◆Fate DS night◆
「それじゃ、出かけるぞテメエ等」
D.Sが上半身に法衣を着て、マントを羽織って出発の準備をする。
ライダーとメディアはD.Sが何処に行くのか分からず、疑問を浮かべて尋ねる。
「出掛けるって何処に行くのかしら?」
「出かけるとは、何処にですか?」
D.Sはニヤリと子供が浮かべるような笑みを浮かべて笑い。
「そいつは、着いてからのお楽しみってやつだな・・・・・・それに言いだしっぺは俺じゃねえ・・・」
「それは、どういう意味かしら?」
「・・・それは、どういう意味ですか?」
メディアとライダーが質問をするが、それを無視してライダーとメディアを抱きかかえる。
「あ・・・」
「ちょっと」
D.Sが周囲のマナを取り込み、体の回りに空気を収束させていき辺りに暴風が吹き荒れる。
「それじゃ、出発でい」
その勢いに乗ってD.Sが空中に飛んでいった。
◆◆◆◆
ゴォォォォォと風の唸る音が聞こえてくる。
今D.Sは遷音速とも言えるジェット旅客機にも匹敵する速度で目的地に向かっており、もうすぐ目的地に着くかというような勢いだった。
ちなみに遷音速は、時速900~1350ぐらいである。勿論、生身の人間がそんな速度に耐えられる理由がないのだが、それをD.Sは自分達に魔術の障壁を張ることで克服していた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ライダーとメディアの二人はまさかD.Sが音速に近い速度を出して飛行出来るとは思ってもおらず驚愕の表情を浮かべていた。
(本当に出鱈目ね・・・)
ライダーは余りの規格外さにD.Sに尋ねた。D.Sは人の身で有りながら、彼女の宝具ペガサスより早い――――――その2倍以上の速度で航行しているからだ。
その驚きのあまりにライダーは尋ねる。
「D.S。貴方は本当に何者なのですか?」
しかしD.Sは鼻でフッと笑い。
「フッ。人は俺様の事を超絶美形D.Sと言う」
良く分からない事を口にした。
会話のキャッチボールが全く成り立っていない会話だった。
D.Sはそもそも人の話という”球“を受け取ろうとしないのだから成立するわけがなかった。そしてD.Sはワイルドピッチ(暴投)を受け取る相手に投げつけるのである。
これでは会話が成立するわけがなかった。
「D.S。私は真面目に聞いているのですが・・・・・・」
ライダーが青筋に力を入れたかのように見え、真剣な眼差しでD.Sを睨んでいた。
「もうすぐ着くぜ」
D.Sがライダーとメディアの二人に伝えさっきの会話を打ち消すかの様に次の言葉を足していく。
「・・・確か、ここら辺だった筈だが・・・・・・」
D.Sが見た景色は夢の中でのおぼろげな物だったので、其処まで正確に把握してはいないが・・・山の中の野原だったのは覚えている。
とりあえず降りてみる事にした。
「・・・とりあえず、下りて見るか・・・」
ヒュウと風を切る音が、D.S達の耳に伝わり三人が大地に降り立つ。
メディアとライダーはようやく自由になれたのか、大きく伸びをしていた。
「ああ、ようやく自由になれたわ」
「それについては同感です」
サーヴァントのプライドという物がD.Sの世話になるのを拒んだのかどうかは分からないが、ともかくさすがに自由になれた事が嬉しいらしく二人は太陽の下を歩き回っていた。
そこで二人は気付いた。風の匂い、草原が運んでくる草木の音、見知ったかのような木々や樹木。
ライダーとメディアはもしかしたらと感じてD.Sに聞いてみる事にしたのだ。
「・・・D.S。もしかして此処って・・・」
「・・・ええ、私も薄々感じていましたが、貴方はまさか」
D.Sがヘッと軽く笑った。
「鈍いヤロウだな。まだ気付かねえのかよ。此処はオマエ等の故郷だろうがよ」
ライダーとメディアはD.Sに言われてようやく実感した。
そうだ此処は故郷だった。昔々に帰りたくて帰れなかった土地だった・・・
(どうして・・・急にこんな所に・・・もしかして・・・・・・)
(・・・私には彼の行動が理解できません)
ライダーとメディアの二人は同時に困惑したかのような思考に陥る、そこでD.Sを見据えて言った。
「D.S。貴方、もしかして私たちの記憶を「ああ、見たぜ」」
メディアの問いかける言葉に悪ぶる様子もなく、アッサリと白状し言葉を続けていく。
「そもそも、帰りたいって言ったのはメディア。オマエじゃねえのかよ」
D.Sはメディアを人差し指で刺して言った。
「それだけの理由で貴方は此処に来たのですか?」
呆れた様な口ぶりでライダーが言った。
「ああ」
D.Sはあっけらかんとした口調で何事も無いように当たり前に言った。
「・・・馬鹿よ」
メディアは目に涙を溜めて言った。
そもそも彼女の国はもう何処にあるのかも分からない。
だが、こんな山の中の原っぱだった筈だ。
その気持ちだけで彼女には十分だった。
「本当に馬鹿よ・・・貴方・・・」
「ええ、私もそう思います」
ライダーは嬉しそうに笑ってその台詞を言い、。
メディアは涙をポロポロと零して涙腺を決壊させながら石の上に座って涙をその手で拭っていた。
そしてD.Sが頭をガシガシと掻いてメディアに近寄った。
(・・・何だよ、流せるじゃねえかよ。サーヴァントだ何だと言っても。涙が流れる以上。昔の俺よりもよっぽどマシだぜ)
D.Sは昔は涙すら流せず、悲しいという感情すらなかった。
そんな自分に比べれば、故郷を思い涙を流せるこの二人はよっぽど人間ではないか。
D.Sは人の証でもある暖かい涙をその手で拭って取ってメディアに見せて言った。
「涙(コレ)が出る限り、オマエ等は誰が何と言おうと人間じゃねえかよ」
D.Sの言うとおり涙が出る限り、彼女らはサーヴァントではなく人間である事をD.Sは証明させたのだった。
D.Sから見れば涙を流せる以上彼らは人だった。例え戦い消え行く―――儚い存在だったとしてもだ。
それが余りにも嬉しかったのかメディアは大きく目を見開た後に――――――D.Sに抱きついて口付けをした。
そしてその後に言った。
「筋金入りの馬鹿って、貴方の事を言うのね・・・」
「D.S。”だから“貴方はクラス名で私たちを呼ばないのですか・・・?」
ライダーは気になっていた事を聞いてみた。
(今にして思えば、この男は一回も私たちをクラス名で呼んだことがなかった気がします)
「ああ・・・何言ってんだ。当り前じゃねえかよ。涙を流せる以上、化け物なわけねえだろうが」
「・・・やはりメディアの言ったとおり貴方は馬鹿ですね」
そう言ったライダーの顔は見る物を魅了するぐらいの微笑ましい笑顔だった。
余りにライダーとメディアに馬鹿呼ばわりされた所為かD.Sがメディアを引き剥がして反撃に出た。
「・・・オマエ等さっきから俺様の事を馬鹿馬鹿。うるせえなあ、俺様が馬鹿だってんなら、オマエ等はホームシック馬鹿じゃねえか!!」
「いい年こいてホームシックなんかになりやがって、ちったあ恥ずかしいとは思わねえのかよ」
折角いい雰囲気なのにD.Sはどうして二人が気にしている事を言って台無しにするのであろうか。
「誰がホームシックよ!!」
「それは聞き捨てなりません。私の何処がホームーシックなのですか?」
メディアが怒声を発して、ライダーが静かな口調で捲くし立てる。
それには並の人間ならたじろぐ筈なのだが、D.Sは並の人間ではない。そんな事は気にせず悪態を吐く。
「―――ったく。嬉しいなら嬉しいって言えばいいじゃねえかよ。素直になれねえホームシック馬鹿どもだぜ」
「貴方には言われたくないわね・・・」
「それについては、同感です」
メディアとライダーはD.Sには言われたくない言葉だった。そして二人して心で考えた。
(それを貴方が言うのかしら)
(それを貴方が言うのですか・・・)
二人の考えを表情から読み取りD.Sは口に犬歯を見せて嬉しそうに口を歪めて、小さく呟く。
「―――まっ。その”素直“じゃない所が気に入ってるがな・・・」
素直じゃないのは、お互い様であった。
もしかしたらメディアとD.Sは素直になれない所が似ているのかもしれない。
「・・・何か言ったかしら」
「何か言ったような気がしましたが」
「さあな」
三人の会話が終わり。
暫くの時が経ち・・・・・・
「オーイ!!メディアちょっと来い」
D.Sが手招きをして、メディアを呼んだ。
「何かようかしら?D.S」
メディアがD.Sに何用かと尋ねる。
「オウ。ちょっと其処に座ってくれねえか」
「あら・・・そんなことぐらいなら別に構わないわよ」
そして、メディアは野原に腰を下ろす。
「丁度。枕が欲しかった所なんだよな」
「あーらよっと。あー楽チンだぜ」
D.Sはメディアを膝枕にして暖かい日差しの下に眠りに入る。今日ギリシャの天気が晴れたのは行幸と言えるだろう。
まあ、それでも雨が降っていたのならD.Sが暗雲を吹き飛ばしていたかもしれないが。
メディアはそんなD.Sに嫌がる事もなく、唯・・・笑っていた。
「本当に勝手な男ね・・・」
メディアはD.Sが眠りに入るまで、彼の自慢の銀髪に手をやって撫でていた。
ライダーはそんな二人を、微笑ましく見ていた。
感想
涙を流せる以上、人間だなんてくさすぎますかね・・・・・・
D.Sなら言うような気がするし言わないような気がします。
化け物はヘルジングのアーカードさんの事を指すのだと思います。
勿論、彼は涙も涸れ果てています。
それに比べたら、メディアさんとライダーは人間です。涙を流せるのですから・・・
それと
メディアさんに膝枕して欲しくない男は・・・男じゃねえ!!と思う今日この頃です。
メディアさんに浴衣姿かメイド姿で--------膝枕・・・男の夢です・・・
ダークシュナイダーは男の夢の一つ。メディアさんの膝枕をコンプリートした。
ダークシュナイダーは、また一歩アヴァロン―――遠き理想郷に近づいた。
エーあんま力説すると、帰って来れなくなるのでここら辺で・・・
それでは又・・・