてしてません。それに、これくらい平気ですから」
「駄目駄目。ただでさえ、いつも施設のお仕事手伝ってるんでしょ? 無理なんかしたら、それこそ危ないミスを起こすものだよ」
「そ、それは……」
「だから」

 そこで俺は、ソファーに座ったまま自分の膝を二度叩いて、「にひひ」、と笑顔を浮かべる。レイちゃんはそんな俺を見て、訝しげな表情を浮かべて首を傾げた。ふぅ……こういう自然な仕草の時は、昔のレイちゃんと変わらないなぁ……可愛いぜ。

「私が膝枕してあげるから、少し休みなさい」
「なっ……! そ、そんな事出来る訳が」
「あら、良いじゃない。いつもはフレンダちゃんを囲んでる子供達もいないし、独占するチャンスよ?」
「ど、独占とか何を言ってるんですか!? それにあの子達は小さいから仕方ないし……」
「素直になった方がいいわよ~」
「た、田辺先生っ!」

 おやおや、何故か二人で言い合い(?)を始めてしまった。それにこの様子だと、レイちゃん素直に寝てくれなさそうだな。昔はすぐに飛びついてきたのに……お姉さんは悲しいのですよ。まぁ、そんな強情なレイちゃんには、最終兵器を使わせてもらうとしよう。

「レ~イちゃん」
「な、何ですかっ!?」
「お~いで♪」
「ッ……!」

 俺がそう言うと、レイちゃんは顔を真っ赤にしてパクパクと口を金魚の様に動かした。
 実はこの台詞、俺が小さい時のレイちゃんを呼ぶ時の言葉なんですよね。躾けたとかそういう訳じゃないんだけど、レイちゃんを呼ぶ時はいつもこんな声色で「おいで~」とか、「おいでおいで」、とか呼んでました。まぁ、最終兵器もクソもなく、ただ単純にいつもの呼び方をしただけなんだけどさ! 期待させてごめんね!
 しばらくレイちゃんはその場に立ち尽くしていたが、やがて観念したように俺の隣に座ると、ゆっくりとした動作で俺の太ももに頭を乗せた。麦のんみたいに柔らかくないけど、レイちゃん許してちょ。

「もぅ……お姉ちゃんはずるいです」
「にひひ、ずるさは大人の特権なのであります♪ そしてレイちゃんにこうするのも久しぶりだね~」
「仕方ないですよ。お姉ちゃんがここに来たら、こんなにのんびりしてる時間なんてないから……」

 いつの間にかレイちゃんが俺の事お姉ちゃんと呼んでくれてる。地味に感動しちゃうのですよ。

「いつもは小さい子達とかの相手してるもんね。構ってもらえなくて、レイちゃん寂しかったのかな~?」
「……うん。それに、皆そう思ってると思います」
「ん? 何か言った?」
「いいえ、何も。お姉ちゃん、昔みたいに頭撫でてくれませんか?」
「はいはい♪」

 レイちゃんが何か呟いた気がしたけど、気のせいだったかな? とりあえず、膝枕しているレイちゃんの頭をゆっくりとした動作で撫でる。レイちゃんが小さい……いや、俺も小さかったけど、施設にいた時はこうやってよく寝かしつけてたっけ。あぁ、暗部に入る前が懐かしい……とか考えながら撫でてたら、すぐに規則的な寝息が聞こえてきた。余程疲れてたみたいね。

「あらあら。フレンダちゃん、足痛くないかしら?」
「大丈夫ですよぅ。しかし、これだと動けないから手伝えないですね……すみません」
「何言ってるの。後は私に任せて、ゆっくり休んでて」

 そう言って、田辺さんは立ち上がると子供達の様子を見に行った。残されたのは俺と、寝ているレイちゃんのみ。俺は撫でる手を止めて、大きく欠伸をする。何だかんだで平気だけど、眠い物ものは眠かったりする。

「まだ朝も早いし……少しくら、い……寝ても、良い、か……な」

 うぁあぁ……駄目だ、レイちゃんが寝ているせいもあってか、急激に眠気が……麦のん達に遅れるって、電話……しないと……





 キングクリムゾンッ!
 あ、ありのまま 今 起こったことを話すぜ……!
 『おれはレイちゃんと一緒に少しだけ寝ようと思ってたら いつの間にかお昼を超えていた』
 な、何を言っているのか分からねーと思うが、俺もどうしてこうなったと言わざるをえない
 仮眠とか小休止とか、そんなチャチなもんじゃ、断じてねぇ
 普通に爆睡してました。

「あああああ、やってしもうた……」

 そう呟きながら、とぼとぼと歩道を歩く。休日だけあってか、街は学生が一杯いる上に買い物やお出かけで楽しそうなオーラを出しまくっているが、俺は一人だけネガティブオーラ全開です。
 あの後、俺が目を覚ました時には既にレイちゃんはいないし、ソファーで俺だけが一人寝転がっていました。子供達は全員起きてる上に、職員の皆さんも全員出勤済みで働いている最中と、とんでもなく邪魔な存在だったんじゃなかろうか……あ、穴があったら入りたい気持ちで一杯です! それに加えて、携帯電話に来ていたメールと着信……その量を見た瞬間に、俺は一瞬だけ死を覚悟したよ。幸い、その後で施設に電話をかけてきた麦のんに対して、田辺さんが対処してくれたので何とかなりそうだけど……オシオキは免れないかもしれぬ。オシオキコワイオシオキコワイ……
 ハッ!? いつもの如く冷静さを失っていた。オシオキという単語だけで、俺の脳は誤作動を起こすんですよね……というか、実はオシオキの内容ってあんまり覚えてない。実際のところ、何をされてるかと良く分からないんだよね。余計怖いわ。
 結局、起きた後は田辺さんや他の職員さん達に平謝りして、一緒に遊ぼうとせがんでくる子供達を振り切って帰ってきました。本当なら少し遊んで帰る予定だったけど、これ以上遅れると御飯の準備とか、家事仕事が終わらなくなるので仕方なく帰る事にしたのです。あの時の子供達のガッカリ顔は忘れられない……今度どこかで穴埋めしておかないとなぁ。

「とりあえず、帰る前に人参とジャガイモ買って……肉は冷蔵庫に豚肉の残りがあった筈だから、他に買う物はないかな……あ、牛乳もだ」

 ぶつぶつと独り言を呟きながら歩いている首輪少女は、ぶっちゃけてかなり怪しく見えるかもしれない。最近まで知らなかったんだけど、「金髪の首輪少女は、この街で能力者を呪いながら死んでいった無能力者の亡霊」、なんていう都市伝説が出てた位だし。道理で一部の人間が俺を見る目がおかしい筈だよ……亡霊が頻繁に買い物する筈ないでしょうに。
 とりあえず行きつけの八百屋に到着。ん? 『学園都市』に八百屋とか、あの近代都市にそんなものあるのかって? うん、実は結構こういうお店はあるんですよね。有機野菜とか、朝一番に『学園都市』の外から搬入しているこだわりの鮮魚店とか、意外とこういうお店は所々にあります。当然他のお店と比べると少し割高だけど、その分美味しいので俺は好き。それに、こういう店の店長さんはスーパーとかの事務的なお仕事とかじゃなくて、常連さんにはサービスしてくれたりする事も多いしね。

「ごめんくーださい」
「いらっしゃい! お、フレンダちゃんじゃねぇか! 相変わらず細っこいねぇ、ちゃんと飯食ってるかい?」
「あは、お腹一杯食べてるのですよーう。おじさん、人参とジャガイモ二袋ずつちょーだい」
「あいよっ! 今日はカレーにでもすんのかい?」
「はい、野菜一杯にしようと思ってるのですよ」

 このおじさんとは結構長い付き合い。見た目は恐いけど、普通にいいおっちゃんなんですよね。付き合いも長いので、ほとんど友達みたいなものだ。

「野菜たっぷりかい! それなら、少し多めに持って行きな!」
「わ、良いんですか?」
「遠慮するこたぁねぇよ!」

 うむ、こういう事があるから八百屋さんはいいね。スーパーじゃ有り得ない光景だし。
 おじさんから大量のジャガイモと人参を受け取り、二袋分のお金を支払ってその場を後にする。ふぅ、これだけあれば野菜中心のカレーにした方がいいかな? 人参が嫌いな絹旗の絶叫が目に浮かぶ……かわいいぜ。

「お、フレンダちゃん! そんなに野菜持って、今日は何にするんだい?」
「あ、魚沼のおじさん。今日はカレーですよー」

 今俺に話しかけてきたこの人は、鮮魚店の魚沼さん。さっきの八百屋さんと近いので、目の前を通ったら呼びとめられたでござる。何かしら?

「ほうほう。なら、これ入れたら美味しいんじゃないかい?」
「お、ホタテですね」
「安く仕入れれたのさ! 良かったら少し持っていきな」
「おぉ~、良いんですか? かなり良さそうな物ですけど?」
「フレンダちゃんには、いつも色々買ってもらってるからな! これ位は先行投資みたいなモンさ」
「にひひ、また御贔屓にさせてもらっちゃうのですよ」
「おぅ、また来なよ!」

 結構大きな袋に入ったホタテを受け取り、俺はその場を後にする。くっ、結構重い。
 魚沼さんには悪いけど、このホタテは刺身で頂かせてもらうぜ……! 鮮度抜群な刺身って、意外と『学園都市』だと珍しいしね、冷凍物は一杯あるけど。野菜カレーは明日でも出来るので、鮮度が落ちる前にホタテは食べさせてもらう!
 そう決まれば急いで帰宅し、殻を外したり何だりしないとね。生きてるホタテだけど、早くさばいてしまう事に越した事はないし。そうと決まればダッシュダッシュ~。
 と、俺が小走りで先を急いでいたら、反対側の歩道に見慣れた姿を確認しました。長い黒髪のストレート、いつもの制服ではなく私服だけど見間違えようもない。佐天さんだ。

「おーい、佐天さ……って、あれ?」

 佐天さんはぼんやりとした様子で携帯を見たまま、俺に気付かないでそのまま道を曲がって行き、姿が見えなくなる。うむむ、何か元気がない様子だったなぁ、いつも元気を振りまいている姿なだけに、明らかに様子がおかしかった。
 とか、考えてたら思い出した。あの様子、確か原作だと『幻想御手』について悩んでいる時だったかな? という事は、御坂にお守りについて何か話した後だろう。クソッ、細かい所は全然覚えてないし、一体この後どうなったっけ?
 とりあえず、あんな様子の佐天さんを放っておくほど、俺は薄情な人間ではないのですよ。人でなしかもしれないけど。そう考えて、俺は近くの信号を渡り佐天さんの後を追った。





 好奇心猫を殺す、その諺が今の俺の頭を占めています。
 だから原作イベント忘れるなって! と、俺は隠れながら出て行った佐天さんとちんぴら三人組、おまけで役立たずのメタボ君の様子を窺っています。こいつ等って確か、『幻想御手』を売ってばら撒いてた連中だっけ? 能力は……一人は使う以前に黒子にやられてた筈、もう一人はテレキネシスだったかな? そしてリーダー格、アイツだけははっきり覚えてる。『偏光能力(トリックアート)』、焦点をずらして誤魔化すとかいう能力だったか。
 そんなことより、佐天さん勇気ありすぎだろ。あんなガタイのいいチンピラ三人組に啖呵切るとか、俺のヘタレ具合だと絶対に無理でござる。

「そ、その人、怪我してるし……すぐに、『警備員』が来るんだから……!」

 佐天さんがそう言うと、リーダー格のチンピラは小馬鹿にした様子でゆっくりと佐天さんに近づいていく。ま、まぁ、大丈夫だよね。確かこの後白井にブッ飛ばされる筈だし、ここで俺が介入したら原作との違いが出来るし……だけど、本当にそれで良いのか? 確かに黒子は来るけど、原作通りに話が進まなかったらどうする?
 そう考えていたら、チンピラが佐天さんの後ろの壁を蹴りつけ、怯える佐天さん髪を力任せに掴んで引っ張る。が、我慢我慢……! ひっひっふー、ひっひっふー!

「ガキが生意気言うじゃねぇか。何の力もねぇ奴には、ゴチャゴチャ指図する権利はねぇんだよ」

 ……ぶっちーん。
 俺はその場に荷物を置き、軽く体を動かす。昨日の疲れが微塵もない事を再認識して、俺はわざと大きく足音を立てて佐天さん他の前へと姿を現した。

「あ? なんだ、テメェ」
「フ、フレンダ、さん……?」
「私はさー、やってる事はクズに近い訳よ。何せ、色々な仕事やってきたからね。それに、これが赤の他人だったら、きっと黙って見てただけの筈」
「あぁ? いきなり出てきて何言ってんだテメェ。頭おかしいのか? それとも、首輪なんて着けて誘ってやがんのか?」

 ゲラゲラ笑いながら、チンピラの一人が俺に近付いてくる。さて、ここからはスイッチを入れ替えないとな……チンピラ(その一)の腕が、俺の襟元をグイッと掴み上げた。それを見計らって、俺はそいつの小指を掴むと、強引に捻じり折った。手加減とか、してる場合じゃないしね。する気もないけど。

「ぐっ、ぎゃっ……!!」
「オラァッ!」
「ぎっっ……!」

 手を押さえて姿勢を低くしたチンピラの股間を、思い切り蹴り上げる。麦のん直伝のこの技の威力は、元男の俺からしたら想像するだけでも恐ろしい。哀れチンピラその一は、白目を剥いてその場に倒れ伏す。驚愕の視線を向ける佐天さん達に対して、俺は大きく息を吸い込んで声を上げる。

「だけど、友達を見捨てていくほど腐ったつもりはないし、佐天さんは正しい事言ってる。なら、それに手を貸すのが友達って奴じゃない?」
「この、ガキがっ!」

 うひっ、格好つけて言ってみたけど、ちょっと怖いわ。何だかんだで腕力とかは負けてるだろうし、今無力化した奴以外の二人は確実に『能力者』だ。チンピラ(その二)が腕を掲げると、それと連動して近くにあった鉄パイプや鉄板が浮かび上がる。やっぱりテレキネシスか!

「おらよっ!」

 チンピラが腕を振りかぶると、それらが俺目がけて飛んでくる。佐天さんが短く悲鳴を上げ、チンピラ達はニヤリと笑う。が、甘い甘い。
 飛んできた物をその場に伏せて回避する。驚いて制止したチンピラ目がけて、懐に隠していたホタテを思い切り投げつける。突然飛んできた物に驚いたチンピラは咄嗟にそれを払いのけるが、体勢を立て直す前に近付いて小指を握りしめて上げた。チンピラの顔が青く染まり、俺はニッコリと微笑む。

「ちょ、待っ」
「ほいさ」

 ペキン、という小気味の良い音と共にチンピラが絶叫を上げる。そして先程の相手と同じく、思い切り股間を蹴り上げると、同じく白目を剥いて気絶した。ざまぁ。
 舐めるなよ? 何だかんだで暗部で活動してないし、素人三人程度なら負ける気はしないとですよ。ぶっちゃけ体は鍛えてるし、麦のんから色々と教わってるから、これくらいなら出来ます。『アイテム』だと役に立てないけどね! 麦のんと絹旗強すぎる……
 あ、ちなみに麦のんから教わってる戦闘方法は、如何に相手に痛みを与えて怯ませるか。そして如何に急所を狙うかの一言に尽きます。小指とか金的ばかり狙うのは、癖がついてるからかも知れない。

「はぁん……さてはテメェ、『身体強化』の能力者か」
「は?」
「俺は騙されねぇぞ」

 この人何言ってるの……やだ、こわい。
 まぁ、普通に考えたら一般人の女の子相手に、二人の男がフルボッコにされるとかないですもんね。でも、これは奇襲同然だから出来た事であって、暗部で訓練とか戦い慣れてる奴が相手だと、こう簡単にはいきませんのですよ。つまり、単純にさっきの二人が弱いだけ。

「へっ、まぁ良い」

 そう言って佐天さんの髪の毛から手を離し、リーダーのチンピラはこちらにゆっくりと向かってくる。

「『幻想御手』で強化した俺の能力の、実験台になってもらうぜ」
「はぁ……」
「ケケ、終わったらどうしてやろうか……タダじゃ帰さねぇからな」

 自信満々だね。ぶっちゃけ、コイツはあまり警戒してなかったんだけど……だって、俺は……コイツの能力知ってるんだもんなぁ……
 凄絶な笑みを浮かべてこちらに向かってくるチンピラに対し、俺はいつもポケットに入れている物へ手を伸ばす。あーあ、警戒もせずにこっちに向かってくるよ、この人。

「いくぜ、ガk」
「そぉい!」

 そして相手が一定の距離まで近づいた瞬間、俺はチンピラの地面に向けて「とある物」を投げつける。それが割れると同時に、チンピラの周囲を赤みがかった煙が包み込んだ。

「へ、何だこり……ゲホッ、ゲホッ! ぐあああ! 目が痛ぇぇ!!」
「ざまぁ(笑)」

 実はこれ、滝壺と協力して作り上げた「特性煙幕」なのでございまーす。大量の刺激物(主に唐辛子)を粉末にしたり煙にしたりして、詰め込んだ一品なのです。相手を殺傷することはなく、しかも化学物質を一切使っていないので、自然にも優しいのですよ。ただ、頻繁に調合ミスして量が多すぎたり、酷い時には周辺全体を巻き込んだりした。巻き込まれると、マジで目が痛いです。
 とか何とか考えていたら、チンピラの周辺が歪んできた。そしてそれが収まると、先程いた場所より後ろに現れる。うん、やっぱり距離感狂わせてたか。知らない奴が見たら、まず騙されるね。ただ、この能力って、一回見られたらそこで終了ですよね? 俺は知ってたからな。

「さて、覚悟は出来てる?」
「ぐぅ……!」
「中学生に手を出したり、弱い物虐めしか出来ないとか……だらしねぇな!」
「ぐぇ!?」

 つい兄貴になってしまったけど、男の顔面に思い切りパンチをすると、フラフラとしながらその場に崩れ落ちた。うん、やはり麦のんの言う通りの場所をぶん殴ると、人間は簡単に気絶しますね。あれか、麦のんの目には、人体は壊す対象として見えてるのか? 怖すぎるでしょう?
 さて、この三人だけかな? とりあえず、佐天さんの安全は確保出来たみたい。メタボ男は……アレ? いつの間にかいなくなってるし。あの野郎……助けたお礼を佐天さんに言ってから行けよ。今度会ったらシメる。

「佐天さん、大丈夫?」
「あ、はい……」

 壁を背に座り込んでいる佐天さんの手を持ち、引っぱり起こす。佐天さんはされるがままに、茫然とした様子で立ち上がった。さて、次は『風紀委員』か『警備員』に連絡しないと……

「こ、これはどうした事ですの?」
「あ、し……白井さん」
「あ、白井さんナイスタイミング。ここの処理任せてもいいかな?」
「えっ? しょ、処理とは一体……というか、何故こいつ等は全員気絶して……」
「後は頼んだ! さらばだっ!」
「あ、ちょ!?」

 そう言い放って全力疾走。置いていた荷物を持ち、その場から急いで立ち去る。流石に応援も来ていない状態で、倒れている人を置いて俺を追う事はしないだろう。状況については、佐天さんが説明してくれる筈だ。原作だと、佐天さんはあの場にいないはずだけど、まぁ大した違いにもならないでしょうや。原作通りに行けば、この後『幻想御手』を使用して、友達と一緒に意識を失うんだっけか? 心が痛むけれど、原作と同じ様に進む為に鬼となる俺です。
 え? じゃあ、さっきの介入もいらなかっただろうって? だって、友達が目の前であんな事になってたら、助けに入るのが普通じゃないか。それに結果的に黒子は遅れたんだし、とりあえず良かったのですよ。あのままだと佐天さんがどうなるか分からなかったからね。 
 さて、あの現場は全部任せたし、後は家に帰って家事をするだけなのですよ。さーて、帰ってホタテの殻むきしないとねー。と、呑気に考えて家に帰ろうと小走りになる。

 この時の俺は、想像もしてなかった。だからこそ、呑気に構えてたんだろうけど。
 この事が、あんな事になるなんて誰が想像出来たんだろう……そして、殴りたい。この時の自分を殴り殺したい気持ちで一杯です。



 <おまけ>

「成程、それでは佐天さんは助けて頂いたのですね」
「は、はい……あの、白井さん」
「なんですの?」
「フ、フレンダさんは悪くないんです……私を助けようとしてくれて……」

 その言葉に、黒子はフッ、と笑って口を開く。

「安心して下さいまし。確かにフレンダさんは相手に怪我を負わせましたが、正当防衛という形で成り立ちますわ」
「そうですか……良かった」

 ホッ、と息を吐く佐天を見て、黒子は軽く微笑むと近くにいた『警備員』の方へと歩いて行った。佐天はそんな後ろ姿を見たまま、ぼんやりと考え込む。

(フレンダさん、能力者でもないのに、あんなに強かったんだ……)

 あの時、舞う様に男達を倒したフレンダの姿は、佐天にとってはヒーローの様に感じられた。能力を一切使っていなかった所を見ると、フレンダは間違いなく『無能力者』なのだろう。男が『身体強化』がどうとか言っていたが、佐天は何となくフレンダが『無能力者』という確信を持っていた。
 自らの携帯電話に視線を移し、操作する。画面には『フレンダ』という名前が浮かび、電話番号とメールアドレスが載っていた。
 佐天はしばらくそのままで悩んでいる様だったが、やがて意を決したかのようにボタンを押しこむ。何度かの呼び出し音の後、電子音という音と共に携帯電話から声が上がる。

『はーい、もしもし。佐天さん、どしたの?』
「あ、その……」
『あ、逃げてごめんねー。ちょっと用事があって、あのまま『警備員』と話してたら間に合わないと思って。佐天さんに全部押し付けちゃったけど、大丈夫だった?』
「あ、私は大丈夫です。そ、それと……本当にありがとうございました。あの時、フレンダさんがいなかったら、私どうなってたか……」
『気にしてないよー』

 フレンダの明るい声に、佐天は軽く苦笑した。この人は本当にお人よしなんだなぁ、と心の中で感じながら、要件を伝えるために口を開いた。

「あの……実は、話したい事があるんです。今日の夜にでも、会えませんか?」
『あれ? 完全下校時間とか、大丈夫?』
「何とかしますから、大丈夫です」
『そういうのは駄目だよー。あ、私が佐天さんの部屋に行こうか? 私はそういう下校時間とか、関係ないし』

 その言葉に、佐天は「うぐっ」とうめき声を上げる。自分の相談なのに、相手に気を使わせてしまった。

「すみません……お願いします」
『はーい。晩御飯食べたら行くね。後でメールで住所送っておいて』
「はい、また後で』

 そう言って電話を切ると、佐天は深く溜息を吐いた。別に、フレンダに相談しなくちゃ駄目な訳ではないのに……何故かあの人の意見が聞きたくなってしまったのだ。そう思いながら、佐天は自分の携帯電話に視線を移す。
 そこには一つの音楽データ、『幻想御手』のデータが見えた。


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