結果から提示してしまえば、第一次軌道会戦はジオン軍の辛勝に終わった。
ブリティッシュ作戦の主目的であるジャブローへのコロニー落しは失敗した(コロニーは南大西洋アセンション島沖に落着。ギニア湾沿岸と南米ブラジル東岸部に大打撃を与えた)が、コロニー落下を阻止するために砲撃をコロニーに集中させた第一連合艦隊、第四艦隊はかなりの被害を受け、ルナツーへ後退した。
しかし、ジオン軍側もコロニーの援護を行っていた部隊に被害が集中。特にキシリア率いる第一突撃軍団無しでの会戦を強要されたジオン艦隊は、ただでさえ劣勢な艦隊戦力が不足し、MSの投入によって押し切りはしたものの数の不足を機動によって補う必要に迫られたため、艦艇、MS共に推進剤不足を引き起こしたものが多く、連邦軍航空隊の反撃に満足な機動も行えないまま損傷を受ける部隊が続出した。
キシリア率いる突撃第一軍団は、コロニーが阻止限界点前2時間の位置に迫り、連邦軍の主力と砲火を交えた辺りになってようやく姿を表す始末だった。
勿論、この不手際はキシリアの責任問題に発展する動きを見せたが、連邦が即座に多数の艦艇を増援として地球の裏側からルナツーへ送り始めると、ギレン総帥府からのブリティッシュ作戦継続の命令が優先され、キシリアの責任問題は棚上げにされた。もっとも、ギレンやドズルが処罰を望んだとしても、デギン・ガルマがそれに口を挟んだだろう事は簡単に推測できたのだが。
地球に向けて投下されたコロニー、サイド2、1バンチ「アイランド・イフィッシュ」は、軌道上に展開した連邦軍三個艦隊の砲撃、特に特務砲艦「ユグドラシル」の砲撃によって阻止限界点前で崩壊。3つに分解したコロニー片のうち、地球の重力に引かれたもっとも巨大なそれが大気圏へ突入した。それよりも小さい2片は、「ユグドラシル」級2隻の砲撃によってかろうじて阻止限界点前で破壊、大気圏内で燃え尽きる大きさにまで分解された後、大気圏で燃え尽きた。
連邦軍がコロニーを破砕可能なほどの砲撃能力を持つ砲艦を投入した事実を知ったジオンは、第二次ブリティッシュ作戦を行う前に、この砲艦を破壊する必要に迫られ、サイド5でもっとも反ジオンを鮮明にしている11バンチコロニー、ワトホートを使っての二回目のコロニー落としの虚報をキシリア機関を通じ流布。出撃してくる連邦艦隊の殲滅を狙う。
サイド5、ルウムへ向けて出撃したジオン軍への迎撃作戦。所謂、ルウム戦役の始まりである。
第08話
嫌な空気だ。
最初に感じたその感想は、この会議の間中変わる事はなかった。ズム・シティ。公王官邸で開かれているルウムの処遇に関する会議は、ギレンのルウム攻撃の必要性に関する演説から始まった。
「ルウムは撃滅されねばなりません。少なくとも、我がジオンに対して反抗的な立場を取るバンチに対しては断固とした処置を取るべきです。また、その期間は早くなくてはなりません。ルウムにティアンム率いる第四艦隊が展開している現在、目に見える戦力としての連邦軍の存在が、ルウム各バンチの親ジオン派の勢力を弱めないとも限りませんので」
「またコロニーに毒ガスでも撒くつもりか、ギレン」
デギンは静かに言った。しかし、すぐに声が激発する。
「無辜の住民を虐殺しても、開戦から既に億を越える民衆が死んでもまだ足りんか!?」
「死者は関係ありません。戦争は連邦が抗戦の意志を示し続ける限り、続きます」
デギンは鼻を鳴らした。何を言っても無駄だと感じたのだろう。脇に控えていたガルマをつれて退室した。室内に残るのは将官連および親衛隊の私。正直、空気がかなり微妙だ。
「ガラハウ」
「はっ」
「今回は親衛隊からも戦力を出す。キシリア!」
ギレンはキシリアをしかりつけるように怒鳴った。
「今回は遅参などと言う体たらくは認めん。ドズルと共に出撃せよ」
「……はい、兄上」
うなずいたキシリアは早々と退室した。それを見たドズルも立ち上がる。指をこちらに向け、ついてくるように示す。私はギレンに一礼するとドズルと共に退室した。
「ガラハウ、どう見る」
「ショウ、とでも言いますか。誰かの目を気にしてらっしゃいます」
ドズルはため息を吐いた。
「遠慮のない奴だ。まぁ、其処を兄貴も容れているのだろうがな。親衛隊からお前の艦隊を借りる事にした。月には前にお前から要請のあった士官たちを回す。Nシスターズは抑えてあるんだろうな」
「ええ。ですが、連邦とのパイプをつなげておくためには、あまり表立って動けません。私の部隊を動かす場合、N3の地下ブロックを本拠地に、月が地球から見て蝕に入った際に限定されます」
ドズルはうなずいた。
「それはいい。ただ覚悟しておけ。お前、この戦役で手柄を立てられなければ、キシリアの指揮下で月で動く事になるぞ。今までの経緯から言って、それはまずいだろう」
まずいなんて物ではない。アレだけキシリア機関を弄っておいて、指揮下で無事でいられると思う方がどうにかしている。
「お前の艦隊の配属は、レビルの艦隊を奇襲する特務大隊だ。シャアや黒い三連星などと同じ配属になる。部隊にほしい人材はいるか?正直、お前の協力がなくなるのは惜しい。軍人である以上、戦場に赴くのは当然だが、戦死しないように部下には配慮してやろうと思っている」
ため息を吐いた後、言った。
「ガトー中尉とマツナガ大尉をいただけますか。機体はこちらで用意します」
ドズルは大声で笑った。
「シンはやれん。俺の艦隊に必要不可欠だからな。ガトーはまわそう。代わりはどうだ?」
まずはガトー確保、と。ただなぁ、ガトー中尉はおそらく、デラーズ閣下べったりになるだろうなぁ。
「それでは、ラル大尉か、シュマイザー少佐を」
ドズルは呆れた様な顔でこちらを見てきた。
「貴様、本当に遠慮がないな。シュマイザーなどキシリアの所ではないか」
「遠慮して死にたくはありませんし、キシリア閣下から戦力を引き抜くのは、閣下が中将の指揮下に入っている今をおいてないかと」
ドズルはにやりと笑った。コロニー落としで大失敗をやらかしたキシリアに対する、いい意趣返しだと思ったらしい。
「わかった。両名共にまわさせよう。お前のことだ、ラルもシュマイザーは部隊ごと引き抜け、と言うつもりだな」
「ありがとうございます。特務大隊の指揮艦には、姉の「マレーネ」を使いますので」
ドズルはうなずき、そこでお開きとなった。
ドズルと分かれた後、会議を終えたらしいギレンと合流し、公王官邸を離れて総帥府へ向かう。総帥府へ向かうエレカの中でギレンが話を向けてきた。
「ドズルから話は聞いたか」
「聞きました。今回活躍しない場合、キシリア閣下のおもちゃにされるそうで」
ギレンは鼻で笑った。
「君の存在が妹を不快にさせているようなのでね。また、父に泣きつかれもしたし、月にキシリアが地歩を固めた以上、アレの下に一元化すると言うのは筋の通った話だ」
「聞いたところでは地球攻撃軍の椅子を狙っているようですが」
「君のおかげで突撃機動軍の編成が流れたからな。アレが3つ目の頭として出るためにはその椅子が必要となろう。元々は突撃機動軍を編成した上で、腹心のマ・クベをガルマを傀儡とした地球攻撃軍司令にすえるつもりだったようだ」
ふん、今の言葉は考えどころ……入ってみるか。
「ルウムでの戦いの結果、講和は難しいと?」
「キシリアはなんとしてでも邪魔をするだろう。そんな状態で講和はムリだ。国内がまとまっていないからな。父上がいるとはいえ、突撃機動軍が編成されないなら本土防衛軍に手を伸ばそうとするだろう。君のおかげで、私はキシリアと激しい権力闘争をすることになる」
なるほど、これでやっと得心がいった。ギレンの本音としてはルウム戦役での戦勝で講和をしたいが、ザビ家の状態を考えると必ずキシリアが邪魔をし、現状キシリアをデギン公王が守る形になっている以上、講和はムリになる。講和を一番望んでいるのが公王であるにもかかわらず。
こりゃあ、何とかしてデギンを排除しない限りジオン有利の講和の目はないわ。ギレンが死にでもしない限り。あれ、コレって千日手とか言わね?それに、この人は口に出していない事がある。ジオニズムの信奉者である以上、連邦との戦争は、連邦に地球上の全人口の強制宇宙移民を要求できるほどに圧倒的なものでなければならない。となれば、ブリティッシュ作戦が失敗し、ルウムで連邦の艦隊を殲滅したとしても、まだ不足だ。地球に進撃して資源を確保し、資源によって戦力を整えた後に再度ジャブロー攻略を行って城下の盟を誓わせる必要がある。
「別に、突撃機動軍を作ったとしても権力闘争は不可避ですよ、総帥。あまり恩に着せないでください」
「そこを口に出すところが、君を買う理由でもあるのだよ、ガラハウ大佐」
ギレンは笑みを浮かべた。エレカの助手席に座るアイリーン女史が目を見開いているのがミラー越しに見える。おいおい、愛人にさえびっくりされるってどんだけ無表情なんだこの人。アレの時も無表情ってある意味終わってないか。というか、良く愛人になろうと思ったな、女史。
「最悪、君には月から手を引いてもらう可能性もある。ドズルからは?」
「ガトー中尉の親衛隊への転属と、私のところへのラル大尉とシュマイザー少佐の配属を認めてもらいました」
ラルの名前を聞いた瞬間、ギレンの眉が顰められる。そりゃあのバカ爺の息子と聞けばそう思うのも無理ないな。
「大丈夫ですよ。父親と比べると月とスッポンです。下手に冷遇するよりは、抱え込んだほうが宜しいかと」
「……任せよう。君の方から要望はあるかね?私もキシリアは抑えておきたい」
ふむ。改めて考えると、突撃機動軍がなくなったおかげで、表向き、キシリアが月面に縛られる必要性は少ない。地球攻撃軍が編成されるなら、むしろ地上に降りてもらった方がいい厄介払いになる。しかし、紫ババアが地上の全権を握った場合、08小隊のストーリーに介入しようとしたときなどに厄介になることこの上無しだ。そう言えば、サハリン家にはそれとなく援助して家庭崩壊しないようにしているが、流石に病気の影響か、このごろは精神的にヤバい状態になってきていると言う報告があったな。
「ギニアス・サハリン大佐ですが、私が今回昇進した場合、部下にもらえますか?」
「どうするつもりだね」
「ルウムで勝利を収めた場合、地球攻撃軍が編成されてキシリア閣下はそちらに向かうでしょうが、あのお方が私への憎悪を忘れるなんてありえませんので、少々姿をくらまして裏で動いてみようかと。その代理としてサハリン大佐のお名前をお借りしようと思いまして」
ギレンは少し考え、うなずいた。
「良いだろう。ただ、結果を出しての話だ」
「勿論です」
返事を確認すると、ギレンは思い出したように付け加えた。
「ガルマがむずかっている。ルウムに出たいようだ。同期のアズナブルとかいう中尉が参加するらしいのでな。気を抑えるために新型……いや、専用機の用意をしておいてくれ。君なら整えられるだろう」
「了解しました。しかし、ルウムの後になりますが」
「かまわん」
さて、コロニー落としによる被害が南大西洋沿岸部だったおかげで、気温低下などの事態は南半球に限定された、というのはありがたい話で、おかげでまたもやポイントにつながりました。前回4万まで減少したポイントも一気に40万まで回復です。
ただ、やっぱり後々の事を考えるとGPは確保しておきたい、ということで今回はあんまり派手に使っていません。XNガイストが開発可能になったから、使えばタイムスリップとか、他の世界にプラント設置して資源取り放題とか思いましたけど、開発GPが半端ないのであきらめました。死亡期間を短縮して死んでも即座に復活できるようにする事と、肉体強度をガンダムファイター並には出来ましたが、あんまり実感はありません。上がったの強度だけだし。
アクシズとの連絡を考えて木星のエウロパにプラントを建設し、同時に火星・木星との連絡のためにパッシブジャンプゲートを作って見ました。これで、移動によるタイムロスが軽減できることは、こっちの行動をごまかすのに役立ちそうです。
今回、有り難味を実感したのは重力制御技術a。ジオン側での機体としているR-3型に乗っても、まるでGを感じないので操縦が楽で楽で。これだけパイロットに対する負担が少ないなら、ジェネレーターの出力が少々低くても、推力さえ確保できれば無双が可能かもしれない。
うん、目指せNT-D無双で頑張ってみましょう。