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No.24886の一覧
[0] 「とある金髪と危険な仲間達」【とある魔術の禁書目録 TS 憑依?】[カニカマ](2012/01/31 15:53)
[1] 第零話「プロローグ」[カニカマ](2011/04/28 14:54)
[2] 第一話「私こと藤田 真はまだ元気です」[カニカマ](2011/04/28 14:56)
[3] 第二話「ファーストコンタクト」[カニカマ](2011/09/08 00:08)
[4] 幕間1「フレンダという名」[カニカマ](2011/09/08 00:09)
[5] 第三話「Nice Communication」[カニカマ](2010/12/12 07:46)
[6] 第四話「とある奴隷の日常生活」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[7] 第五話「今日も元気に奉仕日和」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[8] 第六話「ルート確定余裕でした」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[9] 第七話「  闇  」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[10] 幕間2「私の所有物」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[11] 幕間3「『道具(アイテム)』は闇へ……」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[12] 第八話「この台詞二回目ですね!」[カニカマ](2011/04/28 15:02)
[13] 第九話「暗部の常識? 知らぬぅ!」[カニカマ](2011/09/08 00:16)
[14] 第十話「『俺』の生き方は『私』が決める」[カニカマ](2011/09/08 00:18)
[15] 幕間4「知らぬ所で交錯するっていう話」[カニカマ](2011/04/28 15:04)
[16] 第十一話「原作キャラ可愛すぎです」[カニカマ](2011/04/28 15:05)
[17] 第十二話「友達が増えたよ!」[カニカマ](2011/04/28 15:06)
[18] 第十三話「来てしまった今日」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[19] 第十四話「とある金髪の戦闘行動(バトルアクション)」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[20] 第十五話「幻想御手と無能力者」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[21] 第十六話「話をしよう」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[22] 第十七話「電磁崩し」 幻想御手編 完結[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[23] 予告編『絶対能力進化計画』[カニカマ](2011/02/10 17:36)
[24] 第十八話「とあるお国のお姫様」[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[25] 第十九話「とあるお国のお友達」[カニカマ](2011/04/28 15:11)
[26] 第二十話「予想外」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[27] 第二十一話「やるしかない事」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[28] 幕間5「認めたくない過去、認められない未来」[カニカマ](2011/04/28 15:13)
[29] 第二十二話「フレンダですが、部屋内の空気が最悪です」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[30] 第二十三話「偽善」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[31] 第二十四話「覚悟完了」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[32] 第二十五話「最高の危機」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[33] 幕間6「それぞれの戦い・前篇」[カニカマ](2011/04/28 15:16)
[34] 幕間7「それぞれの戦い・後篇」[カニカマ](2011/04/28 15:25)
[35] 第二十六話「戦いの終わりに」『絶対能力進化計画』編 完結[カニカマ](2011/04/29 09:21)
[36] 第二十七話「お見舞い×お見舞い」[カニカマ](2011/05/23 01:07)
[37] 予告編『最終信号』編[カニカマ](2011/05/23 01:10)
[38] 第二十八話「復活ッッッ!」[カニカマ](2011/06/05 12:46)
[39] 第二十九話「俺、故郷に帰ったら結婚するんだ……」[カニカマ](2011/06/29 20:01)
[40] 第三十話「白と毛布とイレギュラー」[カニカマ](2011/07/16 15:41)
[41] 第三十一話「(話の)流れに身を任せ同化する」[カニカマ](2011/07/17 23:48)
[42] 第三十二話「朝一番」[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[43] 第三十三話「ミサカネットワーク」[カニカマ](2012/01/31 15:49)
[44] 第三十四話「逃げたいけれど」[カニカマ](2012/01/31 15:52)
[45] *「簡単なキャラクター紹介」*キャラ追加&文追加[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[46] 番外1「とある首輪と風紀委員」[カニカマ](2011/04/28 15:18)
[47] 番外2「転属願い届け出中」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[48] 番外3「二人のお馬鹿さんと一人の才女」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[49] 番外4「とある部隊の不幸体験」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[50] 番外5「宝物」[カニカマ](2011/04/28 15:20)
[51] 番外6「寝顔シリーズ」<『妹達』、佐天さん追加>[カニカマ](2011/06/25 16:11)
[52] 番外シリーズ1「『学園都市』の平和な一日・朝」[カニカマ](2011/04/28 15:21)
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[24886] 第十三話「来てしまった今日」
Name: カニカマ◆b465aa7c ID:500ae757 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/28 15:07
「来てしまった今日」



「ふわあぁ~……眠っ」

 本日の朝御飯は卵焼きとベーコン、そして食パンに各種ジャムでございます。ちなみにイチゴジャムだけは俺がレシピを見ながら作った一品で、いつも最初に無くなるんですよね。いや、美味しく食べてくれるのは良いんだけど、毎度毎度麦のんと絹旗が喧嘩するので仲良く分けてほしい。ちなみに滝壺はちゃっかり確保してるんだけど。
 今は午前九時、いつもならもう全員起床してる時間帯なんだけど、昨日の夜中に仕事があって帰ってきたのが五時過ぎの為まだ皆寝ています。俺の場合習慣なのか早く目が覚めちゃったのです。それでも起きたのは八時くらいなんですが。
 そしてその仕事とは調子こいた『武装無能力集団』が、貴重なデータが入った輸送車を襲って奪ったから取り返してこい、という内容でした。いや、たかが『武装無能力集団』に荷物奪われるのはどうなの? と最初は言いたかったんですけど、交戦した途端その疑問は晴れたのでございます。
 基本的に『無能力者』で構成されている『武装無能力集団』なんだけど、たまーに能力者が紛れ込んでたりする。まぁそういう場合でも、普通は能力開発で落ちぶれた低能力者、良くて開発途中で挫折した『強能力者』ってところなんですよね。『武装無能力集団』なんだから当然と言えば当然なんだけれど。
 ところが昨日の任務、『大能力者』と思えるくらいの能力者が二人も居たんですよ。これには麦のんや絹旗も驚いたらしく、先手は向こうに取られました。『警備員』の装備じゃ、二人の『大能力者』は相当厳しいだろうし、荷物を奪われたのは仕方ないかもしれないね。ちなみにその後ブチ切れた麦のんの攻撃により、その二人は全身火傷で病院行きとなりました。あの時の麦のんマジトラウマ。
 まぁ、それだけなら話は簡単だったんだ。帰宅してから相手の事を調べた結果、その二人は何と『強能力者』と『異能力者』だったらしいのだ。この結果に俺を除いた三人は首を傾げていたが、俺だけはこれが何を意味するか分かる。そしてとうとう来たかと感じた途端、心が重くなった。

 そう、『幻想御手(レベルアッパー)』事件だ。

 別にこの事件自体が怖い訳でもなく、俺を含めた『アイテム』が関わる訳でもないんだけれど、自分が知っている事件が起きると言う事はそれだけ原作に突入しつつあるという事なのだ。それを考えただけで胃が痛くなります……だから俺はプラス思考の方向で考える事にしました。
 そう、原作が近くなったという事は上条さんや、他の魔術師等も『学園都市』にいるという事。そしてあわよくば、遠目にでもその姿を見る事が出来るかも知れないという事なのだ! 特に神裂さん……あのおっぱいを一度で良いから間近で拝んでみたいです。いや、巨乳は麦のんで見慣れているけど、やっぱり神裂さんのおっぱいには不思議な魅力が詰まってると思うし、ね。おっぱいは別腹です。

「しかし、正確な日時を覚えてないのは問題だわ。覚えている時にメモしておけば良かった……」

 はい、俺はアホです。禁書は日時で正確に事件が起こる時が分かるのですが、流石に十年近く原作を読んでいないだけあってか、日時なんて全然覚えてないです。それ以上に深刻なのは、どんな順番で事件が起こっていったのかすら、記憶から薄れている事。大きな事件自体は覚えてるんだけど、その細かな内容までは覚えてません。アホすぎる……何か致命的なミスがあったら死ぬでしょこれは。
 ま、まぁ余計な事に首を突っ込まなければいい話ですよね! 『アイテム』としての活動も最近は安定してきているし、これ以上変な事にならないようにしようそうしよう。さ、気持ちを切り替えたところで朝御飯の準備の続きを……

「ふわぁ~、おはよフレンダ」
「ありゃ、麦野さん」

 って、麦のん? 珍しいなぁ、普通なら一番最初に起きてくるのは滝壺なんだけどね。麦のんは大体最後に起きてくるので、一体何事かと身構えてしまう。もしかしたら俺の事で何かあって、オシオキの為に起きてきたのではないか、と警戒しちゃうのですよ。ビビリ乙。

「もしかして起こしちゃった? ごめんね」
「違うわ。とりあえずコーヒーでも頂戴」
「はいは~い」

 おや、どうやら俺のオシオキとかではなさそう。そうだったらストレートに言ってくる筈だしね。

「はい、どうぞ~。でも、麦野さんがこんなに早く起きてくるなんて珍しいね」
「何よ、私が早く起きたら不味い事でもあるの?」
「そんなことないよ~、でも本当にどうしたの?」
「ちょっと気になる事があってね」

 うーむ、本当にどうしたのかしら? 麦のんがこうやって悩む姿を見るのは初めてじゃないけど、理由に心当たりが全く無いのは初めての経験かも。普段と違う麦のんの姿に、俺は若干だけど引いてるのでございますのよ。そして、そんな俺には構わずにコーヒーを飲む麦のんは相変わらず大物ですよね、少しは気にしてください。
 というか、麦のんは多分このままだと自分から言い出してくれなさそうだわ。たまにあるんだけど、どうやら自分から言い出しにくくて、俺から言わないと言ってくれない事があります。大抵碌でもない事が多いんだけどね……聞きたくないけど、聞くしかないか。

「麦野さん、何かあったでしょ?」
「んー……大した事じゃないんだけどね」
「私に言ってみたら? 解決出来るとは限らないけど、スッキリするかもよ?」
「……そうね」

 そこで麦のんは一度息を吐き、ゆっくりと口を開いた。

「昨日やり合った連中の事よ。あいつ等、明らかにデータとは違うレベルだったじゃない」
「あー、そうだったね」
「今回は倒せたから問題なかったけど、こういうのが何回も続いたら、「もしかすると」……っていう事態があるかもしれない。それがどうしても気になってね……」

 ま、確かにね。事前に渡されているデータと違う相手だと、それこそ作戦の立て方とか闘い方も全て変更しなければならない。綿密に立てた作戦が崩れると、結構焦るんだ。特に『アイテム』は役割がハッキリしすぎているので、戦闘した相手との相性が実は最悪でした、なんて事があったらマジでやばいです。具体的には精神感応系だと絹旗は不利だし、俺の場合は『強能力者』以上は基本的に相手をするのは無理です。そんな事があってか、『アイテム』の仕事の時は綿密に相手のデータを調べるのであります。

「今までもちょっとデータとの差異がある事はあたけど、今回みたいな間違いは初めてだわ。原因があればそっちを先に叩きたい所ね……」

 んー、確かにこのままでは危ないよね、主に俺が。戦う相手が『大能力者』級の相手とかになったら洒落にならん。幸い、俺は今回の事件の原因を知ってる。
 問題はどこまで言えば良いかだよなぁ。もしここで「木山 春生が犯人ですゥ」なんて事言ったら、何で知ってるんだって話になるだろうし……もどかしい、原因が分かっていながら報せる事が出来ないのがもどかしいです。
 それに木山先生を暗部で捕まえる気も起きないしね。だって、自分の為ではなく生徒の為に戦う姿は、その……かっこいいし、原作通り幸せにしてあげたいと思うよね? 少なくとも俺はアニメ最終回の通りに進めてあげたいのです。という訳で御坂達に任せたいんだよ。でも、原因を教える位は大丈夫か。原因が分からないと、徹底的に調べると言いかねない感じだし。

「麦野さん、麦野さん」
「何よ?」
「噂なんですけどね、『幻想御手』っていう『強度』を上げるものが出回ってるらしいですよ。もしかしてそれが原因だったりして」
「はぁ? 『強度』を上げるぅ?」
「はい、どんなものかは分からないらしいんですけど……」

 嘘です、音楽データって知ってます。

「そんな簡単に『強度』」が上がれは苦労はしないわ。だからこそ『超能力者』が成り立っている訳だし。それにどこから聞いた噂よ、それ』
「『無能力者』達の間で噂になってるんですよ。どこが出所かは分かりませんが……」
「……アンタはそんなものに手を出してないでしょうね?」
「そんな物に手を出してる暇があったら、新しい料理の練習しますよ」

 いや、興味はあるんだけどね。だけど聞いたら昏倒するって分かってて聞くとか、ドMってレベルじゃない。それに俺はそれほど能力に固執してないしねぇ。
 ただ『無能力者』や低能力者達の言い分も分かるんだよ。今まで自分達が悩んできた能力という名の壁、そしてそれを突破出来る『幻想御手』の存在。佐天さん以外にも、『無能力者』というものに悩んで手を出した人達は多い筈だ。木山先生は悪人じゃないし、それが目的だった訳ではないだろうけど、それでも『無能力者』達の心を傷つけた事は間違いないんだろうなぁ。うう、複雑だわ。

「噂、ねぇ……眉唾物だけど、気には留めておくわ。とりあえず御飯食べたくなってきた、用意して」
「あは♪ もう作ってあるからすぐですよー」
「うむ、よろしい」

 よし、麦のんの雰囲気がいつもみたいな感じに戻ったね。流石にそろそろ絹旗と滝壺も起きる時間帯だろうし、さぁ……今日も忙しくなりそうだわぁ。まずは洗濯でもするとしよう。その後は晩御飯の準備をして、それからお風呂の準備かな。
 と、俺が考えていたら麦のんの鞄から軽快なBGMが鳴り始めた。最近流行っている音楽で、『学園都市』外の女性歌手の歌だ。麦のんは鞄から携帯電話を取り出すと、通話ボタンを押して電話に出る。ちなみに俺の着信メロディは、施設にいたときに見てた特撮ヒーローのOPテーマです。麦のんや絹旗にはボロクソに言われてるんだけど、好きなんだからいいじゃんよぅ。

「御坂か、どうしたの?」

 おや、どうやら御坂が電話をかけてきた様でござる。そういえば言うの忘れてたけど、御坂達との初遭遇から今まで何度か一緒に出かけたりしましたですよ。まぁ、麦のんがいなかったり、常盤台コンビがいなかったりとメンバーがまちまちだったけどね。というか、二次創作でもよく見かけてたけど、御坂って友達が少なめっぽいです。いや、憧れてる後輩とかライバル意識を持ってる同級生は一杯いるらしいんだけど、友達という友達は少ない感じかな? だけどいないって訳じゃないみたい。原作で見た事のないモブキャラと一緒にいたとこを見たので。

「んー? 別に構わないわよ。じゃ、セブンスミストに待ち合わせでいいのね?」

 どうやらお誘いの電話だったらしい。麦のんはその後、一言二言言って電話を切った。

「フレンダ、二時になったらセブンスミスト行くわよ」
「りょっかいです。滝壺さんと絹旗はどうするの?」
「二人にも起きたら伝えるわ。多分、行くって言うと思うけどね」

 まあ、確かに。仕事が無い時の俺達って基本的に暇だし、何だかんだで滝壺も絹旗もあのグループと遊ぶのを楽しんでいるみたいだしね。まぁ、暗部の中で生活してて、碌な人間関係を構築できない状態にいるからなぁ……ある意味では、普通の日常を感じさせてくれる御坂達は貴重な存在なのかもしれない。
 では、出かける前に洗濯と晩御飯の下準備だけでも終わらせておこう。今日はキャベツメインの野菜スープと、鶏肉のソテーだ。絹旗が嫌いな人参もたっぷりスープに入れておこう。決して泣き顔が見たいからではないですよ? 本当ですよ?





「うわぁ~、これかっわいい! フレンダさんに似合いそうですよ!」
「いやいや、私のじゃなくて自分の見た方が良いよ?」
「気にしなくていいです。超楽しくてやってる事ですから」
「ふれんだ、かわいい」

 只今、セブンスミストにて着せ替え人形にされかけております。いや、だから君達三人はどこかに行く度に俺を着せ替え人形にしてどうするつもりなの? 別に女物を着る事に対して抵抗は無いから良いんだけど、毎回毎回は……あまり私を怒らせない方がいい(ビキビキ)。まぁ、言える勇気は無いんですけどね。

「いやぁ、やっぱり買い物は楽しいわね。黒子も来れると良かったんだけど……」
「『風紀委員』の仕事があったんでしょ? 残念だけど、また誘えばいいわ」

 はい、今日は黒子だけ居ない状況です。確かこの時期は、『能力者』達の事件が増加しているから仕事増えてるんだったかな? 『風紀委員』は大変だねぇ……というか、何か大事な事を忘れている気がするのだけど……まぁ、良いか。

「あ、これ可愛」
「うわ、初春~これ見て。子供っぽいパジャマだね」
「本当てすね、小学生くらいまではこういうの着てましたけど」
「私もこういうの持ってないですね。超どうでもいい事ですが」

 ……どこかで見た様なイベントだな。まぁ、本編中のどこかにあったと考えるとしましょう。というか何気に初春と佐天さんと絹旗ヒドス。今の流れから、御坂がこのパジャマを褒めようとした所に気付いてあげようよ。ほら、強がって子供っぽいとか言ってるし。

「あ、ちょっとあっち見に行こう!」
「あ、佐天さん待って下さいよー」
「私も超行きますよ~」

 あら、三人は向こうに行っちゃった。ここにいるのは俺と麦のん、滝壺に御坂か。御坂は何か……かなり気まずそうにパジャマを見てる。うむ、ここは俺が進めて上げ……

「気になってるんなら着ればいいじゃないの」

 って、麦のん?

「い、いやいやいや! こ、こんな子供っぽいパジャマに興味なんか……」
「みさかに似合うと思うよ」
「で、でも……子供っぽいし」

 滝壺まで。こ、この二人はどうしちゃったのかしら? というか、この二人がメンバー以外に気配りするなんて意外だわ。そしてこの流れだと、次に御坂の背中を押すのは私ですね、わかります。

「子供っぽくなんかないよ~、それに似合うと思うよ」
「そ、周囲からの評価なんて気にしてどうするの? 自分がやりたいように、着たい服を着ればいいじゃない」

 む、麦のんテラ優しい……頼むから、の優しさを普段の俺に分けてほしいと願う。

「そ、そうよね! それにパジャマなんだから、人に見せる訳でもないし!」
「そうそう、だから早く着てみなさいよ」
「ちょ、ちょっと待ってて!」

 そう言って御坂はパジャマを手に取り、鏡の前へと向かう。うむ、自分が着たい服を着てこそ人間ですよ。それに御坂ならどんな服を着ても似合う位美人だから、何の問題もないでしょうな。と、俺が考えていたら、突如麦のんが顔を俺の耳に近付けてきたでござる。

「ふふ、あれ着てきたら盛大に笑ってあげましょ♪」
「え゛……」
「馬鹿ね、ああいう風に無理して大人びようとしてる相手を……私が見逃すと思った? きっとムキになってくるわよ……ふふ、楽しそうじゃない」

 ……前言撤回。麦のんは相変わらずドSでした。きっと自分が悪者にならない様な話の進め方も考えてるんだろうなぁ。御坂は犠牲になったのだ……そんな麦のんと違い、滝壺は本当に御坂がパジャマを着る姿を楽しみに待っている様子だ。滝壺は良い子だね、麦のんみたいな汚れた大人になったら、いかんですよ? こんな事聞かれたら消し炭にされるな……怖えぇ。
 さて、麦のんが御坂をからかい終えたら、次は食料品売り場にでも付き合ってもらおうかな。今日の分は良いんだけど、明日の晩御飯には心もとない食材しかなかったからね。あとは……

「な、何でアンタがここに居るのよ!?」
「ん? 俺は付き添いだよ、ビリビリ中学生」
「ビリビリ言うな!」

 ……んぅ? 今の声、どこかで聞いた事があるような……
 今の声を聞いた麦のんと滝壺が、御坂の方へと移動し始めたので俺もそれに続く。

「みさか、どうしたの?」
「いきなり大声出したからびっくりしたじゃない。どうしたのよ」
「あ、いや……別に……」
「……わぁお」

 俺の心は今、物凄く沸き立っています。どういう表現を使えばいいのか分からないけど、今まで長い時間を禁書の世界で過ごしてきたけど、今回のを超える盛り上がりはない。御坂と話している少年はこちらに気付くと、軽く笑みを浮かべながら口を開いた。

「ビリビリの友達ですか? どうも、「上条 当麻」と申します」
「ビリビリって言うなって言ってんでしょうがぁぁぁぁ!」
「ぎゃああああ!」

 本物のヒーロー、「上条 当麻」。一度でも拝んでみたかった存在が目の前に……感動の余り声も出ず、俺は電撃を浴びせられている上条に、愛想笑いを浮かべる事しか出来ない。うわ、やばいですよ……御坂と遊んでいたらそのうち会えるかもしれないとは思っていたけれど、いきなりの不意打ちに俺の心臓はバックバク状態です。顔赤くなってないよね?

「ビリビリ? アンタそんな風に呼ばれてるんだ」
「違う! こいつが勝手にそう言ってるだけよ!」
「ビリビリ……可愛いね」
「た、滝壺さん!?」

 ひっひっふー、ひっひっふー……よし、落ち着いた。麦のんと滝壺が御坂に気を取られてる内に、俺は上条さんと話してみるぜ。うぅ、緊張する……

「こんにちは、上条君……でいいのかな?」
「あ、こんにちは……えーと」
「フレンダ、呼び捨てにしてもいいよ」
「おぉ、ご丁寧に。えっと、フレンダさんの方がいいかな? ちなみにおいくつ?」
「女性に歳を聞くのは関心しないよ~。私は十七歳、上条君は同じくらいかな?」
「と、年上でいらっしゃいましたか。俺は高校一年生です」

 うん、知ってた。まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど。しかし生上条さんかっこいいわぁ、これは助けられなくても惚れちゃいそうですね! 俺の場合は補正がかかってるけど。

「あは♪ もしかして若く見てくれたのかな? だったら喜ばないとね」
「ははは、そう取ってくれると上条さんは助かります」

 うっひょう! 上条さんは~、という台詞が聞けましたよ奥さん! 御坂達も原作キャラだったから出会った時興奮したけど、上条さんはそんなレベルじゃないね。
 何と言っても、禁書世界最高のヒーロー! 自分の正義を押しつけてたりしてウザイと言われる所もあるだろうけれど、それでもやはりヒーローとしては超一流ですよね? この物語に主役は三人いますけれど、やはり上条さんは好きだわ。抱いて! とか、俺がアホな事考えてたら、向こうから小さな女の子がこちらへと走ってきた。

「お兄ちゃーん」
「おっ、あったか?」
「うん、ありがとう!」

 おっと、いきなりで驚いた。そういえば原作で上条さんがここにいる理由は、途中で服を探してる女の子を見つけて連れてきたからだったっけ? うろ覚えだけど、冷静に考えると連れてくる上条さんも上条さんだし、ホイホイ来ちゃう女の子もアレだよね。もし相手がロリコンだったら事件になるところだし、上条さんもペドフィリア扱いされる恐れがあるよ。特に不幸属性が付いてると勘違いもされやすそうだわね。

「何この子? アンタ妹なんて居たの?」
「違う。この子が服を探してるって言ってたから、付き添っただけだよ。ビリビリは友達と買い物か?」
「だからビリビリじゃねぇっつーの! ……そうよ、文句ある?」
「文句なんてありませんのですよ……ただ、フレンダさんとかそっちにいるお姉さん達は初めて見たからな」

 その言葉に麦のんと滝壺が反応する。麦のんはジロジロと移動しつつ様々な方向から上条さんを観察し、滝壺は真正面からジッ、と見つめている。上条さん顔が赤くなってるけど、そういえば年上のお姉さんが好みなんだったっけ? その割には原作でインデックスに惚れてる様な描写あったけど。
 一通り見終わって満足したのか、麦のんは軽く溜息を吐いて口を開いた。

「ふぅむ……どこにでも居そうな男ね。どうしてアンタが気にしてるのか分からないわ」
「え……? ち、違う! 別に気にしてないから!」
「拡散力場が観測出来ない……? もしかして能力者じゃないの?」
「上条さんは生粋の『無能力者』ですよ。だから観測出来ないのかもな」
「嘘つけ! 私の電撃を全部防ぐ癖に!」
「……防ぐ?」
「『超能力者』の攻撃を?」
「あ……」

 御坂バカス。というか、知られた所で別にどうなる訳でもないでしょうに。あれか、自分以外に近付いて欲しくないっていうことか? でも、この時の御坂はまだ惚れてるって自覚ないんだっけ?

「アンタ、やっぱり能力者なんじゃないの?」
「いや、間違いなく『無能力者』だ。ただ、俺の右手には」
「おっまたせしましたー!」
「今戻りました。超良い物が買えたので満足ですよ」
「お待たせしましたぁ……あれ、その人は誰ですか?」

 って、うおおぃ!? せっかく上条さんから『幻想殺し』について聞けるところだったのに、何を邪魔してるんですか! そんなんだと社会に出てから通用しないですよ。KY扱いされちゃうですよ。俺はそんな事言えないけど。

「買い物は終わったの?」
「はい、私達はもう特に見る物はないですね」
「ふれんだも見たい物無い?」
「私は食材見に行きたいけど、別にすぐじゃなくても良いですよ」

 そんな物より上条さんと話したいです。深く関わったら大変な事になりそうだけど、ちょっとだけ話すだけなら何の問題もないでしょうや。とりあえず自然に話す為に、休憩ついでにカフェでも皆で行こうと誘ってみるか。と、俺が考えた瞬間だった。
 初春の携帯電話が鳴り始めた。初春はゆっくりと通話ボタンを押し、いつも通りののんびりとした口調で相手に応対するが、響き渡った大声に初春本人はおろか、その場にいる全員が目を見開く。そして響いた声の主は黒子だ。

『初春、『学園都市』の監視衛星が重力子の爆発的な加速を観測しましたの!』
「え……か、観測地点はどこですか!?」

 その言葉を聞き、ただ事ではないと気付いた全員の表情が険しくなる。唯一、上条と手を繋いでいる女の子だけは何が起こっているのか分からない様子だったが、他のメンバーは各々が緊張した顔つきになっている。俺も緊張した顔つきになってるけど、実はこれは別の理由です。
 というか『虚空爆破事件』って今日だったのかよ! 知ってたら御坂のお誘いなんて受けなかったのにぃぃ。と、とりあえず避難して、後は御坂や上条さんに任せようそうしよう。

『第七学区の洋服店、セブンスミストですの! すぐに『警備員』を手配するので、初春はすぐにこちらに』
「私、今そこにいます! すぐに避難誘導を開始しますから!」
『ちょ、初春!? まずは』

 黒子が全部言い終える前に、初春は電話を切った。いや、全部聞いてからにしないと後々失敗の元になっちゃうぜ。俺も大学でそういうミス何回もしたからね。初春が振り向く姿を見つつ、そんな事を考えはいますが、実は結構焦ってます。原作イベントには出来る限り関わらない方向で行こうと思ってたのに、いきなりこれはないなぁ……

「落ち着いて聞いて下さい。最近発生してる『連続虚空爆破事件』の、新しい標的が分かりました。この店です」
「あぁ、最近ニュースで超やってる奴ですか。馬鹿もいるもんですね」
「とりあえず、これから避難誘導を始めます。御坂さん、すみませんが避難誘導に協力していただけますか?」
「わ、分かったわ」
「私達も何か手伝うわよ?」
「……すみません。麦野さん達は、各階に人が取り残されないように御坂さんと避難誘導を」
「OK、滝壺は私と御坂のフォロー。フレンダと絹旗は入り口で見張ってなさい。パニックで入口に殺到されても困るしね。出来る?」
「超了解しました。フレンダ、行きましょう」
「あいあい」

 おぅ……ま、まぁ店の中に残らないだけ安全だよね。上条さんが爆発防いでくれるだろうから、何の問題もないだろうけど。

「俺にも、何か手伝える事はないか?」
「いえ、人手は足りてます。佐天さんとその子を連れて避難していて下さい」
「……分かった、無理はしないようにな」
「お姉ちゃん……がんばってね」
「佐天さんも、急いで下さい」
「あ……うん。初春も気をつけてね」

 そう言って、上条さんや女の子と佐天さんも俺達と一緒に入口へ急ぐ。しばらくして鳴り始める避難誘導のアナウンスが、店内を騒がしくし始めた。それと同時に店内が騒がしくなり、慌てて出口へ向かおうする人多数。このままだと入口でパニックになりかねないけど、まぁ、パワーのある絹旗さえいれば、とりあえず入り口で誰かが問題起こしても大丈夫でしょう。『風紀委員』じゃないから、後々問題になるかもしれんけど。

「ふむ、避難は超上手くいっている様ですね」
「そだね。『風紀委員』がいるから、皆それなりに安心出来てるのかも?」
「『超電磁砲』の存在も超大きそうですね」
「有名人だからねー」

 御坂は『超能力者』一の有名人だからねぇ。居るだけで安心感を煽るのかもしれない。逆に麦野は『超能力者』の中では特に有名ではない。それどころか御坂以外だと、一方さんと『心理掌握』くらいしか知られてなかったりするのよね。名前と異名だけは知られてるんだけど。

「とりあえず、入り口で避難誘導でもしてましょう。後は麦野達が超どうにかしてくれるでしょうし」
「おけー。皆さ~ん、焦らずに避難して下さい! すぐに『警備員』も来ますからねー」

 俺の声聞いて、少しずつ客は店の外に移動していく。特に大きな問題もなく、見える限りでは全ての人間が店外へと移動した。それに合わせて俺と絹旗も外に出る。

「さ、後は麦野さん達を待つだけだ」

 こうやって安心してますけど、普通なら俺はパニックになっておりますよ。こんなに落ち着いていられるのは、この事件の結末を知っているからなんですよね。そう、この事件は女の子が居ないという理由で上条さんが店内に戻……

「しかし、散々に目に会っちゃったなぁ。あの子達も大丈夫だと良いんだけど」
「お兄ちゃん、ごめんね。私がこんな場所に連れてってって言ったから……」
「大丈夫、気にしてないよ」

 上条さんが……
 って、何でここにいるのぉ!?

「あ、あれ? 上条君、外に出てたの?」
「ん? まぁ、残ってたら邪魔になっちゃいそうだったしな。御坂は様子を見に戻るって言ってたけど……流石にこの子を一人で置いていく訳にはいかないしな」

 の、のおぉぉぉぉ!? そ、そうだ。上条さんと御坂は、原作で女の子がいなくなったからという理由で店内に戻るんだった! と、という事は爆発を防ぐ手段が……い、いや、あの爆発はあの子に持たせて近くまで持っていかなければ、初春達に危害はない筈。だ、だから問題ない……

「す、すいません!」
「? 超どうかしましたか?」

 焦った様子で俺と絹旗に声をかけてきたのは、一人の女性。明らかに学生ではないので、この『学園都市』に住む職員の一人かな? その様子は鬼気迫ると言った感じで、どう見ても普通の状態じゃないね。とりあえず落ち着かせないと……

「落ち着いて下さい、どうかしたんですか?」
「じ、実は……子供と避難中にはぐれてしまって……!」

 ……え?

「ふむ、では店内に超残っている可能性がありますね」
「わ、私どうしたらいいか……」
「大丈夫です、中にいる『風紀委員』に超連絡してみますから」
「大丈夫か? 俺が様子見に行っても……」
「今から行っても応援に来る『警備員』や『風紀委員』の邪魔になる確率の方が高いです。中にいる麦野達に超任せましょう」

 あわわ……こ、これは転生物に良くある歴史の修正って奴? 本来ならこの子が初春にぬいぐるみを渡す役だったはず、その子がいなくなったから代わりの子が用意されたのか? でもそれなら上条さんを向かわせてくれたって良いじゃない! こ、これじゃ爆発から初春達を守る事が出来ないんじゃ……と、俺が考えた瞬間でした。
 轟音と共に、白い光線がセブンスミストの壁をぶち抜いて虚空へと消えていきました。突然の事に、場は一瞬にして静寂に包まれるが、すぐに周囲の人間が騒ぎ始めた。「あれは何だ?」、「あれが爆発なのか?」、「かっこいい~」、「中の人は無事なのか」等の声が周囲に響き渡る。上条さんと佐天さんも突然の事に驚いている様子だけど、俺と絹旗だけは今の光が何なのかすぐに分かっている。そして鳴り響く俺の携帯電話。

「もしもし? 麦野さん、今のは……」
『ストップ、その話は後よ。フレンダ、絹旗と一緒にこれから指示する場所へ行きなさい』
「……何かあるの?」
『ふざけた真似した犯人をとっ捕まえなさい』





 指示された通りに路地裏を進んでいくと、居ましたよ……貧弱眼鏡君が何やら一人でわめいております。名前は……何だっけ? 流石に覚えてないなぁ。

「奴ですね。フレンダは私の後ろから着いてきて下さい」
「りょっかい」

 一定の距離まで近づいたところで、絹旗が大きく足音を立てる。その音で気がついたらしく、眼鏡は驚いた様子でこちらに振り向いた。

「『連続虚空爆破事件』の超犯人ですね、私は別に『風紀委員』じゃありませんが……超着いてきてもらいますよ」
「な……な、何の事だか、分からないな……僕は、ただ」
「あ、ちなみに誰も怪我してないよ。良かったね」
「な……そ、それは良かった。爆発もしてなかったみたいだし……」

 それを聞いた俺は軽く溜息を吐き、絹旗は目を細めて眼鏡を見やる。特に絹旗は暗部に長くいるだけあって、その視線は眼鏡をビビらせるのに充分な効果があったみたい。俺も暗部モードの麦のんや絹旗に睨まれたら、土下座して謝るくらいおっかないし。

「私も、フレンダも、あの店に爆弾があったなんて超一言も言ってませんよ」
「えっ、あ……そ、それは、あの店から出た光が爆発の正体なんじゃないかって……」

 眼鏡がゴソゴソとバッグから何かを取り出そうとしてる。いや、あれだけ手でまさぐってるのにばれてないと思ってるのかな? 絹旗は既に『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を展開してるみたいで、眼鏡が何かしようとした瞬間突撃する気満々みたい。眼鏡、悪い子とは言わないから大人しくしておいた方が……

「思って、さぁ!!」

 眼鏡が何か、金属っぽい物を投げようと腕を振りかぶった瞬間、絹旗が思い切り踏みこんで突撃した。眼鏡はその対応に焦ったらしく、金属片を投げるが事が出来ずに正面から絹旗のタックルを受けた。うわぁ、痛そう。ちなみに本気で絹旗がぶつかれば、あの眼鏡君しばらく入院レベルか、下手したら死んでます。『窒素装甲』マジ強い。
 そのまま眼鏡の関節を極め、その場に引き倒す。眼鏡は何も出来ずに呻きながら、「畜生」とか連呼してます。ちょっと可哀想だけど、幼女を傷つけた罪は重いのですよ! 傷ついてないけど。
 ……あれ? 確かコイツをはっ倒した後に黒子が来てくれるんじゃなかったっけ? そしてその前に御坂が何かを言って、コイツの改心フラグが出来てた様な……このままだと、眼鏡はぶちのめされただけで、何も変わらないんじゃ……

「では、このまま『風紀委員』に超突き出します」
「絹旗、ちょっと待って」
「はい? どうしたんですか、フレンダ」
「あのさ……」

 これ以上原作から剥離させる訳にはいかんですよ。この眼鏡が何に関与するとは到底思えないけど、このままだとグレますよコイツ。それに何だかんだで眼鏡も『幻想御手』の犠牲者だし、何となく可哀想だと思うしね。

「少し、この子と話をさせてほしいんだけど」





「はい、どうぞ~」
「ど、どうも……」

 ここは近くの公園であります。あの後、絹旗に滅茶苦茶反対されたんだけど、本当に少しだけという条件付きで納得してもらえました。ちなみに『風紀委員』を呼んだとのことでしたので、それまでの間だけという条件です。まぁ、十分もあればいいでしょ。あと、今渡したのは近くにある自販機で買った飲み物です。俺は普通のコーヒー、向こうはヤシの実サイダー。原作通りの飲み物で比較的まともなのをチョイスしました。
 しかし、どう話そうかなぁ。ぶっちゃけ、俺は人に説教するのは慣れてないし、小さい子なら色々と話し方知ってるんだけど。

「アンタさ……」
「ん?」

 おっと、向こうから話しかけてきてくれたわ。でも何となく棘がある感じで声かけてきたね。

「僕と何を話したいっていうんだよ……」
「ん~、悩み相談かなぁ?」
「どうせ、アンタも僕の事馬鹿にしてるんだろ?」
「え?」
「さっきの女の子も、どうせ凄い能力者だったんだろ? そうやって、力の有る奴は力のない奴を下に見てるんだ。アンタもどうせそうなんだろ?」

 イラッ、としちゃったけど我慢我慢。実際、眼鏡が言う事は特に間違ってないしなぁ。御坂だって力が無ければ、あんなに派手な事は出来ないし、麦のんも然り。『学園都市』では高能力者こそが正義、っていう風潮があるのも否定出来ない。だけどさ……

「所詮、自分を守れるのは自分だけなんだ。だからそうしたのに、僕の何が悪いんだよ! 僕は何も……」
「悪い事でしょ?」
「え……?」
「沢山の人を傷つけて、女の子に怪我をさせそうにまでなって、悪くない事なの?」
「と、当然だろ……だって、僕は……」
「辛かった事も、苦しかった事も、そういう事なんて考えなくても悪い事は悪い事だよ」

 うん、自分が苦しいからって幼女を怪我させて良い事にはならんよ。確かに苦しかった事は認めるし、そういう事もあるんだって事は分かるけどね。だけど、それが人を傷つけて良い事になるのかと言えば、答えはノーだ。
 眼鏡は俺の言葉を聞いて項垂れている。うう、これでは余計に落ち込ませている様な気がする。俺じゃ御坂みたいにはなれないのか……

「……じゃあ、どうすれば良かったんだよ」

 ん?

「どんなに努力しても、報われない僕達弱者は、どうすれば……良かったっていうんだ! この街じゃ、才能という壁が邪魔をする! だったら、手に入れるしかないじゃないか……どんな事をしても、力を手に入れるしかないじゃないか!」
「それで、満足出来た?」
「え?」
「力が手に入って、それで貴方の言う才能がある奴らに復讐出来て、満足出来た? 楽しかった?」
「……」

 そこで俺は一息吐いて「にひひ」と笑う。

「私ね、『無能力者』なんだよ」
「そ、そうなのか?」
「うん。骨の髄から『無能力者』、あーんど『置き去り』なのです」
「チャ、『置き去り』……」
「勿論、貴方より酷い人がいるから頑張れって意味じゃないよ。それでも、私は貴方を羨ましく感じるんだ……能力に憧れた事も、一度や二度じゃないからね」

 これは本当。仕事するたびに思うんだけど、マジで何かしら能力使ってみたいの。麦のんレベルじゃなくて良いから、手からかめはめ波出してみたいとか思うんですよね。中二病乙。

「でも、私はこの街が能力だけじゃないって思うんだ。だって、そんな考え楽しくないでしょ?」
「楽しく……」
「皆が皆、能力能力って騒いでたら、楽しくないよ。それに、能力がその人の全てじゃないってことを、私は知ってるからね」

 じゃなきゃ、浜面を否定することになるし。浜面マジでかっこいいです。

「人には沢山魅力的な場所があるよ。全員ね」
「……僕も」
「ん?」
「僕にも……何か、能力だけじゃない所があるのか?」
「当然っ! 貴方にも、沢山魅力的な場所があるよ!」
「ッ……!」

 あれ、泣きだしちゃった! 何で、俺何か悪い事言った!? と、とりあえずハンカチを渡すとしよう……あぁ、おニューのハンカチが涙と鼻水で汚れていく。

「す、すみません……」
「良いって、気にしないよ。とりあえず、私の言いたい事は……これから大変だと思うけど、頑張って。私は応援してるよ」

 そう言った瞬間、突如後ろに気配を感じて振り向いたら、黒子が立っていたでござる。テレポートで来たんだろうけど、心臓に悪いから止めてほしい……

「絹旗さんに、こちらに居ると聞いたのですが……貴方が『連続虚空爆破事件』の犯人でよろしかったですの?」
「……はい、僕で間違いないです」

 うむ、素直になってくれたか。とりあえず俺の役割はこれで終了かな? 疲れたわ……

「あ、あの!」

 おや、眼鏡。まだ俺に何か用かい? と、俺が視線を向けると手錠みたいな物をつけられたまま携帯電話を差し出す眼鏡。あー、もしかして……

「あ、あの……あ、貴方の言葉で目が覚めました。ま、また相談に乗ってくれたらっ、て……ははっ、やっぱり、僕みたいなのは気持ち悪」
「いいよ~、赤外線通信でいい?」
「えっ……い、いいんですか!?」
「勿論だよ。相談したい事があったら、適当にメールでも電話でもどうぞー」

 まぁ、しばらくは無理だろうけど。何せ『警備員』から色々と質問攻めされるだろうし、そろそろ意識が無くなる頃合いだろうしね。ただ、俺は悩める男の子を見捨てたりする程非道ではないのですよ。ノリで「お前洗ってない犬の匂いがするんだよ」って言いかけたのは秘密です。とりあえず通信して……これで良し。

「では、わたくしはこのまま連行しますわ。フレンダさんもお気を付けてお帰り下さいまし」
「はいはーい。えーっと……介旅君かな? 頑張ってね」
「は、はい……ありがとうございました」

 そう言うと、二人はそのまま近くに来ていた車に乗って行ってしまった。ふぅ、これで今回の事件は万事解決かしらね。途中でどうなる事かと思ったけれど、上手くいって良かったわー。

「終わりましたか、フレンダ?」
「あ、うん。我儘言ってごめんね」
「別に気にしてません。フレンダは超いつも通りだと思いましたけど」
「えー、私はあんまり我儘言わないよ?」
「はぁ……まあ、いいでしょう。とりあえず戻りましょう」

 そう言って歩き始める絹旗の後ろに遅れないように着いていく。さて、とうとう大きなイベントも開始した事だし、本編介入も目と鼻の先だな。とりあえずこの『幻想御手』を乗り越え、何としてでも生き延びてやるぜぇ! と心に決めて、俺は歩きだす。まぁ、その前に今日の晩御飯の仕上げと風呂の準備しなきゃね!



おまけ



「これで粗方避難は終わりましたね」
「そうだね」
「滝壺さんもすいません。『風紀委員』でもないのに、こんな事頼んじゃって……」
「私は気にしてないよ」

 滝壺の言葉に、初春は軽く笑みを浮かべる。滝壺もそれにならって微笑んだ。後は『警備員』が到着するのを待って、現場の権限を引き継ぐだけだ。
 と、その時初春は階段の近くにいる少女の存在に気付いた。滝壺も気がついたらしく、二人は駆け足でその子に近付く。

「避難に遅れちゃったの? 大丈夫、私達が下まで連れて行ってあげますね」
「ううん、ちがうの。めがねのお兄ちゃんから、『風紀委員』のお姉ちゃんにこれ渡してって……」

 そう言って蛙のぬいぐるみを差し出す少女、初春がそれを受け取ろうとした瞬間、滝壺が突然そのぬいぐるみを手にとって放り投げた。何が起きたか分からない初春と少女を、滝壺は覆いかぶさるように自分の下に倒す。

「た、滝壺さ……!?」
「あれが爆弾……!」
「えっ……?」

 初春の脳裏に、最悪の光景がちらつく。このままでは『風紀委員』の自分が助けられ、滝壺は大けが……下手すれば死ぬ可能性もある。また、一瞬視界に移ったのは御坂と麦野ではなかったのか? どうやら下の階の避難を終えて上に戻ってきたらしい。

(ど、どうし……どうしよう!!)

 初春の頭がパニックに陥り、御坂もコインを取り出そうとするが手から滑り落ちる。ぬいぐるみが内側に飲み込まれていくように潰れ始め、滝壺が衝撃に備えようと体を固くし、初春が涙が溢れた瞳を固く閉じた瞬間だった。
 白く輝く光線が、向こう側の壁ごとぬいぐるみを飲み込んだ。威力は収まるを知らず、壁をぶち破って外へと消えていく。その光景に御坂は驚いた視線を麦野に向け、滝壺はホッと一息吐いて立ち上がる。初春は何が起こったのか分からず、茫然とその光景を見やっていた。

「滝壺、大丈夫?」
「平気。むぎの……ぬいぐるみと同じ信号を掴んだよ」
「おっけー。フレンダ達に任せましょ」

 そう言って、麦野は携帯電話を取り出した。


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