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No.23719の一覧
[0] The Parallel Story of Regios (鋼殻のレギオス 二次創作)[嘘吐き](2010/11/04 23:26)
[1] 1. 入学式と出会い[嘘吐き](2010/11/04 23:45)
[2] 2. バイトと機関部[嘘吐き](2010/11/05 03:00)
[3] 3. 試合観戦[嘘吐き](2010/11/06 22:51)
[4] 4. 戦う理由[嘘吐き](2010/11/09 17:20)
[5] 5. 束の間の日常 (あるいは嵐の前の静けさ)[嘘吐き](2010/11/13 22:02)
[6] 6. 地の底から出でし捕食者達[嘘吐き](2010/11/14 16:50)
[7] 7. 葛藤と決断[嘘吐き](2010/11/20 21:12)
[8] 8. 参戦 そして戦いの終結[嘘吐き](2010/11/24 22:46)
[9] 9. 勧誘と要請[嘘吐き](2010/12/02 22:26)
[10] 10. ツェルニ武芸科 No.1 決定戦[嘘吐き](2010/12/09 21:47)
[11] 11. ツェルニ武闘会 予選[嘘吐き](2010/12/15 18:55)
[12] 12. 武闘会 予選終了[嘘吐き](2010/12/21 01:59)
[13] 13. 本戦進出[嘘吐き](2010/12/31 01:25)
[14] 14. 決勝戦、そして武闘会終了[嘘吐き](2011/01/26 18:51)
[15] 15. 訓練と目標[嘘吐き](2011/02/20 03:26)
[16] 16. 都市警察[嘘吐き](2011/03/04 02:28)
[17] 17. 迫り来る脅威[嘘吐き](2011/03/20 02:12)
[18] 18. 戦闘準備[嘘吐き](2011/04/03 03:11)
[19] 19. Silent Talk - former[嘘吐き](2011/05/06 02:47)
[20] 20. Silent Talk - latter[嘘吐き](2011/06/05 04:14)
[21] 21. 死線と戦場[嘘吐き](2011/07/03 03:53)
[22] 22. 再び現れる不穏な気配[嘘吐き](2011/07/30 22:37)
[23] 23. 新たな繋がり[嘘吐き](2011/08/19 04:49)
[24] 24. 廃都市接近[嘘吐き](2011/09/19 04:00)
[25] 25. 滅びた都市と突き付けられた過去[嘘吐き](2011/09/25 02:17)
[26] 26. 僕達は生きるために戦ってきた[嘘吐き](2011/11/15 04:28)
[27] 27. 正しさよりも、ただ己の心に従って[嘘吐き](2012/01/05 05:48)
[28] 28. 襲撃[嘘吐き](2012/01/30 05:55)
[29] 29. 火の激情と氷の意志[嘘吐き](2012/03/10 17:44)
[30] 30. ぼくらが生きるために死んでくれ[嘘吐き](2012/04/05 13:43)
[31] 31. 慟哭[嘘吐き](2012/05/04 18:04)
[32] 00. Sentimental Voice  (番外編)[嘘吐き](2012/07/04 02:22)
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[23719] 10. ツェルニ武芸科 No.1 決定戦
Name: 嘘吐き◆e863a685 ID:eb6ba1df 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/09 21:47

昼休み、レイフォンは教室でいつもの3人と共にメイシェン作の弁当を囲んでいた。
以前に1度弁当をごちそうになって以来、メイシェンは度々多めに弁当を作ってきてくれる。
今や昼休みには4人でそれを囲むのが恒例となっていた。

「武芸科ナンバーワン決定戦ツェルニ武闘会?」

「そ、つまり武芸科で小隊対抗戦とは別に個人戦の公式試合を行おうって話」

驚きの声を上げたのはナルキだ。
それに対し、情報をもたらしたミィフィが答える。

「なんでも会長と武芸長で開催を決めたらしいよ。 要は武芸科生徒の中で誰が1番個人技に秀でているか確かめようってこと。 ま、参加は任意だけど、武芸科なら学年問わず出場できるってさ。 近いうちに一般生徒に先んじて武芸科生徒全体に伝えるつもりみたい」

いつも通り、何故そんなことを武芸科生徒でもないのに武芸科のナルキより先に知っているのか疑問ではあったが、いい加減慣れてきていたレイフォンはそのことには触れなかった。
ナルキがさらに問う。

「なんでまたそんな試合を?」

「色々狙いはあるみたいだけどね。 一般武芸科の生徒の中から小隊員になれそうな生徒を発掘したり、小隊員の中でも誰がより個人技に優れているかとか確認したり。 あとはまあ、前回の汚染獣戦でツェルニ全体の雰囲気が少し暗くなってるから、大々的なイベント開いて盛り上げようって狙いもあるらしいけど」

「成程な」

ミィフィの話に、ナルキが納得する。

「それと、最近一般生徒の間でツェルニの先行きに対する不安が高まってたからね。 だから武芸科生徒の試合を公開することで不安を払拭しようっていうつもりもあるのかもね」

「……成程」

もともとツェルニは前2回の都市戦で全敗したために、セルニウム鉱山の保有数が残り1つと、後が無かった。
そんな時に汚染獣の襲来が起こり、複数の死者や再起不能者が出た。
ただでさえ低いと見られていたツェルニの戦力がさらに低下したのだ。 多くの生徒には、特に上級生にとっては、この状況は不安で仕方が無いだろう。
そこで、多くの一般生徒の目の前で武芸科生徒による試合を行い、実力を示すつもりなのだ。
個人戦ならば、小隊員のように連携や作戦指揮・実行の能力が無くとも、純粋な戦闘力さえあれば活躍できる。 この試合で、普段目にすることの無い小隊員以外の戦いぶりを一般生徒に見せ、武芸科生徒全体の強さをアピールするつもりだ。
つまりは一種のデモンストレーションだろう。

「それで……どんな大会なの?」

メイシェンがいつも通りのおどおどとした態度で問う。

「簡単に言えば、トーナメント方式の勝ち抜き戦だってさ。 詳しいルールまでは知らないけど、1日目はいくつかのブロックに分かれて予選をやって、2日目に勝ち抜いた人たちで本選をやるって聞いてる。 ちなみに優勝したら賞金がもらえるらしいよ。 それと他にもいくつか特典があるみたい。 例えば1年生なら特別に早めの帯剣許可とか、小隊員なら武芸大会の時に進言した作戦とかが優先的に採用されるらしいし、小隊員じゃなくても作戦会議に参加できるようになったりもするって」

「随分と大盤振る舞いだな」

「逆に言えばこのくらいしないと今年の武芸大会は危ないのかもしれないけどね。 実力のある武芸者の意見なら小隊員じゃなくても聞いておきたいってくらい」

「つまりは一石で2鳥も3鳥も狙おうってことか」

ナルキがやや呆れたように言う。

「ま、わたしたちにとっては楽しければそれでいいけどね。 イベント事が増えるのは大歓迎」

「まあ、お前はそうだろうな」

「どう? せっかくだしナッキも出場してみない? いいとこまで行けるかもしれないよ」

「遠慮しておく。 まだ外力系も使えないあたしが出たところで小隊員に勝てるわけがない」

「なーんだ。 残念。 レイとんはどう? 出場してみない?」

「うん。 僕は出るつもりだよ」

「「「え?」」」

勧めてきたミィフィだけでなく、メイシェンとナルキも驚いて声を上げた。 

「レイとん、出るつもりなの?」

自分で勧めておきながら、ミィフィは真っ先に意外そうに訊ねる。

「意外だな。 レイとんはこういうのに興味無いと思ってたんだが」

「……いいの? もともと武芸をする気はなかったのに……」

ナルキも意外そうに、メイシェンは心配そうに口々に言う。

「大丈夫。 心配いらないよ」

レイフォンは軽い調子で言う。

「武芸科に転科したからには、武芸者として真面目に頑張るつもりだしね。 小隊入りは御免だけど、強くなるための努力はするし、ちゃんと良い成績を取れるように気をつけるつもりだから。
だから心配しないで。 以前みたいに、戦いに対する拒否感も無いしね」

そう言ってもやはりメイシェンは心配そうではあったが、少しは安心したのか淡く微笑んで頷いた。

「そ……っか。 良かった……」

他の2人も隣で頷いている。
と、ここでミィフィが疑問の声を出す。

「それはそうと……だからってまたなんでそんな大会に出ようと思ったの? っていうか、もしかして武闘会のこと先に知ってた? なんか最初から出場するつもりだったみたいに見えたけど……」

ナルキとメイシェンもはっとする。
確かに先程のレイフォンの言葉は、あらかじめすでに出場を決めていたかのように感じた。

「うん。 実は会長に是非参加してくれって頼まれててね。 武闘会については会長から直接……」

レイフォンは会長に参加を頼まれた時のことを思い出しながら、やや苦い顔をして答える。







「…というものを開いてみたいと思っているんだが、どうだろう? 君もこれに出場してくれないかな?」

夜、生徒会棟の一室。
レイフォンはソファーに座って対面に座るカリアンと向かい合っていた。
そのカリアンの提案に、あからさまに渋面を作る。 今度はいったい何を企んでいるのか。

「なんでまたそんなものを?」

「いや、以前グレンダンに寄った時に武芸の大会がたくさん開かれていたのを思い出してね。 一般生徒にとってもこういったイベントは娯楽になるだろうし、武芸科生徒にとっては自らの実力を測る、もしくは示すために丁度いいだろう。 それに私や武芸長、小隊長たちからすれば、他の武芸者たちの力量を知るためのいい機会になる。
この間の汚染獣戦のせいで生徒全体にあまり好ましくない雰囲気が流れてたからね。 それについても、この催しは都合がいいのさ」

カリアンの言い様に、レイフォンは若干呆れる。
というか軽く聞き流してしまったが、カリアンはグレンダンを訪れた事があったのか。 だからレイフォンの過去を……いや、それは今はいい。

「それで……何故僕がそれに参加するんですか? 正直、あんまりそういうのに興味無いんですけど」

「おや? 君はグレンダンでこういった試合には積極的に出場していたんじゃなかったかな? てっきり喜んで乗ってくるものと思ったのだが」

「……別にイベントが好きで参加してたわけじゃありませんよ。 必要だから出てただけです。 そして今はもうその必要がありません」

「ふうむ……」

カリアンは少し考え込む様な素振りをした。

「私としては、君にこの試合に参加して、そしてできれば優勝してほしいと思っているのだが。 大勢の前で実力を示せば、君を都市戦で個別に動かすこともできるかもしれないからね。 小隊長たちも、たとえ納得できずとも、強く反対もしなくなるだろうし」

「そんな試合で優勝したら、小隊入りの勧誘が余計に増えるような気がするんですが。 正直、そんな面倒くさいのは御免です」

「どの道小隊に入るつもりは無いんだろう? なら多少勧誘が増えても問題は無いのではないかな。 どうせ断るのだし」

「かもしれませんが、そもそも試合に出るメリットが無いです。 僕は特別自分の実力を確かめたいとも示したいとも思っていません」

「もちろん優勝すれば賞金を出すつもりだよ? 他にも、武芸科生徒として色々優遇措置を取るつもりだ」

「別にお金には困ってませんし、武芸者として優遇されたいとも思いません」

「ふむ。 いささか回りくどかったかな……。 では、礼儀を持ってちゃんと頼むとしよう」

言って、カリアンは先程まで顔に張り付いていた笑みを消し、レイフォンに面と向かって居住まいを直す。
そしてこちらの目をまっすぐ見て、口を開いた。

「私はこのツェルニを守りたい。 そしてそのためには、何としても君の協力がいる。 私には君の望むような礼をすることはできないが、それでも、君の力が必要なんだ。 ツェルニを守るためにも、多くの生徒たちのためにも、私の頼みを聞いてくれないだろうか」

「う……」

カリアンの、いつもとは違う真摯な態度に、レイフォンは若干たじろいだ。
今までのような取引ではなく、ただの頼みごと。 報酬も見返りも提示せず、ただ面と向かって頼み込む。
だが、カリアンのそんな態度に対し、逆にレイフォンは強気に出られなかった。

「君にとっては何の得にもならないかもしれないが、それでもこの都市のために必要なことなんだ。 だから君に協力してほしい。 ただ一度でいい。 他の武芸者たち全員の前で君の実力を示してほしいんだ。 頼む……」

言って、カリアンは深々と頭を下げた。
カリアンの態度と行為にレイフォンはうろたえる。
言葉の出ないレイフォンの目の前で、カリアンは頭を下げたまま微動だにしない。
だが、その姿に何故かプレッシャーを感じた。
レイフォンはしばらく逡巡し、やがて溜息を吐いて首肯した。

「……わかりました。 いちおう、出場はしますよ」

「本当かい? ありがたい!」

途端、カリアンは顔を上げる。 そこには明らかな喜色が浮かんでいた。 先程の深刻そうな色はどこにもない。
しかし、レイフォンはそれを指摘する気にもなれず、もう一度溜息を吐く。
が、念のため釘は刺しておく。

「でも、言っておきますけど全力を出すつもりはありませんからね。 必ずしも優勝できるとは限りませんよ」

「ああ、それで十分だとも。 君に全力を出されたら、それこそ他の武芸科生徒全体に悪影響を与えかねない。 優勝のための努力はしてもらいたいが、だからといって他の者をあまりにも易々と倒されては逆効果だからね」

カリアンはすでにいつものにこやかな笑みを顔に張り付けている。
それを見て、レイフォンは脱力しそうになった。

(ま、いいか)

別に今は武芸そのものに拒否感があるわけではない。
これといって得は無いが、かといって何か特に不利益があるわけでもない。
色々と世話になっているし、宿代替わりに頼みごとの1つくらい聞いてもいいか。 いちおう賞金も出るし。
そう自分に言い聞かせて、無理やり納得させる。

……実は正攻法に弱いレイフォンだった。









「へ~え、会長から……」

ミィフィが何か含む様な、少々邪悪さを感じる顔で呟く。

「相変わらずすごいなレイとんは」

ナルキはやや感嘆したように言う。

「ホント。 主催者でもある会長から直々に参加要請があるなんて。 よっぽど汚染獣戦で活躍したんだね」

「いや、そんなことは……」

はっきりと否定もできず、レイフォンは曖昧に答える。
と、ここでミィフィが疑問の声を上げる。

「あれ? でもレイとんって錬金鋼とか持ってたっけ?」

「確かに、一年生だってこともあるけど、もともと武芸は捨てるつもりだったのなら、自分用の錬金鋼なんて持ってきてるはず無いか」

「ああ、それは……」

レイフォンは苦笑して2人の疑問に答える。

「一年生には、生徒会から錬金鋼の貸し出しがあるってさ。 もちろん故郷から持ってきたヤツがある人は、学園都市規定の安全装置をかけたうえで使用していいみたいだけどね。
僕の方は……」

説明しつつ、弁当をつまむ。
やがて4人が食べ終わると、予鈴のチャイムが鳴った。
昼休みの開始と同じく喧騒に包まれる中、弁当箱を片づけ次の授業の準備をした。
























「――というわけで、よろしくお願いします」

「会長から話は聞いている」

レイフォンの言葉に応えたのは車椅子に座った錬金科の生徒、キリク・セロンだ。
放課後、レイフォンはメイシェン達3人とは別れて、一人で錬金科研究棟の一室に赴いていた。
そんなレイフォンに、錬金鋼技師でもある彼は、その美貌を台無しにする不機嫌面で、同じく不機嫌そうな声で口を開く。

「お前のために錬金鋼を都合してやれとな。 今度、武芸科で大会を開くそうじゃないか。 お前がそれに参加するから、武器を用意してほしいと言われた」

「ええ、まあ」

レイフォンは曖昧に頷く。
しかしキリクはそんなこと気にせず、すぐさま本題に入る。

「それで、どんな武器がお望みだ? 確かこの前は剣士が専門だとか言っていたはずだが」

「剣士って言うか……」

言いつつ、レイフォンは持ってきていた錬金鋼を復元する。 養父から渡された、鋼鉄錬金鋼製の刀だ。
レイフォンの手の中で、光と共に刀身が現れた。
それを見て、キリクが微かに目を瞠る。
ほんのわずかの間だが、彼が言葉を失ってしまうほど、綺麗な刀だった。
刃長はレイフォンの腕ほど、幅広く豪壮で切っ先がやや伸びている。 刃紋はのたれ乱刃、切っ先は火炎帽子。
刀身は透き通るように美しく、その透明感は見ているだけで目が眩みそうなほどだ。
感嘆の息を押し殺し、キリクは目を細める。

「成程。 刀……か」

「はい。 これと同等以上の性能の刀を用意してもらえますか?」

「それは構わないが……そいつは使わないのか? 見たところ、かなりの業物だと思うが」

「これは大切なものなんで、戦闘には使いたくないんですよ。 僕にとってこれは武器ではなく、心の支えみたいなものですから……」

「……ふん……」

「それで、作ってもらえますか?」

キリクはレイフォンから刀を受け取り、目を近づけてより細かく観察してから、首肯する。

「わかった、いいだろう。 材質は鋼鉄錬金鋼でいいんだな。 これと全く同じヤツをもう一本作ればいいのか?」

話しつつ、手に持った刀に近くにあった機械から伸びる何本ものコードを繋げていく。
さらに、基礎状態の鋼鉄錬金鋼を取り出し、そちらにもコードを繋げる。
それを見ながら、レイフォンは注文を付けた。

「切れ味とか、性能は同等かそれ以上で。 ただ、サイズを少し変えてほしいんです。 これは僕が十歳の時に握ってたサイズなんで、このままじゃ少し使いにくいんですよね。 だから刃長をもう少し長くして、重さも、もっと重くしてくれますか?」

「本当か? お前の体格に丁度合った大きさだと思うが」

「はい。 もともと子供のころから大きめの刀を振ってましたから」 

「……ほう」

キリクは怪訝そうにしながらも、言われたとおりに数値を打ち込む。
錬金鋼はすぐに出来上がった。
機器から外した基礎状態の錬金鋼をレイフォンに差し出す。

「復元してみろ」

「はい」

言われ、レイフォンは「レストレーション」と呟き、その手に鋼鉄錬金鋼製の刀を復元する。
手の中で金属の塊が急激に質量を増し、美しい刃紋の浮かぶ刀身が現れた。

「どうだ?」

「そうですね……」

さすがに素振りまではできないが、その場で構えを取ったり、持ち上げてみたりする。
それから感じた違和感をキリクに伝え、機械につないで修正し、再び具合を確かめる。
それを何度か繰り返して、ようやくレイフォンは丁度いい手ごたえを感じた。

「うん。 特に違和感はあありません。 手に馴染みます」

「そうか」

実際、すでに何度か使った後のように手に馴染む。 キリクの錬金鋼技師としての技術力の高さが窺えた。
錬金鋼が出来上がると、キリクはそっけなく、かつ端的に告げる。

「武闘会までに何度か使ってみて、問題が無いか確かめておけ。 何かあったら持ってこい」

「わかりました。 ありがとうございます」

レイフォンは一礼して研究室を出た。

























キリクのいる研究室を後にし、錬金科研究棟から出たレイフォンはそのままの足でバイトに向かった。
バイト先に向かって通りを歩いていると、前方の角から知った顔が現れた。

「む、」

「あ、」

フェリだ。
ばったりと鉢合わせてしまった。 道端で偶然出会うのはこれで3度目である。
しばし無言で向かい合う。 レイフォンはやや気まずげに、フェリは少々不機嫌そうに。
それからどちらともなく歩き出した。 どうやら行き先は同じ方向らしい。
レイフォンはやや気まずい思いをしながらも、気になっていたことを訊く。

「えっと……フェリ先輩、あの後大丈夫でしたか?」

「ええ。特に危険な目には遭いませんでした。 後日、召集に応じなかったことについて隊長に色々と言われましたが

、それ以外は特に何もありません。
兄がそのことで私に何か言ってくるようならこちらにも考えがありましたが、幸いというか意外というか、兄の方は特

に何かを言ってくることはありませんでしたね」

フェリの方は、すでに先程の不機嫌そうな色は消え、いつも通りの無表情に戻っていた。

「ああそういえば、フェリ先輩が来ないのは自分の責任だとか何とか言ってたかな」

「兄がそんなことを? あんなクズの様な人間にもそんな自覚があったんですね」

フェリはやや怪訝な顔をしつつも、いつも通り辛辣なセリフを吐く。
それからまたしばらく無言で進む。
一度こちらをちらりと見たが、すぐに目を逸らした。
と、フェリがぽつりと呟くように言葉を漏らす。

「武芸科に……転科したんですね」

「ええ、まあ……」

自分の着ている武芸科の制服を見下ろし、レイフォンは顔を合わせないまま答える。

「……本当に……よかったのですか? それで……」

「はい……。戦うって、自分で決めましたから。 また失うのは嫌ですし、どの道ここがなくなったら、自分のやりたいことを探すこともできなくなりますしね。 僕はもうグレンダンに帰ることはできません。 ここで何かしら進む道を見つけないと、他所の都市に移ってもまともな生活できませんから」

「そう……ですか……。 まあ、私とあなたでは事情が違うでしょうから、転科したことについてはこれ以上とやかく言うつもりはありませんが……それにしても、つくづく嫌になりますね。 あなたの弱みに付け込んで利用しようとする兄も、呆れるほどレベルの低いツェルニの武芸者も」

「……はは」

曖昧に笑ってごまかす。
と、フェリが話を変える。

「隊長から聞きましたが、小隊入りの誘いを断ったようですね」

「ええ、断りましたけど……ニーナ先輩、何か言ってましたか?」

「いえ、ただ残念そうに『駄目だった』と言っていただけでした。 あなたのことを誘ってみるつもりだと勢い込んで

いましたが、次の日に見たら、めずらしく随分と肩を落としていましたね」

想像すると若干罪悪感を感じる。 ニーナはカリアンと違って裏や企みなどが無い、まっすぐな人間だからだ。

「……すいません」

「別に私に謝る必要はありません。 小隊が強くなろうとなるまいと、私にとってはどうでもいいことですから。 しかし兄もあなたには小隊に入ってもらいたがっていましたが、何か言われませんでしたか?」

「確かに会長にも頼まれましたけど、断りました。 ツェルニの存続に協力するとは言いましたが、僕には僕の都合が

ありますし、何もかも会長に従うつもりはありません」

それを聞いて、フェリはこちらを向く。
それからしばらくレイフォンをじっと見つめた。

「……あの……どうかしましたか?」

フェリは多くの念威繰者がそうであるように、感情が表に現れにくい。
視線はじっとこちらに注がれているが、その目から考えていることを察することはできなかった。
問うと、フェリはレイフォンから視線を外す。

「いえ……。 少し安心しただけです」

「安心?」

「ええ。 あなたが汚染獣と戦った挙句に武芸科に転科までしたと聞いた時は、新たな兄の犠牲者が生まれてしまったのではと心配しましたが、少なくとも無理やり転科させられたわけではないとわかって、安心しました。 それはそれで残念な気もしますが、いちおうは自分自身の意思で武芸を続けているようですし」

「えっと……残念って?」

「いえ、こちらのことです。 それに、もしもあなたが身も心も兄の操り人形になっているようならば、私が責任を持って更生させてあげなくてはと思っていましたが、そんなことになっていなくて何よりです」

「操り人形って……」

レイフォンは苦笑する。

「心配してくれてありがとうございます。 けど、今のところは特に問題はありませんよ」

「そのようですね。 しかし、もしまた兄が勝手なことを言い出すようなら言ってください。 こちらできつい灸をすえておきますので」

「は、はは……」

レイフォンは再び曖昧に笑う。 先程と違って若干引き攣っていたが。
そういえば、とフェリは続ける。

「武闘会に出場すると聞きましたが、それも本当ですか?」

「ええ、そのつもりです」

「どうしてまた? 実力を見せれば、来年一般教養科に戻りたいと思っても戻れなくなるかもしれませんよ」
 
「いえ。 むしろいざという時のためにある程度実力を示しておくべきだと思うんです」

「? 何故ですか?」

「武芸者が我が儘を通そうと思ったら、やっぱりそれなりに強さが必要になってきますからね。 来年は武芸大会もありませんし、ある程度知名度があったほうが転科の交渉がしやすいと思うんですよ。 生徒会長も違う人に替わるでしょうしね」

「知名度が高かったら、逆に転科が難しくなるのでは?」

「うーん。 正直、僕はツェルニで武芸者として学ぶことって基本的に無いんですよね。 集団戦とかについては知らないこともありますけど、そういうのは僕と同格の実力がある人がいないと学ぶ意味はありませんし、仮にここで学ぼうとしたところでモノにならないと思うんです。
得るものも無いのに武芸科に在籍し続けるのは学園都市の役割に反していますし、それを主張すれば余程のことが無い限り転科も可能かなと。
鉱山に余裕さえあれば、僕みたいな例外的な存在を武芸科に留めておく必要も無いでしょうしね」

「ふむ……確かに、あなたの言うことにも一理あるかもしれません」

言って、フェリは歩きながら何事かを考える。
レイフォンは続ける。

「それにたとえ一般教養科に戻っても、汚染獣が来た時には戦うつもりですから。 この都市に失いたくない物があるのは事実ですし、それを守るためにも、都市が滅びそうになるのを黙って見ているつもりはありません。 それを言えば、次の生徒会長も僕を無理に武芸科に押し込めることも無いと思います」

「成程……」

フェリはしばし思案し、それから口を開く。

「興味深い意見、ありがとうございました。 それでもやはり、私は人前で本気を出す気にはなれませんが、あなたの言うやり方は今後の参考にさせてもらいます」

「いえ、お役に立てたなら嬉しいです」
 
「では、私はこちらなので」

言うと、フェリは途中の道を曲がり、レイフォンと別れる。
フェリの進む方角を見ると、練武館が見えた。

(ああ、小隊の訓練か……)

そんなことを思いながら、レイフォンはバイト先へ向かった。





























日が随分と傾いた時刻。
レイフォンはバイト帰り、とある食堂に立ち寄った。
そこの料理は安くて量が多いため、武芸科生徒の、特に男性に人気の店だった。
店に入るとそれなりに客が入っており、レイフォンは店内を見渡して空いている席を探す。
カウンター席に空きがあったのを見つけ、そこに座った。
と、気配に気づいたのか、その隣の席に座っていた武芸科の制服を着た大柄の男が何気なくこちらを見た。

「ぬっ、」

「あ、」

お互いに目が合い、言葉を失くす。
そこにいたのは武芸長のヴァンゼだった。 手には大きなどんぶりがあり、山のように盛られた料理を食べている最中だ。
不意を打たれたような顔をして、しばし無言のまま顔を見合わせる。 
その後、ぎこちなく互いに目をそらした。
やや間があってから、ヴァンゼは無言で再び食事を始め、レイフォンはカウンターから料理を注文する。
頼んだ料理が来るのを待つ間、レイフォンは居心地の悪さを感じていた。
ヴァンゼと話したのは一度きり。 それも司令部内での言い争いの時だけだ。 あの時はお互いかなり険悪な態度だったため、正直顔を合わせづらい。
決してヴァンゼの方は見ずに周囲を見回しながら、何となくそわそわする。

しばらくして頼んだ料理が運ばれてきた。
レイフォンはそれを食べ始めるが、味はよくわからない。
と、唐突にヴァンゼが口を開いた。

「……あの時はすまなかったな」

「え?」

思いがけない言葉に、レイフォンは間の抜けた声を出す。

「汚染獣が来た時、司令部でお前を怒鳴りつけたことだ。 自分のことを棚に上げて、一方的に責めてしまってすまなかった」

レイフォンは何と言っていいかわからず、言葉を聞きつつも口は食べることに集中する。
それに構わず、ヴァンゼはなおも言葉を紡ぐ。

「あの時のお前は武芸者として決して褒められたものではないと今でも思っている。 だがあの時俺の言ったことは、都市を守れなかった俺たちが、結果的に都市を守ってくれたお前に向かって言っていいことではなかった。
本当に、すまなかった」

「仕方ないんじゃないですか?」

こちらに向き直って頭を下げるヴァンゼに向かって、ここでやっとレイフォンは口を開いた。

「あなた達は汚染獣と戦った経験は無かったのでしょう? 初めての事態に、少しくらい混乱したり焦ったりするのは当然ですよ。 特に、武芸長であるあなたは他の人たちよりもより多くの重圧を背負っていたんでしょうし、多少取り乱しても仕方ありません。 あの時僕が言ったことが間違っているとは思いませんし、訂正するつもりもありませんけど、だからといって今更あなたを責めるつもりはありません。 だから、気にしないでください」

謝られても何と言っていいかわかりませんし。 そう言って食事を再開する。

「そう……か。 わかった。 ……では、改めて礼を言う。 この都市を守ってくれて、ありがとう」

ヴァンゼはこちらをまっすぐ見ると、居住まいを正して言った。
そして再び頭を下げる。
レイフォンは思わず、再度食事の手を止めた。

「いや、そんな」

レイフォンはやや恐縮しながらも、それに応える。 
その姿には、司令部で見せた冷淡な姿は微塵も感じられなかった。

(あれがこの男の全てというわけではないのだな)

ヴァンゼは内心でそう独りごちる。
それから、2人は食事を再開した。

「そういえばレイフォン、第十七小隊の勧誘を断ったらしいな」

「……ええ、まあ」

食べる合間に、ヴァンゼが訊いてくる。

「何故断った? お前ほどの力があれば、小隊員として十分にやっていけるはずだろう?」

「しがらみが増えるのは嫌でしたから。 それに不利益ばかりでメリットがありませんしね」

「しかし小隊員に選ばれるということは己の実力を認められたという証明だぞ。 実力主義が本質の武芸者にとって、これほど名誉なことは無いだろう」

「そもそも名誉に興味ありませんから。 別に他人から実力を認めてほしいとも思いません」

「それだけの力がありながら、都市戦で他の未熟な者たちと同じ、ただの一兵卒として扱われてもいいのか?」

「他人の評価なんてどうでもいいことです。 それに、僕からすればあなたも小隊員の人たちも、他の生徒とさして変わりません。 どちらも未熟者です。 そんな未熟者の中でお山の大将気取るつもりもありません。 正直、そんなことしても大人げないですしね」

「ふむ……。 悔しいが、まあ反論はできんな。 しかし、メリットは無いと言ったが、小隊に入るというのは自身を磨く上でも有効だと思うぞ。 小隊内で、あるいは小隊同士で切磋琢磨し互いを鍛えていくというのは、十分に意義があることだと俺は思う」

「確かに、競い合うことでより上を目指すのは有意義かもしれませんけど、それは自分と同等、もしくはそれ以上の実力者がいる場合だと思いますよ。 あいにくと、ツェルニには小隊員の中にだってそんな人は一人もいません。
正直小隊に入ったところで学ぶことは無いんですよね。 集団戦や連携の訓練は重要かもしれませんけど、それだって同格の相手がいないと意味ありませんし、背中を預けられない相手とチームを組んでも実戦で役に立ちません。
それに僕には僕の都合や目的もあります。 それを諦めてまで小隊に入る理由は無いです」

「……成程な」

レイフォンはあえて事実をそのままに、決して優しく言い換えることなどせずに本心を吐露した。
しかし、ヴァンゼは短い言葉を言ったきりで、何事も無かったかのように食事を続けている。
レイフォンは好奇心から訊いてみた。

「もしかして……怒りましたか?」

それに対して、ヴァンゼはわずかに苦笑し言葉を返す。

「いや。 お前の言い様が気に食わないのは確かだが、未熟者の俺が強者であるお前に文句をつける筋合いは無いからな。 カリアンの話では、お前は武闘会には参加するようだし、ならば小隊に入れるのは諦めるさ」

「……そうですか」

レイフォンも、それ以上ヴァンゼの気持ちを確かめようとはしなかった。
が、一つ気になることがあったので訊いてみる。

「そう言えば……僕が転科したこと、ニーナ先輩にわざわざ教えたんですか?」

前から気になっていたことだ。
何となく、ヴァンゼはそんなことをわざわざ口にするようなタイプではないと思っていた。
ましてや司令部であんなことがあったのでは。
と、ヴァンゼは急に眉をしかめて、渋面を作る。

「ああ、カリアンの奴に頼まれてな」

それを聞いて、レイフォンは脱力した。

「ニーナの奴に教えてやれ、きっと飛びつくだろう、とかなんとか言われてな。 自分で言えと言ったのだが、俺が言った方が怪しまれずに済むなどとぬかしやがった」

「……成程。 ほんと、あの人は裏で表で色々企んでくれますね。 油断も隙も無い」

「まったくだ」

ヴァンゼが渋い顔のまま同意する。

「昔からそうだが、毎度毎度あいつに振り回されるのは骨が折れる。 いくらツェルニ存続のためとはいえな」

「武芸長は、会長と付き合い長いんですか?」

ふと、思ったことを訊いてみる。

「ん? ああ。 ツェルニに向かう途中に立ち寄った都市で偶然会ってな。 武芸者と一般人、性格も境遇もまるで違っていたが、何故かお互い不思議と気が合った。 それから何だかんだで腐れ縁が続いている。 仲が良いというのとは少し違う気もするがな。 もう六年目になるというのに、未だにあいつの腹の中は読めん」

「確かに。 あの人はいつも胡散臭い笑顔を浮かべてばかりで、何を考えているのかがまるでわかりませんからね。 ま、お腹の中は多分まっ黒でしょうけど」

「だろうな。 とはいえ、ツェルニを守りたいという気持ちだけは確かなようだから、俺も一応はあいつに従っている。 都市を守る、その気持ちは俺も同じだからな」

「そうですね。 少なくともそれだけは本心からの気持ちだと思います」

ツェルニを守りたい。 少なくともそれだけはカリアンの正直な気持ちだろう。
そしてカリアンの目的と望みが、レイフォンの望みを叶える上で必要なことだからこそ、レイフォンはそれに力を貸すために再び武芸を始めたのだ。
ツェルニの存続という点で、レイフォンとカリアン、2人の目的は重なっている。
だからこそ、その過程の一環として、武闘会にも出ることを決めた。
そして出るからには、中途半端な結果にする気は無い。

やがてヴァンゼはどんぶりの中身を食べ終わった。

「では、俺はそろそろ行く。 武闘会、俺は審判やら催しの責任者やらの仕事があって出場はできんが、出るからには真面目にやれよ。 全力を出せとは言わんが」

「わかってます。 せっかく出るんですし、もちろん優勝賞金を狙っていきますよ」

「……そうか……。 健闘を祈る……」

レイフォンの言葉に、ヴァンゼは何か言いたそうな顔をしたが、結局言葉少なに激励しただけでこちらに背を向けた。
そしてそのまま店の外へと出て行く。
それを見送り、レイフォンは再び食事に専念した。




















日は完全に沈み、周囲を闇が覆っている。
特にこの辺りは人気も無く、街灯なども無い。
周辺は倉庫ばかりが建ち並び、住居などはほとんど無い。 あったとしても、人は住んでいない。
明りといえば月明かりと、遠く離れた居住区から漏れてくる光くらいだ。
そんな場所でレイフォンは一人、刀を振るっていた。
活剄や衝剄は使わず、刀技の純粋な型を繰り返し練習する。
構え、踏み込み、切り下ろし、切り上げる。
ただひたすら素振りを繰り返し、一度は捨てた技を、かつての動きを再確認する。
懐かしい気持ちに捕われながら、サイハーデン流の型の練習をする。
それを小一時間も続けた後、ようやくレイフォンは動きを止めた。

「ふぅぅぅ……」

大きく息をつき、構えを解く。
集中していたせいで気付かなかったが、いつのまにか結構汗をかいていた。
濡れた額に風が当たり、それを心地よく感じる。
レイフォンは手に持った刀を目前まで持ち上げ、感慨深い目でそれを見つめた。

(久しぶりだったけど、案外体は覚えているものだね)

サイハーデンの技の練習は長いことやっていない。
十歳のときには刀を捨て、剣を握っていたからだ。
それなのに、こうして再び刀を持つと、剣よりもはるかにしっくりとくる。
まるで、あるべきものがあるべき所にしっかりと収まっているような。
そしてそれは、事実なのだろう。 武芸者としてのレイフォンの技の本質は、やはり刀技なのだ。
どれほど多くの戦場で剣を振るおうと、自分がサイハーデンの武芸者であることを覆すことは、やはりできないのだ。
それでもサイハーデンを捨てようとしていた過去の自分はやはり中途半端であると思う反面、なおも自らの中で残るサイハーデンの技と教えに嬉しくなる。
こうしてグレンダンと遠く離れた地でさえ、尊敬する養父と繋がりがあると感じられるからだ。

やがてレイフォンは錬金鋼を基礎状態に戻し、その場を後にした。
広い空地を出て、新しく引っ越した家へと向かう。
レイフォンが住み始めたアパートは他に住人がいないため、若者が寝るにはまだ早い時間帯であるにもかかわらず、建物内には光一つ無かった。
自分の部屋に入り灯りを点ける。 当然、中には他に誰もいない。
まだ家具が揃っておらず、だだっ広く感じる空間で、レイフォンはソファーに座りこむ。
この部屋に越してきて正解だったと常々思う。
私物の少ないレイフォンでは随分と持て余しているようにも感じるが、その分かなりの解放感があった。
とはいえ、今後もう少しくらい物を増やすのも良いかとも思っている。
広い部屋に一人でいると、自然と物思いに沈んだ。

(武闘会か……)

カリアンから聞いた時は正直気が進まなかったが、後から考えてみるとそれほど悪いことでもないように思えてくる。
自分がサイハーデンの技をどれだけ覚えているのか、実際に戦って確かめることができるのだ。
もちろん手加減しなければならないし、武器も安全装置がかかっているが、対人戦の中でその技の確認ができるのは、そう悪いことではない。

(ま、せっかく出るんだし、できるだけ前向きに考えるべきか)

それに賞金も出る。 引っ越しで貯金がやや減ってしまっているし、お金というものはありすぎて困るものでもない。
そう結論付け、ソファーから立ちあがる。
そして先程の鍛錬でかいた汗を流すため、バスルームへと向かった。





















あとがき

というわけで、ツェルニ武闘会開催。
今回は次の展開の前置きと、フェリやヴァンゼがあの後どうなったのかについての話ですね。
特にフェリは武闘会中は登場しませんし、早めに出しておかないとならないなと思って。アルマについてはどこかしらで番外編を。

武闘会に関しては、今後のための布石と、ここらで対人戦の戦闘シーンを入れておきたいという作者の願望から。この作品のレイフォンは小隊対抗戦には出ないので。

次回は武闘会当日。楽しんでいただければ幸いです。


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