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No.2431の一覧
[0] 愛子、116歳[かいず](2007/12/23 02:52)
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[2431] 愛子、116歳
Name: かいず◆19b471f3 ID:79663dda
Date: 2007/12/23 02:52
はじめまして、初めて投稿してみました。
愛子ちゃんが主人公の短編です。





桜の季節になった。
私は、自分の本体である机に腰掛けて、教室から窓の外を見る。
今年の新入生がやってきた。みんな希望に満ちた、とてもいい顔をしている。
ここであなた達は、3年間で色々なことを学ぶのよ。
勉強に、恋に、友情に・・・・。
思う存分、青春してほしい。

今年の春から、私は六道女学院に在籍することになった。
机妖怪の私は、横島くん達が卒業したあとは、飛び出せ青春といわんばかりに、
住み慣れた母校を離れて、色々なところへ行き、様々な体験をしてきた。
今では全てがとても素敵な思い出になった。
こんな机妖怪の私に、青春の何たるかを教えてくれた横島くんや美神さん達には
感謝をしてもしきれない。
横島くん達と初めて出合ったときは、美神さんに愛のビンタをもらったこともあったっけ・・・。
美神先生の愛のビンタ、すごく心に響いたなあ。
先生、私・・・青春がしたいです・・・。
私は、それで素直になれたの。
ほんと私の青春って、あの人達と関わってから、ますます輝きだしたみたい。
大変なこともあったけれど、毎日がお祭りのようなあの騒がしかった日々を思い出して、心がじんと切なく、暖かくなる。

ここは1年B組の教室。教室には、まだ誰も来ていない。
今の私は、新入生の彼女を迎えるために、1年B組の机としてこの教室にいる。
私としては、学園生活に慣れて自由を満喫している2年生達や
自分の将来に向かって、不安と戦いながらも努力する3年生達の教室の机になるのも魅力的だ。
しかし、本年度は、ぜひ新入生である彼女の机として一緒に青春をしたいし、
それに彼女とは前から大切な約束をしているのだ。
ふと周りを見渡せば、他の机はピカピカで木製机の自分がちょっと浮いてしまっているかもしれない。
でも、彼女のことだ「愛子ちゃんは、やっぱり風情があるよね。もう最高だよ~」とニコニコしながら言うかもしれない。

入学式も終わったのだろうか、教室の外から、生徒達がやってくる。
その中でも分かる弾むような足取り、自信に満ちた雰囲気。
この足音は、間違いない。彼女の足音だ。
「愛子ちゃん、おっはよー」
教室の前のドアを元気よくスパーンと開けて入ってきた生徒は、元気良く挨拶をしてくれた。
「おはよう、美令(みれい)ちゃん」
私はにっこりと微笑んで、彼女を見る。
あれ?少し疲れ気味?
後から他の生徒達も教室に入ってきた、みんな一様に疲労気味の顔だ。
あらら、これから学園生活をエンジョイするというのにそんな顔していちゃ
駄目じゃないの。

美令ちゃんは、右手にもったカバンをグルングルン回して、こちらにやってきた。
入学式での理事長さんの長話に疲れてしまったのだろうか、顔は疲労気味。
普段の美令ちゃんは、きりっとしてものすごい美人さんなのに、
今はフニャフニャ顔だ。
うーん、理事長さんは、昔からの付き合いだけれど、難儀な人だからなぁ・・・。
昔は、全校生徒を前にして壇上で話をするときなんて、緊張しすぎて式神を暴走させまくってたらしいしねぇ・・・。
それに比べたら、ものすごく成長したんじゃないかしら。

「冥子おばあちゃま・・・じゃなくて理事長先生の話って、なんでこう、いつも要領を得ないというか・・・、もったりとした話になっちゃうのかしらねー。
昔からお世話になっているとはいえ、ホント疲れたわ」
ふぅとため息をついて、美令ちゃんは、私の椅子にどっかりと腰掛けた。
そして、上半身を机にだらーんと倒れこむ。
彼女のしっとりと艶やかな黒髪が、机一杯に広がって、一瞬綺麗だなーと見とれてしまった。
私も黒髪だけれど、美令ちゃんの髪は、私とは比べ物にならないくらいに素敵なの。
「まぁ、理事長さんは、昔っからあんな感じだし、今後もあんな感じだと思うよ?」
私が、彼女の顔を覗き込んで、こみ上げてくる笑いを抑えきれずに、クスクスと笑ってしまった。
彼女は、ムーっとした顔をしながら、私に話しかける。
「はぁ~、うちのばーちゃんの親友だもんねぇ。クセのある人だとは分かっているけれどね。私の周りって、ほんと面白い人ばかりだわ。うちの家系に問題があんのかしら」とブチブチ言ってる。
美令ちゃんに「ばーちゃん」なんて言われたら、また美神さんは鬼のように怒るんだろうなぁ~、いや、ほんとの鬼になるよね、きっと。
なんて考えながら私は彼女の顔を見る。
ほんと、まだ少女の雰囲気があるけれど、出会った頃の美神さんに良く似ている。髪の毛の色や瞳が艶がかった黒色なのを除けば、生き写しといっていいかもしれない。孫の代での「遺伝子関ヶ原の合戦」では、美神さんの方に多少有利に働いたのかな?
黒髪と黒い瞳は、ルシオラさんの魂を持つお母さんゆずりだね。
にっこりと微笑んだ表情も、良く似ているしね。
「それにさぁ、今日はうちのお母さんや、じーちゃんとばーちゃんも学校に来てたんだよねぇ。美令の入学式、ぜひその晴れ姿を見に行かねばって・・・。こっちは小学生じゃないんだから、まったくもって、恥ずかしいわ」
あー、やっぱり来ていましたか、あの3人は。
お父さんは今日も来れなかったのかな、まぁ、オカルトGメンで偉い地位にいる人だしね。まぁ、実際はあの3人のパワーについていけなくて戦略的撤退をしたのかもしれないなぁ。
「それで愛子ちゃん聞いてよー。また、じーちゃんったら、『周り全部が女子高生じゃー、つい数日前まで中学生だったのに~っ、少女から大人の女性へと成長する一瞬のすきまじゃあ~』とかまた分けわかんないこと言い出してさ、生徒の席に高速ダイブをしようとしたのよ。そんで、いつものようにお母さんとばーちゃんに瞬殺されてたもんなぁ・・・あれは恥ずかしかった」
あ、目に浮かぶわ、その光景。
横島くんは相変わらずだなぁ。あの二人もいつも大変ね。まぁ、横島くんも因果応報とはいえ大変な目にはあってるけれど。
でも、美神さんと横島くん、いつまでも元気でいてくれて嬉しいな。

「まぁ、無事に入学もできたし、約束も守れたし、ホッとしたかなー」
彼女は顔を上げて、にこっと笑った。
昔からよく私は横島家へ遊びに行って、美令ちゃんに勉強を教えてあげたりしていた。そして、青春の何たるかについても、二人で大いに語ったし、語り合ったものよ。
横島くんと美神さんからは、「あいかわらずねー」と言われて呆れられたけれど、
私と彼女は、青春という熱い絆で結ばれた、師弟関係でもあり、歳の離れた親友でもあるのだ。
その美令ちゃんは、高校進学をするときに理事長の冥子さんと
「トップの成績で入学したら、私の机は3年間とも愛子ちゃんでお願いします!」という約束をしていた。
もちろん、美令ちゃんが赤ちゃんの頃から可愛がり倒していた冥子さんは、「いいわよ~」の即答だったけれどね。
私ももちろん、オーケーしちゃった。いいのかな、私。とても嬉しいよ。
美令ちゃんは頭脳明晰だし、運動神経もバツグン、おまけに霊力もかなりのものだと思う。
これも、おばあちゃんとお母さんの遺伝のおかげかもしれない。あ、おじいちゃんの遺伝も少しはあるの・・・かな。ゴメンなさいね横島くん。
私は、心の中で、ぺろっと下を出して、謝った。

「言うのが遅れちゃったけれど、入学おめでとう、美令ちゃん。あと、また学園生活を体験する機会をくれてありがとうね」
私がペコリと頭を下げると、彼女は顔を真っ赤にして照れていた。
「ううん、愛子ちゃんは、子供の頃から一緒にいてくれたし、私ら姉妹みたいなもんじゃない。それに、私もじーちゃんを見習って、青春のなんたるかを学ばなきゃいけないしね!」
美令ちゃんは、おじいちゃんっ子で、いつも横島くんから昔こんなことがあったんやぞーという話を目をキラキラしながら聞いていた。美令ちゃんの明るいノリは、横島くんに似ているかもしれないなぁ。
あとの二人は複雑そうな表情で見ていたけれど。

ふと視線をあげると、周りのクラスメイト達がこちらをチラチラと見ている。
妖怪なの?なんでこんなところにいるのだろうという疑問の目線もあると思うけれど、たぶん美令ちゃんに向けられた視線が大半だろう。
彼女の家柄はこの業界では超有名だし、あとこの容姿。ほんと、ため息が出るほど
美人でスタイルがいいんだもん。さすがは美神さんとルシオラさんの血を受けついでいるよねぇ。
美神さんのお母さんも美人さんだったし。
「んんっ?なんか注目されちゃってるよね、私達。いや~どもども~、私、横島美令っていいます。入学式では、うちの身内が大騒ぎして、ほんっっとにごめんなさいね」
ペコリと頭を下げてから顔を上げ、頭をポリポリかいてる彼女。
普段はきりっとした美人さんなのに、あははーと笑う顔は、可愛らしい。
「あと、こちらにいるのは、私の大切なお姉ちゃんで、青春大先生の愛子ちゃん。みんな一年間ヨロシクね!」
美令ちゃんは、人懐っこい笑顔でみんなに自己紹介をして、私の紹介もしてくれた。
彼女の笑顔に引き付けられたんだろう、クラスのみんなも、こちらこそよろしくねーとリラックスした雰囲気になって、それをきっかけにしたのか、あちこちでワイワイと自己紹介をしたり、雑談が始まった。
美令ちゃんの人に安心感を与えてしまう優しい明るさは、横島くん譲りだろうなぁ。
あと、私のことをお姉ちゃんって、紹介してくれたね。
ありがとう。とってもとっても嬉しいよ。
少し涙ぐんじゃった。
私、美令ちゃんに入学式初日から、青春を体験させてもらっちゃった。
私が彼女の青春師匠だと思っていたのに、もはや教えることは何もないのかもしれないわ。

そうこうしているうちに、担任の先生が入ってきた。
前に理事長さんから聞いていたけれど、今年教員免許を取得したばかりの先生らしい。それでも霊力はなかなかといって良さそう。それでもって重要なのが、ここの女子高には珍しい見るからに人の良さそうな
熱血タイプの男性教師。それにちょっとハンサムさんかも。
うん、担任の先生もバッチリだ。これは青春しがいがあるというものよね。
私は美令ちゃんとアイコンタクトを取る、彼女も目をキラキラさせて大きく頷いた。
「愛子ちゃん、これから3年間、よろしく!」
ああ、これからまた、私達に騒がしくてお祭りのような日々が始まる予感がする。
私は、胸が熱くなり、笑みがこぼれた。
「こちらこそ、よろしくね、美令ちゃん」





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