麻帆良学園中等部3-Aが京都にて三日目を迎える頃。
麻帆良学園敷地内のとあるログハウスに住むエヴァンジェリンさん(600歳)はリビングにて大きなアクビをしていた。
「くはぁ……あふ。ああ、つまらんな。暇でしょうがない」
ソファにふんぞり返り、見せてはいけない部分を大胆にも披露するエヴァンジェリンさん。
大丈夫、問題ない。
パンツだけど恥ずかしくないよ!
普段なら流石にもう少し恥じらいを持つ彼女だが、ここ数日は同居人がいないので、だらけまくっていた。
仮にこの光景をシルフが見ていたら<まあエヴァさん! もうはしたないですね。そうやって露骨にサービスですか? ああ、汚い、流石吸血鬼汚い! エヴァさんがそういうことするんだったら私もサービスしちゃいますよー!>みたいな事を言うのだろう。
そんなリビングにもう一人の住人が入ってきた。
メイド服を着た少女、茶々丸である。
茶々丸は掃除機を持っている。
「ん? ああ、そうか。アイツの部屋の掃除をしていたのか。……自分の部屋くらい自分で掃除させろ」
こんな言い方をするからには、勿論自分の部屋は自分で掃除していると思われるエヴァさんだが、全くもってそんなことはない。
お前が言うな状態だ。
エヴァの言葉に、茶々丸は反応しない。
どことなく上の空、そしてソワソワしているようだ。
そんな茶々丸の様子を不審に思うエヴァ。
「何だ? どうした茶々丸。何かあったのか?」
「……あ。マスター、いたのですか」
「ああ、さっきからな。どうした? アイツの部屋で何かあったのか?」
「……!」
ビクン、と表情こそ変えないが、僅かに震える茶々丸の身体。
エヴァはその些細な異変だけで十分何かあったかを勘付いた。
「ふん、言ってみろ」
「……いえ。何もありませんでした」
「嘘を吐くな嘘を。……ん、そうだな。さっきから貴様が私に見えない様に隠している右手」
「……っ」
「くくっ」
思惑通りの反応にいやらしく笑うエヴァ。
「何を隠している? さっさと見せろ」
「……」
「さあ」
「……ぅ」
無表情ながら、オロオロと狼狽する茶々丸。
痺れを切らしたエヴァはソファから立ち上がると、茶々丸に詰め寄った。
「私は隠されると一層見たくなる性格なんでな、ええいっ、さっさと見せろ!」
迫られた茶々丸は、咄嗟の判断でエヴァの背後を指差した。
「マ、マスターの後ろに二本足で歩く猫が」
「な、何だと!?……何て引っかかると思うか? 私を何だと思っているんだ」
「い、いえ猫ではなく……猫耳を装着した学園長の間違いでした」
「……い、一瞬振り向きそうになったぞ」
想像したのか、額に汗を浮かべるエヴァ。
ふと、茶々丸の背後を見て、目をまるくした。
「……なんだ、もう帰ってきたのか。随分と早い帰宅だったな」
「……!? お、お帰りなさいませ、ナナシさ――」
振り返り出迎えの言葉と共に頭を下げる茶々丸。
しかし、そこには誰もいない。
出迎える人物は未だ京都にいるのだ。
誰もいないことに気づき、慌ててエヴァの方へ振り向きなおる。
「ふむ、これを隠していたのか」
「……あ」
エヴァの手元には一冊のノート。
茶々丸が背後に気を取られた隙に、素早く奪ったのだ。
「なになに? 『俺のシークレットファイル。勝手に見たら水飴をぶっかける』……だと? 何故に水飴……」
次いでノートを開き、中身を見ようとするエヴァ。
茶々丸は慌てて、止めに入った。
「いけませんマスター……! ナナシさんの物を勝手に――」
「アイツの物は私の物、私の物は私の物――だ。居候の物をどうしようが私の勝手だろう」
何というエヴァニズム発言。
ここにシルフがいたら<ちょっとエヴァさん、今から湖に落ちて綺麗なエヴァさんと交代して下さいよ>と言うに違いない。
そんなジャイアニズムを発揮するエヴァを、首を横に振りながらやめさせようと説得する茶々丸。
「――やめろやめろ、と言うがな。何故お前はこれを持っている?」
「……あぅ」
「おおかた、部屋に持ち帰ってこっそり見ようとでも考えていたんだろう?」
「……そ、そんなことは……ありません」
「目を逸らしながら言っても、全く説得力が無いぞ」
やれやれ、と若干呆れながらのエヴァはノートを開く。
茶々丸も静止の声は挙げるが、図星を付かれたからか、その声に力は無い。
それどころかこっそりと横から覗き込んでいる始末だ。
「さて、一体どんな恥ずかしい秘密が隠されているのやら」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、開くとそこには――
第七話 わ!
「というわけで今日はお前らの班に同行するから」
俺は残りの近乃香班の面々、メンバーを挙げると宮崎と早乙女と夕映とアスナに向かって告げた。
以下は俺の言葉に対する各々の反応。
「何が『というわけで』か全く分からないですが……別にいいんじゃないですか」
何故か微妙に俺から視線をずらしながら夕映が言った。
心なしか口元が微笑んでいるのは気のせいか。
「わ、私も別に、はい」
普段通り、おどおどした様子で宮崎も言った。
「いいよいいよー。それにそっちの方が……クフフっ」
顎に手を当て、何かを企んでいる風に早乙女が言った。
「……あはは」
そして俺の『お前ここで何してんの?』という視線を受けたアスナが気まずそうに頭をかいた。
確かネギ君に聞いた話によれば、今日ネギ君はアスナを連れて総本山とやらに向かってるはず。
まあ、大方ここにいる連中に捕まったんだろうが。
<わ、私も……いいですよっ。む、むしろナナシ君と一緒の方が……きゃっ、私ったら大胆! 大胆さを数字で表すとダイターン5くらいですっ!>
どさくさに紛れてシルフも言ったが、誰も反応しなかったので、そのまま流された(近乃香ですらスルーした)
そしてホテルのロビーを出る俺達。
歩いていると、すぐ側から視線を感じた。
「ん?」
「……」
視線がする方を見ると、夕映がやはり微妙な表情で俺を見ていた。
夕映に何かと問いかけようとした時、早乙女が割り込んできた。
「いやー、それにしても先生が一緒に来てくれて手間が省けたよー」
「手間?」
「そうそう。実はね、私達も先生を誘う気だったんだよ」
「そうなのか?」
ここで明かされる事実。
俺が少し驚いていると、早乙女の言葉に何故か夕映が顔を赤くした。
「ハ、ハルナ!」
「まー、私達って言うよりはゆえがって言った方が正しいんだけどね」
「ハルナ! そ、それ以上は……!」
夕映が顔を真っ赤にしたまま、手を小さくバタつかせ始めた。
今にもそのまま浮かび上がってしまいそうなバタつきだ。
うーん、この慌て様、気になる。
「どういう事なんだ?」
「実はね、昨日の夜、寝る前にね『実は明日の自由行動の時、その、あの……』なんて顔を真っ赤にしたゆえがね!」
「ほうほう」
「『ナナシ先生も一緒に……』って目を潤ませながらね!」
「ほほうほう!」
「指をモジモジさせつつ――」
「そこまでです!」
興奮しつつ昨夜の出来事を語る早乙女の言葉を遮るように、夕映が跳躍した。
そのまま早乙女の口を塞ぎにかかる。
しかし、身長が低い夕映は、予想していたより低い位置に手を添えてしまった。
本来口元を押さえるはずだった手は、その下の首元に。
つまりは喉突きである。
「げふぉっ!!」
いい感じの喉突きが決まり、蹲る早乙女。
それをゼーゼーと肩で息をしながら、見下ろす夕映。
「ハ、ハルナっ。そのことは言わないって約束です!」
「……ご、ごめんごめん。ついうっかりね、あはは……えほえほっ」
<パルちゃんはうっかりランカー15位くらいですね>
そのランカーは誰が決めているのか。
まあ、それよりは夕映だ。
どうやら夕映は俺を今日の自由行動に誘おうとしていたらしい。
「夕映っちは俺と一緒に自由行動をエンジョイしたかったのか?」
「なっ――ち、違うですよ!」
「ソイジョイの方か?」
<私的にはカロリーメイトの方が好きですね。勿論フルーツ、ここは譲れませんよ!>
誰に譲らないのか。
そもそも時計であるシルフが、バランス栄養食を食べる必要があるのか。
というかチーズ味が至高だろうが!
とまあ、色々と言いたいことはあるがここは置いておこう。
「だ、だから違うですよ! その言い方だと、まるで私が先生と一緒に自由行動を楽しみたいみたいじゃないですか」
「違うのか?」
「全然全くこれっぽちも違うです」
とにかく違うらしい。
じゃあ、何故夕映は俺を誘おうとしたのか。
視線で問いかけると、仄かに頬を赤くして、やはり俺から視線をずらしつつ、ぽつぽつと語り始めた。
「それは、その……昨日ネギ先生の偽者に襲われた時に助けてくれたので……」
<ああっ、あのバター犬の話ですか!>
「違うです。シルフさんは少し静かにしていて下さいです」
<……むい>
頬を引き攣らせた夕映に気圧されたのか、シルフは縮こまった。
「……それで、その時のお礼をしたいと思ってですね」
「ふむふむ」
「それなら、今日の自由行動の時に何か奢ればいいのでは……と。そう思ったので」
「そんな気にせんでも」
「い、いいえ! 与えられた恩は返すべし!と私の祖父が言っていたです。だから……分かったですか!?」
何でちょっとキレ気味なんだよ……。
とにかく、夕映は昨日の恩返しに俺を誘おうとしたらしい。
友情は見返りを求めないという名言の通り、別に見返りが欲しくて助けたわけじゃないんだが……まあいいか。
貰えるものは貰っておく。
俺のお祖父ちゃんもそう言ってたし。
「……くふふ」
何故かそのやり取りをニヤニヤした目で早乙女が見ていたのは謎だ。
■■■
「……さっきから思ってたですけど」
心なしかジト目の夕映の視線の先は俺の手に向かっている。
いや、正確には近乃香と繋がれている手か。
「どうして俺がポケットの中に歯ブラシを忍ばせているか、その理由か」
「違うですよ!? 全く持って興味が……い、いや少しあるです。どうして歯ブラシを……?」
「自分でも分からん」
「じゃあこのやり取りに意味は無いですっ」
だよなー。
本当に意味の無いやり取りだよな。
大体なんて俺のポケットに歯ブラシが入ってたんだ?
本当に謎だ。
まあこの歯ブラシが後々の重要な役割を果たすとはまだ誰も想像していないんだろうな……ふふふ。
「で、ですから! ……どうして手を繋いでるですか?」
「どうしてって……なあ?」
俺は隣の近乃香に視線を向けた。
「どうしてやろなー?」
近乃香は相変わらずポワポワした笑みを浮かべるだけだ。
ちなみにその向こうの刹那は顔を真っ赤にして俯いている。
歩きからもぎこちなく、まるでロボットの様だ。
はっ! ま、まさか前から刹那に対して感じる変な感じの正体は……!
つまり刹那はロボットだったんだよ!
<な、なんだってー(棒読み)>
まあ、そんなことは有り得ないが。
しかし何故俺達が手を繋いでいるか。
それを説明するには、俺達が罰ゲームを受けているからだ、と説明しなければならない。
そして何故罰ゲームを受けているかを説明する為には、俺と刹那がロビーで『近乃香は男子トイレが大好き』な話をしていたのが原因だということも。
それを話してしまうと、また近乃香が怒る。
更に罰ゲーム追加。
手だけではなく、足も繋ぐ。
三人四脚。
歩きにくい。
こける。
そのまま工事中のマンホールに落ちる。
マンホールの先は『りりかるなのは』の世界。
魔法少年リリカルナナシ――始まります。
色々あってラスボス倒して帰る。
帰る時にフェレットもうっかり連れて帰る。
オコジョとフェレットでキャラが被る。
カモ助リストラ。
非常食キャラとして何とか復帰する。
ネギ君『他の人に食べられるくらいなら、いっそ僕が!』
「ネギ君が友達を食べたのが原因かな」
「一体何が起こったですか!?」
<マスターの脳内では一つの作品が完結したみたいですね>
俺の説明になってない説明に、相変わらずジト目を向けてくる夕映。
一体何が気に入らないんだろう。
正直、ジト目を向けていられるとあまりいい気分じゃない。
さて、どうしたものか。
ラムネを取り出してぶつけたら笑顔になるかな?
いや、ラムネをぶつけられて笑顔になるのは、この世界でも俺くらいか……。
一体何をぶつければ夕映は笑顔になるのか?
<いや、もう何かをぶつける前提の話になってますよ? ちなみに私はマスターにだったら何をぶつけられても笑顔になります!(キリッ>
悪意の篭った罵声でもか?
<……い、いやそれは……流石に……キツいです>
じゃあ、何でもとか言うなよ。
「それならなー」
ジト目を向ける夕映と、それに晒される俺を見かねたのか、近乃香が名案とばかりに言った。
「夕映も手繋いだら?」
「は、はぁ!? な、何を言ってるですか!?」
<夕映ちゃん夕映ちゃん。このかちゃんは、あなたとマスターも手を繋いだらどうですか、って言ったんですよ>
「意味が理解できてなかったわけじゃないです!」
シルフの全く意味の無いフォローは本当に意味が無かった。
近乃香の言葉を聞いた夕映は、「子供じゃないんですから」とぶつぶつ呟きながら、ぷいっと他所に顔を向けた。
しかし、チラチラと俺と近乃香の繋がれた手に視線を向けてくる。
まるでツンデレな馬が愛する馬主が手に持っているニンジンを見ようとして、でもツンデレだからちゃんと見ることが出来ないが如く。
<何ですかその例え!?>
シルフは一々人のモノローグに突っ込んで来てうっとおしい。
しかし突っ込みを入れられて嬉しいと思う心も俺の中にはあるのだった。
……は! こ、これがツンデレ!?
まあ、俺のツンデレ属性付加については置いておこう。
取り合えずは、先ほどから色々と落ち着かない夕映だ。
恐らくこの夕映の様子を見る限り、夕映も一緒に手を繋ぎたいのだろう。
多分、俺達が仲良く手を繋いでいるのを見て「キー! 私も手を繋いで青春したいです!」とか思ったんだろう。
確かに手を繋ぐのはなんか青春っぽい。
自転車の二人乗りが30ポイントくらいだとしたら、18ポイントくらいだろうか。
さて、ツンデレの夕映が自分から手を繋ぎたいとは言い出さないだろう。
なら、手を繋がざるをえない状況を作るのみ。
俺は少し離れて歩いているアスナを標的に声をかけた。
「よし、アスナ。お前も刹那と手を繋ぐんだ」
「……なんで?」
「ほら、お前あれだよ。お前よく迷子になるだろ? だからはぐれないようにな」
「いやいや、あたし迷子になる様なキャラじゃないから!」
むむ、少し無理があったか。
<おっとマスターがピンチです! アスナさん!>
「な、なによ?」
ここでシルフのフォローか。
上手くアスナと刹那が手を繋ぐ方向に持っていけるか。
<私の目を見てください>
「……目ってどこ?」
<今です! 神楽坂アスナ――桜崎刹那と手を繋げ>
「ねーから! お前にそんな能力ねーから!」
思わず突っ込んでしまった。
どんなフォローだよ……。
「わ、分かったわよ、手繋げばいいんでしょ?」
<……ふふん>
ギアスにかかったわけではないが、渋々手を繋ぐアスナ。
まあ、断る理由は無いからだろう。
結果的にアスナと刹那の手を繋げることができた。
そして凄まじいどや顔のシルフ。
……腹が立つがまあいい。
次は早乙女か。
「おい早乙女――」
「オッケー!」
「パン買って来い」
「分かった、行ってきまーす――ってこらこらー! 違うでしょー! もうせっかく素直になれない夕映の為に人肌脱ごうとしてるのにー。手を繋げ、でしょ?」
「まあそうなんだが」
早乙女は先ほどから俺と夕映のやり取りを見ていたらしく、自分の出番を虎視眈々と待っていたらしい。
「えっへっへ」と笑みを浮かべながら、アスナと手を繋ぎ、そして俺が言うまでもなく宮崎の手も握った。
これで夕映以外は全員手を繋いだ。
手を取り合い、扇状になった俺達が夕映を囲む。
「な、なんですか……」
たじろぐ夕映。
「あー、みんな手繋いでるのに、一人だけ繋いでないのがいるな」
「せやなー、どうしたんやろなー?」
「えっと……そ、そうですね」
「夕映ちゃん、何か良く分からないけど……ね」
「ゆ、夕映……」
「ほらほらー、早くしなよー夕映ー」
<ユー、繋いじゃいなよー>
ジワジワと夕映に迫る扇。
ジリジリと背後に後退りする夕映だが、すぐに壁にぶつかる。
迫る俺達。
半ば涙目の夕映。
客観的にこの光景を見たら、いたいけな少女を集団で虐めているように見えるかもしれない。
まあ、間違いでもないんだけど。
そして涙目の夕映は、観念したのか、半ばやけくそ気味に
「わ、分かったです! 繋ぐです! だ、だからそれ以上接近して来ないで下さい!」
こうして夕映に手を繋がせることに成功したのだ。
渋々と俺の右手を繋ぐ夕映。
小さい手だ。
こんなに小さい手で……この町を守っているのか。
<マスターマスター、何か別の作品っぽいモノローグが混ざってますよー。何ですか、○ャナとかですか?>
こうして俺達近乃香班は仲良く手を繋いで、進むのだった。
目指す先は、アスナとの待ち合わせ場所にいるネギ君の元。
「よし、後は夕映と宮崎が手を繋げば完璧だな!」
「何がです!?」
■■■
「あっ、アスナさーん! ってあれ? 良く見たら他にも……。……な、何で皆さん円になってるんですか? ちょ、ちょっと、あ、あの! そのまま近づいてくると怖いんですけど! え、ああ……えええ!? ど、どうして僕を囲むんですか!? こ、怖い! 怖いですよぉ! 何ですか!? これ何の儀式なんですかあ!?」
■■■
秘密のノートの中身、それは――
「写真?」
「……のようです」
ソファに座りノートを広げるエヴァ。
そしてソファに後ろから覗き込む茶々丸。
彼女達の視線の先には、写真が一面に貼られたノート。
「私が写っているな」
「こちらには私の写真が」
ペラペラのノートを捲くっていくと、この麻帆良において、ノートの持ち主である男の知り合いの写真が。
写真は、多種多様であり、撮られた覚えがあるものから、いつの間に撮ったか分からないものまであった。
「……これが秘密か?」
想像していたものと違ったのか、つまらなそうなエヴァ。
「このアルバムのどの辺りが秘密なんだ? ……アイツが考えることは相変わらず分からん」
「こんな写真……いつの間に」
「ああ、全く……こんなものいつ撮ったんだ? ……っ、こ、これは! こんな写真まで――おい茶々丸も何とか言ってやれ!」
「……」
「何故に嬉しそうな顔をしている!?」
ギャーギャーと声を荒げながら写真を見るエヴァと、何故か照れた様子で同じく写真を見る茶々丸。
そしてその二人を呆れながら見つめる一体の人形。
「オ前ラサッキカラ、ニヤニヤシテ気持チ悪イゼ」
そんなエヴァ一家だった。