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No.24886の一覧
[0] 「とある金髪と危険な仲間達」【とある魔術の禁書目録 TS 憑依?】[カニカマ](2012/01/31 15:53)
[1] 第零話「プロローグ」[カニカマ](2011/04/28 14:54)
[2] 第一話「私こと藤田 真はまだ元気です」[カニカマ](2011/04/28 14:56)
[3] 第二話「ファーストコンタクト」[カニカマ](2011/09/08 00:08)
[4] 幕間1「フレンダという名」[カニカマ](2011/09/08 00:09)
[5] 第三話「Nice Communication」[カニカマ](2010/12/12 07:46)
[6] 第四話「とある奴隷の日常生活」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[7] 第五話「今日も元気に奉仕日和」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[8] 第六話「ルート確定余裕でした」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[9] 第七話「  闇  」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[10] 幕間2「私の所有物」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[11] 幕間3「『道具(アイテム)』は闇へ……」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[12] 第八話「この台詞二回目ですね!」[カニカマ](2011/04/28 15:02)
[13] 第九話「暗部の常識? 知らぬぅ!」[カニカマ](2011/09/08 00:16)
[14] 第十話「『俺』の生き方は『私』が決める」[カニカマ](2011/09/08 00:18)
[15] 幕間4「知らぬ所で交錯するっていう話」[カニカマ](2011/04/28 15:04)
[16] 第十一話「原作キャラ可愛すぎです」[カニカマ](2011/04/28 15:05)
[17] 第十二話「友達が増えたよ!」[カニカマ](2011/04/28 15:06)
[18] 第十三話「来てしまった今日」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[19] 第十四話「とある金髪の戦闘行動(バトルアクション)」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[20] 第十五話「幻想御手と無能力者」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[21] 第十六話「話をしよう」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[22] 第十七話「電磁崩し」 幻想御手編 完結[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[23] 予告編『絶対能力進化計画』[カニカマ](2011/02/10 17:36)
[24] 第十八話「とあるお国のお姫様」[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[25] 第十九話「とあるお国のお友達」[カニカマ](2011/04/28 15:11)
[26] 第二十話「予想外」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[27] 第二十一話「やるしかない事」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[28] 幕間5「認めたくない過去、認められない未来」[カニカマ](2011/04/28 15:13)
[29] 第二十二話「フレンダですが、部屋内の空気が最悪です」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[30] 第二十三話「偽善」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[31] 第二十四話「覚悟完了」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[32] 第二十五話「最高の危機」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[33] 幕間6「それぞれの戦い・前篇」[カニカマ](2011/04/28 15:16)
[34] 幕間7「それぞれの戦い・後篇」[カニカマ](2011/04/28 15:25)
[35] 第二十六話「戦いの終わりに」『絶対能力進化計画』編 完結[カニカマ](2011/04/29 09:21)
[36] 第二十七話「お見舞い×お見舞い」[カニカマ](2011/05/23 01:07)
[37] 予告編『最終信号』編[カニカマ](2011/05/23 01:10)
[38] 第二十八話「復活ッッッ!」[カニカマ](2011/06/05 12:46)
[39] 第二十九話「俺、故郷に帰ったら結婚するんだ……」[カニカマ](2011/06/29 20:01)
[40] 第三十話「白と毛布とイレギュラー」[カニカマ](2011/07/16 15:41)
[41] 第三十一話「(話の)流れに身を任せ同化する」[カニカマ](2011/07/17 23:48)
[42] 第三十二話「朝一番」[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[43] 第三十三話「ミサカネットワーク」[カニカマ](2012/01/31 15:49)
[44] 第三十四話「逃げたいけれど」[カニカマ](2012/01/31 15:52)
[45] *「簡単なキャラクター紹介」*キャラ追加&文追加[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[46] 番外1「とある首輪と風紀委員」[カニカマ](2011/04/28 15:18)
[47] 番外2「転属願い届け出中」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[48] 番外3「二人のお馬鹿さんと一人の才女」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[49] 番外4「とある部隊の不幸体験」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[50] 番外5「宝物」[カニカマ](2011/04/28 15:20)
[51] 番外6「寝顔シリーズ」<『妹達』、佐天さん追加>[カニカマ](2011/06/25 16:11)
[52] 番外シリーズ1「『学園都市』の平和な一日・朝」[カニカマ](2011/04/28 15:21)
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[24886] 第十話「『俺』の生き方は『私』が決める」
Name: カニカマ◆b465aa7c ID:500ae757 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/08 00:18
「『俺』の生き方は『私』が決める」



 絶賛逃亡中、なう。

「いたぞ、あっちだ! 逃がすな!」
「クソが、待ちやがれぇ!」
「誰が待つかっつーの!」

 のんびりしてから数分しか経っていませんが、先程速攻で見つかったフレンダと幼女です。いやね、隠れて移動しようとしてんだけど、スニーキングスキルが皆無な俺にはレベルが高かったらしく速攻で失敗。スネークさんや某101のアイツくらいにスキルが高くなりたいところだね。
 とまぁ、冗談めいた説明で己をごまかそうとしてるけど、今の状況はやばすぎる。麦のんに電話しようにもこの状況では電話のかけようがないし、だからと言って他に助けを期待する事も出来ない。今の所、小さい体と素早しっこさを利用して路地を動き回り、大人が通れない様な狭い道などで攪乱してはいる為そう簡単には捕まらないだろう。だが、それは俺だけの場合の話だ。
 走りながら手を繋いでいる幼女の様子を窺う。既に息は荒く、走っているどころか動くのさえきつそうだ。最初の俺が手を引っ張った全力疾走が相当負担になったらしい。今にも倒れてしまいそうな程、顔色が悪くなっている。

「……こっち!」

 とりあえず今のまま逃げ続けても、すぐに限界が来てしまいそうだったので、近くにあったビルの中に入る。廃ビルかな……ガラスの破片やコンクリートの破片やらが床に散乱しており、壁にはスプレーで描かれたアートちっくな絵があった。スキルアウトの根城かとも思ったけど、どうやらただ単純に遊んだりしただけか。じゃなきゃこんなに散らかってる筈もないしね。
 通路の途中の防火扉を閉め、近くにあった板をつっかえ棒にする。これでしばらくは時間が稼げて、この子を休ませる事が出来る筈だ。

「大丈夫?」
「ぜぇ……ぜぇ……」

 これは辛そうだなぁ……見た感じで想像できてたけど、この子実験か何かの影響で体力が無いっぽい。さっきから走るスピード落としたりして対処してるけど、もう走る事は出来なさそうだ。だからといって、この場で逃げるのを中止する訳にはいかない。

「とと、この隙に電話を……」

 携帯電話を取り出し、麦のんの番号に電話をかけなきゃ。あいつ等の戦闘力は知らないけど、いくらなんでも麦のんがいればどうとでもなるでしょ。強者揃いの『学園都市』でも、麦のんに勝利できると確信出来るのは、せいぜい『一方通行』、『未元物質』、『ヒューズ=カザキリ』、『エイワス』、『統括理事長』、『削板 軍覇』くらいかな? 第三位である『超電磁砲』の御坂は、確実に勝てるという保証はないので除外。実際全力出せば瞬殺出来るって設定であるしね。麦のんも吹っ飛ぶらしいけど。

「麦野さん~、早く出てよ~!」

 ちなみに言葉に出すときは、一人でいる時も麦のんではなく麦野さんって呼んでます。下手に聞かれたら洒落にならないので。って、今はそんなこと考えてる暇じゃない。
 耳に当てている携帯から響く呼び出し音が途切れ、ブツッという音と共に電話が繋がった。おし、後は麦のんに助けを求めるだけ……

『おかけになった電話は 現在電波が届かない場所にいるか 電源が』
「って、何イィィィ!?」

 うぉぉおぉ!? つい大声出しちゃった! む、麦のん……これは一体どういうことよ。連絡が出来ない携帯電話を渡して一体何の得があるっていうのさ。いや、そんな簡単なミスを麦のんがする訳ないよね。
 もしかして最初の位置から離れすぎたのか? それともこの建物が悪いのか……いや、ぶっちゃけそんなこと悩んでる暇はない。何とかして麦のんに連絡を取らないと、俺もこの子も一緒にお終いだ。そんな考えに続く様にして、扉の向こうから聞こえる声。

『ここか!?』
『クソッ、向こう側から何かで押さえつけてやがる!』
『ぶち破れっ! どうせ遠くまでは逃げれん!』

 来るの早いよ! くそっ、あんなボロボロの消化扉と木の板じゃ、あんまり長くは持ちそうにない。急いで逃げないといかん! とりあえず携帯電話をポケットにしまい、幼女の手を取って走ろうとするが、幼女は床に腰を下ろしたまま動いてくれなかった。も、もしかして……

「だ、大丈夫?」
「……たて、ない」

 のおおおぉ、やっぱりか! 少しは休んで体力は戻っているのかもしれないけど、元々この子が長距離を走るのには無理があったみたいだ。息は荒いし、汗も尋常じゃない量が出てる。こ、この子これ以上動かしたら死ぬとかない、よね?
 そんな事やってる間にも、扉の向こう側から何かをぶつける音と扉が軋む音が響き渡る。このままじゃ、あと数分で扉は破られる。要するに、何か考えたり助けを期待してる時間はないか……仕方ない。
 そう考えた俺は幼女に背を向け、その場にしゃがむ。幼女は不思議そうな顔して俺の背中を見たまま硬直し、動く気配がない。ちょっと、時間ないから早くしてほしい。

「乗って」
「……えっ?」
「早く!」

 俺の声にビクッと反応し、のろのろと背に乗る幼女。足に力を込めて立ちあがると、ずっしり感じる重量感。うぐぅ、やはり小さくてガリガリの女の子といえども、現在俺の体になってるフレンダボディ(しかも鍛えてないしね)ではかなりキツイ。こんな状態でいつまで逃げ切れるか分からんが、やるしかない!
 根性で近くにあった階段を速足で上がる。いや、走りたいのは山々なんだけど、ぶっちゃけ足がこれ以上の速度で動いてくれませんです。今までだらけてきたツケがこんな所で回ってくるとは思いもしなかったのだわ……

「根性……根性、も一つ根性っ!」
「……」

 掛け声を上げて一つ一つ段差を上がっていく。まだ三階くらいしか昇ってないが、既に足はかなりキテます。汗と動機も凄いことになってるし、情けない事に限界が近いのかもしれん。だけどここで諦めたら男……いや、女が廃る……のか? うん、女が廃る! 一度決めたら最後までやり通すっていうのが、死んだ爺ちゃんの遺言なのよ。だからこの子を助け、更に最初に決めた事……つまり「暗部の中を生き残り、この世界を満喫する」まで俺は諦める訳にはいかんのだ。だから動け、動いてくれ俺の脚ぃぃ。

「おねえちゃん……」
「んぅ? 何~」

 背中にいる幼女が話しかけてきたでござるの巻。さっきまで必要最低限の事しか口にしてなかったので、急に話しかけてきた事実に若干驚いた俺はいつもの気楽な感じで返事を返してしまいました。そんな状況じゃないんだけど……

「おねえちゃん、つかれたんでしょ?」
「……まあ、ちょっとだけね」
「ならさ、わたしをおいていきなよ」
「え……」

 え、ちょ……なにこの子こわい。こんな緊迫した状況下で、こういう言葉をのんびりとした口調で言われると……何かアレ、凄くホラーちっくで怖いです。
 俺が若干戦慄しているのにも構わず、幼女は言葉を続ける。

「おねえちゃんだけなら、あのひとたちからにげられるでしょ?」
「そりゃあ、まぁ……」
「じゃあ、きまりだね」
「で、でも……そうなったら貴方はどうするの?」

 うん、俺は逃げ切れるかもしれないけど、自分はどうするのって話。もう一歩も動けなさそうだし、俺が置いてったらこの子また捕まりますよね。そうしたら今までの苦労(主に俺の)が水の泡。どーするつもりじゃい、という視線を幼女に向ける。
 そんな俺の視線に、幼女は全く表情も変えずに口を開く。

「わたしはいいの、おいていかれるのなれてるから」
「慣れてる、って……」
「ぱぱも、ままも、わたしをおいていったから……」
「……」
「だからいいの。おねえちゃんも、わたしをおいていきなよ」

 この言葉を聞いて、俺は改めて『置き去り』という事実を知った気がしたと思う。
 そうだよな、俺みたいに田辺さんや麦のんと出会えるなんて、本当に一握りの事なんだ。そりゃあ、全ての『置き去り』がこの子の様な道を歩む訳じゃないだろうし、こんな酷い目に会うのが当たり前って訳じゃない。そして、一々こんな事を気にしてたら、自分の身が危ないのが暗部なんだ。現に関わった俺が危ない目に会ってるしな。
 そしてこの子の言うとおり、ここは置いて去るのが当たり前の行動なのかもしれない。この子とは赤の他人だし、見捨てた所で誰が咎める訳じゃない。最初に決めた事も、黙っていれば何時かは風化する記憶の一つになるだけだ。だからここは……

「だが断る」

 その幻想をぶち殺す、しかないね。

「え……?」
「このフレンダが最も好きな事の一つは……変な考えを持っている奴に「NO」と言ってやる事な訳よ」

 自分が危険? この子を見捨てる? そりゃあ、これが小説の世界で……そして自分がそれ見ている側だったら、「見捨てていくのも手だよね」って事になるかもしれないけどさ。
 だけど、今目の前にいるのは本物の人間な訳で……そして今自分がいるのも、物語の中なんて幻想ではなく立って歩ける現実な訳です。自分の安全が最優先でも、やらなきゃ駄目な事が……人として譲れない事があるよな。何よりこれを咎める人はいないけどここで見捨てたら、危なかった俺を助けてくれた麦のん、身寄りがなかった俺に優しくしてくれた田辺さん、それにレイちゃんと陸君に顔向け出来ない気がする。
 もう、こんな事になるなんて……だけど、こういう時くらいかっこつけたいんですよ。

「私はヒーローだから、その理論は通じないのよ」
「ヒーローは……どうするの?」

 その言葉に、俺はいつもの「にひひ」ではなく……にっ、と笑い応える。

「ヒーローっていうのはね……我儘で、身勝手で、自分の理想を人に押し付けて、突き進んでいく人の事を言うの。だから私は貴方の言う事を聞く訳にはいかないって訳よ」

 あー、俺臭くて恥ずかしい事言ってる。だけど、この子は絶対に見捨てない、もう決めたもんね。残った武器は弾が一発だけ入った拳銃一丁。これで、どうにかするしかない、のか? うぅ、かっこつけた手前どうにかしたいけど、どうにか出来るのかこれは……?
 そう考えていた俺の耳に、何か壊れる音が聞こえた、どうやら扉が破られたらしい。次いで、階段を上がってくる足音。話しながらも階段は昇り続けていたので、俺は既に四階まで足を進めている。まぁ、大人が駆け足で階段上がればこの程度の差は一瞬で消えてしまうので、アドバンテージになりもしない。すぐにこの差もなくなる筈だ。
 つまり、俺に出来る事はただ一つ。この場で迎え撃つしかないって事。拳銃一丁、弾丸一発のこの状況でどうしろと言うんだ……いや、どうにかするしか……とりあえずやる事はこれかな。
 手頃な部屋に入って中を見回す。そこにあったのは錆び着いたロッカー。あの中というのは可哀想だけど、贅沢は言ってられないか。

「この中に入って、静かにしてるんだよ」

 そう言って背中から幼女を下ろし、中に押し込む。狭いけどこの子くらいの大きさなら余裕で入るね。とりあえずこの子がいると危ないし、拳銃を撃つのも神経使うからな。さっきはまぐれ当たりしたけど、俺銃なんてド素人以下の腕前な訳だしね。

「お、ねぇちゃんは……」
「ん~?」
「おねえちゃんは……どうするの?」
「ヒーローのやる事は決まってるよ」

 そう言ってロッカーの扉に手をかける。さぁ、ここから先は麦のんもいない、助けも期待出来ない。自分だけの力で、暗部の男三人をどうにかしないといけない。絶望的な状況かもしれないが、やるしかない。

「悪党共をこらしめて、そして勝つ。それがヒーローって訳よ」

 「にひひ」と笑い、ローカーの扉を閉じた。さっきからテンションが上がってフレンダの真似しまくってるけど、良い子の皆は変な口調は真似しないようにね!





 先程幼女と別れてから五分位が経ちました。今俺が居るのは、三階の廊下です。さっき幼女を隠したのが四階なので、ただ一階降りただけの場所におります。いや、四階でも良かったんだけど、とりあえず幼女から少しは離れた方がいいかなぁと思ってね。
 緊張で心臓が凄まじい速度で鼓動を重ねる。これから俺は、正面からあいつ等と対峙しなきゃいけない。階段を上がる足音が近付くにつれて、足が震えて体に上手く力が入らなくなってきた。
 とりあえず、こんな状態で本当に上手くいくかなぁ……他に方法が思い浮かばなかったけれど、これくらいしか方法を思いつかなかった……成功するかなぁ。いや、これしか方法ないんだから成功させるしかない。

「い、いたぞ……!」
「手間かけさせやがって……!」

 あ、来た。えっと、ごついの一人にチンピラ三人……よし、全員いるね。これで後ろからいきなり奇襲とか、やった、第三部完! と思ったら一人残ってたとかはなさそう。しかし来るのに随分時間がかかってたけど、やたら疲労してるところを見るとこいつ等一階と二階を念入りに調べてから来たな。考えたりする時間がもらえたのはいいけど、ここを突破されたら全階念入りに調べ上げられるか。勿論、あの子も絶対に見つかるね。やはりここでやるしかない。
 よし、覚悟は決まった。さっきまでは緊張でどうにかなりそうだった俺の体も、こいつ等を見たら開き直ったのか震えが収まっている。よし、後は俺が上手くやるだけだな。
 警戒する様子もなく、イラついた様子で距離を詰めてくる男達に対して俺は余裕の笑みを浮かべて、極めて冷酷(自分基準)な声で口を開く。

「あら、動かない方がいいと思うけれど」
「……何ィ?」

 それを聞いた男達の足が止まる。よし、とりあえずは成功か?

「こんにちは、『学園都市』の暗部の皆様。私は……いや、私の事は好きな様に呼んで構いませんわ」
「お前……何者だ?」

 その言葉に、俺はクスクスと嗤う。

「知っても意味のない事じゃありません? 貴方達はここで消える運命にあるのですから」
「なん、だと……?」
「私が何の理由もなく、ここに逃げ込んだと本気で思っているのですか? そして、貴方達がのろまに下を捜索している間に、何の対策も立てていなかったと本気で思っているのですか?」
「テ、テメェ……もしかして罠でも仕掛けやがったのか!?」
「フフフ……ご想像にお任せします。ですが一つだけ……無暗にその辺を歩き回らない方がいいと思いますよ。特に、先頭の貴方は危ない。後一歩で……いえ、何でもありませんわ」
「クッ……!」

 クフフ、ビビってるビビってる。そうだ、己の足元にある罠の恐怖に恐れおののくといいさ!
 まぁ、全部嘘っていうかハッタリなんだけどね! 拳銃一発、武器は他に何もない状況ではこれしか思いつきませんでした。いや、そんな簡単に引っ掛かるかと言われたらそれまでなんだけど、俺は先程幼女から得たヒントを使ってこいつ等に挑んでいるのです。
 それは即ち、ギャップ。幼女が危ない状況にも関わらず、笑顔でいたり余裕の態度を取っていたりすると、不思議と警戒しますよね? 少なくとも俺は、先程の少女の笑みが怖くて溜まらなかったです。そして狙い通り、こいつ等警戒して近付いてこなくなりました。よし、このままでいける!

「賢い選択ですね、私としても無駄な犠牲を出すのは心苦しいので、動かないで頂けるとありがたいのですよ」
「……目的は何だ?」
「貴方達と同じくあの子です……いえ、貴方達が外の人間に用事があるように、私はあの子自身に用事があるのですよ」
「外ならともかく、『学園都市』の中ではそれほど価値があるとは思えんが?」
「確かにそうですが……まぁ『統括理事会』も一枚岩ではないという事だけ申しておきます。さて、無駄話はこれまで」

 そう言って、俺は銃口を相手のリーダーに向ける。この距離から当たるとは思えないけど、ここは自分が優位に立っているという状況が鍵なのだ。一発しかないし牽制にもならないだろうけど、ここは利用させて頂くぜぃ。

「さぁ、ここで消されるか……それともここは退いて再起を図るのか。貴方達の自由ですよ。私としては後者を進めますが」

 うん、だから早く逃げてくだちぃ。消されるとか……少女の分際でワロスレベルな程無理があるのです。まぁ、状況はこっちが圧倒的に有利だし、逃げてくれるとは思うんだけど……
 とか考えてたら、ゴリラが後ろにいたチンピラの一人に視線を向ける。んぅ? 一体何を……

「どうだ、何かあるか?」
「いんや、何も無い。アイツの言ってる事は全部嘘だな」

 それを聞いた瞬間、俺の喉が干上がるのとゴリラ達が笑みを浮かべるのは同時だった。慌てて拳銃をゴリラに向けるが、一番先頭にいたチンピラに距離を詰められて拳銃を弾き飛ばされる。

「ぐっ……ぎっ!?」

 次いで突進してきたゴリラの巨躯に、俺の体は易々と吹き飛ばされた。近くの壁に叩きつけられ、激痛が体を走る。そんな俺に容赦なく、チンピラの一人が頭を踏みつけてきた。やばい、痛いってもんじゃない。痛みで上手く考える事が出来ないし、叩きつけられた場所が強烈に痛む所を見ると、骨まで折れているかもしれない。だ、だけどどうしてばれた!?

「な、んで……!」
「不思議か、クソ餓鬼」
「俺は一応能力者なんだよ、『金属探知(メタルサーチ)』ってんだがな。近くにある金属や物体を探知出来るのさ。いくら何でも罠に一切金属を使っていないって事はねぇよな?」

 う、迂闊……能力者だったのかよ。そりゃあ暗部にいるくらいだから能力者かもとは思っていたけれど、今まで何かを使う素振りも前線に出る感じも見えなかったから、その可能性を完全に除外してた。し、しかも地味な能力だな……

「まぁ、これでお前の段取りも全てお釈迦だな。だが暗部を舐めた事はその体で払ってもらうぜ」
「ちょうどいい、外の連中には手土産が一つ増えたって事にしておこう。例え『無能力者』でも能力開発を受けているのなら、立派な商品になるだろうさ」

 そう言ってゴリラは俺を肩に担ぎあげた。くそっ……抵抗したいのは山々なんだけど、体中が痛すぎて上手く体が動かない。さっきの走りでも体を鍛えてなかった事を悔やんだけれど、今はそれ以上に体を鍛えてなかった事を後悔してる。それも、もう遅いか……いや、諦める訳にはいかんよ! 外に売り出されたらどんな目に会うのか分からんけど、絶対碌な目に会わないよ!
 精一杯の力を込めて暴れるが、男のがっしりとした腕に掴まれた状態は全く改善してくれない。だからといってここで諦めたら、俺だけじゃなく幼女ごと終了のお報せだ。絶対諦めてやるもんか。だから……って……
 肩に乗せられたまま、俺は階段の方を見て目を見開いた。何故なら、そこには息を荒くし、男達を睨みつけている幼女の姿があったからだ。
 な、何故ここに……いや、あんな体でロッカーから這い出して、階段を下りてきたのか? というか、何で降りてきた。確かにあのまま隠れてても見つかるのが関の山だっただろうけど、それでも隠れてるのが普通でしようが!

「お、ねえちゃん……」

 って、声上げちゃ駄目だって! ゴリラとチンピラが幼女に気付き、視線を向ける。

「ほぅ、手間が省けたな。これで逃亡劇はお終いだ、残念だったなクソ餓鬼」

 ゴリラはそう言って部下のチンピラに指示を出した。幼女をとっ捕まえろとかそういうのだったと思う。チンピラがにやついた表情で幼女に近付いて行くのを見ながら、俺は歯ぎしりをする事しか出来ない。分かってたけど……俺みたいなのにヒーローは無理だって知ったけどさ、こんな結末はないだろうよ。だ、誰か……ここで助けてくれるヒーローはいないのか。誰でもいいから、この子を助けて……
 そして、チンピラが幼女まであと一歩の場所に到達した、その瞬間だった。

「おねえ、ちゃんを……」
「あん?」
「はなして!!!」

 脳内に響き渡るような、金属音かと思う爆音だった。それ聞いたゴリラ他チンピラ達が苦悶の表情と共に、悲鳴を上げながら耳を塞ぐ。無論俺にもその被害は直撃し、気絶するかと思うほどの耳鳴りが俺を襲った。
 というか何だこの音? もしかして、この子の能力なのか? って、壁が滅茶苦茶ひび割れ始めてる。音っていうか震動でも操ってるのか? 原作では見ない能力だね。というかそれのせいで研究されてたんだろうか……って、のんびり考えてる場合じゃない!
 痛む体とふらつく頭を気合いで押さえつけて、幼女の元へと走る。その間にも壁や床はビキビキと悲鳴を上げ、今にも崩れ落ちそうだ。そのまま幼女に体当たりするように突撃し、抱きかかえて飛ぶ。
 瞬間、轟音と共に今までいた場所が崩れ落ちた。俺と幼女はギリギリ崩れ落ちた床から飛んで逃れる事が出来たが、ゴリラ達はそうはいかない。何せ動きが封じ込められていたのと同じだったので、逃れる暇すらなく瓦礫と共に落ちていった。遅れて粉塵が舞い上がる。この感じを見るに、一階まで落ちていったな……死んでないといいけど。

「おねえちゃん……だいじょうぶ?」
「はふぅ、大丈夫大丈夫。でもびっくりしたよ……」

 幼女の言葉に笑みを浮かべて返す。実際死ぬ間際とか、意識を失う寸前とかそういう訳でもないので、特に問題はないだろう。
 しかし、何か恥ずかしい。だってアレですよ? ヒーローとか言って臭い台詞吐いてったのにも関わらず、結局ボロクソにやられて、しかも幼女に助けられる始末。これではヒーローではなくヒーロー(笑)ですよね。あ、穴があったら入りたい……!

「ごめ、んなさい……かくれてろって、いわれてたのに」

 ん? もしかしてそんなこと気にしてるのか? いや、貴方に助けられなかったら、俺は今頃研究者達の慰み……じゃなくて研究対象にされてましたよ。だから、怒るとかそんな事はしません。

「ううん、助けられちゃった。こっちこそかっこ悪いヒーロー(笑)でごめんね」
「……そんなこと、ないよ」

 ん?

「わたし……あんなにやさしくされたこと、なかったから……だから、おねえちゃんはわたしにとってひーろーだよ」

 おぅ……良い子すぎる。相変わらずこの街は、良い子ほど『置き去り』になる確率高いよね。何か不思議な力が働いているとしか思えない……考えすぎか。

「にひひ、そう言われると照れちゃうね。でも、ありがと」

 さて、後は麦のんを待つだけか……とりあえずここから移動して……

「クソ餓鬼がああぁぁぁぁぁ!!」

 って、うおおおおお!? な、何事?
 今の雄たけびが聞こえたのは下から……そして今の声はあのゴリラだ。って、アイツこの高さから瓦礫と一緒に落ちたのに大丈夫だったんかい! どんだけ丈夫なんだよ……

「おねえちゃん……!」
「……私の後ろに」

 明らかに消耗してる幼女を自分の背後に回す。この様子では再度能力を使ったらどうなるか分からないし、次もアイツに効くかどうか定かじゃない。我慢すれば俺だって動けたんだから、そのまま突っ込んでくる恐れだってある。少なくとも二回目は通じないだろう。
 そして階段を上がってきたゴリラ……って、血まみれやん、よくこんな姿で動けるなぁ。俺だったら痛くて無理だと思う。しかも腕とか折れてるっぽいね。

「こ、の餓鬼がぁ……手加減してたら良い気になりやがって!」
「にひひ、天罰って奴かもしれないよ。これ以上私達に手を出したら、もっと酷い目に会うかもしれないし……見逃してくれない?」
「安心しな、すぐに行くさ……テメェ殺してからなぁ!」
「おねえちゃん!」
「……ッ!」

 丸太の様な腕を振り上げるゴリラを見て、俺は次の瞬間襲ってくる衝撃と激痛を覚悟して目を閉じた。いや、殴られた一発で死ぬとは思えないんだけど、最後まで見てるのが怖かったんですゥ、だから仕方ないんですゥ。次いで響く何か大きな音、だけど俺には何の衝撃も来ていません。
 どうしたの、早く来なさいよ? とか状況に合ってないアホな事考えて待っているけど、まだ衝撃が来る様子はない。焦らしてんの? 何という高等テクニック……というか怖いのでやるなら早く……いや、やらないで欲しいんだけどね。
 仕方なく、閉じていた目を恐る恐る開く。目の前に見えたのは茶色。しかも普通の茶色ではなく、見てる者を驚かせるほどの輝きに満ちた色だ。無論、それは自然現象でもなく、ましてや幼女やゴリラが出した能力とかでもない。
 その茶色を持っている人物は、なんと自分よりも遥かに体格のいい相手の顔面……というか顎の辺りを片手で掴んでいる。成程、声がしないと思ったのはこれが原因かいな。大きな音は窓を破ってここに乗り込んできたときの音だったんね。幼女は茫然と目の前の人物を見てるし……
 やばい、安心して力抜けきってしもうた。目の前にいる人を見たら、安心感と同時に涙が出てきた。だって怖かったんだもん……仕方ないね。万感の思いを込めて、目の前にいる人物の名前を呼ぶ。

「麦野さん……!」
「離れてなさい、フレンダ」

 こちらを見ずにそう告げる麦のんへ頷き返すと、幼女の手を引いて下がる。麦のんのデスクローはどんどん力を込めていってるらしく、ミシミシとか人間から出る音じゃないものが出てます。うん、麦のんには絶対逆らわない様にしよう。
 そしてとうとうミシン、とかいう致命的な音が出た。どうやら相手の顎が外れたらしく、相手は悲鳴すら上げられないままもがいている。そんな相手に、麦のんは一切の容赦も……躊躇もしなかった。
 怪力に任せて思い切り蹴り上げる。その足先が向かう場所は……そう、男なら誰しもが恐れるあの位置。つい俺も押さえようとしてしまったよ……もう無いけど。男の目がグルン、と白眼を剥く。遅れてゆっくりと倒れていった。

「ペッ、○○○野郎が……人の「所有物」に手ぇ出してんじゃねぇよ」

 倒れた相手に唾吐く麦のんマジドS……というかまだ小学生なのに、相手のゴリラ以上の腕力出してたよね麦のん。でも、麦のんならやっても不思議じゃないから不思議!

「おねえ、ちゃん……あの人は?」

 その言葉に俺は苦笑して言葉を返す。

「あれが、本物のヒーローってやつかも?」

 疑問形なのは許せ、正直悪役にしか見えないんだもん……





 あの後は、仕事終了の電話を麦のんがしてくれて終わりました。ちなみにあいつ等はどこかに運ばれていったけど、始末されるのかまだ扱き使われるのか……まぁね自業自得かね。そんなこと考えている暇もないし。そして幼女なんだけど、麦のんに事情を話したらどこかに電話をかけて何とかしてくれました。代わりに今回の報酬が減ったとか文句言ってたけど、やってくれた麦のんは優しすぎると思う。そして……

「すいません、田辺さん……」
「良いのよ、いきなりこの子を預かって欲しいって言われた時は驚いたけどね」

 クスクス微笑む田辺さんの顔を見て、俺は心底申し訳ない気持ちで一杯です。あの後、俺と麦のんの話し合いの結果で幼女は田辺さんの施設で預かってもらう事にしました。ここにいれば何かあってもすぐに気付けるし、田辺さんなら大丈夫だろうって事でね。
 幼女は最初こそ警戒してる様子だったけど、今は向こうで陸君やレイちゃんと一緒に遊んでる。ちなみに歳は幼稚園年長さんで、陸君達より一つ年下らしい。名前は覚えてないとか言ってたな……悲しい事やね。

「じゃあ、田辺さん。また様子見に来ますから、お願いします」
「えぇ……フレンダちゃんも気をつけて」
「はい!」

 相変わらず良い人すぎる田辺さんに後の事は任せるとしよう。陸君達の方へ眼を向けると、全員がこちらに向けて手を振っていた。幼女もぎこちなく微笑んで手を振っているのを見て、俺は心底安堵する。やっぱり笑顔が一番よな。
 さて、車の中で待っている麦のんを待たせ過ぎるといけないし、ささっと行こう。今日は言いたい事もあるしね。と、玄関先で待っていた車へと乗り込む。俺が乗った途端に、隣に座っている麦のんが「出して」と言うと、車はゆっくりと動き出した。

「全く、とんだ出来事だったわ」
「あはは、すいません麦野さん。でも、手回ししてくれて本当にありがとです」
「別に……あの子はもう実験対象として価値を失ってたみたいだったし、特に面倒な事はなかったわよ」

 うむ、ぶっきらぼうに言ってるけれど、こういう時の麦のんは結構機嫌がいいね。一緒にいる俺が言うんだから間違いナッシン。言うなら今じゃろか……

「あの、麦野さん……」
「何?」
「実は、私も……体鍛えたいなって「良いわよ、明日から教えて上げる」

 って、え? てっきり少しは渋るもんだと思ってたんだけど……どういう風の吹きまわしだい、麦のん。と俺が考えて麦のん見ると、ニヤニヤした視線を向けてきている。な、何?

「「ヒーロー」なら、少しは強くないといけないもんね~」

 ……what? な、ななな何で麦のんが、その事を……!

「アンタ、電話をかけたままでポケットにしまってたでしょ? アレね、途中から私に繋がってたのよ。つまり、途中からの会話は私に筒抜けだったってこと」
「あ、あばばばばば」
「ヒーロー(笑)」
「や、やめてええぇぇぇぇぇぇぇええええぇ!! 忘れてええええぇぇ!」
「あっははは! 良いじゃないの、そのお陰でアンタ達が危ない事分かったんだし、GPSで場所を検索も出来たんだからさ」

 物凄く楽しそうな麦のんとは裏腹に、俺は顔からメラゾーマが出そうな程恥ずかしいです。も、もう二度とかっこつけません……そう心に誓って、車は家へと向かっていった。くすん。



おまけ
「あ、ちなみに帰ったらオシオキね」
「あばばばば……え、ちょ」
「無理すんなって言ってた筈でしょ? だから、オシオキ」
「oh、ゆるしてほしいなむぎのさん」
「ダ メ」
「あ、あははははは(汗)」
「はっはっはっ(喜)」


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