◆Fate DS night◆
「・・・フハハハハハ!死ぬ前にってんなら、教えてやらねえとな!よく聞きやがれ女!ダークシュナイダー。-------------それが今から手前をぶち倒し、新たなマスターになる超絶美形様の名前だぜ!
後は地べたに這い蹲った後に、繰り返し覚えやがれ!」
D.Sの傲慢とも言える叫びと共に、魔人対英霊の幕が上がった。
D.Sは眉を潜めて逡巡している。
どうやって殺すかをではなく、どうやって殺さずに倒すかを考えているのである。
D.Sの操る呪文は最低でもナパーム弾クラスの火力はあるのだ。
威力の低い『鋼雷破弾』(アンセム)ですら、巨木に穴を空けるぐらいの威力があるのだ。
魔術の最大の弱点は手加減が効かないという事である。剣や素手のように100%の威力を、50や10%にできないのだ。
100%の呪文は、ほぼ100%の威力で発射されてしまうのだ。
しかもD.S級の達人ともなれば、使う呪文の威力も生半可な物ではない。
その気になれば限定された空間に核爆発すら起こせるが今は全く必要なかった。
D.Sの最大の弱点は火力が高すぎると言う事であった。
火力が高すぎる故に殺さない調節が難しい、D.S程の達人であっても呪文を50%や10%の力で打ち出す事は不可能なのだ。
しかもライダーの対魔力はランクBである。
ライダーを殺さずに仕留めるのは、至難のワザに近いと言っても過言ではないだろう。
(・・・・・・本当にめんどくせえな)
D.Sにとって『女性』とは抱く物であり、サーヴァントだろうとなんだろうと其処に差別はないのである。
例え自分を殺す敵であったとしてもその信念に全くの揺るぎはなく。
数多ある呪文から殺さずに戦いを終わらせる事を考えていた。
「チッ!!」
舌打ちをして唐突にD.Sが歩き出した。
しかもズボンのポケットに思いっきり手を突っ込んでである。
ジャリジャリと砂の音と共にライダーとの10メートルある間合いがどんどん縮まっていく。
ライダーは一瞬呆気にとられた。何かあるのかと思って警戒したのだが、何もなく自然体で唯D.Sは歩いているだけであった。
自然体には隙がないとかいうが今のD.Sは隙だらけだった。
当たり前である。何処の世界にポケットに手を突っ込んだまま、戦闘を行うものがいるというのだろうか。
要するに舐めているのである。
「・・・馬鹿にされたものですね」
ライダーは一瞬で10メートルある距離を詰め懐に入り込み、D.Sの鳩尾に蹴りを叩き込んだ。
ドキャ
(・・・岩?)
鈍い音ともにD.Sの百キロにも匹敵する体が地面に後を残して三メートルは後退し体が『く』の字に折れ曲がる。
三~四トンにも匹敵する威力のある蹴りが鳩尾に入ったのである。並みの人間なら内臓破裂を起こしている筈だったが。
体を曲げたD.Sが顔を上げて、その前髪を上げてカッと瞳を輝かせた。
「・・・・・何だよ、そりゃ」
侮蔑ともいえる言葉だった。D.Sは鋼の肉体の腹筋の力だけでライダーの蹴りを弾いたのだった。
「クッ・・・」
ライダーが距離を取り、D.Sに鎖の付いた鉄杭を投げつける。
ヒュッ。
しかしギィンという音と一緒にD.Sに直撃する前に不可視のフィールドによって遮られていた。
「なっ・・・」
ライダーは驚愕した。
D.Sの魔術障壁である。高位の魔導師でもあるD.Sは無意識にこの鋼のように強靭なフィールドを形成している。
さっきのライダーの一撃は魔術障壁の干渉しない自己の肉体を使った一撃だったから発動しなかったが、それ以外の物に対しては遠慮なく発動する代物であった。
肉体というものは高度な霊質の塊である。これによる攻撃だけはどんなに硬度な障壁も意味をなさないのである。
しかしそれ以外の物『物質』に関しては効果は抜群である。
「英霊って奴も、大した事ねえな」
D.Sは余りのライダーの不甲斐無さに溜息を漏らした。
「・・・言ってくれますね。この私が大した事無いと・・・まずはその認識を改めるさせるとしましょう」
距離を置いた所でD.Sの言葉にライダーが行動で答える事を示した。
その言葉を遮るようにして、D.Sが間違いを正すように言語を放つ。
「勘違いしてんじゃねえ!!手加減してるのはテメエじゃなくて俺様の方なんだよ!まずは、其処の所をハッキリさせねえとな」
「いいでしょう、まずはその減らず口から塞いであげるとしましょう」
ライダーが飛び上がり、自身の獲物の鉄杭を投げつける。
D.Sを無意識下で人間と認識していた、ブレーキが外れての本気の投合である。
これがD.Sの顔面を目掛けて振り注いできた。
だがこれに完璧にD.Sは反応していた。
鉄杭を掴みD.Sの筋肉が膨れ上がる。
「フン」
掛け声と共にD.Sがライダーを引き寄せようと試みる。
しかしライダーも負けじと自身の武器の鉄杭を引き寄せようとしていた。ギリギリという歯がゆい音がして鉄杭の鎖が悲鳴を上げていた。
この事を信じられないのはライダーであった。
驚愕と共に両眉を吊り上げていた。ライダーのスキル『怪力』を駆使しているのにD.Sの筋力と互角なのだから。
しかも徐々に体を引きずられているのはサーヴァントであるライダーの方ではないか。
「貴方は本当に人間なのですか?」
ライダーの疑問は当然であった。いくら疑臣の書によって弱体化しているとはいえ彼女の筋力は怪力のスキルによってランクBはある筈なのに、目の前の男はそれすらも上回っている事になる。
「ぬぅん!!」
「クッ」
D.Sの掛け声と共に鎖と一緒にライダーの体をD.Sが引き寄せ右手で抱きしめた。
だがライダーは左手は自由が効かなかったが残った右手で、鉄杭を力任せにD.Sの胸に突き刺した。
「がっっ!!」
さしものD.Sの障壁もコレには力負けしたようだった。
「チッ・・・しつっけー女だぜ」
そう言って少しD.Sはうな垂れた。
その隙にライダーは、D.Sの体を蹴り上げて距離をとる。
「しょうがねえなぁ、少しは本気『マジ』になってやるか」
D.Sが距離を置いたライダーに対し魔力を高めて呪文の詠唱に入る。
「スー(魔界の公爵) アン・ドア ステー・ルー (大いなるトニムアよ) 古の契約を行使せよ」
D.Sの銀髪が逆立ち、バチバチと両手から青白い火花のようなスパークが飛び散る。
イオンの圧縮と共にD.Sの手の平から高めた魔力が放出される。
「雷電怒涛!! (ライオット)」
いかにライダーの敏捷が素早くても雷をかわせるはずがなかった。
「くっあああああ!!」
バチバチという音と同時に彼女の体に六万ボルトに近い電流が流れた。
電気ショックに使う電圧でも1200~2000ボルトなのだ。
人の体はそれだけの電力でも跳ね上がったように痙攣するのに、今ライダーが浴びたのはその約30倍の電力である。
それを体中に浴びたのだ。
ショック死してもおかしくはなかったが、それも最大限D.S が威力を抑えたからであった。
それにまだ召喚されたばかりで、魔力も殆ど使っていないしここで倒されるわけにはいかなかった。
「ライダー!!ライダー!!何やってるんだ、早く立てよ!!この化け物!!」
(勝手な事を言ってくれますね・・・・・私が弱体化していると言っても・・・彼は生半可な魔術師ではありません)
手足に力を込めて立ち上がる。体の所々はまだ電撃の影響で上手く動かない事が分かる。
この分ではライダー特有の一撃離脱の戦い方は出来ないだろう。
(・・・・・・やはり使うしかありませんか・・・それに私はこんな所で倒れるわけにはいきません)
D.Sはライダーが立ち上がった事に眉を吊り上げて少々驚いていた。
彼女がこのまま立ち上がってこなければ慎二を八つ裂きにしに行ったが、立ち上がるとは思わなかったのである。
雷電怒涛(ライオット)はそんな生易しい呪文ではない。D.Sが本気で雷電怒涛を放てば数十人の人間を黒焦げに出来るのである。
(過去の英霊っていうのは、伊達じゃねえようだな・・・だとしたらアイツは何処の英雄なんだ?
それにあんな武器を使う英雄なんて聞いた事がねえぜ・・・チ・・・現時点じゃ・・・情報が少なすぎる、何とかしてアイツの真名が分かれば
封魔呪文で何とかなりやがるんだが・・・・・それまで我慢するしかねえか・・・それに・・・あの目付き・・・多分何かしてきやがるな、それで真名が分かればいいんだがな)
四百年以上生きている彼の知識は半端ではない、その中の引き出しをいくら捜してもあのような武器を使う。英雄など居ないのである。
それにライダーの瞳に力が宿るのを感じて何かしでかしてくると感じたのである。
D.Sが警戒したのと同時に、今度はライダーが無防備に突進してきてその灰色の魔眼をゼロ距離でD.Sの魔眼に焚き付けた。
さすがのD.Sもコレは予測してなかったのか、まさか目が宝具の一種だとは思わなかったのであろう。
「グッ」
D.Sが見ると膝の辺りまで石化しているではないか、あの距離で石化の魔眼を浴びて一瞬で石化をしなかったのはさすがと言えよう。
だが身動き一つ出来ない人間を倒す事は弱体化されていても、実に楽な作業である。
D.Sが頭を落としてうな垂れている。その状態は何処か諦めたかのような仕草でもあった。それを見て諦めと感じたのかライダーはD.Sに歩み寄っていった。
「アハハハハハ!!どうだ!!僕のサーヴァントの強さを見たか!!ライダー早くそんな奴、殺しちゃえよ!!」
慎二が下卑た笑い声を上げながら、ライダーに命令を告げる。
「コレで分かっていただけたでしょうか?この私が大したこと無いといった事を、後は・・・その身を持ってその事を証明してもらう事になりますが・・・」
「・・・クククククク」
不意にD.Sが笑い始めた。今この瞬間はライダーにD.Sの命が握られているといっても過言では無いのに、笑うなどと非常識にも程があった。
だがそれがD.Sという男であった。絶対絶命の窮地に遭いながらも大胆不敵に笑みを浮かべて乗り切る事が出来るのがD.Sである。
「何が可笑しいのですか?」
ライダーは表情は変わらないが、その美麗の口元を絞めてD.Sの笑った理由を問いただそうとした。
「いや、テメエの真名が分からなくて考えていたのに、まさか自分からバラしてくれるとは思わなかったぜ」
「・・・やはり私の真名が分かってしまいましたか、できれば”こんな物“は使いたくはありませんでしたが、それも致し方ありませんか・・・」
「・・・テメエ、メデューサだろう?その灰色の魔眼と、その長い髪が後に蛇になるって訳か・・・・・・成る程な怪物になる前のその姿が本当の姿って訳か」
「・・・ええ、最早死に行く。貴方に隠しても詮無き事でしょう。私の真名は”メデューサ“貴方方が”化け物“と呼んだ。怪物の一種です・・・」
吐いて言うような台詞に悲しみや悲壮感が込まれる様な気がしたのはD.Sの気の所為ではあろうか、少なくともD.Sにはそんな気がした。
そこでD.Sは意外な台詞をライダーに零した。
「・・・悪かったな、その長い髪を見たときにオマエの真名に気付いてやれなくてよ」
そう言ってD.Sはまだ石化していない手でメデューサの髪を撫上げた。
確かに彼女の髪はこの世の誰よりも美しいと称えられた事が在ったが、まさかそんなことを言われるとは思わなかったのだ。
「・・・確かにそういわれた事もありますが、それは過去の話です・・・私は所詮・・・唯の化け物の一種なのですから」
メデューサは自分に言い聞かすように言う。
自分はそうなのだと――――――そのような存在なのだと。
「なに言ってんだ、テメエが化け物なわけがねえだろうが、俺様は色んな奴を見てきたから分かるんだよ、テメエは化け物なんかじゃねえよ。
石化の魔眼がなんだって言うんだよ。俺様がなんとかしてやるから心配すんな」
D.Sの言う化け物とは、破壊神と呼ばれていたアンスラサクスやアンデットの王であるリッチの事を指しているのである。
そんな怪物クラスの魔物と戦ってきたD.Sにとっては、どうしても彼女のような女性が化け物とはD.Sには思えないのである。
それにD.Sは昔に――――――夢魔(サキュバス)を恋人にしていた事もある、最も今はD.Sを庇った為に命を散らせて故人となってしまってはいるが・・・・・・
そのD.Sがどうして石化の魔眼を持っているぐらいの女性を化け物などと呼べようか。
(この男は何を言っているのですか、この私が化け物ではないと、今まで私を彩る人々の目は恐怖や畏怖の色でした。
ですが彼の瞳は・・・・・・私の真名を知ってもまるで恐れてはいません。何故こんなにもこの男の言葉は説得力があるのでしょうか?)
彼はD.Sはずっと長い間―――――――人間を見て生きてきた。その男の台詞に説得力がない筈がなかった。
(そして何故・・・こんなにも頭に響くのでしょうか)
慎二は戦いから少し遠い所にいたので、D.S達が何を話しているのか分からなかった。
だが慎二は口元を歪めてにやけていた。
見ればD.Sは太ももの辺りまで石化が進行している。もう自分の勝ちは揺るがないだろう、そう確信していた。
「ライダー!!そんな奴といつまでも何やってんだよ!!早く殺しちゃえよ!!」
偽りの主の命令によって、ライダーは自分を取り戻した。
「・・・・やはり貴方は危険です。此処で殺しておく事にしましょう」
ライダーは眼帯を外して灰色の瞳を晒しながらD.Sの喉元に鉄杭を突き刺そうとした瞬間。
「・・・ョ・・・ヶ」
D.Sは何か呟いていた。
「・・・死ぬ前の遺言ですか、ならば聞かない事もありませんが・・・」
余裕なのか余りにも、のんびりとした態度をとっているライダーに対してD.Sが怒声を放った。
「馬鹿野郎!!避けろって言ってんだよ!!死にてえのか!!」
その怒鳴り声と共にライダーはD.Sに抱き寄せられて地面に押し倒された。
「何を・・・」
何をするのですかとそう言おうとした瞬間に爆撃のような雷撃が地面を蹂躙していく。
ドオン!!ドオン!!ドオン!!
公園の土砂が抉られて巻き上げられた土砂がパラパラと雨のように降ってくる。
土煙が晴れて夜空を見上げた時に蝙蝠の様にローブを広げたサーヴァントが其処にはいた。
ライダーは自分がD.Sに助けられたのを理解した。
よく見れば慎二や襲おうとした女は遠く離れていた、アレほどの威力のある魔力弾が大地を蹂躙したのだから当たり前だった。
サーヴァントである自分が敵のマスターに助けられて庇われるなど恥さらしもいいところだ。
「・・・クッ」
守ってもらった義理か分からずにD.Sを立たせて距離を取り、敵のサーヴァントに備える。
あれほどの魔力弾を放てるサーヴァントとなると該当するのは――――――キャスターぐらいか今の魔力弾はランクAはあった。
いくらライダーの耐魔力がBはあると言ってもあんなのを食らえばひとたまりもないだろう。
(この気配はサーヴァント・・・あの深い紫のローブとすればキャスターでしょうか・・・彼女があの男のサーヴァントというわけですか・・・とすれば真名を告げたのは
・・・失敗だったかもしれませんね)
(・・・それにしても分からないのは、キャスターのマスターあの男ですね桁外れの魔力量といい先程の行動と、一つ前の言動といい分からない事が多すぎます。
此処は一つ様子を見るとしましょうか・・・真名が判明したとはいえ、まだこちらから仕掛けるわけにはいきませんか)
見ると其処には、キャスターのサーヴァントが降り立っていた。
「よお、遅かったじゃねえか」
大地に降り立ったメディアに対して、D.Sが挨拶を交わす。
「『遅かった』じゃないでしょう!!私が一歩でも遅かったらどうなってたと思ってるのよ!!」
悠々とした主の挨拶に対してメディアがいきなり吼えた。
「いちいちやかましいオンナだな、無事だったんだからいいじゃねえか」
「よく無いわよ!!」
「それよりD.S貴方さっき敵のサーヴァントを庇ったでしょう・・・なんでそんな事をしたのかしら?」
D.Sは腕組みをして自身満々に答えた。
「俺様は女は殺さない主義なんだよ・・・それがいい女なら尚更だな」
開き直ったかのようにいうD.Sに二人は・・・・・・
「「・・・・・・」」
この答えを聞いた。ライダーもメディアも一瞬呆けた。
そして溜息を吐いて。
「・・・怒るのを通り越して呆れたわ・・・」
「ええ・・・私も呆れています・・・」
ライダーもメディアも呆れたのか一言言った。
「D.S貴方・・・馬鹿だったのね」
「ええ。敵である私が言えた義理ではありませんが・・・どうやら貴方は馬鹿のようですね」
二人の美女に言われたのが少し応えたのか、ちょっとたじろいだ後。
「うっ・・・いちいちうるせえな、それよりさっさとこの石化を直しやがれ!!」
メディアは又一つ溜息を吐いた。今日コレで溜息を吐くのは何回目になるだろうか。
マスターのピンチを助けるのはサーヴァントの役目なのだが一言言ってやりたかった。
(自業自得じゃないのかしら・・・本当に手間のかかる男ね)
そもそも彼女メディアはD.Sとの関係をサーヴァントとマスターだという主従関係とは思っていない。
もしもメディアがD.Sに助けられていたのならメディアはD.Sに対して敬語を使っていただろうが、D.Sの命を助けて世話をしたのは彼女なのである。
そして体を預けてもいる。
出合って短い間ではあるが其処までの関係なのに、命を助けた相手に対してどうして敬語を使うのであろうか。
普通はサーヴァントとマスターで在っても逆ではないだろうか。
そこでメディアはD.Sとの関係は同等(イーブン)だと思っており、D.Sに言われたとしても直す気はないのである。
むしろD.Sが何も言わないからずっとこのままで行こうと考えていた。
思い込みから我に返りD.Sの石化した部分を見つめる。
「・・・コレは無理ね、その石化の効力は魔術ではなくてそのサーヴァントの特殊能力だからよ」
重い口取りでメディアが言った。
「何だとテメエ!!それでも神代の魔道師かよ!!気合で何とかならねえのかよ!!」
(なるわけがないでしょう!!本当に手間のかかる男ね)
「・・・しょうがねえな、それなら石化の効力の源になってる古代神の名前を教えやがれ。何とかなるかもしれねえ」
石化をメディアに解いてもらう事を諦めて、D.Sがメディアに問い詰める。
「・・・・・・・・・」
「おい!!さっさと教えねえか!!」
「・・・知らないわ」
「ああ!!」
「だから知らないって言ってるのよ!!そもそも貴方が悪いじゃないのかしら、自分の実力にどれ程の自信があるのかしらないけど、勝手にでしゃばった貴方が悪いのよ」
ライダーはこのやり取りが信じられなかった。
これはサーヴァントとマスターの会話ではない。
(コレでは・・・まるで・・・唯の男女の痴話喧嘩ではありませんか・・・どうやらあの男・・・D.Sと言いましたか人柄としても慎二より上のような気がするのは・・・気のせいでしょうか)
ワナワナとD.Sが体を震わせて見上げて言った。
「・・・冗談じゃねえぞ、俺様がこのまま彫像になったら・・・」
「「・・・なったら・・・」」
「・・・さぞかし美しい彫像が・・・」
ズルッとライダーとメディアはこけそうになった。
見ればD.Sは石化の進行が腰の辺りまで来ているのに余裕を崩してはいない。
(本当に変わっている方ですね・・・)
「・・・D.Sと言いましたか」
「アンだよ」
名前を呼ばれたD.Sが振り向く。
(・・・やはり教えるのは止めましょうか・・・いいえ彼にはこの身を助けてもらいました。コレくらいは許されるでしょう)
「D.S。私の石化の魔眼の効力の源は土着神の”キュベレイ“です。コレは先程の借りを返したと思ってもらって結構です」
「なぁ、やっぱり助けてよかったじゃねえかよ」
D.Sが振り向いて答える。
「イチイチ一言多いのよ!!貴方は!!」
メディアがD.Sの耳を思いっきり引っ張ろうとしたが・・・・・・引っ張れなかった。
ちなみにD.Sの身長は192センチでメディアは163センチである。
実に30センチもの差があるのである。
しかもD.Sの広い肩幅に邪魔されて上手く手が耳までいかなかった。
背伸びまでして一生懸命に何かをしようとする仕草は滑稽ではあるが可愛らしかった。
それを見たライダーはクスリと笑い。
D.Sは・・・
「・・・オマエ馬鹿だろう」
途端にメディアの顔が、カァーと赤くなり真っ赤に染まる。
今度はD.Sの長い銀髪を勢いよく引っ張った。
「イデデデデデ、何しやがる」
そしてD.Sの耳の位置を手の届く所まで持ってきて
「馬鹿は貴方よーーー!!」
D.Sは耳元がキーンとなり鼓膜が破れたかと思えたほどだ。
(そもそも貴方が悪いのよ。ええ全部この男がいけないのよ)
そもそも先程の魔力弾だってマスターであるD.Sがサーヴァントにやれそうになってるのを心配して放ったものだ。
それをまさか敵のサーヴァントを庇うとは思いもよらなかったのである。
(何よ・・・敵のサーヴァントが綺麗だからって抱きついたりなんかして・・・馬鹿じゃないのかしら)
メディアがライダーに対して構えを取る。
そしてD.Sは耳鳴りが収まったのか体勢を整えていた。
「・・・クックック、それさえわかればこっちのもんだぜ!!」
D.Sが土着神のキュベレイに自らが契約してる古代神から働きかけて交渉して見る見る石化を解除していく。
「・・・嘘」
コレを信じられなかったのはメディアであった。いくら石化の効力の神の名前が判明したからといって一瞬で石化を解くなどとは。
(・・・本当に言うだけの事はあるわね。一瞬で石化を解くなんて・・・もしかしたら)
メディアは思う、もしかしたら神代の自分よりも上かもしれないとそんな事があるわけが無い。
サーヴァントとして呼ばれた自分よりも上の魔術師など居る訳がないのである。
例えそれが異世界であったとしても・・・・・・
「・・・さすがキャスター。魔術師の英霊というだけはありますね。いくら効力の神の名前が判明したとはいえ一瞬で石化を解除するとは・・・」
ライダーは石化の解除をしたのがメディアの力だと思い込んでいた。
それを気付いて言わんとしたのだが。
「それは私のちか」
バッと
それをD.Sが手で遮った。
そして次の展開に備えるように体勢を整えていたのである。
感想
更新が遅れた事を御詫びします。
動画で小説をUPしようとしましたが断念しました。
これは自分のパソコンでは無理と判断しました。
まあ、そんなこんなで遅れてしまいました。
なんかD.Sと一緒にいるとキャスター(メディア)のサーヴァントのメッキがどんどん剥がれてきてしまいます。
サーヴァントのメッキが剥がれて女性のメディアとしてのキャラが立っていく気がしてならない今日この頃。
それでは又今度。