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No.22515の一覧
[0] それが答えだ!! 2nd season[ウサギとくま2](2010/11/01 18:05)
[1] 一話 ププローグ[ウサギとくま2](2010/11/01 18:07)
[2] 二話 俗・修学旅行[ウサギとくま2](2010/10/17 14:05)
[3] 三話 俺の弟子がこんなに強いわけがない[ウサギとくま2](2010/10/20 15:24)
[4] 四話 これからドゥンドゥンキスしようじゃねえか![ウサギとくま2](2010/11/02 11:14)
[5] 五話 いやあ、美しい思い出でしたね[ウサギとくま2](2010/11/13 20:38)
[6] 六話 修学旅行の軌跡 the 3rd[ウサギとくま2](2010/12/09 21:14)
[7] 七話 わ![ウサギとくま2](2011/01/09 00:16)
[8] 番外編ノ一[ウサギとくま2](2011/03/31 16:55)
[9] 八話 僕らの魚(うお)ゲーム[ウサギとくま2](2011/06/01 18:04)
[10] 番外編ノ二 それから……[ウサギとくま2](2012/05/21 05:30)
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[22515] 二話 俗・修学旅行
Name: ウサギとくま2◆246d0262 ID:e5937496 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/17 14:05
<軍神さんによる前回までのあらすじ>

この度、前回までのあらすじを担当する<軍神>であります!
階級は少佐、ナナシ元帥が率いる部隊にて防衛戦を主な任務としているであります!
元帥と出会ったのは忘れもしないあの雪の日。傷つき今まさに志半ばで折れようとしていた小官を……え? それじゃあお前の自己紹介だ?
……。
し、失礼したであります!
えー……うん。
よし! ゴホン。

ナナシ元帥は教師に着任され、その業務を見事にこなしていたであります。
そんなある日、元帥の上司である学園長……学園長?
元帥の上にまだ上司がいるでありますか!?
こ、これ以上覚えらんないよぅ……。
と、取り合えず今のは気づかなかったことに、うん。
その学園長と呼ばれる老人からの指令で、修学旅行と呼ばれる……行軍?
その行軍に参加することになったであります。
流石は元帥、着任して早々に指揮を任されるとは……!
え? 副担任? 指揮系統ではどの辺りでありますか?
……。
し、しかし隊の指揮とは表向きの任務。
実はもう一つ本命の任務を学園長から受けていたであります。
それは護衛。
隊に所属する一人の少女の護衛任務であります。
ちなみに小官は先ほども述べた通り、防衛戦、護衛などに特化しているであります。
いわゆるエキスパート、というやつであります。

しかしその……上官に対して不遜な言い方はしたくありませんが、その……元帥の護衛は、なんというか……杜撰――い、いえ! 出過ぎた言葉でした! 上官に対する抗命と取れる発言、懲罰も覚悟しているであります!
す、好きにして下さい!
……。
……え、気にして無い?
そ、そうですか。
……はぁ。
し、しかし先ほどの発言は小官の心からのものであります。
護衛対象の側を離れるのは如何なものかと。
護衛とはいついかなる時も、対象から離れるべからず、小官の上司が言っていた言葉であります。
そ、その元帥さえよければ、小官が護衛の何たるかを、その……も、もちろん他の方達には内緒で、はい。
え? 遠慮する?
は、はぁ。そ、そうでありますか。
え、い、いえ! そんな残念などとは思っていないであります!
……。

え、そ、それで。
はい。一度は護衛対象を敵組織に奪われた元帥でしたが、隊員達と共に見事、奪還されたであります。
あの時のご活躍、小官の眼にしっかりと残っているであります。
そしてその翌日、周囲の視察を行った隊は本拠地に帰還。
元帥達の眼が無いのをいいことに、枕投げを始めたであります。
は、枕投げでありますか? え、ええ存じています。
小官も訓練校に居た頃は、たまにしていたであります。
く、訓練の一環です。
如何に被弾を抑え、敵を撃破できるかの訓練で!
そ、その話は置いといてですね!

そ、その後の話が!
何と元帥と同じ立場にある指揮を行っている少年が、何と元帥に、く、くくくく口付けを! 口付けを求めてきたであります!
な、何たる! 何てうらやま……あ、いや何て……何でありますかこれは!?
い、いや確かに部隊においてはそういう風潮が広がるということも珍しくは無いでありますが……い、いやしかし。
元帥は通常の性嗜好でありからにして、その様な欲求をぶつけられても困るんです!
当然元帥は拒否しましたが、少年の力が尋常ではなく、押さえつけられたであります!
わたしは! あ、いや小官は、心の底からその場に出でてその暴挙を止めたかったであります!
……しかしこの身を契約によって縛られている身、シルフ准将の招集が無ければ、身動きが取れない。
この戒めが憎い……!

え?
あ、はい。
そ、その後、隊員の一人である少女が現れ、元帥の身を救ったであります、以上報告終了!
は!
い、いえ! 身に余る光栄!
……え、そ、それじゃぁ……。
も、もう少し、その小官を呼んで頂ければ……い、いえ任務云々では無く、非番の際にでも……。
本当でありますか?
や、やったぁっ。





一話 俗・修学旅行


俺の前に現れた楓は、普段と変わらないのほほんとした笑みを浮かべていた。
着ているのは他の生徒達と同じく浴衣。
浴衣の隙間から見える脚線美が中々に美麗だった。

「拙者の耳が師匠の助けを呼ぶ声を捉えたので、この通り風の様に推参したでござる」

にんにんと印を組んで少し茶目っ気を含んで笑う。
俺は何とか立ち上がり、フラフラと楓の元へ歩いた。

「か、楓……お前……」
「いや、感謝の言葉など不要。弟子として当たり前のことをしただけでござるよ」

何とも師匠想いの言葉だ。
目頭が熱くなる。
いや、現に俺の眼元からはポロポロと涙が零れている。

「……し、師匠? だ、大丈夫でござるか? どこか怪我でも……」
「違うよ楓……違うんだ」

これは嬉し涙じゃない。
悔し涙だ。
不甲斐ない俺の。
楓の肩に手を置く。

「すまない楓……本当にすまないと思っている」
「え、ええ? どうしたでござる?」

楓は事態を理解していない様子だ。
何せまだ子供だ。
自分がしたことの重大さを理解していないのだろう。

「ちゃんと……ちゃんと豚箱に面会に行くから。毎日は無理だけど行くから、彌紗」
「楓でござる。さっきから何を言っているでござる? 拙者まだ警官に世話になるようなことしてないでござる……」
「お馬鹿! 現実から眼を背けるな!」
「むぎゅぅ」

俺は楓の頬を両手で挟みこみ、現実へと向けた。
現実――ネギ君だ。

「ははー、なるほど」

合点がいったと、頷く楓。
ネギ君。
いや、ネギ君だったもの、だ。
楓の行き過ぎた行為によってネギ君はネギ君(故)になってしまった。
あの元気に走り回っていたネギ君はもういない。
今のネギ君にその頃に見る影は微塵も無いのだ。

まず首が無い。
正確に言えば首が壁の中に埋っている。

<かべのなかにいる>

シルフがよく分からないことを言った。
そして手足、完全に有り得ない角度に曲がっている。
角度によっては卍に見えてしまう。
いや、そもそもだ。
どんな衝撃が起きたかは分からないが、上半身と下半身が捩れている。
丁度腹部の辺りでグリンと一回転させたみたいに。
さながら全身48箇所が稼動するヒーローの人形のように。

もう絶対死んでる。
血は出てないけど。
これだけは言える。
ネギ君の生命活動は停止していると。

「いやいや案外脆いものでござるなー」

こんな状況でも楓はのほほんと笑っている。

……落ち着くんだ俺。
楓は混乱しているだけだ。
初めて人を手にかけたのだ。
優しく、優しく接するんだ。
それが教師でもあり、師匠でもある俺の役目。

「な、楓。一緒に自首しよう。俺も証言するから。正当防衛だったと」
「まあまあ師匠、落ち着くでござるよ」
「これが落ち着いてがじがrfんぎあdんりいあじだfじタロンシャダ!!!!」
<マスター! 言語が! 完全に外宇宙向けの言語になってますよー! ぽまーどぽまーど!>

シルフの呼びかけに我を取り戻す。
危ない危ない。
危うく何か別に星の生き物になってしまうところだった。

「むぅ、師匠は何か誤解をしているでござるな? そもそもあのネギ坊主は……おっと」

俺が必死で精神の均衡を保とうとしていると、パキパキと耳障りな音が耳に入った。
そちらに視線を向ける。

「ぐ、げぇ……えへ、けへ……な、なじさぁん……ぎぎぎ」

ネギ君が動いていた。
曲がった足で必死に首を抜こうとして……抜いた。
顔をこちらに向ける。
笑っていた。
血まみれの顔で笑っていた。

「……さーて、今日は茶々丸さんと買い物に行く日だー」
<ああっ、マスターがとても分かりやすい現実逃避を! もうっ、どうせならその逃避先には私を選んでくださいよぅっ>

そりゃ現実逃避もするわ!
ああ、やばい。
これ絶対夢に出るわ。
手足が折れ曲がって、下半身が一回転したネギ君がいつものニコニコとした笑顔でこちらに迫ってくるのだ。
失神しなかっただけでも偉いと思って欲しい!

「ふーむ。思ったより頑丈だったでござるな、っと」

まるで背伸びをして高い所にある物を取るかの様な軽い声で、楓はネギ君に接近して素早く足払いをしていた。
横回転をしながら宙に浮くネギ君(元)
形が形だけに風車のようだった。
楓は続けざまに回転しているネギ君の中心に後ろ回し蹴りを放つ。
猛烈な勢いで壁に叩きつけられるネギ君(昔)
ピクピクと痙攣した後、ぐったりと動かなくなった。

「ふむ、こんなものでござるか」

つまらなそうにそう言うと、テクテクとネギ君(壁)に近づいていく。
な、何をするつもりだ?
ま、まさか……。
後片付け!? 忍術を使った死体隠蔽を行おうとしているのか!?
ギャー怖い!
忍者怖い!
見ざる! 俺は見ざる!
今俺はあらゆる現実から眼を閉ざす!

「んっと、これでござるな?」

ネギ君達の方からビリっと何かを剥がすような音が聞こえた。
何!?
皮!?
皮剥いじゃったの!?

「ししょー。もういいでござるよー」
「いや絶対嘘だ。お前これ今目開けたら人体の不思議展~ネギ君編~みたいなグロイ光景なんだろっ」
<もう大丈夫ですよミスター……あ、いやマスター>
「そこ間違うなよ!」

シルフのボケかどうか微妙なミスにツッコミ入れてしまい、うっかり目を開いてしまった。
目を開くとそこには……何も無かった。
ネギ君だったものも無い。
な、なんて見事かつ素早い死体処理。
きっとかければ塵一つ残さず溶けてしまう薬品とかがあるんだろう。

「ネギ坊主だったらこれでござるよー」
「え?」

俺がネギ君を探しているのに気づいたのか、楓は何かを俺の目の前にぶら下げた。
紙。
紙だった。
人型の紙。
紙には『みぎー』と書いてある。
しんいち?

「紙型でござるよ」
「なにそれ?」
「うーむ、拙者も専門外でござるからなー。……まあ刹那の式神の簡易的なものでござるよ、多分」

な、なるほど……。
ああ、そうか。
納得が言った。
だから変だったんだなネギ君。
いや、待てよ。

「おいシルフ」
<何ですかにゃーん?>
「お前知ってたのか?」
<はい無論です。私を誰だと思ってるんです? 人目見たときに本物のネギ君じゃないと気づきましたよ。えへん>

知ってて黙っていたのか。
ほー、成る程ね。
知ってて俺の窮地を眺めていた、と。

「じゃ、この後のお前に何が起こるかも分かるな?」
<はいっ。罰ですよね>
「分かってるならいいさ」

俺は窓を開け、渾身の力を込めてシルフを投げ飛ばした。
シルフは<ありがとうございまぁぁぁぁす!!>と言いながらすっ飛んでいった。
確かあっちは池がある。
少し溺死してもらおう。
パンパンと手を払い、楓に向き直る。

「誤解してすまん。てっきりお前が忍者からアサシンになってしまったかと……」
「いやいや。師匠のためなら、人殺しも容易いでござるよ」
「おいおい」

まあ冗談だろうが。
しかし助かった。
偽者とは言え、危うくネギ君とらぶChu☆Chu!な展開になるところだった。
もしかしたら俺とネギ君がそういう関係になる世界線があるかもしれないが、少なくともこの世界は違う。
俺はノーマルなのだ。

「改めてありがとう。お礼代わりに何か奢ってやるよ。鯛焼きか? 三個欲しいのか? 四個? このいやしんぼめ!」
「お礼、でござるか。……ふーむ」

鯛焼きに反応しない楓。
何かぶつぶつと呟いている。
あれか。
もっと高い物を奢らせようと画策しているのか。
ああこわっ。
中学生こわっ!
シャネルか!? ビッチか!? 
言っちゃあ悪いが俺は貧乏だ。

「ふむ、決めたでござる」
「な、なんだよ……」

俺はびくびくしながら聞いた。
貞操の危機を助けてもらったのだ。
出来る限りのことはしたい。
でも、最近の中学生はなんだか凄いらしいし。
物凄いものを要求されるかもしれない。
楓は人差し指を立て、これはいい案だと、その言葉を俺に告げた。

「――師匠と接吻がしたいでござる」

と。
せっぷん?
……。
あ、シルフいないのか。俺が外に放り投げたんだっけ。
じゃあシルフ辞典には頼れんな。
えー、せっぷん?
何それ?
外来語?
ここだけの話、俺は英語が苦手なのだ。
オレンジをオランゲと読んでしまうレベルだ。
ナイフをクニフとか。ノックをクノックとか。

「すまん楓。接吻ってなに?」
「おや、師匠は知らないでござるか。ふむ、まあ少々古い言い方でござるからな」

古いのか。
楓は忍者という職業?柄か、少し古めかしい言葉を使うことがある。

「今風に言うなら……その……」

楓がほんのりと頬を染めた。
何だろう。
何故染める?
今風の言い方だと恥ずかしいのか?

「キ、キキキキ……ごほん。――キッス、でござる」

キッス。
キッス?
キス。
キス!
キスか!
へー、キスって昔はそんな言い方したのか。
勉強になるなぁ。

「……ん? キス?」

俺の言葉に楓はコクリと恥ずかしそうに頷いた。
まるで中学生女子の様な初い反応だ。
あ、そういえば中学生だっけ。

「……」
「……」

何とも言えないもにょもにょする空気が俺と楓の間に発生した。
突然弟子と思っていた少女から、キッスをしようと言われたのだ。
頬を染めて俯く楓。
多分俺の頬も赤いかもしれない。
しかし。
しかしだ。

「何を企んでいる?」
「た、企んでなんていないでござる。ただ純粋に拙者は師匠とその……接吻を交わしたいと」
「意義アリ! だっておかしいじゃないか! 何でこの状況なんだ!」

この状況はおかしい。
俺のインテリ脳は既に答えに近しいものを導き出していた。
ズバリ先ほどのネギ君の行動だ。

「ネギ君もキスを求めてきた。そして俺がさっきから回収していた生徒達!」
「……ぐむむ」

俺は楓に『ゆさぶり』をかけた。
みるみる額に汗を浮かばせる楓。
ここで一気に畳み掛ける。
俺は証拠を『つきつける』

「彼女達はうわ言のようにこう言っていた。――キス争奪戦と!」
「――ぐう!」
「ズバリこの状況においてキスをするという行為は、何らかの特殊性を秘めている!」
「ぐはあああああああ!」

楓は大げさに仰け反った。
浴衣の中から大量のクナイが飛び出すという、ドット職人さんが大変そうなリアクション付きで。

「し、師匠が頭良さそうでござる。師匠も偽者でござるか?」
「何だと貴様」

エヴァっぽく怒った。
俺の推測は当たっているだろう。
この枕投げ大会。
枕投げなのが表向きで、本当の目的があると見た。
そしてその目的はキス!
はい完全論破!

「む、むぅ……確かに。師匠の言うとおりでござる。この枕投げ大会の真の目的は……キス、でござる」

しかし何でキスなんだ?

「小耳に挟んだ情報によれば、今日この夜にキスをした相手とは何らかの繋がりを得ることができる、と」

何じゃそら。
あ、そう言えばさっきシルフが何か言ってたような。
結界がどうとか。
ええい、居て欲しい時にいないなんて使えない奴だ!
俺が投げたんだけど。

「拙者どうしても師匠との繋がりが欲しかったんでござる……」

寂しげな表情で言う楓。
繋がりか。
やはり親元を離れて暮らすからには、目に見える繋がり、というものが欲しくなってしまうのだろう。
俺だってこっちの世界に来て、エヴァ達との繋がりを得ることが出来ていなかったら、寂しさで心が折れていたかもしれない。
繋がり、絆というのはそれほどまでに大切なのものなのだ。
人差し指をツンツンと合わせて、気まずそうな楓。
俺はそんな楓を見て、笑った。

「お前は馬鹿だな、ははは」
「ど、どうして笑うでござるか?」
「はははははははははははは」
「し、師匠!」
「わはははははははははははは……おえええええ」
「だ、大丈夫でござるか?」

笑いすぎるとリバースしそうになるんだ……。
初めて知ったわ。
俺は咳をして調子を整えた。

「けほん。何言ってんだ楓。俺とお前の間には既に繋がりがるだろ?」
「繋がり、でござるか?」
「そうだ。俺は師匠でお前は弟子。立派な繋がり、絆じゃないか。お前今まで冗談だと思ってたのか? 少なくとも俺は本気でお前のことを弟子だと思っていたぞ?」
「師匠……」

遊びのような関係だったが、その関係は真実だ。
俺はこいつとの関係を大切にしている。
エヴァ達に対する家族や、このか達に対する友達、じいさんに対する親友とはまた別の関係。
大切な関係だ。

「な、楓」
「師匠……!」

楓の瞳に涙が浮かぶ。
つられて俺も泣きそうになった。
くそう、歳をとると涙もろくなるぜ。

「師匠……っ!」
「弟子よ……っ!」

俺と楓は抱擁を交わした。
そこに下賎な感情は無い。
師匠と弟子の普遍的な絆だ。

「一生師匠について行くでござる……!」
「へへっ、ついて来れるならな!」

少しワザとらしいやり取りの後離れる。
楓の頬は羞恥からか赤らんでいた。
俺も同じだろう。
不思議なものだ。
修学旅行の晩にこうして、師匠と弟子の絆の再確認が出来るなんて。
俺は他人との関係は最も尊いものだと思っている。
こうして再確認出来たのは良い経験だ。
修学旅行に来て、一番得るものが大きかった事柄だ。

楓は照れを含んだ顔で頭を鼻の頭をかくと、「さて」と仕切り直すかの様に言葉を続けた。

「じゃあ接吻でござる」
「おい! さっきまでのは!? さっきまでの師匠と弟子のやり取りは!?」
「それはそれ。これはこれ、でござる」

『それ』をあちらに置き、『これ』を目の前にもってくる。
本当さっきのは何だったんだ。
泣き損じゃないか。
茶番だァ! 
俺の涙を返せ!

「お前どうしても俺とキッスをしたいのか! 何故だ!」
「ふむ、まあそれは……将来的な保険、でござるよ」
「どういう意味だ!」
「どうやらその件の繋がりとやら、物理的な絆が発生するらしいでござるから。今の内に師匠に対して少し縛りをかけとこうかと」
「意味がわからん。ディザスターで例えてくれ」
「む、むむぅ」

俺の無茶難題に、楓は頭を抱えたが、そこは忍者。
素早い思考活動でそれを実現しれくれた。

「んー……主人公の御堂謙次が決戦に赴く前の夜、サブヒロインの氷女節と月を見上げるシーンがあるでござる」
「うん」

何気に名シーンだ。
敵だった節が心の底から仲間になったと感じるシーン。
節が自分のドロドロとした心の内を謙次に吐き出し、謙次はそれを受け止める。
何もかも吐き出してスッキリした表情の節は

『明日頑張ってあの子を助けましょ。……じゃないと不公平ですものね』

と意味有り気に微笑み、去り際に謙次の唇を掠め取るのだ。
そしてオロオロする謙次に一言。

『あの子には負けないから!』

今までの暗いイメージが払拭され、残された謙次は頬を染め

『な、なんだよアイツ……意味分からねえ』

と無意識に唇に触れるのだ。
そこにあった暖かさを感じるように。
このシーンはネットでは賛否両論になっている。
主に節へのアンチかファン。
アンチの発言はこんな感じだ。

・決戦前にキスとか死亡フラグだろ、氏ね!
・美智子以外のヒロインとかいらねーんだよ!
・デスキッスやめろwwww
・よせ!キタンの二の舞になるぞ!
・悪女! この悪女! お前は現代に蘇ったヨヨじゃ! 
・悪女!
・悪女! NTR反対!
・そんなことよりディザスター屈指のロリキャラ、ダーク11について語ろうぜ。

とまあそんな感じ。
今ひとつ悪女と罵られる原因が分からない俺だ。
シルフには<マスターは純粋ですね……これからもマスターには女のドロドロとした部分を見せないようにしたいです>と言われた。

「つまり拙者は氷女節でござる」
「そうなのか!?」

わ、わからない……!
何故『楓=節』が成立するか、全く理解出来ない。
今ひとつ分からないが――

「いいだろう楓。キス、いいぞ」
「ほ、本当でござるか?」
「ただし――」

俺はここで人生で言ってみたい台詞の13位に属する言葉を告げることにした。
いつか言おうと思っていた台詞。
こんなにも早く機会が訪れるとは……!
俺の言葉に満面の笑みを浮かべる楓。
その表情が本気に変わるその言葉を、俺は告げた。


「ただし――この俺を倒せたらなぁ!!」
 



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