「墜とせ!なんとしてでもソーラ・システムに近づけるな!」
第9艦隊先鋒の陣形内部で射出された"騎士"はそのまま前進、攻撃を開始した。近づくMSは迎撃の対象となったのか、次々に攻撃を受けて排除されていく。不思議なのは、一機も撃墜されたMSがいないということだ。
シールド状の物体が回転を始めるとその外延部からビーム光を出し、まるで回転鋸の様になって周囲への乱舞を開始した。二枚組みのシールドが"騎士"の前面に展開してシールドの役割を果たし、こちらの砲撃を無効化する。それだけではなく、一枚だけで動き回るシールドは、回転鋸の形状そのままに周囲に展開し、包囲攻撃を開始しようとしたMS部隊の四肢を切断、無力化していく。
「何だよこいつ、墜ちろ!」
四肢を切断されたらしいジムが残された頭部バルカン砲で攻撃を続けるが、バルカンはシールドによって防がれ―――違う。シールドの近くまで来たその砲弾はシールドが発生させている何かの壁にぶつかった瞬間、あらぬ方向に砲弾を飛ばしていく。そして攻撃の手段を頭部に残していると判断したらしいシールドが、ジムの頭部を切断した。
「攻撃が読めない……のわっ!?」
「メーデー、こちら……」
次々とMS部隊から被害報告が入る。MSの装備では撃墜が難しいと悟った瞬間からサラミス、及びマゼランからの砲撃が、第一軌道艦隊の命令を無視する形で"騎士"に集中するが、機体前面に展開した二枚組みの作り出すシールドに防がれ攻撃が届いていない。Iフィールドである事を疑った参謀もいるが、実弾兵器まで防いでいる光景を見て呆然としている。それに、実弾にしろビーム兵器にしろ命中の際に絶対に生じる反発力すら感じていないようだ。
そんな、悪夢に近い光景の中、"騎士"が前進を開始した。シールドのうち8枚が四枚ずつ機体後方に展開すると、補助ブースターの役割まで果たすのか、一気に加速して第9艦隊の中を突っ切っていく。サラミスの艦長の中に、止められないならばぶつけて止めるとまで判断した艦長がいたらしいが、何かの力場に阻まれて接近が出来ないどころか、むしろその力場の反発を食らって押しやられるというおまけつきだ。
「あの機体には重力コントロールシステムでも積んでいるのか!?」
回転するシールドに攻撃が防がれるため、シールドの隙間から"騎士"を狙っていたジム・スナイパーⅡのパイロット、ウェス・マーフィー中尉は叫んだ。回転するシールドを避けて中に狙撃用ビームライフルを打ち込んだが、マント状の物体にビームを消された。どうやら、出撃前に最新の報告として月から上がっていた、ビームを相殺するマントらしい。
シールドの隙間を狙われた事を知ったのか、回転し防御に用いているらしいシールドの数が6枚から8枚に増えた。それだけではない。"騎士"がこちらに腕を向け、広げた掌を下に振り下ろすと同時に機体に強烈なGがかかり、外側に跳ね飛ばされる。やはりそうらしい。あの機体はどんな原理を用いているか知らないが、何らかの手段で重力か斥力をコントロールしている。そうでなければ……
そう思ったマーフィーの眼前で信じられない光景が生じた。
何を考えているかわからないが、それまで攻撃に回していたシールドがまるで道を作るかのように2枚ずつ、およそ20km程度の間隔をあけて2列の道を作る。そしてシールドの中央部にある何かのユニットが光った瞬間。
「……はぁ!?」
それまで陣形を組んでいた第9艦隊の艦列が左右に大きく広がり、宇宙空間に大きな回廊が形成されたのである。
第78話
無茶すぎる。目の前で斥力場を全開発生させているタオーステイルとそれによって出来た"道"を見ながら私は頭を抱えていた。なんだこれ。重力コントロール(そりゃ、ひきつける力が重力――引力で、はね付ける力が斥力と言うことは知っているが)可能だからって、一気に第9艦隊の艦列に道を作るほどの出力があるなんて聞いていない。
「御要望どおり道を作りましたよ、トール」
「負荷かかっていないのか、こんなことして?」
冷や汗を背中に感じながら機体を全速力で前進させる。この情景に一体どう事態に収拾をつけようか悩むが、もう、考えるのやめた方が良いかな、とか思ってしまう。
「ガンダム・チートに搭載されているCPUユニットはまさにチート。演算速度もヴァイサーガの4倍増しです。それに、タオーステイルのコントロールの大部分は不要です。自律稼動可能なので。それに、斥力場発生装置の必要電力はかなり抑えられて3回まで連続使用可能です。勿論充電後は再使用可能ですよ。もっとも、それだけの出力と演算能力が無ければ重力系の武装などブラックホールを生むだけの代物に成り下がりますが」
「ガミロイドのコントロールシステムを移植とかよくやってくれるよ。ビームじゃなくてレーザーだったとか、グランゾンばりに重力関係使いたい放題とか!」
クソ、危うくぶつかるところだった。推力が半端じゃないから、ヴァイサーガと同じ感覚で動かしていたら、あっという間にサラミスとの距離が詰まって危うくぶつかりそうになった。
「まぁ、グラビトンウェーブ付いていますし。付いている以上、コントロールする機能があって当然と思いますが」
その返事にため息を吐きつつ周囲を見回す。斥力場に追いやられつつもサラミスやマゼランがこちらに砲撃を行ってくるがタオーステイルに弾かれる。衝撃すらないので、本当に当っているか疑わしくなってくるほどだ。無人の野を行くが如しとまさにこのこと。接近しようとするジムは自律AI搭載のタオーステイルによって回転する刃に四肢を断たれるか、レーザーによって撃破されるかだ。
ガンダム・チートのチートさ加減はその技術だけではなく、それを用いた装備と機体性能にも現れている。重力コントロール技術を実用化していたおかげで、セニアは作らずに放っておいたグランゾン系の技術を投入したらしい。装備には重力系、つまりグラビトンウェーブやらグラビトロンカノンやらといったなつかしの名前が見える。流石に縮退砲やブラックホールクラスターの名前は無いが、あっても不思議ではないし、別に無くても武装の組み合わせで結果として撃てそうなのがヤバい。
なによりもチートなのはデュラクシール版フィン・ファンネルことタオーステイルだ。魔装機神では5枚集まってバスターキャノンを撃つために用いるか、MAP兵器用でしかなかった装備が先ほどから周囲で乱舞している通り、シールドになるわ自律稼動して回転鋸のようにMSを切断しまくるわレーザー撃ちまくっているわやりたい放題だ。レーザーを採用した理由が"Iフィールドに邪魔されるのが嫌"というのがセニアのマニュアルに書いてあった言葉だが、だからといってバリア付きコスモタイガーのようにしてしまうとは思わなかった。
「絶対"整合性"の奴、敵の装備にインフレかましてくるに違いないぞ。……ガンダムの宇宙世紀からどんどん離れていくような気がしてきた……」
「チート技術を使えるようにしてあるのに使ってこなかったのはあなたですよ、トール。それで結果として色々困った事態に陥っていたのですから、セニアの心配の虫が蠢いた結果です。後半部分についてはまぁ、否定はしません」
本気でコクピット内で頭を抱えてしまった。困ったことにこの機体、既に操縦に操縦桿が必要ですらない。サイコミュ関係の技術やら何やらを進化させまくった結果、考えるだけで機体が動いてくれる。操縦桿はもはや、体を支える程度の必要性しかない。いや勿論、マニュアル操作の際には用いるのであるが。
「まぁ、いい。今は目的に集中しよう。プラズマ・レーザー砲艦は見えるよな?」
「一直線でいけますよ。いつでもどこでもお好きなように。こちらに持ってきますか?可能ですが」
……悪夢だ。まさにチートなのだが、どこか間違っているような気がしないでもない。私はため息を吐くと疲れた声で言った。
「じゃあ、さっさと終わらせよう。あ、動かすなよ、こっちが行くから。あまり情報を見せないように」
「つくづく慎重居士ですね、トール」
出撃したと同時に第9艦隊の艦列が真っ二つに割れるのを見て、ゴルト隊の動きが数秒の間止まった事を責められるものはいないだろう。まるで"はい、ちょっと通りますよ"といわんばかりに位置をずらされた結果、第9艦隊は大混乱に陥っている。それでいて撃沈などの被害は出ておらず、動かされた際に艦の内部に起こった転倒事故などで生じた死者・負傷者が被害の中心というのだからあきれ返るばかりだ。
自身の戦力に絶望に近い不安を抱えながらカプチェンコ率いる部隊はプラズマ・レーザー砲艦に近寄っていった。本来なら周囲を守っているはずの月第二任務群は第9艦隊に生じた馬鹿げた光景に気を取られているようだ。
「ふざけろよ、ペーパー・マガジンの世界でもあるまいし」
先ほど、コクピット内にいきなり現れた手紙―――通信ではなく、紙の手紙が光と共に現れる光景にカプチェンコは本日二度目の悪態をついた。勿論一度目は黄金のドムが格納庫に現れた瞬間に吐いた、"神よ……"だったが、流石に二度目になると遊ばれているとしか思えない。
そして悪態をつく原因となった手紙には、"増援投入"と言う言葉だけが記載されていた。どうやら、あの機体に対抗する何かを送り込んでくるつもり。それが相手をしている間に如何にかしろ、とでも言うらしい。このおかげで完全に自分をコントロールしているらしい側へのかけらも無かった忠誠心はマイナスに突入したが、彼にも設定されている"服従"規定は彼に任務への服従を強要している。
しかし、彼には読めるのだ、この先の展開が。先ほどの光景を見るだけでも、重力コントロールだけではなく、一気に艦隊の艦列に道を作るだけの重力の制御の細かさを見て取ることが出来る。そんな相手の邪魔をしようと考えればどうなるか―――
考えるまでもない。
それでも、彼はやらなければならなかった。そして彼の読みは、放ったビーム・バズーカがプラズマ・レーザー砲艦に直撃する直前、あのシールド状の物体にビームが遮られたことで確信に変わった。
そしてその確信は、続いて起こった事態によってやるせない怒りに転化した。
目の前の光景が信じられなかった。今しがた、自分でも体感したばかりだが、目の前で第9艦隊に列が作られていくのを見ると、自分が感じたことが本当だった事を思わずにはいられない。この力、この力があるなら、レイラを救ってくれるかもしれない。
第9艦隊MS部隊所属、ゼロ・ムラサメ少尉。所属は旗艦戦隊で、いうまでもなく強化人間の第一シリーズである。強化人間のテストベッドということでかなり無茶な、それでいてて探り状態な強化を受けた成果、強化措置は少なくとも彼に限っては問題が少なく定着している。彼自身にとって喜ぶべきか喜ばざるべきかは勿論解らない。
ゼロは自機―――フルアーマー・アレックスから周囲を再度見渡す。艦隊陣形のど真ん中に大穴を空けられた第9艦隊は先ほどから大混乱に陥り、艦の占める位置を見失った船同士が接触する事故が多く起きている。鳴り物入りのエリート部隊として編成されるはずの第9艦隊も、一皮向けば慣熟訓練不足の新米部隊でしかない。兵員としては質の良いのを集めたのだろうが、艦隊行動の訓練もそこそこに投入されればこうもなろう。
斥力場形成装置によって第9艦隊は軒並み位置を横にずらさせられ、艦隊には大きな混乱が広がっている。無理やり横に動かされたことで、艦内では固定されていた梱包の固定が外れ、移動中のリフトなどに潰された整備兵などが生じているのは先ほど書いたばかりだ。
そして、その位置の移動によって生じた大混乱は予想外に第9艦隊全体に広がり、その動きを止めている。彼をコントロールしていたEXAMシステムに不調が発生、その機能が停止したこともその一つだ。BM-001、強化人間ゼロ・ムラサメは自分を支配していたEXAMシステムと彼をつなぐヘルメットを外すと、ノーマルスーツの首を緩め、うなじに張られていた神経電路を外す。これで自分は自由になったわけだが、全くの自由になったわけではない。強化人間である彼は、一週間から10日にかけて決まった薬剤を投与される必要がある。勿論必要と言うわけではなく、薬剤依存を高めて脱走を阻むためのものだ。しかし、彼にはそれに耐え切るだけの精神力を培わねばならない理由があった。
「あの機体の乗り手なら、僕やレイラを救ってくれるかもしれない」
そう思った彼の最大の望みそのままにゼロ・ムラサメはフルアーマー・アレックスを動かしていく。下手に通信内容を聞かれてはEXAMに再起動がかけられて望みが断たれるかもしれないから、接触回線で行くしかないが、先ほどまでの光景を見ると接触など出来るはずもない、そんな考えが彼の頭に浮かぶが、ゼロはその考えを振り払った。今は、やれる事をやるしかない。レイラを救うためにはそれが必要なのだ。
「回線に指向性を持たせて、武装はパージ。アーマーはともかく、内蔵火器関連は全て外さないと」
忙しくコンソールをチェックして内蔵火器のコントロールを行っていると、前方で閃光が生じた。"騎士"の機体とジオン軍らしき金色のドムが交戦している。デラーズ・フリートが撤退した今、この場にいるジオン軍は連邦軍に降伏した残党部隊だが、あの部隊はなぜかプラズマ・レーザー砲艦に攻撃を仕掛け、そして"騎士"はそれを守っているようだ。シールド状の悪夢の物体が砲艦の周囲を乱舞し、ドムの攻撃から砲艦を守っている。
「ジオン残党がここに来て裏切った?」
どちらにせよ、ゼロにとってはチャンスとなる機会が到来したことになる。連邦軍は"騎士"を敵視してはいるが、それは一年戦争時に欲を出したコリニー率いる第5艦隊のおかげ、という報告もあがっており、いまだグレーな存在として受け取っている。何よりも、ジオン軍に対して攻撃をしかけた以上ジオン側では決してありえないことがこの判断の元になっている。ジオン軍ではない何かが、欲を出して仕掛けた連邦軍部隊に反撃を行った、そういう理解だ。
よし。今ならまだ、この光景を証拠に如何にかできるかもしれない。ゼロは通信回線をオープンチャンネルに設定し、電波だけでなくレーザー通信システムを起動させると、第一軌道艦隊にむけても連絡が行くように通信回線をセットした。こういうとき、ガンダムタイプの強力な出力は役に立ってくれる。
「"騎士"はプラズマ・レーザー砲艦を守っている模様!ジオン残党が裏切った!奴らはプラズマ・レーザーを狙ってコロニーを地球に落とす気だ!」
ゼロ・ムラサメの放った通信が戦場を乱舞し、更なる混乱を戦場全体に波及させようとしていたころ、第9艦隊後方を突破して前進配置に移っていたレーザー砲艦をカメラに捉えたトールはゴルト隊と戦闘に入っていた。ゴルト隊の装備は見たところ金色に塗装されたリック・ドムのようだが、機動を見る限り、一年戦争時最終段階のドムであるリック・ドムⅡ以上の機動を見せている。どうやら、こちらは"整合性"によって強化されているらしい。
しかし、トールはコクピット内であきれ果てた表情で操縦桿を握っていた。表情は気が抜けているものの、ようやくガンダム・チートの機動にも慣れたのか先ほどまでのような大振りな動きは鳴りを潜め、ヴァイサーガを操縦していたときと違わぬ動きを見せている。
「さっきまでのウィザード隊と違って、それよりも強いゴルト隊のはずなのにプレッシャーを感じない」
「それがチート。素晴しい!トール、先ほどから被弾ゼロです!私の出撃回数32回目にしてやっと無傷の帰還が……」
トールはキットの感動震える声にそっと心の中で謝った。ごめんなさいごめんなさい。出撃するたび、訓練するたびに機体をどこか壊してゴメンナサイ。東方先生が悪いんです。"死んで生き返るなら死んでかまわんな。よし、死ね"とかいって本気で向かってくるとかどんな無理ゲーですか。こっちがなれてきたと思ったらアクセルと二対一にするし。
「ううっ、先生のおててが黒くなったら横に避ける=ダークネスフィンガーの餌食になりたくない。先生のおててが真っ赤になったら尻に帆かけてトンズラかけろ、でっかいおててが追って来る。袖口からマスタークロスが出るのはデフォ。たまに脚から出る……ブツブツブツ」
なにか強烈なトラウマを刺激されているらしいが、それでも体に叩き込まれた操縦法を忘れたわけでは当然無い様で、ゴルト隊の攻撃もタオーステイルのアシストもあってか直撃弾は一度も喰らっていない。それどころか――――
「クソ、ゴルト2被弾!撤退します!」
「あのシールド、こちらのビームも実弾も通しません!爆風も遮られて……ぐわっ!?」
「ゴルト6!ワッツ!クソ、脱出したのを誰か見ていないか!?」
接触したばかりだと言うのにあっという間に2機が被弾・撃墜されて陣形が崩される。タオーステイルが回転をやめてこちらにシールドの先端を向けると、向けると同時にまるで集中豪雨のようにレーザーが発射され、ゴルト隊の隊列を包んだ。メガ粒子砲は発射までに充填部にメガ粒子を蓄え、縮退部でエネルギーを負荷させ、増幅部で増幅しつつ発射するため、威力はあるが連続発射がきかない。ビーム・マシンガンにして速射性を高めれば、今度は一発あたりの破壊力が低下してしまい、集弾を考えるしかない。しかし、一度発射されてしまえば速度は殆ど光速と同程度にまで高まるため、発射段階で照準レティクルに捉えられてしまえば命中は避けられないが、発射される前までならば避け様があるのはこのためだ。
しかし、ガンダム・チートの放つレーザーはその照準から発射までで一番誤差を生じやすい部分、つまりメガ粒子の充填部への充填を行う必要がない。ジェネレーター―――対消滅機関及びフルカネルリ式永久機関による高出力に物を言わせて供給したエネルギーを純粋なエネルギーそのままであるレーザーに転化させ発射するためだ。そのような化物相手にリファイン・ドムを用いて2機の損害に押さえていることこそゴルト隊の腕前の証明だろう。"整合性"相手とあってトールも連邦軍にやったような手加減はしていない。
「化物め、近づけ!シールドの攻撃圏を脱して中に入ればまだ勝機はある!」
カプチェンコは苛立ちを隠さず叫ぶ。援軍を投入すると言ったらしいがまだ姿すら見えない。その援軍とやらはどうやら、こちらを相手の性能を見るためのおとりとして考えているらしい。噛ませ犬というわけだ。それどころか先ほどのアレックスの通信のおかげで、化物よりはくみしやすいと見た連邦軍がコロニー破壊の邪魔者となったジオン残党部隊に対して攻撃を仕掛け始めた。大部分の残党はそんな事を知らないわけで、周囲では先ほどの第9艦隊真っ二つ以上の大混乱――――混戦が生じている。
そしてタオーステイルの攻撃圏を更に2機の損害を出して突破し、ゴルト隊はガンダム・チートに対しての近接攻撃を仕掛けようとする。しかし、ガンダム・チートはマントを翻すとビーム・セイバーを抜き放ち、近接戦闘に対しても難なく応戦を始めた。むしろ、近接戦闘での動きのほうが良いくらいだ。
「ゴルト5、被弾大破!」
「リーデル!ゴルト7!応答なし、被撃墜確認!」
更に二機。ゴルト5、エゴン・シュトラウス機はゴルト7、ローレンズ・リーデル機と共に迫ったが、ビーム・セイバーにビームサーベルが防がれている間に左腕の袖下から放たれた布状のビームによって下半身及びスラスター類を切り裂かれ、大破し吹き飛ばされる。それに一瞬気を取られたリーデル機は出力を増したビーム・セイバーに手首ごとビームサーベルを持っていかれ、肩口からそのまま両断された。出力によってビームの強さと刃の形状にかなりの変形がきくビーム・セイバーは防御用の武器としても使えるようで、ドムが発射した拡散ビーム砲を回転させてシールド状にしたビームの布と共に防ぐ。
「東方不敗と同じ技術だと!?"候補者"め、流派東方不敗を修めたとでも!」
カプチェンコが残る4機を率いてガンダム・チートに再接近をかけようとしたそのとき。その宙域の全MSにオープンチャンネルでの通信が入った。
「ソーラ・システムのコントロール艦大破!ソーラ・システムが……」
誰もがその報告に耳を疑い、確認を行う中、誰がそれをなしたかについてすぐに得心がいったカプチェンコは叫んだ。増援。その言葉を頼みにしてここまで戦ってきたが、その増援が何処に投入されるまでについては手紙に書かれていなかったことを思い出し、自分たちをコントロールしている側がどのような考えで動いているかも再度思い知らされた。艦一つ丸ごとの兵員を容赦なく虫型機械で抹殺するのであれば、高々呼び出した8人程度、物の数ではないと言うことか!
「捨石とは、クソッ!増援はこちらではなく、ソーラ・システムへのものか!」