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No.22507の一覧
[0] 機動戦士がんだむちーと【多重クロス】[Graf](2014/07/27 19:00)
[1] 第02話[Graf](2010/11/08 12:16)
[2] 第03話[Graf](2010/10/18 06:59)
[3] 第04話[Graf](2010/11/08 12:16)
[4] 第05話[Graf](2010/11/21 08:24)
[5] 第06話[Graf](2010/10/21 09:52)
[6] 第07話[Graf](2010/10/23 23:30)
[7] 第08話[Graf](2010/11/08 12:17)
[8] 第09話[Graf](2010/10/23 08:33)
[9] 第10話[Graf](2010/10/23 17:06)
[10] 設定集など(00-10話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[11] 第11話[Graf](2010/10/27 05:15)
[12] 第12話[R15?][Graf](2010/10/27 05:16)
[13] 第13話[Graf](2010/10/25 21:22)
[14] 第14話[ネタ][Graf](2010/11/08 12:17)
[15] 第15話[Graf](2010/11/08 12:17)
[16] 第16話[Graf](2010/10/30 21:19)
[17] 第17話[Graf](2010/10/30 15:05)
[18] 第18話[R15][Graf](2010/10/30 21:24)
[19] 第19話[Graf](2010/10/30 21:21)
[20] 第20話[Graf](2010/10/31 14:30)
[21] 設定集など(11-20話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[22] 第21話[Graf](2010/10/31 14:31)
[23] 第22話[R15][Graf](2010/11/12 11:21)
[24] 第23話[Graf](2010/11/12 11:21)
[25] 第24話[R15?][Graf](2010/11/08 12:18)
[26] 第25話[Graf](2010/11/02 16:55)
[27] 第26話[Graf](2010/11/06 10:59)
[28] 第27話[Graf](2010/11/08 12:18)
[29] 第28話[Graf](2010/11/06 11:01)
[30] 第29話[R15?][Graf](2010/11/03 12:00)
[31] 第30話[Graf](2010/11/08 12:19)
[32] 設定集など(21-30話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[33] 第31話[Graf](2010/11/06 11:08)
[34] 第32話[Graf](2010/11/06 21:39)
[35] 第33話[Graf](2010/11/07 16:59)
[36] 第34話[Graf](2010/11/08 02:01)
[37] 第35話[Graf](2010/11/09 05:33)
[38] 第36話[Graf](2010/11/09 05:32)
[39] 第37話(R15 一年戦争終了)[Graf](2010/11/10 21:11)
[40] 設定集など(31-37話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[41] 第38話(R15 戦間期前半)[Graf](2010/11/12 11:25)
[42] 第39話(R15)[Graf](2010/11/11 10:20)
[43] 第40話[Graf](2010/11/11 23:02)
[44] 第41話[Graf](2010/11/12 11:41)
[45] 第42話[Graf](2010/11/15 04:51)
[46] 第43話[Graf](2010/11/14 12:40)
[47] 第44話[Graf](2010/11/15 04:52)
[48] 第45話[Graf](2014/07/29 19:39)
[49] 第46話[Graf](2010/11/15 04:53)
[50] 第47話[Graf](2010/11/14 12:44)
[51] 第48話[Graf](2010/11/15 21:23)
[52] 第49話[Graf](2010/11/17 12:03)
[53] 第50話[Graf](2014/07/29 19:39)
[54] 設定集など(38-50話まで)[Graf](2014/07/27 07:35)
[55] 第51話[Graf](2010/11/20 12:13)
[56] 第52話[Graf](2010/11/19 21:13)
[57] 第53話[Graf](2010/11/20 12:18)
[58] 第54話[Graf](2010/11/20 18:20)
[59] 第55話[Graf](2010/11/23 16:11)
[60] 第56話[Graf](2014/07/29 19:39)
[61] 第57話[Graf](2010/11/23 16:12)
[62] 第58話[Graf](2010/11/25 23:37)
[63] 第59話[Graf](2010/11/27 14:09)
[64] 第60話[Graf](2010/12/02 03:42)
[65] 第61話[Graf](2010/12/05 19:08)
[66] 第62話[Graf](2010/12/05 20:11)
[67] 第63話[Graf](2010/12/09 23:45)
[68] 第64話[Graf](2010/12/20 04:54)
[69] 第65話[Graf](2010/12/20 06:47)
[70] 第66話[Graf](2011/02/09 20:31)
[71] 第67話[Graf](2011/02/24 22:50)
[87] 第68話[Graf](2014/07/27 03:12)
[88] 第69話[Graf](2014/07/27 07:31)
[89] 第70話[Graf](2014/07/27 07:31)
[90] 第71話[Graf](2014/07/27 07:32)
[91] 第72話[Graf](2014/07/27 07:32)
[92] 第73話[Graf](2014/07/27 07:33)
[93] 第74話[Graf](2014/07/27 18:50)
[94] 第75話[Graf](2014/07/27 18:51)
[95] 第76話[Graf](2014/07/27 18:52)
[96] 第77話[Graf](2014/07/29 19:40)
[97] 第78話[Graf](2014/07/29 19:40)
[98] 第79話[Graf](2014/07/27 18:53)
[99] 第80話[Graf](2014/07/27 19:00)
[100] 設定集(51-80話)[Graf](2014/07/27 07:36)
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[22507] 第65話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/20 06:47


「さっきからうろちょろうろちょろ!当たってよ!」

 ヤヨイ・イカルガは上空から降下してきたヒゲのMSを相手に苦戦していた。NTらしき思念は感じないが、感じないくせに動きだけはNT用MSと同じ様な動きをする。腕の有線ビーム砲をするするとすり抜け、マスドライバーのレールを攻撃しながら腕からのビームでこちらに反撃を加えてくる。厄介なのは、この機体は近接格闘戦に特化した機体のようで、それゆえにIフィールダーが全く役に立たないことだ。

 ついに我慢の限界を迎えたヤヨイはIフィールダーのリンクを閉ざすとビグ・ザム2機の遠隔操作を開始。大型メガ粒子砲を援護射撃に、有線ビーム砲と同時に使用し始めた。大型メガ粒子砲の直撃は見込めないから移動を制限するように用い、追い込んだ先に有線ビーム砲のオールレンジ攻撃を加える。

 ところが、其処に上空から二機目のMSがやってきて有線ビーム砲を伸びる緑色の剣で撃墜してしまった。有線コードを斬り、ビーム砲そのものを伸びる剣で貫く。厄介なことに、二機が連携をとってこちらを攻撃してくるからたまらない。二機目のMSも近接戦闘用らしいが、こちらはヒゲとは違って中距離用の装備も持っているらしい。ある程度距離が離れると撃ってくる左腕のライフルが邪魔臭い。

 視界の端にエリク少佐のゲルググが三機目のMSに追い込まれかけているのが見えた。危ない。あの天使のようなMSも危険だ。決意したヤヨイはアインスの背面部に搭載されているショート・ビットを起動した。一年戦争時、エルメスに用いられていたビットの小型版。ジェネレーターを小型化し、推進剤の容量を増やして長時間使用できるようにしたものだ。ゆくゆくはジェネレーターを充電器に交換して更に小型化する案が出ている。

 ショート・ビットが起動し、周囲に乱舞を開始する。有線ビーム砲も加えた、完璧なオールレンジ攻撃だ。しかし、二機のMSはそれを避け続ける。あれ?二機目、剣を二本持ったMSが、一度動きが悪くなってまたよくなった。サイコミュを通して感じられる敵意……困惑?困っている?なんだろうこの感情。けれど、あの機体は狙い目だ。

 感じた内容から二機目―――ヴァイサーガを組し易しと見たヤヨイはショート・ビットと有線ビーム砲の包囲網を徐々に狭めてヴァイサーガを追い込む。同時にヒゲのMS―――ソウルゲインに邪魔をされないように、ビグ・ザムの大型メガ粒子砲と生き残った対空メガ粒子砲を使って、徐々に二機の距離を開かせる。

「こういう時には一機ずつしとめる、常識でしょ!」

 そうした考えはビットに伝わり、これまでとは違って動きがあからさまになる。そこからビットに包囲されかけていると気付いたヴァイサーガが周囲のビットに向けて長く伸びる剣を振るう。剣の軌道が分離したそれぞれのパーツに内蔵されているらしいアポジモーターで微調整されてビットを撃墜し始めるが、一回振るうごとに撃墜できるのは良くて一つ。オールレンジ攻撃の回避優先だから、徐々に追い詰められていくのは変えられない。

 サイコミュのレスポンスのよさにヤヨイは舌打ちするが、いまさらどうしようもない。アインスを上昇させ、ビグ・ザムの対空メガ粒子砲と合わせる形で飽和攻撃を試みるが、この二機、それを避けてくる。いい加減にしろと言いたくなった時、ショート・ビットの反応が3つ、一斉に消えた。

 はっとしてサイコミュに意識を向けると、新たに感じる敵意が一つ。あの天使のMSのものだ。ああ、変なMSに拘っている間に。サイコミュを通じて感じた感情は、あの剣士型のMSに向けた思慕の念と、その機体を守ると言う強い決意。気に入らない。こっちはそうした出会いなんて全然無かったし、声をかけてくれたのはくたびれたオッサンだけだと言うのに。

 そして次に感じたのはこちらに対する強い敵意。理由はわからないが、私と言う存在に対してかなりの敵意を感じている。プレッシャーがサイコミュを通じてひしひしと感じられるが、これぐらいの強さなら大丈夫、とヤヨイは鼻で笑った。高いNT能力を持ってはいるが、私ほどじゃない。

「気に入らない奴、墜ちろ!」



 第65話


「っ!ファンネル!」

 こちらに向けられたあからさまな敵意を感じ取ったハマーンは即座にファンネルを展開する。アンジュルグのフェザーファンネルは12基に対してアインス・アールのそれが20以上、向かってくる。しかし、アンジュルグに達するまでにトールのヴァイサーガとアクセルのソウルゲインが4基ほどを撃墜する。

 いや、それだけではなかった。トールのヴァイサーガがハマーンのアンジュルグの前に立つと、オルゴンソードを掲げて叫ぶ。

「オルゴンソード、モード・ナインテイルズ!」

 声と共に伝わってくる恥ずかしげな感情に苦笑する。スーパーロボット系列の装備は音声入力が基本よ、とは開発調整を行ったセニアの言っていたことだが、トールの趣味には合わないらしい。叫び声と共に幾多の、如何見ても9以上に細かく分かれた刀身がまるで雨のように広がり、振るわれると共にこちらに向かってきたファンネルを一気に10以上叩き落す。

 オルゴン系の武装がイメージによって変われるからといって、こんな。まったく、トールの発想は面白い。そんな感想を抱いたハマーンはファンネルのコントロールに意識を集中し、残ったアインスのショート・ビットに照準を合わせる。数が少ないなら相撃ちでも良い。そう判断したハマーンはわざとフェザーファンネルにショートビットとの位置を調整させて相撃ちにもつれ込ませる。まだ残っている可能性もあるから、まだ気は抜けない。

 でも、これでアインスの手数は減らしたはず。ハマーンはほっと息を吐くとヴァイサーガの援護をすべく、残ったファンネルを従えながらヴァイサーガの後ろに続いた。



「嬢ちゃんも無茶するが、あの装備もいい加減反則だよな」

 そうつぶやきながらアインスの肩に一撃を叩き込んだ機体を離れさせ、射線がかぶらないように機体を地形を利用しながら移動させつつ、アクセル・アルマーは張り詰めていた息をつく。ヴァイサーガとアンジュルグが参戦するまで、一機でアインス・アールを抑えていただけあって疲労の色が濃い。しかし、色とは別に愉快気だった。

「大体、相性が良いんだか悪いんだか、っ!」

 地形を利用して尾根の下から近づき、遠隔操作で動くビグ・ザムの脚部に舞朱雀を叩き込み、両足を切断して擱座させる。しかし、まだ股の間のバーニアが無事だ。アインスの意識がアンジュルグとヴァイサーガに言っている事を確認したアクセルは、そのまま上昇してビグ・ザムのバーニア部分に白虎咬を打ち込んだ。

「腕からのビーム、出力が!?そんな機能が……」

 混線したらしい無線から、操縦者らしき女性の声が響く。そりゃそうだわな。腕からビームで出力調整が可能とか、どこのアクション漫画かと思うだろうよ。しかし、良い一撃だ。にやりと口元をゆがめたアクセルが機体をもう一度谷に沈み込ませるため斜面を滑りながら降りていくと、バーニア部分に直撃を受けたビグ・ザムは推進剤に火が走り大爆発を起こした。

「まず一機、もらった」

 アインスの意識がこちらに向いた事をうなじに感じた寒気で察知したアクセルは、射線をかわす為に谷を縫って機体を動かす。寒気はすぐに消えた。ヴァイサーガとアンジュルグが相手の注意をひきつけてくれたようだ。遠目に見た二機が、如何見ても連携以上の動きを見せてアインスに対して攻撃を仕掛けているのを確認したアクセルは、笑いを大きくしながら二機目のビグ・ザムに近づく。こちらは尾根の上で擱座しているため、バーニアが狙えない。

「砲台代わりに過ぎないってもな、いるだけで邪魔なんだよ、青龍鱗!」

 如何見ても青龍鱗というよりはかめはめ波がお似合いな動きとそっくりの青い光がビグ・ザムを直撃する。大して効いている風には見えないが、直撃の衝撃で機体が動いた。ビグ・ザムへの直撃に初めてアインスの注意がソウルゲインに向く。

「あっ!やられた!」

「そうそう思い通りには行かせないってね!運が悪かったな」

 先ほどから続くアインスの動きから、ヴァイサーガかアンジュルグを一定の場所に追い込んでビグ・ザムの大型メガ粒子砲で片付けようとしていた事などお見通しだ。まだ残っているショート・ビットと有線ビーム砲の動きを見れば、二機が追い込まれるのが避けられないのはわかった。だったら撃つ方を如何にかしてしまえばよい。

「墜ちろ!」

「よそ見してて良いのかな!?真後ろからバカップルのお出ましだぜ!」

 実質一対三の状態となってしまい、そして機体性能とパイロットの腕からして、この状況に追い込まれた以上、アインスに勝ち目は無い。あちらも薄々だが勝ち目が無いことは承知しているらしい。何とか一機、それも動きからしてアンジュルグに狙いを定めているらしいから、こちらはゴキブリのように動いて邪魔してやれば良い。

 アクセルの状況判断は背後からの攻撃に再びアインスが反撃したことで裏付けられた。射線が重なる対空メガ粒子砲をビグ・ザムも放ち始めた。良い傾向だ。そうするより他は無いとは言え、こちらの狙いどおりにことが運ぶのはいい気がする。

「メインディッシュは奴らにやるが……もう一機は俺がもらう」

 アクセルはコクピット内のスイッチ類に手を伸ばし、ソウルゲインのリミッターを解除していく。ジェネレーターの出力制限が解き放たれ、抑え切れないエネルギーが両手のビーム照射口からあふれ、青い光に両手が包まれる。

「リミット解除……」

 ソウルゲインがその言葉と共に空中に飛び上がる。ビグ・ザムの対空メガ粒子砲が撃墜すべく放たれるが、機体各所のスラスターを吹かし、機体を小刻みに動かし避ける。跳躍が頂点に達したとき、シャドー・ボクシングをするかのように両腕を激しく動かし始めた。同時にジェネレーターからのエネルギーに口が開かれる。

「何よ、これ!?」

「コード麒麟!」

 相手の声など気にしない。連続して放たれた片手での青龍鱗がビグ・ザムの機体全体を包み込むように着弾し、センサー類や装甲の弱い部分を貫通して痛打を浴びせる。周囲に着弾したものは砂煙を吹き上げ、機体の姿を隠した。ビグ・ザムの姿が砂煙に包まれる直前にソウルゲインが接近する。

 ビグ・ザムの頭部に踵落し。上空からの加速がついた踵はビグ・ザムの頭部を粉砕すると機体に脚部を大きく沈み込ませて停止する。そのモーションから回し蹴りにつなげ、ビグ・ザムから機体を離すと再接近。ソウルゲインは振りかぶった拳を連続してビグ・ザムの巨体に叩き込む。一発ごとに装甲を大きくへこませ、擱座した状態から谷へと転げ落ちるビグ・ザム。そこにソウルゲインは機体を回転させて蹴りを叩き込んだ。大型メガ粒子砲の発射口に突き刺さる。

「そんなMSの動きってアリなの!?」

「知るかよ、でぃぃぃやっ!」

 ビグ・ザムに深々と突き刺さった脚をそのままに、谷の斜面を掴んでビグ・ザムの巨体を蹴り上げる。両腕を交差させてブレードを高速振動モードに切り替えたソウルゲインは、機体を浮かせたビグ・ザムにとどめの一撃を叩き込んだ。ブレードがビグ・ザムの巨体に深く食い込み、長さの関係から両断とまではいかなかったものの、中心部を深々と抉られ、断たれたビグ・ザムはその部分を中心に真っ二つに折れながらゆっくりと崩れ落ち、大爆発を起こした。

 アラーム。どうやら、麒麟に熱を入れすぎて機体のどこかに異常が発生したらしい。アクセルは鼻で笑うと機体を引き下がらせた。あとはあの二人に任せておけばよい。俺の仕事はこれで終わり、だ。



 目の前で大爆発を起こしたビグザムに気を取られた隙を突き、接近する二機に対する反応が遅れた事にヤヨイは絶望した。目の前で連邦軍のMSを、ソロモンで紙くずのように撃墜したはずのビグザムがたった一機のMSに二機も撃墜されたことが信じられなかったためでもあるが、それは致命的なミスにつながってしまった。

「ビット……数が少ない!」

 墜されすぎた。牽制か一刺しに使わないと!これまでのビット使用を機体各所のメガ粒子砲、有線ビーム砲との併用に切り替えるヤヨイ。しかし、二機の敵機には堪えた風がない。こちらの攻撃を先読みでもしているのか、小刻みな動きで避けてくる。しかも、後方の天使型は機会あればこちらのビットとビーム砲を狙ってくる。なんとかして剣士型を近づけようとしているらしい。

「あの天使だけじゃなくって、剣士の方もニュータイプとでも言う気っ!?」

 まるでダンスでも踊っているかのように避ける二機。厄介なことに、片方に対する攻撃をもう片方が阻止する形を繰り返して接近してくる。ビームを弾くらしいマントでこちらのビームを遮ったかと思えば、後ろからのサイコミュ兵器でビットや有線ビーム砲を撃墜する。背後からの一刺しを狙ってビットを天使型に動かせば、伸びた緑色の剣がそれを撃墜する。嫌になってくる。

 その互いを重んじた動きにヤヨイは苛立ちを隠せない。薬物によって強化された精神は、刷り込みによって更に狭められながら強められ、彼女に素質以上のニュータイプ能力を与えている。彼女の場合、強められた精神は出世欲―――もっと言えば他人に認められたいと言う感情だ。だからこそ、同じニュータイプであり、そして"誰かに"認められているらしい天使のMSに対して敵意を抱く。

 理由はそれだけではない。ジオンの理想などにかけらほどの価値も見出していない彼女に取り、この戦いに参加した第一の理由はエリク・ブランケだった。家柄もよく、地位も高い。自分には無かったものを持っている人間に自分を認めてもらうことの喜び、それを彼女はこの作戦の前に知ってしまった。エリクがかけた優しげな言葉を薬剤の助けもあって拡大解釈させたのだ。

 彼女の認識においては、天使のMSはそうした思いを抱いた男性を傷つけた許されないMSなのだ。そしてその思いは天使のMSを守るように剣を振るう剣士型のMS―――ヴァイサーガに対しては更に強くなる。これ以上ない邪魔者ゆえに。"自分"が失ったものを、"敵"が持っている証だから。ニュータイプ能力で解る。あの剣士型は、あの天使型にとっては、私にとっての少佐以上だと。

「墜ちなさいよ!」

 不意にヴァイサーガが消えた。そして次の瞬間、機体を揺るがした大きな衝撃に、彼女は体を激しく目の前のコンソールにぶつける。シートベルトが体に食い込み、衝撃で強められたGが彼女の体に切り裂くような痛みを与える。気がつくとアインスの左肩が外れ、谷に落ちながら爆発。更に機体が揺さぶられた。

「どこ、何処よ!?」

 左側に確認した機体が消え、右側に現れると同時に蹴りを放つ。アインスが反時計回りに回転し、体に更なるGがかかる。甚振ってでもいるつもりか。回転する機体を立て直しながら、腹部の拡散メガ粒子砲を放つが当然命中はしない。スラスターが巻き上げた砂煙に直撃し、空中に火花を散らす。いけない、見失った……

 下!?

 機体の下側に敵意を感じたヤヨイがアインスを地面に向けた時、通信から掠れた声で叫び声が聞こえた。

「……コード入力、光刃閃」

 その声が終わると同時にアインスに連続した衝撃が走った。斬られている。そう感じながらコクピットの側壁に大きく体をぶつけたヤヨイは意識を失った。




 1回目、下から斬り上げた剣が、Iフィールダーの主要構成部品であるフィールド発生装置が収められている機体下部を両断。
 2回目、オルゴン・クラウドで背後に移動し、右肩部分を斬りおとす。
 3回目、機体下部のスラスター類を推進剤タンクごと斬りおとす。
 4回目、2回目と同様にオルゴン・クラウドで移動しアインスの真正面から、袈裟懸けに五大剣を振り下ろす。ジェネレーターに沈み込んだ事を確認すると、即座に刃を返して斬り上げ、コクピットがある頭部を斬り離す。

 都合4回の移動で5回の攻撃。目標は9回だったが今の俺ではこれが限界か、オルゴン・クラウドを使っているのに。ハマーンの援護が無ければビットとビーム砲の雨の中を接近するのは難しかった。下手にオルゴン・クラウドを見せるわけにもいかなかったからだ。先読みで出現位置を読まれて大型メガ粒子砲でも叩き込まれたら洒落にならん。

 しかし、なんとかヤヨイ・イカルガの命は助けられたように思う。この後の面倒を考えれば……斬っておくべきだったか?いや、よそう。その時はその時だ。ジオン軍の技術が高まっているだけの話じゃないぞ、これは。アインスの性能が実現したことはほとんど、α・アジールに近い。Iフィールダーを含めればそれ以上だ。インフレか、考えたくも無い。

「とどめは天空剣・Vの字斬りですか」

「……せめて柳生新陰流、逆風の太刀と言ってくれ」

 キットの入れてくる茶々に疲れと感謝を隠せない。話を上手く逸らしつつ、こちらのネガティヴ思考を引き戻してくれる。人の気持ちが解るA.Iか。キットの言葉に感謝しながら、思考を切り替えてモーションデータの一件を思い出す。相も変わらずセニアには世話になっているんだか弄られているんだかわからない。

 モーションデータの入力に時代劇を使うなら解るのだが、何故かセニアはスーパーロボットアニメを使いたがる。この"逆風"のデータにしてもそうだ。Vの字斬りね!、とアニメそのままに敵の機体に深々と剣を沈み込ませてから機体をかがめてジャンプし斬り上げるなんて設定が最初にやってきた。

 勿論駄目出し。そんなこと、引火爆発が怖くてやってられないと思うのは俺だけだろうか。ところが、彼女はその袈裟懸けで斬り下ろし、その後に上に返すというモーションはそのままに、モーションそのものの動きを早めることで如何にかしてしまった。やはりマッドだ。

 ……あれだけ嫌だったのに、音声入力も変えてくれないし。ゲッタービームとかも実用化できるんだろうか。……しかねないな。腹丸出しの格好で叫ぶのはまだしも、セニアならば紙屑同然の、コクピットまで簡単に攻撃が届くあのスーパーロボット装甲を実現しそうで……いかん、考えるのはやめよう。

「柳生流の"逆風"では、袈裟懸けは誘い水でしょう?狙いも両腕ですし。あなたの行った行為はそれではありません」

 キットの話が意識を元に戻す。しかし、流石に真面目に答える気にはならない。それに、こちら側もセニアを責められない理由がある。モーションデータの撮りの際には色々と無理を聞いてもらったし。

「頼むからそういうことにしておいてくれ。あれも、一応"逆風"であることに違いは無い」

 イメージの元ネタが隆慶一郎氏の名作、"柳生非情剣"の方の逆風の太刀とは言えなかった。キットの持っているデータは基本現実のものか、映像によるデータが元だから文学作品上のデータが少ない。ヤヨイ・イカルガの命を助けるためには頭部のコクピットを爆発する機体から切り離す必要があり、その目的に合ったモーションがそれだったと言うだけなのだ。

 ……まぁ、自分に時代劇好きの気があることは否定しない。円月殺法なんてネタ動作は回避しますけど。回転させている時間=斬ってください時間に思えて仕様が無い。

「トール、終わった?」

 ハマーンからの通信。アクセルは……ああ、麒麟の使用でオーバーヒートを起こしたのか。しかし、通信でバカップルだ何だと好き放題言ってくれる。そこまであからさまではないと思っているんだが。それに、バカップルというのは、ペアルックだの惚気話が終わらないだの独特の愛称で呼び合うなどの条件があるのに……

「トール!」

 返事が無い事を不満に思ったらしいハマーンが怒鳴ってくる。苦笑しながら返事をすると、不満気に鼻を鳴らしている姿が伝わってくる。

 ……どうやら、戦闘中に感じたザビ家やジオンに対する悪意は勘違いのようだ。ファンネルを動かすためのイメージングのやり方の一つ、と言うところなのだろう。心配になるし気に入らないが、やりやすいと言うならば仕方が無いのかもしれない。

 ため息を吐いた私はヴァイサーガをキットの自動操縦モードに変更し、機体を回収地点に向けて動かす。今頃、マスドライバー施設はソフィー姉さんの遊撃隊が"祭り"を行っている時間だろう。占拠なんてしていたジオン残党が可哀想になってきたが、生物兵器の散布などと言う馬鹿げた作戦を取る奴らに遠慮はいらない、とは姉さんの言だし、それは当然の認識だ。

 そこまで思った瞬間、マスドライバーの加速器が大爆発した。えらい事にレール式のレールまで、まるでオーブのウズミ代表の回よろしく大爆発。どうやら、過電流を流して加速器をショートさせる手に出たらしい。それが、どこかに"おいてあった"爆発物に引火して……多分そんなストーリーで言い訳するんだろう。用意の良いことに、ジオン印の爆発物なんかを使用して。絶対に茨の園で確保した奴だ。

「トール、あれ、ソフィー姉さんの……」

「……コメントしたくない。ああ、下手したらまたミツコさんに借金を……」

 口調とは裏腹に深く深呼吸し、もう一度ため息を吐く。姉さんに心配をかけてしまったことを自覚させられた。加速器を爆破して"憂いを断った"のは、こちらがいなくなった後で"何処からか来た奴ら"が二度目の使用を考えないように、という用心。爆破させて使い物にならなくすれば後腐れがないというわけだ。

 ……この先、一生頭上がらないなぁ。っていうか、頭上がらない人多くないか?

 慰めるようにアンジュルグを寄せてくるハマーンに、更に落ち込んだことは深く胸に仕舞いこんだ。 



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 とりあえず前半戦終了です。年末年始はかなり忙しいので間がかなり空きます。御了承ください。





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