「コロニー、フォン・ブラウンへの落着まで残り208分!」
「間に合わんか!」
コロニー追撃部隊を率いるヘボン少将の艦隊はコロニーがフォン・ブラウンへの落着阻止限界点ギリギリにまで到達する段階でようやくコロニーに追いついた。しかし、既に月の重力圏への侵入を開始しているコロニーに有効な打撃を与えるだけの距離までには達していないし、今からの攻撃で有効な打撃を与えられるわけが無い。
このままフォン・ブラウンに居住する3億の人口を見捨てる他に方法は無いのか、と思われたそのとき。月から赤い光が照射され、コロニーのミラー部分に反射、コロニー内に光が注がれた。
「月、イグニッション・レーザー施設稼動!」
「奴ら、軌道変更をかけるつもりか!」
フォン・ブラウン側の判断は誤っていない。デラーズ・フリートが最終軌道調整に用いるであろう推進剤に点火することが出来たなら、急制動をかけてフォン・ブラウンへの落着を阻止できる可能性があるからだ。
「イグニッション・レーザー、ミラーに反射して推進剤搬入口に照射されています!」
「……まさか、嵌められたのか!?」
ヘボンの推測は的外れではない。この段階でイグニッション・レーザーがミラーに反射してコロニー内部に照射されたことはよしとしよう。しかし、こう都合よくレーザーの照射ポイントに推進剤への搬入口があるとは思えない。となれば、フォン・ブラウン、もしくはフォン・ブラウン市内にジオン残党とつながっている人間がいるということだ。
となれば!?
ヘボンの推測は次に移る。レーザーの照射目的が問題だ。当然、ジオン残党とつながっている人物がフォン・ブラウンにいるとすれば、照射目的はコロニーの落着阻止などではない。別な目的の為にレーザーを照射したのではないかと考えるのが普通である。そして、この段階で照射する目的は、まさか!?
「いかん!後続の艦に月の重力圏への侵入を停止するように伝えろ!」
「無理です!侵入速度が……」
その会話が行われた瞬間、コロニーの推進剤に点火が始まった。前部と後部それぞれの推進剤に点火が行われ、後部は上方に噴射を行いコースを変える為の噴射を開始する。そして前部は―――急制動どころの噴射ではない。完全にコースを変えるための噴射だ。あの噴射量であれば、月の重力圏すれすれを掠める―――重力ターン!?
「コロニー、重力ターンを開始!予想進路出します!……これは、地球への落下コースです!コンピューターの計測によれば、月への落着は阻止、月の重力圏を使っての重力ターン加速を行っています!……地球です!三度計測しましたが、コロニーの進行目標は地球!地球の重力圏を目標にコースを変えています!」
「進路予測出せ!それから、地球の第一、第二軌道艦隊に連絡!阻止限界点の算出急げ!地球に落下するとなれば、軌道上での迎撃態勢を……」
オペレーターの指がピアノを奏でるように動き続ける。恐らく、必死に、急いでコースと阻止限界点までの時間の計算を行っているのだろう。そこに航法士官からの報告が入った。
「艦隊のほぼ半分が重力圏への侵入コースを取っています!推進剤が不足して離脱不可能です!もう半分も、現在の推進剤量では地球までの航行が出来ません!」
「ならば早速フォン・ブラウンとNシスターズに連絡を取って推進剤の補給に船を回すように伝えろ!月の第一と第二艦隊は……」
「第二艦隊は追撃に入っています!第一艦隊は……参謀本部より連絡!ジオン残党の作戦計画を、茨の園攻撃より戻った月第一艦隊が基地内で発見!ジオン残党別働隊が、グラナダ近郊のマスドライバー基地を使って生物兵器の散布を狙っています!……コロニー落しとの同時並行作戦です!」
ヘボンは頭をかきむしった。ミューゼルが月をがら空きにした理由がわかったのだ。おそらく、この作戦について何らかの情報を得ていたに違いない。ソロモンへの核攻撃前もそうだ。あいつは、Nフィールドへの部隊配備を願っていた。其処からGP02が突入したとなれば、計画についても知っていたのだろう。
しかし、それを何故明かさなかった!?これでは……これでは……
「これでは、軍閥政治ではないか!?」
ヘボンの叫びは、悔しげな内容と共に月に映るコロニーに向かっていた。
第58話
「候補者に聞きます。フォン・ブラウンへのコロニー落着まで残り200分と言う時間に、ここまで来たのは如何してですか?」
システムが安置された部屋に入ってすぐ、こちらの存在を感知したのか、システムのコンソール・モニターが点灯し、日本語で表記されたその内容が表示された。どうやら、いらぬ前置きは必要ないらしい。
「如何したか、とは何だ?」
「直截に言います。候補者は月へのコロニー落しの可能性がある現在、その対処に赴くべきです。システムが候補者の意志に介入していた事が発覚した事件以来、候補者の行動には変化が見られます。今回のコロニー落着にしてもそうです。本来ならば、様々な事態に対策を取れる技術や勢力を保有しながら、候補者はあえてコロニー落としと生物兵器散布のどちらかを選ばねばならない状態に自らを追い込んでいます。そのような事態を招いた介入姿勢は危険と判断します。そして、そのような判断を取るように候補者が変化した、とシステムは捉えています」
変化、か。ものは言い様だ、と思いつつトールは言った。そして、システムに焦りが出ている。こちらがどちらかを選ばねばならない状態に自らを追い込んだ?良い傾向だ。
「変化が出て当然だ。それだけの事をしたのはそちらだろう」
「納得します。しかし、それだけではないと判断します。候補者の行動には乖離が見られます」
乖離。確かに行動が矛盾していることは認めるが、乖離とまで言われるとは思ってもいなかった。
「乖離とはどういう意味だ?」
「候補者は自身の行動に自由を確保しようとするあまり、行動の自由確保が最優先となり、自ら自由を失う行動に出ています。危険です」
その言い様が少し気に障った。こちらが要求どおりに数的減少を図っていたのに、システムはこちらを操ろうとした。それに対する対策を採ろうとすれば、それを行動の自由確保とだけ評価する。そもそも、そうした自由の確保も、システム側がこちらへの介入を図ろうとしなければ考えもしなかった内容だ。しかし、これは良い傾向だ。やはりシステム自身に焦りが見える。第一段階は成功と見て良いだろう。
「ふざけるな!変えたとしたら貴様のせいだろう!?」
挑発的な言辞を弄してみる。システムが人と同じような知性を持つと言うことは、人と同じような失敗をする可能性がある、ということになるのか。まず第一に明らかにしておくべき問題だ。
「肯定します。しかし、候補者との交渉においては、以後候補者の自由意志に介入しないことを約束いたしましたが」
「意志に介入しないことを決めただけだろう」
「しかし、候補者にはシステムに対する疑念が生じていると判断しました」
「そうだ」
その点は同意する。私自身への行動の介入が明らかになって以来、システムは完全な味方ではなく、人類の数的減少という一目的を達成するための協力者という点にまで評価が下がった。そして、その際にこちら側への介入を行った、敵でも味方でもない存在となった。となれば、疑念を抱くのは当然だ。
そして、その疑念が片付くまでは下手な行動は取れない。
「候補者はガンダム開発計画に当初から参入を可能にするだけの時間がありながら行動を起こしませんでした。何故ですか?地上でGP02を阻止すれば、コンペイトウの被害は防げたはずです。キンバライト鉱山基地の場所も特定していますので、破壊活動は可能なはずです。候補者には水天の涙作戦を阻止する充分な時間があったのにそれをなしませんでした。何故ですか?マスドライバーについてはNシスターズは候補者が、フォン・ブラウンは連邦軍月面第二艦隊が守っており、ジオン残党の襲撃の可能性はグラナダに限定されています。グラナダのマスドライバーを事前に破壊しておくことも可能だったはずです。候補者はコロニー移送計画を中止させませんでした。コロニー移送計画に介入してコロニー落しを防ぐことも可能だったはずです」
システムの表記は続く。確かに、ソロモンの被害について言い訳は効かない。しかし、これから明らかになる内容次第では"絶対に出た"損害になる。ソロモンの時には出なくとも、以後必ずどこかで出た損害に。
「しかし、候補者はその全てに行動を起こしませんでした。候補者はソロモン攻撃時に自身のポイント補助解除状態における、宙間戦闘力の無さを理由に茨の園攻撃を行いました。不要な作戦をあえて行った理由は何ですか?星の屑作戦の計画書がシーマ艦隊がいないため、ワイアット大将やバスク・オムなどを通じて連邦軍にわたっていなかったことのアリバイ作りだということは解りますが、あなた自身が参加する必要は無い戦闘です」
やはり、このシステムには高度な知性がある、と再確認する。私の0083におけるこれまでの行動の問題点を洗いざらい列挙してくれている。しかし、そんなことは想定内だ。そして、これほどまでにこちらを細かく見ているというのなら、今の行動の問題点も明確に解っているだろう。
「答えはわかっているんじゃないのか」
「……世界、システムに対する不信感、及び、自身や周囲に対する不信感が原因でしょうか」
頷いた。そうだ、それこそが一番の根源だ。本来ならば、こんなところで水天の涙が生ずるはずは無い。アレは81年におきていなければならないはずだ。ジオン残党の戦力がア・バオア・クーで減少していないなら、もっと早まっても良いはず。こんなところで同時実施されるいわれは無い。となれば、何らかの路線―――シナリオに基づいている可能性がある。こちらとは別の。
システムは、それを整合性をとるという表現で過去に言った。"整合性"。"修正力"ではなく、"整合性"と。"修正"、つまり無かったことにして元に戻すのではなく、"整合"、整え、バランスをとる、と。問題は、その整合性が一体どのようなものか、だ。以前に話したときはこちら側への介入を避けるだけで手一杯、というよりも頭が一杯だったが、整合性を取るということがどういうことかは確認しておく必要がある。
だからこそ、自身や周囲への不信感だの自縄自縛だのというカヴァー・ストーリーを作り上げた。そしてそれを信じていると言うことはなるほど、契約どおりに人の内心に触れてはいないらしい。まずはそれが一点。システムが候補者に嘘をつく可能性は否定された訳だ。
そんな内心を知らず、システムは言葉を続ける。
「候補者は、システムの介入が行われた段階から、そうした不信感に取り付かれています。自身の相対するキャラクターが仮想の存在ではないのか、候補者の自由意志を否定することの無い介入が、結果として候補者の自由意志を限定するのではないか。自身の行った介入に対する反作用が、思わぬ結果に通じるのではないか」
「人の心を読めるのか」
まさにこちらがやった推論と同じ経路をたどっている。少なくとも、人間と同程度の知性を持っていることは明らかだ。整合性がどのようなものかは知らないが、もとの歴史とバランスをとろうとすれば、そしてそれが、世界の修正力とやらではないとするなら、何らかの介入を"私以外"の"格"が行っている可能性がある。整合性という言葉が持つ意味はそういうことだ。システムを扱わないが、歴史を出来うる限りもとの方向へ治そう、あるいは変えられた歴史とバランスをとろうとする"別の格"が存在していることになる。
「これはシステムの推論です。候補者との契約に自由意志への介入が禁じられた以上、候補者の自由意志を読み取ることは介入の一手段となりえます。候補者の行動が変化した時点とその後の行動から推測した結果に過ぎません」
「其処まで推論が出来るなら、今回の俺の行動の理由も大体わかっているんだろう?」
「ガンダム開発計画に参加しなかった理由はアナハイムとのバランスを考えた、と言うことで納得できます。このままではアナハイム・エレクトロニクスの軍需部門は高い確率で廃業を余儀なくされたでしょう。しかし、GP02の強奪事件には介入の余地があったはずです」
「……介入してコーウェンとの関係を崩したくなかった」
「しかし、あなたはトリントン近郊に戦力を送り込むことが可能でした。強奪事件を看過したのは、一定程度まで、ソロモン核攻撃を行わせるつもりだったのでしょう?……いいえ、違いますね。あなたは、アナベル・ガトー少佐との接触を恐れた。ガトー氏と接触し、連邦軍のトール・ミューゼル少将が、ジオン軍のトール・ガラハウ少将であることが発覚する事を恐れましたね?」
確かにそれも一因だ。しかし、本当の理由ではない。今回の一連の行動の理由は、蝙蝠である自分に対する不信感や疑惑、自己嫌悪といったものからも出ているが、それらはカヴァーにまわした。なぜなら、周囲が、そう信じやすいから。
本当の目的は様々に改変の仕方を変えることで、整合性というものがどういう形を採って出てくるものかをみること、だ。そして思ったとおり、こちらが最後の最後、ソーラ・システムⅡ照射の段階で一気に巻き返しを図ると見るや、水天の涙を同時並行で起こしてきた。これで、こちらが知りたい情報は確認が取れたのだ。
0083を通して解ったことは多い。まず、積極的に関わらなかったトリントンでは改変は最小限に抑えられた。これは、候補者が関与するだけでなく、その積極性が改変に大きく作用している事を示す。関わらなかったキンバライトは歴史どおり。関わらなければ基本的に歴史に順ずると言う事だ。そして整合性を取る側に対しての介入だった北欧基地襲撃。こちらは半々の結果。"候補者"側と"整合性"側との激突では、こちら側の意図とは半々になる可能性が高い、もしくは、全くの中立か。
宇宙に上がってからは、やはり関わらなければ歴史に順ずる事がアルビオンを見て解った。しかも、こちら側の改変結果に基づく変化だ。シーマ艦隊を引き抜いたのに、GP01は大破した。しかし、ニナ・パープルトンの件を見ても解るが、細部までには及ばない。いや、一年戦争でガトーに関わったことが反映しているなら、改変された後に整合性を受けた歴史は"確定"する訳だ。
ソロモンで判明したのは"候補者"側の"代理介入"では、やはり関与の度合いによって改変結果に影響が出ると言うこと。ヘボン少将への要求はきちんと出しておいたが、やはり制限が加えられたようだ。
そして茨の園への攻撃は"歴史に全く関係ない"行動をとった場合。これは候補者、もしくは改変した側の意志に順ずる形になった。しかも、茨の園から得られたものは多い。となれば、"歴史に関係ない行動"を積み重ねて改変とすることも出来る可能性があるだけでなく、歴史に無い行動の改変はこちらの思うとおりになりやすいということだ。テラフォーミングが良い例だ。
そして最後にコロニー・ジャックとフォン・ブラウン。関わらなければ歴史通りの確証が得られた。茨の園から得た、星の屑の作戦計画書からも、アクシズに送り込んでいた諜報員からの報告でも、だ。星の屑の本筋に関わらなかったから、星の屑の大筋は変化しなかった。しかし、関わった水天の涙はマスドライバーによる軍事施設爆撃から生物兵器散布へ規模が拡大した。
そして、もっとも積極的に関与する事例であるソーラ・システムⅡで水天の涙が並行して起こるという"整合性"が出てきた。"歴史上の事件"で、"候補者が積極的介入"を決定し介入した、もしくはする事件。それが、"整合性"が最も強く現れる事例なのだ、という確証が得られたことは大きい。また、改変した結果が必ず整合性につながるわけではなく、改変する可能性が整合性につながること、及び、改変と整合性の順番は一対であっても必ずしも後先が決まっているわけではないこと。"敵"の出方を洗い出すことが出来たわけだ。
残った問題は、それにシステムが関与しているかしていないか。もっと言えば、システムもしくはシステムの設定者=整合性をとる側か。だからこそ、システムを"騙す"必要があった。システムが"騙されていない"一年戦争と比べると、やはりシステムはある程度中立性を維持しているらしい。そしてそのことは、"整合性"を俺に理解させてくれることになる。
考えを進めている間も、システムは表示を続けていた。
「システムに対する疑念から生じた疑心暗鬼は、一年戦争中にとった行動全てに対し波及する。その中で、自身の倫理観からして許されない行為である二重の裏切り―――最後の最後で片方への裏切りに修正することは出来たようですが―――……してやられました」
「……話している間にも推論か、よほど頭が回るようだな」
「肯定的に受け取っておきます。なるほど、あなたの行動が理解できました。北欧のジオン軍基地を攻撃してキンバライトを攻撃しなかった理由、ソロモン核攻撃を前に茨の園攻撃と言う支作戦に、わざわざサイトロンを切った状態での地形適応力の低さを理由に参加しなかった理由も、今回、ソーラ・システムⅡでの迎撃を最後まで追っておきながら、水天の涙作戦への攻撃を選択した理由も……なるほど」
システムは一人で納得して言葉を続ける。よし、二番目のカヴァーに上手く嵌ってくれた。
「理解しました。あなたは今期において、アナベル・ガトーと接触する全ての可能性を排除しようとした。だからあなたは"水天の涙を放置した"。そうすれば、水天の涙という作戦に参加することでアナベル・ガトーという、"トール・ガラハウしか知らない者"、"トール・ガラハウに無条件の信頼を寄せるもの"との接触の可能性がなくなるから。あなたは、"蝙蝠である事をこれ以上なく突きつけてくる"あの存在と向き合う事を避けている。候補者の内心が、一年戦争でとった行動に縛られていると言う点は予測していましたが、これほどまでに深く拘束されていたとは。推論だけでたどり着くのは予想外に時間がかかりました。周囲の人間の内心に手を伸ばすことも考えましたが、候補者との契約関係に支障をきたすと考え、自重しました。その判断は、間違いではなかったようです」
周囲の人間に手を伸ばす、といった瞬間の変化をシステムは見逃していなかったようだ。表情には出していないが、筋肉が緊張し、血圧が下がるのが自分でも解った。そうした変化を、このシステムは機械として捉えることが出来るわけだ。
そして介入したもしくは介入してしない事例を総合すれば、こちら側の情報はある程度整合性を取る側にも伝わっていると考える必要がある。逆に、こちら側があえて反応することで、誤反応を起こさせる可能性も確保できた。
まだこちら側の思惑はシステムには通じていない。整合性を何とか取ろうとしている存在がいることは明白だ。そして整合性を取る以上、生き残った人類の数を減らす―――システムの目的と乖離した行動をとることが可能性としてある。そこも知りたい。最終的にシステムは整合性の側に立つのか、それともこちら側に立つのか。
「システムとしては、候補者がそのような認識で行動することは、システムの目的に沿わないと判断します。警告対象です、候補者。あなたは誤った認識で行動しています。今回の一件で候補者は、候補者の内心に生じた疑念を理由に、地球人口の減少につながりかねない事態を生起しました。これはシステムと候補者に対する重大な契約条項の違反です。しかし、候補者の内心にそのような疑義を生じさせたのはシステムの行動の結果であり、システムは再度候補者に契約を更新するかを尋ねます」
「どういうことだ?」
「あなたが望むのであれば、ここで契約を打ち切ることも可能だと言うことです。勿論、契約を打ち切った場合、あなたの存在は消え去ります。あなたのこの世界で過ごした100年近い人生の記憶は消去されます。どうしますか?」
よし、かかった。焦りが脅しに変わった。人間に近いシステムならば、人間と同じような反応やエラーを起こす可能性の確証が取れた。警告ではなく、一足飛びに契約破棄にまで言及してきたのが証拠だ。
さて、洗いざらいとはいかずとも、吐ける内容は吐いて貰おう。