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No.22330の一覧
[0] 【銀河英雄伝説】 反銀英伝 ヤン・ウェンリー氏の憂鬱 【再構成】[さんじゅうに](2010/11/08 03:53)
[1] 1話[さんじゅうに](2010/10/16 23:21)
[2] 2話[さんじゅうに](2010/10/04 22:10)
[3] 3話[さんじゅうに](2010/10/04 22:20)
[4] 4話[さんじゅうに](2010/10/04 22:24)
[5] 5話[さんじゅうに](2010/10/05 23:36)
[6] 6話[さんじゅうに](2010/10/08 21:46)
[7] 7話[さんじゅうに](2010/10/13 23:07)
[8] 8話[さんじゅうに](2010/10/14 22:11)
[9] 9話[さんじゅうに](2010/10/14 22:12)
[10] 10話[さんじゅうに](2010/10/17 17:51)
[11] 11話[さんじゅうに](2010/10/23 23:11)
[12] 12話[さんじゅうに](2010/10/23 22:40)
[13] 13話[さんじゅうに](2010/10/24 23:28)
[14] 14話[さんじゅうに](2010/10/26 20:26)
[15] 15話[さんじゅうに](2010/10/31 22:23)
[16] 16話[さんじゅうに](2010/11/08 03:39)
[17] 17話[さんじゅうに](2010/11/09 03:12)
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[22330] 2話
Name: さんじゅうに◆97b5ad9d ID:2421bd87 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/04 22:10
イゼルローン要塞。
この単語の持つ意味は複数存在する。
直径60kmの人工天体。帝国側最前線拠点。
四重にもわたる超重装甲と、凶悪極まる武装を備えた最強の要塞。
だが、宇宙暦七九六年以前の同盟領内の軍人にとって、その要塞の持つ意味は、微妙に異なっていた。
宇宙暦七六七年に完成して以来、同盟軍の侵攻を完全に支えきり、幾度もの戦役で帝国の勝利に大きく貢献したその巨大要塞は、
同盟に所属する軍人にとって、倒すべき帝国のもっとも分かりやすい象徴であった。


「その占領を、半個艦隊で行えと?」
「君に出来なければ、他の誰にも出来ないだろうと思っているよ」


校長の殺し文句にしては芸が無い。思わず視線を天井に逸らして考えこむ。
少将への昇進と同時に告げられた無理難題。
本来ならば、理由を上げて再考を願うべき命令だった。
だが、ヤン・ウェンリー個人にとっては、ある意味見逃せない話でもあったのだ。

ヤン・ウェンリーは、これまで第五次、第六次イゼルローン要塞攻略戦に参加した経験がある。
戦術面では小さな勝利を収めたこともあるが、戦略的にみればどちらの戦いも同盟の敗北と称して良い。
数多の将兵が僅かな光と共に散華していく戦争に対して、ヤン・ウェンリーは居た堪れない思いを抱いていた。

(戦略上の要地に建造された要塞。それを正面から叩いてる時点で駄目なのではないか?)

……戦史上、要塞というものが大きな役割を果たした回数は少なくない。
強固な防御陣地というものは戦術上非常に効果的であり、相手の攻勢の意図を弱める抑止力としても強力に作用した。
(逆に防御側の攻勢意欲を減退させ、イニシアティブを握る機会をみすみす見逃してしまうケースも存在したが)
これを攻略するのにはどのような方法が取られてきたか。
もっとも身も蓋もないものは、戦略上役に立たないようにする、である。
たとえば迂回。別方面での攻勢。外交的手段による無力化。
技術が発展した結果、時代遅れになった要塞があっさり落とされたケースもある。
どんなものであれ、絶対の存在などないのだ。

(……例えば、軍の予算を投入して長距離ワープを実現化できれば、イゼルローン要塞なんて何の意味もなくなる)

その程度のものでしかない物に、数十万もの死者を同盟は量産させている。
作戦参謀としては最善を尽くしたつもりではあった。
だが、……他に出来る手があったのではないか。

「少々、考えさせてください」

即座に返答が出来なかった元生徒に対して、統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥は軽く頷き、期待していると一言だけ付け加えた。



シトレの次席副官でありキャゼルヌは、後輩に対してばかだなあとでも言いたげに笑った。

「お前は本当にばかだなぁ」
「自覚してますから。わざわざ口に出して言わないでいいですよ」

仏頂面で言うヤンに、キャゼルヌは資料を渡しながら言葉を続ける。

「6回もの同盟の全力攻勢に耐え切った大要塞を、半個艦隊で落とすなんて冗談を、真に受けてどうするんだ」
「……冗談なんですかねぇ」

珍しく真面目に考え込んでいる後輩に、キャゼルヌは苦笑した。

「シトレ元帥だって、駄目で元々程度でお前の考えを聞きたかったんだろうさ。
 強行偵察でお茶を濁しておけば十分だろう。
 ……半個とはいえ、艦隊を預かるんだ。無茶なマネはするなよ」
「まぁ、半個だろうが1個だろうが、艦隊でアレは落とせないってとこには同意しますけどね」

ふと、キャゼルヌは寒気を感じ、そして思い出した。
彼が知る限り、ヤン・ウェンリーという人間は非常にドライな一面があった。
判らないことは判らない。
出来ないことは出来ない。
若干軍人としてどうかと思うことはあったが、彼は遠まわしな表現を使わずスパっとそう口に出す人間だった。
……その彼が、イゼルローン要塞を半個艦隊で落とせという無茶に対して、出来ないと断言しようとしていない。

「……勝算があるのか?」
「目算がつけば、色々お願いするかもしれません」

その時はよろしく。
ヤンの砕けた敬礼に、キャゼルヌの答礼は、わずかに遅れた。


作戦本部のロビー。
自宅に帰ろうとしたヤンの行く手を、一人の黒服の男が遮った。

「ヤン・ウェンリー准将ですね」
「はぁ、そうですが」

男のキビキビした動きから、軍人か警官だろうと目算を付けたヤンは首筋を掻きながら応えた。
ごく自然に受付の中尉に視線を向けてみるが、彼女はこちらから判るように目を逸らした。
つまり厄介事か。
相手が受付中尉が追い出せない立場の人間だと理解したヤンは、それなりの覚悟を決めた。
だが、相手が口に出した言葉にはさすがに当惑した。

「ヨブ・トリューニヒト国防委員長が貴方をお呼びです。
 車を用意してありますので、こちらへ」
「……今日は驚くことばかりだね、本当に」

思わず素が出た言葉を、相手は丁重に無視してくれた。


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