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No.22507の一覧
[0] 機動戦士がんだむちーと【多重クロス】[Graf](2014/07/27 19:00)
[1] 第02話[Graf](2010/11/08 12:16)
[2] 第03話[Graf](2010/10/18 06:59)
[3] 第04話[Graf](2010/11/08 12:16)
[4] 第05話[Graf](2010/11/21 08:24)
[5] 第06話[Graf](2010/10/21 09:52)
[6] 第07話[Graf](2010/10/23 23:30)
[7] 第08話[Graf](2010/11/08 12:17)
[8] 第09話[Graf](2010/10/23 08:33)
[9] 第10話[Graf](2010/10/23 17:06)
[10] 設定集など(00-10話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[11] 第11話[Graf](2010/10/27 05:15)
[12] 第12話[R15?][Graf](2010/10/27 05:16)
[13] 第13話[Graf](2010/10/25 21:22)
[14] 第14話[ネタ][Graf](2010/11/08 12:17)
[15] 第15話[Graf](2010/11/08 12:17)
[16] 第16話[Graf](2010/10/30 21:19)
[17] 第17話[Graf](2010/10/30 15:05)
[18] 第18話[R15][Graf](2010/10/30 21:24)
[19] 第19話[Graf](2010/10/30 21:21)
[20] 第20話[Graf](2010/10/31 14:30)
[21] 設定集など(11-20話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[22] 第21話[Graf](2010/10/31 14:31)
[23] 第22話[R15][Graf](2010/11/12 11:21)
[24] 第23話[Graf](2010/11/12 11:21)
[25] 第24話[R15?][Graf](2010/11/08 12:18)
[26] 第25話[Graf](2010/11/02 16:55)
[27] 第26話[Graf](2010/11/06 10:59)
[28] 第27話[Graf](2010/11/08 12:18)
[29] 第28話[Graf](2010/11/06 11:01)
[30] 第29話[R15?][Graf](2010/11/03 12:00)
[31] 第30話[Graf](2010/11/08 12:19)
[32] 設定集など(21-30話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[33] 第31話[Graf](2010/11/06 11:08)
[34] 第32話[Graf](2010/11/06 21:39)
[35] 第33話[Graf](2010/11/07 16:59)
[36] 第34話[Graf](2010/11/08 02:01)
[37] 第35話[Graf](2010/11/09 05:33)
[38] 第36話[Graf](2010/11/09 05:32)
[39] 第37話(R15 一年戦争終了)[Graf](2010/11/10 21:11)
[40] 設定集など(31-37話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[41] 第38話(R15 戦間期前半)[Graf](2010/11/12 11:25)
[42] 第39話(R15)[Graf](2010/11/11 10:20)
[43] 第40話[Graf](2010/11/11 23:02)
[44] 第41話[Graf](2010/11/12 11:41)
[45] 第42話[Graf](2010/11/15 04:51)
[46] 第43話[Graf](2010/11/14 12:40)
[47] 第44話[Graf](2010/11/15 04:52)
[48] 第45話[Graf](2014/07/29 19:39)
[49] 第46話[Graf](2010/11/15 04:53)
[50] 第47話[Graf](2010/11/14 12:44)
[51] 第48話[Graf](2010/11/15 21:23)
[52] 第49話[Graf](2010/11/17 12:03)
[53] 第50話[Graf](2014/07/29 19:39)
[54] 設定集など(38-50話まで)[Graf](2014/07/27 07:35)
[55] 第51話[Graf](2010/11/20 12:13)
[56] 第52話[Graf](2010/11/19 21:13)
[57] 第53話[Graf](2010/11/20 12:18)
[58] 第54話[Graf](2010/11/20 18:20)
[59] 第55話[Graf](2010/11/23 16:11)
[60] 第56話[Graf](2014/07/29 19:39)
[61] 第57話[Graf](2010/11/23 16:12)
[62] 第58話[Graf](2010/11/25 23:37)
[63] 第59話[Graf](2010/11/27 14:09)
[64] 第60話[Graf](2010/12/02 03:42)
[65] 第61話[Graf](2010/12/05 19:08)
[66] 第62話[Graf](2010/12/05 20:11)
[67] 第63話[Graf](2010/12/09 23:45)
[68] 第64話[Graf](2010/12/20 04:54)
[69] 第65話[Graf](2010/12/20 06:47)
[70] 第66話[Graf](2011/02/09 20:31)
[71] 第67話[Graf](2011/02/24 22:50)
[87] 第68話[Graf](2014/07/27 03:12)
[88] 第69話[Graf](2014/07/27 07:31)
[89] 第70話[Graf](2014/07/27 07:31)
[90] 第71話[Graf](2014/07/27 07:32)
[91] 第72話[Graf](2014/07/27 07:32)
[92] 第73話[Graf](2014/07/27 07:33)
[93] 第74話[Graf](2014/07/27 18:50)
[94] 第75話[Graf](2014/07/27 18:51)
[95] 第76話[Graf](2014/07/27 18:52)
[96] 第77話[Graf](2014/07/29 19:40)
[97] 第78話[Graf](2014/07/29 19:40)
[98] 第79話[Graf](2014/07/27 18:53)
[99] 第80話[Graf](2014/07/27 19:00)
[100] 設定集(51-80話)[Graf](2014/07/27 07:36)
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[22507] 第48話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/15 21:23
 地上遥かににジオン残党軍キロフスク基地を残しながら、打ち上げられるHLVのGに身を任せていたエリク・ブランケは苦渋の表情を隠せなかった。単機突進してきた黒いゲシュペンストとか言う連邦の新型は恐るべき技量で次々と残党軍のザク、ドム、グフを撃墜していった。この3年間、連邦に対して互角以上に戦っていた部隊も何の慰みにもならなかった。

 基地南方、鉱山へ入る谷の入り口を守るように設置された対戦車、対MS用のパックフロントをトリッキーな動きで砲弾を交わしながら、時折直撃弾を出してもひるむ事無く到達すると、砲塔のみを地上に出していたマゼラ・アタックの車列を次々にその巨大なビームサーベルで破壊する。

 戦闘開始早々に陣地に入り込まれてはどうしようもない。陣地線を守るために基地内から次々とMSが出撃するが、それをものともせずに次々と打ち倒す。フェルト伍長のザクはコクピットごと両断され、ヤマダ曹長のドムは投げられたところをパンチで潰された。双子のノール少尉姉妹が乗るグフは、ヒートロッドに捉えたものの、そのまま引き摺られて激突し、擱座。ご丁寧に腰の動力パイプを引きちぎる念の入れようだ。

 悪鬼のような敵の進撃に、推進剤の注入が終わったHLVが次々と打ち出されるが、狙ったかのような後方からの援護射撃で2基が撃墜。貴重な兵員とMSを無駄に破壊される始末となる。敵にビッグ・トレーやミニ・トレーといった支援砲撃可能な兵器がなかったことは幸いしたが、あれでは何の救いにもならない。いようがいまいが結果は同じだ。

 最後のHLVで打ち上げられる直前。クリストがイフリート・ナハトで出撃するのを私は止められなかった。兄のように慕う彼を失いたくないとは思いつつも、ここでクリストが出撃しなければ「水天の涙」を失うことがわかっていたからだ。見送ることしか出来ない私にクリストは笑ってくれたが、喜ぶことなど出来ない。

 あの黒いゲシュペンスト。タチアナの報告ではゲシュペンストS型。搭乗しているのはトール・ミューゼル少将。我がジオン最大の敵、ガンダム開発計画の責任者。ゲシュペンストは一年戦争中の開発機だというが、性能を見る限り、一年戦争後に開発されたはずの連邦の機体を上回っている。ア・バオア・クー戦で見た、あの新型ガンダムの性能など比べ物にならない。宇宙空間でもないのに、滑空しながら陣地に迫るなど悪夢も良いところだ。

 食いしばった歯から音が漏れる。HLVの打ち上げこそ成功したが、打ち上げ直前までにあの黒いMSに撃墜された機体は10機を越える。MSとはとても思えない、人間的な動き。しかも、如何考えても尋常ではないGがかかっているのに、それをものともしない機動。アレは正真正銘の化け物だ。

 そして真に恐ろしいのは、陣地が蹂躙された後で現れた連邦軍のほとんどが、あの機体を装備していたと言う事実。何機か、隊長機らしい機体はカラーリングが異なっているが、基本構成は黒系の塗装。S型とは装備やパーツの構成が違うから、アレを元にした量産機なのだろうが、機体デザインがほとんど同じとくれば戦場の兵士たちに見分けが付くとは思えない。

 何処を向いても悪鬼のような機体がいて向かってくる。悪夢そのものだ。ゲシュペンスト―――幽霊とはよくも名づけたもの。HLVの扉が閉まる直前、コールドブレードを装備したクリストの機体が向かっていったが、足を負傷しているクリストではどんな幸運があろうと絶対に勝てない。

 クリスト、必ず仇はとる。水天の涙を降らせて。そしてミューゼル、待っているが良い。そしてジオン兵すべての恨みをその身に受けるが良い。貴様の強化したガンダム、貴様が強力なものとした連邦のMSが、我々スペースノイドの自治独立の思いを踏みにじったと言うことを。

 「水天の涙」最大の障害は、やはりジオンを倒した奴らだ。エリク・ブランケは作戦遂行への決意を新たにした。




 第48話


 北欧のジオン残党軍基地への攻撃は、基地の攻撃と言う点では成功したが、基地から発射されたHLV6基のうち2基の撃墜にとどまり、ジオン残党軍の宇宙への移動阻止、という点では失敗に終わった。軌道上に、ルナツーのヤン少将に御願いして分遣隊の派遣をしてもらっていたが、デラーズ・フリートらしきジオン残党艦隊の介入によって撃破され、残党軍の合流を許してしまった。

 恐らく、いや絶対にシェリー・アリスンが情報を洩らしていたからだ。だが、今の段階でシェリー・アリスンの身元が判明することは、第二次「水天の涙」作戦に対するアクセスの方法をなくすと言うことになる。部隊の増強の一環として連邦欧州軍からファントムスイープ隊の移籍を御願いしたところ、北欧の残党軍基地を発見した功績も相俟って認可が下りた。11月上旬に配属されるとのことだ。

 一方、アフリカのキンバライト基地における交戦は歴史どおりに推移し、GP02は軌道上に打ち上げられ、これもデラーズ艦隊の回収を受けている。デラーズの艦隊戦力は、一年戦争、特にア・バオア・クー戦での被害がジオン軍、連邦軍双方共に抑えられた結果、本来の歴史の倍近くの戦力を有しているのだ。

 そしてそれに残党軍が加わり増強が行われている。

 トールは重いため息を吐いた。私事だけではなく、どうにも、頭の痛いことになってきた。



 UC0083年11月1日。衛星軌道上で戦闘空母アルビオンとサラミス級ユイリン、ナッシュビルが合流し、またこれも歴史どおりにジオン軍艦隊と戦闘を行い、ユイリン、ナッシュビルが撃沈されGP01が大破した。損傷したアルビオンは修理と補給、GP01の改装のため月のフォン・ブラウンに向かう、とのことだったので、月面での合流を打診するとシナプス艦長から了承の返事が返る。やはり、戦力的な不安は彼らも感じていたようだ。

 この歴史ではシーマ艦隊がこちら側のものなので、一体誰が接触したのかを不思議に思ったが、接触したのはなんと、ヘルシング大佐率いるティベ級1隻とムサイ後期型2隻の艦隊。しかも、運用しているMS部隊にはサイクロプス隊が存在していた。0080の、リボーコロニー襲撃事件が樺太でNT-1を開発してしまったため発生していなかったが、まさかこんなところで彼らと再会することになるとは思っても見なかった。

 しかも、MSが振るっている。MS-17ガルバルディαが3機(恐らく、シュタイナー、アンディ、ガルシア機)、MS-18Eケンプファーが1機(おそらくカミンスキー機)に加え、YMS-18プロトタイプ・ケンプファーと思しき機体が1機ある。この1機の機動が他の4機よりもかなり未熟さが目立つのが特徴的だ。5機編成であるということとあわせると、バーナード・ワイズマンが加わっているらしい。

 ゆり戻しか何かは知らないが、デラーズ・フリートの戦力にインビジブル・ナイツとサイクロプス隊と言う強敵が加わり、あのガトーがいるともなれば油断は出来ない。戦力は集中が原則だ、と言う判断に基づいて、早速樺太基地においてある戦力の宇宙への移動を命令する。ファントムスイープ隊も、合流次第宇宙に上げよう。

 宇宙にこれだけの戦力が集まったとなると、採れる戦略の幅も広がる。シナプス艦長をそのまま追撃部隊の司令に命じ、東方先生とアクセルをつけて月での補給の後、増援をつけてソロモン海へ。ガトーの侵入コースの詳細は既にわかっているから、其処にアクセルを待機させて東方先生で追撃をかけてもらえば大丈夫だろう。

 それに対して私の部隊は、ハマーンとソフィー姉さんたちと一緒に茨の園を直接攻撃する。インビジブル・ナイツの動向が不明だが、残党軍と合流した以上、茨の園に部隊を落ち着けている可能性が高い。月のマスドライバーを狙うような行動に出る前に先制攻撃をかけ、これを殲滅する。既に出撃していてそれができなくても、茨の園の設備は占領下に置けば役立ってくれることは間違いないだろう。どちらにせよ、ソロモンに戦力を分けた段階でデラーズ本隊とガチンコ勝負は出来ない。

 勿論、デラーズが出撃と共に施設を爆破している可能性も考えてあるから、こちらの目的に関しては無理でもかまわない。しかし、残党が残る事を考えると、やはりMSサイズだけでの制圧行動だけでは不十分と考えて、今回、遊撃隊の方々をヴァルケンに乗せて出撃する。

 問題はこれが上手く行かなかった場合に、敵がとるだろう行動の予測だ。其処まで考えたところで、いきなり声がした。

「相変わらずうじうじと何事かを考えているらしいな、トール」

 東方不敗とアクセルの姿。ああ、扉は如何したんだっけ。床にあるってことはまた蹴破って入って来たのか。あれ、なんでハマーンたちまで一緒にいるの?

「お前がうじうじと悩むだけなら儂も気にはせんが、貴様、先ほどの戦いは何だ?まるで狂ったかのようにジオンに向けて突進しおって。いくら貴様に不死設定とやらがあるとは言っても、見ている人間や関係のない人間にトール・ミューゼル死亡を印象付けでもするつもりか。……気に入らん。八つ当たりなどガキのする事ぞ」

 流石です東方先生。見抜いていらっしゃいます。けれども、そういうことでもしないと、システムの一件以来付いて回る、この暗い気分を追い払えそうにないんです。などと更に落ち込んでいたら、ハマーンが近寄り、私の頬を張った。



 情けない。見ているだけで嫌になる。そういう気持ちがハマーンの内にはある。今まで、調子に乗ってはこちらを引っ張ってきたトールがあの一件以来こちらに壁を作っているのは感じていた。けれど、これは行き過ぎだ。どんどん落ち込んで、こちらの心配もかまわずに暗くなっているだけ。いい加減にして欲しい。

「お嬢、貴様にあいつに立ち入る決意はあるか?」

 東方先生のその言葉に決意した。セニアは何事かを聞いていたようだけど、私とミツコは聞いていない。ミツコはベルファストの町に繰り出したとき、トールからあからさまな壁を感じて話しかける気にもならなかったって言う。ここまで来ると重症だ。

「トール、今から私はあなたの中に入る。ミツコもセニアも入るから、壁は作らないで」

 その言葉にはっきりとした拒否、恐怖の表情を浮かべるトール。私もこれが無茶なことだとは知っている。どれだけトールの気持ちを無視したことかも知っている。けれど、このままは嫌だ。壁を作られ、近しい他人として生きるのは嫌なのだ。先生は、トールが私たちとの距離を感じた、という。距離?ふざけないで。

 セニアとミツコとも話し合ったけど、私たちはトール・ミューゼルという人間に価値を感じている。私には未来を、ミツコには希望を、セニアには自由をくれたのだ。そんな人が落ち込んでいるのなら、当然助けようと思う。けれども、この人は自分がいたから出来たことに価値を感じていない。自分が達成したことに価値を感じていないのだ。

 セニアが自信を持てといっても自信を取り戻した風ではない。ミツコが話しかけなくても、それをなんとも感じない。私が近づかなくても何も。本当に重症だと、いまさらだけど気付いた。東方先生が言うには、バカなら殴っていう事を聞かせればよいが、下手に頭が回る分、殴っては逆効果だ、と言うこと。だったら一番効果的な方法は、と尋ねると、心のすべてをあからさまにさせることだけど、普通の人間にはできないと言う。

 だったら、普通の人間じゃない私がすればいいじゃない。トールと過ごした8年で、私のニュータイプとしての力は本当に伸びたらしい。セニアの作ったデュカキスが調べてくれたけど、自分が探り出した他人の内心を、自分を中継して他の人に伝えることも出来るらしい。

 勿論危険もある。いつか見た黒歴史。戦いの最後で多くの人間の意志を取り込んで戦ったNT、カミーユ・ビダンという男の人は、心が耐え切れずに数年を心を殺されたままで過ごすことになった。私の意志も、彼と同じように数年、いや、かなりの間死ぬことになるかもしれない。

 けれど私たちはこれを決めた。こっちが覚悟を示さないと、あの臆病者は絶対に覚悟を決めないからだ。いつもどおり、私からトールに触れる。私の感情がトールに流れ込むから、私がどんな思いかは伝わるはずだ。トールは五分ぐらい、拒絶の意志を伝えてきたが、ついに諦めたように首を振った。

 トールが頷いたのを確認すると、ミツコとセニアに肩を触らせ、私はトールの胸に抱きついて心を開く。水中か宇宙空間に飛び込むような感覚をイメージすると、何かを突き破る感覚と一緒に心に入る。いつもはここで、プールで言えば水面近くでトールが思う事を楽しむ。浮かび上がらせた―――思い出した記憶を共有して楽しむのが日課だった。しかし、今日はそういうわけではない。

 水中を、どんどん深く潜っていくような感覚をイメージする。トールの中にこれほど深く入ったのは初めてだ。次々と、トールの記憶が共有されていく。もう、100年近くこの世界にいるトールは本当に多くの出来事を見てきた。私には想像も付かないほど、地球から遠く離れた宇宙も見てきている。間近に見える土星や木星。火星のドライアイスが融けゆくさまは、まるでこの世の光景かと思うくらいに幻想的で飲まれそうになる。

 ただ、それは今は関係ない。いつもならこうした光景が見れることがトールとの"お肌の触れ合い"回線のいいところだ。けれど、もう一度強く思う。今回はそんなお遊びではないのだ、と。意識がトールの記憶の、更に深いところに入るのが解る。その中には私が見たこともないトール、見たくないと思っていたトールがあった。

 ジオンの家族を見捨てた記憶。ジオン・ズム・ダイクンのジオニズムを、もっと穏当な思想には変えなかった。何故?そうしないと歴史の流れが変わるから。歴史の流れが変わって、自分の想定していない事態が起こる事を避けるために、彼はダイクン家を見殺しにした。アストライアさんが徐々に弱まっていくのを助けようとしたのは結局のところ罪滅ぼし。しかし、彼は自分から、積極的にシャア・アズナブルという人間の考え方を変えようとはしなかった。何故?変わるから、歴史が。彼はセイラ・マス、本名アルテイシア・ソム・ダイクンの家族は守った。それは彼女が以後の歴史にあまりかかわりを持たないからだ。歴史が、彼女を助けても変わらないからだ。

 トレーズ・クシュリナーダに"強大な力の敗北は道理"、といわれた時には、自分のもつ力の大きさを感じて、最後には消えてしまうのか、と言う強い、"死"への恐怖を感じている。不死設定、とシステムを使って能力をつけているらしいが、まだ死を知らないことは、トールの内心に"死んだ自分"と"蘇った自分"が果たして同じ人間なのか、という疑問を生んでいる。自分と全く別で、それなのに全く同じ人間が、まるで自分の場所を奪い取ったかのように私たちと笑い合う、そんな光景を見ているしかない自分を想像して恐怖しているのだ。

 シーゲル・クラインという人物を呼び出した際に最初に考えた"10億人の虐殺"。トールは、呼び出した彼に対する同情心が生まれないこと、彼に対して、私たちと同じような責任感を感じないことに恐怖していた。自分が感じているように思っているだけで、実は私たちに対する感情も偽ものじゃないのかと疑っている。シーゲルを呼び出した最大の理由、感じる言葉は"第二のジャミトフ"、"人身御供"、そんな言葉がある。ああ、これはトールに最も感じて欲しくない、考えて欲しくないと思った考えだ。彼が、陰謀で他人を犠牲にするなんて。

 最初から、殺すために誰かを呼び出すなんて。


 呼び出した一人一人に対する考えが彼の中にはある。だから、私、いや私たち三人はそれを探す。あった。

 セニア・ビルセイア、"孤独な王女"、これは予想通り。セニアから聞いた話そのままだし、セニアも、これについては既にトールと話していたようだ。ふふん、どうよ、なんてこちらに腕組みをしている姿が映る。自分ひとり先にずるい。

 ミツコ・イスルギ、"金持ち悪女"、これも予想通り。でも、続く感情から、結局ミツコに対しても、何も気持ちが変わっていない事を確認する。そしてハマーン・カーン、"恋する男を間違えた"。自分の評価だけに泣きたくなってくるが、ミツコもセニアも慰めてくれた。ううっ、もういい加減そんな事を考えなくてもいいのに。

 そして其処から更に深く。トール自身がトール自身に思っていること、それを探す。頭がだんだん痛くなってきた。体の感覚も少しずつ薄れていく。いけない、と私のどこかがささやく。それは、自分がなくなること、この人をなくすこと、そんな声が聞こえる。うん?違う、これは私の声?ちがう。男の人のようにも聞こえた。もしかしてトール?

 それに気を取られた瞬間、一気に視界が開けてきた。

 強い抵抗を感じただけあって、やっぱりこの考えは隠しておきたかったんだろう。私たちを、システムのせいで。そんな言葉ばかりが伝わってくる。それだけじゃない。東方先生に言われた"ようやく耐えられる程度には成長したか"。つまり、自分がシステムに抵抗できるほどになっていれば、あんなことは起きなかったと思っている。ああ、それが一番の原因らしい。

 システムに抵抗できる可能性があったのに、トールはそれをしなかった。何故?システムに抵抗することを知らなかったから。システムが、まさか自分をコントロールしようと考えているとは知らなかったから。でも、知らないと言うことが言い訳になるとトールは思っていない。それで私たちにしたことが消え去らないからだ。

 ……本当に不器用よね。……だから、信じられるのですけど。

 そんな二人の声が聞こえてくる。私もそうだ。こんな風に悩む、いや、苛まれるまで考え続けるから、トール・ミューゼルは信用できるのだ。でも、トールはそう感じてはいない。さすが東方先生だ。男の人の悩みは、男の人にしか解らない、そういうことだったのだ。

 でも、悩みが解っても解決できない。だからこそ、東方先生は私たちにすべてを話してくれた。

 まだ意識がどこか肉体とつながっているらしい。薄っすらと残る感覚を頼りに、両腕を伸ばしてミツコとセニアを抱え込む。三人とトールが接触し、四人の意識の共有が深まる。私は意識を体に戻すと、東方先生を手招きした。苦笑する先生。ちょっとかわいいと思ったのは内緒だ。呆れたように笑うアクセルさん。扉を閉めると、誰も見ないようにたってくれている。

 東方先生が入ってきた。いかつい顔で、でも目を閉じて何も見ないで立っているだけ。自分が見る必要がない事を、トールに自分を見せることが必要だと感じている。え?一番の強敵はこのおじいさん?

 笑いあう4人の声に、恐る恐る一人の声が重なったところで、意識の共有は途切れた。

 




 本当に負けた。正直負けた。女性って強い。男は本当に弱い。漢は強い、男は弱いのだ。そんな事を感じながら頭を抱えていると、東方先生が前に来る。

 一発。頬に入った拳に弾き飛ばされ、壁に叩きつけられた。そして一言だけを言った。

「案ずるより産むが易し。うじうじ心配するより、実際に会話し意志を通じあった方が簡単ということだ、トール」

 そして大きくため息を吐くといった。

「手間をかけさせるな、バカ弟子が」

 私は、やっと心から4人に頭を下げることが出来た。


 --------------
 38話からの一連の流れに決着の回。次からは平常運転に戻ります。



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