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No.22829の一覧
[0] リリカル的神話体系[ホーグランド](2016/02/27 12:19)
[1] プロローグ[ホーグランド](2016/02/27 12:47)
[2] 第一話 騒動の始まり[ホーグランド](2011/05/01 00:17)
[3] 第二話 くしゃみの代償[ホーグランド](2012/04/12 09:35)
[4] 第三話 取引[ホーグランド](2012/04/12 09:35)
[5] 第四話 間奏[ホーグランド](2012/04/12 09:36)
[6] 第五話 神々の遊び[ホーグランド](2012/04/12 09:36)
[7] 第六話 ある一般人の憂鬱[ホーグランド](2011/04/29 00:27)
[8] 第七話 時間飛行[ホーグランド](2011/05/26 15:42)
[9] 第八話 介入[ホーグランド](2012/04/13 19:07)
[10] 第九話 勝負 [ホーグランド](2011/04/29 00:44)
[11] 第十話 集会[ホーグランド](2011/05/26 15:41)
[12] 第十一話 取引 part2[ホーグランド](2011/05/26 15:41)
[13] 第十二話 最後[ホーグランド](2011/05/26 15:40)
[14] 第十三話 確執[ホーグランド](2011/06/07 01:33)
[15] 第十四話 意地[ホーグランド](2011/05/26 15:37)
[16] 閑話第一話 周囲[ホーグランド](2011/06/10 10:51)
[18] 第十五話 side As[ホーグランド](2011/07/05 21:59)
[19] 第十六話 機動六課[ホーグランド](2012/04/12 09:32)
[21] 第十七話 Deus,Magia e Família 【神、魔法、そして家族】[ホーグランド](2012/04/15 14:34)
[22] 閑話第二話 結婚秘話[ホーグランド](2012/12/25 02:31)
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[22829] 第十三話 確執
Name: ホーグランド◆8fcc1abd ID:c9815b41 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/07 01:33
「うん、分かったよ。……お父さん」

「――は?」

 モリの思考が一時停止する。
 コンセントの抜けたロボットのごとくピタリと動きを止めたモリを見てフェイトは首をちょこんと少し傾げた。
 
「ちょ、ちょっと待て……今、お父さん、って単語が聞こえたんだが……」

「え? うん、お父さん、だよね?」

 と少し顔を赤らめ、もじもじしながらチラリチラリと横目で確認するフェイトは成人男性の比護欲を、それは良くかき立てる殺人的な可愛さだった。しかし人であるか疑わしい、いや確実にこの世界の”人間”とは精神構造が違うモリにとっては目の前の可愛い人形よりもそれにお父さんと呼ばれた事の方がはるかに重要であった。
 左手で頭を抑えながら、なおも言い募ろうとするフェイトをモリは右手で制す。

「……えー。その情報は一体誰から?」

「? お母さんからだよ?」

 その言葉を聞いて、モリの脳裏に浮かぶのはプレシアの表面的な態度。どう考えてもあれは嫌ってるんじゃなかったのか? そうなら何故こんなめんどくさそうな事をこの人形に吹き込んだのか? モリには分からなかった。
 人の機微に疎い、というよりモリには人の心を読み取ろうという気持ちすらなかった。それは必要ない事だからだ。

「……とりあえず帰ろうか、海鳴に」

「――うんっ!」
 
 問題を後回しに、つまりはこの面倒な現実から逃避をはかるモリ。
 弾けるような笑みを浮かべるフェイトとは対象的に、モリは乾いた笑いをあげるのみであった。










「で、それはどういう事なんですか?」

 ここは海鳴のある喫茶店、翠屋。奥の厨房から高町桃子、高町なのは、キムラ・クニオが見守る一つのテーブルは誰がどう見ても修羅場であった。


 ビアンテの向かい合う席にはモリが頭を掻きながら居心地悪そうに座っている。そしてその隣にはビアンテから隠れるようにモリの袖を掴むフェイトの姿があった。さすがに空中戦でいきなりなすすべもなく落された彼女からしてみれば、ビアンテと初見友好的になれと言う方が無理だ。
 ビアンテは無事にモリが帰ってきた事に喜んだのもつかの間、すぐさまその後ろでちょこまか動く物体を見つけて体を硬直させたのだった。
 しかも、その可愛い小動物がモリを『お父さん』と呼ぶのだから。

 
 そうした経緯でこの状態に至る。


「いやぁ、どういう事、と言われましても……」

 とモリは唸って見せるがビアンテからの冷たい視線の温度は上がらない。

「とりあえずプレシア・テスタロッサは次元の海に消えていった、ということでいいんですね」

「ああ、ジュエルシードと共に消えたのを確認したよ」

 プレシアの名前が出るにフェイトの方がピクッと震える。
 モリはプレシアがジュエルシードと共に消えた事や時の庭園など資産を受け継ぐなどの、契約内容は割合公表したのだがその目的までは最後まで口を割らなかった。モリは消えていったプレシアに一定の敬意を持っていたし、彼女の研究を独り占めしたいがための方便であった。
 そこまではいい。ジュエルシードを勝手に取引したなど危ないすれすれの部分はあるが、まぁ、ギリギリ許容範囲ではある。これで敵性勢力のフェイトを無効化できたと考えれば納得もできる。

 が、ビアンテが気にするのはそこでは無いだろう。勿論、お父さん、の部分である。

「モリさんにそんな趣味があったなんて知りませんでした……」

「ち、違う! それは誤解だ!」

 呼び名が最初に会った頃のものに戻ったりと、彼女との心理的距離が離れていくのをライブで感じるモリであったが、さすがに変態と思われるのは嫌であった。
 モリのあわてふためく様子を遠くから見守る三人の目にはもうそれは浮気がばれた亭主、といった風にしか映らない。

「これはプレシアから――」

 ――所有権を譲ってもらっただけなんだ、と続けようと口を開いたモリであったが寸前の所で声に出すのを踏みとどまった。
 
 こういった所謂”人”を人と思わない発言をすればどう思われるか? それがモリに分からない訳では無かったからだ。普段、彼がそういう事に気を払わないのはその相手の価値がモリにとって著しく低いからである。
 
 普通の人が思う、”善い”こととして他人を尊重することが”善い”とされている。それはどんな文明でも、人のそれであるかぎり普遍なものだろう。それは何故か? それが道徳として普通だからか? では道徳は何故そういう風に決められているのだろうか? 
 道徳の様な、そんな曖昧な基準などによって決められているでは無い。
 
 自己に利益あるかないか? それだけが絶対的な基準である。
 
 答えとしてはそれが自分自身の利益となるから、相手を尊重しているのである。相手に尊重されることを期待して、尊重するのだ。だから尊重することが”善い”ことにされているのだ。道徳とは突き詰めるとすべて自分の為の法なのである。
 

 ではモリの場合はどうなるか。有象無象の輩がモリを害することは絶対に”無い”。となれば、彼らに自分が尊重されることを期待して相手を尊重する必要もなくなる。
 
 だがこの時、モリにとってビアンテは突出して価値のある”人”であった。書類の一切合財を握ってる彼女はモリの仕事を実質的に管理してるに等しい状況だったのだ。また、彼も彼女の好意をそこはかとなくではあるが感じていて、それが満更じゃ無かった、というのもある。それを人は尻に惹かれると言う。
 
 以上の事から、モリは珍しく人の気持ちを考えて言葉を選んでいたのだ。

「――プレシアから?」

 ビアンテが顔を突き出しながらモリに問いかける。
 
 モリは今更であるが、所有権を譲られたのではなくて押しつけられたのではないかと思いだしていた。転移後モリがフェイトから聞くに、プレシアがあの扉の奥でフェイトの眠りを覚ました時にモリの事を彼女の父だと吹き込んだ、との事だ。
 
 仮にモリを父だとして。母はどうなるのだろう? やはりプレシアとなるのだろうか? と聞くとフェイトはその通りだと全く疑いを持っていない、綺麗な瞳で頷いたのだった。モリはどんなストーリーを彼女に聞かせたのかと頭を抱え込んだが、めんどくさいと彼女を消し去る訳にもいかなかった。時の庭園の管理の知識は彼女に頼る部分も多かったのだ。

 モリはプレシアの意図が全く分からなかったが、この状況をどうにかしなければならないという事だけは分かっていた。
 
 ふとモリは考える。もし自分が父となるとしてどうなるか。一緒に家族として生活するのだろうか?

 ……まぁ、そんな家族ごっこも面白いかもしれない。

 と思ったモリは、

「――フェイトは俺の娘だ!」

 と大声で宣言して、ビアンテにビンタを食らったのだった。
 
 




(で、どうするんですか!? フェイトちゃん完全に信じ切ってますよ!)

(しょうがないだろ! 彼女にはもう頼る家族もいないんだぞ!)

(私を忘れてもらっちゃ困るよ! モリ!)


 フェイトが寝入ったのを確認して、何時の間にか目を覚ましていたアルフを加えて今後を話しあう会議が行われた。
 それには関係者、フェイトの使い魔であるアルフ、フェイトの父だと先ほど高らかに宣言したモリ、そして何故かビアンテがそこに入り他の人達はやはり遠くから見守っている。会議はフェイトが起きないように小声で行われた。

 まずモリが一日もの間何をしていたか、魔女と神の取引の内容とは何だったか? という説明を行う。それは話しの大筋は大体合っているものだった。ジュエルシードとモリの協力によって今回の件から手を引いてもらう、といった筋だ。プレシアの資産を受け継ぐ、といった時は皆に驚かれたが大体は納得したようだった。
 そして肝心のモリが何故父親だと呼ばれるようになったか? その経緯を説明するに二人の顔は次第に呆れたものになっていた。

(といった訳なんだ)

 長い説明を終えたモリは心なしかぐったりした様子で口を閉じた。

(なんとまぁ……)

 めちゃくちゃな、とビアンテはつぶやいたがモリも内心同意するところだった。
 ふん、と鼻を鳴らしたアルフは少し声を低くしながら小声で話す。

(ま、私としちゃ経緯は気にいらないが、良かったと思っているよ)

(ホントか?)

(ああ、あの鬼婆ぁの所にいるよりはあんたらの所にいる方がよっぽどましそうだからね)

 とアルフは何を思い出しているのか背の毛を逆立てながら唸る。モリのいない間に起きたアルフはビアンテと話したり、モリのすっぽかした高町家への説明を聞いてある程度は信頼のおけるだろうと判断していたらしかった。
 大層嫌悪感に溢れた顔を隠さないそれは、どれほど彼女がプレシアを毛嫌いしていたか分かろう態度であった。

(で、どうするんだい?)

(現実的には帰って養子縁組、いやこの場合は認知する、ということになるのか? まぁ、何とかするよ)

 と何でも無さそうに答えるモリをまじまじと見るアルフ。彼女はモリが中将だと聞いて半信半疑であったのだがそのふてぶてしい態度に、なるほどと妙な納得をするのだった。
 モリの言葉を聞いてそわそわとするビアンテはモリが時の庭園に行く前のあの落ち込み様が嘘のように思えるほどに、いつものビアンテであった。

(む、娘が出来るなら母性はひ、必要ですよね!?)

(ん? ああ、じゃあビアンテ君、頼むよ)

(は、はい!)

 顔を茹でタコの様に真っ赤にするビアンテをアルフは生温かいで見つめていた。それは遠目から見守る他の女性たちも同じで、高町桃子はあらあら若いわねぇ、と顔をほころばせてやはり生温かい視線を送っていたのだった。なのはも赤い顔を両手で覆いながらも、指の間から彼女の痴態を興味深げに窺っていた。

 と、モリのこの軽い返事からモリ家はスタートしたのだ。









 ここアースラの艦橋でクロノ・ハラオウンがいつものように溜息をついていた。その原因はたった今アースラが受け取った支援要請――他の部隊からの助太刀のお願い――であった。
 その情報を真っ先に目にした通信主任であるエイミィ・リミエッタはいつもの様に溜息をこぼす可愛い年下の男の子にまたかと嘆息しつつ、確認するように声をかける。

「……リンディ艦長も変わらないね」

 エイミィのその口調は憂い少し帯びた、悲しげな調子であった。
 クロノはその問いに答えずに空いた艦長席をぼんやりと見上げた。先までいたクロノの母親でありこのアースラの艦長でもあるリンディ・ハラオウンの姿はそこにない。支援要請の報を聞いた直後、席を立ってしまったのである。

 艦長たるものが何故席を立ったのか。それはこの支援要請を送った部隊が問題だった。

 管理局最高評議会付属連絡分室。

 その長ったらしい名前がこのアースラ職員に与えた衝撃は計り知れなかった。それはこの艦に乗り込む隊員は全員が知っている、といっても過言でないほどに有名な噂に登場する部隊であったからだ。いや、一般の管理局員でも、それこそ管理世界住民ならだれでも知っている名前ではあるのだが、ここアースラでは一層特別な響きを持っていた。
 
 その原因はつまり、艦長リンディ・ハラオウンの敵、という噂だ。
 すこし調べれば分かることだが彼女の夫はモリがこの世にでて直ぐに不審死として処理されている。また、彼女がモリの裁判中に詰め寄ろうとしたという噂もネット上では実しやかに囁かれていた。

 しかし、クロノはそう認識していなかった。
 自分の父が謎の死を遂げたとなれば気にならない方がおかしいに決まっている。そして調べた結果、最終的な結論としてはモリは緊急避難ではないかという事であった。少なくとも徒に父の乗ったエスティアを消滅させた訳ではなかったのだ。
 彼が移送中であったロストロギアである『闇の書』がもうすでに艦の制御を乗っ取っていたらしいことが避難した乗員からの証言で判ったのである。ならば彼が採った『エスティアごと消滅させる』という案は最善であったのではないか? 事実、彼の周りもクロノには気を使いつつそう思っているようであった。憎むべきは被害者を出し続ける『闇の書』ではないか? と。

 実際問題としてモリがクロノの父を殺した直接の相手だということは多分真実なのだろう。しかしその背景を考えると、真面目が服を着たような人物であるクロノにはリンディの様にあからさまに嫌悪感を彼に向けることは出来ないのであった。
 そしてリンディもクロノにはその事については何も話さないのである。自分の感情を子に押しつけないというのは親として立派な事だろうが……何故か少しの寂寥をクロノは感じるのだった。

「はぁ……エイミィ、その内容は?」

「う、うん。アースラ艦長リンディ・ハラオウン宛てで支援要請、内容はロストロギア『ジュエルシード』の回収。第97管理外世界の惑星地球、だって」

「ジュエルシード……何処かで聞いたことあるな」

 頭に浮かぶ雑事を隅に追いやりながら、クロノは記憶をさらう。しかし、何処か引っかかるもののどこで聞いたか思い出せない。

「データベースには何かないか?」

 クロノがそうエイミィに言うと、彼女は素早く手元のコンソールを操作する。その以心伝心な様子は周りの者に長年連れ添った夫婦のような印象を抱かせる。艦長が居ない今、手暇な隊員たちの視線は二人に注がれていた。
 検索した結果出てきたのは近々受領予定のロストロギアの名前であった。しかも、受領予定艦はこのアースラとなっている。

「ああ、そうだった」

 クロノは思いだした。そういえばそんな名前のロストロギアを受け取る予定があった、と。依頼人は……

「スクライア一族か」

 クロノの目には小さな可愛い顔をした、民族衣装を身にまとう少年が映っていた。









「魔力反応、検知しました!」

 鋭い声がアースラ艦橋に響く。慌ただしかった空気がピンッと張るのをクロノは感じた。
 すでに第97管理外世界の惑星地球に到着していたアースラが関知した魔力反応、それはこの魔法文明の発達していない世界でイレギュラーの存在を示すものであるからだ。

「モニター、寄せて」

「はいっ!」

 と声が飛んできた方をクロノは見やる。そこには艦長席に座るリンディ・ハラオウンの姿があった。あの後しばらく経って、何でもないように出てきた艦長に声をかける事の出来るほど気概のある、というより無謀な者などいなかった。
 
 ――彼女をモリという呪縛から解き放つのは、息子である自分の仕事なのじゃないか?

 クロノはそう思うのだがあと一歩が怖くて踏み出せないのだ。どうしても、差し出した手を払われる事を恐れて躊躇してしまう。

 大きなディスプレイには公園のような場所で戦う二人の魔導師の姿が見える。
 二人の黒と白の魔導師はまだ小さい女の子のようだ。何が起きているのか。

「クロノ」

「了解です、艦長。クロノ・ハラオウン、出撃します!」

 クロノはバリアジャケットを身にまとい、執務官としての職務を全うしようと出撃するのだった。




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