わかっていても、やはり辛い。
死んだ人間の数が歴史どおりとは段違いであっても、やはり眼前の光景は我慢ならない。
コロニーに対して毒ガスを注入し、目の前で1000万の人間が死ぬ光景をガラス越しに見ているなど。
「予定通りに行けばあと3時間ほどでブースターの設置作業が終了します。」
ここは戦艦グワデンの艦橋。司令席にはデラーズ少将が、脇の参謀長用の席に着かせてもらっているのが私、トール・ガラハウ大佐。別に親衛隊の参謀長になった訳ではないが、以前まで参謀長だったノイエン・ビッター大佐が昇進の上、第3突撃機動師団長になったため、空席のままなのだ。ここのところ、中堅士官以上の人材が少ない、ジオン軍の無理が出ている。
目の前の虐殺の光景に嫌気がさしてきたため、ため息を吐いてタバコをくわえようと(すいません、私はヘビー・スモーカー)したら、後ろでジオン軍での副官を勤めている、ケン・ビーダーシュタット中尉が咳払いをした。いかんいかん。ここは「マレーネ・ディートリッヒ」じゃなかった。
「ガラハウ大佐、不謹慎だぞ」
「申し訳ありません、少将。少し精神を落ち着けようかと」
予定通りならこのブースター設置作業はキシリアの管轄だったはずだ。それが彼女の部隊がいないため、親衛隊がこの作業を行う手はずとなっている。まったくあのオバハンは。ブースターの輸送船だけ先行とか何を考えているんだか。権力闘争は戦線が安定してからにしろと。
デラーズはため息を吐いた。どうやら、大佐といってもまだ若いため、いくらか割り引いて考えてくれたようだ。場を和ませるために従卒にコーヒーの手配を命じ、私にもタバコをゆるすという意思表示のために、葉巻をわざわざくわえてくれた。細葉巻が良く似合う。
「大佐、連邦軍はどのように動くと思う」
「サイド2宙域での戦闘はないと考えて宜しいでしょう。現在、被害は首都島行政区のみでとどまっていますし、こちら側から戦火を拡大させない限り、大丈夫かと。ティアンムの第4艦隊は、恐らくレビルの第一連合艦隊、ビュコックの第二軌道艦隊との合流を考えるでしょう」
視線で続きを促してくる。
「我々親衛隊はブースター設置作業を続け、先行して航路確保に当たっているガラハウ少佐の第4大隊にコロニーを引き渡すことを考えていれば良いと思います。ただ、他行政区所属コロニーにいる連邦の駐留部隊による、散発的な攻撃がないとは言い切れません。ガトー中尉始め、各小隊には警戒態勢を継続するよう命令を。ただ、推進剤の量もありますので、2交代制を」
「うむ。それが妥当だろうな」
史実ではドズル指揮下の宇宙攻撃軍第302哨戒中隊隊長だったガトーは、所属をこの作戦では臨時に親衛隊に移し、グワデンのMS中隊長を務めている。中隊長なのに階級が中尉なところも、やはり士官不足の面が激しい。親衛隊は新型の高機動型ザクⅡの優先配備をさせていて、中でも第4大隊は試験結果もあって推進剤タンクを増設した(ゲルググMと同型のタンクを増設)R-1B型の配備をしている、ということになっている(実際は配備されたザクⅡにRP使ってでっち上げた)。懸念された稼働時間の減少がなくなっているが、Gのかかる時間が長時間化する事による疲労の面はどうしようもない。
「私が懸念しているのはむしろ、キシリア閣下の部隊が間に合うかどうかですが、何か連絡はありましたか?ギレン閣下はグラナダの制圧にとどめるよう命令されておりましたが、いじめすぎたので命令に従うか微妙なんですが」
その言葉にデラーズを始めとした親衛隊士官が苦笑を浮かべる。目の前にいる男とキシリアの不仲は、ザビ家兄弟間のそれよりも強く激しいという風評が立っており(それは充分以上に事実だったが)、この時点で、本来キシリアの軍となるはずの突撃機動軍が編成されておらず、本土防衛軍第3、第4攻撃師団で編成される突撃第一軍団のみが彼女の戦力となっているのも、この男のおかげだともっぱらのうわさだった。
その上、階級が少将である事、ジオン公国、宇宙攻撃軍の司令であるドズルが中将で、作戦の成否によっては大将になるかもしれないことも相俟って、史実よりもキシリアの地位は相対的に低下しており、もし緒戦で地球連邦に講和を押し付けられなかった場合、編成が予定されている地球攻撃軍の司令の地位を狙っている、とさらにうわさが派手になる始末だ。このうわさは既にデギン公王の耳にも達しており、地球連邦との講和にキシリアが何らかの妨害を行う可能性を示唆する将官も少なくない。
もっとも、キシリアの地位を低下させたと言う事実は私にとっては有利に働いた。親衛隊での地歩を固める際にキシリアと仲が悪い事は、これ以上ないほど、親衛隊士官たちからの好意(そして宇宙攻撃軍内のギレン・ドズルに近い者たちからのそれも)を獲得することに役立った。シーマ姉さんの部隊の行儀の悪さなど何処吹く風だ。却って、扱いの難しい海兵隊を良く抑えていると高評価が出る始末。
まぁ、そのおかげか扱いに困る出自の士官たちを押し付けられたり、キシリアの派閥からは蛇蝎のごとく忌み嫌われたし、機会あれば暗殺・失脚させてやろうと狙われているし、内偵の結果、キシリア直属の屍喰鬼隊が増強されているらしいとのこともわかっている。なかなか上手くいかないものだ。あのババア、絶対にコンティ大尉あたりをおくってきそうだな。
「心配はなかろう。月面での攻勢を強めて泥沼に嵌ることなぞ望んではおらんだろうし、月面までもが早々に中立を宣言した手前、下手にフォン・ブラウンやNシスターズに手を出せば、戦争継続上困る事になる。むしろ、月面に地歩を得た事で月面の利権を一手にした方が良い」
あらら、この人ギレン至上主義者のテロリスト予備軍だと思っていたら意外に聡い。まぁ、でなければ重用されるはずもないか。
「私もそう思いますが、如何せん、読めません。ヒス起こす可能性もありますし」
「ふふ、大佐は心配性だな。しかし懸念はもっともだ。月面を一手に握る事の表面的な利益に惑わされないことを願う。いや……むしろ、Nシスターズには大佐の第4大隊が早々に駐留を決めたはずだろう。ギレン閣下に今の時点で下手に手を出すとは考えにくいな。問題でもあるのかね?」
うわっ。この人本当に有能だ。あんまりNシスターズとの関係を探られたくないんだけどなぁ。
「キシリア閣下がサイド6を中立化させて、連邦との水面下のつながりを探しているのと同様、対抗手段が必要ですから。私はNシスターズを使おうと思っています。デラーズ閣下にもご懸念あると思いますが……」
デラーズはうなずいた。
「うむ。奇麗事だけでは戦えんからな。大佐の手腕に期待する」
「ありがとうございます。一見ジオンの不利に動くように見えても、背景を考えてくだされば有難いです」
第07話
「ままならんな」
衛星軌道上、ジオン軍の進めるコロニー落としの落着阻止限界点ちかくに集結した連邦宇宙軍第4艦隊の旗艦「タイタン」の艦橋でマクファティ・ティアンム中将はそう、つぶやいた。
「ここまでシトレ閣下の言う通りに進むとは、な」
サイド2パトロール艦隊から命からがら逃れてきた高速哨戒艇が伝えた、サイド2攻撃の状況を伝える映像を見つつ、ティアンムは自分の―――連邦軍のおかれた立場の危うさをいまさらながら実感する。
レーダーや電子機器を無効化するミノフスキー粒子の存在。
ミノフスキー粒子散布下で絶大な攻撃力を発揮する機動兵器、MSの活躍。
他方にあり、我が方にない。新兵器とは存在それだけで優位、劣位を決定する。
「我々の置かれた立場は第二次世界大戦のイギリスか、ふん。ビュコック提督も言ってくれる」
自分を教官として鍛えてくれた古参兵あがりの将官。あの人のいう内容は、経験して来たものの長さに比例―――いや、比例を遥かに超えて深い。国力に劣る勢力が一気呵成に勝敗を決しようとするなら、必ず新兵器と大量破壊兵器に手を出す。否定した自分の馬鹿さ加減が今思うと恨めしい。
大量破壊兵器としてまず出てくるのが核だと思いますが、運搬など不可能でしょう?ミサイルを用いるならイージスシステムで撃墜される。航空機を使うなら、運搬途中で撃墜すればいいじゃないか。ゴップ大将の批判を、彼は一言で切り捨てた。
「ルナツー落せば解決するじゃろう」
現実的にルナツーは連邦軍の根拠地で、これを地球上に落下させることはムリだ。しかし、ジオン軍は工業用コロニーのための資源用に、アステロイド・ベルトから多数の岩塊を運搬してきている。その一つを地球に向ければ良い。
言われるまで誰も気がつかなかったと言うのが不思議なくらいに手軽な大量破壊兵器だった。充分な加速のついたそれは、核ミサイルや戦艦のビーム砲による速度減衰を無視して尚、その運動エネルギーだけで大気圏を突破しうる。そうすれば、どこに落ちても大被害は確実だ。
地表に落ちれば落着の衝撃で巻き上がった土砂が大気圏を覆いつくし、太陽光をさえぎって地球は寒冷化する。地球上で行われている農業は大被害を受けるだろう。特に、先進諸国で農業を基幹産業とする北米・欧州・オーストラリア、そして中国とロシアの被害は確実だ。
海に落ちれば落ちたで、北大西洋に落下した場合は工業の中心都市が連なる北米東海岸と欧州が被害を受け、戦力の拡充だけでなく民生にまで壊滅的な被害が生じる。これが太平洋に移っても、日本、オーストラリア、アメリカ西海岸と同じような被害が生ずるのだ。
一番いいのは政情不安定で発展が宇宙世紀になっても遅れている、大西洋南部に落下しての、南米、アフリカに対する被害。しかし、何もしないでこれを求めるのは業腹だ。落着するコロニーの軌道を変えるため、シトレ本部長は艦政本部に命令して特務砲艦「ユグドラシル」級の建造を命令していた。ジャブローで建造されているそれが間に合うかどうかは、現状、かなり微妙なところなのだ。
「閣下、ジャブローのシトレ大将から連絡。レビル中将の第一連合艦隊は予定通り出航の見込み。砲艦については2隻、出撃可能との事です」
「核ミサイルの用意はどうなっている」
「レビル中将の指揮下、第2戦隊のワッケイン准将の部隊に搭載とのことです。艦隊戦には出すな、と」
ティアンムはうなずいた。
「第一連合艦隊と私の第4艦隊が攻撃。もうすぐ中立を宣言した4サイドからのパトロール艦隊を糾合して、ビュコック中将が第二軌道艦隊にそれらを臨時編入するはずだったな。コンバットボックスによる防空はビュコック中将にお任せするとしよう。ああ、空母部隊はビュコック中将のところのヤン准将に預けろ」
さて、吉と出るか凶と出るか。叶う事なら吉と出てほしいものだが、な。あの艦の性能が評判どおりである事を祈ろう。
特務砲艦「ユグドラシル」。歴史上、同タイプの砲艦は、ジオン軍において「ヨルムンガンド」と称されたそれである。本来ならばこの時、親衛隊の指揮下に配されている第603技術試験隊によって作戦に参加する予定のそれは、キシリア少将の政治力低下と共にダミー・プロジェクトとしての役割を否定され、実験データはグラナダ、Nシスターズを通じて連邦に供与された。
連邦に供与された理由は簡単で、MSの開発計画のダミーとして用いるなら、下手に試験などの手間を経るよりも、連邦の諜報ユニットの労力をそれに費やさせたほうが良い、と判断した(そう判断するよう誘導された)マ・クベ少将による。
キシリア機関は多年にわたる親衛隊第4大隊との暗闘に疲れ果て、本来なら連邦への諜報や防諜に用いる人材を、第4大隊へのそれに使わざるを得なくなり―――そして用いた諜報部隊が第4大隊側の部隊によって漸減させられた挙句―――諜報能力を低下させた。それを補うように月面恒久都市を通じた親衛隊の諜報活動が活発化。キシリア機関は現在、その能力が制限されている。
だからこそマ・クベ少将は親衛隊の誘導工作に引っかかり、「ヨルムンガンド」の情報を連邦へリークすることとしたのだ。勿論これには、MSさえあれば少しばかり諜報でへまをしたとしても充分補いがつくというキシリアの判断も入っている。本来ならばこのような消極的な判断を彼女がするはずは無いが、第4大隊との諜報戦は、予想以上に彼女に疲労を強いていた、といえるだろう。
ともかくも、「ヨルムンガンド」は「ユグドラシル」と名前を変えて地球軌道上に進んでおり、同型艦の「レーヴァテイン」と共に、コロニー落着を阻止する砲撃戦力として鎮座していたのである。
さて、ブリティッシュ作戦の天王山、コロニー落しを目前にかなり暇になってしまったので戦力の再確認をしておこう、とグワダン内の自室に引きこもってみたトール・ガラハウです。
資源があれば機体の生産は可能なので、今までのポイント使用は基本、技術獲得に振り分けていました。ただ、技術獲得と言ってもレベル制限が課せられているらしく、たとえば新しい作品へのアクセス権を5000ポイントで得ても、その作品内の機体を生産するためには別途ポイントを要するシステムだったのです。
そしてそのポイントは、人材獲得のポイントに匹敵するほど高額で、しかも戦力の強さに比例して高くなります。たとえばバンプレストオリジナルの場合、PT生産技術aをオンにしたところ、ゲシュペンストおよびヒュッケバインシリーズの生産が可能になりましたが、シリーズの異なる魔装機神やリオンシリーズの生産には別途ポイントを要すると言った有様(しかも、ブラックホールエンジン搭載機の生産は不可)。確かにゲシュちゃんの有用度は高いですが、量産にかかる資源の量もあわせて考えると、これは後々考えるとかなりつらくなりそうです。
となると一騎当千の機体かぁ、と思って縮退炉をオンにしてBHエンジン搭載機とグランゾン狙おうと思っていたら、別途の技術が必要らしく、BHエンジン搭載機とターンタイプしかオンになりませんでした。しかも、ターンタイプは月光蝶の発動が不可。おい、ナノマシン技術にもポイント回せってか。でも、PT技術bをオンにしたら、相乗効果でグランゾンの生産が可能になった事はうれしかったです。
今回ポイントを確認したところ、一週間戦争の半ばを過ぎた段階で、3サイドに対する攻撃が控えられた結果、24億の人口が生存し、これが240000ポイントと言う大量のポイント獲得につながりました。これは良いと言う事で早速、自分の生存性や技術の更なる拡大に振り分けてみました。しかし、自分に関するポイントの高いこと高いこと。合計130000ポイント使って「ジェリドぐらい(かませ犬程度の活躍が出来るってか)」ってどんな扱いだよ。どんだけ才能無いんだ俺。
それに、機体や艦船の生産でRPを消費するシステムなのでGPをRPで補うのも、これからの戦力増を考えると頭が痛くなってきます。RPでの生産は割高ですが、ポイント消費での生産は生産期間が工廠で作るよりも短いのが有難い。突発的な戦力不足も考えると、これからはRPの残量にも頭を使う必要が出てきました。
連邦側で活動するためにゲシュペンストを9機とジムシリーズのよさそうなのを揃え、第4大隊用に供与されたザクⅡにポイント消費をくわえて高機動型化するなどにRP使うと、結構な量になります。この辺は、最悪キシリアのお馬鹿とドンパチやるかもしれないと強化させたのが理由です。あのババアのことでしょうから、戦力よこせで抜かれる可能性も考えています。
確かに出来る事と使える技術を考えたら、一年戦争でシャドウミラーっぽく戦える事はチートですが、なんか違うような気がしないでもない。でも、この後のルウム戦役のことも考えると、下手に人口減少が生じたら、その分GPより差っぴかれますなんてシステムが言い出したものだから、予備のGPも獲得しておかなきゃならない。うん、火星の採掘部隊を拡充しよう。
そういえば、俺のやってる事って端から見たらシャドウミラーだよなぁ。うん、取っておこう。それに、スパロボJあたりの機体で無双も素晴しい。……まずい。あー、残りポイントが10万切った……できればマクロスにもアクセス欲しい所なのに。今回はこのあたりでやめておこう……
しかし、色々と判った事もある。タマーム・シャマランの暗殺回避で30000だったのにシャアの巻き添え回避で100ポイント、と言うことは、改変を行った事件が、作品にどれほどの影響力をもっているかでポイントの高低が決まるということを意味しているのだろう。となると、ぽっと出のキャラ一人助けるよりは、影響力もってそうな人物を助けたほうが良いということになるので、年末辺りにレビル大将を救えばポイントを多くもらえそうだ。
となると、ギレンの優生人類生存説を阻止して5000というのは、彼の考え方まで変えればポイントを多くもらえる可能性があると言う事にもなる。しかし、前回のシャアで明らかになった通り、それにギレン閣下相手に色々と苦労した事や、ポイントをもらえなかったエンツォ排除を考えると、影響が実際に出た時点でポイント化されること、原作に関わる重要度の高いキャラクターほど、介入の難易度が高く設定されている事がわかる。
うむむ、シミュレーション・ゲーマーとしては燃える所なんだろうが、自分の安全かかっているので怖くて仕方ない。下手打って月面総攻撃とか洒落にならん。
キャラの勢力加入で得られるポイントが、予想していたよりも少ないのがすこし腹立たしい。というかシーマ様2000って安すぎだろ。20000ぐらいよこせよ。あ、でも0083の流れ次第でもらえる量増えるかもしれない。
はぁ、とにかく、原作が始まる10月あたりまでは、やっぱりチマチマ稼ぐのが基本なんだろうなぁ。そろそろ連邦での動きも活発化させていかないと。