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No.24056の一覧
[0] 【アルカディア・オンライン・イン・ストライク・プリースト(現実→擬似RO世界に転移)】[Shinji](2010/11/06 21:29)
[1] ■第一章:エルフ族の女ハンターと、さすらいの殴りプリ■[Shinji](2010/11/08 03:20)
[2] ■第二章:試練に挑む王女と、金策に励む殴りプリ■[Shinji](2010/11/10 22:56)
[3] ■第三章:敵討ちを求める女魔術師と、列車がしたい殴りプリ:前編■[Shinji](2011/04/11 13:30)
[4] ■第三章:敵討ちを求める女魔術師と、列車がしたい殴りプリ:後編■[Shinji](2011/06/05 12:03)
[5] ■第四章:人間に憧れる管理者と、そろそろ身を固めたい殴りプリ:前編■[Shinji](2011/06/11 09:59)
[6] ■第四章:人間に憧れる管理者と、そろそろ身を固めたい殴りプリ:後編■[Shinji](2011/06/18 02:59)
[7] ■第五章:騎士を夢見て努力する少女と、常連客 獲得に必死な殴りプリ:前編■[Shinji](2011/10/22 04:01)
[8] ■第五章:騎士を夢見て努力する少女と、常連客 獲得に必死な殴りプリ:中編■[Shinji](2012/04/16 20:41)
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[24056] ■第五章:騎士を夢見て努力する少女と、常連客 獲得に必死な殴りプリ:前編■
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/22 04:01
●はじめに●
今回のヒロインである剣士は原作のソードマン♀と全く同じ衣装を着ているので先ず画像検索して下さい。
















――――王都プロンテラ。ちなみに某聖職者の出現から5年目。




言わずともながらミッドガルド大陸に置いて最も繁栄しているのは勿論の事、歴史も深い都市である。

そんな人口数十万人の大都市プロンテラは、北にリディアの王城を置き中央には巨大な"噴水"が有る。

この噴水を中心に上下左右に4本の"大通り"が伸びており、西・南・東の入り口へと続いているのだ。

尚 西口を出て少し離れた場所(地下水道の入口)がアヤトとカトリが待ち合わせた場所なのは さて置き。

大噴水より王城を繋ぐ北の大通りは衛兵が目を光らせているので別だが、各大通りは非常に賑わっている。

長さも数キロにも渡って伸びており、特に南の"プロンテラ中央通り"はゲームと同様 最も通行人が多い。

その"中央通り"の一部には数百メートルに及ぶ露店ゾーンが有り、夜を除いて常に商売が行われていた。

だが誰でも商売が許可されている反面、王都の兵達による監視によって常に不正は取り締まられるが……

別の場所でブラック・マーケット的な商売の場所が存在するのは、誰も口には出さないが周知の事実だ。

それも さて置き。本日アヤト・エリス・ケイトの3人は、買い物の為に"中央通り"の露店に来ていた。

外出時アヤトは黒の僧服。エリスもハンターの衣装。ケイトに至ってもセージの衣装を身に纏っている。

尚 凄まじい人口密度でも有る事もあるが、基本的に各々の衣装は"この世界"では左程 浮いた姿では無い。


「相変わらずの人だよな~」

「そうですね。ケイトは大丈夫?」

「うぅ……未だに慣れないですね」

「けど"今回"は頑張るんだろ?」

「無理そうなら買い物は私一人で行くけど?」

「!? だ、大丈夫ですッ! 早く人混みに慣れないと此処(プロンテラ)じゃ何も出来ませんから!!」


本日アヤトの酒場は休みであり、その為3人は不足した食材や備品を求めて買出しに赴いたのである。

勿論 信頼の置ける商品を買うならば各専門店を訪れるのが定石だが、アヤトの店にそんな余裕は無い。

……とは言え露店であれ常に巡回する衛兵(実際には王都に委託を受けた商人ギルドの面々)の管理も有り、
悪徳な商品が出回る事は無く、食材においても同様な為 下級住宅街の店であれば左程 影響は無いだろう。

故に週一回の食材の仕入れによる露店巡りは今やアヤト達にとって日課であり、同時に休日の一時だった。

ちなみにアヤトの店は基本的に週休二日制なのだが、王都プロンテラでは年中無休か週休一日が常識だ。

だが社会人経験の無い彼にとって、週5の12時~22時の営業時間外の準備や片付けダケでもキツいのに、
資金(主にエリスとケイトの給料)を稼ぐ事が重要で有れ、過剰な労働を避ける為に週休二日に甘えていた。

いわゆる"ダメ人間"の心理とも言え、狩りは徹夜で行って来た事も有ると言うのに情けない男であろう。

しかしながら。アヤトは"それ"を自覚しているので、エリスとケイトには申し訳ない気持ちで一杯だった。

文句も言わず彼女達は働いてくれると言うのに、現代日本の時給で言えば650円程度しか渡せていない。

されどエリスは"くれる"と言われて貰わないのは逆に失礼だと思って給料を受け取っているに過ぎず、
ケイトに至っては彼の傍に居られる時点で幸せなので無駄金は殆ど使わず義兄の為に貯めているのだが。
(補足しておくがリディア達に紹介した際 無駄な認識を避ける為にケイトは"義妹"と言う形で落ち着いた)

それを察さず後ろめたさしか抱いていないアヤトは限られた時間で何か出来ればと常に試行錯誤していた。

其処まで気にするなら週休二日は止めろと言いたいが、理不尽な人生を送らされた彼を誰が攻めれようか?

さて置き。開店当初アヤトは一人で買出しに赴いており、それはエリスが人混みを恐れていたからである。

だが彼女が順応する事により2人で露店巡りが可能になったが……今度は新人のケイトが慣れる番だった。

"刻を告げる街アルデバラン"はむしろ都会なのだが、何より露店通りの人口密度が桁違いなのだとも言う。

よって当初のケイトは目眩を訴えて早々と退場してしまい買物にならなかったが、次第に慣らし今に至る。

それはケイトの義兄(アヤト)と共に"お買物"がしたいと言う純粋な望みと努力の積み重ねから成ったモノ。


「はははッ、それじゃ~頑張って貰わないとな」

「ではケイト。行きましょう?」

「はいッ! 宜しく御願いしますエリスさん!」

「義妹を頼んだよ? エリス。あと買物も」

「分かりました」

「ケイトは ちゃんとエリスの手助けをしてやるんだぞ?」

「当たり前だよ~。義兄(にい)さん」

「そう言えばアヤトさんは、どうされるんでしたっけ?」

「い、いや俺はだな……(楽して金を稼ぐ為に掘り出し物 探しや金策でも……とは言えないな)」

「あっ! 確か義兄さんは聖職者としての"御仕事"をするんだよねッ?」

「アヤトさんが……聖職者としての仕事?」

「ほら前に言ってたじゃないですか~、義兄さんは"お店"でも人の話を聞いたりする事が多いけど、
 待つダケじゃアレだから"こう言う時"に悩みや相談を受けに人の多い場所に行く事も有るんだって」

「えっ!? そ、それは只の私の推測で……(と言うか内緒にして欲しかったのに)」

「推測ッ? だったら違うの? 義兄さん」

「んっ? いや……そうだった、俺の用は……そんなところかなァ」


どうやら今回はエリスとケイトに買物を任せる様であり、アヤトは彼女達と別行動をするつもりらしい。

その理由としてアヤトは適当にはぐらかす気だったみたいだが……純粋な性格の義妹が思った事を言う。

エリスとしては彼が自分に言わずに何をしようと見守ってゆくつもりだったのだが、ご覧の有様である。

だがアヤトにとっては好都合だった様で、苦笑いしながら頭を掻きつつ答えるとケイトは眉を落とした。


「はァ……だったら仕方ないか~」

「わ、悪いね」

「ボク義兄さんと此処で"お買物"した事、まだ一度も無いのに~!」

「でもダメよ? アヤトさんには"遣る事"が有るんだから邪魔してはいけないわ」

「遣る事?」

「えぇ。それに私達は此処で働かせて貰ってるんだから、ちゃんと勤める様にしないと」

「!? そ、そうでしたねッ! ゴメンなさい義兄さん!! ボクが間違ってました!!」

「別に謝るような事じゃないぞ? 分かってくれれば良いんだ」(キリッ)

「あッ……(や、やっぱり義兄さんはカッコ良くて優しいな~)」←単純

「ではアヤトさん。私達はコレで」

「うん。お互い暗くなる前には帰るとしよう」

「それじゃ~行ってきま~す!!」

「……(こりゃマジで給料を上げる様に内職でもした方が良いのかなァ?)」


前述のようにエリスとケイトは今の生活に全く不満は無いが、アヤトは後ろめたさを常に……以下同文。

とは言え最初から居たエルフは勿論、ケイトの加入で更に業務が楽になったのは願っても無い話だった。

されど手が空く分"相応の報酬"が必要と感じているアヤト。繁盛していれば話は別だが否なのである。

しかしながら。アヤトの店は斬新な料理を下級市民にとっては高いが比較的良心的な価格で提供している。

それらをリディア・クレア・カトリの3人が気に入っている為、口コミで繁盛は間違い無かったのだが……

リディアが外出する事により、彼女の父は快く承認しているとは言え当然 野放しには出来なかった結果。

影でアヤトの店が有名に成らないように調節されており、リディアの存在も公にバレない様にしている。

それに"彼"やエルフが気付いていない筈は無いが、特に気にする素振りも無く泳がせている余裕振りに、
事情を知るクレアは素直に感心し、気付いているエリスはアヤトが気にしないので有ればと放置する始末。

即ち現状で落ち着いているのだが、アヤト・ケイト・リディア・カトリは全く気付いていなかったりする。

さて置き。エリスとケイトが人混みに消えたのを確認すると、アヤトは軽く身形を直し表情を改めた。


「さてと……俺も見て回るとすっか」


――――これはアヤトにとって久し振りの(買出し以外の)露店巡りであり、更なる出会いの始まりだった。








【アルカディア・オンライン・イン・ストライク・プリースト】




■第五章:騎士を夢見て努力する少女と、常連客 獲得に必死な殴りプリ:前編■








原作で言う"プロンテラ中央通り"は歩道・車道(馬車が通る)関係なくビッシリと露店で埋まっていた。

しかし"こちら"では衛兵(此方は委託を受けていない方)により馬車が通れる様には整理されており、
その左右の歩道に数百の店が連なっていて、アヤトはエリス&ケイトと"反対側"の露店を見て回っている。
(尚 反対側に向かうのは横断歩道の様な場所を通る必要が有り、信号機の役割は衛兵が務めている様子)

ちなみにエリス&ケイト側には食品関連の露店が多く、アヤト側は小さな雑貨から家具まで並んでいた。

さて置き。露店めぐりの中、アヤトが特に目を光らせているのがアクセサリー等 小さな商品が並ぶ露店。

どうやら"ターゲット"を発見した様で、彼は何時もの"真面目な聖職者"としての仮面を被って交渉する。


「このカード……随分と古そうですね」

「おぉ? コレかい? 何だか不気味だろ? モンスターの姿が描いて有るんだぜ」

「何処で手に入れたんですか?」

「倉庫で商品を整理している時に出て来たんだよ。ずっと放ったらかしだったんだろうなァ」

「ちょっと見せて下さい」

「構わんよ」

「有難う御座います……フ~ム……」

「どうしたんだい?」

「御主人の出身は"衛星都市イズルード"ですか?」

「んっ? 正解だ。何で分かったんだ?」


――――露店の主人の言葉に、アヤトは軽く微笑みながらカードを裏返して描いて有る絵を見せた。


「コレは"マリンスフィアー"と言う魔物なんですよ。イズルード海底洞窟でしか出現しない魔物です」

「へ~ッ、成る程。随分と詳しいんだな。だから俺が其処 出身と踏んだ訳か」

「(やっぱ認識度は低いんだな……)そう言う事です」

「まァそれよりもだ。何か買って行ってくれないか?」

「だったら……この"カード"を頂きますよ」

「おいおい。そんなモノをか? だったらコレの方が……」

「500ゼニー出しますけど?」

「!? 売ったッ! ……って本当に良いのか? こんなのに500も出すなんて」

「趣味で同じようなモノのを集めていましてね。500でも安い位ですよ」

「そうなのか? こっちは願ったり叶ったりだ。毎度あり~ッ!」

「もし他にカードが有れば買わせて頂きますんで、また寄りますね?」

「分かった!! また見つけたら並べて置くから宜しく頼むぜ!? 他の商品も安くしてやるからなッ?」


アヤトの"ターゲット"とは何と"モンスターが描かれたカード"であり、実は驚くほどの力を秘めていた。

幾らホコリを被ろうが朽ちる事の無いそのカードは、モンスターを撃破した際ドロップするレアである。

ゲームでは5000分の1やら3333分の1で落ちるのが大半で、当然 此方の世界でも低確率だった。

されどアヤトは実際に2~3枚は魔物を撃破した際に拾っている為 体感 其処まで確率は低く無い模様。

しかしながら。アヤトが一人で必要なカードを揃えるのは寿命が1000年 有っても無理なのは明白だ。

よって彼は露店を隈なく回る事により只 同然で並んでいるカードを見つけ出し、全て買い取っていた。

対して露店を出していた者にとっては"棚から牡丹餅"状態であり……思わぬ収入で気を良くした事から、
次回アヤトが店や冒険に必要な商品を買おうとした際、それなりにオマケしてくれるので有り難い話だ。

同時に食料の仕入れの委託と"カード効果"により安いコストで商品を仕入れて行く事を本格化させた彼を、
エリスとケイトが更に尊敬&惚れ直したりするのは別の話である。(2人とも値切るのは慣れていない為)

ではアヤトが回収している"カード"の効果は何かと言うと、防具や武器に挿す事によって初めて発揮する。

例えば世界樹で戦った"ハーピ"のカードは肩に掛ける物に挿せ無属性攻撃を15%カットする事が可能で、
更にカトリとケイトが使える"ナパームビート"と言うスキルのダメージを5%増加させる事が出来る。

また"ハーピー"のカードは特殊であり、他の部位5箇所以上に特定のカードを挿して組み合わせる事で、
"セット効果"と言うボーナスも受けることが出来るのだが、アヤト以外が理解しているワケが無かった。

簡単な効果で言えば"レイドリック"のカード。肩に掛ける物に挿せば無属性攻撃を20%もカットでき、
ゲームでも使う機会が多くアヤトも当然持っていた。(無論 魔物自体は強いので彼は露店で購入している)

それらのカードは防具は一個に1枚しか挿せないが、アヤトの武器(チェイン)には3枚挿す事ができ……




――――るのだが。キリが無いので簡単に説明を行って置こう。




●武器●
アヤトのメイン装備の"チェイン"にはカードを3枚挿せ、各カードは特定の種族に20%の追加ダメージ。
つまり3枚挿す事で60%もダメージを上昇させる事ができ、更に属性を付与すれば乱獲が可能である。
だがチェインは比較的 高価なのでアヤトの持つ種類は其処まで多くなく、彼は属性武器を全系統所持。
尚 属性武器にカードを挿す事はできない。また彼に聖属性以外の付与はケイト以外は行う事は出来ない。


●盾●
主にカードを挿した"バックラー"を持ち替える事によって全ての敵からのダメージを30%カットできる。
彼は盾用の状態異常防御のカードも何枚も持っているが今の段階では使用していない。即ちコレクション。


●頭●
各状態異常耐性20%効果が多いが彼は使用せず。支援の時はINTが上がるカード効果のビレタを被る。
一人の時は"絶対に沈黙状態に成らない"効果の有るビレタを被り、今現在も彼の頭には乗っかっていたり。


●鎧●
カウンター効果で状態異常が発動するカードが非常に多いがアヤトは回避する事の方が多いので無意味。
逆に鎧に属性を付与するカードを挿した僧服を彼は多く持っており、狩場によっては非常に有効である。
つまり魔法攻撃を多用してくる魔物が多いダンジョンでは、彼がダメージを受ける事は殆ど無いのだ。
だが戦闘中はゲームと違って服を着替える余裕など無いので、基本的にアヤトの属性は常に一緒である。


●肩●
属性を直接付与する鎧のカードと違って、特定の属性のダメージを30%軽減してくれるカードが多い。
だが最も使用頻度が高いのは……無属性を軽減する"レイドック"カードと回避率を上げるカードである。
此方も即座に着替えるのは難しくアヤトは"肩に掛ける物"に該当するアイテムを出発前に組み込んでいる。
よって見た目は普通の僧服姿であり、彼は基本的にHPを上げる鎧+回避肩の組み合わせでの外出が常だ。


●アクセサリ●
他の部位と違って2種類装備することができ、基本的に元の装備が高価でアヤトは中々 手が出せない。
効果は大きく分けて2つあり、各能力を底上げするモノと他の職業のスキルを使えるモノが存在する。
アヤトの場合は選り好みが難しいので、常にAGIが上がるブローチを2個装備して行動している模様。
尚ゲームとは違い底上げされる数値は高いらしく、アヤトは自分でも驚くほどの素早さを持っている。


●仕様●
ゲームでは魔物から"カードの挿す事のできる装備"を入手する必要が有るが、基本的に何にでも挿せる。
だがゲームでの各アイテムと酷似していないと挿す事が出来ず、アヤトも僧服を改造するのに苦労した。
また原作では誰も買わない上、簡単に買えた装備群で有ったが彼にとっては高価で皆 入手が困難である。




……と言う事でアヤトは凡人の能力値で有りながら各 効果の装備を活かす事で全てをカバーできたのだ。

コレはアヤトしか知らない特権中の特権で、本来彼の資質であれば上級職にすら成れなかったのである。

つまり。恐らく先代の冒険者達がドロップさせたのであろう、全てのカードの値段が只 同然だったので、
挿す防具の品質さえ選ばなければ早い段階で非常に優れた特性を持った装備を入手する事ができたのだ。

それらを発見し活かせる事を知ったアヤトの興奮振りは凄まじく、元々高いモチベーションが一気に上昇。

よって努力に甲斐も有り、心が折れる前&死ぬ前に転職フラグまで漕ぎ着け……今に至ると言うワケだ。

そんな彼は"マリンフフィアー"カードの購入後 歩き出すと(四次元)ポケットからアクセサリを取り出す。

ソレはカードを挿す事が可能な"クリップ"と言うアイテムであり、類似品が多く何気に入手が困難だった。

だが時計塔の管理者であったケイトが部下の"アラーム"がクリップを落とした事から数多く持っており、
其方も只 同然で譲り受けた事で気を良くしたアヤトはケイトにINT効果のカードを挿して2個返却。

同様にエリスにもDEXが上がるクリップを2個 渡した事で、彼にはアイテムに特別な力を宿せる!?

……と互いに勘違いし、アヤトに対する認識を更に(良い方向に)改める事に成ったのも さて置いて……

アヤトは先程買った"マリンスフィアー"のカードを左手で持つクリップに近付けると、頭の中で念じる。

いわゆる挿した事により発揮される効果で有り……ソレを認識されたカードはクリップに吸い込まれる。

即ち"消えた"と言う事で、今の瞬間 付ければ剣士の"範囲攻撃"が他職でも使えるアクセサリが誕生した!


「――――へへっ」


自分でも範囲攻撃が出来る。ソレが嬉しかったのかアヤトは一人で忍び笑いすると本日の戦果を確認。

左手の(新)クリップをそのまま右手でカードを取り出すのだが、その数は10枚近くで大収穫と言えよう。

だがコレ以上は求めすぎと考えたアヤトは、何処か空いたスペースが無いかと焦点を別の方向に向けた。


「さてと。そろそろ出費ばっかりじゃ無くて稼がないとなァ」




……




…………




……そして十数分後。


「いっらしゃいませ。何かお悩みですか?」

「ウム……実は聞いて欲しいんだが……」


教室の机並みに小さなレンタルしたテーブルに手前(自分用)と奥(客用)の椅子二つ。幅は大体1メートル。

そんな露店と露店の間の小さな空間に、アヤトは"悩み・相談 聞きます"と言う小さな看板を置いていた。

いわゆる現代社会で言う"手相屋"の様なモノで有り、並ぶ者は居ないが意外と客足が止まる事は無かった。

しかも値段は決まってないとは言えワザワザ露店通りで悩みを言う様な客達 故に意外と良い収入になる。

流石に貰い過ぎると衛兵に目を付けられると思うので断っているが、調子に乗って治療をした時は驚いた。

足を骨折して踊れなくなった者を何となく治療したら、エラく感謝されて慌てて逃げ出した事が有るのだ。

彼は其処まで認識してなかったが彼程 回復力(及びレベル)が高い聖職者は多くなく、むしろ実に少ない。

よって大聖堂の高僧 並の回復力を持つアヤトが"こんな場所"で只同然の値段で回復屋をするのは異例だ。

その為アヤトは軽い"おまじない"程度の癒しに留め、気分良く料金(金額自由)を払って頂いているのだ。

尚アヤトの行っている事は殆どは話を聞いているダケだが、現代社会を活かした返答にウケは悪くない。

だったらコレを本業にした方が良い気もするが、彼はいずれ働かずに収入を得ると言う野望を抱いていた。


「どうですか? 貴方の苦悩は取り除かれましたか?」

「有難う……喉の閊えが取れた気分だ。何とか仕事 頑張ってみるよ」

「では貴方に神の御加護が有りますように」

「少ないがコレは礼だ。受け取ってくれ」

「かたじけありません」

「また見たら寄らせて貰うよ。じゃあ有難う」


ちなみに"この世界"での経験値はリディアやカトリの様に才能が高ければ修行や訓練で大幅に増えてゆく。

逆にアヤトの様な凡人で有れば魔物を狩る方が余程 効率的で、王立騎士団員も殆どが非戦闘での成長だ。

よって普通の人間が聖職者を目指すのは魔物を狩る訳だが、基本的に女性な上に非力な為 一人は不可能。

ならば仲間と共に狩るしか無く……戦わずとも味方と魔物の傍に居れば経験値は等分で配布されるのだ。

だがアヤトの様に途方に暮れる程の数の倍を倒す必要が有り、王都でそんな方法で転職する人間は少ない。

逆にエリスの様に物心ついた時から武器を持ち、常に狩りを行って来ていた地方の者達は別なのだが……

王都での認識は二次職=才能がある者で有る。よって凡人は早々に冒険者の夢を諦め好きな仕事を探す。

努力次第では誰でも可能とは言え……アヤトの様な知識無しだと考えると、無駄な努力でしかないのだ。

さて置き。一人10分で10人ほどの悩みや相談を受けたアヤトは3分程 客が来ない事で席を立った。

早くも店仕舞いの様であり、3分で諦める上 ハンパな時間で済ませる辺り彼のダラしなさが感じられる。


「……(さ~て、そろそろ飽きたし2人も戻る頃だと思うし……)」

「あ、あのうっ」

「んんっ? ……おっと……お客様でしたか?」

「はい……そ、それなんですけど……あたし……」


そんな(レンタル)机を片付けようと思ったアヤトだったが……彼の目の前に一人の"少女"が姿を現した。

原作のソードマン(女性版)と全く同じ衣装を身に着けており、紺色の長髪をポニーテールにしている。

瞳は赤く顔つきは大人びているので彼女が"普通の状態"ならアヤトは10代後半と認識したであろう。

だが近くで見ないと分からなかったが、髪はボサボサであり衣服は所々小さなキズが有り傷んでいて……

ロングスカートの下部は水分を吸収しているのか黒ずんでおり、表情にも覇気が無く影が掛かっていた。

対してアヤトが動揺を隠しつつも接客モードに入ると……剣士と思われる少女は遠慮がちそうに言う。


「何か?」

「その……お金とか持ってなくて……それでも、大丈夫ですか?」

「……(どうしたんだ? こんな姿で。狩りの後って感じだが此処じゃ珍しいよなァ)」

「え、えっと。無理だったら良いので――――」

「!? いえいえ。来られる者は拒みませんよ? お席の方にどうぞ」

「あっ……はい。あ、有難う御座います」

「その前に御手を拝借」(ヒールLv1)

「……ぅあッ……えっ? 腕の痛みが……消えた?」

「見るからに痛そうだったからねェ。要らぬ世話をさせて貰ったよ」

「す、すみません」


――――意外にも収入が見込めない客が来てしまったが、本気で困ってる様なのでアヤトは対応した。


「それで相談とは何なのかな?」(言葉使い変更)

「はい。それなんですが……その……実は途方に暮れてたんです……」

「どう言う事だい?」

「あたしはクレア様みたいな騎士に成りたくて村から出て来たんですけど、分からない事ばっかりで、
 ギルドの討伐や採取の依頼を受けても全然 達成できなくて、持って来たお金も無くなっちゃって……」

「ふ~む。それで何か"知恵"を借りたいって感じかな?」

「そ、そうなんです。このままじゃあたし、村に帰る前にノタれ死んじゃいますッ」

「そりゃ縁起でも無いな……とは言え随分と良い"カタナ"を持ってる様だけど?」

「これですか?」


――――此方の世界でのカタナはゲームと同様4枚のカードを挿せ属性を付与すれば凄まじい火力になる。


「うん」

「確かに村で"この剣"を扱えるのは、あたし くらいでした……でも、やっぱり無理だったんです」

「どうしてだい?」

「所詮は あたしは井の中の蛙。クレア様みたいに成れないのは勿論の事、ギルドにも強そうな人は沢山。
 "現実"っていうのを分かった気がして……やっぱり努力しても、出来ない事は出来ないんですね……」

「…………」

「あっ! す、すみません……情け無い事を言ってしまって」

「いやいや。気にする事は無いよ? そう言う話を聞くのが俺の仕事だからねェ」

「そう言って貰えると助かります」

「ところで君の名前は?」

「!? あ、あたしとした事が忘れていました。あたしは"セニア・イグニゼム"って言います」

「なん……だとッ?」

「な、何か?」

「えっ? あいや。ななな何でもない……俺の方はアヤト・カツラギって言うんだ。見ての通り聖職者さ」

「アヤト様ですね? 宜しく御願いします」

「……(この娘はカトリと違ってMVPにも成ってる"あの名前そのもの"じゃないかッ!)」

「と、ところで……その……」

「ぇあ?」

「やっぱり難しい相談だったでしょうか?」

「その前に聞きたいんだけど、君は騎士に成りたいのかい? それとも田舎に帰りたいのかい?」

「実を言うと……ソレも決め兼ねている心境です」

「そうなのかァ(だったら俺の判断に委ねる感じなのかよ!?)」


イグニゼム・セニア。原作では苗字と名前が逆と成っているが、高レベルのMVPモンスターである。

姿としては目の前の"セニア"のポニーテールを解いた感じなので、強ち"資質"も大差が無いと言える筈だ。

だが"この世界"では彼女の様に才能が有る者でも、開花される事も無く埋もれてしまう例も多々有る。

つまりだ。セニアもカトリと同様 此処でアヤトで運命的な出会いをしなければ、手遅れになっていた。

このまま下級住宅街の路地で静かに最期を迎えるか、田舎に帰って静かに余生を過ごす未来しか無いのだ。

されど名前ダケでセニアの才能を理解したアヤトは……露店でダイヤモンドの原石を発見したのと同じで、
彼女の実力に努力も重なると有らば、確実に自分を越える。そんな彼女が常連に成れば店の儲けも増える!

そんな横着な事を考える彼であったが、逆にセニアは真剣な様子で目の前の男のアドバイスを待っていた。


「ですから教えてください。あたしは……これから何をすれば良いんでしょうか?」

「夢を諦めずに騎士を目指すべきだね」(キリッ)

「で、ですけど……もう実力もお金も無いですし……今となっては何も……」

「そんな事は無いさ」

「えっ?」

「後者はともかくだ。君に実力が無いハズはないッ! その右手は何だ? その手のタコは何なんだ?」

「……ッ……」

「今迄 散々努力して頑張って来た証拠だろ? 一文無しが何だ? むしろ其処からがスタートだろ!?」

「あ、アヤト様……」


――――言っている事は滅茶苦茶だが、パジャマ姿でのデビューを飾った彼が言うと説得力が有る。


「ともかく、諦めるなんて どんでもない。俺で良かったら何か冒険の手助けをさせて貰うよ」

「!? それは願っても無いですけど……よ、宜しいんですか?」

「此処で会ったのも何かの縁だしね。何の問題も無いさ」

「あ、有難う御座いますッ! この御恩は絶対に忘れません!!」

「まだ礼を言うには気が早すぎるって。ともかく俺の家に案内するよ?」

「わ……分かりました(騙された事は何度も有るけど、不思議と疑う気には成れなかった……だから……)」


こうしてアヤトはセニアに自分の知識を授ける事で立派なナイトに成長して貰い、常連客にする事にした。

そんな遠回しな事する位だったら自分で冒険に行けよと言う話だが、彼は今の生活を崩したくなかった。

自分が旅に出れば当然エリスとケイトも付いて来るだろうし、2人が心配と言う親馬鹿心も抱いている。

よって帰ったら2人に何て怒られるだろうな~ッ……とか思いながらセニアを伴って彼は露店を離れた。


「ところでセニア」

「はい?」

「君は幾つなんだい? 俺は26だけど」

「あたしは今年で16歳になりました」

「!? そ、それにしては随分と大人びてるねェ」

「酷いです……コレでも気にしてるんですよ?」

「はははッ、悪い悪い」

「失礼ですがアヤト様も最初は もっと真面目そうな方だと思ってました」

「勘が鋭いねェ。実は今の俺が"本来の自分"だったんだよ」

「でも斬新で良いと思います。そう言う聖職者様が居るのも」

「それって褒められてるの?」

「勿論です(……この人を信じて平和の為に戦い抜こう。この命が尽きるまで)」


――――だがセニアの瞳は今だ諦めの色が強く出ているのだが、アヤトがソレに気付く事は無かった。








■後編に続く■








■あとがき■
剣士娘偏です。大変長らくお待たせ致しました。後半はイグニゼム・セニア育成計画が始まるよ!(逆だろ)
目指すダンジョンは予告通りの場所。其処で何が起こるかはROをプレイしていれば何となく分かるかも。
また今回アヤトが強い理由を少し詳しく書いてみました。故に次回ではリディア達も出る予定であります。




■補足■


○セニア・イグニゼム○
若干16歳で騎士を夢見て田舎を飛び出してきた少女。影響されたのは、やはりクレア・ジュデックス。
幼い頃に父はモンスターに殺されてしまい、病弱な母を支えながら仕事をしつつ生活をして来た苦労人。
よって若いながらも非常に大人びた容姿をしており、性格も勝気で真面目。村では一番の剣士だった。
だが都会での生活に緊張し本来の実力を出せず何を行っても失敗し挫折 直前にまで追い込まれてしまう。
そんな中アテも無く露店外を彷徨っている中、説教を行うアヤトを発見し思い切って声を掛けたのである。
元ネタは原作の"イグニゼム・セニア"。画像検索をした彼女をポニーテールにしたのが本作のセニアです。


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