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No.24417の一覧
[0] (ネタ)逆行シンジ+猫=最強[いつか勝ちてぇ](2010/11/20 09:47)
[1] 第一話 「使徒、襲来」[いつか勝ちてぇ](2010/11/20 09:50)
[2] 第二話 「見知らぬ、天井」[いつか勝ちてぇ](2010/11/22 08:27)
[3] 第三話 「鳴らない、電話」[いつか勝ちてぇ](2010/11/24 02:35)
[4] 第四話 「雨、逃げ出した後」[いつか勝ちてぇ](2010/11/27 03:22)
[5] 第五話 「レイ、心のむこうに」[いつか勝ちてぇ](2010/11/27 03:55)
[6] 第六話 「決戦、第3新東京市」[いつか勝ちてぇ](2010/11/30 09:55)
[7] 第七話 「人の造りしもの」[いつか勝ちてぇ](2010/12/27 08:34)
[8] 第八話 アスカ、来日[いつか勝ちてぇ](2011/01/01 00:40)
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[24417] 第八話 アスカ、来日
Name: いつか勝ちてぇ◆74791539 ID:5b599256 前を表示する
Date: 2011/01/01 00:40

 第八話 「アスカ、来日」




ミサトさんと二人で向かった、オーバー・ザ・レインボー。

トウジとケンスケとはなんとか仲良くなれたけど、使徒に襲われる事が分かってるし、連れてこれるわけない。

アスカの事は色々悩んだ。

でも結局、アスカに対する覚悟が決まらないまま、その日は来てしまった。


「ヘロ~オ~、無敵のシンジ様。シンクロ率399%とはさっすがね! う~ん、強い! 素敵!」


風が強い空母の甲板で、ミサトさんに挨拶し終わったアスカが僕に笑みを向けてきた。

……やっぱり、アスカも戻ってきてたんだね……。


「ええ!? アスカ、にゃんじ君の事知ってるの?」

「にゃんじ? ……まあいいわ、ちょっとこのサード借りてくわよ」

「ちょ、ちょっと!? 先に着艦の報告……」

「アンタがやっとけばいいでしょ」


そんなやり取りをしながら、アスカは僕の胸元を掴んで引き摺っていく。

うん、まさに引き摺るだ。

僕の足どりは鉛みたいに重いんだから。

建物の陰に入った瞬間、僕は背中から壁に叩きつけられた。

痛くて苦しくて息が詰まったけど、僕の目を覗き込んでくるアスカの表情に、咳き込んだ息が止まった。


「その耳と尻尾はなんのジョーク?」


笑ってるのか怒ってるのか分からない。

もしかしたら、これが憎しみの表情なのかな。

息を飲んで何も言えなくなった僕の頬を、アスカは一つ張った。

トウジに殴られるよりも何倍も痛かった。


「まあ、アンタの事なんかどうでもいい」


一瞬で『シンジ』に戻ってしまった僕は、きっと心の底から震えているんだろう。

アスカの表情は、碇シンジの罪そのものだから。


「これから使徒は全て私が殲滅するわ。アンタはサポート」


目を逸らそうとする僕の顔を無理やり向けさせるアスカ。

その目は、ギラギラと輝いていた。


「いい? 私の為に働きなさい。エヴァシリーズを八つ裂きにするまで」


怖い。

怖いから僕は逃げた。

アスカの拘束を全力で振り払って、僕は必死で逃げた。


「最後まで逃げるんじゃないわよ?」


そんな言葉を背に、僕は逃げだした。








アスカが転入してきた。

第六使徒は、アスカが一撃で殲滅したらしい。

らしいってのは、あの日の事をよく憶えていないからだ。

飛び掛かってきた使徒の口の中にものすごいA.Tフィールドを叩きつけて、そのままコアを叩きつぶしたみたい。

あれから色々考えた。

考えて考えて出した結論は、結局どうにもならないって事。

全部僕のせいだしね。

ミサトさん達が暗くなった僕の心配してたけど、どうにもならないって気付いたら、なんか開き直れた。

アスカが僕の事を死ぬ程嫌ってる事がわかっただけよかったよ。

これでアスカに近づかなくてすむし。

『シンジ』ならいつまでもグジグジしてたんだろうけど、僕は『にゃんじ』だ。

ネコとして生きていく努力を放棄したりしない。

どうにもならない事からは逃げるよ。それこそ一目散にね。


「いつまで逃げ回ってるつもり? シンちゃん?」


あれ以来極力目を合わさないようにしてた僕に、休み時間、アスカが声を掛けてきた。

うん。随分悪意が籠ってるね。


「僕は、逃げるよ。アスカからずっと逃げる」


まだ怖いけど、僕は頑張って言った。ネコとして。

瞬間、胸倉を掴まれ引っ張られる。

目の前にあるアスカの目。あの日見た、怖い目。

でも、大丈夫だ。

僕は『にゃんじ』。

たとえ昔は『シンジ』だったとしても、今は『にゃんじ』だから、大丈夫。


「……そんな事許すとでも思ってんの?」


思ってないよ。


「…………」


でも、『シンジ』には言えない事でも、『にゃんじ』なら言える。

ギリギリと締めつけられて苦しい襟元。

それでも目を逸らさない。

今度こそ、他人の気持ちなんか考えないネコに、なってみせる。


「ふざけンじゃないわよ! アンタが私にした事は──」

「わかってるよっ!!」

「ッ!?」

「僕はアスカを助けられなかった! 助けようともしなかった! でも、僕だって助けてもらいたかったんだ!」

「そ、そんなのが言い訳になるとでも……ッ!!」

「思ってないよ!! 一緒に暮らして、ずっと傍にいたからっ、アスカの事なら全部分かるだけだ!!」


静まり返った教室で、僕は叫んでいた。

そりゃ、いきなり大声で喧嘩しだしたら空気が悪くなるよね。

でも知らない。

だって、僕はネコだから。


「アスカの事ならなんでも知ってるよ! 好きな物も、嫌いな物も! 本当は寂しがり屋だって事も!!」


うん、もうわかってる。

『惣流アスカラングレー』と『碇シンジ』は似すぎてた。

欲しがってばかりで、与える事の出来ない子供。

だから、互いに傷つける事しか出来なかった。


「ア、アアア、アンタ、な、なにを……」

「辛い時も寂しい時もアスカは怒る! 自分を見てって、ホントは泣いてるの知ってたよ!!」

「ッ!?」


あれ? 涙が出てきた。

ああ、そっか。アスカに何も出来ない僕は、悔しくて、悲しいんだ。


「抱きしめたかった……。抱きしめてあげればよかった! でもっ、でも僕にはそんな事すらできなかった!!」

「ッ!? ……ッ!?」

「そんな僕をアスカが許してくれるはずないじゃないか!!」

「ちょ……え? ア、アアアンタ、ナ、ナ、ナニ言って……」


駄目だ。涙が止まらない。

僕は今、すごく感情的になってる。

でも、アスカも顔を真っ赤にして怒ってるんだからお相子だよね。


「それにっ! 僕はアスカを汚したんだッ!」


もう、一切合財ぶちまけよう。

『碇シンジ』がどれだけ最低だったのか。


「傷ついてっ、入院してるアスカをっ……僕はオカズにした!!」

「ッ!!!???」

「しかも寝てるアスカの横で!!」

「ブフゥ!? こ、こここ、このヘンタイ!!」

「そうだよ! でもしかたないだろ!? だって……、だってアスカはすごく綺麗だったんだ!!」

「ッ!? ッ!? ッ!?」

「痩せ細ってオバケみたいな姿になっても!! 僕はアスカが好きだったんだ!!」

「~~~~~~~~ッ!!!!」


そうだ。きっと、碇シンジはアスカに恋をしていた。

ズルくて情けないシンジは、好きな人すら護ってあげられない。

だから僕は『シンジ』を捨てた。

だから『にゃんじ』はアスカから逃げる。

だって、『にゃんじ』が『シンジ』だった過去からだけは、逃げる事が出来ないから。


「もう僕の事なんか忘れてよぉ!!」


きっとアスカにとっても、その方がいい。

グシグシと涙を拭いながら、僕は背を向けた。


「あ……」


アスカがまだ何か言いたそうだったけど知るもんか。

僕は全速力で逃走した。








「な、なによ……、アイツ……」

「ア、アスカ? そ、その、元気だして?」

「ヒカリ? って、なんでこんなにギャラリーがいンのよ! 見世物じゃないわよ!」

「まあまあ、男はにゃんじだけやないで?」

「そうそう、思春期の男はしかたないんだよ」

「そ、そうよね……。同棲してたみたいだし……」

「は、はあ!? アンタ達なに言ってんの!?」

「面と向かって好きな女にオカズにしましたってのはスゴイ」

「ホンマやな。みあげた漢やで」

「けど、なぜか惣流がフラレてるのがもっとスゴイ」

「なっ!? な、なに言ってんのよ! このメガネ!!」

「あん? そういう話やないんか?」

「ち、違うわよっ、馬鹿ジャージ!! だいたい、この私がシンジごときにフラレるわけないでしょうが!!」

「え? で、でも碇君、忘れてくれって言ってたわよ……?」

「そ、そうじゃなキャッ!」


後ろから突き飛ばされるアスカ。


「邪魔だからどいて」

「ファ、ファースト……。ってなにすンのよ!」

「あなたはもう用済み。二号機パイロット」

「は? ……な、なんですってー!!」

「もうにゃんじ君に構わないで。彼が傷つくわ」

「しゅ、修羅場や……」

「「シッ!」」

「……は、はは~ん? 残念だったわね、ファースト。アイツ私が好きなんだって」

「違うわ」

「ハン! 負け惜しみ言うんじゃないわよ! シンジは私に……」

「彼はにゃんじ君」

「え?」

「あなたを好きだったのは、昔の碇君よ」

「!?」

「たしかに碇のやつ、過去形で言ってたよな」

「「シッ!」」

「ナ、ナマイキ言うんじゃないわよ! 人間じゃないくせに!」

「そう、私は人間じゃない。私はネコよ。にゃんじ君と同じ」

「……は、はあ?」

「私の名前は綾にゃみレイ。にゃんじ君がくれた大切な名前」

「ッ!?!?」

「にゃんじ君と私はネコ。あなたはヒト。種族を超えた恋愛は、辛いわ」

「バ、バ、バカ言ってんじゃないわよ! アンタ正気ぃぃぃ!?」

「サヨナラ」


自慢の白い耳を撫でつけた後、尻尾をフリフリさせ、勝ち誇ったように背を向け去っていくレイ。


「な、なによソレ~~~~~~!!」


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