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No.22515の一覧
[0] それが答えだ!! 2nd season[ウサギとくま2](2010/11/01 18:05)
[1] 一話 ププローグ[ウサギとくま2](2010/11/01 18:07)
[2] 二話 俗・修学旅行[ウサギとくま2](2010/10/17 14:05)
[3] 三話 俺の弟子がこんなに強いわけがない[ウサギとくま2](2010/10/20 15:24)
[4] 四話 これからドゥンドゥンキスしようじゃねえか![ウサギとくま2](2010/11/02 11:14)
[5] 五話 いやあ、美しい思い出でしたね[ウサギとくま2](2010/11/13 20:38)
[6] 六話 修学旅行の軌跡 the 3rd[ウサギとくま2](2010/12/09 21:14)
[7] 七話 わ![ウサギとくま2](2011/01/09 00:16)
[8] 番外編ノ一[ウサギとくま2](2011/03/31 16:55)
[9] 八話 僕らの魚(うお)ゲーム[ウサギとくま2](2011/06/01 18:04)
[10] 番外編ノ二 それから……[ウサギとくま2](2012/05/21 05:30)
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[22515] 番外編ノ二 それから……
Name: ウサギとくま2◆e67a7dd7 ID:07f2e670 前を表示する
Date: 2012/05/21 05:30
日課の散歩から帰ってくると、リビングに『おやつです』とメモが張られたホットケーキがあった。
茶々丸さんが作ったものだ。

「うめえ!」

まだ食べていないが、見た目の美しさだけで口の中に涎が溢れ出す。

そのまま冷蔵庫からこれまた茶々丸さん手作りのハチミツを取り出し、ホットケーキにたっぷりかける。
そして食す。本能のままに食す。

「死ぬ!」

死にはしないが、死ぬほど旨い。
瞬く間に全て平らげてしまった。美味すぎて完全に理性が飛んでしまっていた。
ほんま茶々丸さんの料理スキルはちょっと天井知らずやで……。
一体どこまで上手くなるのか、食べる側の俺としては恐ろしくてしょうがない。
こんな旨いもん毎日食べさせられていたら、もう一生茶々丸さんから離れられないよぉ……。
まあいいか。特に離れる気はないし。

腹が膨れたので、部屋に戻る。
部屋の扉を開けると、テレビの前で体育座りをしている少女がいた。
扉の音に少女が振りかえる。

「あっ、お帰りなさーい」

青い髪の小柄な少女はニパッと笑った。大きな瞳が宝物を見つけたかのようにキラキラ輝いていた。
彼女はそのまま立ち上がり、俺に向かって一直線にダイブしてくる。
俺はそれを右から左に受け流した。

明後日の方向にすっ飛んでいく少女。

「――ぐへぇっ!? な、なにをするんですか!? 普通そこは飛んできた私を抱きしめて『全く、お前はいつまでたっても甘えんボーイだな』『むー(頬を膨らませて)、私のどこがボーイなんですかっ。こんなカワイイ子を捕まえて!』『ハハハッ、ごめんごめん。お詫びに頭撫でてやるから』『そ、そんなんで許すと思ってはぁぁぁぁぁん! ゆ、許す! 許しちゃいますぅ!』みたいなイチャコラ展開がカミングでしょうに!」
「なにって、上読めよ。右から左に受け流したって書いてるだろ? つーかそのイチャコラ展開はキモイな……」
「そんなの見えません……あ、いや、見えますね。やだ、もう! 青い髪のキャワイイ少女ですって!」
「多分お前が見てるのと俺が見てるのは若干違うな」

俺に受け流されベッドの上に落ちた少女は、両の手を頬に当ていやんと体をくねらせた。
また勝手にエヴァの箪笥から持ち出したのだろう、その格好は白を基調としたゴスロリファッションだった。
この少女、度々エヴァのタンスから勝手に服をパクリ、その上持ち主であるエヴァに向かって『あー、ちょっと胸がキツイですねー』とか挑発しちゃうようなブレイブガールなのだ。ちなみにエヴァと胸の大きさは殆ど変わらない。

「お前また勝手に服を……エヴァが怒るぞ?」
「いや、大丈夫です。私キャワイイですし」
「いやいや。関係ねーし。キャワキャワだろうとパミュパミュだろうと、エヴァはキレるぞ?『このホットケーキを作ったのは誰だー!?』って」
「それこそ関係ないですよ! なんですかそれ!? 何でエヴァさん怒ってるんですか!?」
「おいしすぎて?」
「おいしすぎて!?」

実際いくらおいしかろうと、エヴァは茶々丸さんに怒ったりしないけど。
そういえば昔は結構エヴァも茶々丸さんに怒鳴ったりしてたんだよなぁ。
いつからだろう、エヴァが茶々丸さんに怒らなくなったのは……。
いや、たまに怒るそぶりは見せるんだけど、その度に茶々丸さんが『マスター。例の写真が』って呟いて、エヴァも『ぐぬぬ……』って消沈するんだよな。
一体あの二人に何が……?

「あ、それにしてもマスター! 今までどこに行ってたんですか! 起きたらマスターがいなくて私ちょっと泣いちゃいましたよ……ヨヨヨ」
「散歩だよ散歩。つーかお前寝すぎ。俺が家出たの昼前だぞ? 単位取るの上手い大学生かよ」
「だ、だって眠いんですもん……昨夜もマスターが離してくれなかったから……」

ポッと頬を染める姿を見て、俺は

「そういうこと言うなって。勘違いされるだろ、全く」
「あの、マスター、そう言いながら私の体に10円玉擦り付けるのヤメテ下さい」
「すまん、でも……いいだろ? 昔の癖で……さ」
「よくないですよ! 何一つよくないですよ!」

ちなみに昨夜は遅くまで二人でゲームをしていたから遅くなった。
途中までエヴァも居たのだが『明日は化学のテストがある』と言って途中で抜けた。
永遠の高校生も大変だな……。永遠の中学生の次は永遠の高校生とか……アイツの青春長すぎね? 次は永遠の大学生か? そろそろ登校地獄ちゃん(呪いの擬人化)も許してやれよ……。

と、俺は先ほどまで少女が見ていたテレビに映っている映像に気付いた。
映像では、どこかの街並み……これは映画村か。
その映画村を歩いている青年と少女が写っている。

『ナ、ナナシ先生……あ、あの手を……繋いで欲しいです。い、いえっ、別に木乃香達が羨ましかったというわけではなくっ、私の体は小さくて人ごみに紛れてしまうので……!』

と、するとこの若干低い視点の映像は……シルフ視点?
そうか、これ、シルフが修学旅行中に撮ってたっていうビデオか。
ん? じゃあさっきから映ってるこの青い髪の女の子は……

「これ夕映か!?」
「ですよー」
「若っ! つーか幼っ! ロリッ! デコッ」
「ねー、ですよねー? 私も久しぶりに見て、びっくりしちゃいましたよー。いやぁ、人は変わるもんですよねー」

この頃から考えると、かなり成長したよなぁ……胸とか以外。
いや、それにしても懐かしい。
修学旅行、か。

俺の脳裏に、あの慌ただしくも楽しかった光景が走馬灯に如く走った。

「うわぁ、まだ結構覚えてるわぁ。この後この映画村にロボット、田中さんが大量に現れるんだよな?」
「混ざってますよ!? 文化祭と修学旅行がごっちゃになってます!」
「え? そ、それで映画村の中心になんか特異点が発生して、みんな魔法世界に飛ばされるんじゃ……なかったか?」
「いやもう全然違いますよ! 何ですかその展開!? 魔法世界に行くのとかまだまだ先ですから! ……ほんと、マスターの記憶力って乏しいですよね」
「お前は胸が乏しいけどな」

俺の言葉に眼の前の少女、シルフは『そういうこと言っちゃいます!?』と怒った。
いや、しかし修学旅行とか随分昔だなぁ……そりゃ記憶もごっちゃになるわ。
そうか……それくらいの時間が経ったんだよなぁ。
しみじみ。

「それにしても、この頃の私ってまだ懐中時計だったんですよね」
「ああ、そういえばそうだっけ」

今こうして目の前で話している少女が、昔は懐中時計だったなんて誰が信じるだろうか。

「よくよく考えればお前すげえよな。いや、マジで。ある日、いきなりお前(時計)から足が生えてきた時はマジでビビったわ」

今だから笑い話で済ませられるが、当時はかなりホラーだった。
切り離そうにもシルフが痛がるので、できない。
そうこうしているウチにもう片方の足、そして手とどんどん人間のパーツが生えてきたのだ。
最終的に今のシルフ(人間ver)が完成。
ピノコも驚きの誕生秘話である。

「いや、私もまさか自分の体から手足が生えてくるとは思いませんでした。というか思ってませんけどね! マスター、私の人気投票に影響が出るような嘘、本当にやめてもらえませんか?」
「てへぺろ」
「古いですね……。私の体は、ちゃんとハカセちゃんに作って貰った、茶々丸と一緒のボディです! 機械の体です! テツロー!」

テツロー関係ねぇ。

「まぁ、昔の私は若かったですよ。本気で時計の体のままマスターのことを落せると思ってましたから。よーく考えなくてもそんなの無理なのに」
「若いっつーか、バカだな」
「バカワイイみたいな? でも早めに気付いてよかったです。貯金を叩いて、ハカセに作って貰った甲斐がありました」

シルフのボディはハカセに作って貰ったものだが、当然タダではない。
シルフがラノベ(なんか幽霊とアパートで同居するやつ)の執筆やブログ(ネットアイドルの奴。勝手にエヴァの画像使ってた)のアフィなどで得た金を使ったのだ。こいつ何気に俺より貯金あったからな……両津並みに副業してたし。
しかし、シルフの体、改めてみても……

「お前、その体さ。自分でデザインしたんだよな?」
「はい、そですよー。本当はもっとこうボンキュボンの金髪のチャンネーにしたかったんですけど……不思議とこの姿で落ち着きました。なんかしっくりくるんですよねー。まるで元から自分の体だったみたいに」

シルフの姿は昔俺と共にいた、彼女と寸分変わらない。
多分それはきっと、魂が覚えているからなんだろう。
シルフの魂が、生前の自分の姿を無意識に覚えているから。

未だに俺はシルフの姿を見ると動揺してしまう。
死んだ筈の彼女はこうして、俺の前にいる。ありえない事が目の前にあって、不思議な感覚に襲われる。最近は慣れてきたが。

「ちなみに懐中時計はどこいった?って思う人いますよね? 実はここに――ありまーす」

シルフはスカートをバサッと捲り上げた。
下半身だけでなく、胸部の辺りまでがまる見えになる。
当然あんなところとか、こんな所も見えちゃってるわけだけど、シルフだしな……。
今更どうこうって感情は……あ、でも待てよ。このボディって茶々丸さんとかと同じ素材なんだよな?
ゴクリ……。

さて、シルフの胸部、人間でいう心臓の辺りに、かつてのボディ――懐中時計は存在した。
ぴったりとはめ込まれており、一見、白い肌(ボディ)の一部が銀色になっているようにしか見えない。
ちなみにあくまで懐中時計のシルフが本体なので、人間ボディからこの時計を外すと人間ボディは機能を停止する。
たまに気分でシルフが懐中時計のままどこかに行ったりするので、その時に人間ボディの方が廊下とかに放置されててぶっちゃけ怖い。

「……ってうわぁ!? 私、今めちゃくちゃ恥ずかしいことしてるじゃないですかぁ!?」
「なに今気付いたのか?」
「うわぁ、まだ時計気分が抜けてないってことですかね……うぅっ、恥ずかしいです」

さっきまでスカート捲りあげてたヤツが恥ずかしいって言ってもなぁ。
シルフと一緒に修学旅行の映像を見ていると、階下から誰かが帰ってくる音が聞こえた。
この足音、恐らくはエヴァ。いや、それにしてはいつもより足取りが重い、そんな音だ。何かを背負っているような。
足音は階段を上がり、この部屋までやってきた。
ドアが開く。
ドアから入ってきたのは、金髪で若干ツリ目の麻帆良の高等学校の制服を着た少女。
言わずとも分かるだろうが、エヴァである。
エヴァはその小さな背に、これまた小さな少女を背負っていた。

「今帰ったぞ。……ふぅ、ほら」

エヴァは背負っていた少女――黒髪おかっぱのエヴァと同じ制服を着た少女をベッドへと降ろした。
少女を背負ってきたエヴァははぁはぁと息を荒らげている。少女の背丈はエヴァと変わらないから当然だろう。

少女はエヴァの苦労も露知らず、くぅくぅと寝息を立てている。

「全く……従者の教育くらいしておけ。こいつ、道端で突然眠りだしたんだぞ? おかげで家まで背負ってくることになった」
「悪いな。おーい散花、おーいってば」
「あらー、これは完全におねむですね」

シルフがツンツンとその頬をつつくが、一向に起きる気配はない。

「……ふん、まあいい。起きるまでそこで寝かせておけ」
「何かエヴァさんって散花ちゃんには優しいですよね?」
「俺も思う」
「何か言ったか?」

エヴァは睨み付けてくるが、実際エヴァと散花は仲がいい。
今日だって一緒に高校まで通学し、帰ってきたようだし。
しかし何が驚いたって、散花が「がっこう、行きたい」とか言い出したことだろう。
今まで散花がそんなことを言ったことがなかったので、俺たちは大層驚いた。家で寝ているだけだった刀なのに……。
人間だけでなく、遺物も成長するんだなぁ。

ちなみに散花のボディも茶々丸さん達のボディと同じである。
本体の刀は、腰に差している。
散花はどうやって費用を捻出したかというと、それはまた長くなるのでいつか話そう。某漫画風に言うと<散花×魔法世界×大拳闘大会>みたいな感じだ。

ついでにこの家にはもう一本、ボディを手に入れた星薙とかいう槍がいるが、そいつは金が無いので借金をしてボディを購入した。
借金相手は何故か茶々丸さんで、今はメイド服を来てせこせこ働いている。
何故星薙までボディを購入したのか。本人は『シ、シルフさんだけでなく散花さんまで人の体を!? こ、このビッグウェーブ――乗り遅れたら負けッス!』らしい。借金してる時点で負けてるっぽいけどな。

「……さて、と」

エヴァは制服のスカートを脱ぎ、ブラウスを脱ぎ、とにかく脱ぎ始めた。
流石の俺もちょっと物申す。

「お前な、いきなり人の部屋で着替えるってのは女としてどうなんだ? いくらここが自分の家だからってな、保つべき羞恥心ってもんはあるだろ?」
「そうだそうだー、マスターの言う通りですー。最近のエヴァさんってば、女子力低過ぎー」
「ここは私の部屋だ! 貴様らが人の部屋にたまるのは今更だからもう何も言わんがな。ここは私の部屋だ! そこだけはしっかりと認識しておけ!」
「「……」」

一番落ち着くのがエヴァの部屋ってのはどうなんだろうね。
昔からそうだもんね。
しょうがないよね。
シルフと「なー?」とお互いに首を傾げる。

エヴァは制服を脱ぎ、部屋着の薄いワンピースに着替えると、椅子に腰掛け新聞を読み始めた。
大したマイペースっぷりである。自分の部屋だからいくらマイペースろうが構わないが。

「さて株価の方は、と……ん? ふふっ、おい、これを見ろ」

何か面白い記事を見つけたのか、興味深そうに微笑むエヴァ。
新聞を開いてこちらに見せてくる。

「っ! だ、ダメですマスター! 見ちゃダメです! もー、エヴァさんいくら自分が欲求不満だからってマスターにエッチな広告見せて発散しようとしないで下さいよ!」
「馬鹿か貴様は。ほら、ここだここ」

エヴァが指差す記事、新聞の一面を飾っているそれは、赤い髪の青年が大きく写った記事だ。
その青年は、俺達にとってよく見慣れた人であった。

「おー、どれどれ。『白い翼、またまた大活躍!』か。へー、頑張ってるじゃん」
「何だ、あまり興味がなさそうだな」
「いや、興味ないってことはないけどな……んー」

記事には今注目されている白き翼のリーダー、立派な魔法使いの彼についての記事が載っていた。
盗賊団を退治、飢えに苦しむ人たちへの援助、遺跡の攻略。
華々しいそれらの功績に、俺の心は特に動くことはなかった。
俺と彼らは無関係ではない、それどころかかつては密接な関係にあったのに。
いくら長い間会ってないからといって、少し薄情過ぎるかも……いや、そうでもないのか?
時間と心の距離は比例するらしい。

「いやー、しかし大活躍ですねー。最近世界が平和なのもこの子達のおかげですもんねー」
「ふん。まだまだガキさ。父親のレベルにはまだ遠い」
「おー、お師匠様の発言っぽい」
「なんだ? 喧嘩を売っているのか?」

エヴァとシルフの軽いやり取りを見ながら、俺は昔、あの頃に想いを馳せた。
あの頃、同じ教室であんなに個性的な面々が一同に介していたのは、今考えてみると奇跡的な確立だったんじゃないのか?
それが例え人為的なものであったとしても、あんな面子を揃えることができただけで天文学的な確率のはずだ。
そんな連中と過ごせた日々。

ああ、あれはとても楽しかった。
今こうしてエヴァやシルフ、茶々丸さん達と過ごすのは勿論楽しい。
でもこの楽しさとあの頃の楽しさは違う。
今の生活が安定した日常の楽しさだとすれば、あの頃の日々は、そう――祭りだった。
終わらない祭り。毎日毎日何かしらの馬鹿騒ぎが起こる。
そんな日々は俺にとって、とても素晴らしいものだった。
退屈しない毎日。心が騒ぎ立てる日々。

終わってしまった日々。

あの奇跡的な3-Aが終わりを告げ、祭りが終わると思っていたが、祭りの延長戦は続いた。この場合は延長祭か?
高校、大学とその途中でかつての面子は減っていったけど、それでも祭りは続いた。少しずつ規模を狭めて。

祭りはその規模を小さくしていき、最終的には数人だけの本当に小さなものになった。

連中は社会に出て、世界の各地へと散っていった。
当然麻帆良にも残ったヤツや、近くにいたヤツもいたが……。
そいつらも次第に自分の場所を見つけ、そこへ飛び立っていった。

相分からずたくさんの人でごった返す麻帆良を歩いていて、何故か妙に物寂しい気持ちになった時、俺はようやく祭りは終わったのだと、そう理解した。
祭りが終わった後の不思議な寂しさ、それは今でも俺の心に残っている。
祭りはもう、二度と始まらない。
いなくなった人間が多過ぎる。

「あのマスター? ……どうかしたんですか?」

俺の表情に気付いたのだろう、シルフが不安そうな表情で聞いてきた。
何でもない、と首を振る。

「でもマスター……。あのマスター――私のおっぱい触りますか?」
「どうした? なあどうした? 脳が? 脳が遂に?」
「違いますよもう! マスターが何か寂しそうな顔してるから、ここは母性を見せる場面だって、頑張ったんじゃないですかぁ! 恥ずかしい思いを我慢して!」
「お前の母性って胸を触らせることなのか?」

著しく間違っている気がする。

「じゃあ分かりましたよ。エヴァさんのおっぱいでもいいです」
「おいせっかく巻き込まれないようにツッコミも入れずに黙ってたのに空気を読め!」
「じゃあ、一緒にマスターにおっぱいを触ってもらいましょうか?」
「じゃあって何だ!? 何でこんな昼間っから胸を触らさねばならんのだ! というか今気づいたがクソ時計! また私の服を勝手に着ているな!?」
「まあまあESMじゃないですか。E(エヴァさんの物はシルフの物)S(シルフの物はマスターの物)M(マスター大好き!)って昔決めたじゃないですか。ほら、あの最終決戦前夜に」
「記憶を捏造するな! 私の物は私の物だ!」
「そういえばお腹空きましね」
「ああァッ! 貴様まだ時計だった頃の方がマシだったわ!」 

いつもの様の様なやり取りを行う二人を見ながら、俺は時計を見た。
そろそろ茶々丸さんが帰ってくるはずだ。
茶々丸さんが帰ってきたら、喪服のクリーニングをしてもらおう。

さて、来週は誰の何回忌だったか。

あの頃は毎日がお祭り騒ぎだった。
あのお祭り騒ぎの中に居た俺は、それが永遠に続くものだと思っていた。
だが、永遠なんてものはない。
全てのものは失われ、消えていく。
あの日々は俺の手に中にない。
あいつらと過ごしたあの日々は、もはや俺の心の中にしか存在しない。
それは宝石だった。
あの日々は俺の心の中に、宝石として輝いている。
決して色褪せない、俺が消えない限り永遠に存在するもの。
永遠はここにある。
俺はこれから先、時折この宝石を心の箱から出して眺めるのだろう。

エヴァ達と過ごしてきた日々、そしてこれからの日々は楽しいものになるだろう。
だが、これだけは言える。
どれだけ綺麗な宝石をたくさん手に入れようが、あの頃の宝石の輝きには決して叶わないだろうと。
そしてその想いは、これから時が経つほどに濃く、鮮明になっていくのだろう。
過去の美化。それは永遠に生きるもの達にとって、避けられないものだから。

「こうなったら仕方がありません……エヴァさん! 今からどっちのおっぱいがより優れているか――勝負です! 審査員はもちろんマスターで」
「ククク……面白い、その勝負――乗るかっ! 馬鹿か! 馬鹿なのか貴様は!」
「なあ、お前ら。俺ちょっとしんみりしたモノローグ流してるじゃん? 空気読んで、ねえ?」

ちなみに3-Aの連中、殆ど寿命とかで死んじゃっけど、何故か楓とかは普通にピンピンしてる。
しかも昔の姿のままで。『忍でござるから』らしい。忍者パネェ。

白い翼のリーダーは今5代目で、さっきの新聞に載ってたのはその男の子ね。

あ、そういえばそろそろ100年の眠りについた明日菜が目を覚ますらしい。
つっても、起きてすぐに過去に戻ることになってるから、俺が会いに行ってもサプライズ感はないな……。
いや、待てよ。目を覚ましたあいつが俺見たら『な、なんでアンタ生きてんのよ!?』って言われるから、そこで俺は『お母さん! 会いたかった!』って言ったらマジびびんじゃね?
エヴァ辺りに死ぬほど怒られそうだけど……やるっきゃねえ! お、そうだ。シルフに妹役やらせたら、もっと面白いかもしれんな。
よーし、明日菜が目を覚ます日が待ち遠しいぜ!


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