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No.23719の一覧
[0] The Parallel Story of Regios (鋼殻のレギオス 二次創作)[嘘吐き](2010/11/04 23:26)
[1] 1. 入学式と出会い[嘘吐き](2010/11/04 23:45)
[2] 2. バイトと機関部[嘘吐き](2010/11/05 03:00)
[3] 3. 試合観戦[嘘吐き](2010/11/06 22:51)
[4] 4. 戦う理由[嘘吐き](2010/11/09 17:20)
[5] 5. 束の間の日常 (あるいは嵐の前の静けさ)[嘘吐き](2010/11/13 22:02)
[6] 6. 地の底から出でし捕食者達[嘘吐き](2010/11/14 16:50)
[7] 7. 葛藤と決断[嘘吐き](2010/11/20 21:12)
[8] 8. 参戦 そして戦いの終結[嘘吐き](2010/11/24 22:46)
[9] 9. 勧誘と要請[嘘吐き](2010/12/02 22:26)
[10] 10. ツェルニ武芸科 No.1 決定戦[嘘吐き](2010/12/09 21:47)
[11] 11. ツェルニ武闘会 予選[嘘吐き](2010/12/15 18:55)
[12] 12. 武闘会 予選終了[嘘吐き](2010/12/21 01:59)
[13] 13. 本戦進出[嘘吐き](2010/12/31 01:25)
[14] 14. 決勝戦、そして武闘会終了[嘘吐き](2011/01/26 18:51)
[15] 15. 訓練と目標[嘘吐き](2011/02/20 03:26)
[16] 16. 都市警察[嘘吐き](2011/03/04 02:28)
[17] 17. 迫り来る脅威[嘘吐き](2011/03/20 02:12)
[18] 18. 戦闘準備[嘘吐き](2011/04/03 03:11)
[19] 19. Silent Talk - former[嘘吐き](2011/05/06 02:47)
[20] 20. Silent Talk - latter[嘘吐き](2011/06/05 04:14)
[21] 21. 死線と戦場[嘘吐き](2011/07/03 03:53)
[22] 22. 再び現れる不穏な気配[嘘吐き](2011/07/30 22:37)
[23] 23. 新たな繋がり[嘘吐き](2011/08/19 04:49)
[24] 24. 廃都市接近[嘘吐き](2011/09/19 04:00)
[25] 25. 滅びた都市と突き付けられた過去[嘘吐き](2011/09/25 02:17)
[26] 26. 僕達は生きるために戦ってきた[嘘吐き](2011/11/15 04:28)
[27] 27. 正しさよりも、ただ己の心に従って[嘘吐き](2012/01/05 05:48)
[28] 28. 襲撃[嘘吐き](2012/01/30 05:55)
[29] 29. 火の激情と氷の意志[嘘吐き](2012/03/10 17:44)
[30] 30. ぼくらが生きるために死んでくれ[嘘吐き](2012/04/05 13:43)
[31] 31. 慟哭[嘘吐き](2012/05/04 18:04)
[32] 00. Sentimental Voice  (番外編)[嘘吐き](2012/07/04 02:22)
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[23719] 14. 決勝戦、そして武闘会終了
Name: 嘘吐き◆e863a685 ID:eb6ba1df 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/26 18:51
野戦グラウンドスタジアムのモニター室。
そこには今回の武闘会の責任者であるカリアンとヴァンゼがいた。 他にも数人の生徒会役員や、運営にかかわった者たちが先程までは集まっていたが、皆それぞれの仕事でここを離れているため、今は二人だけだ。

「一応、お前の思惑通りにはいっているようだな」

モニター画面の前の椅子に座っているカリアンに、後ろに立ったヴァンゼが声をかける。

「まあ、一応はね。 もっとも、彼が小隊に入ってくれれば一番良かったのだが」

先程準決勝が終わり、現在闘技場に選手たちはおらず、いるのは先の試合の後始末をしている者たちだけだ。
決勝へと進んだ選手たちは控室で待機していることだろう。 さすがに休みなしで連戦するのは酷だということで、準決勝と決勝の間にはしばし時間を空けていた。 その間客席では観客たちが退屈しないように、あちこちに設置されたモニターで昨日の予選から今日の本戦のうち、すでに終わった試合の映像を様々な角度から代わる代わる流している。

「まあそうだな。 だが無理強いもできまい。 少なくとも、俺にそのことをどうこう言う資格は無いからな」

ヴァンゼは自嘲気味に言う。
前回の汚染獣戦の際の司令室での一件がまだ少し尾を引いているようだ。
と、そこで試合へと話を戻す。
 
「それはそうと、次はいよいよ決勝か。 しかし、あいつも随分と器用なことをする。 力だけでなく技量も相当のもののようだな」

レイフォンが常に対戦相手に合わせた戦い方をしていることを言っているのだろう。 今までの試合、どれも傍目には接戦のように見えていたのは、レイフォンが戦闘中の自分の強さを相手に合わせて変えていたからだ。 もっとも、接戦といってもレイフォンはどの試合でもほとんどダメージを負っていないが。

「確かにね。 汚染獣との戦いの時といい、彼の強さは私にとっても予想以上だった。 まあ彼が接戦を演じているのは、私が手加減しろと言ったのもあるだろうが、彼に武芸科生徒たちの実力を測ってほしいと頼んだからでもあるだろうね。 だからあえて時間をかけているんだ」

「何故またそんなことを?」

「この間の汚染獣戦のようなことがまた起こらないとも限らないからね、彼に武芸科生徒たちの実力を見せて、そして彼らの力を理解しておいてほしいと思ったのさ。 その上で、彼から忌憚の無い意見をもらいたいと思っている。 毎回彼に頼ってばかりはいられないし、今後の武芸科の方針を決める上でも彼の見解は参考になる。 なにせ数少ない実戦の経験者だ」

レイフォンという存在を武芸科に迎え入れることができたのはかなりの幸運だ。 未熟者が集まる学園都市では実戦の経験者というだけでも十分貴重な存在だ。 もともと学園都市に来るような武芸者の大概は、才能が無いか、もしくは何かしらの問題を抱えている者たちばかりだ。 実力のある武芸者は都市が外に出したがらない。
もちろん才能の無い者が学園都市に来るのは、自都市ではできない成長を求めてのことであり、上級生ともなれば普通の都市の学生武芸者よりもずっと高い実力を身に付けている者だっている。 ツェルニで言えばヴァンゼ達小隊員がそれに当たる。 だが、それでも未熟者であることに変わりは無い。

この追い詰められた状況の中で、レイフォンがツェルニに来ると知った時、カリアンは救世主が来たと思ったくらいだった。
ならばこの幸運を最大限活かすべきだろう。 カリアンはそう思う。
が、ヴァンゼが気になったのは別のことのようだった。

「……前にも思っていたが、もしかしてお前、あいつが何者か知っているんじゃないのか? 汚染獣戦の時も、それ以前に武芸科の転科を勧めていた時も、お前はあいつのことを前から知っているような様子だった」

ヴァンゼの疑うような視線に、カリアンは平然と答える。

「まあ……知っている、と言えなくもない。 ツェルニに来る前に1度見た事があるからね。 向こうは私のことなど知らないだろうが。 
とはいえそれを人に話すつもりは無いよ、たとえ君でもね。 そもそも私の持っている彼の情報は完璧ではなかったらしい。 もし彼が私の思う通りの人間だったなら、彼の転科や小隊入りであれほど交渉に苦戦したり、ましてや失敗などするはずがなかったからね。 もっと簡単に操ることもできた」

「ほう……。 まあいい。 それで最後の相手は……ゴルネオか。 レイフォンと同じグレンダンの出身だな。 実力的には順当と言ったところだが」

ヴァンゼがいくつかあるモニターの1つ、トーナメントの進行具合を映しているものを見て呟く。
カリアンもそれを見上げた。

「……レイフォン君と同じ、グレンダン出身か……」

カリアンが漏らした独り言をヴァンゼが聞き咎める。

「なんだ? その、さも何か懸念がありそうなセリフは。 相手がゴルネオだと何か問題があるのか?」

カリアンはしばし沈黙するが、やがて首を横に振った。

「いや、杞憂であればいいと思うことが一つあるだけさ。 どの道、たとえその懸念が当たっていたとしても、今のところ私にできることは無い。 今回何も無くても、いずれまた形を変えて起こることだろうからね。 とりあえずは成り行きを見るつもりだ」

「……ふん。 まあいい」

ヴァンゼはカリアンから目を離し、再びモニターに向ける。
丁度闘技場の整備も終り、次の試合が始められるところだった。 実況する司会の声と共に対戦者の二人が闘技場に入って行く。

(課題も懸念も山積みだ。 しかし残された時間は少ない)

カリアンやヴァンゼ達責任者にとってはこの武闘会すらも、今年の武芸大会、そしてツェルニ存続のための布石でしかない。
カリアンの視線は画面上の試合に向けられたまま、思考は今後の方針へと流れて行った。



















『さあ! 武芸科ナンバーワン決定戦、ツェルニ武闘会。 いよいよ次は決勝戦です。 昨日の予選から今日の本戦準決勝までを勝ち抜いてきた二人が、これよりツェルニ最強の座を賭けて戦います。 では、対戦者入場!』

司会の景気の良い声と共に、闘技場の一方の入り口から一人の巨漢が歩み出て来た。

『まずは、第五小隊の隊長にしてツェルニ最強アタッカーの呼び声も高い、ゴルネオ・ルッケンスの登場です! 小隊対抗戦でも活躍し、その力量はヴァンゼ武芸長にすら勝るとも劣らぬ実力者。 今大会においても、優勝候補の筆頭と目されています』

次に出て来たのは茶髪に藍色の瞳、中肉中背の少年レイフォンだ。 

『対するは今大会のダークホース。 一年生にして予選を勝ち抜き、本戦でも小隊員を相手に見事な戦いぶりを見せた超新星、レイフォン・アルセイフ!』

実況の声が響く中、レイフォンは闘技場の中央まで歩いていく。 歩きながら、同じく中央へ向かっていく対戦相手の方をさりげなく観察する。

(ルッケンス……か)

眉間にやや皺が寄るのを自覚する。
相手の男は大柄だった。 予選でも大柄な選手はいたが、こちらは別格だ。 上背も肉厚もレイフォンを遥かに上回っており、ヴァンゼにも匹敵するかもしれない。
鍛え抜かれた全身は分厚い筋肉で覆われ、手足は丸太のように太い。
短く刈り込まれた銀髪に角ばった厳つい顔立ち。 それでいて顔のつくりはどこか甘い雰囲気もあり、愛嬌のようにも取れる。 なんとなくだが、レイフォンはその顔立ちの甘いつくりに見覚えがある気がした。
笑えば意外にいい男かもしれないその目は、今は鋭く引き締まっており、レイフォンを強く見据えている。
中央まで進み出てきた二人は、無言で向かい合ってお互いに礼をする。
これまでの試合通り審判からの繰り返しの諸注意を聞き、やがて審判が離れていくと二人も適度に距離を開いた。
ある程度距離を置いたうえで改めて対峙する。

審判の合図と共に錬金鋼を復元し、レイフォンとゴルネオはそれぞれ武器を構えた。
鋼鉄錬金鋼の刀を構えるレイフォンに対し、ゴルネオは手足に手甲脚甲を装着した状態で、左半身に構えた。 体の正中線を隠し、相手に対する面積を小さくする構えだ。 左腕は前方の相手に対して構え、右腕は胸の前で胴を守る様に構える。

(格闘術、か……)

レイフォンにはその構えと立ち姿が醸す雰囲気に覚えがあった。 グレンダン時代の知り合いに、同じ構えで格闘術を使う武芸者がいる。
ましてやこの相手の姓はルッケンス。 とても偶然とは思えない。
見たところ、相手が装着しているのは紅玉錬金鋼(ルビーダイト)製の手甲と脚甲だ。 レイフォンにとっては、紅玉錬金鋼というのにも引っかかるものがある。
昨日今日とこちらへ向けてくる、戦意というよりも敵意や殺意と言うべき感情を込めた視線も含めて、

(色々気になるところはあるけれど)

しかし今はそれは関係ない。 今考える必要があるのは、この試合で勝つことだ。
それも、レイフォンが常識はずれな実力の持ち主であることを周囲の者たちに悟らせないように気を付けつつ、しかし武芸者として特別優秀であることを他の武芸者たちの前で示さねばならない。
それらを考慮した上で如何にして勝つか、レイフォンは相手を観察しつつ思案する。
傍から見れば刀を持ったレイフォンの方が有利に見えるかもしれないが、格闘術を使うものにとっては己の四肢全てが武器であり凶器だ。 高レベルの使い手ならば、錬金鋼なしでもかなり手強い相手である。

(さて、どう勝つか。 相手の出方次第かな)



審判の開始の合図と同時にゴルネオが仕掛けた。

両腕を体の前面に構えながら、巨体に似合わぬ素早い疾駆でレイフォンへと接近する。 そして間合いに入るや否や、先手必勝とばかりにその丸太のような両腕から拳打を繰り出した。
レイフォンは素早い足捌きによる必要最小限の体移動のみで拳を躱す。
第一撃を避けられたことに執着せず、ゴルネオはなおも手足を駆使して激しく攻め立てる。 
牽制のジャブに大振りのストレート、フック、さらに両脚から繰り出す多彩な蹴り。 それら全てをレイフォンは躱し、あるいは刀で捌く。 防ぐだけでなく、大振りの後の隙を突いてレイフォンの方からも刀で斬りかかった。 静謐でありながら峻烈な斬撃。 しかしゴルネオはそれらを手足の手甲と脚甲を駆使して受け止め、捌ききる。 的確で無駄の無い、見事な防御。

『お~っと! 開始早々、凄まじいまでの技の応酬です。 刀を駆使して戦うレイフォンに対し、己の手足を駆使して戦うゴルネオ。 両者、一歩も譲らず苛烈な攻防を繰り広げます!」

息をも吐かせぬ激しい攻防に、司会の実況にも熱が入る。
しかしレイフォンからすればまだ小手調べの段階だ。 今のところはお互い剄技は使わず、肉体の純粋な強度と技量のみでの打ち合いである。
斬撃と打撃の応酬を繰り返しながら、レイフォンは相手の実力を推し測る。
まだ戦いは体術のみの段階だが、レイフォンの見る限り、ゴルネオの実力はなかなかのものだ。 今大会でやり合ったツェルニの他の武芸者たちとは格が違う。 肉体の強度と練度はどちらもニーナより上だ。 レイフォンが戦った相手の中で対抗できそうなのは、せいぜいシンくらいか。

(おっ)

激しい攻防の中、ゴルネオの岩のような拳に剄が集中するのが分かった。 
それに反応し、紅玉錬金鋼が赤く発光する。
そして身を低くして相手の攻撃を躱していたレイフォンに向かって、上から叩き潰すように拳を放った。 寸前、拳が途中で手甲とは違うものに覆われる。 
頭上より打ち下ろされる拳を、レイフォンは素早くその場から飛び退いて回避した。 数倍にも巨大化した拳が地面を爆散させる。
土砂が弾け飛ぶ。 ただの土砂ではない。 ゴルネオの一撃は舞い散る土砂すらもそのままにはしない。 飛散する土砂には変化させた剄が練り込まれ、槍のような形状となってレイフォンに襲いかかる。 

「化錬剄、か」

飛び退いた先で呟きながら刀を一閃、刀身に収束させていた剄を解き放つ。

外力系衝剄の変化  渦剄

レイフォンの正面で大気が激しく渦を巻き始める。 さらに大気の渦の中では嵐のように衝剄が荒れ狂う。
渦巻きながら放たれる無数の剄の塊が、槍となって飛来する土砂を爆発させて撃ち落とした。
さらに細かくなった土砂が煙幕となり、僅かの間互いの姿を覆い隠す。
相手の出方を窺いながら、レイフォンは思考を巡らせた。
敵の使う化錬剄という剄技は、剄に特殊な変化をもたらせることで普通の衝剄ではできない攻撃を行い、変幻自在の戦闘を可能とする剄術だ。
さらに相手の身につけている錬金鋼、紅玉錬金鋼には剄に変化を起こしやすいという作用があり、化錬剄を使う武芸者にとってもっとも相性のいい錬金鋼と言える。

(格闘術をメインに化錬剄を使うルッケンス。 やはりと言うか何と言うか……思った通り、)

「グレンダン出身の武芸者か……」

僅かに苦い顔をして呟く。
ルッケンスという家名には、レイフォンも覚えがある。 というより、グレンダンで知らぬ者がいないほどの名家である。
しかし、

(どうしてそんなところの武芸者が都市の外に出てるんだ?)

疑問よりも苦々しさを強く感じる。
レイフォンにとっては、相手がグレンダン出身というところもあまり歓迎すべき事柄ではないが、ルッケンスというのはさらに都合が悪い。 自分がグレンダンを出た事情とも関連するし、個人的な因縁もある。 それにルッケンスならば、レイフォンに向けて来た敵意の視線の理由にも思い当たる。
とはいえ、今はそんなことを考えている時ではない。 試合中であり、自分にはそれに勝つ必要がある。 そのためにも、目の前の戦闘に集中しなくてはならない。
化錬剄は変幻自在を旨とする剄技だ。 思考に捕われていては、致命的な隙を生みかねない。

やがて煙幕が晴れ、互いの姿を視認する。
ゴルネオはやや離れた位置に立っていた。 こちらの姿を確認するや、剄を集中させていた両手を頭上高くに振り上げる。 そして裂帛の気合と共に振りかぶった両の拳を地面めがけて振り下ろし、叩きつけた。

外力系衝剄の化錬変化  土濤衝波 (どとうしょうは)

ゴルネオの両手から土中に剄が練り込まれる。 柔らかくなった地面に、石を落とした水面のように波紋が広がった。
突如、ゴルネオの面前で地面が大きく盛り上がる。 
大きく膨らんで盛り上がった地面は、弾けるようにその姿を土砂の大波へと変えた。 津波となった土砂が、レイフォンを呑みこまんと押し寄せる。
レイフォンが見たところ、土砂には変化した剄が練り込まれていた。 おそらくは直接攻撃用の技ではない。 敵を押し流すだけでなく、呑みこんだ相手の動きを封じるタイプの剄術だ。

(回避…いやダメだ)

自分の背丈よりも遥かに高くそびえる壁のような大地の波が目前に迫るのを見ても、レイフォンは冷静さを崩さない。 状況を見極めながら、素早く思考を巡らせる。

(化錬剄の本質は変幻自在さと、それによって相手の意表を突くことにある。 目の前で起こっていることに馬鹿正直に反応しては命取りになる) 

相手の攻撃の規模はなかなに大きいが、決して躱せぬほどではない。 小隊員レベルの実力があれば、左右へ素早く移動するなり上に跳ぶなりして躱すことは難しくない。
つまり、

(こちらが躱すことを予期した上で次の手を準備しているはずだ)

一瞬の思考でそこまで判断し、レイフォンは刀を持ち上げる。
そして振りかぶった刀を勢いよく地面へと突き立てた。

サイハーデン刀争術  地走り (じばしり)

衝撃が地面を砕きながら大波へと突き進む。 技を放つと同時にレイフォンは前方へと走り出した。
切っ先から放たれた衝剄はレイフォンの足元から大波までの地面を一直線に斬り裂き、さらにその土砂の波濤までも両断する。
それを追うように走っていたレイフォンは、斬り裂かれて左右に割れた大波の裂け目へと飛び込み、土砂の壁の向こう側へと降り立った。
その姿を見たゴルネオの顔に驚愕が浮かぶ。
レイフォンは構わず相手に肉薄し、切っ先が霞む様な斬撃を横薙ぎに繰り出した。 

サイハーデン刀争術  鎌首 (かまくび)

ゴルネオは咄嗟に手甲で刀身を受け止める、と同時に首筋に殺気を感じ、即座にしゃがんで頭を下げた。
直後、刀の切っ先に込められた衝剄が鎌のように変化し、ゴルネオの頭上を薙ぐようにして空を切る。
ゴルネオは背筋が冷たくなるのを感じたが、停滞する余裕は無い。
レイフォンは受け止められた刀を引き戻しながら、しゃがんだゴルネオに前蹴りを叩きこむ。 咄嗟に両腕を交差させて防いだものの、ガードごと後ろへと蹴り飛ばされた。
ゴルネオは二度三度と地面を転がった後、素早く立ち上がる。 レイフォンは追撃しようとするが、立ち上がったゴルネオがその場で正拳突きを放った瞬間、それが当たったわけでもないのに彼は仰け反って足を止めた。

(これは……)

レイフォンは素早く自分の体を確認する。 右肩に拳で直接殴られたような感触があった。 しかし相手には衝剄を使った痕跡は無い。 
そして気付いた。 レイフォンと、後は精々術者であるゴルネオくらいにしか見えないであろう剄の糸がレイフォンの体のあちこちに繋がっており、その糸の先はゴルネオの四肢から伸びている。

(化錬剄の糸。 そして相手はルッケンス)

レイフォンは咄嗟に身構える。
その時、ゴルネオが改めて構えを取り、その場で拳打を繰り出した。

外力系衝剄の化錬変化  蛇流 (じゃりゅう)

レイフォンの体を衝撃が叩く。 今度はまるで腹を殴られたかのように体をくの字に折った。
ゴルネオはその場にとどまって立て続けに拳打と蹴りを放つ。 その度にレイフォンの体が見えない力で殴られたように揺れた。 
傍から見ればまるで格闘術の型の練習をしているようにも見える。 しかし実際には、拳打や蹴りの衝撃が、ゴルネオの手足から伸びる糸を伝ってレイフォンを叩いているのだ。
しかしレイフォンは敵の攻撃を意に介さず、金剛剄でダメージを無効化しながら、相手の動きと技を観察し続けた。 


先程からレイフォンはまったく抵抗していない。 そのことに、周囲の観客たちはあまりの猛攻に抵抗できないのだと思い始めていた。
しかしゴルネオは攻撃の手を止めない。 そもそも、まるで効いていないことが彼には分かっている。 どのような剄技を使っているのかまでは分からないが、最初の一撃以外は全て防がれている。
攻めているのはゴルネオなのに、その顔には一片の余裕さえ浮かんではいない。

その時、レイフォンが何も無い空間に向かって蹴りを放った。

当たるような間合いではない。 衝剄を放ったわけでもない。 にもかかわらず、強烈な衝撃がゴルネオの腕を叩いた。 その顔に驚愕が浮かぶ。
レイフォンは立て続けに蹴りを繰り出す。 その度に、ゴルネオは見えない力で手足を殴られた。

(こいつ、まさか……)

信じられない。 だが、実際に目の前で起こっている。

(俺の剄の糸に干渉している?)

先程から衝撃を受けているのは自分の糸が繋がっている手足ばかりだ。 つまり相手はこちらの糸を逆手にとって打撃を伝道させてきているのだろう。 
だからといって、

(俺の剄の糸を見切るだけでなく、それを利用までするとは)

そのようなこと、蛇流の技の仕組みを理解していなければできないだろう。
信じられない思いに駆られながらもゴルネオは即座に剄糸の接続を切った。 このままでは逆効果だ。


レイフォンは動きを止めた。 糸が体から離れるのが見えたのだ。
それを見届け、改めて刀を構え直す。
レイフォンから離れた剄の糸は、周囲を漂うように空中に伸びていた。 未だにゴルネオの手足とは繋がっている。
再度その糸を利用する気かもしれない。 そう思ったレイフォンは、ゴルネオの剄の流れを読もうとする。
見ると、ゴルネオは再び拳に剄を集中させていた。 そしてレイフォンを鋭い視線で射抜く。
レイフォンが身構えた瞬間、ゴルネオは拳を振り下ろした。
先程と同じく、目の前の地面にだ。

外力系衝剄の化錬変化  霧塵煙砂 (むじんえんさ)

地面に打ち下ろしたゴルネオの拳で剄が爆発し、巨大な砂塵が巻き上がる。 爆発による衝撃は広範囲に及び、周囲一帯が砂煙で覆われた。 レイフォンの視界も、立ち上る砂塵によって覆い隠される。

(煙幕か? いや、)

ゴルネオは先程までと変わらぬ位置にいる。 剄の流れを読む限り、煙幕に乗じて攻撃を仕掛けようとしている素振りは無い。

(では何を?)

レイフォンは自分を包み込んでいる砂煙を見る。 周囲を漂う砂塵にはゴルネオの剄が練り込まれているのが分かった。 しかも、化錬剄によって何らかの変化が施された剄である。 
レイフォンはどのような変化が起きているのか見極めようとするが上手くいかない。 もともと化錬剄による技は、剄の流れを見るだけでは性質や変化までを完全に読み取ることができないのだ。 
どうすべきか思考していると、煙幕の中でゴルネオが動きを見せた。 ゴルネオは両手に剄を集中させながら、後ろに飛び退いて粉塵の外へと移動する。
手甲に覆われた両拳に、化錬剄による炎が灯った。
炎は両手から伸びた剄の糸を伝い、放射状に広がる。

(まさか……)

粉塵、化錬剄、炎。
レイフォンは一瞬で思考し、体の奥で剄を練り上げた。


外力系衝剄の化錬変化  連環発破 (れんかんはっぱ)


サイハーデン刀争術  水鏡渡り (みかがみわたり)


直後、巨大な爆発が起こり、周囲一帯に炎と爆風が吹き荒れた。

砂煙を利用した粉塵爆発だ。 土中に含まれていた木片や葉片などの可燃物に加え、巻き上がった砂塵に化錬剄による剄を練り込むことで可燃性を持たせる。 仕上げに剄の糸を導火線として砂煙に着火、周囲一帯を巻き込む粉塵爆発を引き起こしたのだ。 昨日今日と快晴が続き、空気と土が乾燥していたこともさらなる効果を生んでいた。

多くの観客が試合の終わりを予感したが、ゴルネオの目は油断なく爆発地点を見据え続けており、臨戦態勢を解く様子は無い。
そもそもこの技は、見た目は派手だが破壊力自体はそれほどでもない。
剄のエネルギーによる爆発ではなく、あくまで剄を利用して自然現象的な爆発を引き起こしているだけだからだ。 狭く密閉された空間ならまだしも、このように開けた場所では爆風が周囲に散ってしまい、肉体を強化している武芸者、それも小隊員以上の実力を持つ者を戦闘不能にするほどの威力は無い。
ましてや相手は……、

「!? くっ!」

突然横から強烈な気配を感じ、ゴルネオは咄嗟に身を躱す。 鋭い斬撃が鼻先をかすめ、背筋に冷たい物が走った。
レイフォンが返す刀でさらに斬りつける。 相手に向き直りつつ、ゴルネオはその刃を手甲で防いだ。
攻防の中、ゴルネオは相手を観察する。 顔や戦闘衣は土や煤でやや汚れていたものの、その身には傷一つ無く、火傷すら負っていない。 あの爆発を回避していたのだ。
なおもレイフォンが繰り出す連撃を捌きながら、ゴルネオは舌打ちする。

(これほど近付かれるまで気が付かなかったとは。 いや、違う)

あれほど強い気配が近付くのに気付かなかったはずが無い。 あえて気配を放ってこちらに気付かせたのだ。

(遊んでいやがる)

ゴルネオはそう思った。 あの一瞬で試合を終わらせることもできたはずなのに、そうしなかった。 それを、ゴルネオは弄ばれているように感じたのだ。
もともと感じていたレイフォンに対する怒りや憎しみがさらに強くなる。
しかし今はそんな場合ではない。 レイフォンは息をも吐かせぬ勢いで矢継ぎ早に刀を振るってくる。 ゴルネオは反撃もできず、ただひたすら防御に専念していた。

「ちぃぃっ!」

敵の攻撃を捌きながら、ゴルネオは化錬剄による膜を生み出し、目の前の大気を圧縮させる。

外力系衝剄の化錬変化  気縮爆 (きしゅくばく)

突如、ゴルネオの眼前で圧縮された大気が爆発した。
レイフォンは素早く後方へ飛び退き、衝剄を纏った刀を一閃させて爆風を切り裂く。
逆にゴルネオはもろに爆風を浴びて後ろに吹き飛んだ。 吹き飛びながらも、空中で身を翻してなんとか着地する。
そして素早く身を立て直して相手を窺った。
レイフォンは追撃せず、その場にとどまってこちらを窺っている。 今の爆発で傷を負った様子は無い。
一旦距離を取るためにあえて被爆したとはいえ、こちらはダメージを受けたのにレイフォンが無傷とは、正直言って割に合わない気分だった。

レイフォンはその場に立ったまま、悠然と刀を構えている。 手加減、あるいは余裕のつもりか、こちらに向かってくる素振りは無い。
ゴルネオは手足を軽く振って痺れを振り払い、仕切り直すように構えを取った。 一瞬視線が絡み合う。
再びゴルネオから仕掛けた。 レイフォンへと肉薄しながら両の拳に剄を集中させ、間合いに入ると同時に拳打を叩きこむ。
それを躱しながら、レイフォンは刀を素早く背中に構えた。
刀身に殴られたような衝撃が走る。 しかしそれだけだ。 ゴルネオはそれを見て舌打ちする。

再度、ゴルネオは立て続けに拳打を放つ。 レイフォンはそれら全てを躱しながら、死角から襲いかかる見えない打撃を刀で防ぎ続けた。

外力系衝剄の化錬変化  双蛇

ゴルネオの拳と連動するように、レイフォンの死角から衝剄の拳が打ち込まれる。 目の前の蛇(ゴルネオ)に気を取られれば、死角から迫るもう一匹の蛇に噛みつかれる。 相手に隙を生み出し、そこを突く攻撃。
しかしレイフォンは前後から同時に襲いかかる双蛇の攻撃の全てを、躱し、あるいは刀で防ぎきった。
最後の拳打を、レイフォンは大きく飛び退くことで躱す。 同時に背後からの衝剄を背中に回した刀で切り裂いた。
後退する相手をゴルネオは追撃する。 開いた距離を素早く詰めながら拳を振るい、衝剄の砲弾を撃ち出した。
しかし無駄だ。 これだけの距離があれば、レイフォンなら楽に躱せる。
直線的に飛来する衝剄の塊を、自身の体を横方向へとわずかに逸らせることで回避する。 いや、したつもりだった。

外力系衝剄の化錬変化  風蛇

レイフォンの目の前で衝剄の軌道が突然変化した。 躱したレイフォンを追尾するように軌道が曲がる。 それにすら反応したレイフォンは咄嗟に後退して躱そうとした。 しかし躱しきれず、横からの打撃が刀の鍔元に直撃する。
レイフォンの手から錬金鋼が弾き飛ばされた。 感情の薄い表情が、僅かに歪む。


好機とばかりにゴルネオは一気に距離を詰め、レイフォンに向かって渾身の力を込めた拳打を叩きこんだ。
咄嗟に腕を体の前で交差させて防御したものの、その威力に、レイフォンは後方へ吹き飛ばされる。
そこにゴルネオが追撃のため再度距離を詰めようと足を踏み出した。
その時、

「がっ!?」

突如ゴルネオの視界が揺れた。 
いや、死角から迫った何かに後頭部を打ち据えられたのだ。 あまりに不意を突いた攻撃だったために足腰から力が抜け、ゴルネオは思わず膝を突く。
空中で身を翻して綺麗に着地したレイフォンは、地面に立つや否や今度は自ら距離を詰めた。 徒手空拳のまま、霞むような疾駆でゴルネオへと肉薄する。
ゴルネオは身構えようとするが、まだ視界が揺れているため、手足に上手く力が入らない。

至近距離まで近づいたレイフォンが中段の回し蹴りを叩きこむ。 ゴルネオは頭を振って衝撃の影響を振り払い、次の瞬間レイフォンの蹴りを腕で受けた。 
しかしそれで終わらず、即座に真横から拳打を打ちこまれる。 ゴルネオはそれをも防御してのけた。
レイフォンは止まらない。 さらに逆方向から、目の前から、後方から、矢継ぎ早に蹴りや拳が叩きこまれる。 四肢全てを駆使しても防ぎきれない。
当然だ。 いつのまにかレイフォンの姿が一人ではなくなっている。 五人、十人、それ以上。 残像ではなく、実体を持ったレイフォンの分身がゴルネオを取り囲んでいた。

(これは、)

活剄衝剄混合変化  千人衝

実際には千人もいない、精々が十数人といったことろだ。
しかしそれだけいればゴルネオに対抗するすべは無い。 前後左右から繰り出される打撃を捌ききれず、ゴルネオは全身を打ち据えられた。
最後、目の前のレイフォンが放った強烈な蹴りが胸板に叩きこまれ、ゴルネオは後方へと文字通り蹴り飛ばされる。
無様に地面を転がりながらも、ゴルネオはなんとか体勢を立て直して構えを取ろうとする。 しかし、顔を上げた時にはすでに目の前にレイフォンがいた。 いつの間にか手に戻っていた刀の切っ先をこちらに向けている。 レイフォンは微動だにせず刀を構えながら、感情の無い目でゴルネオを窺っていた。
ゴルネオの鋭い視線がレイフォンを射る。 そこには悔しさだけでなく、隠しようも無い怒りと敵意が漲っていた。 しばし視線が交差する。
ゴルネオは小さく「畜生……」と呟き、やがて両手から力を抜いた。

「俺の負けだ」

それを聞きとり、審判が声を張り上げる。

「試合終了! 勝者、レイフォン・アルセイフ!!」

わっ、と観客の間で大きな歓声が上がった。 司会が熱の入った声で何がしか叫んでいる。
レイフォンはそれを聞きながら、刀を引いて後ろに退がった。 
立ち上がったゴルネオと形式通りの礼を交わし、お互い背を向けて離れる。
その途中、鋭い敵意の視線を感じて微かに振り返った。
すでに視線は逸らされていたが、それが誰のものかは考えるまでも無かった。

(近いうち、面倒なことになりそうだな……)

歓声の中出入り口に向かって歩きながら、レイフォンは内心で独りごちた。





























武闘会の表彰式も終り、レイフォンが帰る準備をしていた時、

「レイとんー! 優勝おっめでと~う!」

賑やかな声と共に、選手控室のドアが開かれた。
他に誰もいない室内で、丁度着替え終わったところだったレイフォンがそちらに振り向く。
思った通りミィフィがそこにいた。 後ろにはナルキとメイシェンもいる。

「……せめてノックくらいした方が良いと思うけど」

「いいからいいから。 早速打ち上げしようよ! ホラ、急いで急いで!」

一応注意したが反省の色はなさそうだった。
……まあいっか。

「ありがとう。 今行くよ」

レイフォンはベンチの上の荷物を肩に掛け、ドアへと向かった。
控室を後にし、建物の玄関ホールに向かって通路を歩く。

「試合すごかったね~。 あ、これ賭けの取り分。 大勝ちだよ~」

ミィフィがお金をレイフォンに渡す。 かなりの金額だった。

「じゃ、どこかで美味しいものでも食べながら打ち上げしますか!」

「そうだな。 どこにする?」

「どこでもいいよ。 僕がおごるから」

「いやそれは……今日の主賓なのに」

「いいじゃんナッキ、折角だしごちそうになろうよ。 今日のレイとんはお金持ちなんだし」

「いやそうは言ってもな、なんと言うか常識的に考えて……」

ナルキとミィフィが言い合う中、メイシェンがレイフォンを見上げて遠慮するように問う。

「えと……いいの? 試合で頑張ったのはレイとんなのに」

レイフォンは笑って返す。

「全然構わないよ。 今回の武闘会で随分と懐も暖まったし。 それに悪銭身に付かずって言うしね、こういうお金は早めにパーッと使っちゃった方がいいと思うから」

所詮はあぶく銭だ、さほど執着は無い。 賭けに参加したのもあくまでお遊びであり、賑やかな祭りの雰囲気に乗ってみただけだ。 
奨学金のおかげで昔のように生活が困窮しているということもないし、他にお金を使う予定も無い。 
普段レイフォンがあまり贅沢な暮しをしないのは、ただ単に無駄なことにお金を遣いたいとは思わないだけだ。 意識的に倹約している部分が無いわけではないが、それほど頑なでもない。 
逆に言えば、友達と食事を楽しむための費用はレイフォンにとって無駄ではないということでもある。 この3人がそれくらい大切な友達なのは確かだ。

4人で話しながら玄関を通り抜ける。
丁度外に出たところで、知った顔と出会った。

「あ、」
「む、」
「おっ」

そこにいたのはニーナとシンだった。 傍にもう一人、ツナギを着た見覚えの無い少年もいる。

「レイフォンか、決勝戦は見せてもらった。 優勝おめでとう。 それで、そちらの3人は?」

真っ先にニーナが口を開いた。 シンもこちらに向き直る。

「クラスの友達です。 武闘会に出場するって言ったら試合を見に来てくれて」

「へぇ。  女の子の応援たぁ羨ましいねぇ」

「君がレイフォン君か。 話には聞いているよ」

ツナギを着た少年がこちらに近寄りつつ言う。

「えっと、あなたは?」

「ああごめん。 僕は錬金科3年のハーレイ・サットン、第十七小隊の錬金鋼整備を担当してる。 君のことはキリクから聞いていたんだ」

「キリクさんから?」

「あいつとは同じ研究室で合同開発チームを組んでいるんだ。 君も何回かうちの研究室に来てたでしょ。 顔合わせるのはこれが初めてだけど」

そういえば錬金科は研究室を共同で使って個人的な開発を行うと聞いていた。 レイフォンが顔を出した時はいつもキリク一人しかいなかったので、てっきり彼個人の研究室かと思っていたのだ。

「最近キリクのヤツはしゃいでいたからね。 まあ、傍から見ればいつも通りの不機嫌面だけど、普段以上に錬金鋼の開発に乗り気だったし、昨日も一日中新型錬金鋼の研究に勤しんでいたんだ。 どうも新しい発見があったみたいでね、近いうち君に協力を頼むことになるかもしれない。 それから、」

「あのう……」

このままでは延々と話し続けそうだったため、意を決したナルキがそれを止めた。

「積もる話もあるかもしれませんけど、あたしたちこれから打ち上げに行くつもりなんでこの辺で」

「ああ、すまなかったな」

ニーナが謝りながらハーレイの服の後ろを掴んで引っ張った。

「邪魔して悪かった。 色々訊いてみたいこともあったが、それはまた次の機会にしよう。 ではまたバイトでな、レイフォン」

「あの!」

と、ここでミィフィが後ろから乗り出して来た。

「もしよかったら、打ち上げ一緒に参加しませんか?」

ニーナが驚いたような顔をする。

「いやしかし、関係の無い人間が邪魔するのは……」

「でもレイとんとは知り合いなんですよね? なら大丈夫ですよ。 わたしもニーナ先輩とシン先輩に訊いてみたいことあるし、それに人数が多い方が盛り上がりますから。 レイとんも、いいよね?」

「僕は別に構わないけど……」

言いつつ、メイシェンとナルキの方を見る。

「あたしも構わないぞ」

「あの、私も……」

二人とも了承する。 人見知りのメイシェンまでそう言うのであれば、特に反対する理由は無い。

「んじゃ、お言葉に甘えて、参加させてもらうとしますか」

シンが明るく告げる。 ハーレイも乗り気だ。
それを見て、ニーナも遠慮がちに同意した。




七人が入ったのは、ツェルニで最も栄えている繁華街であるサーナキー通りの中でも、特に飲食店が多く並ぶ区画にある焼肉屋だった。 大食漢である武芸者が四人もいるため、追加注文がしやすく、なおかつ大声で盛り上がってもあまり迷惑にならない場所を選んだ。
レイフォン達は全員で座れる場所を探し、店の奥の机を囲んで座った。
適当に肉を注文し、それから各々飲み物を頼む。 さすがに未成年ばかりなため(ついでに真面目な武芸者が二人いるため)酒類を頼む者はいない。 シンも皆に合わせて酒は選ばなかった。
肉より先に到着した飲み物のグラスを掲げて、真っ先にミィフィが口を開く。

「それじゃあ改めて、レイとんの勝利を祝って、かんぱ~い!」

ミィフィの声に合わせて全員がグラスを持ち上げた。
それから皆で、運ばれてきた肉を熱した網に乗せていく。

「それにしても強いだろうとは思っていたが、あれほどとは思わなかったよ」

肉が焼けるのを待つ間、ニーナがレイフォンに話しかける。
それにシンが続いた。

「確かに驚いたな。 俺やニーナだけじゃなく、同じグレンダン出のゴルネオまで倒しちまうとは。 しかも試合を見る限り、ただ強いだけじゃなくて圧倒的に戦い慣れているように感じたんだが、どうなんだ?」

レイフォンは若干慎重に言葉を選びながらそれに答える。

「ええとまあ、それなりに。 グレンダンにいたころは結構試合とか出てたんで。 あ、グレンダンでは今日みたいな武芸の公式試合が頻繁に開かれるんです。 僕もそれに何度か参加したことがあって」

「成程。 噂通り、グレンダンは武芸が盛んなんだな。 正直言って、その歳でここまで強い奴は始めて見た」

「同感だな。 ところでだが、お前さんは誰に武芸を習ったんだ? それだけの腕なんだし、結構本格的な訓練を受けてきたんじゃないのか?」

「ええと、刀術に関しては型とか基本的な剄の扱い方なんかは父さんから。 他の人からも技とか戦い方を習ったり参考にしたりしてますけどね。 グレンダンには優秀な武芸者が多いですから、いろんな人の戦い方を見れますし」

「ん? しかしレイとん、お前確か……」

ナルキが疑問を感じたような顔になり、その後やや気遣わしげな顔で言葉を濁す。
しばしその理由を考え、やがて「ああ」とレイフォンはナルキの言わんとしていることに思い至った。

「父さんっていうのは養父、つまり孤児院の園長のことだよ。 うちの園長は結構手練の武芸者でね、武門の長、道場の師範もやってるんだ。 都市の隅っこにある、小さい道場だけどね」

ナルキだけでなく、メイシェンやミィフィも成程といった顔をしていた。 近所の道場に通っていたことは以前も話していたが、それは師範が養父だからでもあるのだと納得したのだ。
対してニーナ達は孤児という言葉にやや気まずい顔をする。 もともとグレンダンには孤児が多いためレイフォン本人はあまり気にしたことは無いが、やはり孤児という境遇は随分と特殊であり、同情の対象となるもののようだ。
空気が重くなりそうなのを察したのか、ミィフィが努めて明るい声で話題を進める。

「そういや昼休憩のときにも少しだけ話したけど、レイとんの習ってたサイハーデン流ってどんな流派なの? いかなる戦場でも勝利し生き残るーとか言ってたけど」

「ああ、それはあたしも訊きたかった。 流派は優秀なのに道場の規模は小さいとか、他の武芸者には受け入れられにくいとか言ってたけど、あれってどういう意味なんだ?」

「ん? ああ」

相槌を打ちつつ、レイフォンは網から肉を取り頬張る。
それを呑みこんでから、ナルキ達に向かって口を開いた。

「うーん、どんなって言うか……そもそもグレンダンには数えきれないくらい沢山の道場があるんだけど、基本的に道場の規模はその流派の歴史の長さと比例するものなんだよね。 規模が大きいもの、小さくても拡大に成功した流派が生き残るし、逆にいつまでも小さいままだと、その流派は自然と衰退して消えていくことになる。
グレンダンだと規模が大きい流派っていうのは、要は過去に強力で高名な武芸者を輩出したか、もしくは現時点で有名な武芸者が所属している武門ってことを意味するんだ。 実力主義のグレンダンじゃ、どの武芸者もひたすら強くなることを求めているから、必然的に門下生は実績のある武門に集まっていく。 逆に名の無い武門では門下生が集まらない。 交流試合で負けたりすれば入門希望者は減っていくし、道場主が汚染獣戦で戦死したりすると後継者不在で流派が潰れてしまうこともある。 自然、長年生き残る武門は規模が拡大していくことになるし、小さい流派は潰れたり新しく創られたりして次々と入れ替わっていくものなんだ」

そう言う意味では、グレンダンは武芸者にとって競争の激しい都市でもある。 強さこそがモノを言う社会。
より多くの門下を引き入れるためには武門の名を上げなければならないし、そのためには度々開かれる交流試合で勝ちぬくか、頻繁に起こる汚染獣戦で活躍しなければならない。 そしてそれができなければ衰亡していく。

「僕が所属していた武門、サイハーデンはそういった中にありながらも道場の規模に不釣り合いなほど長い歴史を持っていてね。 過去に高名な武芸者を出したことこそ無いけど、それでも途絶えることなく長年を生き残り続けている、グレンダンでも異例の流派なんだ」

そこで一旦グラスに口を付け、喉と唇を潤してから言葉を続ける。

「まあ歴史だけの流派だっていう見方もできるし、大抵の人はそう思ってるんだろうけどね。 実際、優秀な武芸者を何人も出してはいるけど、名前が都市中に轟くほどの強者は過去にいなかったらしいし」

「では何故そんな流派が存在し続けられるんだ?」

レイフォンの話に興味が沸いたのか、ニーナも横から訊いてくる。

「サイハーデンの流派が長年の間途絶えずに存続しているのには理由があるんです」

「理由?」

「技を受け継いだ武芸者たちの生存率が著しく高かったからですよ」

言い切った後、再び肉を取って口に入れる。
シンやハーレイも、肉を頬張りながらレイフォンの話に聞き入っていた。

「門下の数こそ少なかったけど、それでもサイハーデンの技を継承した武芸者は多くの戦場で生き残ってきた。 武芸者の死因の中でも最も多いのが汚染獣戦における戦死であるグレンダンでは、はっきりいって異常なくらい、サイハーデン流の武芸者には死者が少なかったんです」

だからこそ、小さな武門でありながらこれまで途絶えることなく存続してこれたのだ。 
皆が驚きを顔に浮かべる中、レイフォンは言葉を続ける。

「そもそもサイハーデン流というのは、人に汚染獣に、普通の武芸者が勝利し生き残ることを目的として、常に戦うことに創意工夫してきた流派なんです。 戦場の刀技であり生き残るための闘技。 いかなる相手、いかなる戦場でも生き残ることを主眼に置いた流派、それがサイハーデン流の刀術です」

「生き残るための闘技……」

感心か驚きか、レイフォンには分からない感情をこめてニーナが呟く。

「有名なところだと、グレンダン出身の武芸者で構成された集団、サリンバン教導傭兵団なんかがありますね。
 人伝に聞いた話ですけど、サリンバンの中核を成している武芸者はサイハーデンの使い手が多いと聞いています。 加えて現団長のリュホウ・ガジュという人は、父さんの兄弟子だったそうです」

「サリンバン教導傭兵団!?」

ニーナだけでなく、シンとナルキも顔に驚きを浮かべていた。
それもそうだろう、サリンバン教導傭兵団といえばグレンダンの外でも有名な集団である。 いや、むしろグレンダンの名を世界に知らしめた者たちこそサリンバンの武芸者たちだ。
都市間を専用の放浪バスで行き来し、行く先々の都市で雇われて汚染獣と戦い、また都市間戦争に参加する。 時にはその都市の武芸者たちを鍛える役目も担う。 それがグレンダン出身の武芸者たちで構成された傭兵集団、サリンバン教導傭兵団だ。
他都市との交流の少ない槍殻都市グレンダンの名が武芸の本場として世に知られているのは、彼らのはたらきによるところが大きい。 ニーナたち武芸者ならば、その名を1度くらいは聞いたことがあっても不思議ではない。

「そんなにすごい武門なのに、どうして規模が小さいんだい? もっと有名になっても良いと思うんだけど」

ハーレイが不思議そうに問う。 それにレイフォンは苦笑しつつ答えた。

「武門の伝える技や、それを扱う武芸者こそ優秀ではあったんですけど、流派の持つ精神性が他の、特に典型的な思考を持つ武芸者たちに受け入れられにくかったんです」

「精神性?」

「理念というか信条というか、とにかくそういったものですね。 サイハーデンでは、戦いで勝つことよりも生き残ることに重きを置いているんです。 けどそういった考え方は普通の武芸者、特に命を懸けて汚染獣と戦うことこそ武芸者の誇りであり、武芸者のあるべき姿だと考えている人たちにとっては納得のいかないものらしいんですよ」

グレンダンの武芸者は、命懸けで都市を守ろうという意識こそ強くないものの、それでもやはり他都市の典型的な武芸者と同じような考え方をする者は多い。 すなわち、武芸者とはこうあるべきだという、誇りや名誉を重んじる考え方だ。 
武芸者とは命を懸けて汚染獣と戦う存在。 外敵の危険に対する意識の薄いグレンダンにおいても、その考え方は変わらない。 仮に本心ではそう思っていなかったとしても、体面上はそう言い張る者が多い。
そしてだからこそ、サイハーデン流は他の武芸者たちに受け入れられにくいのだ。 

「成程、確かに武芸者の中でもお堅い考え方の奴には受けが悪そうだな。 特に命懸けで戦って戦場で死ぬことこそが名誉だって考えてるような奴にとっては不愉快なのかもしれねぇな」

シンが得心がいったという顔で頷いた。

「確かにな。 非難する気は無いが、正直私もあまり共感できそうにない考え方であるのは事実だ」

ニーナが少し言いにくそうに告げる。 確かに、ニーナのような典型的な武芸者思考の者にとってはあまり納得のいかない理念だろう。
レイフォンは特に気を悪くすることはなく、ただそのことに納得した。 価値観は人それぞれだ。

「まあそれは置いといてだ」

と、ここでシンが話を変える。

「ところでだけどよ、お前が試合で使っていた技には見慣れねぇものも多かったんだが、あれもサイハーデンの技なのか? 決勝で使った分身みてぇなやつとか、刀を飛ばして操ってたのとか」

ナルキも決勝の試合を思い出す。 確かにレイフォンは見たこともないような技を使っていた。
ゴルネオに刀を弾き飛ばされた時、ナルキはさすがにレイフォンも負けたかと思った。
しかし驚くことに、レイフォンの手から離れた刀は突然空中で静止し、そしてどうやったのか、さながら見えない手で握られているかのように、ひとりでに宙を舞ったのだ。
滑空するように飛来した刀は、レイフォンへと突進するゴルネオの後頭部を死角から柄頭で打ち据えた。 打たれたゴルネオが膝を突き足を止めたところで、今度はレイフォンが徒手空拳で仕掛ける。 さらに実体を持った分身による多方向からの攻撃の後、空中に浮いていた刀は再び宙を舞い、レイフォンの手へと戻っていた。

「ええと、いえ、あの分身技は父さんじゃなくて別の人から教わったんです。 飛刀術の方は技と呼べるほどのものじゃないんですけどね。 どちらかというと序の口というか基礎レベルの技術ですし」

やや考え、少しだけ嘘をつく。 分身技、千人衝の方は、実際には教わったのではなく、グレンダンの使い手が技を使用するのを見て仕組みを理解し、独力で覚えたものだ。
手元から離して刀を操る技の方は、また別の使い手から学んだ技術をレイフォンなりに応用したものだが。 

「いったいどんな技なんだ? グレンダンの流派の技なんだよな?」

「ええ、まあ。 化錬剄と格闘術を複合させた技なんです。 難易度が高くて、僕じゃ本来の使い手の十分の一の効果も発揮できませんけど」

「そりゃすげぇ、あれで十分の一とはな。 んじゃ俺との試合で使ってた、刀の一撃で足場を崩す技はどうやったんだ?」

「あれは別にあの一撃で足場を崩したわけじゃありませんよ。 すり足移動の際に足から武器破壊系の衝剄を極低い威力で放ち続けて地面を脆くして、最後の一撃で連鎖的に崩壊を引き起こしたんです」

「なーるほどねぇ」

興味深いのか、いつのまにかシンだけでなくニーナやナルキといった武芸者二人も熱心に聞き入っていた。

「では私との試合で最後の方に使ってた技はどうやるんだ? 鉄鞭で打った時、まるで鋼鉄の壁を殴ったかのような手ごたえだったのだが」

「ああ、金剛剄ですね」

「金剛剄?」

「グレンダン最硬の防御力を誇る武芸者の使う、高等防御系剄術です。 本家本元の使い手はこの技で大型汚染獣の牙すらその身で受け止められるくらいの防御力を持っています」

「レイフォン君、そんなすごい技が使えるの?」

「高等といっても、技の仕組み自体はかなり単純ですから、覚えるだけなら結構簡単なんですけどね。 使いこなそうと思ったら少し大変ですけど。 僕じゃオリジナルの足元にも及びませんし」

「へぇ」

ハーレイが納得する。
一方ニーナはしばし考えるような仕草を見せた後、改めてレイフォンに向かって口を開いた。

「レイフォン、こんな場でこんなことを頼んで申し訳ないのだが、できればその技を私に教えてはくれないだろうか? 私の渾身の一撃をいとも簡単に防ぎきるあの防御力、本来防御主体で戦う私にとってはどうしても必要な技なんだ。 だから頼む、金剛剄とやらを私に教えてくれ」

言って、深く頭を下げる。
その様にレイフォンは面食らうが、やがてニーナが本気で頼んでいるのだとわかり、しばし思案する。

(人に教えるっていうのはあまり得意じゃないけど、一度くらいは経験しておいてもいいかもしれないな)

自分の中で答えを決め、口を開く。

「分かりました。 いつにしますか?」

ニーナは一瞬嬉しそうに顔をほころばせ、それから真面目な顔を作り思案した。

「そうだな、さすがに私が技を会得するまで毎日付き合わせるわけにもいかないし……放課後の小隊訓練の時間、バイトなどの予定が無くて時間に空きがある時に練武館で教えてくれないだろうか? もちろんお前の予定は尊重するし、無理を言うつもりは無い」

「了解しました。 じゃあ3日後か4日後あたりどうですか?」

「そうだな、では……」

ニーナとレイフォンはしばらく話しあい、訓練の予定を決める。
それが終わると、再び肉を食べながら雑談に興じていった。














「ごちそうさん。 悪いね、後輩なのに奢らせちまって」

「いえ、気にしないでください。 丁度、臨時収入もありましたし」

焼き肉屋の支払いはレイフォンが持った。 武闘会の賞金と、ニーナたちには言っていないが賭けで大勝ちした分の金もある。 ここの支払いくらいは訳無い額だ。

家の方向が違うので焼き肉屋の前で別れ、それぞれ個別に帰路に就いた。
レイフォンはぼんやりと空を見上げながら、すっかり暗くなった夜道を歩く。 家に近付くにつれ、周囲の建物の数は減っていき、辺りはさらに暗さを増していく。

大人数で賑やかにしゃべりながら食事するというのは随分と久しぶりな気がした。 孤児院にいた頃は毎日のように賑やかな食卓を囲んでいたものだったが、ツェルニに来る一年ほど前からは義理の兄弟たちとも疎遠になっていたのだ。
ニーナに技を教える約束をした後も、今日の試合での戦い方やグレンダンでの修練方法、得意な技などについて色々と質問された。 レイフォンは周囲の興味津々な様子にややたじろいでいたものの、答えられる範囲でその質問に答えていった。
さらにミィフィが小隊員二人に質問したり、ハーレイがレイフォンに向かって専門的な錬金鋼談義を始めて周りが辟易したりとしたが、概ね楽しい時間を過ごせたと思う。


家に到着し、部屋の明かりを付ける。
戦闘衣を洗濯かごに放り込み、浴場で風呂の準備をする。
風呂が沸くまでの間、リビングで試合に使った錬金鋼の点検をする。 わずかだが疲労していたので、近いうちにキリクのところへ持って行ってメンテナンスを頼もうと決めた。

やがて風呂が沸いたので、レイフォンは錬金鋼をテーブルに置き、ついでに今日手に入れたお金の残りもテーブルの上に放ると、あくびをしながらリビングを出る。
満腹感と心地よい疲労感に、今夜はよく眠れそうだと思った。






















あとがき

前回から結構時間が空いてしまいましたが、なんとか更新できました、嘘吐きです。
できればもっと早く更新したかったのですが、大学の論文やらレポートやらテスト勉強やらで時間が無かったもので。
特に論文は、終わった後しばらくキーボードに触るのも嫌になるくらい大変でしたから。遅くなったのはそれが一番の原因ですね。できればもう二度と論文は書きたくありません(無理でしょうけど)。

さて、今回はようやく武闘会編の終了です。次は原作の2巻のストーリーに入っていくことになりますね。
色々と原作とは変更しているところもあるので、そういったところも楽しんでもらえれば嬉しいです。


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