「おじさん、私、麻雀覚えたよ」
「ほう?」
「友達が教えてくれたの。パソコンで」
「よかったじゃねえか」
「私、今度は本物の牌使いたい。前、あった」
「すっかりハマっているみたいだな。面白かったのか?」
「うん!簡単だし、アガれるとうれしい。この前はたくさんアガれた」
「そうか…。だが、それはゲームだからだな」
「ゲーム…だから?」
「たいてい機械のゲームってのは、プレイヤーに都合のいいように出来てるんだ。配牌がよかったり、ツモがよかったり」
「よく…わからない…」
「まぁ…実際やってみればわかる。おじさんな、お前に麻雀、教えることにしたよ」
「え?」
「おじさんも玲音くらいの頃に初めて麻雀を知ったんだ。
それに、お前のお父さん。娘がそれを知りたいってのに教えないで、自分はのうのうとそれでギャンブルに浸ってる。
それが、どうも…な。
まぁ、娘をそっちの世界に入れたくないってのもあるだろう。それでも、自分がギャンブルから足を洗わないのは駄目だ。
つまり玲音…。お前が麻雀を覚えて、お父さんにぎゃふんと言わせて、ギャンブルから足を洗わせるんだ。
そうすれば、お父さんはもっと玲音と遊んでくれるようになるんじゃないか?」
「…お父さん、悪くないよ。お父さんを悪く言わないで」
「あー、悪い悪い。そんな顔するなって。じゃあこうしよう。お父さんの遊び相手になるために、覚えるんだ。
誰に教わった?って聞かれたら俺から教わったって答えればいい。そしたら向こうも黙るさ」
「どうして」
「おじさんがえらいからさ」
「えらいの?どんなお仕事?社長さん?」
「仕事はもってねぇが、たぶん社長よりえらいな」
「そんな人、いるの?」
「ああ」
「どうして?」
「あー、いろいろあるんだよ世の中には。嘘だと思うなら、お父さんに聞いてみな」
「……うん」
「じゃあそろそろ、本物の牌使って麻雀のお勉強といくか。早くしねぇと、お父さん帰ってきちゃうからな」
「うん!」