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No.22515の一覧
[0] それが答えだ!! 2nd season[ウサギとくま2](2010/11/01 18:05)
[1] 一話 ププローグ[ウサギとくま2](2010/11/01 18:07)
[2] 二話 俗・修学旅行[ウサギとくま2](2010/10/17 14:05)
[3] 三話 俺の弟子がこんなに強いわけがない[ウサギとくま2](2010/10/20 15:24)
[4] 四話 これからドゥンドゥンキスしようじゃねえか![ウサギとくま2](2010/11/02 11:14)
[5] 五話 いやあ、美しい思い出でしたね[ウサギとくま2](2010/11/13 20:38)
[6] 六話 修学旅行の軌跡 the 3rd[ウサギとくま2](2010/12/09 21:14)
[7] 七話 わ![ウサギとくま2](2011/01/09 00:16)
[8] 番外編ノ一[ウサギとくま2](2011/03/31 16:55)
[9] 八話 僕らの魚(うお)ゲーム[ウサギとくま2](2011/06/01 18:04)
[10] 番外編ノ二 それから……[ウサギとくま2](2012/05/21 05:30)
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[22515] 四話 これからドゥンドゥンキスしようじゃねえか!
Name: ウサギとくま2◆246d0262 ID:e5937496 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/02 11:14
ナナシが夜空を見上げてるその頃、茶々丸も同様に空を見上げていた。
場所は麻帆良学園の屋上。
茶々丸は屋上に吹く柔らかな風の中で、遥か遠く京都がある方角の空を見つめている。

「――着弾の確認。対象の無力化に成功しました」

この学園の屋上という日常のシンボルとなる場所において、今の茶々丸は日常とはかけ離れた状態にあった。
茶々丸の正面にあり、茶々丸自身から伸びる多数のケーブルと繋がっているそれ――雷神の槌(トールハンマー)
巨大なその機械は、一見するとただの雑多な鉄の塊にしか見えない。
しかし実際それは、多種多様の複雑な機械が組み合わされた現代科学の粋を集めたものである。

(……い、一体なんだ? あの機械から何か弾丸のような物が飛び出したぞ? わ、分からん。アレは何なんだ……!?)

その茶々丸with雷神の槌を内心ドキドキで見つめるエヴァ。
全く事態を把握していない。
ただ事では無い様子の茶々丸に着いて来たのはいいが、完全に放置されている。
屋上に来るまでにも、茶々丸に対していくつも疑問をぶつけたが、『質問は後でお願いします。今は一刻も早くナナシさんを……』と珍しく焦りを浮かべている茶々丸に一蹴されただけだった。

「お、おい茶々丸。一体何事だ? それは一体……」
「申し訳ありませんマスター。先ほどは緊急時につき、質問に答えることが出来ませんでした」

機械から外したケーブルを体内に収納し、エヴァに頭を下げる茶々丸。
その顔は心なしか安堵に包まれていた。
何か大事をやり遂げた風な顔である。

「マスターの質問にお答えさせて頂きます。これは雷神の槌(トールハンマー)。超長距離狙撃兵器です」
「そ、狙撃兵器?」
「はい。ナナシさんとハカセが共同で開発されたもので、何重にもコーティングされた特殊な弾丸を撃ちだします」

茶々丸はエヴァにそれはもう分かりやすく、ここにハカセがいたら100点を出すであろう見事な説明をした。
実に見事にその機械を解説しており、魔法と科学の知識がそこそこあれば容易理解できるだろう説明だ。
しかし残念ながらエヴァは魔法には詳しくとも、科学に関してはてんで駄目である。
半分ほどしか解説を理解出来なかった。
科学部分については全く意味が分からなかったので、別世界の言語で話していると思ったほどだ。
しかしそれを顔には決して出さない。
従者に舐められたら終わりだと思っているからだ。

「――というわけです。ご理解頂けましたか?」

茶々丸がエヴァに問いかける。
エヴァは腕を組み頷いた。

「……なるほど。そうか、そういう代物か。ふん、面白い物を作ったものだ」

さも自分は全てを理解出来ていますよ風に頷いた。
しかし実際半分理解出来ていないので、科学部分について突っ込まれたらどうしよう、と内心ドキドキしていた。
顔以外の見えない部分では冷や汗をかいている。

「流石はマスター。あれだけの解説で理解して頂けたとは……」

凄いです、と尊敬の言葉をエヴァに向ける茶々丸。

「更に細かい説明も出来ますが……」
「――いやっ、いい! 大丈夫だ! 十分理解出来た! 出来たとも!」

ここにシルフがいたら<エヴァさん必死ですね^^>と言いそうな焦りっぷりだった。
二人は後片付けをして、帰路についた。
その途中、エヴァが台車をコロコロと押している茶々丸に問いかける。

「その……アレだ。あの機械は空間転移を使って、弾丸を一気に相手がいる場所まで距離を省略する……もの、なんだな?」
「はい、その通りです。具体的に原理を説明しますと……」
「い、いやいい。ただ、対象の場所がどうやって確認する?」
「はい。対象の確認には以前ハカセが試験的に打ち上げた衛星を使っています。その衛星にリンクして――」

再び茶々丸の説明が始まった。
やはりそれは分かりやすいものだったが、完全に科学的な話だったので、エヴァは「聞かなければ良かった……」とげんなりした。
その後も説明が続く。
空間魔法を使う際には、特殊な加工をされた弾丸が必要な為、コストがかかりすぎること。
雷神の槌を起動するのに、莫大な電力が必要なこと。
そもそも衛星にリンクしながら、雷神の槌を作動させる処理が茶々丸ほどのスペックが無いと不可能なこと。
その他諸々の事情で倉庫送りになったこと。
エヴァは怒涛の説明に目を回した。
聞かなければいい話だが、彼女は興味を持ったことに対して答えを得なければ済まない性分なのだ。
故に止せばいいのに、新しく沸いた自分の疑問を茶々丸にぶつけた。

「……あー、あれだ。大体分かった。あと分からないことが一つだけあるんだが……」

一つどころでは無いが。

「そもそも、何故あいつの危機だと思った? まさか虫の知らせなどと言うわけでもあるまい。……まさかその衛星とやらでアイツを四六時中監視してるなんてことは」
「ありまえせん。それはプライバシーの侵害です」
「そ、そうか」
「しようと思ったことはありますが、寸でのところで中止しました」
「――」

エヴァは文字通り絶句した。
そしてこの従者を自重させる何かしらの手段を講じようと思ったが、もう遅いか、と諦めた。

「何故分かったか。……私にも良く分かりません。ただ何となく、ナナシさんが危ないと。私の胸の奥が告げたのです」

茶々丸は胸に手を当てながら空を見上げた。
その先にある何かを見るように。
そしてその胸の奥、そこから零れ落ちる何かを言語しようとし、それは自然と茶々丸の口から零れ落ちた。

「……もしかするとこれが……愛の力、なのでしょうか」
「は?」
「……っ。い、いえ何でもありません」
「今愛がどうとか……」
「忘れてください」

自分の失言に気づき、慌てて口を噤む茶々丸。
しかし、エヴァがその失言を聞き逃すはずもなく、ニヤリと面白いものを見つけたように口を端を吊り上げた。
そして茶々丸を指差して笑う。

「くくっ、あはははははっ、忘れるものか! 真面目な顔して愛! あっはっはっはっ、腹が痛いっ。愛の力! あ、愛の力、ふふふっ」
「……うう」

真っ赤になった顔を両手で隠す茶々丸。
普段の茶々丸なら決して言わないであろう言葉だったが、射撃の高揚感からかポロリと漏れ出てしまったようだ。
放熱板から大量の蒸気を噴出す。
珍しく弱腰の従者をこれ幸いにと弄くり倒すエヴァ。

そんなエヴァ家だった。


三話 これからドゥンドゥンキスしようじゃねえか!


目を回している楓をロビーに繋げた門の中にシュート!して、残りの生徒達を探すために歩きだした。
とは言っても、かなりの人数を回収したので、あと少しだ。

<この先の部屋に本ちゃんと夕映ちゃんがいるみたいです>

既に探索魔法で生徒の場所を特定しているシルフの言葉に従い、二人がいる部屋に向かう。
既に殆どの生徒をロビー送りにしたはず。
残りはどれくらいだろうか。

「残りは誰だ? ――宮崎か! 夕映か!」
<まさかのトキかもしれませんね。あ、あと他にはいないです、これで全員ですよー>

まさかこんな京都の旅館に北斗神拳の伝承者がいるはずもない。
俺は残りの二人がいるらしき部屋に向かった。

「ここか」

目的の部屋にたどり着いた。
特に人がいるような声や音は中から聞こえてこない。

――ドタン!

と、思いきや何か物が倒れるような音が耳に入った。
囁くような小さな声と、衣擦れの音。
恐らくは宮崎と夕映だろう。
とにかく、二人がいる確認は取れたので、回収するために扉を開けようと――


「――だ、誰かっ! 誰か助けて!」


ドアノブに手をかけたところで、夕映の悲鳴にも似た叫びが中から聞こえてきた。
夕映にしては珍しい、尋常じゃなく切羽詰った声だ。
もしかするとトキに襲われているのかもしれない。
俺は急いで扉を開けようとした。

<――マスター! 待って下さい!>

シルフの言葉にドアノブを捻ろうとした手を止める。
こちらも随分と切羽詰った声だ。
俺がこのドアを開けることで何か問題があるのだろうか。
しかし、早くしないと中にいる夕映が胡坐ビームを喰らってテーレッテーされる。

「何だシルフ!? どうして止めるんだ!」
<は、はい……実は……最近ちょっと自分のキャラについて、これでいいのかなぁって考えるようになって……>
「それを今言う必要があるのか!?」
<あ、いえ。思い出したので忘れない内に言っておこうかと>

全く意味の無いやり取りだった。
まあ、確かにシルフのキャラについては、俺も色々と思うところがある。
今度エヴァ辺りを交えて話をするのもいいかもしれない。
しかし今はシルフのキャラより、オモイガーされてしまう夕映だ。
俺は半ばドアを突き飛ばすように、部屋の中に飛び込んだ。

――そこで見たのは



■■■


時間は少し遡る。
数分後、ナナシが侵入するこの部屋には、三人の人間がいた。
宮崎のどか、綾瀬夕映、そしてネギ・スプリングフィールドである。

「……うーん、ネギ先生がたくさん……うぅ」

宮崎のどかは布団の中でうなされている。
何かショックを受けるような光景を見たのだろう。
具体的には複数に分裂するネギ・スプリングフィールドとか。
そして残りの二人。
綾瀬夕映とネギ・スプリングフィールド。

「――っ。な、なにをするですかネギ先生……!」
「フフ、フフフフ……」

布団で寝ているのどかのすぐ側で、ネギは夕映を押し倒している。
ネギは夕映の腕を拘束し、怪しげな笑みで彼女の顔を見つめている。
そしてそれから逃れようとする夕映。
しかしネギの力は尋常ではなく、少女の細腕で逃れることは出来ない。
夕映は親友を起こさないように小さな声で、自分を押し倒す少年に向かって言葉を放った。

「ど、どういうつもりです……! 自分が何をしているか分かってるですか……っ!?」
「フフフフ……好きです夕映さん」
「……は?」
「好きですからキスをしましょう……フフ」
「ふ、ふざけないで下さいっ。のどかの事を真剣に考えると言ったあの言葉は嘘だったですかっ?」

親友の恋心を無碍にされ、心から怒りを表す夕映。
対するネギは相変わらず怪しげな笑みを浮かべるのみだ。

「フフフ……フフフフフ……フフフフフフフフフ」
「……っ」

壊れたように小さな笑い声を発するネギに、得体の知れないものを感じる夕映。
恐怖から逃れようと必死で体を捻る。

「フフ、怖がる必要は無いんですよ? 僕のメタルジェノサイダーが夕映さんのインフィニティ・シリンダーにアイン・オフ・ソウルするだけです……フフフ……」
「あ、あなたは一体……!? ネギ先生では無いですね……っ!」

普段の心優しい少年とはかけ離れていることを感じ取った夕映は、目の前の少年を別人だと判断した。
自分の身に危険を感じる。
このままだと何をされるかと。
しかし自分の力でこの拘束から逃れることは出来ない。

「誰かっ!」

先ほどまでは、親友が起きてこの状況にショックを受けないように声を抑えていたが、このままでは自分の身が危うい。
故に助けを呼ぶことにした。
体の奥から叫ぶ。
この部屋の近くを通りがかった誰かが助けてくれるように。

「誰か! 誰か助けてっ!」

迫ってくるネギ(偽)の顔を必死で押し返しながら。
その誰かを呼んだ。
その誰かは夕映の脳裏にぼんやりと姿が浮かんでいる。
こういう状況で助けれくれる誰か。
昔同じように自分を助けてくれた誰か。
かくしてその助けは誰かに届き、

――どん!

大きな音を立てて開かれる部屋の扉。
入ってきた人物は、彼女の脳裏に浮かんでいた姿と完璧に符合していたのだった。

「……先生」


■■■


部屋の中に飛び込んだ俺の眼に入ってきた光景。
それは何とも説明しずらいものだった。
部屋の中には予想と違い、三人の人間。
布団の中で眠っている宮崎。
夕映を押し倒しているネギ君。
浴衣をはだけながら、ネギ君の顔を両手で掴んでいる夕映。

「……こ、これは一体」

何とも良く分からない光景だった。
俺の脳はこの状況を説明する為に必死で回転している。
何で宮崎が寝てるの?
何で夕映がネギ君に押し倒されているの?
ネギ君のあの切なげな笑みは何なの?
トキはいないの?

<はい! 私分かっちゃいました!>

俺がウンウン唸っていると、いち早く状況を見抜いたシルフがどや顔でこちらを見てきた。
どや顔はむかつくが、この状況をいち早く理解したのは正直凄い。
流石は俺の参謀役。
答えを聞くことにした。

<フッフッフ、あの押し倒し押し倒されている二人はですね――ズバリ布団で眠っている本屋ちゃんの夢(ドリーム)! 見てくださいあの顔! 凄くうなされてるでしょう?>

シルフの言う通り、宮崎の顔は悪夢を見ているそれだった。

<ほら、漫画とかであるじゃないですか。自分の考えてることがホワンホワーンって浮かぶの。つまりそういうことです!>
「でも、その夢とやら、俺達にも見えてるぞ?」
<そこはそれ。思春期の少女の妄想の逞しさ、その逞しさたるや現実世界を侵食するほどです>

そ、そうなのか……。
なんだよ、良かった……襲われてる少女はいないのか。俺はてっきり夕映の一大事だと思って……。
安心安心。
好きな男性(ネギ君)のことを想うあまり、自分の親友とネギ君がねんごろな関係になるという悪夢を見てしまったのだろう。
そしてその悪夢とやらは鮮明に俺の眼に映っている。

よくよく考えてみると俺達の日常には結構な頻度で漫画表現的現象が現われる。
たまにエヴァと掴み合いをしている時、煙に包まれたり。
アスナに突っ込みを入れられた時は目から星が出たり。
目の前のネギ君と夕映もそんな漫画的表現の一種だろう。

「そんなわけないです! 何を目の前で馬鹿なこと言ってるですかっ。は、早く助けてくださいっ!」

俺が納得していると、宮崎の夢である夕映が話しかけてきた。
その顔は必死そのものだ。
その夢夕映の必死な表情を見ていたら、俺の心に疑問が生じた。

あれが夢? 妄想?
本当にそうなのか?
あの必死な表情、飛び散る汗、顔を掴まれて面白い顔のネギ君。
リアルすぎる。
到底幻には見えない。

それにあれが幻だったとしても、夕映は夕映に変わり無い。
あれが本物の夕映だったら、俺は勿論助けただろう。
当然だ。彼女は俺の生徒である前にこの世界に来て初めて出来た友達だ。
幻だから助けないのか?
いや、違うだろう。
それが幻だろうが、何だろうが俺は助ける!
それが友情パワーだ!
友情は見返りを求めない!

「今助けるぞ!」
<待って下さいマスター!>
「な、なんだよ。またキャラがどうとかか? その話なら後で聞くから今はゆえっちを……」
<落ち着いてくださいマスター。さっきも言った通りあの夕映ちゃんは幻です>
「だとしてもあれが夕映っちには変わらない! 偽者だろうが幻だろうが俺は助ける! そして今の俺なんかカッコよくね!?」
「どうでもいいですから早くっ、くうっ……助けてっ、ください!!」

夕映が必死な顔で俺に訴えかける。
彼女のトレードマークである額には玉の様な汗がポツポツと浮かんでいる。
い、今にも力尽きそうだ!
早く助けないと!

<だから待って下さいマスター!!>
「だから何だよ!? それからお前さっきから発音が『待って下さい』をマスターした人みたいな感じで、何かキモい!」
<キモくないですよマスター!>

またしても『キモくない』ことをマスターした人みたいな発音だった。
言われずとも俺はキモくない。
さっきからシルフが助けようとする俺を執拗に止めてくる。
そんなに幻を助けるのが嫌なのか?
……いや、どちらかと言うと、幻を助けることで俺に何か危険性がある様な言い方だった。

「一体何なんだ。早くしないとゆえっちが……ネギ君にデストローイされてしまう!」
<落ち着いて下さい! あんな安っぽい罠に嵌っては駄目です! あれは夢の世界の住人である彼女達の罠なんです!>
「罠?」
<はいっ。彼女達は罠にかかったマスターを依り代に、幻界から現界に出現しようとしているのです!>
「何かそれどっかで聞いたことあるぜ!」

どこだっただろうか?
思い出せないな。
しかし俺の大切な人間に化けて騙すなんて酷い。
夢もキボーもありゃしない。
普段なら夢の世界の住人の罠なんて、馬鹿げたことは鼻で笑うだろう。
しかし、先ほどの偽者のネギ君のこともある。

「……ふぅ、危うく騙されるところだった。夕映(夢)、いやここは敢えてゆめっちと呼ぼうか。貴様らの企みはまるっとお見通しだ!」
「私は本物ですっ。わけの分からないこと言ってないで助けてください!」
<偽者はみんなそう言いますよねー>

確かにシルフの言う通りだ。
偽者は自分のことを本物だと主張するが、本物はそもそも主張なんてしない。

「だからっ、私は本物の綾瀬夕映っ、ですよっ!」

しかし、偽者の必死な様子を見ていると、本当に偽物なのか確信が揺らぐ。
必死過ぎて物凄い力を発揮しているのか、ゆめっちのGDA(顔面ダブルアイアンクロー)でネギ君の顔が放送禁止レベルに歪んでいる。
何とか偽者か本物かを判断する方法は無いか……。
うーん。
あ、そうか!

「本物の夕映っちなら本物しか知らない様な情報を知っているはず!」
<なるほど! 本人しか答えを知らない様な質問をするわけですね! さっすがマスター。マスターは本当に頭の良いお方です!> 

よし、じゃあ質問しよう。

「ジャイアンツの外国人選手の名前を全部言えるか?」
「そんなの知るわけないです!」
<ていうかそれ知ってても、ただ夕映ちゃんがジャイアンツファンってことが分かるだけです>
「それもそうか」

そもそも外国人選手の名前言われても俺分からんしな。
よくよく考えると、夕映が知っていて、かつ俺が知っている情報じゃなきゃならないんだよな。
うむむ、これは難しいぞ。
俺と夕映の共通の情報。
あ。

「そうだ。俺と夕映っちの初めての出会いだ。本物の夕映っちなら勿論知ってるだろ?」
<初めての出会い? え? 何の話ですか?>

俺と夕映が初めて出会ったとき、シルフはいなかった。
丁度ハカセに頼まれて、貸し出していたからだ。
つまりあの出会いを知っているのは、夕映が他の誰かに話していない限り俺と夕映だけだ。
夕映はサッと頬を赤くした。

「……うっ、初めての出会い、ですか?」
「ああ。本物なら知ってるだろ? 
「も、勿論覚えていますけど……」

何故か夕映は乗り気じゃない。
まあ、あまり人に話せるような内容じゃないからな。
言うか言うまいか悩んでいるのか、その拳は強くに握りこまれており、掴まれているネギ君の顔は最早人間とは思えないものとなっていた。

「わ、分かったです! これを話せば私が本物と信用してくれるですね!?」
「ああ」
<わ、私が知らないマスター……ゴクリ>
「シルフさんは耳を塞いでいてください」
<ええー!? 何でですか!?>
「何ででもです!」

そういえば、あの時も『このことは誰にも内緒ですからね!? 話したら唯じゃおかないですよ!』と脅されたっけ。
ならしょうがない。
シルフの耳は俺が責任を持って塞いでおこう。
……。
その前にシルフの耳がどこか分からない。
仕方ないから、おにぎりを握るように、全体を両手で包もうか。

<わっ、何するんですかマスター! 何も見えないじゃないですかっ。それに何も聞こえない……って、どこ触ってるんですか! エッチ!>

特にこれといって、いやらしい部分には触れていないはずだが……まあいい。
これで第三者はいなくなった。
これでここにいるのは俺と夕映だけ。
いや、ネギ君もいるが、今やその顔は原型を留めていないので大丈夫だろう。

「さあ、話してもらおうか。そして自分が本物であることを証明してみるがいい!」
「……うぅ。何でこんな状況で自分の恥ずべき過去を公開しなければならないんですか……」

夕映はげんなりした表情で言った。
しかしそのままでは、埒が明かないと悟ったのか、ポツポツと過去の記憶を語り始めた。


「あれは今から二年半前。まだ私が小学校に通っていた時のことです――」


夕映の言葉で、俺の脳裏にも過去の記憶が蘇ってくる。
そう、あれは俺がこの世界に来て一年も経ってない日の話だ。

――続く。


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